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APS MAGAZINE 35 34 APS MAGAZINE Volume.11 2015.8 35 34 Volume.11 2015.8 戦略的な買収でIoT分野をリード シリコン・ラボは、米テキサス州オースチン に本社を置く1996年創業の半導体メーカーで ある。2000年にはナスダックに上場し、全世 界で約1,200名の従業員を擁している。製品ラ インアップは、マイコン、無線IC、ワイヤレス マイコン、センサ、オペアンプ・ADC・電源管 理などのアナログペリフェラル、オシレータやク ロックジェネレータ・ バッファなどのタイミング 製品、インタフェース・ブリッジ、ラジオ・テレ ビチューナ、アイソレータ、モデム、PoEなど 幅広い(図 1)。 現在のような多様な製品ラインアップを持つ ようになったのは、シリコン・ラボがもともと 持つ卓越した高性能ミックストシグナルのアナ ログ設計技術に、過去に実施してきた戦略的 買収で得た技術を融合した成果である。主な 買収先として、2012年にZigBeeでトップシェ アを誇るEmber社、2013年に超低消費電力 マイコンで知られるEnergy Micro社、2015 年にはBluetoothとWi-Fiモジュールを持ち、 ソフトウェア・スタックと開発ツールを提供して いるBluegiga Technologies社などがあげ られる。 いずれもIoT分野に必須の技術だ。「弊社は、 約 5 年前まだ IoTという言葉よりもエンベデッド・ ネットワークと呼ばれていた時代にIoT分野に進 出しようと考えました。この分野は多くの人が 考えているより動きが早く、常に先を見る必要 があります。いざとなってから慌てて揃えるので はなく、トータル・ソリューションを提供できる 体制を構築しました」と、米シリコン・ラボ VP and GM of MCU & Wireless products の Daniel氏。続けてDaniel氏は、「IoTでは、無 線 IC、マイコン、ワイヤレスマイコンなどのハー ドウェアに加え、Bluetooth、Zigbee等のプ ロトコル・ソフトウェアをソリューションとして提 供しています」という。ワイヤレスマイコンとは、 従来無線部とマイコン部が別デバイスであった ものをワンチップ化したもので、「ワイヤレスマイ コンはIoTに不可欠なピースです」(Daniel氏) とのことだ。「ワイヤレスマイコンはあくまでも素 材です。パフォーマンスが高く、低消費電力か つ小型のワイヤレスマイコンを複数ラインアップ しています」(シリコン・ラボ 高山氏)。最終製 品として作り込むためには、マイコンという素材 に加えて、プロトコルスタックやドライバなどの 各種ソフトウェアが必要になる。そして製品開発 のためのツールとして、評価キットや開発環境 高性能ミックストシグナルIC を設計/販売してきたシリコン・ラボラトリーズ(以下、シリコン・ラボ)は、超低消費電力マイコンに加え、 ZigBeeやBluetoothソリューションを持ったメーカーを戦略的に買収することによって、IoT分野における多様な製品ラインアップを持つように なった。さらに、こういったデバイスだけではなく、関連するソフトウェアの提供、統合開発環境や評価ボードの提供による開発を支援すること で、高い評価を得ている。ここでは、同社のIoTに向けた製品戦略を聞いた。 も不可欠だ。「弊社では、デバイス、ソフトウェ ア、開発環境のすべてを提供することで、効率 的な製品開発を支援します」(高山氏)という。 特定のアプリケーションに向けて EFM8が強みを発揮 マイコンは、シリコン・ラボが元々持つ8ビッ トマイコンC8051シリーズに加え、2013年に 買収したエナジーマイクロ社のEFM32、IoT向 けに新規開発されたEFM8およびワイヤレスマ イコンを提供する。EFM8およびEFM32は、低 消費電力を売りにしているマイコンファミリだ。 Daniel氏は、「『EFM』は、『energy friendly MCU』の略称です」という。 EFM8とC8051は8051コアベースの8ビッ トマイコンであり、一部の命令をパイプライン化 するなどして高速化を図っている。1または2ク ロックサイクルで命令の70%を実行可能だ。「動 作クロックが50~100MHzの製品があるなど、 単なる8ビットマイコンではないのが特長です」 (シリコン・ラボ 土屋氏)という。「EFM8は汎 用MCUでありながらIoTで要求される低消費 電力アプリケーションや各種センサを持つアプリ ケーションに最適です」(Daniel 氏)。 EFM8の主な特長として、①高性能高速CPU コア、②高性能ペリフェラル、③特許取得済み のクロスバー・アーキテクチャ、④周辺機能の 取り込み、⑤超低消費電力などがあげられる。 ペリフェラルは、200Kspsの12ビットADC や800Kspsの10ビットADC、 高ノイズ 耐 性 キャパシティブセンサ(Capsense)、温度セン サなどの高性能アナログペリフェラルが揃って いる。さらに、高性能タイマ、高解像度PWM、 高速シリアルインタフェース(12Mbps SPI、 3Mbps UART、3.4Mbps I2Cなど)が用意さ れている。 低消費電力も大きな特長となる。50nAとい うスリープ時電流、2 μ s 未満の高速ウェイクアッ プ時間、150μA/MHzの低アクティブ電流、 さらに消費電力を最大90%まで削減できるUSB モジュールなどが用意されている。これにより、 バッテリ寿命を大幅に向上させることが可能とな る。さらに、発振器、電圧レギュレータ、USB チャージャ検知回路など従来外付けだった各種 機能を内蔵しているにもかかわらず最小3mm 角の超小型パッケージを実現している。「たとえ ばUSBでは通常必要になる水晶発振器が不要 であり、USBの5V電源からEFM8向けの3.3V 電源を作ることができるので電圧レギュレータも 不要になります」(土屋氏)という。  EFM32のさまざまな機能で 超低消費電力化を実現 EFM32は、ARM ® コアを搭載した32ビッ トマイコンであるGeckoシリーズをラインアッ プ し て お り、Cortex ® -M0+、Cortex-M3、 Cortex-M4Fが採用されている。240品番以 上がラインアップされ、ピン互換・コード互換 性を持つため、ある程度設計が進んでからのシ リーズ変更や製品機種展開も容易にできる。 EFM32の低消費電力化は、①ARMコアの 採用、②各ブロック毎の細かい電力モード管理、 ② 独 自 技 術 で あるPRS(Peripheral Reflex System)の搭載、③特許技術である外部セン サI/F(LESENSE)、④ウルトラローリークを始 めとする徹底した低電力設計、⑤充実のツール 群などで実現される。 PRSは、CPUがスリープ状態でもペリフェラ ルだけで多くの処理を行える機能だ。PRSはペ リフェラルから別のペリフェラルを直接起動でき るのでCPUの介在は不要となる。 さらに、LESENSEも低消費電力化に貢献 する機能である。一般のマイコンでは、コン パレート毎にCPUを立ち上げ条件判定する。 LESENSEではCPUがスリープのまま、同様の ことをハードだけで実行できる。適切で動的な 電力モード管理に加え、これらの機能によって 電力消費が大幅に軽減される。 EFM8、EFM32、C8051、 ワ イ ヤ レ ス マイコンで共通で使える統合開発環境として、 「Simplicity Studio™」が用意されており、 シリコン・ラボのホームページから無償でダウ ンロードできる。Simplicity Studioは、 製 品セレクタ・ツール、コンパイラ、デモ、ライ ブラリ、サンプルコード、消費電流プロファイ ラツール、Capsense プロファイラツール、コ ンフィギュレータ、すべての関連ドキュメント、 Flash書き込みツールなど、開発前のマイコン 選定から、ソフトウェア開発、および書き込み までの統合開発環境となっており、それぞれの 集合写真(左より) SILICON LABS Vice president & General Manager MCU & Wireless Products Daniel Cooley 氏 シリコン・ラボラトリーズ シニアFAE 椿原 潤吾 氏 シリコン・ラボラトリーズ シニアFAE 高山 穀 氏 株式会社マクニカ テクスターカンパニー ストラテジックプロダクト事業部 プロダクトセールス部 第 2 課 リーダー 根城 大介 氏 シリコン・ラボラトリーズ セールスマネージャー 土屋 朋論 氏 シリコン・ラボラトリーズ NEW PRODUCT INFO 図 1:シリコン・ラボの製品ラインアップ。 MCU 32-bit ARM Cortex-M 8-bit 8051 Sensor Humidity Temperature Proximity/Ambient Wireless 2.4GHz / Sub-GHz Radio Protocol Bluetooth Power/Timing Oscillator Clocks Extreme Low Energy Silicon Labs SoC Solution for IoT IoTに必要なインテグレーションで 未来を変える! 戦略的買収という先見の明で真のエコシステム を 実 現!

戦略的買収という先見の明で真のエコシステム を実 …ZigBeeやBluetoothソリューションを持ったメーカーを戦略的に買収することによって、IoT分野における多様な製品ラインアップを持つように

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Page 1: 戦略的買収という先見の明で真のエコシステム を実 …ZigBeeやBluetoothソリューションを持ったメーカーを戦略的に買収することによって、IoT分野における多様な製品ラインアップを持つように

APS MAGAZINE 3534 APS MAGAZINEVolume.11 2015.8 3534 Volume.11 2015.8

戦略的な買収でIoT分野をリード

 シリコン・ラボは、米テキサス州オースチン

に本社を置く1996年創業の半導体メーカーで

ある。2000年にはナスダックに上場し、全世

界で約1,200名の従業員を擁している。製品ラ

インアップは、マイコン、無線IC、ワイヤレス

マイコン、センサ、オペアンプ・ADC・電源管

理などのアナログペリフェラル、オシレータやク

ロックジェネレータ・バッファなどのタイミング

製品、インタフェース・ブリッジ、ラジオ・テレ

ビチューナ、アイソレータ、モデム、PoEなど

幅広い(図1)。

 現在のような多様な製品ラインアップを持つ

ようになったのは、シリコン・ラボがもともと

持つ卓越した高性能ミックストシグナルのアナ

ログ設計技術に、過去に実施してきた戦略的

買収で得た技術を融合した成果である。主な

買収先として、2012年にZigBeeでトップシェ

アを誇るEmber社、2013年に超低消費電力

マイコンで知られるEnergy Micro社、2015

年にはBluetoothとWi-Fiモジュールを持ち、

ソフトウェア・スタックと開発ツールを提供して

いるBluegiga Technologies社などがあげ

られる。

 いずれもIoT分野に必須の技術だ。「弊社は、

約5年前まだIoTという言葉よりもエンベデッド・

ネットワークと呼ばれていた時代にIoT分野に進

出しようと考えました。この分野は多くの人が

考えているより動きが早く、常に先を見る必要

があります。いざとなってから慌てて揃えるので

はなく、トータル・ソリューションを提供できる

体制を構築しました」と、米シリコン・ラボ VP

and GM of MCU & Wireless products の

Daniel氏。続けてDaniel氏は、「IoTでは、無

線IC、マイコン、ワイヤレスマイコンなどのハー

ドウェアに加え、Bluetooth、Zigbee等のプ

ロトコル・ソフトウェアをソリューションとして提

供しています」という。ワイヤレスマイコンとは、

従来無線部とマイコン部が別デバイスであった

ものをワンチップ化したもので、「ワイヤレスマイ

コンはIoTに不可欠なピースです」(Daniel氏)

とのことだ。「ワイヤレスマイコンはあくまでも素

材です。パフォーマンスが高く、低消費電力か

つ小型のワイヤレスマイコンを複数ラインアップ

しています」(シリコン・ラボ 高山氏)。最終製

品として作り込むためには、マイコンという素材

に加えて、プロトコルスタックやドライバなどの

各種ソフトウェアが必要になる。そして製品開発

のためのツールとして、評価キットや開発環境

高性能ミックストシグナルIC を設計/販売してきたシリコン・ラボラトリーズ(以下、シリコン・ラボ)は、超低消費電力マイコンに加え、

ZigBeeやBluetoothソリューションを持ったメーカーを戦略的に買収することによって、IoT分野における多様な製品ラインアップを持つように

なった。さらに、こういったデバイスだけではなく、関連するソフトウェアの提供、統合開発環境や評価ボードの提供による開発を支援すること

で、高い評価を得ている。ここでは、同社のIoTに向けた製品戦略を聞いた。

も不可欠だ。「弊社では、デバイス、ソフトウェ

ア、開発環境のすべてを提供することで、効率

的な製品開発を支援します」(高山氏)という。

特定のアプリケーションに向けてEFM8が強みを発揮

 マイコンは、シリコン・ラボが元々持つ8ビッ

トマイコンC8051シリーズに加え、2013年に

買収したエナジーマイクロ社のEFM32、IoT向

けに新規開発されたEFM8およびワイヤレスマ

イコンを提供する。EFM8およびEFM32は、低

消費電力を売りにしているマイコンファミリだ。

Daniel氏は、「『EFM』は、『energy friendly

MCU』の略称です」という。

 EFM8とC8051は8051コアベースの8ビッ

トマイコンであり、一部の命令をパイプライン化

するなどして高速化を図っている。1または2ク

ロックサイクルで命令の70%を実行可能だ。「動

作クロックが50~100MHzの製品があるなど、

単なる8ビットマイコンではないのが特長です」

(シリコン・ラボ 土屋氏)という。「EFM8は汎

用MCUでありながらIoTで要求される低消費

電力アプリケーションや各種センサを持つアプリ

ケーションに最適です」(Daniel氏)。

 EFM8の主な特長として、①高性能高速CPU

コア、②高性能ペリフェラル、③特許取得済み

のクロスバー・アーキテクチャ、④周辺機能の

取り込み、⑤超低消費電力などがあげられる。

 ペリフェラルは、200Kspsの12ビットADC

や800Kspsの10ビットADC、 高ノイズ 耐 性

キャパシティブセンサ(Capsense)、温度セン

サなどの高性能アナログペリフェラルが揃って

いる。さらに、高性能タイマ、高解像度PWM、

高 速シリアルインタフェース(12Mbps SPI、

3Mbps UART、3.4Mbps I2Cなど)が用意さ

れている。

 低消費電力も大きな特長となる。50nAとい

うスリープ時電流、2μs未満の高速ウェイクアッ

プ 時 間、150μA/MHzの 低アクティブ 電 流、

さらに消費電力を最大90%まで削減できるUSB

モジュールなどが用意されている。これにより、

バッテリ寿命を大幅に向上させることが可能とな

る。さらに、発振器、電圧レギュレータ、USB

チャージャ検知回路など従来外付けだった各種

機能を内蔵しているにもかかわらず最小3mm

角の超小型パッケージを実現している。「たとえ

ばUSBでは通常必要になる水晶発振器が不要

であり、USBの5V電源からEFM8向けの3.3V

電源を作ることができるので電圧レギュレータも

不要になります」(土屋氏)という。 

EFM32のさまざまな機能で超低消費電力化を実現

 EFM32は、ARM®コ ア を 搭 載 し た32ビッ

トマイコンであるGeckoシリーズをラインアッ

プ し て お り、Cortex®-M0+、Cortex-M3、

Cortex-M4Fが 採用されている。240品番以

上がラインアップされ、ピン互換・コード互換

性を持つため、ある程度設計が進んでからのシ

リーズ変更や製品機種展開も容易にできる。

 EFM32の低消費電力化は、①ARMコアの

採用、②各ブロック毎の細かい電力モード管理、

② 独 自 技 術 で あ るPRS(Peripheral Reflex

System)の搭載、③特許技術である外部セン

サI/F(LESENSE)、④ウルトラローリークを始

めとする徹底した低電力設計、⑤充実のツール

群などで実現される。

 PRSは、CPUがスリープ状態でもペリフェラ

ルだけで多くの処理を行える機能だ。PRSはペ

リフェラルから別のペリフェラルを直接起動でき

るのでCPUの介在は不要となる。

 さらに、LESENSEも低 消 費 電 力 化 に 貢 献

する機 能である。 一 般 のマイコンでは、コン

パレート毎 にCPUを立ち上げ 条 件 判 定する。

LESENSEではCPUがスリープのまま、同様の

ことをハードだけで実行できる。適切で動的な

電力モード管理に加え、これらの機能によって

電力消費が大幅に軽減される。

 EFM8、EFM32、C8051、 ワ イ ヤ レ ス

マイコンで共通で使える統合開発環境として、

「Simplicity Studio™」が 用 意さ れており、

シリコン・ラボのホームページから無償でダウ

ン ロ ードできる。Simplicity Studioは、 製

品セレクタ・ツール、コンパイラ、デモ、ライ

ブラリ、サンプルコード、消費電流プロファイ

ラツール、Capsense プロファイラツール、コ

ンフィギュレータ、すべての関連ドキュメント、

Flash書き込みツールなど、開発前のマイコン

選定から、ソフトウェア開発、および書き込み

までの統合開発環境となっており、それぞれの

集合写真(左より)

SILICON LABSVice president & General ManagerMCU & Wireless Products Daniel Cooley 氏

シリコン・ラボラトリーズシニアFAE 椿原 潤吾 氏

シリコン・ラボラトリーズシニアFAE 高山 穀 氏

株式会社マクニカテクスターカンパニー ストラテジックプロダクト事業部プロダクトセールス部 第2課 リーダー 根城 大介 氏

シリコン・ラボラトリーズセールスマネージャー 土屋 朋論 氏

シリコン・ラボラトリーズ | NEW PRODUCT INFO

図1:シリコン・ラボの製品ラインアップ。

MCU32-bit ARM Cortex-M8-bit 8051

SensorHumidityTemperatureProximity/Ambient

Wireless2.4GHz / Sub-GHzRadio Protocol

Bluetooth

Power/TimingOscillatorClocks

Extreme Low Energy

Silicon LabsSoC Solution

for

IoT

IoTに必要なインテグレーションで未来を変える!

戦 略 的 買収という先 見の明で 真のエコシステムを実 現!

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APS MAGAZINE 3736 APS MAGAZINEVolume.11 2015.8 3736 Volume.11 2015.8

機能がワンクリックで簡単に使用できる。また

自動アップデート機能を備えることで、常に最

新のドキュメント・ツール郡を利用できる。「ハー

ドウェアとして低消費電力を実現するさまざま

な機能を上手く活かせるかどうかは、ソフトウェ

アエンジニアのスキルに依存します。個人のス

キルに依存してしまうとバラツキが生じる恐れ

が ありますが、Simplicity Studioという統

合開発環境を活用することで誰でも簡単にハー

ドウェアの機能を活かすことが可能になります」

(Daniel氏)。

IoT分野に必要なワイヤレスやセンサ

  シ リ コ ン・ ラ ボ はWi-SUN やThread、

ZigBee、Bluetooth、さらにはお客様独自の

短距離無線通信向けのソリューションを持つ。

 ワイヤレスの注目ワードに「サブギガ(Sub-

GHz:GHz以下の周波数)」がある。「サブギガ

は世界的に最も今後最も新規利用が進むであ

ろう重要な周波数帯です」(Daniel氏)。サブ

ギガは、2.4GHzや5GHzなどの高い周波数帯

と比べて到達距離が長く、回折性が高いので障

害物を回りこんで通信できるなど、今後の普及

が期待される周波数帯だ。国内でも920MHz

帯の普及が盛んである。シリコン・ラボでは、

2.4GHzに加えサブギガバンドに向けた製品を

ラインアップしている。「弊社のZigBeeチップ

は、全世界の約48%のシェアを占めています(シ

リコン・ラボ調べ)」(Daniel氏)という。シリ

コン・ラボは、これら2.4GHzと920MHzを1

チップで対応するIoT SoCも今後リリースする予

定のようだ

 センサもIoTを構成する重要な要素となる。シ

リコン・ラボは、環境アプリケーションに使用さ

れる温度・湿度・太陽光センサ、近接センシン

グやバイオメタリック・アプリケーションに使用

されるUV/IRセンサなどをラインアップするこ

とで、スマート・ホーム、ビルディング・オート

メーション、ウェアラブル、生体センサ・アプリ

ケーションなど様々なIoT分野に対応する。それ

らのセンサとマイコンおよび無線を組み合わせ

たリファレンスデザインを用意している。さらに、

センサに適した低消費電力を活かすソフトウェア

も用意することで、セット全体の低消費電力化

実現も支援していくという。

時代の先を見ていることに自信がある

 マイコンの開発では技術サポートも重要とな

る。「マイコンやツール、サンプルコードなどの

使い方などについての技術サポートを提供して

います」(高 山 氏)。シリコン・ラボ のMCUス

タータキットは搭載されているマイコンのデバッ

グや消費電力のリアルタイム計測はもちろん、

ユーザーで設計したボードの消費電力も計測す

る機能を備えている(図2)。

 国内では技術商社のマクニカが大きく貢献

している。マクニカではデバイス提案や技術サ

ポートに加え、Mpressionというオリジナル技

術ブランドにより各種ソリューションを提供して

いる。Mpressionには、マクニカが取り扱っ

ている多くのメーカーの半導体とシリコン・ラボ

製品を組み合わせたものも用意されている。「マ

クニカさんは商社なので、弊社製品以外と組み

合わせることができるので、さらに多種多様な

システムのリファレンスとなりえます」(高山氏)。

「マクニカでは無償のハンズオンセミナーを開

催しています。大好評のためマクニカの各営業

所での開催も計画しており、頻度も月1回程度

を予定しています。また、各種キットの購入が

可能な「Macnica Online Store」では、分か

りやすい日本語のドキュメントやFAQを多数用

意しています」(マクニカ 根城氏)。「英語でよけ

れば、弊社ホームページやYouTubeにて各種

デモを配信しています」(高山氏)。

 「いまIoT(インターネット・オブ・シングス:

モノのインターネット)は、さまざまなエコシス

テムにおいて重要なファクターです。弊社は、

それぞれのエコシステムが求めている“モノ”

を実現するためのデバイスやソフトウェアを提

供するだけでなく、エコシステムで必要となって

くる仕組み(スタンダード)の確立に積極的に取

り組んでおります。Threadもその1つの取り組

みです」(Daniel氏)。「エコシステム」とは、「デ

バイスからサービスまでを階層的に示す相関関

係」のことになる。最後にDaniel氏は、「弊社

は、時代の先を見ていることに自信があります。

10年先は難しいが5年先くらいまでの見通しは

ついています。IoTは本当に期待が高まってお

り、われわれの日常生活にも大きく影響するで

しょう。弊社はそういったIoTの世界の一端を

担っていきます」とまとめた。

図2:定価3,480円(税別)という低価格で提供されている「EFM32 Zero Gecko」のスタータキット。

シリコン・ラボラトリーズ | NEW PRODUCT INFO

製品作りにとどまらず、仕組みまでも変えようとしているシリコン・

ラボ。得意な無線とMCUを活かし、IoTを実直なまでに取り組んで

いる姿勢は、数年先の半導体プレーヤーの勢力図を変えているかも

知れない。

Technical NOTE

 - I2C Interface (SMBusサポート)

 - 低消費電力USB (USB2.0, Onchip PHY,

  5V->3.3Vレギューレタ内蔵,

  外付けクリスタル不要)

■超低消費電力アナログ・ペリフェラル

 - アナログ・コンパレータ

 - 2CH キャパシティブ・センサ

 - 電源コンパレータ

統合開発環境 Simplicity Studio

Simplicity Studioは、コンパイラや各種ツー

ル郡だけでなく、すべてのドキュメント等、製

品開発の開始から完了までのすべての工程をカ

バーする統合開発環境ツールです。

特に、超低消費電力アプリケーションを実現す

るためのツールが充実しています。

■Simplicity studioの無償ダウンロードURL

http://www.silabs.com/products/mcu/

Pages/simplicity-studio.aspx

【 Happy Geckoの機能 】

■ARM Cortex-M0+ CPU

 - 最高25 MHz動作

 - ウェイクアップ割込みコントローラ

■電力モード管理による超低消費電力化

 - 20 nA @ 3 V Shutoff Mode

 - 0.6 µA @ 3 V Stop Mode

  パワーオン・リセット、ブラウンアウト・

  ディテクタ、RAM/CPU内容保持

 - 0.9 µA @ 3 V Deep Sleep Mode

  32.768kHz RTCオシレータ、内蔵オシ

  レータ、パワーオン・リセット、ブラウン

  アウト・ディテクタ、RAM/CPU内容保持

 - 53 µA/MHz @ 3 V Sleep Mode

 - 132 µA/MHz @ 3 V Run Mode

  フラッシュからのコード実行時

■64/32 KB Flash、8 KB RAM

■15本のGPIO端子

■インタフェース

 - USART x2

 - 低消費電力UART(LEUART)

低消費電力を実現する10のアプローチ

EFM32シリーズは、超低消費電力MCUに重

要な10個のファクタを機軸に設計されていま

す。①アクティブ時の低消費電力化、②MCU

実行時間の短縮化、③ウェイクアップ時間の高

速化、④スタンバイ時の低消費電力化、⑤自立

動作可能なペリフェラル、⑥MCUを介すことの

ないペリフェラル同士の連携動作(Peripheral

Reflex Systemの採用)、⑦細かい電力モー

ド設 定、 ⑧ ペリフェラ ル 自 体 の 低 消 費 電 力

化、⑨センサインタフェースの低消費電力化

(LESENSE)、⑩これらの低消費電力化の仕組

みを最大限生かすツールの提供(統合開発環境

ツール Simplicity Studio)。

EFM32シリーズは、Core(ARM® Cortex®-M0+、

M3、M4F)、メモリサイズ、機能、パッケージによっ

て、Zero Gecko/Happy Gecko/Tiny Gecko/

Gecko/Leopard Gecko/Giant Gecko/Wonder

Geckoの7つのファミリを持ち、ファミリ間をま

たいで端子・ソフトウェア互換となっています。

User LEDs

128x128 Pixel Meomory LCD Debug Connector Simplicity Connector

EFM32Reset Button

CapacitiveTouch Pads

EFM32HG MCU

ExpansionHeader

Power Source Select

EFM32 USB micro-B ConnectorUser Push Buttons

Kit “Debug” USBConnector

CR2032Battery Holder

Relative Humidity &Temperature Sensor

IoTアプリに最適な超低消費電力MCUEFM32HG(Happy Gecko)

販売代理店:株式会社マクニカ テクスターカンパニーTel:045-470-9841 / Mail:[email protected]マクニカオンラインストア:https://store.macnica.co.jp/t/maker/silicon-labs

「An even better Simplicity Studio... version 3.1」http://go.aps-web.jp/11-silabs

QRコードアプリで関連デモ動画を再生できます。

EFM32 Happy Gecko センサ付きリファレンスボード

シリコン・ラボラトリーズ

http://www.silabs.com/