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知的障害、自閉症の教育方法
カリキュラム、指導理論、個別化
この資料は、ここをクリック!
このスライドの構成
1. 知的障害の教育と教育課程
2. 個別化にかかわる指導理論
3. 個別の指導計画の作成
4. 指導法と個別の指導計画:言語訓練
5. 記録と評価
1.知的障害の教育と教育課程
カリキュラムの編成の手続き児童生徒の実態地域の状況社会情勢
学校教育目標
教育内容の精選学習指導要領
カリキュラム編成
領域教科をあわせた指導教科別の指導
年間指導計画
目標→内容→カリキュラム→指導形態→年計
知的障害特別支援学校の教育目標
• 将来の自立した生活を重視している
– 社会的自立、経済的自立
• 量的な充実より質的な充実
– QOL(生活の質)
• 知的能力の向上より、スキル(技能)の重視
– 生きていく上で必要な10の技能
コミュニケーション、身辺自立、家庭生活、社会的スキル、実用的な読み書き計算、就労、
余暇、地域活動、健康と安全、自己決定
グループホーム
会社作業所
さまざまな娯楽施設
自立した生活とは?
地域社会
生活
就労余暇
10のスキル獲得 → 生活、就労、余暇の保障
生活単元学習年間指導計画合わせた指導でのスキル獲得指導は?
月 単元名
4 新しい学年
5 楽しい遠足
6 運動会
7 水遊び
楽しい遠足
遠足の日程を知る遠足の準備をする
自分の係りの仕事をする
最後まで歩くレクリエーションを楽しむ
作文を書く発表する
指導案
必要なスキルを教えるための教育方法(生活単元学習)
カリキュラム学習指導要領
子どもの実態ニーズ
年間指導計画学級経営案指導案
個別の指導計画
個人目標個々の支援・教材
個人評価
教育計画は、全体計画と個別計画の2本立て
カリキュラムと個別化の関係
• 児童生徒の実態にもっとも適したカリキュラムの編成
• 個別化の保障
• 指導の系統性の保障
教科中心?合わせた指導中心?自立活動中心?
個別指導、個別の計画
発達課題、学習課題の順序性に従った指導
ニーズにあったカリキュラムの選択と個別化
教科
合わせた指導
自立活動
軽度 重度
小
高
障害、学年とカリキュラム(一般論)
障害や学年で異なるカリキュラム
2.個別化にかかわる指導理論
二つの代表的なアプローチ
目標設定、二つのアプローチ
検査・テスト → できない項目の指導基準準拠モデル
願い・ニーズ → 願いがかなうための指導
目標準拠モデル
治療教育乳幼児期の指導
教科学習
中、重度の教育後期中等教育(?)
検査・テスト → できない項目の指導(1)基準準拠モデル
治療教育
乳幼児期の指導
教科学習
まだ獲得していないが、獲得できそうな項目を
見つけ、指導目標にする
発達検査
教科指導
• 学力の実態把握
• 教科別の対応
– 国語、算数:理解できるレベルから始める
– 社会、理科など:個人目標、学習内容の精選
• 個人内評価
理解している単元、題材、知的能力を調べる
個別指導未学習に対応し、基礎学力を
身につける
基本:できることからはじめ、できることを伸ばすこと子どものペースに合わせ、わかりやすく、繰り返し教える
子どもの能力に応じた目標子どもの能力に応じた年間指導計画(資料)
算数(1年)チェックリスト
(参考)知能検査の活用
視覚認知が強いので、視覚的な支援
検査は子どもにあった支援を見つけるために実施する
WIPSSIWISC-ⅢWAIS-Ⅲ
願い・ニーズ → 願いがかなうための指導(2)目標準拠モデル
中、重度の教育
後期中等教育(?)
ニーズとは?(例)教師 保護者 子ども
授業中、席を立たない
みんなに迷惑をかけない
授業がやりにくい私のじゃまをしないで
ほしい
同級生の親の苦情が心配
自分に必要な学習がしたい
子どもにとって役に立つこと・生活や将来において必要なこと
女の子の髪に触らないでほしい
一緒に遊びたいかかわってほしい
自分の気持ちをことばで伝えることができる
ねがい 分析 長期目標
願いから目標へ
ニーズから目標をきめる子どもにとって役立つ、肯定的な目標
長期目標
• こんなふうになって欲しいという理想像
• 長期(1年)の見通しに立った目標
• 子どもにとって役立つ目標を
• 知的能力、発達段階を考慮すること
長期目標とは、願う姿、指導の方向性
(例)自分の気持ちをことばで伝えることができる
一人で身の回りの支度ができる自ら進んで学習に参加する
長期目標と短期目標(例)(領域:コミュニケーション)
長期目標 短期目標
(指導目標)
自分の気持ちを相手に伝えることができる
ご飯のとき「おかわり」と言う
おもちゃをかして欲しいとき「かして」と言う
わからないときに「教えて」と言う
やりたくないとき「いや」と言う
どれをさきに指導するか?
たくさん考え、優先順位をつけ、できることから始める
2.短期目標(具体目標)
• 長期目標を達成するための具体的な目標
• 曖昧な表現を避ける
• 観察可能な表現で
(例)条件:朝起きたとき、絵カードを見ながら標的行動:ひとりで服を着る基準:Tシャツとズボン。10分以内
短期目標 = 具体目標
実態・ニーズ 目 標 必要な支援 関連サービス
つかまり立ちができる
手を支えると歩こうとする
公園に散歩させたい
両手を支えると3メートル歩く
両手を支える
歩行器
車いす
ガイドヘルパー
重度重複障害のある子どもの個別の指導計画(例)
3.個別の指導計画の作成
目標準拠モデル
問題行動の対応
皆さんの事例で、
実際に考えてみましょう
紙を一枚準備してください!(資料)
問題行動の特定化
• 問題だと思われる行動を具体的に書きましょう
– 例)
– 友達を叩く
– 乱暴なことば
– 突然飛び出す
– すぐに泣く
– 奇声をあげる
まずは一つ。わかりやすい問題から
問題行動を書きましょう
おもちゃを横取りする
子どもの気持ちを考える
• 子どもが問題を起こしているとき、どんな気持ちでしょうか?
• 子どもの気持ちを受け止めて、望ましい姿をきめてください
– 例)おもちゃが欲しい、ここにいたくない、「先生、見て!」、不安・・・、「ひまだなー」
目標設定のために
• 子どもの気持ちを受け止め目標をきめる
– して欲しい→適切な要求表現
– ここにいたくない→限度を考え、できる基準を目標に
– 注目して→適切な表現を教える、たびたび注目する(指導方法)
– 不安、ひま→適切な表現を教える、遊び相手になる(支援方法)
• 無理なくできる目標にする
• 悪くない状態も認める
問題行動にかわる目標をきめましょう
• できそうな目標、悪くない状態、それぞれを書きましょう
– 例:できそうな目標「友達をとんとんしておもちゃを取る」
– 例:悪くない状態「小さな声での乱暴なことば」
できそうな目標一つと、悪くない状態をきめる
してほしいこと、悪くない状態、問題
×横取りする
あのおもちゃがほしい
△大声を出す
○「かして!」
問題行動が起きる様子を振り返りましょう
問題行動状況
きっかけ好ましくない
対応
問題が起きる状況を変える
• 場所、状況、活動、相手、きっかけを振り返る
• 変えられるものは変える
– 例)場所がにぎやか→静かにする
– 自分の居場所がわかりにくい→位置を示す
– 活動がむずかしい→活動を簡単に
– 特定の子の一言→その子に近づかせない
– 大きな声→小さな声で言う
問題を起こさない、目標ができるための事前の準備です先行条件の工夫
先行条件の工夫(1):プロンプト
• プロンプト
– 言語的プロンプト:ことばによるヒント
– モデリング:見本を示す
– 身体的プロンプト:手を添えて援助する
• プロンプトのきまり
– プロンプトは段階的に減らすこと
– 援助のタイミングを遅らせることも
プロンプトとはうまく行くための手軽な援助
• 約束、日課、活動が見て確認できる手がかりのこと
– スケジュール表
– 絵カードによるセルフマネジメント
• 環境の構造化
– 活動と場所を固定化し、場所で活動内容がわかること
先行条件の工夫(2):視覚的な手がかり
視覚的手がかりは記憶への負荷を減らし、見通しを持たせることができる
特性に配慮する
• 発達の遅れ→発達段階にあった対応
• 養育上の問題→保護者と話し合い
• ADHD→集中できる工夫、事前の約束、好ましい対応を練習
• PDD→視覚的手がかり(支援教材)、環境の構造化、活動のパターン化
• その他→事前の個別練習、本人への説明
子どもの特性にあった対応で問題発生の予防に
問題行動への対応を振り返る
問題行動状況
きっかけ好ましくない
対応
いままでの対応で改善が見られる→いままでの対応継続
変わらない→対応を変える
できたとき、悪くないときの対応
• 目標通りできたとき、悪くないときはほめましょう
– どんなほめことば?
– スキンシップ、一緒に遊ぶ
– ごほうびを与える
– トークンシステム
子どもが喜ぶ、自然なご褒美を考えましょう
効果的な強化子の選択
• 子どもの好み、好きなこと、ものを調べる
– リストを作ること
• 子どもに課している課題に見合うだけの強化子を選択
• 生活の中に含まれている強化子の使用
– おやつを増やす、ゲームの時間を長くするなど
• 必ず記録を取ること
子どもの好みのリスト
効果があるかどうかは与えてみないとわからない
子どもにあったごほうびをきめ、与えたあとの様子を観察すること
できたとき、悪くないときの対応
×横取り
あのおもちゃがほしい
△大声
○「かして」
「かして」の事前練習
○「ちゃんといえたね。えらいよ」
△「よく我慢したね」
1000ポイント:ゲームソフト500ポイント:カラオケボックス3時間100ポイント:カード10パック50ポイント:カード3パック10ポイント:おやつ
よいおこない手を挙げて発言した:1ポイント声をかけてからものを借りた:2ポイント悪口にことばで反論した:3ポイント
忘れ物をしなかった:2ポイント 約束を具体的に価値のないシールやスタンプ
ポイントを集めてものと交換ごほうびに差をつけること今の楽しみを我慢する練習
与えるときにはもらえた理由を認識させること
トークンシステム
ポイントを与え、ごほうびと交換するシステム(計画的に実行すれば、かならず効果があります)
して欲しくないとき、許しがたい行動にしっかり対応
• して欲しくない行動→ルールを繰り返す
– 「いまはかたづけの時間だよ」(何度も繰り返す)
• 許しがたい行動→教育的な罰
– 別の場で個別に対応。ルールの確認
– 遊びの制限
軽微な問題は教育的な無視重大な問題は教育的な罰
教育的な罰
• レスポンスコスト
– 約束を破ったらポイントを取り上げる
• 過剰修正
– 失敗を自分で回復させる(+誉める)
• 活動の制限
– タイムアウト:教室から一度外に出す
– ゲームの時間、自由時間を減らす
このほめることも大事だが、約束を破ったら結果責任を負うこと(罰)も重要!
事前に、子どもに説明しておくこと
問題行動にしっかり対応
×横取り
あのおもちゃがほしい
△大声
○「かして」
事前練習
○「えらい」
△「我慢したね」
×別の場所でルールを確認
保育所での個別の指導計画(魚沼市)
問題行動に対応した指導計画問題行動の禁止ではなく、望ましい行動ができることを
第一に考えている
個別の指導計画(個別保育計画:魚沼市)(続き)
4.さまざまな指導法と個別の指導計画
言語指導を中心に
3つの代表的な言語指導法
• マニュアル第一
– 伝統的オペラント法
• 自然性重視
– 機会利用型指導法
• 繰り返すことに意義がある
– 共同行為ルーティン(スクリプトによる指導)
行動分析による言語指導
Lovaasの言語訓練:伝統的なオペラント法
• 訓練室で先生と一対一で
• マニュアル第一
– 着席行動、注視行動
– 動作模倣、言語模倣
– 命名訓練
• 問題:これは言語指導かそれともゲームか?:日常生活への般化の困難さ
構造化された場面で一対一の集中訓練
機会利用型指導法フリーオペラント法
• ことばは役に立つ道具だ
• 「話をしたい」状況が大事
• 日常生活が指導の場面(自然な設定)
• 方法
– 環境設定
– 要求するまで待つ
– 手厚い支援
• 問題:「指導回数が足りない!」
語用論:
ことばを「使う」ことを教える
日常生活の中で、ことばの訓練に適した場面設定
共同行為ルーティンスクリプト( Script:シナリオ)による指導
• 小手先だけじゃだめ!知識を獲得させなければ
• 繰り返すことに意義がある
• 活動は流れ、繰り返す:ルーティンの形成
• いろんなルーティン– サーキット
– 買い物ごっこ、トースト作り
• 自然さと指導回数の確保:双方の長所を取り入れた
文脈を考え、シナリオ作ってシミュレーション
シナリオを作って生活の中で教える
場 面 養育者 子ども
・玄関で
・遊び
・給食
「○○ちゃんおはよう」
「お部屋に入ろうね」
おもちゃを2つ提示して
「どっちがいい?」
「そう、積木だね。積木で遊ぼう」
箸だけ渡さずに待つ
「どうぞ」といって渡す
「おはよう」
「はい」
指さし、または「こっち」
「つみき」
「ちょうだい」もしくは「はし」
「ありがとう」
代表的な指導法と指導形態
個別指導自立活動
教科
シミュレーション指導生活単元学習
作業学習
日常生活場面での指導家庭で
自由遊びのとき学校生活全般
伝統的なオペラント法
フリーオペラント法
共同行為ルーティン
言語指導を目的とした個別の指導計画
(資料)
言語指導プログラムの特徴
• 感覚運動段階(0歳から2歳)の子どもを対象
• 50の文献から、この段階のコミュニケーション行動を選択・系統化
• 目標を系統化し指導内容に対応
• 効果的な指導技法を採用
• 個別の指導計画作成が可能
応用行動分析、自然な指導場面、指導者との相互作用の重視など
CM:「きっとお役に立てると思います」
5.記録と評価
記録と評価
• 何を記録するのか
• どうやって記録するのか
– 主観的記録、チェックリスト、検査、ビデオ(後述)
• 何がわかるのか
記録で成長と指導の有効性がわかる
子どもの行動、教師のかかわり
子どもの成長、指導の効果
指導したら必ず記録をとりましょう
正しい評価のために
• 短期目標を具体的に
• 条件、標的行動、基準を意識する
条件:朝起きたとき、絵カードを見ながら標的行動:ひとりで服を着る基準:Tシャツとズボン。10分以内
ひとりで着たかどうか?着られた衣服は?
時間は?
チェックするのは?
目標に基準を設ける
記録や評価の手段
• できごと、行動を記述する
• チェックリスト(あとで説明)
• テスト、検査
• ビデオ:同じ場面を録画
• 評定尺度法
• 自己記録、評価
主観的記録(通常の記録)
発達検査社会生活能力検査
学力検査
5:とても良い4:良い3:ふつう2:悪い1:とても悪い
無理なく続けられる手段で必ず記録指導前と指導後で比較すると変化がわかる
自分で記録、評価
主観的記録の例
問題が起きた場面・状況
問題行動 対応 結果
・朝のあいさつ
○○くんの手が顔にぶつかる
・○○くんのおなかを叩く
・「いけません。あやまりなさい」と叱る
・「僕は何もしていない」と言う
時系列的に分け、事実に基づき記述する記録から、次の指導が見えてくる
チェックリスト
月 日 月 日 月 日 月 日
服を着る
着られた服
時間
チェックリスト
7月3日 7月4日 7月5日 7月6日
服を着る ○ ◎
着られた服
Tシャツ Tシャツ
時間 7分 5分
◎:ひとりでできた○:手伝ってできた△:できなかった
記録しやすい、まとめやすい工夫を
自分でできた割合
0
20
40
60
80
100
セッション
割 合
(%) <指導前>
<指導中>
<指導後>
1 2 3 4 1 2 3 1 2
結果を図に表すと変化が一目でわかる表計算ソフトの有効活用
カリキュラムに基づく記録と評価
• 学習内容から、学ぶべき目標を具体化する
• 課題分析の手法で、スモールステップ化
– 下位目標を選択し、系列化を図る
• 項目の設定は自由
– 子どもの実態に応じて弾力的に
• できるだけ数値で評価を
カリキュラムに基づく記録と評価とは、目標(スキル)をチェックリスト化すること
カリキュラムに基づく記録と評価
11月21日 11月28日 12月5日 12月12日
店に行く
物を選ぶ
レジに並ぶ
お金を支払う
おつり・物を受け取る
家に戻る
目標:一人で買い物をする
カリキュラムに基づく記録と評価
11月21日 11月28日 12月5日 12月12日
店に行く ○ ○ ○
物を選ぶ ○ ◎ ◎
レジに並ぶ
△ △ ○
お金を支払う
△ △ △
おつり・物を受け取る
◎ ◎ ◎
家に戻る ◎ ◎ ◎
目標:一人で買い物をする
何ができるようになったかを客観的に記録・評価する
◎ひとりで○援助されて△できない
評価の本当の意義
• 目標が達成できた、約束が守れた!
• 「自分はできる」
• 「自分は○○は得意。でも◎◎は苦手」
自己肯定感
自己理解将来の進路を考える元
評価で自信、自己理解
個別の指導計画の評価
• 短期目標を定期的に評価
– 達成できた→次の目標へステップアップ
– 達成できない→指導方法、目標の再検討
• 長期目標・短期目標の評価
– 達成できたこと、できないことを整理する
– 標準化された検査で評価
時期をきめて必ず評価→記述次の学年(担任)、学校へ必ず引き継ぐこと
個別の教育支援計画の評価
• 提供された支援の有効性を評価
– 支援によって獲得したこと、支援でできていること
• 今後必要な支援の検討
– 現在の支援が必要かどうか
– さらに必要な支援は?
• 教育措置にかかわる支援の検討
– 通級指導、特別支援学級、支援学校
有効な支援は打ち切らず、できるだけ引き継いでいくこと
まとめ:教師に求められること
• 指導にかんする説明責任を果たす
• 信頼できる指導法を採用する
• エビデンスに基づく実践
• 教員の質
個別の指導計画、教育支援計画
理論やスキルを学ぶ、自己研修
子どもの成長と指導の効果を示す「証拠」
これらが実践できること
これらを支える、子どもへの教師の深い「愛情」
長澤研究室
http://www.ed.niigata-u.ac.jp/~nagasawa/メールマガジン、特別支援教育・発達障害の情報、資料