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結晶粒超微細化と高強度化技術 国立大学法人 電気通信大学 大学院 情報理工学研究科 知能機械工学専攻 准教授 三浦博己 1. 高強度 2. 軽量化 3. マイクロマシンへの適用 4. 超精密微細加工への適用 超微細粒(1μm)の有用性 新規構造部材の必要性

結晶粒超微細化と高強度化技術 - JST2. MDF 材の200 では、約500%の伸び 3. 高い熱的安定性 4. 加工による、肌荒れ、クラックが発生しにくい

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結晶粒超微細化と高強度化技術

国立大学法人電気通信大学大学院情報理工学研究科知能機械工学専攻准教授

三浦博己

1. 高強度2. 軽量化3. マイクロマシンへの適用4. 超精密微細加工への適用

超微細粒(≦1μm)材の有用性

新規構造部材の必要性

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◎ホールペッチ式σy = σ0 + k・d-1/2・・・(1)

◎サイズ効果試料サイズ(S) / 結晶粒径(d) > 10・・(2)

結晶粒微細化に伴う高強度化と問題解決

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結晶粒の超微細粒化と新機構強度部材

強ひずみ加工法加工熱処理法

平均結晶粒径200nm以下Cu合金、Mg合金、Fe系合金、Al合金、Au合金等

SUS304への強ひずみ加工法の適用例

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Mg合金への強ひずみ加工法の適用例とその組織・強度

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a. 31×21×14mm³(2.22 : 1.49 : 1)do=56.8μm(733K x 2h)

c. 引張試験T=25℃~200℃ε=8.3×10 ⁻⁵s ⁻¹~ 8.3×10 ⁻²s ⁻¹

b. MDFT= 230℃~350℃、 ε=3×10 ̄ ³s - ¹Δε=0.8 ΣΔε=0~4.0

1. AZ61Mg合金の組成

2.実験方法

Al Zn Mn Fe Ni Cu Si Mg5.8~7.2

0.4~ 1.5

0.15~ 0.5

0.005

Max.0.005Max.

0.05

Max.0.1Max.

Bal.

d. 組織観察光学顕微鏡、透過型電子顕微鏡

(mass%)

.

e. 圧延+時効試験15%冷間圧延後、423Kで1h時効処理。その後、引張試験。

多軸鍛造(MDF)の模式図

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MDF5パス後のTEM組織:平均粒径d=0.8μm

AZ31Mg, AZ91Mg, ZK60Mgに対しMDFを適用し→同様に超微細粒(d=0.2~0.8μm)バルク材を創製

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降温MDF中の累積ひずみ-室温硬さの関係

0 1 2 3 4400

500

600

700

800

900

1000

Cumulative Strain,Σ ε

Roo

m T

empe

ratu

re H

ardn

ess,H

v/M

Paε=3×10-3s-1

AZ31Mg合金

AZ61Mg合金

As-Received(AZ61)

As-Annealed

2pass

3pass

4pass

5pass

.

AZ31Mgに比べて高い強度

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真応力-公称ひずみ曲線

0 20 40 60 80 1000

100

200

300

4005Pass材 T=298K

----

Nomial strain,ε/%Tr

ue st

ress

,σ/M

Pa

ε=8.3×10-2s-1

ε=8.3×10-3s-1

ε=8.3×10-4s-1

ε=8.3×10-5s-1

.

.

.

.

0 20 40 600

100

200

300

400

Nominal strain,ε/%

True

stre

ss,σ

/MPa

焼鈍材 T=298K---

.

.

.ε=8.3×10-2s-1

ε=8.3×10-3s-1

ε=8.3×10-4s-1

-ε=8.3×10-5s-1.

室温引張試験

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0 50 1000

100

200

300

Nominal strain,ε/%

True

stre

ss,σ

/MPa

焼鈍材 T=473K

ε=8.3×10-4s-1

ε=8.3×10-5s-1

ε=8.3×10-3s-1ε=8.3×10-2s-1-

---

.

.

.

.

0 100 200 300 400 5000

100

200

300

Nominal strain,ε/%Tr

ue st

ress

,σ/M

Pa

4pass材 T=473K

-ε=8.3×10-3s-1

.--

ε=8.3×10-2s-1

.ε=8.3×10-4s-1.

-ε=8.3×10-5s-1.

引張試験: 真応力-公称ひずみ曲線

焼鈍まま材

T=200℃ 超塑性変形: 任意の形状に加工が可能

4pass材

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冷間圧延後の室温硬さ

0 5 10 15 20

600

800

1000

1200

冷間圧延率(%)

ビッカース硬さ

,Hv/

MPa

室温・空気中圧延

焼鈍材

2Pass材4Pass材5Pass材

超微細粒材の冷間加工が可能

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圧延と時効前後の室温引張試験

高強度と高延性のバランス

伸び約30%、最大引張強度約550MPa

4Pass材

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超微細粒AZ61Mgの特徴まとめ

1. 多軸鍛造(MDF)まま材で、室温で40%伸びと450MPa引張強度

2. MDF材の200℃では、約500%の伸び

3. 高い熱的安定性

4. 加工による、肌荒れ、クラックが発生しにくい

5. 超微細粒材の加工熱処理が可能

→室温伸び30%、引張強度550MPa達成

6. 希土類元素を含まず、安定供給が可能

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実施上の降温多軸鍛造の問題点緻密な温度制御設備投資とコスト

冷間多軸鍛造法の開発

AZ61Mg初期材

冷間多軸鍛造材

様々な難加工材への適用→新材料!

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実験方法

1.Multi Directional Forging(MDF)温度:77 K,300 K初期ひずみ速度3×10-3s-1,⊿ε=0.4

2.硬さ試験3.組織観察

・光学顕微鏡・透過型電子顕微鏡(TEM)

4.焼鈍試験温度:493 K等温焼鈍し

material Cu Fe Sn Zn

mass% 69.9 0.004 0.003 Balance

50μm

初期組織 (平均結晶粒径 25μm)

Cu合金への強ひずみ加工法の適用例とその組織・強度

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300 K, ∑Δε=6.0

300 K, ∑Δε=2.4

300 K, ∑Δε=0.4

30μm

C.A.Cu-Zn のMDF中のマクロ組織の変化77 K, ∑Δε=2.4 77 K, ∑Δε=6.077 K, ∑Δε=0.4

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∑Δε=6.0 , T = 300 K

DL

d = (DL/n)1/2

n: 双晶数

平均粒径 d

50 nm

パケット粒の模式図

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Cu-Zn: Y. Nakao et al. 日本金属学会誌 72 (2008) 397-406.

Al-Mg alloy:O. Nijs et al. Mater. Sci. Eng. A 483-484 (2008) 51-53.

IF steel:N.Tsuji et al. Scr. Mater. 47 (2002) 893-899.

AZ31Mg:J. Xing et al. J. JSTP (塑性と加工) 48 (2007) 407-411.

d-1/2 /μm-1/2

Yie

ld st

ress

, σy/M

Pa k = 217

k = 217k = 163

k = 109k = 514

1 μm10 μm 100 nm 50 nm

Mg

σy = σ0 + k・d-1/2

パケット粒サイズ

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単純冷間強圧延によるCu合金の結晶粒超微細化と高強度化の例

変形双晶を室温で大量導入し、材料を高強度化→長尺板材の大量生産

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熱間圧延

冷間圧延

焼鈍 1h 633~773K

1103K ×1時間 13mm

5mm

均一微細化、再結晶

65% 室温冷間圧延 (1.75mm)

64.4% 液体窒素極低温圧延(1.80mm)

実験工程

Zn Si Fe Cu試料1 18.2 1.5 0.25 Bal.試料2 19 0.75 0.25 Bal.

mass%

初期粒径 1:9.4μm 2:11.7μm

試料1: 1h 753K焼鈍材 粒径2.53μm

Aルート Bルート Cルート

焼鈍

60% 室温冷間圧延(0.7mm)

86% 室温冷間圧延 (0.7mm)

均一微細化、再結晶

初期材

低温焼鈍焼鈍化曲線引張試験硬さ試験

TEM・OIM観察

533K~653K

713K 300s 粒径 0.51μm

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Bルート: 室温86%冷間圧延まま材の組織: (a) 圧延面、(b) 横断面

(a) (b)

高強度の理由

1. 低温焼鈍による超微細再結晶組織2. 強圧延によるラメラー状組織3. それらを分断する変形双晶4. 固溶強化

超々微細粒

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低温焼鈍後(563K)の真応力-公称ひずみ曲線

Bルート Cルート

完全再結晶材σy=600MPaUTS=800~860MPaεf=40~50%

部分再結晶材σy=850MPaUTS=900MPaεf=40%

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本技術に関する知的財産権

発明の名称:黄銅および黄銅の製造方法出願番号:特願2008-262812出願人:国立大学法人電気通信大学発明者:三浦博己

発明の名称:マグネシウム合金材料を製造する方法出願番号:特願2008-292072出願人:国立大学法人電気通信大学発明者:三浦博己

発明の名称:難加工性金属材料を多軸鍛造処理する方法、およびそれを実施する装置

出願番号:特願2009-257954出願人:国立大学法人電気通信大学発明者:三浦博己

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問い合わせ先

国立大学法人電気通信大学 産学官連携センター

産学連携コーディネーター 小島珠世TEL : 042-443-5780FAX : 042-443-5108e-mail : [email protected]