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特別支援教育研修課の研究発表 [研究主題] 特別な教育的ニーズのある児童生徒に対する アセスメントに基づく学習指導の在り方に関する研究 研究主題の基本的な考え方 実態調査の結果から捉えた課題 (1) 実態調査 (2) 課題 つまずきの要因 の見立て 授業の実践 手立ての 検討 気付き 5 アセスメント 【アセスメント】 教師が児童生徒のつまずきに気付き,児童生徒の 実態や学習環境などから学習面におけるつまずきの 要因を見立て,適切な指導・支援を行う手立てを検 討すること 小・中学校の特別支援教育の推進状況実態把握や指導体制,指導方法につ いて検討する時間の確保が課題 人的資源を必要とする指導体制が多 く,指導者の確保や指導者間の共通理 解を図ることが課題 【アセスメントの状況】 アセスメントに基づく指導・支援の 工夫が課題 児童生徒のつまずきの要因の見立て や具体的な手立てを組織的に検討し, 共通理解することが課題 児童生徒のつまずきを適切に理解し,具体的な手立てについて,教師が共通理 解を図ることができるようなアセスメントの方法が必要である。 【特別な教育的ニーズに応じた指導・支援】 児童生徒の「学び方」に応じて,教師が適切な「教 え方」を工夫することが必要 【実施目的】 特別な教育的ニーズのある児童生徒の実態把握や指導・支援に関す る現状と課題を明らかにし,アセスメントに基づく学習指導の在り方 についての研究を進めるための基礎資料とする。 【調 査 日】 平成22年10月1日現在 【調査対象】 公立小学校57校,中学校25校(県下全公立小・中学校の約1割に当 たる学校を,学校規模等を考慮して抽出) 【調査方法】 質問紙調査法(選択式,一部記述式) -1-

特別支援教育研修課の研究発表...特別支援教育研修課の研究発表 [研究主題] 特別な教育的ニーズのある児童生徒に対する アセスメントに基づく学習指導の在り方に関する研究

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Page 1: 特別支援教育研修課の研究発表...特別支援教育研修課の研究発表 [研究主題] 特別な教育的ニーズのある児童生徒に対する アセスメントに基づく学習指導の在り方に関する研究

特別支援教育研修課の研究発表

[ 研 究 主 題 ]

特別な教育的ニーズのある児童生徒に対する

アセスメントに基づく学習指導の在り方に関する研究

1 研究主題の基本的な考え方

2 実態調査の結果から捉えた課題

(1) 実態調査

(2) 課題

つまずきの要因の見立て

評 価 授業の実践

手立ての検討改 善

気付き

5

アセスメント

【アセスメント】

教師が児童生徒のつまずきに気付き,児童生徒の

実態や学習環境などから学習面におけるつまずきの

要因を見立て,適切な指導・支援を行う手立てを検

討すること

【小・中学校の特別支援教育の推進状況】

・ 実態把握や指導体制,指導方法につ

いて検討する時間の確保が課題

・ 人的資源を必要とする指導体制が多

く,指導者の確保や指導者間の共通理

解を図ることが課題

【アセスメントの状況】

・ アセスメントに基づく指導・支援の

工夫が課題

・ 児童生徒のつまずきの要因の見立て

や具体的な手立てを組織的に検討し,

共通理解することが課題

○ 児童生徒のつまずきを適切に理解し,具体的な手立てについて,教師が共通理

解を図ることができるようなアセスメントの方法が必要である。

【特別な教育的ニーズに応じた指導・支援】

児童生徒の「学び方」に応じて,教師が適切な「教

え方」を工夫することが必要

【実施目的】 特別な教育的ニーズのある児童生徒の実態把握や指導・支援に関する現状と課題を明らかにし,アセスメントに基づく学習指導の在り方についての研究を進めるための基礎資料とする。

【調 査 日】 平成22年10月1日現在【調査対象】 公立小学校57校,中学校25校(県下全公立小・中学校の約1割に当

たる学校を,学校規模等を考慮して抽出)【調査方法】 質問紙調査法(選択式,一部記述式)

-1-

Page 2: 特別支援教育研修課の研究発表...特別支援教育研修課の研究発表 [研究主題] 特別な教育的ニーズのある児童生徒に対する アセスメントに基づく学習指導の在り方に関する研究

3 アセスメントの在り方

(1) 認知の特性等

(2) アセスメントについての段階的な考え方

【認 知】

感覚を通して得られる情報を基にして行われる情報処理の過程

※ 児童生徒の学習面におけるつまずきの要因として,認知の偏りや弱さなどの認知の特

性等があることが考えられる。個々の認知の特性等に応じた「学び方」を明らかにする

ことが大切である。

【第1段階】

全ての児童生徒を対象に,得意な又は苦手な教

科や内容,領域について把握し,つまずいている

又はつまずく可能性のある児童生徒に気付く。

【第2段階】

学習上のつまずきがある児童生徒に対して,授

業中の様子などから,つまずきの要因である認知

の特性等について仮説を立てながら見立てる。

【第3段階】

心理検査が必要な児童生徒に対して,標準化された心理検査で認知の特性等を把

握する。

※ 心理検査の実施の可否は慎重に判断する必要がある。実施の条件として,「保

護者の理解や承諾」,「正しい方法で検査し分析ができる検査者のスキル」,「環境

等の要因が,つまずきの背景に明らかにないことの確認」などがある。

○ 児童生徒のつまずきの要因である認知の特性等を見立てるためには,日頃の学

習の様子の丁寧な観察(第2段階のアセスメント)をすることが大切である。

○ 組織として指導・支援の手立てを検討するためには,共通の視点で児童生徒の

実態把握をすることが大切である。

【アセスメントシート】

○ 学習における情報の処理過程のどこにつまずきがあるのかを探るため,第2

段階のアセスメントにおける実態把握の観点について整理した。

○ 整理した実態把握の観点を基に,通常の学級の担任が,日頃の学習の様子か

ら児童生徒の認知の特性等について仮説を立てながら見立てたり,具体的な手

立てを検討したりするためのツールとして「アセスメントシート」を作成した。

全ての児童生徒を対象とした学習上のつまずきへの気付き

認知の特性等の見立て

認知の特性等の把握

【第3段階】

【第2段階】

【第1段階】

分析

日頃の様子

心理検査

「アセスメントの各段階」

-2-

Page 3: 特別支援教育研修課の研究発表...特別支援教育研修課の研究発表 [研究主題] 特別な教育的ニーズのある児童生徒に対する アセスメントに基づく学習指導の在り方に関する研究

4 指導・支援の在り方

(1) 指導・支援についての段階的な考え方

(2) 指導・支援における留意点

○ 個別の指導から始めるのではなく,一斉指導の充実を図ることから始めること

○ 将来の自立に向けて,児童生徒が自分の「学び方」を知り,活用できるように

すること

○ 児童生徒がお互いの多様性を認め合えるように,学級の集団づくりをすること

○ 個別の指導計画を作成し,児童生徒の「学び方」や教師の「教え方」について

共通理解を図ること

【第1段階】

全ての児童生徒を対象に,通常の学級の一斉指

導において,効果的な指導・支援を行うようにす

る。学級に在籍する全ての児童生徒の多様性に応

え,分かりやすい学習指導の工夫を目指す「ユニ

バーサルデザイン」の授業づくりが大切である。

【第2段階】

一斉指導の中で,児童生徒一人一人の認知の

特性等に配慮した指導・支援を行うようにする。

その際,児童生徒が得意な「学び方」を活用

できるようにするとともに,苦手な「学び方」

に配慮することで,「できる状況」,「分かる状況」

づくりをしていくことが大切である。

【第3段階】

一斉指導では取り組むことが難しい個別の課題を明らかにして,指導・支援を行

うようにする。

【「ユニバーサルデザイン」の授業づくりにおける工夫の例】授業の流れの工夫

授業の流れを示したり,教科や単元に応じて授業の進め方を一定にしたりすることで,児童生徒に見通しをもたせ,落ち着いて授業に取り組めるようにする。教師の説明や指示の工夫

説明や指示を簡潔にしたり,抽象的な言葉を少なくしたりして,分かりやすくする。板書の工夫

文字の大きさや行間に配慮して書くとともに,チョークの色は主として見やすい白や黄色を使って書く。活動の工夫

聞く活動だけではなく,見たり,操作したりする活動を取り入れるなど,いろいろな感覚を使って学習できるようにする。

得意な「学び方」の活用

できる状況,分かる状況づくり

苦手な「学び方」への配慮

全ての児童生徒に対する指導・支援

一斉指導の中での個々の認知の特性等に配慮した指導・支援

個別の指導・支援

【第3段階】

【第1段階】

関連

一斉指導

個別の指導

【第2段階】

「指導・支援の各段階」

-3-

Page 4: 特別支援教育研修課の研究発表...特別支援教育研修課の研究発表 [研究主題] 特別な教育的ニーズのある児童生徒に対する アセスメントに基づく学習指導の在り方に関する研究

「特別な教育的ニーズのある児童生徒に対する

アセスメントに基づく

学習指導の在り方に関する研究」

【平成23年度 調査研究発表会】

鹿児島県総合教育センター

特別支援教育研修課 研究発表 ・見たり,読んだりして学習することが得意

・聞いて学習することが苦手

図やプリントが少なく,言葉での説明が多い授業

学習上の困難

アセスメント研究主題 実態調査 指導・支援

「学び方」 「教え方」2

つまずきの要因の見立て

評 価 学習指導

手立ての検討改 善

アセスメント研究主題 実態調査 指導・支援

アセスメント

気付き

DC

研究の内容

アセスメント研究主題 実態調査 指導・支援

平成22年度の「実態調査」による小・中学校の課題の分析

アセスメントと指導・支援の在り方

具体的なアセスメントの方法と指導・支援の手立て

実態調査の結果

アセスメント研究主題 実態調査 指導・支援

平成22年10月1日調査

【調査対象】小学校 57校中学校 25校

(県下の約1割に当たる)

校内委員会の役割についての校内での理解

よく理解している 理解している あまり理解していない 理解していない

0 100(%)50

小学校

中学校

22年度

20年度

22年度

20年度

※ 平成20年度 鹿児島県総合教育センター調査研究「実態調査」との比較

アセスメント研究主題 実態調査 指導・支援

-4-

Page 5: 特別支援教育研修課の研究発表...特別支援教育研修課の研究発表 [研究主題] 特別な教育的ニーズのある児童生徒に対する アセスメントに基づく学習指導の在り方に関する研究

4

40

28

88

96

84

56

2

42

39

93

93

86

67

0 20 40 60 80 100

小学校

中学校

校内委員会の活動内容(複数回答)

(%)

年間活動計画

実態把握の実施や方法

支援体制や指導方法

状況の報告や検討

校内研修

取組の評価と改善

その他

20年度小学校中学校

※ 平成20年度 鹿児島県総合教育センター調査研究「実態調査」との比較

アセスメント研究主題 実態調査 指導・支援

指導体制の工夫の状況

4

5

5

6

13

25

27

30

0 5 10 15 20 25 30

10

2

5

7

9

12

12

0 5 10 15

(校)

(校)

小学校

中学校

少人数指導

ティーム・ティーチング担任以外の個別指導

放課後の個別指導

支援員の活用

その他

少人数指導

ティーム・ティーチング

放課後の個別指導

保健室での個別指導

支援員の活用

その他

学習指導の工夫

担任による個別指導

個別指導

アセスメント研究主題 実態調査 指導・支援

心理検査の活用(校内委員会で検討している児童生徒)

中学校小学校

実施していない

実施していない

一部の生徒に実施している一部の児童に

実施している

実施している実施している

全57校 全25校

23%

24%

18%16%

60%

59%

アセスメント研究主題 実態調査 指導・支援

10

指導・支援の検討の体制(複数回答)

0 10 20 30 40 50

1位 2位 3位 4位 5位 (校)

担任のみ

COのみ

担任とCO

学年会等

校内委員会

職員全員

巡回相談

※CO:コーディネーター

小学校

アセスメント研究主題 実態調査 指導・支援

11

指導・支援の検討の体制(複数回答)

0 5 10 15 20

1位 2位 3位 4位 5位 (校)

担任のみ

COのみ

担任とCO

学年会等

校内委員会

職員全員

巡回相談

中学校

アセスメント研究主題 実態調査 指導・支援

※CO:コーディネーター

12

アセスメントと指導・支援の工夫の状況

小学校 中学校

よくできている70%

全57校 全25校

よくできている64%

十分できていない30%

十分できていない36%

アセスメント研究主題 実態調査 指導・支援

13

-5-

Page 6: 特別支援教育研修課の研究発表...特別支援教育研修課の研究発表 [研究主題] 特別な教育的ニーズのある児童生徒に対する アセスメントに基づく学習指導の在り方に関する研究

アセスメントの方法の確立

小学校・中学校における課題

児童生徒がつまずく要因の見立て

指導・支援の手立ての検討

指導・支援を行う人的資源の活用

校内外の連携に基づく組織的な取組

児童生徒の適切な理解

手立ての共通理解

アセスメント研究主題 実態調査 指導・支援

14

アセスメントの在り方

アセスメント研究主題 実態調査 指導・支援

指導・支援の在り方

15

情報

感覚

など

視覚

聴覚

触覚

認知

など

記憶する 思考する

判断する 決定する

推理する

イメージを形成する

アセスメント研究主題 実態調査 指導・支援

情報処理の過程

16

特別支援学校学習指導要領解説自立活動編(平成21年6月)

全ての児童生徒を対象とした学習上のつまずきへの気付き

認知の特性等の見立て

認知の特性等の把握 分

日頃の様子

心理検査

アセスメント研究主題 実態調査 指導・支援

アセスメントの各段階

17

【第1段階】

【第2段階】

【第3段階】

板書を写すことが遅い場合

注意

視覚的な入力

記憶視覚・

空間認知

手指の巧ち運動

アセスメント研究主題 実態調査 指導・支援

座席の位置の工夫 等

18

板書を写すことが遅い場合

アセスメント研究主題 実態調査 指導・支援

つまずきの要因である認知の特性等の見立て

聞くことは得意

形の記憶が苦手 「黒板を見る様子」「文字を書く様子」「ノートの文字」

「説明を聞く様子」

「教え方」「学び方」

19

-6-

Page 7: 特別支援教育研修課の研究発表...特別支援教育研修課の研究発表 [研究主題] 特別な教育的ニーズのある児童生徒に対する アセスメントに基づく学習指導の在り方に関する研究

全ての児童生徒に対する指導・支援

一斉指導の中での個々の認知の特性等に配慮した指導・支援

個別の指導・支援 関

一斉指導

個別の指導

アセスメント研究主題 実態調査 指導・支援

指導・支援の各段階

21

【第1段階】

【第2段階】

【第3段階】 得意な「学び方」の活用

苦手な「学び方」への配慮

指導・支援の基本的な考え方

アセスメント研究主題 実態調査 指導・支援

できる状況,分かる状況づくり

22

板書を写すことが遅い児童生徒に対する指導・支援

アセスメント研究主題 実態調査 指導・支援

聞くことは得意

形の記憶が苦手

「学び方」 【第1段階】

【第2段階】

【第3段階】

個別の課題

23

できた! 分かった!

このようにすれば,できる! 分かる!

自分の「学び方」を知り,活用できる

アセスメント研究主題 実態調査 指導・支援

24

多様性

自分の「学び方」を知り,活用できる

安心

「学び方」 環境

アセスメント研究主題 実態調査 指導・支援

25

個別の指導計画

アセスメント研究主題 実態調査 指導・支援

26

-7-