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積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成する
外国語活動における評価の工夫
宮腰 徹
外国語活動の目標の一つに「積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成」
がある。しかし,「学年が進むにつれ,英語学習に対する意欲の低下が見られる」ことが
県の課題である。そこで,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成する手
段として,“Hi, friends!”を活用する中で評価方法を工夫することを考えた。本研究では,
単元を貫く言語活動を設定した単元計画の下,目的意識・相手意識のあるコミュニケーシ
ョン活動を展開しつつ,ショートスパンで形成的評価,自己評価・相互評価に取り組んだ
結果,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成することができた。
キーワード:相手意識,ルーブリック,3つの度「3D」,ショートスパン
Ⅰ 主題設定の理由
小学校学習指導要領では,外国語活動の目標は「外国語を通じて,言語や文化について体験的に理
解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り,外国語の音声や基本的な
表現に慣れ親しませながら,コミュニケーション能力の素地を養う」と示されている。
平成26年度秋田県「学校教育の指針 本年度の重点」では,「明確なねらいと信頼性のある評価に
よる授業づくり」を重点としている。そして,本県外国語活動・外国語(英語)の課題の一つとして「学
年が進むにつれ,英語学習に対する意欲の低下が見られる」ことが挙げられている。
研究協力校でアンケート調査を行った結果,第5学年は「英語で発表することが好き」「どちらか
といえば好き」と答えた児童が90%以上で,積極的に授業へ参加しようとしているのに対し,第6学
年では,「好き」「どちらかといえば好き」と答えた児童が60%で(図1),学年により外国語学習に対
する意欲の差が表れていると言える。
そこで,児童の実態を的確に捉え,教師が行う形
成的評価や,児童が授業内で行う自己評価・相互評
価を工夫することにより,児童が目的意識・相手意
識をもって,外国語に慣れ親しむ活動に意欲的に取
り組めば,自信をもって積極的にコミュニケーショ
ンを図ろうとする態度が育成されるのではないかと
考え,本研究主題を設定した。
Ⅱ 研究目的
小学校学習指導要領解説外国語活動編によると,コミュニケーションへの積極的な態度とは,「日
本語とは異なる外国語の音に触れることにより,外国語を注意深く聞いて相手の思いを理解しようと
したり,他者に対して自分の思いを伝えることの難しさや大切さを実感したりしながら,積極的に自
分の思いを伝えようとする態度などのことである」としている。これを受けて本研究では,コミュニ
ケーションへの積極的な態度を「相手を意識しながらコミュニケーションを図ろうとする態度」と捉
え,これを育成することを本研究の目的とするとともに,この実践を通して本県外国語活動の課題解
決に資するものである。
図1 英語で発表することに関する意欲
好き 79%
好き 30%
どちらかといえ
ば好き 14%
どちらかといえ
ば好き 30%
どちらかといえ
ばきらい 7%
どちらかといえ
ばきらい 40%
5年
6年
「英語で発表することが好き」事前
Ⅲ 研究内容
1 研究仮説
小学校外国語活動において,目的意識・相手意識
をもって積極的にコミュニケーションを図ろうとす
る態度を育成するには,教師が行う形成的評価及び
児童が行う自己評価・相互評価の工夫が有効なので
はないか。
2 児童の実態の分析
6月に研究協力校A小学校第5学年児童(14名),
第6学年児童(10名)を対象に意識調査を行ったと
ころ,第5学年では「外国語活動の授業が好き」
と答えた児童が100%,第6学年では「外国語活動
の授業が好き」「どちらかといえば好き」と答えた
児童が100%と全員が好感をもっていると言える。
しかし,第6学年では,「英語で発表すること」に
ついて否定的な回答をした児童が40%(図1),「友
達の英語での発表を聞くこと」について否定的な
回答をした児童が20%おり(図2),発表をしたり
聞いたりすることに関する指導の必要性が明らかに
なった。また,グループ活動について肯定的な回答をした児童は,第5学年では100%,第6学年で
は90%となり(図3),友達と楽しく関わることができるグループやペアでのコミュニケーション活動
を積極的に授業に取り入れることにより,コミュニケーション能力が向上すると考える。
3 単元を貫く言語活動を設定した単元計画の活用
外国語活動の目標にある学習指導要領の三つの柱を意識しながら,目的意識・相手意識のあるコミ
ュニケーション活動を展開するため,単元で付けたい力に合った言語活動を設定し,毎時間目標を提
示した。これは,平成24年度当センター研修員石田智之教諭による「単元を貫くタスクを取り入れた
“Hi, friends!”の活用」の実践をA小学校向けに再構成したものである。
4 連携協力校における評価に関する調査(17校,45名回答)
評価の取組として,89%の教員が振り返りカードを活用し
ている。また,80%の教員が,積極的にコミュニケーション
を図ろうとする態度の育成を図るために,「英語の言い方のよ
いところを認め,ほめる」と「互いのよいところを認め合う
場の設定と相互評価」が有効であると回答している。一方で
「しっかりできているか確認」が24%,「きめ細かく形成的評
価」が9%と少数にとどまったことから,学習の把握や評価
に課題があることも分かった。
5 評価の工夫
(1) 形成的評価
学習指導における指導と評価は表裏一体である。積極的に
コミュニケーションを図ろうとする態度を育成するには,単
元を貫く言語活動を展開する中で,学習過程に沿いショート
スパンで支援しながら,それを学習意欲の向上につなげるこ
とや,教師が指導の途中で児童の習熟の度合いを的確に把握
し,指導改善へ結び付けることが肝要である。これを基に次の
図2 発表を聞くことに対する意識
図3 グループ活動への意識
図4 振り返りカード
楽しい93%
楽しい50%
どちらかといえ
ば楽しい 30%
どちらかといえば
楽しくない 7%
どちらかといえば
楽しくない 20%
5年
6年
「友達の英語での発表を聞くことが楽しい」事前
好き 86%
好き 70%
どちらかといえ
ば好き 14%
どちらかといえ
ば好き 20%
どちらかといえ
ばきらい 10%
5年
6年
「グループ活動が好き」事前
①~⑤を実践した。①「表情」「声量」「ジェスチャー」「アイコンタクト」などの態度面の観察によ
る評価,②ロールプレイやスピーチ,会話等のパフォーマンス評価,③ビデオ録画,④振り返りカー
ド(図4)への助言やジャーナル等のポートフォリオ評価,⑤児童と教師が授業の目標を共有するため
のルーブリック(評価指標)の明示(表1)。
(2) 自己評価・相互評価
児童は,自己評価により自分の習熟の度合いを確認する。また,友達との相互評価により,自分が
できることや改善点を明らかにすることで,学習を自分だけでなく学級の学びへと広げることができ
る。「振り返りカード」を活動の区切りで使用し,ショートスパンで評価した。授業の終末でのコミ
ュニケーション活動では英語表現に十分慣れ親しんでいることが欠かせないため,ルーブリックには
「~することができる」という表現を使用した(表1)。これにより,活動と活動の間で児童が自分の
達成度を確認することができる。最後の振り返りで,「今日
の英語の会話を頑張った,できた(グッ度)」「友達のいい
ところを見付けた(ファイン度)」「言い方が分かった(ア
ンダースタン度)」の3つの度「3D」に着目させるように
した。また,相手意識をもち,自分の考えを伝えるコミュニ
ケーション活動で,英語が通じたかどうかを友達同士で確認
する場面を大切にした。そして,会話場面で互いに相手を認
めたり,共感したりできるように,相づちの例(表2)を示し,
授業全体を通して双方向の会話になるようにした。
6 検証と考察
(1) 検証授業1
①対象 A小学校 第5学年
②単元名 I like apples. I don't like lemons. Who am I?「わたしはだあれ?」なりきりクイズ大会をしよう!
(副教材: I like apples.『好きなものを伝えよう』“Hi, friends! 1”Lesson 4)
③指導計画(5時間)次 主な学習活動と言語材料 時間 次 主な学習活動と言語材料 時間
・日本語と英語の音の違いに気付き,果物 ・好きなものを尋ねる表現に慣れ親しみ,好
1 や動物等を表す語と,好きなものや嫌い 1 きなものや嫌いなものについて,積極的になものを表す表現を知る。 4 伝えようとする。 1I like ~. I don't like ~. ・「Who am I? クイズ」をつくる。
・好きなものや嫌いなものを表す表現に慣 A: Do you like ~? B: Yes, I do. /No, I don't.
2 れ親しむ。 1・グループ内で,好きなものを伝え合う。 ・好きなものや嫌いなものについて,積極的
I like ~, ~ and ~. I don't like ~. に伝えようとする。・好きなものを尋ねる表現に慣れ親しむ。 ・仲間を見つける。・果物などについて好きだと答えそうな友 5 ・「Who am I? クイズ大会」をする。 1
3 達を予想し,尋ねる。 1 A: Do you like ~? B: Yes, I do./ No, I don't.A: Do you like ~? B: Yes./No.[Yes, I do. I like~./No, I don't. I don't like~.]
④内容
児童が興味・関心をもちやすい「『わたしはだあれ?』なりきりクイズ大会をする」という単元の
ゴールを設定し,友達とのコミュニケーション活動を意識的に毎時間の学習活動へ組み込み,児童相
互の英語でのやりとりを見取った。自分の習熟の度合いを意識できるよう,自己評価を蛍光ペンでマ
ークすることによる振り返りを設定した。これは,授業中の活動と活動の間に極めて短時間で,コン
パクトに自己評価ができる方法である。指導者は,学習の途中で一人一人の活動に関わり,指導や支
援を続けた。児童は,“Do you like~?”“Yes, I do. / No, I don't.”の言い方を使いながら,情報収集を
行うために友達と積極的に関わった。「Who am I? クイズ」は,なるべく友達に簡単には解かれない
ような順序で出題するという条件を付け,グループで協力しなくてはならない状況を作った。また,
ALTや学級担任とも十分な連絡を取り合い,TTの授業に臨んだ。
表2 相づちの例
Me, too. Great! Good!Very good! I like ~ too. Really?
表1 ルーブリックの例
評価指標
ゲームやチャンツで行きたい国をたず1 ねたり,答えたりすることができまし
たか?
2行きたい国を先生に伝えることができましたか?
3 行きたい国について英語でインタビューできましたか?
(2) 検証授業2
①対象 A小学校 第6学年
②単元名 I can do this! 自信をもってできることを紹介しよう!
(副教材: I can swim.『できることを紹介しよう』“Hi, friends! 2”Lesson 3)
③指導計画(4時間)次 主な学習活動と言語材料 時間 次 主な学習活動と言語材料 時間
・動作を表す語句や「できる」「できない」 ・できるかどうかを尋ねたり答えたりする表という表現を知り,言語にはそれぞれに 現に慣れ親しむ。違いがあることに気付く。 ・「Who am I ?クイズ」を作る。
1 ・指導者のできることや,できないことに 1 3 ・自分ができることを考え,その絵をワーク 1ついての話を聞く。 シートへ描く。
・“I can ~. ”“ I can't ~.”で play, swim, cook, A: Can you ~?ride などを使った動詞句に慣れ親しむ。 B: Yes, I can./ No, I can't.
・動作を表す語句や「できる」「できない」 ・自分ができることを考え,友達と積極的にという表現に慣れ親しみ,できるかどう 交流しようとする。
2かを尋ねたり答えたりする表現を知る。
1 4・「Who am I ?クイズ」をする。
1・友達ができることを予想し,“Can you ~? ” ・自分を紹介する。
でインタビューし合う。 A: Can you swim?A: Can you ~? B: Yes, I can./No, I can't. B: Yes, I can./ No, I can't. I can ~.
④内容
児童が英語でやりとりする必要感をもてるよう,単元を通して「自分やクラスのみんなの『できる
こと』を探して紹介すること」を課題とし,単元を貫く言語活動を設定した。言い方が分からなかっ
たり間違ったりしても,大丈夫であると伝え,成功体験を積ませることで安心感や達成感を味わえる
よう配慮した。また,できることを英語で伝え合うコミュニケーション活動を各時間の後半に行い,
友だちの新たな面を発見することに喜びを感じられるようにした。そして,“Hi, friends! 2”紙面
の動作について,相手ができるかどうかを予想してインタビューできるようにした。形成的評価,自
己評価・相互評価をショートスパンで行うことにより,自分ができることを自信をもって紹介したり,
温かく認め合ったりするような活動を展開した。また,黒板を利用して授業の流れの視覚化を図り,
見通しをもてるようにした。なお,自己評価は,第5学年同様にショートスパンで3つの度「3D」
を意識して行った。
(3) 検証授業3
①対象 A小学校 第5学年
②単元名 Thank you.アルファベットを使って,メッセージカードをつくろう!
(副教材: What do you want?『アルファベットをさがそう』“Hi, friends! 1”Lesson 6)
③指導計画(5時間)次 主な学習活動と言語材料 時間 次 主な学習活動と言語材料 時間
・身の回りには様々なところにアルファベ ・積極的にアルファベットの大文字を読もうットの大文字が使われていることに気付 とするとともに,欲しいものを尋ねたり答
1くとともに,アルファベットの大文字と
1 4えたりする表現に慣れ親しむ。
1その読み方を知る。 A-Z,21-30A: How many? B: Twenty. A: What do you want? B: K, please.A: What's this? B: A-Z. A: OK. Here you are. B: Thanks.
・アルファベットの大文字とその読み方と ・メッセージカードに必要なアルファベットを一致させるとともに,21 ~ 30 の数に慣 の大文字等を尋ねたり答えたりしようとす
2 れ親しむ。 1 る。A-Z,21-30 ・メッセージカードに込めた思いを紹介し合A: Here you are. B: Thank you. 5 う。 1
・アルファベットの大文字とその読み方を A: What do you want?一致させるとともに,欲しいものを尋ね B: Flower, please.
3 たり答えたりする表現に慣れ親しむ。 1 A: How many? B: Three(, please).A: What do you want? B: A, please. A: Here you are. B: Thank you.A: Here you are. B: Thank you.
④内容
お世話になった人へ感謝の気持ちを伝えるメッセージカードを作ることを単元のゴールとし,メッ
セージに不足しているアルファベットを指導者やALTからもらうコミュニケーション活動を通し
て,欲しいカードを尋ねたり,伝えたりする言い方に慣れ親しんだ。“What's this? What do you want?”
の質問への答えが適切かどうかを指導者とALTが確認した。そして確認してもらった児童同士でカ
ードをもらい合う活動を通し,アルファベットの言い方に慣れ親しむとともに,ファイン度を意識す
ることができた。ALTの発音や視聴覚教材を手本に,ショ
ートスパンで習熟の度合いを確かめた。児童は,実際にメッ
セージカードにプレゼントを添えて家族等に渡すという目的
意識・相手意識をもって活動に取り組んだ(図5)。指導者は,
児童を“Excellent. / Good job. / Very good.”とほめ,もう少し
の児童には,“Nice try. / That's OK.”と励ましながら,十分に
慣れ親しませることで自信をもてるようにした。
(4) 検証授業4
①対象 A小学校 第6学年
②単元名 Let's go to Italy. おすすめの国を紹介し合おう!
(副教材: Let's go to Italy.『友達を旅行にさそおう』“Hi, friends! 2”Lesson 5)
③指導計画(5時間)次 主な学習活動と言語材料 時間 次 主な学習活動と言語材料 時間
・世界の様々な国についてのクイズをして, ・チャンツをして,紹介する表現に慣れ親し国旗と国名を結びつける。 む。
・教師やALTがどこの国に行きたいのか ・テキストのさくらとひかるのおすすめの国
1 を当てる。 1 4 を推測させる。 1A: Where do you want to go? ・ワークシートを基におすすめの国を紹介すB: I want to go to ~. る練習をする。Italy, America, Australia, Brazil, China, A: Where do you want to go?Egypt, France, Greece, India, Japan, Spain B: I want to go to ~. You can eat[see/play]~.
・キーワードゲーム,ミッシングゲーム, ・自分のおすすめの国を紹介する練習をしてステレオゲーム等をする。 から,グループで発表をする。
2・どこの世界遺産か考える。
1・友達のおすすめの国についての紹介を聞い
A: Where do you want to go? てどう感じたか,感想を交流し合う。B: I want to go to ~. A: Hello. I like ~. I want to eat ~.
I want to eat[see/play] ~. 5 You can see ~. What country? 1・友達に行きたい国をインタビューする。 That's right. I want to go to ~.・おすすめの国を表すカードをもらうコミ Do you like ~?
3 ュニケーション活動をする。 1 B: Nice dream. Nice country. Let's go to ~.A: Where do you want to go? B: I want togo to ~. A: What do you want? B: ~, please.
④内容
おすすめの国を相手に紹介するためには,「自分が~したい」という
表現から,相手を意識して「あなたは,そこで~できる」という表現に
していくことが大切である。4,5時間目に,“You can ~.”を使い,お
すすめの国を紹介する活動を行った。相手を意識することで,伝えたい
内容に必然性が生まれた。自分の伝えたい内容が伝わるかどうかを確認
するために,指導者に紹介する活動をした。意欲の向上につながるよう,
指導者や児童相互のサインカード(図6)へのチェックを行った。
(5)抽出児童の変容
①児童A(第5学年)
事前意識調査で「友達の発表を聞くこと」「英語で発表するこ
と」を「どちらかと言えばきらい」と答えていたが,11月の意識
調査では「どちらかと言えば好き」に変化している(図7)。先生
や友達と話す活動を重ねた結果,「欲しいアルファベットカード
を英語でちゃんと言えた」という「できる」ことが増えた。「積
極的に話すことが大切」との自由記述から自分の考えを伝えようとする意識が高まったと推察される。
図5 メッセージとプレゼントの例
図6 「サインカード」
図7 児童Aの変容
1
2
3
4
5
1 外国語活動が好
き
2 進んで授業に参
加
3 友達に質問する
ことが好き
4 友達の発表を聞
くことは楽しい
5 英語で発表する
ことが好き
6 グループで発
表することが好き
7 英語が使えるよう
になりたい
8 英語は大切だと
思う
児童A6月
児童A 11月
②児童B(第6学年)
事前意識調査で児童Aと同様,発表に関して「どちらかといえ
ばきらい」と答えていた(図8)。Lesson 3の第1次では,「大き
な声ではっきりと話したい」と振り返っている。事後意識調査で
全体的に肯定的な評価をしているのは,相互評価による友達の励
ましや目標ができたことで自信をもったためと考えられる。到達
目標を意識することで,「友達へ質問」「発表を聞く」「グループ
で発表」の達成感につながった。また,「ジェスチャーを使って
相手に伝えたい」との自由記述から,相手を意識した積極的
なコミュニケーションを図ろうとしていることが分かる。
(6) 分析と考察
①コミュニケーションを支えるスキルと意欲の向上
単元の振り返りで,第5学年では「英語の意味が分かり,すらすら言えるようになった」「前まで
は,あまり覚えることができなかったが,今はほとんど覚えられてよかった」「先生に教えてもらっ
て覚えることができた」,第6学年では「自分のできることをはっきり発表できた」「英語の会話がで
きるようになったし,友達の言っていることも分かった」等,「できる」ことの記述が多かった(図9)。
評価の観点に基づいて自己評価・相互評価を行い,外国語の音声や基本的な表現に十分に慣れ親しん
だ結果,自信をもつことができた。スキルの向上が意欲の向上につながったと考えられる。
②外国語でコミュニケーションを図ろうとすることへの意識
「外国の人が話しかけてきたらどうするか」のアンケートに「英語で話す」と回答した児童は,第
5学年は,6月と11月が93%,第6学年は,6月は50%,11月は40%で外国人と英語で話すことに抵
抗感も見られるが,全体の半数の児童が,「日本語と英語を交ぜて答える」「できる限り英語で答える」
など,手段をより具体的に記述している。また,第6学年で6月に「だまっている」と回答した児童
が10%見られたが,11月には0%となった。外国人にも分かりやすい日本語やジェスチャー等も使
いながら,何とかしてコミュニケーションを図ろうとする積極的な態度の表れと考えられ,外国語
でコミュニケーションを図ろうとする意識の向上が認められた。
Ⅳ 成果と課題
1 積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成
形成的評価及び自己評価・相互評価を工夫し,児童が目的意識・相手意識をもって意欲的に外国語
に慣れ親しむ学習活動に取り組んだ結果,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成す
るのに有効であることが分かった。
2 英語学習に対する意欲向上
英語学習に対する意欲の向上に一定の有効性が認められた。本県の課題解決の有効性については,
今後も検証を継続したい。
3 今後の見通し
形成的評価を授業改善へ生かす方策や,自己評価・相互評価のための評価カードを一層効果的に使
用するための方策等について追究したい。
<参考文献>
国立教育政策研究所教育課程研究センター(2011)「小学校外国語活動における評価方法等工夫のための参考資料」教育出版.
酒井英樹(2014)『小学校外国語活動 基本の「き」』大修館書店.
直山木綿子(2014)『小学校外国語活動のツボ』教育出版.
樋口忠彦・加賀田哲也・泉惠美子・衣笠知子(2013)『小学校英語教育法入門』研究社.
文部科学省(2008)『小学校学習指導要領解説 外国語活動編』東洋館出版社.
図8 児童Bの変容
図9 「できる」記述の児童の割合
29%
30%
79%
90%
5年
6年
7月 11月
1
2
3
4
5
1 外国語活動が好
き
2 進んで授業に参
加
3 友達に質問する
ことが好き
4 友達の発表を聞
くことは楽しい
5 英語で発表する
ことが好き
6 グループで発表
することが好き
7 英語が使えるよう
になりたい
8 英語は大切だと
思う
児童B6月
児童B 11月