45
ESRI Discussion Paper Series No.146 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用一般均衡モデルの開発 by 川崎泰史・伴金美 June 2005 内閣府経済社会総合研究所 Economic and Social Research Institute Cabinet Office Tokyo, Japan

収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

  • Upload
    others

  • View
    1

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

ESRI Discussion Paper Series No.146

収穫逓増と独占的競争をとりいれた

日本経済の応用一般均衡モデルの開発

by

川崎泰史・伴金美

June 2005

内閣府経済社会総合研究所 Economic and Social Research Institute

Cabinet Office Tokyo, Japan

Page 2: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

ESRIディスカッション・ペーパー・シリーズは、内閣府経済社会総合研究所の研

究者および外部研究者によって行われた研究成果をとりまとめたものです。学界、研究

機関等の関係する方々から幅広くコメントを頂き、今後の研究に役立てることを意図し

て発表しております。 論文は、すべて研究者個人の責任で執筆されており、内閣府経済社会総合研究所の見

解を示すものではありません。

Page 3: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

1

収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+

川崎 泰史* ・ 伴 金美**

要旨

本論文では、収穫逓増下での独占的競争を明示的に取り入れた日本経済の応用一般均衡

モデルを作成した。本論文の特徴は、2000 年産業連関表をベースに 74 部門の社会会計表

を作成し、所得税、消費税および間接税の租税構造に基づいた均衡データセットを作成し、

収穫逓増下での独占的競争状態における規制緩和の経済効果が分析できるようにしたこと

である。シミュレーションでは、参入・退出規制やマークアップ率規制の有無が経済厚生

に与える影響が評価されている。また、炭素税導入による影響や、財政赤字削減のための

税制改革の評価を試みている。

Abstract

In this paper, a new applied general equilibrium model is presented, where

monopolistic competition under the economy of increasing return to scale is explicitly implemented. The equilibrium data sets are compiled from the 2000 Input-Output Tables released in 2004. Implementing monopolistic competition under the economy of increasing return to scale will contribute to evaluate the impact of regulatory reforms on the economy. Simulation results are illustrated in order to to evaluate regulatory reforms such as entry and quit regulation and markup regulations on the industrial structure and macro economic welfare. Other simulation results are also illustrated in order to evaluate the impact of introducing carbon tax or tax reforms for reducing government deficit on the economy.

+ 本稿の作成に当たり、経済社会総合研究所セミナーでコメンテーターをつとめていただいた島

澤諭秋田大学教育文化学部助教授をはじめ、セミナー参加者から数多くの有益なコメントをいた

だいた。ここに感謝申し上げたい。残された誤りは筆者の責任である。 * 内閣府経済社会総合研究所上席主任研究官 ** 大阪大学大学院経済学研究科教授、内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官

Page 4: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

2

目次 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 1.2000 年の日本経済の社会会計表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 1.1 部門分類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 1.2 屑・副産物の処理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 1.3 消費税の扱い ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 1.4 社会会計表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

2.モデルの構造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 2.1 企業行動モデル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 2.2 家計行動モデル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 2.3 一般均衡モデルとしての記述 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・15

3.規制改革のシミュレーション ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 3.1 規制改革の経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 3.2 収穫逓増モデル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 3.3 参入・退出規制と競争促進政策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・20 3.4 独占的競争力低減による競争促進政策 ・・・・・・・・・・・・・・20 3.5 技術革新と規制改革 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21

4.税制改革のシミュレーション ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26 4.1 炭素税 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26 4.2 財政赤字削減の税源 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28

おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 (参考1)弾性値によるモデルの感応度の相違 ・・・・・・・・・・・・・・・31 (参考2)日本経済一般均衡モデルのプログラム ・・・・・・・・・・・・・・33

Page 5: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

3

はじめに

貿易自由化や規制緩和の経済効果を分析するために、応用一般均衡(AGE:Applied

General Equilibrium)モデルあるいは計算可能な一般均衡(CGE:Computable General Equilibrium)モデルが広く使われているが、本論文では 2000 年産業連関表と国民経済計

算に基づいて日本経済の社会会計表を作成し、それをベンチマークとするモデルを作成し

ようとするものである。 内閣府社会経済総合研究所では、前身の経済企画庁経済研究所時代から、応用一般均衡

モデルの作成を手がけている。橘木・市岡・中島(1990)による税制の効果分析、伴・大

坪・川崎(研)・小野(稔)・松谷・堤・木滝・小野(博)(1998)による APEC 地域にお

ける貿易と投資の自由化の効果分析、伴・大坪・小野・松谷・山口(2000)による規制改革の

効果分析などの成果がある。 この中で、伴・大坪他(1998)で用いられたモデルは多地域・多部門の世界モデルであり、

米国パデュー大学GTAP(Global Trade Analysis Project)プロジェクトのHertel教授を中心

に開発が進められているモデルであり、データベースも定期的に更新されており、現在で

も FTA の経済効果分析など多くの貢献を行っている。一方、伴・大坪他(2000)で用いられ

たモデルは一国多部門モデルであり、オーストラリアのモナシュ大学政策分析センターの

The Impact Project の Horridge 教授を中心に開発が進められている ORANI-G モデルであ

り、規制緩和の効果分析に広く用いられている。GTAP モデルと ORANI-G モデルは、モ

デルとデータベースが公開されており、利用目的に応じて自由に変更することができる。

いずれも GEMPACK とよばれるソフトウェアで動作しており、世界各地に利用者が存在し

ており、モデル分析の分野で大きな影響力を持っている。 本論文では、GTAP モデルと ORANI-G モデルの経験を踏まえて、日本経済において解

決の迫られている諸問題を念頭に置きながら、2000 年産業連関表、国民経済計算勘定、直

接税・間接税・消費税などの税制度を考慮した社会会計表を作成し、それを均衡データセ

ットとする新たな応用一般均衡モデルを作成するものである。本論文の目的は二つあり、

第一は日本経済の社会会計表の作成であり、第二は収益逓増と独占的競争を明示的に取り

入れた日本経済の応用一般均衡モデルの作成である。本モデルは研究の初期段階のもので

あり、静学モデルの枠組にとどまるが、動学化を含めた拡張は容易である。 本論文では、モデル開発に用いたソフトウェアを GEMPACK から GAMS(General

Algebraic Modeling System)に変更している。GAMS は、初期段階で世界銀行が開発した

ソフトウェアで、線形計画、非線形計画プログラミングなどの最適解を求めるためのソル

バーとよばれるいくつかのプログラムが選択的に利用できることができる優れたインター

フェイスソフトで、GEMPACK と並んで応用一般均衡モデルの開発に広く用いられている。

特に、本論文では、米国コロラド大学の Rutherford 教授が開発した MPSGE(Mathematical Programming System for General Equilibrium analysis)を用いている。MPSGE は応用

Page 6: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

4

一般均衡モデルが、ゼロ利潤条件、市場均衡条件と所得定義式の三種類の方程式によって

記述される MCP(Mixed Complementarity Problem)問題であることに着目することで、モ

デルを MCP 問題として自動的に記述するためのインターフェイスを備えている。MPSGEを用いることで、複雑な生産関数や効用関数、税制度を取り入れた多部門モデルを記述す

るのに必要となる多大の時間と集中力を大幅に節約することができる。もちろん、MPSGEは収穫一定の一次同次モデルを前提とするが、モデルの記述を工夫することで収穫逓増モ

デルを扱うことも可能である。いずれにしても、GAMS を取り入れることで、分析対象と

なる新たな制度を取り入れるようなモデル開発の自由度が高まることが期待できる。特に、

Forward Looking 型多部門応用一般均衡モデルの開発には必須となろう。 1.2000 年の日本経済の社会会計表

応用一般均衡モデルの作成では、基準均衡の経済活動を表した社会会計表(Social Accounting Matrix:SAM)の作成から始まる。本モデルの開発にあたっては、2000 年産

業連関表をベースに、直接税部分を国民経済計算から補完して基準となるデータセットを

作成した。 1.1 部門分類

部門分類をどうするかは分析目的による。今回のモデル開発では、様々な応用分析に活

用していくベースのモデルになることを念頭に置いたので、環境分析、IT、高齢化などの

分析にも対応できるようできるだけ細かい部門分割を採用している。 具体的には、固定資本形成マトリクスの資本形成部門の分類にも対応していることから

統合中分類(104 部門)を基本に部門分割した。その上で、製造業はもともとの分類が非常

に詳細なので統合大分類を基本にし、IT 関連分野などでは中分類ベースで分類することに

した(電気機械類は、電子・電気機器、半導体、電子部品などに分割)。また、輸入関税や

内国間接税の税率が異なる部門については分割するようにした(たばこ、飲料)。高齢化に

関して医療関係の産業も重要になるので、医薬品は化学から分離した。地球温暖化関連で

炭素含有量が異なることから、原油、天然ガスは中分類では一つになっているが分けるこ

とにした1。以上のような観点から、農林水産業(4 部門)、鉱業(5 部門)、製造業(27 部

門)、商業・運輸部門(7 部門)、その他(31 部門)のあわせて 74 部門に分類した。なお、

1 原油と天然ガスは基本分類(517 行×405 列)の行部門では分かれているが、列部門は分かれ

ていない。そこで、投入構造は同一と仮定して、行部門の国内生産額の比率で原油・天然ガスの

列を分割した。

Page 7: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

5

表1.1 74部門の各種比率構成比 比率 税率 比率

総需要 国内生産 輸出/生産 輸入/需要 輸入税 純間接税 付加価値率 労働分配率

S01 耕種農業 1.3% 1.2% 0.1% 9.9% 2.0% 1.8% 63.7% 10.9%S02 畜産 0.3% 0.3% 0.0% 1.4% 7.0% 0.5% 25.0% 14.3%S03 林業 0.2% 0.2% 0.1% 15.6% 0.7% -2.7% 69.4% 29.5%S04 漁業 0.3% 0.3% 2.4% 10.4% 3.8% 2.6% 56.3% 36.4%S05 金属鉱物 0.1% 0.0% 1.4% 78.2% 0.0% -0.8% 47.8% 66.5%S06 非金属鉱物 0.2% 0.2% 0.5% 6.8% 0.0% 1.1% 36.7% 47.8%S07 石炭 0.1% 0.0% 0.0% 76.0% 0.0% -13.3% 42.5% 68.4%S08 原油 0.6% 0.0% 0.0% 85.8% 11.4% 1.9% 60.7% 28.8%S09 天然ガス 0.2% 0.0% 0.0% 76.9% 2.7% 2.5% 60.9% 28.8%S10 食料品 4.5% 4.3% 0.5% 7.7% 9.3% -1.0% 27.7% 50.1%S11 飲料 1.4% 1.4% 0.2% 2.4% 27.4% 28.7% 53.6% 36.2%S12 たばこ 0.5% 0.4% 0.4% 5.4% 120.7% 167.7% 85.1% 29.0%S13 繊維 1.7% 1.5% 4.9% 16.0% 8.4% 1.5% 35.9% 75.9%S14 パルプ・紙・木製品 2.1% 2.1% 1.8% 8.2% 1.4% 1.3% 34.6% 60.8%S15 化学 2.6% 2.6% 14.7% 7.8% 1.4% 1.9% 24.2% 48.3%S16 医薬品 0.9% 0.9% 3.3% 5.4% 0.0% 0.2% 37.4% 38.8%S17 石油製品 1.8% 1.7% 1.8% 9.6% 2.9% 58.3% 41.4% 37.0%S18 石炭製品 0.2% 0.2% 1.6% 1.5% 0.0% 0.8% 19.9% 43.6%S19 窯業・土石 1.1% 1.1% 6.3% 3.3% 0.6% 1.8% 40.7% 60.2%S20 鉄鋼 1.9% 2.0% 8.4% 2.2% 1.3% 2.0% 25.4% 56.4%S21 非鉄金属 0.9% 0.8% 14.2% 19.7% 0.4% 2.2% 31.8% 56.4%S22 金属製品 1.6% 1.7% 3.6% 2.1% 0.7% 1.3% 43.8% 71.4%S23 一般機械 3.6% 3.6% 24.6% 5.1% 0.0% 1.4% 36.0% 68.3%S24 民生用電子・電気機器 1.3% 1.2% 16.2% 7.1% 0.0% 1.3% 26.9% 63.4%S25 電子計算機・同付属装置 1.2% 0.9% 32.5% 24.0% 0.0% 2.2% 18.2% 68.7%S26 通信機械 0.6% 0.6% 8.4% 5.4% 0.0% 0.9% 22.8% 64.1%S27 電子応用装置・電気計測器 0.5% 0.4% 32.9% 11.1% 0.0% 1.5% 28.3% 72.5%S28 半導体素子・集積回路 0.9% 0.7% 54.3% 23.0% 0.0% 2.4% 42.6% 51.1%S29 電子部品 1.3% 1.3% 21.4% 5.8% 0.0% 0.5% 33.8% 58.8%S30 重電機器 0.6% 0.6% 28.7% 9.8% 0.0% 0.9% 36.2% 78.6%S31 その他の電気機器 0.8% 0.8% 29.4% 5.0% 0.0% 1.3% 34.2% 64.8%S32 自動車 4.5% 4.6% 24.0% 2.6% 0.0% 1.3% 21.4% 71.4%S33 その他の輸送機械 0.6% 0.6% 36.6% 10.1% 0.0% 2.0% 32.2% 80.1%S34 精密機械 0.7% 0.6% 24.5% 14.9% 0.2% 1.3% 39.4% 75.5%S35 その他製造業 4.4% 4.3% 4.5% 6.1% 4.2% 1.0% 38.6% 67.9%S36 再生資源回収・加工処理 0.2% 0.2% 5.9% 9.0% 0.0% 0.2% 14.7% 66.4%S37 建設 7.4% 7.8% 0.0% 0.0% 0.0% 1.5% 45.3% 83.1%S38 電力 1.6% 1.7% 0.2% 0.0% 0.0% 4.9% 52.8% 21.3%S39 ガス・熱供給 0.2% 0.3% 0.0% 0.0% 0.0% 1.9% 45.1% 38.1%S40 上下水道 0.5% 0.5% 0.1% 0.0% 0.0% -3.7% 56.6% 33.5%S41 一般廃棄物処理 0.1% 0.1% 0.0% 0.0% 0.0% 1.6% 75.2% 80.3%S42 産業廃棄物処理 0.2% 0.2% 0.0% 0.0% 0.0% 7.3% 70.1% 80.2%S43 卸売 0.1% 0.0% 89.3% 68.1% 0.0% 0.5% 66.9% 72.7%S44 小売 0.1% 0.1% 0.4% 0.0% 0.0% 1.9% 70.0% 81.8%S45 金融・保険 3.8% 4.0% 1.0% 1.0% 0.0% -1.0% 66.0% 49.2%S46 不動産仲介及び賃貸 0.9% 1.0% 0.0% 0.0% 0.0% 6.1% 75.7% 28.8%S47 住宅賃貸料 5.6% 5.9% 0.0% 0.0% 0.0% 5.4% 87.7% 1.1%S48 鉄道輸送 0.6% 0.6% 0.4% 2.1% 0.0% 0.8% 51.4% 45.4%S49 道路輸送 1.6% 1.7% 0.2% 0.5% 0.0% 1.3% 42.6% 88.8%S50 水運 0.4% 0.3% 81.0% 30.0% 0.0% 0.9% 34.4% 70.8%S51 航空輸送 0.4% 0.3% 27.8% 33.8% 0.0% 6.2% 33.1% 83.1%S52 その他運輸 0.7% 0.7% 8.9% 3.5% 0.0% 3.3% 62.7% 51.9%S53 通信 1.8% 1.9% 0.3% 0.7% 0.0% 0.5% 55.8% 52.4%S54 放送 0.3% 0.3% 0.0% 0.0% 0.0% 0.6% 41.9% 51.3%S55 教育 0.6% 0.7% 0.0% 0.0% 0.0% 0.7% 78.3% 84.5%S56 研究 1.1% 1.2% 0.2% 0.4% 0.0% 1.8% 62.7% 85.6%S57 医療・保健 3.5% 3.7% 0.0% 0.0% 0.0% -1.2% 57.4% 75.7%S58 社会保障 0.3% 0.3% 0.0% 0.0% 0.0% 0.8% 71.3% 93.5%S59 介護 0.4% 0.4% 0.0% 0.0% 0.0% -0.3% 71.8% 79.8%S60 その他の公共サービス 0.4% 0.4% 0.8% 1.4% 0.0% -0.7% 63.0% 83.0%S61 広告・調査 1.0% 1.0% 1.6% 4.4% 0.0% 1.7% 34.2% 52.2%S62 情報サービス 1.4% 1.4% 1.6% 3.0% 0.0% 0.8% 60.2% 70.5%S63 物品賃貸サービス 1.2% 1.3% 0.9% 1.2% 0.0% -0.7% 65.1% 17.3%S64 自動車・機械修理 1.2% 1.3% 0.0% 0.0% 0.0% 0.9% 39.1% 79.4%S65 その他の対事業所サービス 2.6% 2.7% 2.1% 3.6% 0.0% 0.9% 68.1% 74.1%S66 娯楽サービス 1.3% 1.3% 0.3% 2.1% 0.0% 9.1% 62.7% 43.8%S67 飲食店 2.3% 2.3% 0.3% 3.6% 0.0% 0.2% 43.3% 72.4%S68 旅館・その他の宿泊所 1.0% 0.8% 4.4% 17.5% 0.0% 1.4% 48.6% 64.2%S69 その他の対個人サービス 1.4% 1.4% 0.1% 0.0% 0.0% 0.8% 69.4% 56.7%S70 分類不明 2.4% 2.6% 0.1% 1.0% 0.3% -0.6% 4.2% 23.9%S71 政府(教育) 1.8% 1.9% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 87.8% 84.3%S72 政府(研究) 0.1% 0.1% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 75.2% 95.6%S73 政府(社会福祉) 0.2% 0.3% 0.0% 0.0% 0.0% 0.4% 70.9% 92.9%S74 政府(その他) 3.7% 3.9% 0.1% 0.1% 0.0% 0.3% 73.2% 62.5%

Page 8: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

6

産業連関表には家計外消費支出が外生部門に設けられているが、企業の交際費などに相当

するものなので、内生部門に移して事務用品、分類不明とあわせて「その他の対事業所サ

ービス」に分類している。 表 1.1 は、74 部門について総需要と国内生産の構成比、税率、労働分配率などをみたも

のである。総需要に占める割合が最も大きいのは建設業の 7.4%である。なお、輸出・輸入

比率が製造業以外に卸売、水運、航空輸送でも高くなっているのは、購入者価格で評価し

ており商業・運輸部門についてはマージン以外の生産(例えば国際運賃)だけが計上され

ているためである。 1.2 屑・副産物の処理

産業連関表では、屑・副産物の一部についてマイナス投入方式(ストーン方式)を採用

しており、マイナスの値が存在するところがある。例えば、都市ガスの生産に伴って副産

物としてコークスが産出され鉄鋼部門で使用されるような場合、都市ガス部門はコークス

部門からマイナス投入(つまり販売)したこととし、コークス部門から鉄鋼部門にその分

が投入されるという方式で、副産物の発生部門にマイナスの値が計上される。 しかし、一般均衡モデルのデータセットでは使用する数式の形状などからマイナスの投

入は許容されない。そこで、中間投入についてマイナス値になっている部分については、

トランスファー方式に変更し行と列を入れ替えて符号を逆転することにした(表 1.2)2。

トランスファー方式では、都市ガス部門は副産物であるコークスをいったんコークス部門

に産出し(トランスファー)、コークス部門を経由して鉄鋼部門に投入されることになる。

また、最終需要部門で発生しているマイナス値(屑鉄や古紙など)については、在庫変動

に移すことにした。 産業連関分析上の観点からは、マイナス投入方式では都市ガスに対する需要はコークス

の供給を増加させ結果としてコークス部門の生産を抑制することになるが、コークスに対

する需要は都市ガスの生産に直接の影響は及ぼさない。これに対して、トランスファー方

式では、都市ガスに対する需要はコークスに対して影響を及ぼさないが、コークスに対す

る需要は都市ガスの生産を誘発することになる。このように屑・副産物の扱いによって経

済的な波及が異なりうるが、我が国の産業連関表では屑・副産物の値は小さいので、技術

的なデータ調整として問題はないであろう。

2 屑・副産物の扱いについては、この他に一括方式(主生産物と副産物を区別しないで計上)と

分離方式(主生産物と副産物の生産活動に分割して計上)がある。また、2000 年表からは再生

資源回収・加工処理部門が設けられたので、発生した屑・副産物は再生資源回収業を経由して各

部門に投入されることになる。

Page 9: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

7

表 1.2 屑・副産物の表章形式

マイナス投入方式 トランスファー方式

鉄鋼 コークス 都市ガス 最終需要 産出

鉄鋼

コークス 10 -10

都市ガス

付加価値

産出

都市ガス部門は副産物(コークス)をコークス部門か

らマイナス投入したこととし、鉄鋼部門にはコーク

ス部門から投入する。

鉄鋼 コークス 都市ガス 最終需要 産出

鉄鋼

コークス 10 (+10)

都市ガス 10 (+10)

付加価値

産出 (+10) (+10)

都市ガス部門は副産物(コークス)を一旦コークス部

門に産出し、そこを経由して鉄鋼部門に投入され

る。

1.3 消費税の扱い

消費税は、特定の商品やサービスを課税対象とする個別間接税とは異なり、原則として

国内の全ての取引段階で課税される多段階課税方式の間接税で、中間取引段階で税が累積

しないよう仕入れに係る税額が控除される(いわゆる付加価値税)。したがって、仕入れに

係る税額が控除される中間投入額は、結果的にネット価格(控除可能な税を除いた価格)

で評価されることになる。しかし、現行の産業連関表の消費税の扱いは、中間需要も最終

需要も実際の取引額に基づきそのまま消費税額を含める「グロス表」方式で作成されてい

る。 一般均衡モデルでは価格が重要な役割を果たしており、消費税の仕入れに係る税額の控

除を反映した結果としての価格で評価する必要がある。そこで、現行の産業連関表から消

費税額を推計し、消費税抜き表とネットの消費税額表を作成することにした。 具体的には、 ・課税品目か非課税品目かを区分し、課税品目については産業連関表の価額が5%の消費

税額を上乗せされていると仮定して、税抜き額と消費税額を推計する。非課税品目は、

住宅賃貸料、金融(帰属利子)、教育、医療、介護、公務などである。 ・中間投入に係る消費税は原則として仕入れ税額控除される。ただし、非課税業者は仕入

れ控除できないので、教育、医療など非課税部門の中間投入にはネットで消費税が残る

ことになる。 ・投資に係る消費税も課税業者は還付される。このため、固定資本形成マトリクスを用い

て課税業者にあたる資本形成部門の消費税を控除して、ネットの消費税額を推計する。

Page 10: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

8

・産業連関表の最終需要項目には輸出の隣に「調整項」という列が設けられており、これ

は輸出品の国内取引の段階で支払われた消費税額で最終的には還付される。したがって、

税抜き表では「調整項」を取り外し、該当する部門の営業余剰を調整項の分だけ増額す

る。 ・産業連関表の間接税には消費税の納税額が計上されている。そこで、税抜き表の間接税

では、納税額に対応する「売上げに係る消費税額-中間投入に係る還付される消費税額」

を控除して、消費税以外の間接税額にする。売上げに係る消費税は行和、中間投入に係

る消費税は行和になるので、消費税抜き表にしても行・列のバランスは保たれることに

なる。 以上の方式で推計した消費税額(ネット)は 13.65 兆円となった。国民経済計算年報よ

ると 2000 暦年の付加価値型税(VAT)の金額は 12.79 兆円なので 6.7%の誤差があること

になるが、誤差調整するよりもモデルでは消費税のロジックをそのまま組み込んだ方がわ

かりやすいので、そのままこの推計値を用いることにした。 1.4 社会会計表

産業連関表に上記の加工を施し、直接税を追加して 4 部門に統合した社会会計表形式に

表章したものが表3である。 産業連関表には生産者価格評価と購入者価格評価の二方式があるが、本表では購入者価

格評価で作成しており、商業マージン及び国内貨物運賃が個々の取引額に含まれている。

商業及び運輸業の行部門にはマージン以外の生産額だけが計上されることになる。各部門

の国内生産額にするために、控除列としてマージン列が設けられることになる。また、輸

入は競争輸入方式を採用しており、控除列として輸入を設けている。産業連関分析では生

産者価格評価で逆行列表等を計算することが一般的であるが、本モデルで購入者価格評価

を採用した理由は、価格が内生変数となる一般均衡モデルでは、規制改革で流通部門の生

産性が向上し価格が低下するような場合、その影響は流通自体の需要よりも流通部門を経

由して購入される各財貨の需要に影響すると考えられるからである。 在庫変動については、プラスの値の場合は家計消費に含め、マイナスの値の場合には

endowment(初期賦存量)の行を設けてそこに含めることにした。また、労働所得には雇

用者所得が対応し、資本所得には営業余剰と資本減耗引当が対応している。両所得から個

人所得税と法人税の直接税がそれぞれ支払われ、残りが家計の受取となる。直接税は産業

連関表自体には含まれていないので、国民経済計算年報の所得に課される税の 2000 暦年の

値を引いてきている。 社会会計表は、モデルの均衡解を求める基準データとなるので、必ずタテヨコがバラン

スするように作成する必要がある。表 1.3 では、まず消費税抜き表の段階でバランスするよ

うに作成している。家計については、直接税を支払った後の労働所得及び資本所得に

Page 11: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

9

endowment を足したものが受取で、そこから家計消費を支出した残りを家計貯蓄と定義し

ている。投資については、投資額合計のマイナス値が貯蓄に計上される。海外部門は、輸

入と輸出の差額が海外の貯蓄となる。政府部門については、消費税抜き表の段階では直接

税と間接税及び関税が受取となり、政府支出を差し引いた額が貯蓄となる。 この消費税抜き表に消費税額(ネット)表が積み重ねられてくるので、最終的な貯蓄額

は家計については家計消費にかかる消費税を控除したものになる。政府については、消費

税額を加えて政府支出に係る消費税額を差し引いた額が最終的な貯蓄額となる。 表 1.3 社会会計表(2000 年)

<消費税抜き表> (単位:10億円)

農鉱業(9)

製造業(27)

商業・運輸(7)

その他(31)

労働 資本 家計 投資 政府 輸出 輸入 輸入関税 マージン 産出額

農鉱業 1,555 17,800 20 5,713 7,361 184 0 98 -9,645 -628 -7,308 15,151製造業 3,351 133,062 10,951 75,611 101,635 44,121 4,534 50,330 -31,510 -1,178 -96,207 294,700商業・運輸 734 3,392 9,474 8,534 12,079 277 0 3,761 -3,539 0 103,869 138,582その他 1,354 42,946 34,006 110,471 152,354 45,318 115,758 2,109 -5,557 -1 -354 498,403endowment 25 1,409 0 0 1,434労働 1,524 52,711 61,946 159,408 275,589資本 6,445 32,351 20,418 132,061 191,274間接税 165 11,029 1,766 6,606 19,566家計 249,525 175,564 425,088直接税 26,065 15,710 41,775貯蓄 153,093 -89,901 -57,145 -6,047 -0産出額 15,151 294,700 138,582 498,403 275,589 191,274 426,522 0 63,147 50,252 -50,252 -1,806

家計+endowment 間接税+直接税+関税

<消費税額(ネット)表>

農鉱業 製造業 商業・運輸 その他 家計 投資 政府 輸出 小計農鉱業 0 0 0 20 328 0 0 0 348製造業 0 0 0 800 5,019 226 162 0 6,207商業・運輸 0 0 0 68 543 14 0 0 625その他 0 0 0 1,242 3,161 1,200 867 0 6,471小計 0 0 0 2,130 9,052 1,440 1,029 0 13,651

Page 12: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

10

2.モデルの構造

本論文の日本経済の応用一般均衡モデルでは、意志決定を行う経済主体として、企業部

門、家計部門と政府部門が仮定される。企業部門は、家計部門から生産要素である資本と

労働、他の企業部門から中間財投入を調達して生産活動を行う。本論文では、企業部門は

74 産業部門に分割されている。なお、各産業部門の生産財は一つに限られると仮定する。

一方、家計部門は一つであり、資本と労働の二つの生産要素の他に、販売可能な財を初期

保有する仮定する。政府部門も一つであり、生産活動に対して間接税、資本所得と労働所

得に直接税を賦課し、政府消費を行う。本論文では、海外部門も存在し、輸入に対して関

税が賦課される。海外経常黒字は外生であり、為替レートが内生である。政府財政赤字も

外生であり、また静学モデルであることから家計部門の貯蓄と投資も外生であり、貯蓄投

資差額と政府財政赤字との和は海外経常黒字と一致する。 2.1 企業行動モデル

企業は、資本と労働の生産要素を雇用し、中間投入を含めて生産活動を行う。ここでは、

生産物価格を所与とする完全競争下での企業行動について述べ、次いで、右下がりの需要

曲線に直面する独占企業、平均費用が低減する自然独占企業、参入と退出が繰り返される

独占的競争企業について述べる。 完全競争企業モデル

完全競争市場において、企業は価格支配力を持たず、市場価格を所与として生産活動を

行う。ここで、生産量をq 、価格を p 、

生産費用を ( )qc とすれば、企業の最適な生

産量は

( )qcpqq

−max (2.1)

となるように決まる。一階の条件は ( )qcp '= (2.2)

となり、最適な生産量*q は限界(生産)費

用 ( )*' qc が市場価格*p に一致する点に決

まる。さらに、完全競争下では最大利潤は

ゼロとなり、平均費用( )

*

*

qqc

が市場価格に一致する。この関係は、図 2.1 に示される。

中間投入がなく、資本 K と労働 L の二つの生産要素で生産を行い、生産関数として次の

限界費用

平均費用

価格

図2.1 完全競争企業

( )qc'

qc

( ) *** '

qcqcp ==

*q

Page 13: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

11

コブダグラス型生産関数を仮定すれば、

baLAKq 21= (2.3)

となるが、このときq を所与とすれば、費用関数は

( )

( )( ) ( )

( ) ( ) ( )

( ) ( )ba

bababbaabaabab

ba

LK

qwrc

qwrba

baA

wLrKmint

+

++++−+

+−

=

+

=

+=

/1

/1////

/1

,

,

cos

(2.4)

と表される。ここで、 r は資本コスト、wは賃金、 ( )wrc , は1単位生産するための単位費

用である。ここで収穫一定 1=+ ba を仮定すれば、

( ) ( )

( )qwrcqwraaAt aaaa

,1cos 111

=−= −−−−−

(2.5)

となる。 独占企業モデル

企業が右下がりの需要曲線に直面すれは、企業は価格支配力を持ち、価格と生産量を同

時に決定することになる。ここで需要関数を ( )qpq = (2.6)

とすれば、企業の最適な生産量と価格は

( ) ( )qcqqpq

−max (2.7)

となるように決まる。一階の条件は ( ) ( ) ( )qcqqpqp '' =+ (2.8)

と な り 、 最 適 な 生 産 量 は 限 界 収 入

( ) ( ) *** ' qqpqp + が限界(生産)費用 ( )*' qcと一致する点に決まり、価格

*p は最適生産

量*q に見合う需要関数との交点から決ま

る。その結果、企業の利潤は

( ) **

** q

qqcpprofit

−= (2.9)

となり、平均費用を上回る独占利潤が得られる。この関係は、図 2.2 に示される。(2.8)式は、

さらに次のように表されるが

限界費用

平均費用

価格

( )qc'

qc

需要

限界収入

( )qp

( ) ( )qqpqp '+

*q

( )** qpp =

( ) ( ) ( ) **** '' qqpqpqc +=*qc

独占利潤

マークアップ率

( )*' qc

図2.2 独占企業

**q

死荷重

Page 14: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

12

( ) ( )( ) ( ) ( ) ( )qc

qqpq

qpqpqp '11'1 =

−=

−−

ε (2.10)

ここで ( )qε は需要の価格弾力性であり、その逆数である ( )qε1

は、市場価格が限界費用を上

回る部分となり、マークアップ率ともよばれる。このマークアップ率は、需要曲線によっ

て決まる。2財 21,qq ,その価格 21, pp 、家計所得 y とし、家計は予算制約の下で

CES(Constant Elasticity of Substitution)型効用関数を最大にすると仮定しよう。

yqpxpts

qquqq

≤+

+=

−−−

2211

11

2

1

1,

..

max21

σσ

σσ

σσ

(2.11)

このとき、次のような需要関数が導出される。

( )σσσ −− += 1

21

1 pppyq

ii (2.12)

これより、

( ) ( ) ( )( ) ( ) 1

1

1

1

111

1

1

1

1

212

11

211

21

1

11

1

1

11

1

spq

pq

yqp

pq

pq

ppyp

ppyp

pq

σσσσ

σσσσ

σσσ

σ

−−−=−+−=

+−+

+−=

∂∂

−−

−−−

−−

(2.13)

となる。ここで、 1s は支出に占める第1財の比率である。したがって、第1財への需要の

価格弾力性は

( ) ( ) 11

1

1

11 1 s

pq

qpq σσε −+=∂∂

−= (2.14)

とすることができるので、マークアップ率は

( ) 11 1

1s

markupσσ −+

= (2.15)

として表される。 独占企業が存在する時の問題は、図 2.2 で示されるように、企業にとっての最適な生産量

*q が、社会的厚生の観点から過小となることである。図 2.2 における社会的な最適な生産

量とは、限界費用曲線と需要関数の交点**q である。しかし利潤最大化を行う独占企業は、

限界収入と限界費用が一致する点で生産することから、社会的厚生の観点から過少生産と

なり、死荷重(Dead Weight Loss)が発生する。したがって、独占が規制によるものであれ

ば、マークアップ分を課徴金として徴収することで限界費用曲線と需要曲線の交点まで誘

導させるか、あるいは競争力のある新規参入を認めて生産を増加させることが求められる。

Page 15: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

13

自然独占モデル

複数の企業よりも1社の方が少ない費

用で市場に供給できる場合がある。生産

の増加にも関わらず平均費用が逓減する

自然独占とよばれるものである。特に、

生産費用が生産量に比例する変動費用と

生産量に比例しない固定費用に分離され、

( )qFqc

qc

+= ' (2.16)

と表される場合である。このとき、限界

費用 ( )qc' が一定であれば、図 2.3 のよう

に表される。限界費用と限界収入が一致する生産量*q では独占利潤が発生し、限界費用と

需要曲線が交わる***q では、限界費用が平均費用を下回っていることから、企業に損失が発

生する。自然独占の場合の生産量は、平均費用と需要曲線が交わる**q であり、その点にお

ける限界費用 ( )**' qc を上回る平均費用 *qc

との差 *qF

は、限界費用原理では企業に損失を与

えることから、供給を保証するためのマークアップとなる。すなわち、社会が固定費用 F を

何らかの形で負担することが望ましいということになる。 自然独占のケースとしては、水道・下水道事業、自由化以前の電力・電話事業などが考

えられる。図 2.3 の自然独占における望ましい水準は、平均費用と需要曲線の交点であるが、

自然独占として考えられてきた電力・電話も、発電と送電・配電ネットワークの分離、技

術革新による携帯電話の普及で市場が拡大し、新規参入を認めることで費用の削減が可能

となる場合がある。 応用一般均衡モデルにおける自然独占モデルは、生産費用を(2.16)式で表されるように、

生産量に比例する変動費用と生産量に依存しない固定費用の和3として扱い、変動費用につ

いては収穫一定の単位費用と生産量の積とし、固定費用はマークアップで補填される。 独占的競争モデル

多数の企業が存在するが、個々の企業は他の企業の製品とわずかに異なる製品を供給す

ることで、右下がりの需要曲線に直面することがある。これは図 2.2 で示される独占状態で

ある。しかし、参入と退出の自由が保障されているならば、図 2.4 に示されるように、独占

3 収穫逓増モデルは、Francois and Roland-Holst(1997)によれば、固定費用を仮定する代わり

に、平均費用を収穫一定の単位費用と生産の積 ( ) 10,,1 ≤≤= − θθ wrcXAC で表す方法がある。

限界費用

平均費用

価格

( )qc'

qc

*q

需要( )qp限界収入

( ) ( )qqpqp '+

( )** qpp =

**q

( )**' qc

独占利潤

図2.3 収穫逓増による自然独占

( ) ******

qcqpp ==

*qc

***q

Page 16: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

14

利潤が存在すれば参入へのインセンティブが働き、損失が発生すれば退出するインセンテ

ィブが働く。そのため、長期的には、図 2.5 に示されるように、独占利潤がゼロとなるよう

に企業数が変動する。これを独占的競争とよぶ。しかし、参入と退出を制限すれば、独占

利潤を得る企業が存在する一方で、損失を被る企業が存在することとなり、社会的厚生の

観点から望ましくない状況が発生する。もちろん、図 2.5 の長期的な均衡状態においても問

題が発生する。すなわち、独占的均衡状態では、価格は平均費用と一致し、限界費用との

差額がマークアップとして生じる。さらに、独占的均衡状態の生産量*q を増加させれば、

**qで平均費用が最小となる。その意味で、独占的均衡状態における生産量

*q が効率的規模**q

を下回ることを意味する。したがって、限界費用を上回るマークアップの存在は、ゼロ利

潤が価格と限界費用との一致を保証しないことを意味する。

限界費用

平均費用

価格

図2.5 独占的競争均衡

需要

限界収入

qc( )qc'

( )qp

( ) ( )qqpqp '+

*q

( ) *** '

qcqcp ==

**q

マークアップ

いま n 企業が同質の財 inqq = を供給するものとしよう。企業利潤を

( )iii qcpq −=π (2.17) とすれば、利潤最大化の一階条件は

( ) ( ) 0'' =−Ω

−=−+= ii

ii

ii

i qcpn

pqcdqdq

dqdpqp

dqd

επ (2.18)

より、 ( )

εnpqcp ii Ω

=− ' (2.19)

となる。ここで、ε は財の価格弾力性、i

i dqdq

=Ω は i 番目の企業が1単位生産を増加させ

たとき増加する市場全体の供給量で、推測的変動とよばれるものである。(2.19)式は、市場

価格と限界費用の乖離が、企業数、価格弾力性と推測的変動によって決まることを意味す

る。n

iΩは市場の競争状態を表す指標であり、 1==Ω ni であれば独占状態を意味し、 0=Ωi

または ∞=n であれば完全競争である。また、 1=Ωi であれば市場均衡がクルーノー・ナッ

シュ均衡と言える。以下では、 1=Ωi を仮定する。 独占的競争の代表的な例は、Dixit and Stigliz(1977)による製品差別化行動であるが、一

独占利潤損失

図2.4 独占的競争状態

限界収入限界収入

限界費用限界費用

平均費用平均費用

量量

価格 価格

利潤最大化企業 損失最小化企業

損失があれば退出独占利潤があれば参入

Page 17: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

15

般的には個々の企業が右下がりの需要曲線に遭遇し、均衡状態で価格は平均費用に一致す

るように決まる。すなわち、 ( )

( )i

i

i

i

npqcp

qqcp

ε1'

=−

= (2.20)

となる。 iε は、(2.11)式で表される家計の行動モデルから得られる(2.14)式で定義される。

(2.20)式から、市場価格と限界費用の関係が

( )ii

i qc

n

np '11

1

1

−+=

ε

ε (2.21)

となり、マークアップ率は

i

ii

n

nmarkup

ε

ε11

1

−= (2.22)

と表される。 2.2 家計行動モデル

家計は、生産要素である資本と労働から所得を得て、直接税を差し引かれた可処分所得

が貯蓄と消費に配分される。本論文では、貯蓄は外生的に決まり、効用関数を最大とする

ように消費が決まる。また、本論文では余暇時間も消費財と見なし、労働供給を内生化し

ている。すなわち、家計の行動は次のように表される。

( )

( ) rKwLFLLFwqpts

LLFqqqu

n

iii

nLqi

+≤−+

∑=1

21,

..

,,...,,max

(2.23)

ここで、 LF は家計の労働賦存量、 Lは労働供給であり、 LLF − が余暇時間であり、余暇

時間の価格は機会費用として賃金率wが用いられる。 2.3 一般均衡モデルとしての記述

Mathiesen(1985)によれば、アロー・デブリュー型一般均衡モデル4が Complementarity 4 Debreu(1959)

Page 18: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

16

Problems として記述できる。Complementarity Problem とは、 ( ) 0,0 ≥≥ ppF となる変

数 p と関数 ( )pF が存在するとき、 ( ) 0=pFpTとなる p を見つける問題として知られてい

る。 0=p は解であるが、 0>p であれば ( ) 0=pF でなければならない。実は、 p を価格

とし、 ( ) 0≤− pF を超過供給が非正条件とすれば、 ( ) 0=pFpTはワルラス式となる。すな

わち、超過供給があれば 0=p 、超過供給が発生せず需給が均衡すれば ( ) 0=pF を満たす

0>p が存在する一般均衡モデルとなる。応用一般均衡モデルは、理論的な一般均衡モデル

を現実問題への適用を試みたものであり、解法の基本となるものである。 Rutherford(1999)によれば、一般均衡モデル ( ) 0≤− pF は、ゼロ利潤条件、市場均衡条

件と所得定義式として記述できる。ここで、財の生産量と価格を ( )nqqqq ,...,, 21= 、

( )npppp ,...,, 21= 、生産要素賦存量とその価格を LK , 、 wr, 、i 財の単位生産費用を

( )wrpci ,, 、効用u とその価格指標 up 、効用 1 単位を得るための単位費用を ( )pe 、所得をYとすれば、一般均衡モデルは次のように書くことができる。 ゼロ利潤条件

( )( ) 0

0,,≤−

≤−upeup

qwrpcqp

u

iiii (2.24)

市場均衡条件

( ) ( )

( )( )

( )∑

=

=

=

≤∂

≤∂

∂≤−

≤−∂

∂+

∂∂

n

jj

j

n

jj

j

u

ii

in

jj

j

j

Lqw

wrpc

Kqr

wrpcupeup

qyppeq

pwrpc

1

1

1

,,

,,0

0,,

(2.25)

所得定義式

YwLrK =+ (2.26)

Rutherford(1999)の作成した MPSGE (The Mathematical programming System for General Equilibrium Analysis)は、生産関数 ( )qf 、効用関数 ( )qu と所得定義式を記述すれ

ば、(2.24)~(2.26)式を自動的に生成するインタフェース・ソフトウェアである。関数型と

しては、CES(Constant Elasticity of Substitution)型に限られるが、代替の弾力性 0 のレオ

ンチェフ型生産関数、1のコブダグラス生産関数を含んでいる。各関数は多段階関数とし

て記述することもできる。使用できる関数型が限定されているが、応用一般均衡モデルの

Page 19: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

17

大部分は CES 型生産関数あるいは効用関数を前提としており、生産関数や効用関数の構造

を特定化するだけで、費用関数や需要関数が自動的に生成されることから、これらを特定

化して記述する過程での誤りを大幅に削減することができる。 MPSGE への批判として、収穫一定の一次同次関数を前提とすることに対するものがある。

確かに、MPSGE の基本は、規模を 1 とするモデル記述法であり、得られた解に規模を掛

けることで実際の値が求められる。収穫逓増経済における規制緩和問題の分析には不適と

の指摘があるが、本論文でも取り入れられているような工夫を行えば、収穫逓増経済の分

析にも十分用いることができる。 3.規制改革のシミュレーション

本章では、収穫逓増と独占的競争を取り入れた応用一般均衡モデルを用いたシミュレー

ション事例として、規制改革の効果を紹介する。 今回開発した応用一般均衡モデルは、生産関数と消費関数の関数型としては CES 型を仮

定しており、代替の弾力性の仮定によっては、コブ・ダグラス型(代替の弾力性1)、ある

いはオンチェフ型(代替の弾力性0)も含まれる。なお、本論文では、生産関数について、

生産要素間の代替はコブ・ダグラス型、生産要素と中間投入の代替、中間投入間の代替に

についてはレオンチェフ型を仮定している。効用関数については、消費財と余暇、消費財

間の代替についてコブ・ダグラス型を各々仮定している。なお、国内財と輸入財に対する

需要についてアーミントン型の不完全代替を仮定し、アーミントン係数については GTAP データベースの値を参照している。5 また、価格については賃金をニュメレールとしてい

る。 3.1 規制改革の経緯

我が国経済が低迷した 1990 年代以降、規制改革は経済活性化のための政策手段の一つと

して重要となっている。1995 年には「規制緩和推進3か年計画」が閣議決定され、これ以

降、政府は計画を作成して規制緩和ないしは規制改革を進めるようになっている。96 年の

経済審議会建議では、高度情報通信、物流、金融、土地・住宅、雇用・労働、医療・福祉

の6分野の構造改革が取り上げられた。また、同年に閣議決定された「経済構造と変革と

創造のためのプログラム」では、産業の高コスト構造是正等のため、物流、エネルギー、

情報通信、金融等について、抜本的な規制緩和等を推進するとしている。このように、分

野別には特に運輸・流通などの物流分野や公益事業関係での規制改革に焦点が当てられて

5 弾性値によるモデルの感応度の相違は(参考1)

Page 20: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

18

きた。2004 年からは規制改革・民間開放推進会議が設置され、官製市場の民間開放に重点

が置かれるようになってきている。 規制が行われてきた経済的根拠として、市場メカニズムを通じた効率的資源配分が有効

に機能しない場合がある点が上げられる。特に、第2章で述べたように、収穫逓増による

規模の経済が存在することで市場の失敗が問題となる。収穫逓増経済においては、自由競

争に任せることで市場が一企業に独占され、価格決定やサービスの提供の面で消費者が不

利益を被る結果となる。そのような事態を避けるため、政府は特定の事業者に参入を許可

する一方、退出についても規制する。価格については原価主義に基づいて許可制とするよ

うな規制を行う。電話・通信料金、鉄道運賃、航空運賃などは届け出制に移行したが、電

力料金の一部には総括原価主義が残されている。参入・退出規制は、効率的な企業の参入

を阻害し、かつ非効率企業を温存することで料金が割高となり、社会的な損失を招く事態

となる。 また、情報の非対称性が生じている場合、企業が製品差別化を行い、消費者が不十分な

情報の中で行動すると不利益が生じることがある。すなわち、各企業は情報を分断するこ

とで右下がりの需要曲線に直面、独占企業と同じ価格支配力を持つことが知られている。

これを補完するためにサービスの内容や表示、一律料金制などの料金規制が行われること

があり、食品安全関連諸法や薬事法による規制、金融サービスやタクシーなどの運輸業に

おける規制がその事例としてあげられる。この他、過当競争を防止するという観点から、

需給調整条項により参入・退出規制や価格規制が行われてきた分野もある。 規制は市場メカニズムの欠点を補正するために行われるわけであるが、競争市場に比べ

て企業の非効率を招いたり革新的行動を停滞させたりしやすいという欠点がある。こうし

た規制の問題点が認識されるとともに、通信市場などのように技術進歩により規制の意義

が薄れたことから、規制改革が進められるようになった。 規制改革の目的の大きなものは、競争の導入による企業のインセンティブ効果を通じた

経済的厚生の増大である。参入が自由になり価格競争が行われることになれば、企業は内

部の効率化を図る必要が生じ生産性が上昇することになる。本論文では、規制産業の特徴

である収穫逓増下で独占的状況にある場合に競争促進がもたらす影響をみることにする。 本論文では、規制産業部門として、公益(電力、ガス・熱供給、上下水道)、商業(卸売、

小売)、金融・保険、運輸(鉄道輸送、道路輸送、水運、航空輸送、その他運輸)の 11 部門を取り上げる。 3.2 収穫逓増モデル

規制改革の対象となる産業が収穫逓増部門であり、参入規制がなされている仮定する。

収穫逓増経済の MPSGE への組み込みに当たっては、2章で説明したように、生産費用を

固定費用と変動費用に分け、変動費用については収穫一定を仮定する。企業は右下がりの

Page 21: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

19

需要曲線に直面するが、限界費用原理では企業は損失を発生させることから、限界費用と

平均費用の差額を埋めるように、マークアップ原理を用いて価格を決定する。本論文のモ

デル体系は参考2にあるが、ここでは必要な部分に限定して説明する。

*====================================================================

* IRTS production:

*====================================================================

$PROD:Y(i)$IRTS(i) s:0

O:PY(i) Q:(YD0(i)*py0(i)-FC0(i))

I:PA(j) Q:IJ0(j,i) P:(1+tvu(j,i)) A:GOVT T:tvu(j,i)

I:PV(i) Q:VA0(i)

$PROD:D(i)$IRTS(i)

O:PD(i) Q:YD0(i) P:py0(i) A:GOVT T:txy(i)

I:PY(i) Q:(YD0(i)*py0(i)-FC0(i)) P:(1+mk0(i))

+ A:ENTR(i)$MONOP(i) A:GOVT$RAMSEY(i) N:MK(i)

$PROD:NF(i)$MONOP(i)

O:PFC(i) Q:FC0(i)

I:PV(i) Q:FC0(i)

$PROD:V(i)$IRTS(i) s:elas_f(i)

O:PV(i) Q:(VA0(i)+FC0(i))

I:RK Q:(KD0(i)*efk(i)) P:rk0(i) A:GOVT T:txk(i)

I:PLS Q:(LD0(i)*efl(i)) P:pl0

$DEMAND:ENTR(i)$MONOP(i)

D:PFC(i)

*====================================================================

* Determine the domestic share of total supply

*====================================================================

$CONSTRAINT:THETAD(i)$MONOP(i)

THETAD(i)*YA(i)*PA(i)*(YD0(i)-MAR0(i)+pm0(i)*IMD0(i)+sum(k,MA0(i,k))) =E=

D(i)*PD(i)*(YD0(i)-MAR0(i));

*====================================================================

* Markup equations

*====================================================================

$CONSTRAINT:MK(i)$IRTS(i)

(N0(i)*NF(i)*MK(i)*(elas_m(i)+THETAD(i)*(MU(i)-elas_m(i)))-(1+MK(i)))*MONOP(i)

+ (D(i)*PD(i)*MK(i)*(YD0(i)*py0(i)-FC0(i))-FC0(i)*PV(i))*RAMSEY(i) =E= 0;

IRTS(i)は、固定費用を持つ収穫逓増となる産業部門かどうかを識別する論理変数である。

さらに、MONOP(i)と RAMSEY(i)も論理変数であり、MONOP(i)が真であれば、独占利潤

は企業部門に帰着し、企業が固定費用 FC0(i)を賄う。その意味で、右下がりの需要曲線に

直面する民間の独占的競争企業であり、企業数 NF(i)も内生的に決まる。もちろん、政府が

NF(i)を規制することもあり、本論文の分析対象となる。一方、RAMSEY(i)が真であれば、

独占利潤は政府に帰着し、政府が固定費用 FC0(i)を賄う。その意味で、政府による独占は

RAMSEY(i)を真とすることになる。その意味で、民営化は RAMSEY(i)=真を MONOP(i)=真に変えることである。

Page 22: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

20

3.3 参入・退出規制と競争促進政策

収穫逓増下では、当該産業における企業の参入・退出を規制し、代わりに総括原価主義

に基づいてマークアップが外生的に決められる。そこで、規制下のマークアップ率を引き

下げるような競争促進策を考える。このとき、企業の参入・退出を認めない場合と認める

場合をシミュレーションすることで、参入・退出の規制効果を評価する。 表 3.1 は、参入・退出規制がない場合とある場合について、マークアップ率を2割引き下

げるシミュレーションを行う。それによれば、参入・退出規制がある場合に、GDP の増加

は 0.866%、マクロの労働生産性が0.480%、家計効用の増加は 1.058%となるのに対し、

参入・退出規制がない場合にはGDPが 0.955%増、マクロの労働生産性が 0.972%、家計

効用が 1.084%増となる。すなわち、マークアップ率の低下させる競争促進策は、参入・退

出規制のない方がある場合よりも経済厚生を高める効果が大きく、マクロの労働生産性に

ついても、参入・退出規制の存在が労働生産性を悪化させる可能性が高い。なお、企業数

は算入・退出を認める場合、17~20%減となり、生き残った企業が規模の経済性を発揮し

ていることがわかる。 例えば、金融サービスの自由化により、金融機関の利益率やサービス価格が低下し、金

融サービス生産は増加したが、その過程で金融機関数が合併により大きく減少した。金融

の自由化政策は、効率的な新たな金融機関の参入を容易にし、非効率な金融機関の退出を

認めるものであるが、マークアップ率の引き下げを誘導する場合、参入・退出規制を撤廃

することで、経済厚生をより大きくすることが確認できる。

表 3.1 マークアップ率引下げの影響 参入・退出規制なし 参入・退出規制あり GDP 0.955% 0.866% 労働生産性 0.972% 0.480% 家計効用 1.084% 1.058% 等価変分 4 兆 4130 億円 4 兆 3100 億円 企業数 17.631%~19.539% 0.0

3.4 独占的競争力低減による競争促進政策

独占的競争下では、企業は製品差別化をすることで右下がりの需要曲線に直面すること

で価格支配力を持ち、独占利潤を確保することができる。製品差別化は企業努力の賜であ

るが、企業の持つ情報と需要者の持つ情報の非対称性を利用した安易な差別は排除するこ

とが望まれる。それを行うには、製品を規格化することで安易な製品差別化をしにくくし、

Page 23: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

21

後発企業の参入を促進することが必要となる。そこで、後発企業の参入を促進し、参入企

業数を増加させるシミュレーションを行う。 表 3.2 では、規格化による競争促進政策が採られることで、企業数が 10%増加して競争

が活発化するシミュレーションを行う。分析結果よれば、企業数の増加でマークアップ率

が 1.2~1.3%ポイント低下し、マクロで見れば、GDP は 1.333%増加し、家計効用も 0.527%増加する。

表 3.2 企業数増加の影響 GDP 1.333% 労働生産性 0.062% 家計効用 0.527% 等価変分 2 兆 1450 億円 マークアップ率 1.242%~1.338%

3.5 技術革新と規制改革

収穫逓増のように規制に合理的根拠があったとしても、技術革新などにより経済的条件

が変われば適正な企業数や価格水準は変化する。しかし、参入や価格の規制の変更には時

間がかかるので、経済的条件の変更に機動的に対応することは困難である。そこで、規制

部門において労働生産性が 10%上昇するような技術革新が生じた場合、参入規制や価格規

制が存在することによる経済厚生の損失を計測する。 独占的競争の場合、参入・価格規制がなれば GDP が 1.298%増加するが、参入規制があ

れば 1.050%にとどまり、価格規制があれば 1.191%にとどまる。家計効用も同様の低下を

示している。マークアップ率をみると参入規制がある場合に比べて規制のない場合の方が

低くなっており、競争の促進による価格低下が進むことが分かる。他方、価格規制がある

場合に比べて価格規制のない場合の企業数は少なくなっており、価格規制により競争がな

ければ非効率な企業が退出せず温存されることがわかる。 自然独占に相当する政府企業の場合についても、価格規制がなければ GDP や家計効用の

増加が大きい。さらに、価格規制撤廃によりマークアップ率が低下しており、効率的な価

格設定が行われる可能性を示している。

Page 24: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

22

表 3.3 技術革新と独占的競争 参入・価格規制なし 参入規制あり 価格規制あり GDP 1.298% 1.050% 1.191% 家計効用 1.912% 1.809% 1.769% 等価変分 7 兆 7870 億円 7 兆 3690 億円 7 兆 2060 億円 消費デフレータ 0.743% 0.758% 0.623% マークアップ率 0.082%~0.641% 0.059%~0.421% 0 企業数 0.589%~5.339% 0 1.197%~10.272% 表 3.4 技術革新と自然独占(政府企業) 価格規制なし 価格規制あり GDP 1.352% 1.192% 家計効用 1.987% 1.770% 等価変分 8 兆 0900 億円 7 兆 2070 億円 消費デフレータ 0.808% 0.628% マークアップ率 0.145%~1.188% 0 分析結果によれば、参入規制や価格規制がない方が、経済条件が変化した時により大き

く効果を発揮させることができる。この厚生改善は静学的効率性の改善によるものといえ

るが、本シミュレーションで設定している労働生産性の上昇は、それ自体、競争促進によ

り動学的に実現されるものであることに留意する必要がある。日本はサービス部門の生産

性が欧米に比べて低く価格も割高であると指摘されており、競争促進による厚生改善余地

は大きい。規制部門における労働生産性上昇の部門別の影響をみると、商業、運輸のマー

ジン部門で生産性が上昇するために各部門に影響が波及するようになっており、大部分の

産業で生産が増加する。最も生産の増加が大きいのは水運(14.7%)、航空輸送(8.6%)で、

この部門はマージンだけでなく国際輸送などの最終需要に使われる分もかなりあるので、

生産性上昇による価格低下に伴い国際競争力が高まったことによる。卸売、小売も同程度

価格が低下しているが、こちらはマージンが中心のため生産増は 2~3%程度にとどまって

いる。この他、繊維(5.1%)、自動車(4.1%)、その他運輸(4.0%)の順に生産の増加が

大きくなっており、繊維はマージン率が最も大きい(43.3%)のでマージン価格低下の影響

を受けやすいと考えられる。 (本章のシミュレーション結果の詳細は表 3.5)

Page 25: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

表3.5(1) 独占的競争下の影響

マークアップ率2割引き下げ 企業数増加参入・退出規制なし 参入・退出規制あり 企業数10%増

gdp GDP 0.955 0.866 1.333util 家計効用 1.084 1.058 0.527c 家計消費 1.543 1.237 0.470g 政府支出 0.408 0.742 0.551exp 輸出 1.050 1.037 0.521imp 輸入 1.197 1.185 0.596ls 労働供給 -0.017 1.346 1.395rk p資本 0.309 1.540 1.427pc p家計消費 -0.991 -0.393 0.114pl p為替レート -0.781 -0.344 0.064EV 等価変分 4413.1 4310.1 2145.2

生産 生産者価格 企業数 生産 生産者価格 生産 生産者価格 マークアップ率

S01 耕種農業 1.555 -0.408 1.145 0.474 0.379 0.702S02 畜産 1.787 -1.051 1.558 -0.386 0.683 0.147S03 林業 0.861 -0.258 0.461 0.511 0.032 0.661S04 漁業 1.584 -0.521 1.290 0.123 0.513 0.398S05 金属鉱物 1.581 -0.993 1.522 -0.533 0.737 -0.029S06 非金属鉱物 0.668 -1.310 0.721 -0.800 0.394 -0.140S07 石炭 1.172 -0.758 1.116 -0.307 0.533 0.081S08 原油 0.667 -0.423 -0.231 0.311 -0.583 0.543S09 天然ガス 0.929 -0.423 0.026 0.311 -0.461 0.543S10 食料品 1.939 -0.910 1.730 -0.342 0.781 0.119S11 飲料 1.726 -0.668 1.510 -0.056 0.663 0.290S12 たばこ 1.316 -0.355 0.856 0.391 0.206 0.589S13 繊維 2.428 -1.001 2.480 -0.620 1.305 -0.121S14 パルプ・紙・木製品 1.005 -0.849 0.970 -0.364 0.477 0.068S15 化学 1.677 -1.088 1.512 -0.556 0.688 -0.005S16 医薬品 0.695 -0.521 0.839 0.037 0.503 0.310S17 石油製品 1.675 -0.925 1.577 -0.447 0.752 0.023S18 石炭製品 0.842 -1.001 0.869 -0.485 0.455 0.023S19 窯業・土石 0.572 -0.852 0.624 -0.372 0.344 0.063S20 鉄鋼 0.824 -0.956 0.863 -0.444 0.459 0.044S21 非鉄金属 0.915 -0.862 0.857 -0.363 0.406 0.077S22 金属製品 0.562 -0.641 0.617 -0.217 0.342 0.112S23 一般機械 0.329 -0.647 0.349 -0.230 0.185 0.103S24 民生用電子・電気機器 1.930 -0.760 1.832 -0.311 0.894 0.075S25 電子計算機・同付属装置 0.489 -0.691 0.450 -0.241 0.211 0.113S26 通信機械 0.562 -0.658 0.522 -0.204 0.245 0.135S27 電子応用装置・電気計測器 -0.184 -0.491 -0.096 -0.079 -0.007 0.177S28 半導体素子・集積回路 -1.133 -0.108 -1.604 0.515 -1.070 0.590S29 電子部品 0.252 -0.543 0.149 -0.065 0.022 0.218S30 重電機器 -0.040 -0.550 0.099 -0.198 0.121 0.084S31 その他の電気機器 0.866 -0.657 0.852 -0.215 0.429 0.121S32 自動車 2.011 -1.164 2.107 -0.796 1.127 -0.216S33 その他の輸送機械 0.721 -0.745 1.066 -0.422 0.718 -0.045S34 精密機械 0.837 -0.615 1.035 -0.268 0.631 0.045S35 その他製造業 1.257 -0.775 1.215 -0.337 0.600 0.056S36 再生資源回収・加工処理 1.425 -1.372 1.371 -0.913 0.669 -0.226S37 建設 0.241 -0.649 0.363 -0.304 0.248 0.025S38 電力 1.782 -2.762 -19.220 1.641 -2.087 0.756 -0.696 -1.264S39 ガス・熱供給 2.217 -2.830 -18.889 2.072 -2.270 0.968 -0.851 -1.264S40 上下水道 2.064 -2.860 -19.047 1.901 -2.203 0.874 -0.765 -1.264S41 一般廃棄物処理 0.441 -0.393 0.791 -0.091 0.584 0.113S42 産業廃棄物処理 0.954 -0.471 0.967 -0.153 0.499 0.089S43 卸売 1.230 -2.677 -19.458 1.178 -2.286 0.576 -0.951 -1.267S44 小売 1.647 -2.629 -19.066 1.553 -2.316 0.748 -1.071 -1.338S45 金融・保険 1.788 -2.572 -18.978 1.594 -2.010 0.703 -0.715 -1.263S46 不動産仲介及び賃貸 1.169 -0.106 1.070 0.673 0.493 0.750S47 住宅賃貸料 0.465 0.071 -0.345 1.187 -0.597 1.189S48 鉄道輸送 2.836 -3.158 -18.657 2.643 -2.592 1.226 -1.010 -1.263S49 道路輸送 1.487 -3.066 -19.539 1.449 -2.705 0.716 -1.189 -1.273S50 水運 2.996 -3.360 -18.985 2.917 -2.908 1.430 -1.254 -1.284S51 航空輸送 4.724 -3.508 -17.631 4.578 -3.051 2.190 -1.285 -1.242S52 その他運輸 2.125 -2.546 -18.632 1.988 -1.999 0.930 -0.725 -1.271S53 通信 0.943 -0.271 0.822 0.275 0.356 0.426S54 放送 1.109 -0.328 0.963 0.235 0.415 0.415S55 教育 0.784 -0.233 0.831 0.014 0.448 0.136S56 研究 0.875 -0.415 0.856 -0.114 0.426 0.100S57 医療・保健 0.583 -0.471 0.828 -0.107 0.549 0.136S58 社会保障 0.906 -0.366 1.020 -0.179 0.579 0.006S59 介護 0.397 -0.346 0.739 -0.036 0.554 0.144S60 その他の公共サービス 0.952 -0.385 0.944 -0.093 0.477 0.105S61 広告・調査 1.214 -0.523 1.117 0.003 0.518 0.275S62 情報サービス 0.265 -0.234 0.235 0.183 0.104 0.311S63 物品賃貸サービス 0.970 -0.366 0.910 0.474 0.431 0.683S64 自動車・機械修理 1.224 -0.755 1.176 -0.396 0.572 -0.014S65 その他の対事業所サービス 0.681 -0.282 0.680 0.092 0.344 0.243S66 娯楽サービス 0.955 -0.393 0.686 0.219 0.210 0.432S67 飲食店 1.211 -0.751 1.101 -0.311 0.505 0.069S68 旅館・その他の宿泊所 1.222 -0.756 1.066 -0.275 0.463 0.111S69 その他の対個人サービス 0.824 -0.282 0.633 0.241 0.223 0.396S70 分類不明 1.057 -0.954 1.008 -0.466 0.487 0.016S71 政府(教育) 0.179 -0.152 0.624 0.072 0.549 0.154S72 政府(研究) 0.383 -0.391 0.923 -0.234 0.749 -0.037S73 政府(社会福祉) 0.429 -0.348 0.864 -0.152 0.666 0.025S74 政府(その他) 0.278 -0.231 0.503 0.223 0.372 0.351

23

Page 26: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

表3.5(2) 技術革新と独占的競争

独占的競争(MONOP)参入・価格規制なし 参入規制あり 価格規制あり

gdp GDP 1.298 1.050 1.191util 家計効用 1.912 1.809 1.769c 家計消費 2.256 2.160 2.056g 政府支出 0.669 0.563 0.615exp 輸出 2.229 2.127 2.084imp 輸入 2.535 2.419 2.370ls 労働供給 -0.557 -0.812 -0.550rk p資本 2.675 2.415 2.610pc p家計消費 -0.743 -0.758 -0.623pl p為替レート -0.734 -0.737 -0.642EV 等価変分 7787.1 7368.8 7206.0

生産 生産者価格 マークアップ率 企業数 生産 生産者価格 マークアップ率 生産 生産者価格 企業数S01 耕種農業 2.332 0.798 2.258 0.678 2.115 0.835S02 畜産 3.184 -0.926 3.056 -0.950 2.923 -0.791S03 林業 0.809 0.866 0.792 0.757 0.694 0.891S04 漁業 2.620 0.113 2.525 0.046 2.392 0.174S05 金属鉱物 -0.083 -0.351 -0.223 -0.334 -0.211 -0.249S06 非金属鉱物 0.847 -1.230 0.751 -1.146 0.751 -1.041S07 石炭 0.080 -0.222 0.019 -0.237 0.017 -0.153S08 原油 -1.256 0.762 -1.149 0.663 -1.301 0.787S09 天然ガス -1.985 0.762 -1.854 0.663 -1.980 0.787S10 食料品 3.571 -0.812 3.427 -0.830 3.284 -0.695S11 飲料 3.014 -0.173 2.886 -0.221 2.771 -0.096S12 たばこ 1.843 0.628 1.805 0.526 1.661 0.662S13 繊維 5.100 -1.278 4.882 -1.259 4.706 -1.145S14 パルプ・紙・木製品 1.596 -0.620 1.502 -0.627 1.461 -0.525S15 化学 2.458 -0.854 2.341 -0.858 2.250 -0.740S16 医薬品 1.081 0.084 0.987 0.031 0.994 0.137S17 石油製品 2.988 -0.900 2.823 -0.896 2.744 -0.790S18 石炭製品 1.151 -0.911 1.063 -0.901 1.049 -0.789S19 窯業・土石 0.762 -0.503 0.691 -0.499 0.688 -0.406S20 鉄鋼 1.191 -0.614 1.105 -0.614 1.095 -0.516S21 非鉄金属 0.978 -0.541 0.909 -0.548 0.882 -0.451S22 金属製品 0.854 -0.306 0.786 -0.319 0.782 -0.240S23 一般機械 0.405 -0.359 0.366 -0.370 0.387 -0.295S24 民生用電子・電気機器 3.778 -0.611 3.630 -0.623 3.486 -0.522S25 電子計算機・同付属装置 0.481 -0.386 0.450 -0.402 0.437 -0.316S26 通信機械 0.828 -0.354 0.782 -0.372 0.759 -0.284S27 電子応用装置・電気計測器 -0.662 -0.051 -0.659 -0.079 -0.611 -0.008S28 半導体素子・集積回路 -4.273 1.271 -4.036 1.154 -4.060 1.251S29 電子部品 -0.259 -0.028 -0.251 -0.065 -0.267 0.022S30 重電機器 -0.210 -0.264 -0.228 -0.275 -0.186 -0.209S31 その他の電気機器 1.178 -0.303 1.111 -0.324 1.075 -0.235S32 自動車 4.145 -1.603 3.943 -1.563 3.855 -1.457S33 その他の輸送機械 1.111 -0.629 0.981 -0.618 1.045 -0.553S34 精密機械 1.644 -0.416 1.534 -0.422 1.547 -0.352S35 その他製造業 2.147 -0.625 2.036 -0.632 1.974 -0.534S36 再生資源回収・加工処理 1.966 -1.656 1.832 -1.573 1.788 -1.463S37 建設 0.322 -0.544 0.269 -0.535 0.289 -0.465S38 電力 1.829 -0.670 -0.082 0.589 1.726 -0.673 0.000 1.671 -0.550 1.197S39 ガス・熱供給 2.411 -1.632 -0.204 1.474 2.237 -1.496 0.000 2.180 -1.388 3.031S40 上下水道 2.204 -1.465 -0.160 1.151 2.072 -1.403 0.000 2.016 -1.285 2.356S41 一般廃棄物処理 0.709 -0.035 0.595 -0.048 0.651 0.008S42 産業廃棄物処理 1.412 -0.155 1.314 -0.161 1.293 -0.102S43 卸売 2.251 -4.845 -0.283 1.967 2.141 -4.636 -0.012 2.080 -4.555 4.233S44 小売 3.100 -5.894 -0.552 0.960 2.961 -5.799 -0.421 2.857 -5.387 5.438S45 金融・保険 2.662 -2.840 -0.239 1.749 2.519 -2.702 0.002 2.455 -2.606 3.584S46 不動産仲介及び賃貸 2.147 1.258 2.043 1.123 1.983 1.250S47 住宅賃貸料 -0.590 2.099 -0.489 1.884 -0.630 2.063S48 鉄道輸送 3.337 -2.587 -0.262 1.918 3.086 -2.381 0.002 3.029 -2.282 3.912S49 道路輸送 2.494 -4.382 -0.490 3.446 2.318 -3.963 -0.020 2.267 -3.862 7.547S50 水運 14.693 -6.884 -0.528 2.459 14.239 -6.547 -0.192 13.969 -6.251 6.689S51 航空輸送 8.641 -4.473 -0.641 5.339 7.661 -3.814 0.059 7.657 -3.768 10.272S52 その他運輸 4.014 -2.994 -0.330 2.190 3.759 -2.806 -0.027 3.694 -2.687 4.681S53 通信 1.405 0.536 1.332 0.464 1.284 0.558S54 放送 1.664 0.472 1.581 0.403 1.520 0.501S55 教育 1.417 0.081 1.329 0.058 1.316 0.104S56 研究 1.277 -0.100 1.204 -0.120 1.171 -0.061S57 医療・保健 0.977 -0.193 0.873 -0.216 0.903 -0.143S58 社会保障 1.787 -0.286 1.677 -0.286 1.669 -0.244S59 介護 0.721 -0.038 0.619 -0.064 0.670 -0.003S60 その他の公共サービス 1.649 -0.176 1.554 -0.190 1.524 -0.130S61 広告・調査 1.938 -0.024 1.836 -0.069 1.777 0.036S62 情報サービス 0.267 0.341 0.247 0.289 0.233 0.363S63 物品賃貸サービス 1.427 0.913 1.330 0.793 1.296 0.933S64 自動車・機械修理 1.949 -0.780 1.827 -0.774 1.785 -0.693S65 その他の対事業所サービス 1.026 0.208 0.958 0.168 0.938 0.234S66 娯楽サービス 1.119 0.488 1.074 0.413 1.005 0.521S67 飲食店 1.984 -0.640 1.887 -0.654 1.824 -0.548S68 旅館・その他の宿泊所 1.740 -0.404 1.651 -0.421 1.590 -0.322S69 その他の対個人サービス 1.040 0.494 0.992 0.426 0.940 0.517S70 分類不明 1.693 -0.893 1.596 -0.889 1.554 -0.776S71 政府(教育) 0.469 0.176 0.368 0.148 0.443 0.188S72 政府(研究) 0.777 -0.192 0.644 -0.188 0.735 -0.158S73 政府(社会福祉) 0.953 -0.217 0.831 -0.222 0.897 -0.180S74 政府(その他) 0.276 0.432 0.201 0.372 0.239 0.451

24

Page 27: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

表3.5(3) 技術革新と自然独占

政府企業(RAMSEY)価格規制なし 価格規制あり

gdp GDP 1.352 1.192util 家計効用 1.987 1.770c 家計消費 2.362 2.059g 政府支出 0.777 1.413exp 輸出 2.309 2.180imp 輸入 2.627 2.475ls 労働供給 -0.559 -0.547rk p資本 2.699 2.600pc p家計消費 -0.808 -0.628pl p為替レート -0.789 -0.647EV 等価変分 8090.2 7207.0

生産 生産者価格 マークアップ率 生産 生産者価格S01 耕種農業 2.436 0.771 2.157 0.827S02 畜産 3.301 -0.992 2.960 -0.797S03 林業 0.877 0.845 0.775 0.885S04 漁業 2.725 0.079 2.437 0.168S05 金属鉱物 0.037 -0.421 -0.067 -0.253S06 非金属鉱物 0.932 -1.354 1.023 -1.046S07 石炭 0.148 -0.270 0.191 -0.157S08 原油 -1.208 0.737 -1.191 0.781S09 天然ガス -1.951 0.737 -1.855 0.781S10 食料品 3.697 -0.869 3.315 -0.700S11 飲料 3.131 -0.217 2.799 -0.101S12 たばこ 1.925 0.605 1.673 0.656S13 繊維 5.238 -1.336 4.742 -1.148S14 パルプ・紙・木製品 1.682 -0.675 1.638 -0.529S15 化学 2.569 -0.919 2.361 -0.744S16 医薬品 1.178 0.051 1.514 0.133S17 石油製品 3.125 -0.964 2.852 -0.795S18 石炭製品 1.228 -0.983 1.260 -0.794S19 窯業・土石 0.828 -0.568 0.939 -0.410S20 鉄鋼 1.262 -0.679 1.260 -0.520S21 非鉄金属 1.046 -0.599 1.015 -0.455S22 金属製品 0.916 -0.351 1.008 -0.243S23 一般機械 0.437 -0.405 0.449 -0.298S24 民生用電子・電気機器 3.888 -0.658 3.503 -0.526S25 電子計算機・同付属装置 0.516 -0.432 0.544 -0.319S26 通信機械 0.877 -0.398 0.885 -0.287S27 電子応用装置・電気計測器 -0.656 -0.085 -0.433 -0.011S28 半導体素子・集積回路 -4.376 1.274 -3.968 1.247S29 電子部品 -0.243 -0.063 -0.156 0.018S30 重電機器 -0.207 -0.301 -0.113 -0.212S31 その他の電気機器 1.232 -0.344 1.171 -0.238S32 自動車 4.270 -1.675 3.878 -1.459S33 その他の輸送機械 1.187 -0.677 1.309 -0.555S34 精密機械 1.706 -0.456 1.676 -0.355S35 その他製造業 2.240 -0.676 2.098 -0.537S36 再生資源回収・加工処理 2.080 -1.771 1.931 -1.467S37 建設 0.374 -0.594 0.613 -0.468S38 電力 1.932 -0.760 -0.145 1.806 -0.555S39 ガス・熱供給 2.565 -1.807 -0.355 2.281 -1.393S40 上下水道 2.334 -1.601 -0.279 2.156 -1.291S41 一般廃棄物処理 0.815 -0.065 1.380 0.005S42 産業廃棄物処理 1.506 -0.191 1.575 -0.104S43 卸売 2.341 -5.044 -0.474 2.186 -4.558S44 小売 3.211 -5.973 -0.610 2.928 -5.389S45 金融・保険 2.799 -3.018 -0.417 2.547 -2.611S46 不動産仲介及び賃貸 2.244 1.254 2.110 1.243S47 住宅賃貸料 -0.560 2.106 -0.623 2.054S48 鉄道輸送 3.556 -2.819 -0.460 3.110 -2.287S49 道路輸送 2.634 -4.718 -0.813 2.412 -3.865S50 水運 15.039 -7.168 -0.752 14.110 -6.254S51 航空輸送 9.437 -5.046 -1.188 7.734 -3.772S52 その他運輸 4.231 -3.207 -0.554 3.799 -2.691S53 通信 1.482 0.517 1.394 0.554S54 放送 1.749 0.449 1.608 0.496S55 教育 1.472 0.065 1.322 0.102S56 研究 1.343 -0.124 1.316 -0.063S57 医療・保健 1.077 -0.223 1.530 -0.146S58 社会保障 1.849 -0.309 1.668 -0.246S59 介護 0.817 -0.060 1.380 -0.005S60 その他の公共サービス 1.720 -0.203 1.562 -0.132S61 広告・調査 2.032 -0.058 1.901 0.032S62 情報サービス 0.295 0.325 0.350 0.359S63 物品賃貸サービス 1.523 0.889 1.495 0.926S64 自動車・機械修理 2.052 -0.830 1.910 -0.696S65 その他の対事業所サービス 1.095 0.189 1.145 0.231S66 娯楽サービス 1.187 0.463 1.038 0.516S67 飲食店 2.070 -0.685 1.883 -0.552S68 旅館・その他の宿泊所 1.827 -0.452 1.640 -0.325S69 その他の対個人サービス 1.101 0.475 0.981 0.513S70 分類不明 1.782 -0.957 1.719 -0.780S71 政府(教育) 0.553 0.167 1.184 0.186S72 政府(研究) 0.879 -0.214 1.531 -0.159S73 政府(社会福祉) 1.047 -0.239 1.562 -0.182S74 政府(その他) 0.374 0.416 0.999 0.448

25

Page 28: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

26

4 税制改革のシミュレーション

京都議定書が発効し、温室効果ガスの排出目標達成のために環境税導入の是非について

関心が高まっている。また、財政健全化に向けて、歳出面の構造改革に引き続き取り組む

一方で、国民負担のあり方についても議論が始まろうとしている。そこで、本節では税制

の変更に関して、1)炭素税の影響、2)財政赤字削減に際しての税源の違いによる影響

をシミュレーションした。税制シミュレーションについては、本モデルはまだプロトタイ

プ・モデルであり、家計を所得階層や世代などの属性別に分けるなどの改良が必要なこと

に留意する必要がある。 4.1 炭素税(表 4.1)

炭素税として、炭素 1 トンあたり 2500 円の課税を行うものとする。この場合、石炭 1.78円/キログラム、石油 1.80 円/リットル、ガス 1.89 円/キログラムとなるが、2000 年時

点での輸入価格を前提として輸入税率として換算すれば、石炭 41.8%、石油 9.3%、ガス

9.2%に相当する。そこで、輸入関税(国内生産については内国間接税)として炭素税を課

税した時の影響をみた。なお、中間投入についても価格の相違を反映して原燃料の転換が

起こりうるので、本シミュレーションではエネルギー財(石炭、原油、天然ガス、石油製

品、石炭製品、電力、ガス・熱供給)の中間投入について代替を許容(弾性値1)するこ

とにした。 川上段階の影響をみると、化石燃料の消費(需要)量は、石炭(16.0%)、原油(3.8%)

の減少、天然ガスは微増(0.1%)となり、税率の高い石炭の需要減が特に目立つ。川下段

階への影響をみると、まず原油を原料とするガソリンなどの石油製品(国内生産3.5%、

需要61.6%)、石炭製品(国内生産3.5%、需要2.9%)への影響が大きく、次いで国

内生産でみると水運(2.3%)、再生資源回収・加工業(1.5%)、金属鉱物(1.2%)、

化学(0.8%)、航空輸送(0.8%)の順に減少率が大きくなっており、エネルギー多消

費産業への影響が大きいことがわかる。石炭製品(コークス)を原料に使用する鉄鋼も

0.5%の減少となる。他方、エネルギー産業の中でも電力は国内生産 0.4%増、需要 0.4%増

と増加しており、石炭・石油から燃料転換することがうかがわれる。 マクロ的な影響をみると、GDPの低下が0.2%、家計の効用の減少が0.3%で、家計

消費デフレータの上昇は 0.2%と、それほど大きくはない。 なお、本モデルは一国モデルであり、炭素税の導入により国際価格は変わらないとの前

提が置かれているが、そのことが川下部門への影響を左右している可能性がある。炭素税

の導入の検討に当たっては、一国単独での導入だけではなく、先進国や世界全体で協調し

て実施する場合などを比較検証する必要があろう。また、炭素税による増収分をどう使う

6 購入者価格評価のためマージンを含む。

Page 29: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

表4.1 炭素税の影響

gdp GDP -0.197util 家計効用 -0.261c 家計消費 -0.365g 政府支出 0.672exp 輸出 -0.265imp 輸入 -0.325ls 労働供給 0.006rk p資本 -0.085pc p家計消費 0.234pl p為替レート 0.214EV 等価変分 -1062.8

生産 生産者価格 需要 購入者価格S01 耕種農業 -0.197 0.141 -0.220 0.158S02 畜産 -0.199 0.125 -0.203 0.133S03 林業 -0.133 0.100 -0.192 0.129S04 漁業 -0.324 0.364 -0.247 0.276S05 金属鉱物 -1.199 0.457 -0.444 0.266S06 非金属鉱物 -0.186 0.504 -0.100 0.546S07 石炭 -35.922 57.338 -15.953 34.595S08 原油 -8.651 10.626 -3.758 8.234S09 天然ガス -3.138 10.563 0.133 7.754S10 食料品 -0.225 0.157 -0.243 0.155S11 飲料 -0.240 0.156 -0.249 0.156S12 たばこ -0.151 0.074 -0.224 0.100S13 繊維 -0.195 0.190 -0.234 0.167S14 パルプ・紙・木製品 -0.076 0.285 -0.058 0.269S15 化学 -0.827 0.831 -0.462 0.621S16 医薬品 0.383 0.147 0.366 0.149S17 石油製品 -3.493 6.677 -1.605 4.309S18 石炭製品 -3.479 9.997 -2.898 8.796S19 窯業・土石 -0.012 0.501 0.064 0.413S20 鉄鋼 -0.532 1.090 -0.305 0.972S21 非鉄金属 -0.325 0.434 -0.086 0.344S22 金属製品 0.024 0.334 0.044 0.321S23 一般機械 0.069 0.185 0.044 0.167S24 民生用電子・電気機器 -0.132 0.133 -0.207 0.123S25 電子計算機・同付属装置 0.400 0.062 0.109 0.119S26 通信機械 0.086 0.121 0.050 0.126S27 電子応用装置・電気計測器 0.450 0.048 0.241 0.088S28 半導体素子・集積回路 0.736 0.011 0.207 0.110S29 電子部品 0.310 0.124 0.246 0.132S30 重電機器 0.111 0.174 0.068 0.174S31 その他の電気機器 0.076 0.176 0.039 0.166S32 自動車 -0.119 0.194 -0.136 0.181S33 その他の輸送機械 -0.123 0.294 0.012 0.264S34 精密機械 0.279 0.084 0.068 0.112S35 その他製造業 -0.094 0.212 -0.095 0.201S36 再生資源回収・加工処理 -1.505 2.876 -0.452 2.483S37 建設 0.171 0.260 0.171 0.260S38 電力 0.366 1.702 0.371 1.702S39 ガス・熱供給 -0.674 1.991 -0.671 1.990S40 上下水道 -0.145 0.195 -0.145 0.195S41 一般廃棄物処理 0.564 0.162 0.564 0.162S42 産業廃棄物処理 0.079 0.147 0.079 0.147S43 卸売 -0.165 0.058 -0.174 0.207S44 小売 -0.262 0.088 -0.094 0.088S45 金融・保険 -0.128 0.015 -0.136 0.017S46 不動産仲介及び賃貸 -0.167 0.026 -0.167 0.026S47 住宅賃貸料 -0.079 -0.053 -0.079 -0.053S48 鉄道輸送 -0.177 0.129 -0.171 0.130S49 道路輸送 -0.263 0.966 -0.300 0.962S50 水運 -2.302 0.667 -1.917 0.353S51 航空輸送 -0.794 0.566 -0.346 0.420S52 その他運輸 -0.307 0.072 -0.330 0.077S53 通信 -0.099 0.053 -0.103 0.054S54 放送 -0.135 0.077 -0.135 0.077S55 教育 -0.215 0.093 -0.215 0.093S56 研究 0.025 0.165 0.024 0.165S57 医療・保健 0.497 0.103 0.497 0.103S58 社会保障 -0.226 0.095 -0.226 0.095S59 介護 0.609 0.089 0.609 0.089S60 その他の公共サービス -0.182 0.087 -0.188 0.088S61 広告・調査 -0.102 0.097 -0.116 0.102S62 情報サービス 0.089 0.046 0.074 0.053S63 物品賃貸サービス 0.008 -0.003 -1.001 0.000S64 自動車・機械修理 -0.142 0.128 -0.142 0.128S65 その他の対事業所サービス 0.078 0.039 0.059 0.045S66 娯楽サービス -0.213 0.122 -0.218 0.124S67 飲食店 -0.194 0.140 -0.199 0.142S68 旅館・その他の宿泊所 -0.181 0.134 -0.215 0.149S69 その他の対個人サービス -0.191 0.105 -0.192 0.105S70 分類不明 -0.063 0.174 -0.063 0.174S71 政府(教育) 0.684 0.053 0.684 0.053S72 政府(研究) 0.636 0.163 0.636 0.163S73 政府(社会福祉) 0.552 0.094 0.552 0.094S74 政府(その他) 0.672 0.079 0.672 0.079

27

Page 30: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

28

か、本モデルでは政府支出の増加に回るようになっているが、政府支出の中でも特に環境

対策に用いるとどうなるか、また、財政赤字削減に回すとどうかなど、様々なシナリオが

考えられる。より現実的なシナリオに適合できるよう、モデルの改良を進めていく必要が

ある。 4.2 財政赤字削減の税源(表 4.2)

政府貯蓄を 10 兆円増加(財政赤字を 10 兆円削減)するように増税する場合、所得税に

よる場合と消費税による場合の影響の違いを比べた。これまでのシミュレーションでは税

率は外生であったが、ここでは政府支出を外生にして政府貯蓄が目標値になるように税率

を内生的に決めることになる。モデル上は TAU_TX という税率調整変数を設け、政府支出

規模が変わらないように制約式を設けることになる。 (税率外生)

$PROD:LS

O:PLS Q:L0 P:pl0

I:PL Q:L0 A:GOVT t:txl

(税率内生) $PROD:LS

O:PLS Q:L0 P:pl0

I:PL Q:L0 A:GOVT N:TAU_TX M:txl

(政府支出の制約式) $CONSTRAINT:TAU_TX

GOV =E= GSIZE;

所得税の場合は、平均税率を 10.4%から 15.6%に引き上げると政府貯蓄が 10 兆円増加

し、GDPは1.0%、家計消費は1.8%、家計の効用は0.25%の減少となった。また、

労働供給は所得税率が上昇する結果、1.7%減少する結果となった。部門別にみると、政

府(その他)、天然ガス以外の全ての部門で生産が減少しており、教育(2.4%)、繊維(

2.3%)、その他の公共サービス(2.1%)の順に減少率が大きくなっている。これらの部

門の家計消費に占める割合が大きいことが反映していると考えられる。 次に消費税の場合をみると、消費税率を 5%から 9.6%に引き上げると政府貯蓄が 10 兆

円増加し、GDPは0.8%、家計消費は1.4%、家計の効用は0.24%の減少となる。家

計消費デフレータは 2.6%上昇することになり、おおむね消費税率の引き上げ幅に家計消費

比率を掛け合わせた大きさに見合っている。部門別にみると、所得税同様に大部分の産業

で生産が減少しているが、住宅賃貸料、一般廃棄物処理、政府(教育)などの部門では生

産が増加している。住宅賃貸料は非課税品目であることが影響していると考えられる。 以上の結果、GDPへの影響からは同程度の増収を得るためには消費税の方が歪みの少

ない税であるといえる。ただし、税制の検討にあたっては、所得分配の影響など多面的な

検討が必要である。本モデルでは家計部門は一つにまとめているが、一般均衡モデルは複

Page 31: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

表4.2 政府貯蓄を10兆円増加させる時の税源

所得税 消費税gdp GDP -1.003 -0.776util 家計効用 -0.251 -0.243c 家計消費 -1.811 -1.407exp 輸出 -1.108 -1.131imp 輸入 -1.267 -1.300ls 労働供給 -1.681 -1.278rk p資本 -2.372 -1.085pc p家計消費 -1.811 2.642pl p為替レート -0.917 -0.382EV 等価変分 -1022.8 -991.2

生産 生産者価格 生産 生産者価格

S01 耕種農業 -1.417 -1.710 -2.220 -0.702S02 畜産 -1.684 -1.298 -2.156 -0.480S03 林業 -1.061 -1.493 -0.318 -0.646S04 漁業 -1.637 -1.255 -2.239 -0.498S05 金属鉱物 -0.791 -0.900 -1.052 -0.327S06 非金属鉱物 -0.403 -0.993 -1.158 -0.331S07 石炭 -0.960 -0.892 -1.557 -0.288S08 原油 -0.029 -1.433 -1.434 -0.552S09 天然ガス 0.067 -1.433 -1.262 -0.552S10 食料品 -1.864 -1.110 -2.458 -0.435S11 飲料 -1.829 -1.195 -2.395 -0.478S12 たばこ -1.492 -1.452 -2.412 -0.608S13 繊維 -2.265 -0.747 -2.651 -0.236S14 パルプ・紙・木製品 -0.959 -0.953 -1.363 -0.354S15 化学 -1.337 -1.041 -1.829 -0.364S16 医薬品 -0.677 -1.089 -0.548 -0.421S17 石油製品 -1.478 -0.970 -1.906 -0.372S18 石炭製品 -0.621 -1.021 -1.085 -0.380S19 窯業・土石 -0.544 -0.940 -1.217 -0.326S20 鉄鋼 -0.669 -1.004 -0.787 -0.363S21 非鉄金属 -0.764 -0.979 -0.933 -0.354S22 金属製品 -0.593 -0.832 -1.095 -0.299S23 一般機械 -0.305 -0.796 0.695 -0.261S24 民生用電子・電気機器 -2.011 -0.862 -2.540 -0.300S25 電子計算機・同付属装置 -0.578 -0.846 -0.471 -0.269S26 通信機械 -0.531 -0.883 -0.124 -0.314S27 電子応用装置・電気計測器 -0.215 -0.775 -0.233 -0.258S28 半導体素子・集積回路 -0.211 -1.147 -0.630 -0.414S29 電子部品 -0.769 -0.922 -0.763 -0.341S30 重電機器 -0.505 -0.671 0.629 -0.211S31 その他の電気機器 -1.202 -0.844 -1.324 -0.293S32 自動車 -1.617 -0.690 -1.730 -0.208S33 その他の輸送機械 -1.204 -0.600 -0.531 -0.134S34 精密機械 -1.335 -0.656 -1.783 -0.189S35 その他製造業 -1.368 -0.857 -1.570 -0.309S36 再生資源回収・加工処理 -0.996 -0.900 -1.333 -0.326S37 建設 -0.163 -0.676 -1.082 -0.240S38 電力 -1.230 -1.411 -1.617 -0.554S39 ガス・熱供給 -1.521 -1.168 -1.942 -0.472S40 上下水道 -1.365 -1.349 -1.745 -0.555S41 一般廃棄物処理 -0.232 -0.596 1.369 -0.239S42 産業廃棄物処理 -1.117 -0.625 -1.181 -0.220S43 卸売 -1.185 -0.771 -1.354 -0.249S44 小売 -1.613 -0.609 -2.024 -0.203S45 金融・保険 -1.332 -1.131 -0.738 0.675S46 不動産仲介及び賃貸 -1.216 -1.514 -1.352 -0.624S47 住宅賃貸料 -0.831 -2.156 1.774 -0.566S48 鉄道輸送 -1.518 -1.160 -2.072 -0.246S49 道路輸送 -1.251 -0.682 -1.559 -0.208S50 水運 -1.261 -0.855 -1.941 -0.098S51 航空輸送 -1.769 -0.857 -1.246 -0.128S52 その他運輸 -1.395 -1.099 -1.709 -0.425S53 通信 -1.412 -1.068 -1.767 -0.409S54 放送 -1.444 -1.101 -1.726 -0.426S55 教育 -2.428 -0.486 0.175 0.552S56 研究 -0.958 -0.594 -0.989 -0.206S57 医療・保健 -0.471 -0.715 -0.190 1.515S58 社会保障 -2.611 -0.368 0.030 1.168S59 介護 -0.347 -0.610 0.363 0.986S60 その他の公共サービス -2.103 -0.574 -0.547 1.429S61 広告・調査 -1.240 -1.028 -1.306 -0.387S62 情報サービス -0.657 -0.815 -0.558 -0.315S63 物品賃貸サービス -0.907 -1.634 -1.075 -0.558S64 自動車・機械修理 -1.389 -0.699 -1.686 -0.237S65 その他の対事業所サービス -0.838 -0.733 -0.699 -0.237S66 娯楽サービス -1.660 -1.197 -2.320 -0.458S67 飲食店 -1.758 -0.865 -2.072 -0.326S68 旅館・その他の宿泊所 -1.748 -0.946 -1.792 -0.310S69 その他の対個人サービス -1.849 -1.023 -2.453 -0.420S70 分類不明 -1.084 -0.958 -1.157 -0.248S71 政府(教育) -0.422 -0.441 1.009 0.346S72 政府(研究) -0.398 -0.313 0.392 0.974S73 政府(社会福祉) -0.698 -0.386 0.170 1.171S74 政府(その他) 0.096 -0.887 0.515 0.791

29

Page 32: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

30

数家計の分析にも適したモデルである。今後、所得階級別や世代別などに家計を分割し、

モデルを拡張していくことが望まれる。 おわりに

本論文では、応用一般均衡(CGE)モデルの基礎的研究として、2000 年産業連関表を

もとにした日本経済モデルを作成し、いくつかのシミュレーションを示すことでその活用

分野例を示した。また、収穫逓増下にある独占的競争状況をモデルに取り込むことにより、

規制改革の分析を従来のシミュレーションより理論的に精緻なものとしている。 本モデルでは産業は複数に分かれているが、家計は一つしかない。また、静学モデルで

投資などは外生で扱われている。このような点からも、CGE分析としてまだ第一段階の

出発点にすぎない。例えば、家計を世代別に分けて、動学的な世代重複モデルへとモデル

を拡張させていくことが考えられる。その際、今回のモデル開発に使用した GAMS-MPSGEは様々な応用事例がインターネット上などでも公開されており、比較的容易に発展させる

ことができると期待している。

Page 33: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

31

(参考1) 弾性値によるモデルの感応度の相違

応用一般均衡モデルにおける各種弾性値は、その都度計量経済的な計測をするわけでは

なく、理論値や先行研究の成果を生かすのが一般的である。本論文では、資本と労働の代

替の弾力性は1(コブ・ダグラス型)を採用し、アーミントン係数(国内財と輸入材の間

の代替の弾力性)については GTAP データベースの値を参照している。 これらの弾性値はモデル分析で重要な役割を演じており、その大小がシミュレーション

結果を左右する場合がありうる。そこで、弾性値の違いがシミュレーション結果にどの程

度影響するかという感応度分析を行い、モデルのパフォーマンスをみることとする。 ここでは、規制改革で労働生産性が上昇するシミュレーションを用いて、生産要素間の

代替弾力性(sigma)が(1)1.0 のケース、(2)0.5 のケース、(3)2.0 のケースと、(4)アーミン

トン係数が全て 0.5 のケースを比較した。結果は付表2のとおりで、弾性値が大きい方が全

般に影響が大きくなる傾向があるが、シミュレーション結果を左右するほど大きいもので

はない。 付表1.本モデルのアーミントン係数

S01 耕種農業 2.2 S26 通信機械 2.8 S51 航空輸送 1.9

S02 畜産 2.8 S27 電子応用装置・電気計測器 2.8 S52 その他運輸 1.9

S03 林業 2.8 S28 半導体素子・集積回路 2.8 S53 通信 1.9

S04 漁業 2.8 S29 電子部品 2.8 S54 放送 1.9

S05 金属鉱物 2.8 S30 重電機器 2.8 S55 教育 1.9

S06 非金属鉱物 2.8 S31 その他の電気機器 2.8 S56 研究 1.9

S07 石炭 2.8 S32 自動車 5.2 S57 医療・保健 1.9

S08 原油 2.8 S33 その他の輸送機械 5.2 S58 社会保障 1.9

S09 天然ガス 2.8 S34 精密機械 2.8 S59 介護 1.9

S10 食料品 2.2 S35 その他製造業 2.8 S60 その他の公共サービス 1.9

S11 飲料 3.1 S36 再生資源回収・加工処理 2.8 S61 広告・調査 1.9

S12 たばこ 3.1 S37 建設 1.9 S62 情報サービス 1.9

S13 繊維 4.4 S38 電力 2.8 S63 物品賃貸サービス 1.9

S14 パルプ・紙・木製品 1.8 S39 ガス・熱供給 2.8 S64 自動車・機械修理 1.9

S15 化学 1.9 S40 上下水道 2.8 S65 その他の対事業所サービス 1.9

S16 医薬品 1.9 S41 一般廃棄物処理 2.8 S66 娯楽サービス 1.9

S17 石油製品 1.9 S42 産業廃棄物処理 2.8 S67 飲食店 1.9

S18 石炭製品 1.9 S43 卸売 1.9 S68 旅館・その他の宿泊所 1.9

S19 窯業・土石 1.9 S44 小売 1.9 S69 その他の対個人サービス 1.9

S20 鉄鋼 2.8 S45 金融・保険 1.9 S70 分類不明 1.9

S21 非鉄金属 2.8 S46 不動産仲介及び賃貸 1.9 S71 政府(教育) 1.9

S22 金属製品 2.8 S47 住宅賃貸料 1.9 S72 政府(研究) 1.9

S23 一般機械 2.8 S48 鉄道輸送 1.9 S73 政府(社会福祉) 1.9

S24 民生用電子・電気機器 2.8 S49 道路輸送 1.9 S74 政府(その他) 1.9

S25 電子計算機・同付属装置 2.8 S50 水運 1.9

Page 34: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

付表2.弾性値の違いによる感応度分析(規制部門の労働生産性10%上昇、参入・価格規制なしの場合)

(1)sigma=1.0 (2)sigma=0.5 (3)sigma=2.0 (4)アーミントン値0.5gdp GDP 1.298 1.199 1.383 1.273util 家計効用 1.912 1.876 1.943 1.881c 家計消費 2.256 1.936 2.528 2.209g 政府支出 0.669 0.627 0.704 0.654exp 輸出 2.229 2.159 2.287 2.081imp 輸入 2.535 2.459 2.598 2.356ls 労働供給 -0.557 -0.860 -0.302 -0.559rk p資本 2.675 3.910 1.638 2.675pc p家計消費 -0.743 -0.138 -1.251 -0.709pl p為替レート -0.734 -0.278 -1.115 -0.744EV 等価変分 7787.1 7640.7 7911.2 7660.1

生産 生産者価格 生産 生産者価格 生産 生産者価格 生産 生産者価格

S01 耕種農業 2.332 0.798 1.886 1.689 2.709 0.052 2.683 0.814S02 畜産 3.184 -0.926 2.917 -0.250 3.408 -1.492 3.097 -0.885S03 林業 0.809 0.866 0.366 1.641 1.184 0.217 1.550 0.877S04 漁業 2.620 0.113 2.286 0.765 2.902 -0.433 2.879 0.135S05 金属鉱物 -0.083 -0.351 -0.223 0.123 0.034 -0.747 0.807 -0.332S06 非金属鉱物 0.847 -1.230 0.768 -0.709 0.913 -1.666 0.720 -1.208S07 石炭 0.080 -0.222 -0.072 0.241 0.207 -0.609 1.146 -0.210S08 原油 -1.256 0.762 -2.183 1.507 -0.465 0.139 2.020 0.770S09 天然ガス -1.985 0.762 -2.921 1.507 -1.186 0.139 1.252 0.770S10 食料品 3.571 -0.812 3.324 -0.235 3.778 -1.295 3.473 -0.776S11 飲料 3.014 -0.173 2.766 0.448 3.223 -0.693 3.026 -0.150S12 たばこ 1.843 0.628 1.364 1.382 2.248 -0.003 2.381 0.643S13 繊維 5.100 -1.278 5.112 -0.887 5.088 -1.604 4.147 -1.232S14 パルプ・紙・木製品 1.596 -0.620 1.467 -0.124 1.703 -1.034 1.586 -0.597S15 化学 2.458 -0.854 2.224 -0.308 2.656 -1.311 2.354 -0.817S16 医薬品 1.081 0.084 0.975 0.651 1.170 -0.390 1.149 0.102S17 石油製品 2.988 -0.900 2.819 -0.410 3.129 -1.310 2.815 -0.891S18 石炭製品 1.151 -0.911 1.071 -0.383 1.217 -1.352 1.069 -0.879S19 窯業・土石 0.762 -0.503 0.692 -0.012 0.820 -0.914 0.790 -0.484S20 鉄鋼 1.191 -0.614 1.145 -0.089 1.229 -1.053 1.130 -0.586S21 非鉄金属 0.978 -0.541 0.849 -0.030 1.086 -0.968 1.139 -0.516S22 金属製品 0.854 -0.306 0.798 0.127 0.901 -0.668 0.875 -0.290S23 一般機械 0.405 -0.359 0.393 0.067 0.415 -0.716 0.461 -0.329S24 民生用電子・電気機器 3.778 -0.611 3.652 -0.153 3.883 -0.994 3.680 -0.568S25 電子計算機・同付属装置 0.481 -0.386 0.390 0.072 0.556 -0.769 0.746 -0.339S26 通信機械 0.828 -0.354 0.724 0.110 0.916 -0.741 0.860 -0.329S27 電子応用装置・電気計測器 -0.662 -0.051 -0.655 0.368 -0.668 -0.402 -0.396 -0.016S28 半導体素子・集積回路 -4.273 1.271 -4.745 1.900 -3.873 0.745 -2.008 1.329S29 電子部品 -0.259 -0.028 -0.411 0.460 -0.131 -0.435 0.272 -0.002S30 重電機器 -0.210 -0.264 -0.106 0.097 -0.297 -0.565 -0.049 -0.234S31 その他の電気機器 1.178 -0.303 1.114 0.149 1.231 -0.680 1.301 -0.265S32 自動車 4.145 -1.603 4.214 -1.225 4.086 -1.918 3.604 -1.533S33 その他の輸送機械 1.111 -0.629 1.320 -0.296 0.935 -0.907 1.040 -0.583S34 精密機械 1.644 -0.416 1.773 -0.060 1.533 -0.713 1.816 -0.380S35 その他製造業 2.147 -0.625 2.034 -0.178 2.242 -0.999 2.120 -0.599S36 再生資源回収・加工処理 1.966 -1.656 1.831 -1.186 2.080 -2.049 1.733 -1.608S37 建設 0.322 -0.544 0.291 -0.192 0.348 -0.838 0.316 -0.529S38 電力 1.829 -0.670 1.604 0.060 2.018 -1.280 1.816 -0.658S39 ガス・熱供給 2.411 -1.632 2.192 -1.028 2.596 -2.138 2.381 -1.620S40 上下水道 2.204 -1.465 1.950 -0.758 2.418 -2.057 2.177 -1.454S41 一般廃棄物処理 0.709 -0.035 0.714 0.274 0.704 -0.293 0.695 -0.028S42 産業廃棄物処理 1.412 -0.155 1.283 0.170 1.520 -0.426 1.374 -0.146S43 卸売 2.251 -4.845 2.136 -4.436 2.346 -5.188 2.193 -4.820S44 小売 3.100 -5.894 2.954 -5.572 3.221 -6.163 3.000 -5.628S45 金融・保険 2.662 -2.840 2.402 -2.242 2.882 -3.341 2.571 -2.829S46 不動産仲介及び賃貸 2.147 1.258 1.973 2.044 2.293 0.600 2.008 1.262S47 住宅賃貸料 -0.590 2.099 -1.382 3.221 0.087 1.156 -0.605 2.101S48 鉄道輸送 3.337 -2.587 3.067 -1.973 3.565 -3.101 3.248 -2.572S49 道路輸送 2.494 -4.382 2.374 -4.010 2.594 -4.693 2.435 -4.342S50 水運 14.693 -6.884 14.433 -6.403 14.912 -7.286 11.597 -6.381S51 航空輸送 8.641 -4.473 8.400 -3.994 8.843 -4.873 6.171 -4.322S52 その他運輸 4.014 -2.994 3.795 -2.414 4.198 -3.479 3.600 -2.942S53 通信 1.405 0.536 1.223 1.090 1.559 0.073 1.381 0.543S54 放送 1.664 0.472 1.465 1.043 1.831 -0.006 1.649 0.481S55 教育 1.417 0.081 1.451 0.332 1.386 -0.130 1.400 0.086S56 研究 1.277 -0.100 1.183 0.208 1.356 -0.358 1.387 -0.090S57 医療・保健 0.977 -0.193 0.922 0.178 1.021 -0.503 0.958 -0.180S58 社会保障 1.787 -0.286 1.891 -0.094 1.698 -0.446 1.765 -0.276S59 介護 0.721 -0.038 0.727 0.278 0.715 -0.303 0.706 -0.029S60 その他の公共サービス 1.649 -0.176 1.612 0.122 1.679 -0.425 1.634 -0.163S61 広告・調査 1.938 -0.024 1.769 0.510 2.079 -0.470 1.926 -0.005S62 情報サービス 0.267 0.341 0.179 0.764 0.340 -0.012 0.309 0.349S63 物品賃貸サービス 1.427 0.913 1.266 1.764 1.563 0.200 1.402 0.920S64 自動車・機械修理 1.949 -0.780 1.829 -0.413 2.048 -1.087 1.919 -0.753S65 その他の対事業所サービス 1.026 0.208 0.921 0.589 1.115 -0.110 1.040 0.215S66 娯楽サービス 1.119 0.488 0.825 1.110 1.366 -0.031 1.133 0.499S67 飲食店 1.984 -0.640 1.832 -0.191 2.111 -1.016 1.949 -0.612S68 旅館・その他の宿泊所 1.740 -0.404 1.546 0.089 1.903 -0.815 1.790 -0.383S69 その他の対個人サービス 1.040 0.494 0.821 1.024 1.224 0.051 1.020 0.502S70 分類不明 1.693 -0.893 1.555 -0.395 1.809 -1.310 1.656 -0.864S71 政府(教育) 0.469 0.176 0.565 0.403 0.387 -0.014 0.459 0.180S72 政府(研究) 0.777 -0.192 0.941 -0.029 0.640 -0.327 0.768 -0.186S73 政府(社会福祉) 0.953 -0.217 1.074 -0.017 0.852 -0.385 0.939 -0.209S74 政府(その他) 0.276 0.432 0.143 0.892 0.388 0.047 0.244 0.439

32

Page 35: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

33

(参考2) 日本経済一般均衡モデルのプログラム

$title Static General Equilibrium for Japan based on 2000 IO table

$setglobal excel_nam IO2000_table

$setglobal excel_dat sam

$setglobal excel_reg SAM!A1:CL82

parameter sam(*,*);

$include read_xls

$setglobal excel_nam IO2000_table

$setglobal excel_dat vat

$setglobal excel_reg VAT!A1:CC75

parameter vat(*,*);

$include read_xls

$setglobal excel_nam IO2000_table

$setglobal excel_dat elas

$setglobal excel_reg sector!C1:H75

parameter elas(*,*);

$include read_xls

SET

i Sectors /S01*S74/

k(i) Margins /S43,S44,S48,S49,S50,S51,S52/

fd Final demand/

consumption Household consumption

government Government expenditures

investment Investment/

irr(i) regulation sector

/S38,S39,S40,S43,S44,S45,S48,S49,S50,S51,S52/;

alias (i,j);

*====================================================================

* Basic IO structure

*====================================================================

PARAMETERS

Y0(i) Total doemstic supply

YD0(i) Total domestic supply for domestic use

YA0(i) Armington supply

IJ0(i,j) Intermediate input

MA0(i,k) Margin demand

MAR0(i) Margin output

CD0(i) Private consumption demand

C0 Total private consumption

GD0(i) Government consumption demand

G0 Total investment demand

INVD0(i) Investment demand

INV0 Total investment demand

EXD0(i) Export demand

EX0 Total export

IMD0(i) Import demand

IM0 Total import

Page 36: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

34

LD0(i) Labor demand

L0 Labor supply

LF Total labor force

KD0(i) Capial demand

K0 Capital supply

UTIL0 Utility

*

HENDOW0(i) Household endowment

HENDW0 Total benchmark household endowment

*

HSAVE0 Household saving

GSAVE0 Government saving

BOPSURP0 Balance of payment surplus

*

TAXL0(i) Tax on labor

TAXK0(i) Tax on capital

TAXY0(i) Tax on output

TAXM0(i) Tax on import

txy(i) Tax rate on output

txl Tax rate on labor income

txk(i) Tax rate on capital income

txm(i) Tax rate on import

tvc(i) VAT rate (net) on household

tvi(i) VAT rate (net) on investment

tvu(i,j) VAT rate (net) on intermediate usage

tvg(i) VAT rate (net) on government

efl(i) labor efficiency

efk(i) capital efficiency

*

pl0 Wage

rk0(i) Rate of return to capital

py0(i) Price of output

pm0(i) Import price (tariff included)

*

elas_f(i) substitute elasticity among factors

elas_m(i) armington elasticity between domestic and import

elas_x(i) transform elasticity between domestic and export

;

*

SCALAR

GSIZE Size of government activity /1/

TXEND Tax endogenous-exogenous switch /NO/

;

*

IJ0(i,j) = sam(i,j);

tvu(i,j)$IJ0(i,j)=vat(i,j)/IJ0(i,j);

MA0(i,"S43")=max(0,sam(i,"margin1"));

MA0(i,"S44")=max(0,sam(i,"margin2"));

MA0(i,"S48")=max(0,sam(i,"margin3"));

MA0(i,"S49")=max(0,sam(i,"margin4"));

MA0(i,"S50")=max(0,sam(i,"margin5"));

MA0(i,"S51")=max(0,sam(i,"margin6"));

MA0(i,"S52")=max(0,sam(i,"margin7"));

MAR0(k)=sum(i,MA0(i,k));

Page 37: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

35

CD0(i) = sam(i,"household");

C0 = sum(i,CD0(i))+sum(i,vat(i,"CP"));

tvc(i)$CD0(i) = vat(i,"CP")/CD0(i);

GD0(i) = sam(i,"government");

G0 = sum(i,GD0(i))+sum(i,vat(i,"CG"))+sum(i,vat(i,"IG"));

tvg(i)$GD0(i) = (vat(i,"CG")+vat(i,"IG"))/GD0(i);

INVD0(i) = sam(i,"investment");

INV0 = sum(i,INVD0(i))+sum(i,vat(i,"IP"));

tvi(i)$INVD0(i) = vat(i,"IP")/INVD0(i);

EXD0(i) = sam(i,"export");

EX0 = sum(i,EXD0(i));

IMD0(i) = sam(i,"import")-sam(i,"imptax");

TAXM0(i) = sam(i,"imptax");

IM0 = sum(i,IMD0(i));

Y0(i) = sum(j,IJ0(j,i)) +sam("capital",i) +sam("labor",i) +sam("taxi",i);

YD0(i) = Y0(i) -EXD0(i);

YA0(i) = YD0(i)+IMD0(i)+TAXM0(i)+sum(k,MA0(i,k))-MAR0(i);

*

HENDOW0(i) = sam("hendow",i);

HENDW0 = sum(i,HENDOW0(i));

*

LD0(i) = sam("labor",i);

L0 = sum(i,LD0(i));

txl = SAM("taxd","labor")/L0;

TAXL0(i) = LD0(i)*txl;

LD0(i) = LD0(i)-TAXL0(i);

L0 = sum(i,LD0(i));

txl = SAM("taxd","labor")/L0;

pl0 = 1 + txl;

LF = L0*1.5;

*

KD0(i) = sam("capital",i)-sum(j,vat(j,i));

K0 = sum(i,KD0(i));

txk(i) = sam("taxd","capital")/K0;

TAXK0(i) = KD0(i)*txk(i);

KD0(i) = KD0(i)-TAXK0(i);

K0 = SUM(i,KD0(i));

txk(i) = TAXK0(i)/KD0(i);

rk0(i) = 1 + txk(i);

*

TAXY0(i) = sam("taxi",i);

txy(i) = TAXY0(i)/Y0(i);

py0(i) = 1 - txy(i);

*

txm(i)$IMD0(i) = TAXM0(i)/IMD0(i);

pm0(i) = 1 + txm(i);

Page 38: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

36

*

UTIL0 = C0+LF-L0;

HSAVE0 = sam("saving","household")-sum(i,vat(i,"CP"))

-sum(i,sum(j,vat(i,j)));

GSAVE0 = sam("saving","government")+sum(i,vat(i,"CP"))+sum(i,vat(i,"IP"))

+sum(i,sum(j,vat(i,j)));

BOPSURP0 = -sam("saving","export");

elas_f(i)=elas(i,"lab_cap");

elas_x(i)=elas(i,"dom_exp");

elas_m(i)=elas(i,"gtap_arm");

efl(i)=1.0;

efk(i)=1.0;

*

SET IRTS(i) Increasing return sector

ENTRY(i) Sectors with free-entry and zero profit

MONOP(i) Sectors with free-entry monopolistic competition

RAMSEY(i) Sectors with Ramsey average cost pricing;

PARAMETERS

FC0(i) Fixed cost

VA0(i) Value added in marginal cost

MK0(i) Markup on marginal cost

THETAD0(i) Domestic value share

N0(i) Number of firms

MU(i) Elasticity of demand for the Armington composite

CDR(i) Cost Disadvantage Ratio for IRTS sectors

;

CDR(i) = 0;

ENTRY(i) = YES;

MONOP(i) = NO;

RAMSEY(i) = NO;

CDR(i)$irr(i)=0.1;

*

* Specify sectors with no entry and Ramsey average cost pricing

*

*ENTRY(i)$irr(i)=NO;

*

MONOP(i)$CDR(i)=YES;

RAMSEY(i)$(NOT ENTRY(i))=YES;

IRTS(i)$(MONOP(i)+RAMSEY(i))=YES;

MONOP(i)$RAMSEY(i)=NO;

MU(i)=1;

FC0(i)$IRTS(i)=(YD0(i)*py0(i))*CDR(i)/(1-CDR(i));

VA0(i)$IRTS(i)=KD0(i)*rk0(i)+LD0(i)*pl0-FC0(i);

MK0(i)$IRTS(i)=FC0(i)/(YD0(i)*py0(i)-FC0(i));

THETAD0(i)$IRTS(i)=(YD0(i)-MAR0(i))/(YD0(i)-MAR0(i)+pm0(i)*IMD0(i)+sum(k,MA0(i,k)));

N0(i)$(CDR(i)$IRTS(i))=1;

N0(i)$MONOP(i)=(1+MK0(i))/(MK0(i)*(elas_m(i)+THETAD0(i)*(MU(i)-elas_m(i))));

Page 39: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

37

*===================================================================

* MPSGE model

*===================================================================

$ONTEXT

$MODEL:Japan

$SECTORS:

Y(i) ! Domestic production

YA(i) ! Armington aggregation of imports and domestic use

D(i)$IRTS(i) ! Domestic supply

V(i)$IRTS(i) ! Value added

NF(i)$MONOP(i) ! Number of firms

IMD(i)$IMD0(i) ! Import

EXD(i)$EXD0(i) ! Export

GOV ! Government demand

INV ! Gross investment demand

LS ! Labor supply

UTIL ! Private utility (consumption+leisure)

$COMMODITIES:

PA(i) ! Price of Armington aggregates

PD(i) ! Price of domestic market price

PY(i)$IRTS(i) ! Domestic price - net of markup and taxes

PV(i)$IRTS(i) ! Value added price index

PFC(i)$MONOP(i) ! Fixed cost price index

PM(i)$IMD0(i) ! Price of import

PX(i)$EXD0(i) ! Price of export

PFX ! Price of foreign exchange

PGOV ! Price of government expendtitures

PINV ! Price of investment

PLS ! Wage rate (Tax inlcuded)

PL ! Wage rate (Tax excluded)

RK ! Rate of return to capital

PUTIL ! Price of private consumption

$CONSUMERS:

HA ! Household agent

GOVT ! Government (tax collector)

ENTR(i)$MONOP(i) ! Entrepreneur

$AUXILIARY:

TAU_TX$TXEND ! TAX replacement multiplier

MK(i)$IRTS(i) ! Markup on marginal cost (net basis)

THETAD(i)$MONOP(i) ! Market share of domestic firms

*====================================================================

* CRTS production:

*====================================================================

$PROD:Y(i)$(EXD0(i)$(NOT IRTS(i))) t:elas_x(i) s:0 va:elas_f(i)

O:PD(i) Q:YD0(i) P:py0(i) A:GOVT T:txy(i)

O:PX(i) Q:EXD0(i) P:py0(i) A:GOVT T:txy(i)

I:PA(j) Q:IJ0(j,i) P:(1+tvu(j,i)) A:GOVT T:tvu(j,i)

I:RK Q:(KD0(i)*efk(i)) P:rk0(i) A:GOVT T:txk(i) va:

Page 40: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

38

I:PLS Q:(LD0(i)*efl(i)) P:pl0 va:

$PROD:Y(i)$((NOT EXD0(i))$(NOT IRTS(i))) s:0 va:elas_f(i)

O:PD(i) Q:YD0(i) P:py0(i) A:GOVT T:txy(i)

I:PA(j) Q:IJ0(j,i) P:(1+tvu(j,i)) A:GOVT T:tvu(j,i)

I:RK Q:(KD0(i)*efk(i)) P:rk0(i) A:GOVT T:txk(i) va:

I:PLS Q:(LD0(i)*efl(i)) P:pl0 va:

*====================================================================

* IRTS production:

*====================================================================

$PROD:Y(i)$(EXD0(i)$IRTS(i)) t:elas_x(i) s:0

O:PY(i) Q:(YD0(i)*py0(i)-FC0(i))

O:PX(i) Q:EXD0(i) P:py0(i) A:GOVT T:txy(i)

I:PA(j) Q:IJ0(j,i) P:(1+tvu(j,i)) A:GOVT T:tvu(j,i)

I:PV(i) Q:VA0(i)

$PROD:Y(i)$((NOT EXD0(i))$IRTS(i)) s:0

O:PY(i) Q:(YD0(i)*py0(i)-FC0(i))

I:PA(j) Q:IJ0(j,i) P:(1+tvu(j,i)) A:GOVT T:tvu(j,i)

I:PV(i) Q:VA0(i)

$PROD:D(i)$IRTS(i)

O:PD(i) Q:YD0(i) P:py0(i) A:GOVT T:txy(i)

I:PY(i) Q:(YD0(i)*py0(i)-FC0(i)) P:(1+mk0(i))

+ A:ENTR(i)$MONOP(i) A:GOVT$RAMSEY(i) N:MK(i)

$PROD:NF(i)$MONOP(i)

O:PFC(i) Q:FC0(i)

I:PV(i) Q:FC0(i)

$PROD:V(i)$IRTS(i) s:elas_f(i)

O:PV(i) Q:(VA0(i)+FC0(i))

I:RK Q:(KD0(i)*efk(i)) P:rk0(i) A:GOVT T:txk(i)

I:PLS Q:(LD0(i)*efl(i)) P:pl0

$DEMAND:ENTR(i)$MONOP(i)

D:PFC(i)

*====================================================================

* Armington :

*====================================================================

$PROD:YA(i) s:0 va:elas_m(i)

O:PA(i) Q:YA0(i)

I:PD(k) Q:MA0(i,k)

I:PD(i) Q:(YD0(i)-MAR0(i)) va:

I:PM(i) Q:(pm0(i)*IMD0(i)) va:

*====================================================================

* Imports:

*====================================================================

$PROD:IMD(i)$IMD0(i)

O:PM(i) Q:(pm0(i)*IMD0(i))

Page 41: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

39

I:PFX Q:IMD0(i) P:pm0(i) A:GOVT T:txm(i)

*====================================================================

* Exports:

*====================================================================

$PROD:EXD(i)$EXD0(i)

O:PFX Q:EXD0(i)

I:PX(i) Q:EXD0(i)

*====================================================================

* Labor supply:

*====================================================================

$PROD:LS

O:PLS Q:L0 P:pl0

I:PL$TXEND Q:L0 A:GOVT N:TAU_TX M:txl

I:PL$(NOT TXEND) Q:L0 A:GOVT t:txl

$report:

V:ZLS O:PLS PROD:LS

*====================================================================

* Private consumption:

*====================================================================

$PROD:UTIL s:1.5 va:1.0

O:PUTIL Q:UTIL0

I:PA(i)$CD0(i) Q:CD0(i) P:(1+tvc(i)) A:GOVT T:tvc(i) va:

I:PL Q:(LF-L0)

*====================================================================

* Government demands:

*====================================================================

$PROD:GOV s:1

O:PGOV Q:G0

I:PA(i)$GD0(i) Q:GD0(i) P:(1+tvg(i)) A:GOVT T:tvg(i)

*====================================================================

* Investment:

*====================================================================

$PROD:INV s:1

O:PINV Q:INV0

I:PA(i)$INVD0(i) Q:INVD0(i) P:(1+tvi(i)) A:GOVT T:tvi(i)

*====================================================================

* Household agents:

*====================================================================

$DEMAND:HA

D:PUTIL Q:UTIL0

E:PL Q:LF

E:RK Q:K0

E:PINV Q:(-INV0)

Page 42: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

40

E:PGOV Q:GSAVE0

E:PFX Q:(-BOPSURP0)

E:PA(i)$HENDOW0(i) Q:HENDOW0(i)

*====================================================================

* Government agents:

*====================================================================

$DEMAND:GOVT

D:PGOV Q:G0

E:PGOV Q:(-GSAVE0)

E:PV(i)$RAMSEY(i) Q:(-FC0(i))

*====================================================================

* Replacement tax multiplier:

*====================================================================

$CONSTRAINT:TAU_TX$TXEND

GOV =E= GSIZE;

*====================================================================

* Determine the domestic share of total supply

*====================================================================

$CONSTRAINT:THETAD(i)$MONOP(i)

THETAD(i)*YA(i)*PA(i)*(YD0(i)-MAR0(i)+pm0(i)*IMD0(i)+sum(k,MA0(i,k))) =E=

D(i)*PD(i)*(YD0(i)-MAR0(i));

*====================================================================

* Markup equations

*====================================================================

$CONSTRAINT:MK(i)$IRTS(i)

(N0(i)*NF(i)*MK(i)*(elas_m(i)+THETAD(i)*(MU(i)-elas_m(i)))

-(1+MK(i)))*MONOP(i)

+ (D(i)*PD(i)*MK(i)*(YD0(i)*py0(i)-FC0(i))

-FC0(i)*PV(i))*RAMSEY(i) =E= 0;

*====================================================================

* Report:

*====================================================================

$REPORT:

V:ZD(i) O:pd(i) prod:Y(i)

V:ZE(i) O:px(i) prod:Y(i)

V:ZK(i) I:rk prod:Y(i)

V:ZL(i) I:pl prod:Y(i)

V:ZM(i)$IMD0(i) I:pm(i) prod:YA(i)

V:ZC O:putil prod:UTIL

V:ZCC(i)$CD0(i) I:pa(i) prod:UTIL

V:ZCL I:pl prod:UTIL

V:ZINV O:pinv prod:INV

V:ZG O:pgov prod:GOV

$OFFTEXT

Page 43: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

41

$SYSINCLUDE mpsgeset Japan

$include Japan.gen

pl.fx=1.0;

pls.l = pl0;

MK.L(i)$IRTS(i)=MK0(i);

THETAD.L(i)$IRTS(i)=THETAD0(i);

Japan.iterlim=1000;

$include Japan.gen

solve Japan using mcp;

efl(irr)=0.9;

Japan.iterlim=1000;

$include Japan.gen

solve Japan using mcp;

<read_xls.gms> --- Excel ファイルを GAMS に読み込むマクロ

*=== Import from Excel using GDX utilities

*=== First unload to GDX file (occurs during compilation phase)

$CALL GDXXRW.EXE %excel_nam%.xls par=%excel_dat% rng=%excel_reg% Cdim=1 Rdim=1

*=== Now import data from GDX

*Parameter Level(i,j);

$GDXIN %excel_nam%.gdx

$LOAD %excel_dat%

$GDXIN

Page 44: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

42

参考文献

川崎研一、1999、応用一般均衡モデルの基礎と応用:経済構造改革のシミュレーション分

析、日本評論社 橘木俊詔・市岡修一・中島栄一、1990。応用一般均衡モデルにと公共政策、経済分析 120号、経済企画庁経済研究所

伴金美・大坪滋・川崎研一・小野稔・松谷萬太郎・堤雅彦・木滝秀彰・小野博、1998、応

用一般均衡モデルによる貿易・投資自由化と環境政策の評価、経済分析 156 号、経済企

画庁経済研究所 伴金美・大坪滋・小野稔・松谷萬太郎・山口慎一、2000、規制改革による経済効果分析の

ための応用一般均衡モデル、経済分析 159 号、経済企画庁経済研究所 細江宣弘・我澤賢之・橋本日出男、2004、テキストブック応用一般均衡モデリング:プロ

グラムからシミュレーションまで、東京大学出版会 総務省編、2004、平成 12 年産業連関表-総合解説編-、(財)全国統計協会連合会 Dixit, A.K. and J.E. Stiglitz, 1977, Monopolistic Competition and Optimum Product

Diversity, American Economic Review 67, 297-308. Debreu, G., 1959, Theory of Value: an Axiomatic Analysis of Economic Equilibrium,

Cowles Foundation Monograph 17. Hertel, T.W., 1997, Global Trade Analysis: Modeling and Applications, Cambridge

University Press. Horridge, M., 2003, ORANI-G: A Generic Single-Country Computable General

Equilibrium Model, Centre of Policy Studies and the Impact project, Monash University, Australia.

Francois J.F. and D.W. Roland-Holst, 1997, Scale Economies and Imperfect Competition,

in J.F. Francois and K.A. Reinert eds., Applied Methods for Trade Policy Analysis: A Handbook, Cambridge University Press.

Page 45: 収穫逓増と独占的競争をとりいれた 日本経済の応用 …1 収穫逓増と独占的競争をとりいれた日本経済の応用一般均衡モデルの開発+ 川崎

43

Mathiesen, L., 1985, Computational Experience in Solving Equilibrium Models by a

Sequence of Linear Complementarity Problems, Operations Research 56, 1225-1250. Rutherford, T.F., 1999, Applied General Equilibrium Modeling with MPSGE as a GAMS

Subsystem: an Overview of the Modeling Framework and Syntax, Computational Economics 14, 1-46.

Rutherford, T. and S. Paltsev, 1999, From an Input-Output Table to a General

Equilibrium Model: Assessing the Excess Burden of Indirect Taxes in Russia, http://debreu.colorado.edu/papers/exburden.html