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工学的手法を用いたジャンボタニシの 捕集および殺貝技術 柳生義人 佐世保高専・電気電子工学科・准教授 [email protected]

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工学的手法を用いたジャンボタニシの

捕集および殺貝技術

柳生義人 佐世保高専・電気電子工学科・准教授

[email protected]

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【背景】 ジャンボタニシによる被害

Apple snail, Pomacea canaliculata.

►スクミリンゴガイ (俗称 :ジャンボタニシ)≒ラプラタリンゴガイ ►南アメリカ原産の淡水性の大型巻貝(殻高8cm) ►1980年代にアジア諸国に食用を目的として導入 ■ 日本には1981年に輸入される. ►1984年に水田作物への食害が問題化 ►水稲に対する最大の害虫 →「世界の侵略的外来種ワースト100」リスト選定種

ジャンボタニシによる食害

長崎県佐世保市江上町の圃場

摂餌の様子 水稲を加害する様子

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【背景】 ジャンボタニシの産卵行動

►産卵時期: 4月から10月 ►性成熟: 孵化から3ヶ月程度 ►産卵数: 2000~8000 個/年 ■ 産卵は必ず夜間に水上で行われる.

個体数の維持(分布の拡大) 景観の阻害

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【背景】 ジャンボタニシの分布 4

<東南アジアでの分布> <日本での分布>

http://www.naro.affrc.go.jp/karc/applesnail/ecology/024906.htmlより

2007年

► 東南アジアに広く分布 →東南アジアでも食害の報告あり ►日本では西日本を中心に分布 →特に九州は被害が多い ► 分布域は徐々に北上している。 →温暖化の影響か?

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【背景】 日本での発生面積・被害面積

►西日本を中心に分布し,九州の発生面積は全国の半数を超える。 ►被害の大半は九州に集中している。 ►ジャンボタニシの侵入は突発的な被害につながる=危険と隣り合わせの稲作 八重山毎日新聞(2006/1/11)・・・ 二期作を中心に約30ヘクタールで被害が発生。 被害額は2000万円にのぼる。 読売新聞(201009/28)・・・・・・・・・ 岡山県南部の水田では,食害が24年連続で確認され, 今年は昨年より2ヘクタール多い12ヘクタールとなった。 被害額推定で1600万円に上る可能性がある。

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http://www.naro.affrc.go.jp/karc/applesnail/ecology/024906.htmlより作成

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【背景】 メニュー 6

中国福建省

日本石川県

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本コンセプトによる防除法の優位性 耕種的防除 殺貝剤

(登録農薬) 人為的 防除

生物的 防除

機械的 防除

銅粉含有塗料 工学的手法

特徴

・水位を低く保つことで食害を防除(浅水・落水管理) ・取水口への網の設置 ・田畑転換

・殺貝剤(登録農薬): 石灰窒素,IBP粒剤(キタジンP),スクミノン など

・人手による捕獲 ・卵塊の除去,落水

天敵 (アイガモ,魚類,寄生虫など)

貝を耕耘機で破砕

・忌避効果を示す銅を含んだ塗料を壁面に塗布し産卵を抑制

・工学的手法を用いた食害防除,殺貝,捕集,産卵抑制 ・効果が環境に残存しない =エコロジカル

課題

・長雨や突発的な降雨への対応

・環境負荷 ・施用回数の制限

・重労働 ・慣れが必要

・被害が発生する時期には使用不可

・田植え後は,実施不可

・環境負荷 ・施工

・実用化

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現行の防除法(組み合わせ) =決定的な防除方法は確立 されていない。

世界的に類のない防除法 応用展開に期待

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ジャンボタニシなど水田作物に甚大な食害を及ぼす腹足類に

対する駆除技術として、工学的手法を基盤に腹足類の防除へ

のイノベーションを打ち出し、電気および超音波による環境に配

慮した捕獲・殺貝を実現する!

①世界的に類のない工学的手法による腹足類の捕獲・殺貝・行動制御法を提供

②環境に残存しないエコロジカルな捕獲・殺貝・防除を実現

③駆除費用、労力の低減。生息域での行動制御、個体数コントロールに貢献

④個体数低減により鮮紅色卵塊が減少することによる景観の改善。

⑤直播栽培(籾を直接水田に播種する方法)の実現。

本提案技術のモチベーション 8

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【技術紹介】工学的手法を用いた防除法の検討 ・電気ショックによる行動抑制効果 ・オゾンによる行動抑制効果(<1ppm) →食害 防止 →産卵(登壁)防止(AC3V) →侵入防止(60V/m) →不活化(閉じこもり)

・電気による行動制御 →走電性の発見 →走性を利用した捕集

・超音波による殺傷効果 →超音波暴露による殺貝

AC Voltage

(a)

(b)

(c)

(d)

※出願特許※ 「腹足類生物の捕集装置」の開発

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Core ideas & technologies

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【技術紹介】ジャンボタニシ群(成貝)の捕集 10

►印加電圧,電圧波形,周波数などを工夫することでジャンボタニシの行動を制御する ことができる →走電性

移動方向

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【技術紹介】超音波による殺貝(成貝)

►超音波を照射することでジャンボタニシを100%殺貝できる。 ►成貝については,目立った殻の損傷はみられず即死しない。 ►キャビテーションにより生成される衝撃波の寄与が示唆される

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(b)歩行不全 (a)内臓の損傷

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【まとめ】 従来技術とその問題点

ジャンボ タニシ

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(1)食害防除技術

浅水・落水管理・・・・・・ 長雨や突発的な降雨に対応 できない

殺貝剤(登録農薬) ・・環境への影響 減農薬・無農薬の要求

(2)捕獲・殺貝技術,産卵防止技術

人為的防除・・・・ 重労働,慣れが必要

銅粉含有塗料・・ 環境への影響,施工 トラップ(食性を利用)・・ 誘引餌の交換・補充,水質の悪化, メンテナンス

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【まとめ】 新技術の特徴・従来技術との比較

工学的手法による防除

世界的に類のない工学的手法によるジャンボ タニシ類の捕獲・殺貝・行動制御法を提供

環境に配慮した防除

環境に残存しないエコロジカルな捕獲・殺貝・防除を実現

メンテナンスフリー,労力低減

駆除費用、労力の低減。生息域での行動制御、個体数コントロールに貢献

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【まとめ】 想定される用途および分野

生息域や飼育環境下でのジャンボタニシ類の捕獲・殺貝・食害防除・行動制御

腹足類防除に伴い実現する直播栽培の普及よる農業の労力・生産コスト削減

行動制御や個体数抑制によるジャンボタニシを利用した除草

農業分野での利用

その他には,

生物飼育分野

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【まとめ】 実用化に向けた課題 <技術開発の現状> 屋内実験にて,高い割合で捕集が可能 超音波によりほぼ100%の殺貝率を達成 捕集・殺貝要因の解明

<実用化に向けた課題> 屋外や実地での捕集殺貝効果の実証(遂行中) 最適化および装置の開発

電源および超音波発振器の開発 =最適化されたプロトタイプを製作する技術。 捕集殺貝装置の実用化・省エネ化 =自然エネルギー(太陽光パネル,小型風力発電etc.)の利用

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【まとめ】 企業への期待

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本技術に関する知的財産権

佐世保工業高等専門学校 総務課 企画係 TEL: 0956-34-8415 FAX: 0956-34-8409 e-mail: [email protected]

発明の名称 : 腹足類生物の捕集装置 出願番号 : 特願2011-207327 出願人 : 国立高等専門学校機構 発明者 : 柳生義人,一力滉希,松原裕樹,

南耕平,末永浩司

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