Upload
others
View
5
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
美術史研究の視点 ~ベラスケス《ラス・メニーナス》を例に~
文学部共通概説
西洋美術史・岡田裕成 《ラス・メニーナス Las Meninas(宮廷の侍女たち)》 318×276cm 1656年 マドリード、プラド美術館蔵
ディエゴ・ベラスケスDiego Velázquez
17世紀スペインの画家。セビーリャに生まれたが、国王フェリペ4世の宮廷画家となり、マドリードで活躍
画家であっただけでなく、王宮配室長などの要職を務めた。 晩年には、国王の特別の助力により、「サンティアゴの騎士」の称号を得て、貴族に列せられた。 《ラス・メニーナス》はその晩年の大作であると同時に、近世のヨーロッパ絵画を代表する傑作とされてきた。
何が描かれているのか?
「画家が目にした偶然の光景」?
視点2 画家の意図
画家に関わる歴史的背景
ベラスケスは宮廷人としての栄達を重ねると同時に、貴族としての認知を強く望んでいた。
そのために彼が求めたのは、「サンティアゴの騎士」の称号。サンティアゴ騎士団は、スペインの名門貴族のみで構成された由緒あるものだった。その称号を得ることは、ともなおさず、貴族としての認知を意味した。
ベラスケスは、1650年までに、サンティアゴの騎士となるための資格審査を申請
しかしその審査は、ベラスケスが、貴族が本来おこなわない「手仕事」である絵画制作に従事してきたことで難航する
国王夫妻のアトリエ訪問
「絵画芸術の高貴さ」を主張するメッセージ性をもつ
絵画芸術の社会的認知を求めたメッセージ?
視点3 「観者」のまなざし
この絵を見ていたのはだれか?
ベラスケスの死後まもなく、宮廷に出仕した画家パロミーノの証言により、《ラス・メニーナス》は完成後、国王の「夏の政務室」に置かれていたことが知られる。
その部屋は、国王自身の他、限られた側近しか立ち入ることのできない場所であった。
国王が愛したものだけを描いた絵?
美術史の研究とは:
「作品」を出発点とする。
作品に表現されされるもの、それが伝えようとしていること、あるいは個々の場で作品がどのような機能を果たしているのか、といった問題を中心として、美術に関する事象を幅広く論じる。
作者や注文主の意図、あるいは作品が制作された経緯や背景など、歴史的な文脈をふまえて、実証的な論理を構築する。
西洋美術史講座では:
西ヨーロッパ諸国やアメリカ合衆国などの、狭い意味での「西洋」だけでなく、中東欧やラテンアメリカなど、一般には「周縁的」とされる地域の問題も視野において、美術史研究の新しい可能性を探っています。
レポート課題:
今日の講義を聴いて考えたこと。あるいは、取り上げた作品について。