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1
テーマ:転倒てんとう
転落てんらく
から皆みんな
を守まも
るナリ~
施設名:伊勢い せ
赤十字せきじゅうじ
病院びょういん
部署名:看護部 4 Bヨンビー
病棟びょうとう
発表者:宮みや
浜はま
朋子と も こ
テーマ選定理由
4B 病棟は消化器系の外科病棟で、手術後は積極的に離床を促している。その中で、転倒・転落によく遭遇すると
感じる。患者・家族が安全・安心・安楽に過ごせる療養環境を整備することは、今年の部署目標である。そこで、転倒・
転落予防をテーマに TQM活動をしていくことにした。昨年の内科系病棟の TQM活動を水平展開することとした。
活動計画表
項目/期間 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 担当者
テーマ選定 ****** 全員
現状把握 ****** *** 全員
目標設定 * 全員
要因解析 **** ** 全員
対策立案 **** ** 全員
対策実施 **** *** ** 全員
効果確認 *** 全員
標準化 ** 全員
現状把握
昨年の4B病棟の転倒転落の件数を調査した。 その結果病院全体 516件中 4B病棟は 46件、病院全体の約 2
割を占めていた。 次に、4B 病棟看護師へのアンケート、インシデントレポート報告書の分析を行った。その結果、
内科系病棟の 3 つの条件(70 歳以上、入院1週間以内、持続点滴施行中)に該当する患者は、26%であり、持続点
滴のみが原因となっている報告はなかった。そこで、4B病棟独自の要因を見つけることにした。
インシデントレポート報告書の事例を、様々な視点から分析した。時間帯に着目し分類したところ、46 件の転倒
件数のうち 40件が夜間の転倒転落であることがわかった。しかし、夜間だけでは、転倒の要因として、範囲が広く、
具体性にかけ、有効的な対応をできないと考えた。次に、転倒転落につながった状況について着目し、分析を行っ
た。その結果、「トイレに行こうとした」「トイレから帰る途中」などの排泄行動時の転倒転落が 46件中 26件、夜間の
排泄行動時の転倒転落も26件中 22件と、多いことがわかった。そこで、「夜間の排泄行動」が転倒転落の要因とし
て大きいと考え、「夜間の排泄行動時の転倒転落」をなくすことを目標に絞り、活動に取り組んでいくことを決めた。
1クール目
:実施
:予定
2 クール目
:実施
:予定
2
「4B病棟で転倒転落が多い」
46件
40件
22件「夜間の排泄行動時に転倒転落が多い」
「夜間に転倒転落が多い」
目標設定1
昨年度 1年間で 22件あった「夜間の排泄行動時の転倒転落」を、月 0件にすることを目標とした。(1年間の件数を
みることは困難であり、月平均 1.8件あった「夜間の排泄行動時の転倒転落」を月 0件にすることを目標とした)。
要因解析1
フィッシュボーンA 『4B病棟で夜間の排泄行動時に転倒転落が多い』を作成した。フィッシュボーンAより重要要因
として、「看護師の説明内容にばらつきがある」「看護師のアセスメント不足」「環境整備ができていない」「必要照明が
ない」があがった。
フィッシュボーンA
起床時半覚醒
夜間トイレに起きる
眠剤
利尿期
持続点滴が多い
尿回数増加
ふらつく
できると思い動く
看護師が昼間に離床を促す
患者
看護師の説明内容にばらつきがある
睡眠中だと起こしずらい
トイレ誘導しない
排泄パターンが把握しずらい
暗い
4B病棟で
夜間の排泄行動時に転倒転落が多い
環境
看護師
Nsがスリッパを整えない
スリッパ散乱
ナツメ球が灯かない
ルートにひっかかる
トイレまでの道のりに多数の物がある
看護師のアセスメント不足
必要照明がない
環境整備ができていない
図 1 のようにインシデントレポート報
告文を分析し、4B 病棟独自の転倒転
落の要因を絞りこんだ。 また、夜間の
排泄行動時の転倒転落 22件に絞り込
んだ段階で、前述の 3B 病棟の 3 条件
にならい、再度分析したところ、約半数
が「眠剤使用」「80 歳以上」の項目に、
あてはまった。
図 1.転倒転落の重要な要因の絞り込み
3
重要要因の検証1
第 2回アンケート調査を実施し、「看護師のアセスメント不足」「看護師の説明内容にばらつきがある」「看護師が環
境整備をできていない」「必要照明がない」という4つの重要要因の検証を行った。結果、「看護師の説明内容にばら
つきがある」について、看護師の説明内容に問題は見られなかったが、必要な患者に説明できているとは言えず「看
護師が必要な患者に必要な説明ができていない」と考察し、「看護師のアセスメント不足」に含めた。また、「必要照明
がない」は、「環境整備が出来ていない」に含めた。その結果を以下の表に示す。
対策の立案1
実用性
緊急性
持続性
効果
評価
3 3 3 3 12
3 2 3 3 11
3 2 3 2 10
3 2 3 2 10
0 1 3 2 6
3 3 3 3 12
夜間の排泄行動時の転倒転落をなくす
転倒転落防止フローチャートを作成する
ホワイトボードを作成する
夜勤前のカンファレンスで情報共有する
各チームで週1回のカン
ファレンスを実施し、朝の会で共有する。
病室前タッチパネルにシールを張る
環境整備チェックリストを作成する
4B病棟看護師の
アセスメント能力を向上させる
環境整備を統一する
具体策対策目標
※評価点10点以上を採用とする。
経験年数の差によるアセスメント能力の差をなくすために情報共有する
4
効果の確認1
対策実施期間は、8月 15日~10月 15日までの2カ月間を予定した。しかし、8月 15日~9月 15日の1か月間に 6
件の転倒転落が発生し、そのうち 1 件が「夜間の排泄行動時の転倒転落」で目標達成できなかった。転倒転落の内
容を分析すると、離床センサー作動の確認不足が原因であり、防ぎ得た転倒転落であった。そこで、再度 PDCA サイ
クルを回し挑戦することにした。
目標設定 2
再度、「夜間の排泄行動時の転倒転落」を月 0件にする、を目標に設定した。
要因解析 2
1 クール目の対策で目標達成できなかった原因を明確にするために、新たにフィッシュボーンを作成した。
フィッシュボーンB
対策中にも関わらず病棟で
夜間は排泄時に転倒・転落が多い
環境
看護師
日勤終わりの環境整備が不十分
ホワイトボードが更新されていない
必要な対策ができていない
対策実施への理解不足
夕方の緊急入院が多い8月に比べ患
者が増え多忙
対策実施のタイミングがわかりづらい
フローチャートを用いての選別にばらつきあり
離床センサー設置に手間がかか
る
離床センサ-設置可能なベッドが限られて
いる
離床センサーの接続部分が分かりづらい
フローチャートの場所がわかりづらい
対策実施への意識が低い
環境整備チェックリストの場所がわかりづらい
環境整備チェックリストの内容に過不足がある
フローチャートの表現が曖昧
フローチャートの表現が曖昧
対策実施のタイミングがNs個々に違うため抜けやすい
フローチャートで黄色に選別された患者に離床センサーを選択
する人が少ない
5
重要要因の検証 2
対策の立案 2
実用性
緊急性
持続性
効果
評価
3 3 2 3 11
3 2 3 3 12
3 3 3 3 12
3 2 3 2 10
3 3 2 3 11
看護師に周知する
環境整備チェックリストの内容を見直す
朝の会・病棟会で再度告知する
転倒転落防止フローチャートの表現を明確にする
環境整備チェックリストの項目の過不足を整理する。
転倒転落防止フローチャートと環境整備チェックリストを表裏1枚にし、定位置を決める
各チーム、毎日のカンファレンス時に転倒転落防止フローチャートを用いカンファレンスを行う。
夜間の排泄行動時の転倒転落をなくす
転倒転落防止フローチャートを用いたカンファレンスを看護師2人以上でする
転倒転落防止フローチャートと環境整備チェックリストの場所をわかりやすくする
※評価点10点以上を採用とする。
転倒転落フローチャートを分かりやすく変更する
目標 対策 具体策
6
対策★離床センサー設置★夜勤前カンファレンスで情報共有★チームカンファレンスで対策相談★就寝前・夜勤巡視時にトイレ誘導、声かけ、Ba誘導
★排泄行動時、排泄終了時まで見守り★病室の移動の検討★チェックリスト使用し、環境整備
Red患者
対策★離床センサー使用検討★就寝前・夜勤巡視時にトイレ誘導、声かけ、Ba誘導★チェックリスト使用し、環境整備
Yellow患者
対策★チェックリスト使用し、環境整備
Blue患者
いいえはいいいえはい
説明して、排泄時、確実にナースコールを押すことができますか?
説明して、排泄時、確実にナース
コールを押すことができますか?
③にチェックあり①②どちらか一方か両方に
チェックあり
□①80歳以上□②眠剤使用□③排泄時に見守り・介助が必要、尿器の使用
日勤リーダーさんへ
チーム員への声かけ、お願いします。
図1:転倒転落防止フローチャート
効果の確認 2
【有形効果】
・2 クール目(9月 15日~10月 15日)夜間の排泄行動時の転倒転落 0件、さらに期間中の転倒転落も 0件と
なり、目標達成となった。
7
【無形効果】
・転倒転落予防をしようとする意識が向上した。
・アセスメントをチーム内で共有しようとする意識が向上した。
・夜勤で転倒転落リスクの高い患者の情報共有を病棟全体ですることで連携が高まった。
・離床センサーの積極的な使用の意識が高まった。
・病棟全体の環境整備の質が向上した
【波及効果】
・ナツメ球の切れが 15個発見できた。 (1クール目:13個 2クール目:2個)
・離床センサーとベッドの接続部分に目印をつけたことにより使いやすくなった
・離床センサー設置カードを使用することで離床センサーを設置している患者がわかりやすくなった
・環境整備の統一が図れた
・助手さんとの連携がより向上できた
標準化と管理の定着・教育
反省と今後の課題
対策実施期間中は、転倒転落を減らすことができたが、その後テーマ対象以外の転倒転落もおこっており、今後さ
らなる分析が必要と考える。
8
対策後の追跡調査
対策実施後の定着と標準化の現状について、2015年 1月~3月の転倒転落件数を、追跡調査した。その結果、3カ
月間で 9 件の転倒転落があった(グラフ1)。(前年度の同月比は 13 件で、対策後の転倒転落件数は減少していた)。
そのうち、夜間の転倒転落は 6件、TQM活動の対象となった「夜間の排泄行動時の転倒転落」は 3件発生していた。
対策を講じたはずの転倒が発生していることについて、分析し、TQM活動の定着や標準化の現状を調査することにし
た。
転倒事例について、対象となった 3 件の
事例・その他の夜間の転倒転落事例 3件を
中心に分析を実施。その結果、転倒の原因
として、フローチャートで評価した時点から、
患者の急な状態の変化(身体的、精神的)
があり、変化した際、すぐに再評価ができ
ず、対応が遅れたために転倒転落が起き
てしまった、フローチャートの評価をする際
に、判断に迷い、評価を甘くしてしまい、転
倒転落が起きてしまったことがわかった。
刻々と変化する患者の状態に合わせて再評価、対応することは、人手の少ない夜間では特に難しい。しかし、日中
から必要な対策を講じ、臨機応変な評価を心がけることができれば、転倒転落を減らしていけると考える。また、 フロ
ーチャートの評価時に、判断を迷ったら、厳しく評価し、積極的に対策を行っていく意識付けが今後は必要であると考
える。
対策後のまとめ
この対策の結果インシデントレポート報告文の提出率が上がり、転倒転落を予防しようという病棟全体の風土がよ
くなったと考えることができる。さらに、重大事故につながるような転倒転落は発生しなかった。
転倒転落を予防するためには、患者の急な状態変化に対応できるよう努力すること、患者の転倒転落危険度の判
断・評価を厳しく行い積極的に行っていくことが必要である。そのためには、引き続き、現行のフローチャートと対策の
標準化と定着を目指し、活動を続けることが重要である。転倒転落を0にすることは難しいが、活動を続けることで、ス
タッフの転倒転落予防の意識向上にもつながり、様々な状況の転倒転落の予防につながるのではないかと考える。
この活動を他の病棟にも広め、病院全体の安全の向上を部署から発信していきたい。
日中 の
転倒
3件
排泄行動時
3件
不穏のため
行動不明2件
移乗時1件
夜間の
転倒
6件
グラフ1:転倒転落につながった状況