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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料 1 知的・発達障がいのある人 の意思決定支援について ~みんなで一緒に考えよう!意思決定って何?~ 全国手をつなぐ育成会連合会 政策センター委員・「手をつなぐ」編集委員 (社)日本発達障害連盟 発達障害白書編集委員・JLニュース編集長 内閣府障害者差別解消法アドバイザー 又村 あおい

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料 1

知的・発達障がいのある人の意思決定支援について

~みんなで一緒に考えよう!意思決定って何?~

全国手をつなぐ育成会連合会 政策センター委員・「手をつなぐ」編集委員

(社)日本発達障害連盟 発達障害白書編集委員・JLニュース編集長

内閣府障害者差別解消法アドバイザー

又村 あおい

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料 2

1 意思決定支援の法制度上

の位置づけについて

2 意思決定支援を考える際

のポイントについて

3 意思決定支援を広げてい

くために意識したいこと

今日お話すること

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料 3

意思決定支援の

法制度上の

位置づけについて

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料

障害者権利条約と意思決定支援

1.「障害者権利条約」とは、平成18年に国連で採択された国際条約(国際ルール)

2.条約では障がいのある人を「一人の人間」「権利の主体」と捉え生活のさまざまな場面において障がいのある人の人権(尊厳)の尊重を批准国へ求めている

3.全部で50条あり、その中には「法律の前に等しく認められる権利と権利行使のための適当な措置」も規定されている

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料 5

【第12条】

(法律の前にひとしく認められる権利)

・締約国は、障害者が生活のあらゆる側面において他の者との平等を基礎として法的能力を享有することを認める。

・締約国は、障害者がその法的能力の行使に当たって必要とする支援を利用する機会を提供するための適当な措置をとる。

障害者権利条約における 意思決定支援関連規定

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料

障害者権利条約と意思決定支援

4.国連の国際条約を批准(国内で効果を適用させるための手続き、仲間入りすること)するためには、条約の内容に沿った国内法制度であることが必要

5.日本においては、憲法第14条において法の下の平等原則を置き、権利行使に関する措置は成年後見制度において対応

6.ただし、むしろ成年後見制度が法的能力の行使を阻害との意見もあり

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【第19条】

(自立した生活及び地域社会への包容) ・締約国は・・全ての障害者が他の者と平等の選択の機会をもって地域社会で生活する平等の権利を有することを認める・・

・障害者は・・居住地を選択し、及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること並びに特定の生活施設で生活する義務を負わない・・

障害者権利条約における 意思決定支援関連規定

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【第29条】

(政治的及び公的活動への参加)

・他の者との平等を基礎として、政治的及び公的活動に効果的かつ完全に参加することができることを確保する

・選挙人としての障害者の意思の自由な表明を保障すること。

障害者権利条約における 意思決定支援関連規定

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料 9

【第23条】

(相談等)

国及び地方公共団体は、障害者の意思決定の支援に配慮しつつ、障害者・・に対する相談業務、成年後見制度その他の障害者の権利利益の保護等のための施策又は制度が、適切に行われ又は広く利用されるようにしなければならない。

改正障害者基本法において 規定された意思決定支援

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【第3条】(地域社会における共生等)

全て障害者は、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられない。

改正障害者基本法で 注目したいもう1つの規定

生活の選択機会が確保されても、

意思決定の支援が担保されなければ

意味がない。両者は表裏一体の関係

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料 11

1. 国会議論の中で、意思決定支援を強調する方向に法案修正

2. 支援事業所の責務、相談支援事業所の責務に「障害者の意思決定の支援に配慮」という一文を追加

3. あわせて、知的障害者福祉法、児童福祉法、発達障害者支援法にも意思決定支援への配慮を追加

総合支援法の中でも 強調された意思決定支援

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総合支援法 第42条第1項 (指定障害福祉サービス事業者及び指定障害者支援施設等の設置者の責務)

指定障害福祉サービス事業者及び指定障害者支援施設等の設置者は、障害者等が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、障害者等の意思決定の支援に配慮するとともに・・(以下略)

総合支援法における規定

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総合支援法 第51条の22 (指定一般相談支援事業者及び指定特定相談支援事業者の責務)

指定一般相談支援事業者及び指定特定相談支援事業者は、障害者等が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、障害者等の意思決定の支援に配慮するとともに・・(以下略)

総合支援法における規定

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料 14

知的障害者福祉法 市町村は、知的障害者の意思決定の支援に配慮しつつ、知的障害者の支援体制の整備に努めなければならない・・ 児童福祉法 指定障害児通所支援事業者、指定障害児入所施設等の設置者等は、障害児及びその保護者の意思をできる限り尊重するとともに、常にその立場に立って支援を行うよう努めなければならない・・

知的障害者福祉法・児童福祉法における規定

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料

ここまでのまとめ

1. 権利条約や障害者基本法、障害者総合支援法などに「意思決定支援」を規定

2. いずれも知的・発達障がいのある人への支援を考える際には不可欠な要素

3. 法律上は、行政と事業所(支援者)に対する責務

4. ただし、行政と事業所だけが責務を負えば良いものではなさそう(家庭や教育現場における取組みも重要では?)

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料 16

意思決定支援を

考える際の

ポイントについて

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料

意思決定支援って何だ? 1. 意味としては、障がいのある人の「意思」を「決定」するための「支援」

2. 知的・発達障がいのある人や認知症の人にはとりわけ大切な支援といえる

3. ただし、「意思決定支援」の具体的な実践については知見の蓄積が必要

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法定化されたことも踏まえて、障がいのある人や家族、支援者などが積極的に議論することが重要

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料

意思決定支援って何だ?

★ 「意思」は、その人の思いや考えの

ことを指します(用例:個人の意思を

尊重する、意思表示する・・)

★ 「意志」は、何かを成し遂げようと

する心持ちのことを指します(用例:

あの人は意志が固い、鉄の意志でやり

遂げる・・) 18

「意思」と「意志」の違い

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料

意思決定支援って何だ? 一般的に「意思を決定する」ことを考えてみると・・

① 決定を下支えする十分な体験や経験

(決定する経験)があり

② 決定に必要な情報の入手・理解(統

合)・保持・比較・活用がなされ

③ 決定した意思が表出、実行できる

という流れが想定される

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意思決定支援って何だ? 1. 前スライドで整理した流れを、知的・発達障がいのない人は日々の生活で自然に繰り返している

2. これを知的、発達障がいのある人は、流れの1つ1つに支援を要する(可能性が高い)ことが分かる

3. 今まで周囲の人々は「意思決定に支援が必要 = 自分では決められない」と捉えていなかっただろうか?

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料

重度の障がいのある人であっても、必ず「意思」あるいは「思い」や「気持ち」があり自分で決めることができる可能性を秘めています。

それをどのように支援できるか・・と考えるのがポイントといえます。

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料

さらに踏み込むならば 1. 障がいの有無に関わらず、憲法に規定される基本的人権は誰でも享受できるはず

2. 法の下における平等はもとより、特に基本的人権の中でも重要な幸福追求権や自由権、生存権や教育を受ける権利などは、地域における当たり前の暮らしには不可欠

3. ただし、こうした権利を受けるためには、多くの場合「意思表明」が必要となる

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ということは 意思決定支援は基本的人権の一部では?

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料

X・Yのステージ(仮)

1. 本人の意思決定そのものを支援するステージ【X1:本人意思決定】

2. 本人の意思をできるだけ多面的に(関わる人との関係性には影響されつつ)類推して、共同で意思を決めていくステージ【X2:共同意思決定】

3. X1、X2は、柔軟かつ連続的

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整理の途中ですが、参考まで・・

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料

X・Yのステージ(仮) 1. 日常的な福祉サービスの利用や日用品の売買などを決めるステージ【Y1:日常的な決定】

2. 人生を左右するような暮らしの方向や高額売買などを決めるステージ【Y2:重大決定】

3. X、Y軸で構成される、連続する4面のステージ(ただし、Z軸も含めた3次元モデルになるのでは)

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X・Yの2ステージ 1. Z軸に当てはまるものはいろいろ考えられるが、可変項目として決定する事項に応じて整理する方法も

2. 特に、X2のステージにおいては共同決定に際して「ベストインタレスト」の考え方が重要となる

3. いずれにしても、X、Yは可変流動的なものであり、個別性や時点変動性も高いことを前提に

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料 26

Y2

Y1

X2 X1

決定の重大・稀少性

決定の不可逆性

年齢ごとの体験・経験の積み重ね

個別的な情報提供・活用の支援

本人意思決定

共同意思決定 ベストインタレスト

愛知県自閉症協会・花島氏の案を基に又村作成

このラインを上げていくのが「やり直し」支援

このラインを上げていくのがエンパワーメント

この面積を増やすのが意思決定支援の1目的

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料

ベストインタレストとは

1. イギリスの意思決定能力法で示されたもので、「本人にとっての最善の利益」と訳される考え方のこと

2. 共同決定に関わる家族や支援者(相談支援専門員)には必須で求められるもの

3. とりわけ、共同的に意思決定するケースにおいては、本人の意思を覆すような決定を行うとしたら相当の理由が必要

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料

ベストインタレストの7項目

1. 本人の年齢や外見、状態、ふるまいによって判断を左右されてはならない

2. 当該問題に関係すると合理的に考えられる事情については、全て考慮した上で判断しなければならない

3. 本人が意思決定能力を回復する可能性を考慮しなければならない

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料

ベストインタレストの7項目

4. 本人が自ら意思決定に参加し主体的に関与できるような環境を、できる限り整えなければならない

5. 尊厳死の希望を明確に文書で記した者に対して医療処置をしてはならない。他方、そうした文書がない場合、本人に死をもたらしたいとの動機に動かされて判断してはならない。安楽死や自殺幇助は、認められない

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料

ベストインタレストの7項目

6. 本人の過去現在の意向、感情、信念や価値観を考慮しなければならない

7. 本人が相談者とした者、家族・友人などの身近な介護者、法定後見人、任意後見人等の見解を考慮に入れて、判断しなければならない

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これらの条件を適切に満たした共同決定は、結果が不本意なものになっても免責

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料

ヨーロッパでの状況は

1. ヨーロッパにおいては(教授が知る限り)

「共同意思決定」を議論はしていない

2. 今後もあくまで「自己決定の支援」を進めていく方向ではないか

3. ただし、重度知的障がいのある人の自己決定支援がチャンレンジングな分野であることは事実(成功事例は見当たらない)

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マーストリヒト大学・ヨーロッパ障害者法

教授 リサ・ワディントン氏

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ヨーロッパでの状況は

4. ヨーロッパの障害当事者団体は、旧来型の成年後見制度からは離れていく考え方

5. 一方で、政府単位では多くの国でただちに成年後見制度の廃止は検討せずの方向

6. ただし、各国の裁判所が成年後見制度の運用修正を求める例はある模様(裁判を通じて権利条約の考え方を取り入れる手法も)

32

マーストリヒト大学・ヨーロッパ障害者法

教授 リサ・ワディントン氏

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とはいえ実際には(1)

1. 止めざるを得ないときには、いかに本人の意思が強くても止めなければならないこともある

2. いわゆる「愚行権」との関係で、規範性や身体危険性、あるいは経済性などをどの程度まで勘案すべきなのか

3. 他者の意思に関わる以上、どうしても自分の成育歴や価値観が投影される

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とはいえ実際には(2)

4. 入浴介助の際に頭から洗うのか、体から洗うのか、体であれば手から洗うのか、足から洗うのか、足であれば親指から洗うのか、小指から洗うのか・・支援(援助)行為は相当レベルまで細分化できるがゆえに・・

5. 本人が「意思決定した結果」を予測できない状態(不安定な状態)であるとき、それでも意思決定を求めるのか

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愚行権的なものの一例 某アイドルグループの「総選挙」において、お気に入りのメンバーをセンターに据えたいがために年金と工賃を全額投入しようとしている → 自分のお金だし自由じゃないの?

飲み会で飲み過ぎて終電を逃し、駅前の公園で何度も吐きながら一晩を過ごし、フラフラになりながら始発で帰宅した → そういう障がいのある人って見たことありますか?

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ちょっと立ち止まって

1. 意思決定支援の基本は「本人の意思決定を支援する」こと

2. しかし、現実的には本人を中心とした共同的な決定もあり、その際に必須となるのがベストインタレスト

3. したがって、共同決定に関わる人にはベストインタレストの理解が必須

4. ただし、ベストインタレストが身に付けば付くほど逆のリスクが高まる

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ちょっと立ち止まって

5. ベストインタレストは「本人にとっての最善の利益」なので、必然的に何が最善なのかを推測することになる

6. 仮にそれを本人意思決定の支援場面で持ちだしたらどうなるか・・せっかくのベストインタレストが誘導的な支援にならないか

7. 「本人意思決定の支援」場面なのか、共同決定における本人意思尊重場面なのか、常に場面を意識しよう

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意思決定支援に関する論点 【制度面の論点】

1. 現行の成年後見制度は意思決定支援より代行決定を重視していないか?

2. 本人が意思決定しやすい環境整備(さまざまな経験や分かりやすい情報提供など)が不足していないか?

3. 保護者や家族への支援が不十分なことが「親による代行決定」を引き起こしてはいないか?

38

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日本の成年後見制度は・・

1. 外形上の権限付与範囲は広く、強い

2. しかし平成11年の民法改正時には、それまでの「禁治産」を抜本改正し、「自己決定権の尊重」「残存能力の活用」などを基本理念とした

3. 民法858条は代理権や取消権の行使に当たり、本人が自ら決定できる能力(本人意思)への配慮を義務付けている(いわゆる身上監護配慮義務)

39

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日本の成年後見制度は・・

4. 後見人の代行決定に際して、ベストインタレストを求める規定、必要最小限に留めることを求める規定なし

5. 現行でも意思決定能力法に近い運用は可能とする意見も(法政大学菅教授)

40

身上配慮義務(民法858条)

成年後見人は、成年被後見人の生活、療養監護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。

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意思決定支援に関する論点 【支援面の論点・その1】

1. 障がいのある人を「意思を持つ一人の人」として受け止めているか?

2. 障がいのある人が安心して意思決定できるような、垂直的ではない、寄り添い型の支援が展開できているか?

3. 情報の提供、統合(保持・活用)、意志の表出にいたる一連の流れを個々の特性に応じてエンパワメントできているか?

41

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意思決定支援に関する論点 【支援面の論点・その2】

4. 「客観的に語られる意思はない」ということを前提に置けているか?

5. 「聴いてもらえない」と感じたら語ってもらえないことを意識しているか?

6. 事業所の中(あるいは法人の中)で、言語コミュニケーションが難しい人の「声にならない声」をどのように聴いているか、支援者間で共有する場があるか?

42

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支援の実践においては(1)

• 30名定員の生活介護事業所において、1週ごと特定の1名を対象に声かけ時の表情やジェスチャー、リアクションを職員全員で記録

• 週の終わりにスタッフミーティングを持ち、それぞれの気付きを共有

• これを年に2回ずつ継続実施(次の時には前回の気付きを基にコミュニケーションを取ってみる)

43

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支援の実践においては(1)

• これを3年ほど続けた結果、職員から「良い意味で楽にサポートできるようになった」「担当以外の人でも必要な関わりが可能になった」との評価

• 何より、いわゆる「ヒヤリハット」が顕著に低減(職員がチームで支援できていることの副次的効果)

44

虐待防止効果も期待できる取組み

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支援の実践においては(2)

• 所持金17,000円、購入すべき衣類はジーパンとシャツとジャージ

• ジーパンには関心が薄く購入する機会が少ない、シャツとジャージは関心が高く、良く購入している

• 店員から12,000円のジーパンを勧められており、これを買うかどうか

45

あなたが支援者なら、どうしますか?

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支援の実践においては(2)

• 同じ衣類でも、興味関心が薄い分野の商品だと自信がなくて店員の勧めるものを購入しがち

• 一方、興味関心の高い分野の商品だと自信が持てるので、店員に逆提案することができる

• 本人の好みでないもの、自信が持てないものが分かれば、持ち金額などで基準を提案するなどの支援も考えられる

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支援の実践においては(2)

• 日ごろの支援を通じて「何が得意で何が不得手なのか」「興味関心の高い分野は何で、低い分野は何なのか」などをつかんでおくことが重要

• だからこそ「普段からのお付き合い」が大切なのではないか

• 他方、店員に勧められるがまま購入して失敗する(痛い目に遭う)ことは誰にでもある

47

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支援の実践においては(3)

• 「これで良いのだろうか」と常に葛藤を持ちながら支援を行っていく

• 日ごろからの積み重ね、段階的な支援(悩みや思っていることの共有)

• 「今までこのようにしてきたからこれで良い」と考えていないか

• 支援者がご本人のことを考える時間や心のゆとりが必要

• チームアプローチが重要

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一方で、チームアプローチの罠

1. 関係性の構築=濃厚な人間関係となりやすい(自分を投影し過ぎて意思決定の適否を人間関係の良悪と勘違い)

2. 「誰かがやってくれているだろう」集団ネグレクトになっていないか

3. 「共同意思決定のリスク」同調、服従イケイケドンドンなど、チームの方向性が一致している(ように見える)ときこそ立ち止まって振り返る

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意思決定支援に関する論点 【支援面の論点・その3】

7. 「大きな意思決定場面」と「小さな意思決定場面」があるのは事実だが、それが「周囲にとって重要な決定」であるか否かで判断されていないか?(周囲から見ると重要性が低くとも、「本人にとっては大切な決定」もある)

8. 自己決定の重要パーツは「割り切り」であり、特性と経験が係数となる

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意思決定支援に関する論点 【支援面の論点・その4】

9. 自己決定のスムーズさと身体感覚の関係性の指摘もあり(たとえば、夏の外出時に木陰で休憩できる人と、冬に暖房の効いた部屋で上着を脱げない人)

10.ちょっとした感想や意見を聞くことのできる(雑談や笑いの)対人関係が日常の中にあることも重要

11.自己決定は健康と余裕ある関係が基本

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片桐 公彦 氏(前・全国ネット)

1. 障がいのある人を支援する仕事は、障害のある人の暮らしを豊かにすることをお手伝いする仕事

2. だとすれば、支援者自身の暮らしが豊かでなければならない

3. 本を読んで心動かされ、映画を見て感動するような生活をして欲しい。障がいのある人が心豊かであるために、支援者もまた心豊かであって欲しい

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次のフレーズ、いかがですか

1. 一人でトイレができるようにさせる

2. 一人でトイレができるように指導する

3. 一人でトイレができるように支援・援助する

4. 一人でトイレができるようになろう

5. 一人でトイレができるようになりたい

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意思決定支援に関わる人は、

言葉のチョイスに敏感になろう

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意思決定支援に関する論点 【教育面・家庭面の論点】

1. 子どもの頃から年齢に応じた「選ぶ」経験ができる教育環境であるか?

2. 家族だけで問題を抱えず、限界が来る前に声をかけられる学校や相談支援、保護者間のつながりなど(支援の輪)ができているか?

3. 家庭内が安心して自分の気持ちを出すことができる雰囲気になっているか?

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障がいのある人の

意思決定支援を考える際に参考になると

思われる資料や提言をまとめてみました

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全日本育成会の要望 (平成24年3月 自民党障害者PT)

• 意思決定支援の配慮について – 改正基本法で示された意思決定支援に基づき、コミュニケーションに配慮が必要な方への支援には、基本の相談事業(個別支援計画)の充実を図ると共に成年後見制度の活用等や日常の生活場面での支援等にも配慮し権利擁護が図られるよう求めます。

• 関係予算について – 予算の確実な確保をお願いします。現行の個別給付の仕組みは、財源確保の手段としては有効です。特に障害の重い方の地域生活に適切に対応する支援体制の充実を目指していただくようお願いします。

• 障害程度区分の見直しについて – 上記個別給付による財源確保を進める上で、現行の障害程度区分は、知的障害や精神障害の支援特性を十分に反映しないため、その大幅な見直しが必要です。骨格提言の示した相談支援と支給決定の変更に、検討の段取りと時間が必要であれば、可能な限り早い時期に新しい区分の基準で個別給付に対応できるよう見直しを求めます。

• 政局に左右されない仕組みづくり(本文省略)

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全日本育成会 大久保顧問 私案

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福岡 寿 氏(相談支援専門員協会)

1. 障がいの有無に関わらず、人は試行錯誤しながら、行きつ戻りつしながら、周囲との関係性の中で意思決定する

2. 障がいのある人は、支援者の誘いに一度は乗るはず。その際、「次も希望するか」は大きなポイント

3. 試してもいないことが胸に落ちないのは誰でも同じではないか

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福岡 寿 氏(相談支援専門員協会)

4. 本人が試してみて、うまくいく感触もダメな感触も味わって、その上で自分なりの落ち着きどころを見つけていく

5. 支援者の役割は、そのための段取りを何度でも調整して、障がいのある人に寄りそうことではないか

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緩やかな自己決定

という考え方

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柴田 勇夫 氏(岐阜県育成会)

1. なぜ、知的・発達障がいのある人に意思決定支援が必要なのか。自分と親の関係性を考えてみると分かりやすい

2. 特に重度障がいのある人の親は、「子どものことは私が一番良く分かっている」と主張する

3. しかし、自分の親は自分のことを「良く」分かっていただろうか。親が完璧に代弁できると思えるだろうか

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料

でも、何より大切なことは

1. 「意思決定支援」は確かに新しい言葉ですが、決して「特別なこと」「難しいこと」「専門家でなければ対応できないこと」ではありません

2. むしろ、家族や支援者と過ごす日常の中に自然と埋め込まれているものです

3. まずは、障がいのある人の意思(意向や気持ち)への注意度を高めていくことからスタートしてみませんか?

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料

そしてもう1つ・・

1. 「意思決定支援」は、障がいのある人だけが必要なものではありません

2. その同心円には、認知症などの疾病を有する人、薬物などが理由で十分な意思表示ができないなどが考えられます

3. 一方で、日本の文化風土にマッチした意思決定支援のあり方も模索する必要があります(「お任せ」寿司がある国の意思決定支援とは?)

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意思決定支援を

広げていくために

意識したいこと

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意思決定支援ガイドラインは必須

1. 障害者総合支援法の3年後見直しにおいては、「障害者の意思決定支援・成年後見制度利用促進の在り方」について議論

2. 基本的な考え方として、相談支援をはじめとした障害福祉サービスの提供において当然に考慮されるべきものであり、特別なサービス等として位置付けるような性質のもではない、と整理

3. 意思決定支援のガイドラインを策定

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意思決定支援ガイドラインは必須

4. ガイドラインでは意思決定支援の定義、標準的なプロセス(サービス等利用計画や個別支援画の作成と一体的に実施等)、留意点(意思決定の前提となる情報等伝達)等が示されている

5. 主に、意思決定支援責任者の配置、意思決定支援会議の開催、意思決定支援計画書の作成という3要素がポイント

6. やまゆり園の再整備で本格的に実施

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「意思決定支援ガイドライン」の概要

総論

◆ 意思決定支援の定義 ◆ 意思決定支援を構成する要素 障害者の態様/意思決定の内容(領域)/人的・物的環境等

◆ 意思決定支援の基本的原則

◆ 意思決定支援における合理的配慮

◆ 意思決定支援における留意点

◆ 障害福祉サービス事業所等における意思決定支援

◆ 意思決定支援の仕組みの構築

意思決定支援責任者の配置/意思決定支援会議の開催/意思決定支援会議の開催

◆ 意思決定支援における連携等 相談支援事業所との連携/学校との連携/医療機関等との連携

自立支援協議会との連携/成年後見人との連携/当事者団体等の連携 等

◆ 意思決定支援における危機管理

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料

意思決定支援は広がっている

1. 現在のところ、支援の一環として具体的に意思決定支援が重視されているのは障害福祉サービス分野のみ

2. ただし、総合支援法(児童福祉法)以外の法律にも意思決定支援に関する規定が置かれつつある

3. 特に、成年後見制度利用促進法における意思決定支援の規定は、守備範囲が大きく広がることを意味している

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発達障害者支援法 第2条の2(基本理念)

発達障害者の支援は、個々の発達障害者の性別、年齢、障害の状態及び生活の実態に応じて、かつ医療、保健、福祉、教育、労働等に関する関係機関及び民間団体相互の緊密な連携の下に、その意思決定の支援に配慮しつつ・・(以下略)

発達障害者支援法における規定

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料 69

成年後見制度利用促進法第3条(基本理念)

成年後見制度の利用の促進は・・成年被後見人等の意思決定の支援が適切に行われるとともに、成年被後見人等の自発的意思が尊重されるべきこと・・等の成年後見制度の理念を踏まえて行われるものとする。

成年後見制度利用促進法における規定

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料 70

(目次) 3 成年後見制度の利用の促進に向けて総合的かつ計画的に講ずべき施策

(1)利用者がメリットを実感できる制度・運用の改善

① 高齢者と障害者の特性に応じた意思決定支援の在り方

(2)権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり

① 地域連携ネットワークの三つの役割

ア)権利擁護支援の必要な人の発見・支援

イ)早期の段階からの相談・対応体制の整備

ウ)意思決定支援・身上保護を重視した成年後見制度の運用に資する支援体制の構築

成年後見利用促進計画における記載

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料 71

(7ページ) 後見人は・・本人に代理して法律行為をする場合にも・・できる限り本人の意思を尊重し、法律行為の内容にそれを反映させることが求められる。

後見人が・・適切な配慮を行うことができるよう、今後とも意思決定の支援の在り方についての指針の策定に向けた検討等が進められるべき

(9~10ページ) (2)権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり

①地域連携ネットワークの三つの役割

成年後見利用促進計画における記載

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・・各地域において、以下の三つの役割を念頭に、従来の保健・医療・福祉の連携(医療・福祉につながる仕組み)だけでなく、新たに、司法も含めた連携の仕組み(権利擁護支援の地域連携ネットワーク)を構築する必要がある。

ア)権利擁護支援

イ)早期の段階からの相談・対応体制の整備

ウ)意思決定支援・身上保護を重視した成年後見制度の運用に資する支援体制の構築

成年後見制度を、本人らしい生活を守るための制度として利用できるよう、本人の意思、心身の状態及び生活の状況等を踏まえた運用を可能とする地域の支援体制を構築する。

成年後見利用促進計画における記載

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料

意思決定支援は広がっている

4. いわゆる支援場面では、ある程度は定型的な、ある意味で支援者が予測可能な範囲の意思決定支援が求められることが多い

5. 一方、社会生活の場面では「決めなければならない」「決めることが求められる」シチュエーションも多い

6. その際、一般的な社会は「分からない」あるいは「決められない」ことをどれだけ許容するだろうか(おそらく許容しない)

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料

意思決定支援は広がっている

7. 本質的には、社会の許容度を上げていくための働きかけ(ソーシャルアクション)をすべきであるし実際していくべき

8. 他方、実社会で現に決められないことが許容されずに困っている人がいるとすれば、実社会で生きていくための意思決定支援がただちに必要

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理想的には、法曹界とも連動して、障がい福祉分野のノウハウを提供して意思決定支援を広げたい

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料 75

変わるもの、変わらないもの

変わらない支援 本人に寄り添った支援、意思決定支援など

変わる制度 措置 → 支援費 →

自立支援法 → 総合支援法

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料 76

ご清聴

ありがとう

ございました

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料

ご参考まで・・(その1)

○ 全国手をつなぐ育成会連合会

これまでの社会福祉法人から、運動体として生まれ変わります。

http://zen-iku.jp/

または、「全国手をつなぐ育成会連合会」で検索していただくとたいがいはトップで表示されます。

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料

ご参考まで・・(その2)

○ あたらしいほうりつの本 又村が書いた初めての単行本が出ました!

できるだけ読みやすく、障害福祉サービスや年金・ 手当などの概要や手続きのながれを解説しています

お求めは、全国手をつなぐ育成会連合会のホームページ、または「すぺーす96」(書店)のホームページから!

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平成30年(2018年) 5月27日 横浜市自閉症児・者親の会 総会研修会 資料

参照させていただいた文献等

法政論集250号(2013)民法858 条における「本人意思尊重義務」の解釈―本人中心主義に立った成年後見制度の実現―

菅 富美枝 氏(法政大学教授)

権利擁護としての意思決定支援

丹羽 彩文 氏(埼玉県西部・比企地域支援センター)

相談支援体制の充実と意思決定支援

菊地 達美 氏(日本知的障害者福祉協会副会長)

知的障害者へのより良い意思決定支援に関する調査研究~サービス提供場面を中心に~

(福)北九州市手をつなぐ育成会

「できる!!意思決定支援」~意思決定支援・本人活動・人権擁護~

古川 敬 氏(社会福祉法人育成会 本部事務局長)

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