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九州工業大学 耐震デザイン研究室 平成 20 年 7 月 29 日(火) 祭畤大橋の落橋メカニズムについて 平成 20 年 6 月 14 日 8 時 43 分頃に発生した岩手・宮 城内陸地震で落橋した祭畤(まつるべ)大橋の落橋に至 る経緯の推定結果についてまとめる. 着目点 支承周りの損傷状況から,上部構造と下部構造の相対 変形を推定 岩手日報 河北新報社 岩手のニュース 祭畤大橋9月めど解体調査 検討委初会合 一関 岩手・宮城内陸地震で崩落した岩手県一関市厳美町の国道342号の祭畤(まつるべ)大橋の被災メカニズ ムの解明を目指す岩手県の調査検討委員会は25日、一関市で初会合を開いた。 耐震や橋の構造が専門の東北大大学院や岩手大の教授ら7人で構成。現地調査後の初会合では、委員長 に就任した鈴木基行東北大大学院教授が「被害状況を詳細に調べ、新しい橋の建設に生かしたい」と述べた。 検討委は県から橋周辺の地質などについて説明を受けた後、検討手順を確認。9月をめどに橋の解体調査 や材料の強度性試験などを行い、12月までにメカニズムを解明 し、復旧に当たる県に提言することにした。 委員からは「地盤の動き方も把握した方が良い」「メカニズム解明は試験結果だけにとらわれず、実態調査に 重点を置いて総合的に判断すべきだ」との指摘もあった。 祭畤大橋については、国道342号全体の復旧方法を探る県の別の技術検討委が「別の場所に架け替える べきだ」と県に求めている。 2008 年 07 月 26 日土曜日 年内に祭畤大橋解体撤去 被災状況調査検討委 岩手・宮城内陸地震で、落橋した国道342号の祭畤(まつるべ)大橋=一関市厳美町=の被災メカニズムを 解明する県の被災状況調査検討委員会は25日、同市内の催事場で初会合を開いた。県は、落橋のメカニズ ム分析などのため、年内をめどに谷底に崩落した橋を解体、撤去する方針を示した。 検討委は大学教授ら専門家7人で構成。委員長に鈴木基行東北大大学院工学研究科教授を選出した。 県の担当者が橋の測量結果や周辺の地質調査を報告。橋脚などの耐力を算出するなどして、被災メカニズ ムを推定する検討方針案 を示した。 委員からは「時間がたつと状況が変化してしまう。(緊急度に応じて)調査にメリハリをつけることが必要」など の意見が出された。 県は橋の調査と並行して解体、撤去を進める方針も説明。県道路環境課の加藤裕維持担当課長は「崩落し た橋が沢をせき止めていることもあるので解体が必要。せめて年内には、けたなど上の部分を撤去したい」と 述べた。 検討委は年内に計3回開催。崩落したメカニズムをさまざまな角度から分析し、架け直す橋の設計などに反 映させる。 (2008/07/26) 【河北新報社】http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1029/20080617_13.htm - 1 -

祭畤大橋の落橋メカニズムについて - 九州工業大学九州工業大学 耐震デザイン研究室 平成20年7月29日(火) 祭畤大橋の落橋メカニズムについて

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Page 1: 祭畤大橋の落橋メカニズムについて - 九州工業大学九州工業大学 耐震デザイン研究室 平成20年7月29日(火) 祭畤大橋の落橋メカニズムについて

九州工業大学 耐震デザイン研究室

平成 20 年 7 月 29 日(火)

祭畤大橋の落橋メカニズムについて

平成 20 年 6 月 14 日 8 時 43 分頃に発生した岩手・宮

城内陸地震で落橋した祭畤(まつるべ)大橋の落橋に至

る経緯の推定結果についてまとめる. 着目点 支承周りの損傷状況から,上部構造と下部構造の相対

変形を推定 岩手日報 河北新報社 岩手のニュース

祭畤大橋9月めど解体調査 検討委初会合 一関

岩手・宮城内陸地震で崩落した岩手県一関市厳美町の国道342号の祭畤(まつるべ)大橋の被災メカニズ

ムの解明を目指す岩手県の調査検討委員会は25日、一関市で初会合を開いた。

耐震や橋の構造が専門の東北大大学院や岩手大の教授ら7人で構成。現地調査後の初会合では、委員長

に就任した鈴木基行東北大大学院教授が「被害状況を詳細に調べ、新しい橋の建設に生かしたい」と述べた。

検討委は県から橋周辺の地質などについて説明を受けた後、検討手順を確認。9月をめどに橋の解体調査

や材料の強度性試験などを行い、12月までにメカニズムを解明し、復旧に当たる県に提言することにした。

委員からは「地盤の動き方も把握した方が良い」「メカニズム解明は試験結果だけにとらわれず、実態調査に

重点を置いて総合的に判断すべきだ」との指摘もあった。

祭畤大橋については、国道342号全体の復旧方法を探る県の別の技術検討委が「別の場所に架け替える

べきだ」と県に求めている。

2008 年 07 月 26 日土曜日

年内に祭畤大橋解体撤去 被災状況調査検討委

岩手・宮城内陸地震で、落橋した国道342号の祭畤(まつるべ)大橋=一関市厳美町=の被災メカニズムを

解明する県の被災状況調査検討委員会は25日、同市内の催事場で初会合を開いた。県は、落橋のメカニズ

ム分析などのため、年内をめどに谷底に崩落した橋を解体、撤去する方針を示した。

検討委は大学教授ら専門家7人で構成。委員長に鈴木基行東北大大学院工学研究科教授を選出した。

県の担当者が橋の測量結果や周辺の地質調査を報告。橋脚などの耐力を算出するなどして、被災メカニズ

ムを推定する検討方針案を示した。

委員からは「時間がたつと状況が変化してしまう。(緊急度に応じて)調査にメリハリをつけることが必要」など

の意見が出された。

県は橋の調査と並行して解体、撤去を進める方針も説明。県道路環境課の加藤裕維持担当課長は「崩落し

た橋が沢をせき止めていることもあるので解体が必要。せめて年内には、けたなど上の部分を撤去したい」と

述べた。

検討委は年内に計3回開催。崩落したメカニズムをさまざまな角度から分析し、架け直す橋の設計などに反

映させる。

(2008/07/26)

【河北新報社】http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1029/20080617_13.htm

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Page 2: 祭畤大橋の落橋メカニズムについて - 九州工業大学九州工業大学 耐震デザイン研究室 平成20年7月29日(火) 祭畤大橋の落橋メカニズムについて

至 一関 至 秋田

A2

P2 P1

A1

鬼越沢川

下フランジとウェブの座屈

国道342号 祭畤大橋側面図地震前

床版圧壊

上フランジ側が床版と分離し横倒れ座屈

下フランジ側横倒れ座屈

パラペット約4m押抜き

路面隆起

柱中間

柱上部

柱基部

分割

分割

打継目のズレ

打継目のズレ沓座損傷

桁端損傷小 沓座損傷

沓座損傷

パラペット損傷

至 一関 至 秋田

A2

P2 P1

A1

鬼越沢川

パラペット約4m押抜き

路面隆起

桁端損傷小

床版圧壊

上フランジ側が床版と分離し横倒れ座屈

かぶり剥落下フランジとウェブの座屈

下フランジ側横倒れ座屈

柱上部7m

柱基部8m

柱中間8m

約10m移動

約9m移動

地震後

沓座損傷

沓座損傷

沓座損傷

パラペット損傷

打継目のズレ2箇所

支間長 27m 支間長 40m 支間長 27m

橋長L=94.9m

25m

約9m移動

約10m移動

沓座接触痕

沓座接触痕

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Page 3: 祭畤大橋の落橋メカニズムについて - 九州工業大学九州工業大学 耐震デザイン研究室 平成20年7月29日(火) 祭畤大橋の落橋メカニズムについて

写真-1 下流側外桁の A2 支承

主桁

A2橋台 A1橋台側A2橋台側

主桁

A2橋台 A1橋台側A2橋台側

主桁

A2橋台 A1橋台側A2橋台側

(b)Step 1 (c)Step 2

(a)地震前

図-1 A2 橋台

主桁が A2 側に押し込まれたことにより,

上沓の A1 側の突起が無くなっている.

主桁は最初 A2 側に移動したと推定される.(図-1)

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写真-2 下流側外桁の P2 支承と下フランジ

写真-3 下流側中桁の P2 支承

③下フランジがP2橋

脚沓座面のA1側端部

と接触した痕跡

④上沓の突起は無損傷

②上沓の突起は無損傷

①下フランジがP2橋

脚沓座面のA1側端部

と接触した痕跡

①③位置で下フランジと沓座面が接し

た後,上下沓が鉛直方向に分離したた

め,沓の突起が無損傷(②④⑤)であっ

たと推定される.(図-2 Step 1)

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写真-4 P2 支承下流側と沓座面

主 桁

P2橋脚

A1橋台側

A2橋台側

主 桁

P2橋脚

A1橋台側

A2橋台側

主 桁

P2橋脚

A1橋台側

A2橋台側

(a)地震前 (b)Step 1 (c)Step 2

②④

①③ ⑤

図-2 P2 橋脚

⑤A1 側に移動したときに上沓が沓座

モルタルを傷つけた痕跡あり.

⑥沓の突起は無損傷

主桁と P2 橋脚梁がズレる際,最初に

主桁がP2橋脚に対してA1側に相対的

に移動したと推定される.

(図-2 Step 2)

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Page 6: 祭畤大橋の落橋メカニズムについて - 九州工業大学九州工業大学 耐震デザイン研究室 平成20年7月29日(火) 祭畤大橋の落橋メカニズムについて

至 一関 至 秋田

A2

P2

国道342号 祭畤大橋側面図Step 1

移動

移動

至 一関 至 秋田

A2

Step 2

P2

移動

移動

沓座と下フランジが接触パラペット押抜き

柱上部がA2側に傾斜

ここが折れ点となると沓座と下フランジが接触しない

パラペット押抜き

P2橋脚が崩壊

A1

P1

A1

P1

?

沓座が上沓と接触し損傷

着目するイベント

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Page 7: 祭畤大橋の落橋メカニズムについて - 九州工業大学九州工業大学 耐震デザイン研究室 平成20年7月29日(火) 祭畤大橋の落橋メカニズムについて

国道342号 祭畤大橋側面図Step 3

Step 4

A2

P2

約4m移動

約4m移動

パラペット約4m押抜き停止

路面隆起

A2

P2

4m以上移動

4m以上移動

至 一関

至 一関 至 秋田

至 秋田

圧縮軸力と正の曲げモーメントより上フランジ側から横倒れ座屈が発生

圧縮軸力と負の曲げモーメントより下フランジ側から横倒れ座屈が発生

A1

P1

A1

P1

?

?

着目するイベント

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Page 8: 祭畤大橋の落橋メカニズムについて - 九州工業大学九州工業大学 耐震デザイン研究室 平成20年7月29日(火) 祭畤大橋の落橋メカニズムについて

国道342号 祭畤大橋側面図Step 5

Step 6

A2

P2

至 一関

至 一関 至 秋田

至 秋田

A1

約10m移動

P1

約9m移動

A2

P2 P1

A1

鬼越沢川

路面隆起

桁端損傷小

床版圧壊

上フランジ側が床版と分離し横倒れ座屈

かぶり剥落下フランジとウェブの座屈

下フランジ側横倒れ座屈

柱上部7m

柱基部8m

柱中間8m

約10m移動

約9m移動

沓座損傷

沓座損傷

沓座損傷

打継目のズレ2箇所

沓座接触痕

パラペット約4m押抜き パラペット

損傷

上部構造が落下

山肌と衝突し下フランジとウェブの座屈

着目するイベント

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