西

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

  • Upload
    others

  • View
    3

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(   

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

四九

九八五

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

西  岡  和  晃

目次

Ⅰ 

はじめに

Ⅱ 

我が国における議論

 

1 

不法行為に関する国際裁判管轄

 

2 

競争法事件における不法行為地

 

3 

審理範囲

 

4 

小括

Ⅲ 

ハーグ条約および諸外国における議論

 

1 

一九九九年ハーグ国際裁判管轄条約草案

   

⑴ 

不法行為に関する国際裁判管轄

   

⑵ 

反トラスト法事件における不法行為地

Page 2: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(   

同志社法学 

六六巻四号�

五〇

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

九八六

   

⑶ 

審理範囲

   

⑷ 

小括

 

2 

EU

   

⑴ 

不法行為に関する国際裁判管轄

   

⑵ 

競争法事件における不法行為地

   

⑶ 

審理範囲

   

⑷ 

小括

 

3 

スイス

   

⑴ 

不法行為に関する国際裁判管轄

   

⑵ 

競争法事件における不法行為地

   

⑶ 

審理範囲

   

⑷ 

小括

 

4 

米国

   

⑴ 

米国における裁判管轄

   

⑵ 

連邦反トラスト法事件における連邦裁判所の裁判管轄

   

⑶ 

フォーラム・ノン・コンビニエンスの法理

   

⑷ 

小括

Ⅳ 

若干の検討

 

1 

加害行為地

 

2 

結果発生地

 

3 

審理範囲

Page 3: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(   

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

五一

九八七

Ⅴ 

おわりに

Ⅰ 

はじめに

 

二〇〇四年、国際ビタミンカルテルの参加者に対し不法行為による損害賠償請求訴訟(以下、﹁競争法)

1(

上の私訴﹂と

いう。)が米国、英国、ドイツほか各国で提起され)

2(

、注目を集めた。このカルテルに関する競争法上の私訴は、我が国

の裁判所に提起されていないが、日本企業が関係する事件がしばしば生じることから、国際的な競争制限行為に関する

競争法上の私訴が我が国の裁判所に提起される可能性は高まっていると思われる)

3(

 

渉外的な競争法上の私訴が提起されると、準拠法や国際裁判管轄の問題が相互依存的に生じる。というのは、外国競

争法が準拠法として我が国の裁判所で適用されえないのであれば、そもそも国際裁判管轄を認める必要がなく、また外

国競争法に関する請求の国際裁判管轄が認められえないのであれば、準拠法を検討する必要もないからである)

4(

 

競争法上の私訴における国際裁判管轄の問題は、あまり議論されていない)

5(

が、国際裁判管轄原因として、被告住所地、

営業所所在地、事業活動地)

6(

、不法行為地などが考えられる。もっとも、本稿では、不法行為地に焦点を絞り、検討して

いきたい。外国企業に対し競争法上の私訴が提起される場合に、外国企業の日本における営業所の業務または日本にお

いて継続的な取引を行う外国企業の日本における業務が、日本市場の競争秩序に影響を及ぼすときには、営業所所在地

管轄または事業活動地管轄が認められるであろう。しかし、①日本に営業所などを有さず、子会社や代理店などを介し

て行われる事業が日本市場の競争秩序に影響を及ぼす場合および②外国市場の競争秩序だけに影響を及ぼす競争制限行

為の一部が日本で行われる場合には、事業活動地管轄は、その立証が容易ではなく、場合によっては認められないであ

Page 4: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(   

同志社法学 

六六巻四号�

五二

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

九八八

ろう。このような場合には、加害行為地または結果発生地に基づく不法行為地管轄が重要になる。もっとも、不法行為

地管轄が特別に機能する場面は、①および②のような場面に限定されるであろう。

 

①の具体例としては、次のような場合である。X社は、製品甲を製造販売する日本法人である。Y社(スイス法人)

およびZ社(米国法人)は、甲の製造に必要な製品乙の製造業者であり、それぞれ日本に営業所などを有さず、継続的

な取引も行っていない。Xは、Yの日本における代理店から乙を購入したが、乙の価格はYZ間のカルテルにより引き

上げられたものであった。なお、このカルテルは、日本を含む東アジア市場を対象とするが、チューリヒ、ニューヨー

クおよび東京における会合を経て締結されたものとする。Xは、カルテルにより損害を被ったと主張し、YおよびZに

対し競争法上の私訴を我が国の裁判所に提起する。

 

②の具体例としては、①の事案におけるXが、A国において製品甲を製造販売する日本法人のA国子会社であり、ま

たXがYのA国支店から乙を購入したが、当該カルテルがA国市場を対象とする場合である。

 

これらの場合に、国際裁判管轄原因としての不法行為地、すなわち、加害行為地および結果発生地はどのように解釈

されるのか。さらに、結果発生地が遍在する場合に、各結果発生地の裁判所の審理範囲はどのように解釈されるのか。

 

まず、これら三つの問題に関する我が国の議論を概観した上で(Ⅱ)、ハーグ条約および諸外国における議論を紹介

する(Ⅲ)。その後、ハーグ条約および諸外国における議論を踏まえ、若干の解釈論的検討を行い(Ⅳ)、本稿を締めく

くることにしたい(Ⅴ)。

Page 5: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(   

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

五三

九八九

Ⅱ 

我が国における議論

 

経済取引の国際化などに対応する必要性から、平成二三(二〇一一)年民事訴訟法改正(以下、﹁二〇一一年改正﹂

という。)により、財産関係事件に関する国際裁判管轄規定が法定された。これ以前の国際裁判管轄は、明文規定を欠

いていたため、条理に基づき判断されていた。当初は、当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念から条

理に従い、旧民事訴訟法四条以下で定められる国内土地管轄に基づく裁判籍が我が国に認められる場合には、我が国の

国際裁判管轄も認められるというものであった)

7(

。その後、当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念に反

するような特段の事情がある場合を除き、国内土地管轄に基づく裁判籍が我が国に認められる場合には、我が国の国際

裁判管轄は認められるとする﹁特段の事情﹂論に基づき判断されていた)

8(

1 

不法行為に関する国際裁判管轄

 

二〇一一年改正により、不法行為に関する国際裁判管轄規定が三条の三第八号に定められている。三条の三第八号に

よると、国際裁判管轄原因としての不法行為地には、二〇一一年改正以前の裁判例)

9(

および通説)₁₀(

と同様に、加害行為地と

結果発生地の両方が含まれる。

 

加害行為地は、不法行為の原因となる行為がなされた地であり、具体的な加害行為地は、各不法行為において加害行

為とされるものに左右される。たとえば、製造物責任においては、製造物の製造(および設計)地)₁₁(

、インターネットを

介した著作権侵害・名誉毀損においては、アップロード地やサーバ所在地)₁₂(

が加害行為地とされている。また、共同不法

行為における共謀の事実は、不法行為地を定める要素ではなく)₁₃(

、不法行為の構成要素に該当しないと解されている)₁₄(

Page 6: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(   

同志社法学 

六六巻四号�

五四

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

九九〇

 

次に、結果発生地は、加害行為の結果である法益侵害が発生した地である。結果発生地を解釈するにあたっては、結

果発生地の結果として含まれる損害の範囲に留意しなければならない。すなわち、二次的・派生的な経済的損害が結果

に含まれるか否かである。二〇一一年改正以前は、二次的・派生的な経済的損害が結果に含まれると、最終的に被害者

である原告の住所地に裁判管轄を認めることになるため、一次的・直接的な損害のみが結果に含まれるとの見解)₁₅(

が有力

であった)₁₆(

。二〇一一年改正時に、二次的・派生的な経済的損害が結果に含まれない旨を明文化するべきか議論されたも

のの、最終的に明文化されなかった。そのため、二次的・派生的な経済的損害が結果に含まれるか否かは、依然として

解釈問題である。もっとも、現行法においても、二〇一一年改正以前の裁判例および有力な学説と同様に、二次的・派

生的な経済的損害は、結果に含まれないものと解されている)₁₇(

2 

競争法事件における不法行為地

 

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地について判断を下した裁判例はこれまでにない。学説にお

いては、加害行為地として、競争法に違反する協定などの締結地とする見解)₁₈(

、協定などの実施地とする見解)₁₉(

およびその

両方を加害行為地とする見解)₂₀(

が示されている。協定などの締結およびその実施はそれぞれ生じうる損害の原因となる重

要な行為と思われることから、いずれの地も加害行為地として適切であると思われる。

 

結果発生地としては、被害者の財産を一次的に侵害される法益と考え、国際カルテルなどの競争制限行為により損害

を被った者の本拠地とする見解)₂₁(

と被害者の財産に実際に損害が生じた地とする見解)₂₂(

が示されている。その一方で、競争

秩序の侵害が発生した地を結果発生地とする見解も示されている)₂₃(

。結果発生地として、財産上の損害の発生地とする見

解と競争秩序が侵害される地(市場地)とする見解が示されている通り、結果発生地は、競争制限行為により一次的に

Page 7: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(   

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

五五

九九一

侵害される法益の解釈により異なるであろう。

3 

審理範囲

 

また、名誉毀損やプライバシー侵害事件などの複数の国で損害をもたらす、いわゆる、拡散的不法行為事件において

は、結果発生地が遍在することから、結果発生地の裁判所の審理範囲が問題とされる)₂₄(

。すなわち、結果発生地の裁判所

の審理範囲が当該結果発生地で生じた損害に限定されるか否かである。

 

この問題について判断を下した裁判例はこれまでに存在しない。二〇一一年改正以前の多くの学説は、結果発生地の

一つが我が国に認められる場合に、審理範囲を我が国で生じた損害に限定したとしても、訴えの客観的併合が認められ

ることから、審理範囲を我が国で生じた損害に限定するとの解釈は困難であると主張していた)₂₅(

。訴えの客観的併合に関

して、多くの見解は、請求間の﹁密接な関連﹂を必要とする現行法三条の六)₂₆(

と同様に、一定の関連性を求めていた)₂₇(

が、

同一の事象から複数国で損害が生じる拡散的不法行為事件の場合には、それぞれを別々の不法行為とみなすとしても、

ここで求められる一定の関連性が満たされることに疑問の余地はないと思われるとも指摘されていた)₂₈(

 

加えて、審理範囲の限定に反対する主張として、結果発生地と他の管轄原因との関係から次のような主張もなされる。

すなわち、審理範囲の問題は、被害者保護の観点から考慮されるべきであり)₂₉(

、また、結果発生地の裁判所の審理範囲を

当該結果発生地で生じた損害に限定する一方で、結果発生地でもない被告住所地の裁判所の審理範囲をすべての損害に

認めることに、合理的な理由が存在しないとの主張である)₃₀(

 

他方で、著作権などの保護国毎に独立して存在する知的財産権事件に関しては、訴えの客観的併合を留保するが、各

保護国に侵害された利益が存在することから、審理範囲は当該結果発生地で生じた損害に限定されるとの見解も示され

Page 8: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(   

同志社法学 

六六巻四号�

五六

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

九九二

る)₃₁(

 

それに対して、知的財産権事件に関する結果発生地の裁判所の審理範囲は、当該結果発生地で生じた損害に完全に限

定されるとの見解も示される)₃₂(

。この見解によると、知的財産権に対する侵害行為が特定国に向けられた場合の審理範囲

は、EUの名誉毀損事件に関するShevill

判決)₃₃(

で示されたモザイク理論にならい、当該国で生じた損害に限定され)₃₄(

、さ

らに、訴えの客観的併合による審理範囲の拡大の可能性が排除される)₃₅(

 

競争制限行為が複数国の市場の競争秩序に影響を及ぼす場合においても、審理範囲の問題が生じるであろう。しかし、

現在のところ、競争法事件についての特別な言及はなされていない。各国は、自国の競争法により自国市場の競争秩序

を規制していることから、結果発生地の裁判所の審理範囲は、当該結果発生地で生じた損害に限定されるとの解釈も可

能であると思われる。その一方で、そのような競争法の性質を重視せず、競争法上の私訴についても、訴えの客観的併

合が認められうることなどから、結果発生地の裁判所の審理範囲は何ら限定されないとの解釈も可能であると思われる。

4 

小括

 

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地について判断を下した裁判例は存在しない。学説において

は、加害行為地と解釈されうる地として、協定などの締結地、協定などの実施地、ならびに締結地および実施地が主張

される。結果発生地としては、競争制限行為により損害を被った被害者の本拠地、被害者の財産に実際に損害が生じた

地、および競争秩序が侵害される地(市場地)が主張される。これらの解釈も可能であるが、加害行為および一次的に

侵害される法益の解釈次第では、加害行為地および結果発生地の異なる解釈も可能であろう。また、審理範囲ついては、

特別の言及はなされていないが、私訴事件における競争法の性質評価に左右されると思われる。

Page 9: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(   

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

五七

九九三

Ⅲ 

ハーグ条約および諸外国における議論

 

先に示した通り、競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地について、いくつかの見解が示されてい

るが、我が国ではあまり議論がなされていない。そこで、比較法的観点から何らかの示唆を得るために、一九九九年ハ

ーグ条約草案、EU、スイスおよび米国における議論を紹介する。

1 

一九九九年ハーグ国際裁判管轄条約草案

 

ハーグ国際私法会議において、民事および商事事件における裁判管轄および判決の承認執行に関する条約作成プロジ

ェクトが一九九四年に開始され、一九九九年一〇月に、民事および商事に関する国際裁判管轄および外国判決に関する

条約準備草案(以下、﹁一九九九年条約草案﹂という。))₃₆(

が起草された。もっとも、一九九九年条約草案は最終的に採択

されず、管轄合意に限定された管轄合意に関する条約)₃₇(

が二〇〇五年に採択されるに至った。同条約作成プロジェクトに

おいて、反トラスト法上の請求は、一九九九年条約草案では不法行為類型の一つとして含められていたが、二〇〇一年

外交会議終了時の暫定条文案)₃₈(

では、事項的適用範囲から排除された)₃₉(

。そのため、本稿では、一九九九年条約草案に関す

るナイ・ポカール報告書)₄₀(

を主に扱う。

⑴ 不法行為に関する国際裁判管轄

 

一九九九年条約草案では、不法行為に関する国際裁判管轄規定が一〇条に定められている)₄₁(

。同条は、交通事故、製造

物責任、環境、競争および名誉毀損などの実務上生じうる様々な不法行為類型を十分に考慮した包括的な規定である)₄₂(

Page 10: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(   

同志社法学 

六六巻四号�

五八

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

九九四

 

同条一項は、a号において、損害の原因となった作為または不作為がなされた国、すなわち、加害行為地国の裁判所

に国際裁判管轄を認め、b号において、損害が発生した国、すなわち、結果発生地国の裁判所に国際裁判管轄を認める。

もっとも、b号における結果発生地は、二次的損害が生じた地を含まず、一次的損害が生じた地であり)₄₃(

、責任を問われ

る者が結果発生地における結果の発生を合理的に予見することができた場合にのみ認められる)₄₄(

 

同条二項は、特別委員会においてほとんど議論がなされないまま採択されたものであるが、反トラスト法事件から結

果発生地を排除する。反トラスト法事件から結果発生地を排除する理由は、次のように説明される。すなわち、単一の

違法行為が複数の国で損害を生じさせうる場合には、各結果発生地国における訴訟を回避し、加害行為地国に訴訟を集

中させるべきであり、加害行為地国に訴訟を集中させることにより、不法行為地管轄が認められる国と、責任が問われ

る者が違反した法を有する市場地国とを一致させることである)₄₅(

。もっとも、同項は、反トラスト法分野で一般的に認め

られる行為の結果に注目する効果理論に沿わないと批判される)₄₆(

 

同条三項は、既に生じた損害に対する請求だけでなく、将来の損害を防ぐための予防的な訴えの提起を認める。同条

四項は、被告が結果発生地国に常居所を有する場合を例外として、結果発生地国の裁判所の審理範囲を当該結果発生地

国で生じた、またはそのおそれがある損害に限定する。

⑵ 反トラスト法事件における不法行為地

 

前述した通り、反トラスト法事件も含む包括的な規定が一〇条に定められている。同条によると、国際裁判管轄原因

として、加害行為地および結果発生地が認められるが、反トラスト法事件においては、同条二項により結果発生地が排

除されることから、加害行為地のみが認められる。

Page 11: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(   

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

五九

九九五

 

そこで、加害行為地の解釈が問題となるが、反トラスト法事件における加害行為地は、条文上明らかとされていない。

むしろ、一九九九年条約草案は、加害行為地を決定する基準を何ら定めておらず、各国の裁判所が国内法または問題と

される不法行為の準拠法に基づき、その判断を行うことを想定していた)₄₇(

 

もっとも、起草過程においては、競争が市場における両訴訟当事者の存在から生じることを理由に、次のような市場

地の裁判所が、反トラスト法事件を審理する最も適切な裁判所であると考えられていた)₄₈(

。すなわち、両訴訟当事者が存

在する、競争制限行為が実施されたまたは反トラスト法が違反される市場地である。また、加害行為自体は明らかでな

いものの、反トラスト法が違反される市場地が加害行為地と考えられていたことは、加害行為地国と責任を問われてい

る者が違反した法を有する市場地国とを一致させるとの、反トラスト法事件から結果発生地を排除する理由からも推測

されうる)₄₉(

⑶ 審理範囲

 

結果発生地国の裁判所の審理範囲は、一〇条四項により、原則として、結果発生地国で生じた損害に限定される。も

っとも、反トラスト法事件については、同条二項により結果発生地が排除されているため、審理範囲の問題は生じない。

⑷ 小括

 

一九九九年条約草案において、反トラスト法事件における加害行為地は、条文上明らかとされていない。しかし、起

草過程および結果発生地の排除理由から、反トラスト法が違反される市場地が加害行為地と考えられていたと推測され

る。結果発生地は、前述の通り、一〇条二項により反トラスト法事件から排除される。そのため、結果発生地国の裁判

Page 12: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(   

同志社法学 

六六巻四号�

六〇

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

九九六

所の審理範囲は問題とならない。

 

一九九九年条約草案の規定を具体例に当てはめると、問題となる競争制限行為が反トラスト法に違反する市場地が加

害行為地となると思われる。結果発生地は、排除されているため、認められず、結果発生地国の裁判所の審理範囲も問

題とならない。したがって、一九九九年条約草案の規定による場合には、問題となるカルテルが反トラスト法に違反す

る市場地国に加害行為地が認められる。

2 

EU

 

EUでは、国際裁判管轄および裁判の承認執行に関する統一規則として、民事および商事事件における裁判管轄およ

び裁判の執行に関する二〇〇〇年一二月二二日の理事会規則(EC)四四/二〇〇一(以下、﹁ブリュッセルⅠ規則﹂

という。))₅₀(

が定められている。また、EU構成国とEFTA構成国間の裁判管轄および判決の承認執行に関する条約(以

下、﹁ルガノ条約﹂という。))₅₁(

も存在するが、ルガノ条約の規定およびその解釈は、ブリュッセルⅠ規則におけるものと

ほぼ同一であるため)₅₂(

、ここでは、主にブリュッセルⅠ規則における議論を紹介する。

⑴ 不法行為に関する国際裁判管轄

 

ブリュッセルⅠ規則には、競争法事件に関する特別の管轄規定は定められていない。しかし、不法行為事件に関する

特別管轄)₅₃(

が五条三号(改正後、七条二号)に定められており、競争法事件も五条三号の適用範囲に含まれる)₅₄(

 ﹁損害をもたらす事実が発生したか、発生する危険がある地﹂との五条三号の文言は、損害が発生した地である結果

発生地だけでなく、損害をもたらす事実が発生した地である加害行為地の両方を含むものとされる)₅₅(

。もっとも、結果発

Page 13: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(   

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

六一

九九七

生地の解釈にあたっては、二次的・派生的な経済的損害の発生地が五条三号における結果発生地に含まれるか否かに留

意しなければならない。この点につき、EUにおいても、結果発生地は、一次的損害が生じた地であり)₅₆(

、二次的損害の

発生地を含まないとされる)₅₇(

⑵ 競争法事件における不法行為地

 

現在のところ、競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地について判断を下した裁判例は存在しな

い)₅₈(

。その一方で、学説においては、議論が盛んであり、とりわけ、加害行為地に関して、多くの見解が述べられている。

以下では、加害行為地、結果発生地の順にそれぞれについての議論を紹介する。

ⅰ 加害行為地

 

加害行為地については、議論が盛んであり、締結地、実施地および本拠地(または設立地)が主張され、これらの地

を巡り多くの見解が示されている。以下では、締結地、実施地および本拠地について、順に紹介する。

 締結地

 

一つ目は、競争制限的な協定、決定または協調行為などが交渉・締結される締結地である。締結地は、EUにおける

主な競争ルールを含む欧州連合の機能に関する条約(以下、﹁TFEU﹂という。))₅₉(

が競争ルールに違反する協定自体を

禁止し、その実施を必要としないことを根拠に主張される)₆₀(

。締結地を支持する裁判例として、価格目標の合意や取引関

連情報の交換を目的とした協定などの締結を加害行為とする英国の判決)₆₁(

および輸出禁止措置の決定を加害行為とするド

Page 14: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(   

同志社法学 

六六巻四号�

六二

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

九九八

イツの判決)₆₂(

が挙げられる)₆₃(

 

もっとも、締結地は、単一の地に特定される場合)₆₄(

には、加害行為地として適切であるとされる一方で、複数存在する

場合については、見解が分かれている。複数の締結地を加害行為地とする解釈に否定的な見解は、次のように主張する。

すなわち、締結地の遍在が加害行為地管轄の膨脹(Inflationierung

)を導きうること、および様々な地で内容が更新さ

れる長期的なカルテルの場合には、個々の行為と損害との因果関係の立証が非常に困難であり、またある行為から生じ

た損害を損害全体から分離することが不可能であると思われることから、締結地は加害行為と解釈されるべきではな

い)₆₅(

。さらに、複数の締結地が存在する場合には、契約債務の履行地が特定不可能であることに基づき、特別管轄である

五条一号の義務履行地を排除した欧州司法裁判所の裁判例)₆₆(

を援用し、締結地は排除されうるとも主張される)₆₇(

 

それに対して、複数の締結地を加害行為地とする解釈に肯定的な見解は、次のように主張する)₆₈(

。すなわち、締結地が

複数存在する場合に、その内の一つが単に観光目的で選択された地に過ぎないときであっても、重要な行為は締結地で

行われており、またカルテル参加者自身が締結地を操作することができることから、各締結地は加害行為地として不合

理なものではない。もっとも、各締結地がそれぞれ加害行為地となるが、各締結地で主張されうる損害は、因果関係を

有する行為から生じた損害に限定される。各締結地で主張されうる損害が因果関係を有するものに限定されるにせよ、

問題とされる行為が既に明らかであり、また当該行為が損害との明白な因果関係を有している場合には、締結地を排除

することは適切ではない。

 

また、情報通信手段を介して協定などが締結される場合には、単一の加害行為地を特定することは困難であるが、次

のように主張される)₆₉(

。すなわち、契約債務の準拠法に関する二〇〇八年六月一七日の欧州議会および理事会規則(EC)

五九三/二〇〇八(以下、﹁ローマⅠ規則﹂という。))₇₀(

における契約の方式の有効性に関する一一条二項の見解を援用し、

Page 15: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(   

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

六三

九九九

各カルテル参加者に説明がなされたすべての地を加害行為地とすべきである。もっとも、一一条二項は、法律行為の方

式上の要件を広く認め、法律行為を可能な限り有効とすることを意図するものであり、これをカルテルの成立に当ては

めると、加害行為地としての締結地が広く認められるとの不利益がカルテル参加者にもたらされる。

⒝ 

実施地

 

二つ目は、協定などの実施地(place of im

plementation

)である)₇₁(

。なお、ここでいう﹁実施(im

plementation

)﹂とは、

特定機関による価格などの情報調整、人為的に引き上げられた価格での物の販売、契約締結の拒否、特定の相手方グル

ープの差別など、実際の競争制限効果に必要な要件の決定である)₇₂(

。実施地は、カルテルなどの実施が損害をもたらした

と明確に言及する国際ビタミンカルテルに関するP

rovimi

判決)₇₃(

および実施が競争法違反を判断するための決定的な要素

であると述べるW

ood Pulp

判決)₇₄(

によって支持される)₇₅(

。さらに、実施地の根拠として、以下の四つが挙げられる)₇₆(

。すな

わち、実施地が影響を及ぼされる市場と関連性を有すること、協定などが実施されない場合には損害が生じないこと、

不法行為地の遍在を導かないこと、および影響を及ぼされない地における訴訟が排除されることである。

 

しかし、実施地に対しては、次のような批判がなされる)₇₇(

。すなわち、あるカルテルが世界各地の市場で実施される場

合には、実施地に基づく加害行為地管轄が遍在し、その結果、フォーラム・ショッピングのおそれ、そして、法的不安

定性をもたらすとの批判である。しかし、この批判に対しては、次のように反論される)₇₈(

。すなわち、カルテル価格に基

づく物品の販売といった協定の実施は、各カルテル参加者の独立した義務であり、各実施行為は独立した不法行為とな

る。そのため、実施地に基づく加害行為地管轄は、各実施地で生じた損害に限定される。また、このような実施地は、

多くの場合、結果発生地と解釈されうる市場地と一致すると指摘される)₇₉(

Page 16: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

六四

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇〇〇

⒞ 本拠地

 

三つ目は、被告の本拠地(または設立地)である。本拠地は、Shevill

判決のように被告の本拠地を唯一の加害行為

地とすることで、加害行為地が明確なものとなり、法的安定性が確保されることを根拠に主張される)₈₀(

 

しかし、本拠地は、既に二条および六〇条で一般管轄として認められることから、本拠地を加害行為地とする解釈は、

加害行為地の独立した重要性への考慮を欠き、原告に認められる特別管轄の一つである加害行為地を意図的に排除する

ことになると批判される)₈₁(

。また、モザイク理論が競争法上の私訴において用いられる場合には、結果発生地の裁判所の

審理範囲が当該結果発生地で生じた損害に限定されるため、本規則が本来予定するすべての損害について審理すること

ができる不法行為地管轄がほぼ存在しないことになる。そのため、このような解釈は、加害行為地の遍在を防ぐ一方で、

被告を過度に優遇するおそれがあり、とりわけ、競争法違反が競争当局により既に認定されている場合には、不適切で

あるとも批判される)₈₂(

。これらの批判に対しては、事案との関連性および正当な原告の利益保護を目的とする不法行為地

は、結果発生地によって追求されうると反論される)₈₃(

 

もっとも、本拠地は、単なるその所在ではなく、問題となる協定などに応じた経営上の重要な判断が下された場所で

あることが根拠とされる場合には、加害行為地の一つとして適切であると主張される)₈₄(

。しかし、関連する重要な判断が

下される場所であることに基づき本拠地を加害行為地に含めたとしても、本拠地は、二条および六〇条により既に一般

管轄として認められることから、加害行為地に基づく追加的な特別管轄は認められない)₈₅(

ⅱ 結果発生地

 

次に、結果発生地としては、主に市場地と財産侵害地の二つが主張されている。以下では、市場地、財産侵害地の順

Page 17: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

六五

一〇〇一

に各見解を紹介する。

a 市場地

 

一つ目は、競争制限行為により競争秩序に影響(効果)を及ぼされる市場地である。市場地を結果発生地と解釈する

根拠として、次のように主張される)₈₆(

。すなわち、競争法事件において一次的に保護される法益は、市場の機能能力

(Funktionsfähigkeit

)および競争制限からの自由(B

eschränkungsfreiheit

)であり、競争制限行為により市場で被った

経済的損害は、二次的な損害に過ぎない。また、競争法は、競争の制限および歪曲ならびにその結果から、公共

(Allgem

einheit

)だけでなく、個々の被害者も保護することを目的としており、抵触法上においてもこの目的が考慮さ

れなければならない)₈₇(

。そのため、競争制限行為の効果が生じる市場地を結果発生地とする解釈は、この目的に沿い、適

切である)₈₈(

 

また、競争制限行為により被る経済的損失を一次的損害とするが、そのような損害は、競争秩序に影響を及ぼされた

市場地で生じるとし、市場地を結果発生地と主張する見解もある)₈₉(

 

市場地を結果発生地と解釈する見解に共通する根拠として、次のことが主張される)₉₀(

。すなわち、契約外債務の準拠法

に関する二〇〇七年七月一一日の欧州議会および理事会規則(EC)八六四/二〇〇七(以下、﹁ローマⅡ規則﹂とい

う。))₉₁(

六条三項が、市場地を競争法事件における結果発生地とすること)₉₂(

、ならびにローマⅡ規則前文七が同規則の実体

的な適用範囲および規定に関して、ブリュッセルⅠ規則との統一的解釈を求めることである。

Page 18: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

六六

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇〇二

⒝ 財産侵害地

 

二つ目は、競争制限行為により財産への損害が及んだ財産侵害地である。財産侵害地を主張する見解は、競争制限行

為を単なる財産侵害と捉え、競争制限行為により被った経済的損失を一次的損害とする。もっとも、この見解の中でも、

財産侵害地として、市場地、被害者の本拠地)₉₃(

および具体的所在地)₉₄(

が主張される。市場地については、前述の通りである

ので、以下では、被害者の本拠地、具体的所在地について概観する。

(b1) 被害者の本拠地

 

まず、競争法事件において、被害者の本拠地を支持する裁判例として、国際ビタミンカルテルに関するL

G

Dortm

und

事件)₉₅(

および不当なライセンス契約に関するSanD

isk

事件)₉₆(

があげられる)₉₇(

 

LG

Dortm

und

事件において、ドイツ法人である原告は、被告であるスイス法人のドイツ子会社から、カルテルの対

象とされるビタミンを購入していた。原告は、本来のビタミン価格とカルテルにより騰貴されたビタミン価格との差額

分を競争制限行為により被った経済的損失として、ドイツの裁判所に損害賠償請求訴訟を提起した。裁判所は、実際に

経済的損失を被った具体的な結果発生地を示していない。しかし、原告と被告のドイツ子会社間の取引が渉外性を有し

ないことから、原告の本拠地を結果発生地である財産の侵害地と考えていたことが明らかであると指摘される)₉₈(

 

SanDisk

事件では、原告である米国法人に対して欧州の複数の企業により提示された特許権に関するライセンス契約

が問題となった。原告は、ライセンス契約の内容が不当なものであることに基づき、合理的かつ非差別的なライセンス

契約および濫用的な特許権の行使(patent enforcem

ent

)に対する損害賠償などを求め、英国の裁判所に訴えを提起し

た。裁判所は、ライセンスを正当に得ることができないことが、原告の英国におけるビジネスに影響を及ぼしているこ

Page 19: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

六七

一〇〇三

とを認めた上で、原告の設立地(デラウェア州)が結果発生地としての直接的かつ経済的な損失が生じた地であると示

した)₉₉(

 

前述の通り、競争法事件における財産侵害地として、被害者の本拠地を支持する裁判例もあるが、被害者の本拠地を

結果発生地とする解釈は、次のように批判される)100(

。すなわち、不法行為地に基づく国際裁判管轄は、証拠との密接な関

連性および事理に適した訴訟遂行の必要性によってのみ正当化されるものである。そのため、原告である被害者の本拠

地を容易に結果発生地とすることは、ブリュッセルⅠ規則二条一項における被告住所地原則を減退させるだけでなく、

原告住所地の裁判所に容易に国際裁判管轄を導くことになり、適切ではない。

(b2) 具体的所在地

 

被害者の本拠地に対する前述の批判から、競争法事件における財産侵害地として、具体的所在地が主張される。この

見解を支持するものとして、競争法事件における裁判例ではないが、D

anmarks R

ederiforening

事件)101(

およびK

ronhofer

事件)102(

があげられる)103(

 

まず、D

anmarks R

ederiforening

事件は、スウェーデンにおける労働争議行為(industrial action

)のため、デンマ

ーク船籍である自社船舶の航行を取りやめ、他の船舶を借りなければならなくなったことから生じた損害に関して、デ

ンマークに本拠を有する海運会社が損害賠償請求訴訟をデンマークの裁判所に提起した事案である。同事案では、船舶

の目的地国であるスウェーデンでの労働争議行為により生じた損害が、航行を取りやめた船舶の上で発生したとみなさ

れうるのか、および当該船舶の船主が、当該船舶の旗国地で労働組合に対する損害賠償請求訴訟を提起できるか否かが

問題となった。この問題に関して、欧州司法裁判所は、次のように判示し、デンマークの裁判所に国際裁判管轄を認め

Page 20: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

六八

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇〇四

た)104(

。すなわち、原告がデンマークに本拠を有するだけでは、デンマークの裁判所に国際裁判管轄は認められない。しか

し、船舶の上で損害が発生する場合には、当該船舶の旗国法が不法行為地の決定的な要素であり、本件のような損害の

場合においても、旗国籍を考慮することは認められ、適切である。

 

次に、K

ronhofer

事件は、オーストリアに居住する原告が、自らの資金をロンドンにおける投機的な取引で失ったド

イツの財産管理会社に対して、損害賠償請求訴訟をオーストリアの裁判所に提起した事案である。同事案では、原告が

ドイツで被った金銭的損失から、連鎖的に金銭的損失が生じたとされるオーストリアが結果発生地に含まれるか否かが

問題となった。この問題に対して、欧州司法裁判所は、次のように判示し、オーストリアの裁判所の国際裁判管轄を否

定した)105(

。すなわち、財産の中心地のような不明確な要素を裁判管轄の判断基準とすることは、原告および被告の潜在的

な法廷地に対する予見可能性を損なうおそれがあり、さらに、このような地を結果発生地に含めると、原告住所地に裁

判管轄を容易に認めるおそれがある。

 

これら二つの裁判例を援用して、被害者の本拠地に代わり、具体的所在地が財産侵害地として主張されるが、具体的

所在地については、被害者である原告が有利な結果発生地を不当に得ることを防ぐために、次の留保が付される)106(

。すな

わち、原告の口座や金銭などが両当事者または取引と何ら関係のない国に所在する場合には、それらの地が具体的所在

地から排除されることを被害者である原告が予見可能であったか否かである。

⑶ 審理範囲

 

名誉毀損や国際カルテルなどの拡散的不法行為事件においては、複数国で損害が生じ、結果発生地が遍在しうること

から、結果発生地の裁判所の審理範囲が問題となる。すなわち、結果発生地の裁判所の審理範囲が、当該結果発生地で

Page 21: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

六九

一〇〇五

生じた損害に限定されうるか、という問題である。この問題に関して、多くの学説は、モザイク理論に従い、結果発生

地の裁判所の審理範囲が当該結果発生地で生じた損害に限定されると主張し)107(

、欧州委員会もモザイク理論の適用を前提

としている)108(

。その一方で、二〇〇三年に改正されたEU競争法執行規則)109(

一条が各構成国裁判所による競争法違反の認定

の対象を一国におけるものに限定していないことから、結果発生地の裁判所の審理範囲は、当該結果発生地で生じた損

害に限定されないとも考えられると指摘される)110(

 

結果発生地の裁判所の審理範囲がモザイク理論に従い当該結果発生地で生じた損害に限定される場合には、原告は、

十分な救済を得るために、損害を被った各国で訴えを提起しなければならない。そのため、そのような場合には、国際

ビタミンカルテルに関するP

rovimi

事件の原告のように、ブリュッセルⅠ規則六条一号で認められる共同訴訟の特別管

轄を用いることが実務上重要とされる)111(

⑷ 小括

 

現在のところ、競争法上の私訴における国際裁判管轄原因としての不法行為地について判断を下した裁判例は存在し

ない。学説においては、加害行為地として、締結地、実施地および本拠地が主張され、これらの地を巡り多くの見解が

示されている。その一方で、結果発生地については、市場地と財産侵害地の二つが主張されるが、ローマⅡ規則におい

て、競争法上の私訴における結果発生地が定められたことから、市場地を結果発生地と解釈する見解が有力であると思

われる。また、結果発生地の裁判所の審理範囲については、モザイク理論によるべきであるとの見解が有力であり、欧

州委員会もこれを前提としている。

 

EUにおける見解を具体例に当てはめると、加害行為地は、その解釈により大きく異なるであろう。①の場合には、

Page 22: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

七〇

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇〇六

締結地は、スイス、米国および日本、実施地は、日本を含む東アジア諸国、本拠地は、スイスおよび米国である。②の

場合には、実施地がA国となる以外、①の場合と同一である。結果発生地もその解釈により異なるが、市場地とする見

解によると、結果発生地は、①では、日本を含む東アジア諸国、②では、A国である。また、結果発生地の裁判所の審

理範囲は、有力な見解によれば、当該結果発生地で生じた損害に限定される。

3 

スイス

 

スイスには、国際裁判管轄に関して、EU構成国とEFTA構成国間のルガノ条約とスイス連邦国際私法典(以下、

﹁IPRG﹂という。))112(

が存在する。IPRG一条二項は、スイスで有効な国際条約がIPRGに優先して適用される旨

を規定しており、ルガノ条約が適用される場合には、IPRGは適用されない。

 

ここでは、先に述べた通り、ルガノ条約における議論がブリュッセルⅠ規則におけるものとほぼ同一であるため、主

にIPRGにおける議論を紹介する。

⑴ 不法行為に関する国際裁判管轄

 

IPRGには、競争法事件に関する特別の国際裁判管轄規定は定められていない。しかし、競争法事件も含む不法行

為事件に関する包括的な規定が一二九条)113(

に定められている。

 

一二九条は、不法行為事件における国際裁判管轄原因として、次の三つを認める。一つ目は、スイスにおける被告の

住所地または常居所地である。同条における自然人の住所地は、二〇条一項a号、法人については、二一条一項ないし

三項に従い決定される。また、被告がスイスに住所を有しない場合の常居所地は、二〇条一項b号に従い決定される。

Page 23: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

七一

一〇〇七

二つ目は、被告の営業所所在地であり、被告の営業所所在地は、二〇条一項c号および二一条四項に従い決定される。

もっとも、被告の営業所所在地に基づく場合には、かつては、問題となる営業所と請求間に実質的な関連性が求められ

るだけであったが)114(

、現在では、問題となる営業所の活動が不法行為に関与することが求められる)115(

 

三つ目は、不法行為地としての加害行為地および結果発生地である。一二九条における加害行為地および結果発生地

の概念は、原則として、ルガノ条約五条三号に関する欧州司法裁判所の解釈を援用し、ルガノ条約の規定と並行して解

釈されなければならない)116(

。ルガノ条約の規定は、ブリュッセル条約およびブリュッセルⅠ規則に関する欧州司法裁判所

の判例を考慮して解釈されるため、一二九条における不法行為地は、ブリュッセルⅠ規則におけるそれとほぼ同一であ

る。したがって、加害行為地は、法益侵害の直接の原因となる行為が行われた地)117(

であり、結果発生地は、二次的損害が

生じた地を含まず、一次的損害が生じた地である)118(

⑵ 競争法事件における不法行為地

 

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地について判断を下した裁判例は存在しない。競争法事件に

おける国際裁判管轄原因としての不法行為地の解釈に当たり、支配的な見解は、ルガノ条約と並行する解釈ではなく、

経済法上一般的に認められている効果理論に基づく特別な解釈を主張する)119(

。また、不法行為地の具体的な解釈の前提と

して、次のことが主張される)120(

。すなわち、競争法事件において、関係者の競争上の利益が国内で抵触する場合、または

ある行為により国内市場が影響を及ぼされる場合には、不法行為地が国内に認められなければならないが、競争上の利

益が外国でのみ抵触する場合、または影響を及ぼされる市場が外国の市場である場合には、不法行為地はもっぱら外国

にのみ認められるべきことである。さらに、ある行為が法廷地国の市場で実施される、または実施なされなければなら

Page 24: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

七二

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇〇八

なかった場合には、法廷地国内に加害行為地が基本的に認められなければならないとも主張される)121(

。その一方で、法廷

地国の市場に対する特定の行為が外国会社に要求される場合には、加害行為地の特定がより困難であると思われるため、

以下で述べる結果発生地としての効果地に基づくことを強いられると主張される)122(

。したがって、これらの主張に従うと、

スイス国内市場に向けられた作為および不作為が問題となる場合には、不法行為地は、スイス国内に認められなければ

ならない)123(

 

次に、不法行為地の解釈に関する議論を概観する。まず、結果発生地についてであるが、結果発生地の解釈にあたっ

ては、効果理論に基づき、次のように主張される)124(

。すなわち、競争制限行為の目的は、市場における競争秩序に制限的

効果を及ぼすことであり、その結果として、競争制限が市場で生じる。そのため、競争法事件における一次的損害は、

ある市場の競争秩序が制限されることであり、競争制限効果が生じる効果地(市場地)が結果発生地である。

 

加害行為地の解釈にあたっては、まず、締結される場所に関係なく、スイス国内に違法な効果をもたらす、すべての

競争制限的な協定の締結地が旧カルテル法上の不法行為地に含まれるとする判決)125(

が援用される。そして、これに基づき、

効果理論から導かれる競争法上特別な効果地に加害行為地が含まれる、すなわち、スイス国内で違法な結果を導くすべ

てのものが効果に含まれるとして、加害行為地は、協定の締結やその実施が実際に行われる地ではなく、これらの行為

が最終的に効果を及ぼす市場地であると主張される)126(

。したがって、この見解によれば加害行為地は、競争制限行為が実

際に行われた(行為者が所在した)地ではなく、最終的に効果が生じる市場地となる。

 

このような加害行為地の解釈は、企業の一時滞在のような偶然性に基づくことなく、不法行為地を決定することがで

きるとして支持される)127(

。もっとも、この見解によると、あるドイツの企業がスイス市場における競争制限行為をドイツ

から指示する場合に、加害行為地と結果発生地が重複すると指摘される)128(

。そのため、多くの見解は、このような場合に

Page 25: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

七三

一〇〇九

は、効果理論に基づく結果発生地としての効果地の利益となるよう、加害行為地を排除し、結果発生地である効果地が

唯一の不法行為地であると主張する)129(

 

このような加害行為地と結果発生地が重複する解釈に対して、加害行為地と結果発生地は、法律上区別されるべきで

あり、とりわけ、隔地的不法行為の場合には、加害行為地と結果発生地が重複する解釈はなされるべきでないと批判さ

れる)130(

。しかし、この批判に対しては、次のような反論がなされる)131(

。すなわち、不法行為者が刑法などの公法上の規制を

考慮し、自身の行為を加害行為地法および結果発生地法に反しないものとしなければならない一方で、加害行為地の市

場が効果を及ぼされない限り、加害行為地の競争法は通常その適用を求められないことから、そのような自国の競争法

を適用する利益を有さない国に国際裁判管轄を認める意味がないことである。したがって、この支配的な見解によると、

効果地は、単なる結果発生地ではなく、競争法事件における一般的な不法行為地を具体化した地である。

⑶ 審理範囲

 

スイスにおいても、結果発生地が遍在する場合における結果発生地の裁判所の審理範囲が、当該結果発生地で生じた

損害に限定されるか否かは争われている)132(

。スイスでは、名誉毀損事件で示されたモザイク理論が一般化されるべきでな

いとの見解)133(

が支配的であり、その根拠として、以下の四つの理由が示される)134(

。一つ目は、IPRGがブリュッセルI規

則とは対照的に、被告住所地管轄およびそこで下された裁判の承認執行を保証しないことである。二つ目は、単一の訴

訟で損害全体を判断することが、手続上経済的であり、また単一の訴訟により矛盾する判決が回避されうることである。

三つ目は、加害行為地の裁判所が事案との特別な関連性を有さない場合があることである。四つ目は、IPRGおよび

ブリュッセルⅠ規則自体がフォーラム・ショッピングを禁止していないことである。この見解によると、スイスの裁判

Page 26: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

七四

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇一〇

所が不法行為地である効果地に基づく場合の審理範囲は、スイスで生じた損害に限定されず、各地で生じた損害全体に

及ぶ。

 

仮に、結果発生地の裁判所の審理範囲がモザイク理論に従い当該結果発生地で生じた損害に限定される場合には、原

告は、十分な救済を得るために、損害を被った各国で訴えを提起しなければならない。EUにおいて、請求間の関連性

に基づく共同訴訟の特別管轄がブリュッセルⅠ規則六条一号で認められるが、IPRGにおいては、このような管轄は

認められていない)135(

⑷ 小括

 

スイスにおいても、競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地について判断を下した裁判例は存在し

ない。学説においては、効果理論に基づく特別な解釈が強く主張され、競争秩序が制限され、競争制限効果が生じる効

果地(市場地)を加害行為地および結果発生地の両方を含む唯一の不法行為地とする見解が支配的である。また、唯一

の不法行為地である効果地に基づく場合におけるスイスの裁判所の審理範囲は、モザイク理論を一般化すべきでないと

の支配的な見解によると、スイスで生じた損害に限定されない。

 

スイスにおける見解を具体例に当てはめると、効果地(市場地)が唯一の不法行為地とされるところ、不法行為地は、

①では、日本を含む東アジア諸国、②では、A国である。また、結果発生地に基づく場合の審理範囲は、モザイク理論

が一般化されるべきでないとの見解が支配的であることから、結果発生地で生じた損害に限定されない。

Page 27: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

七五

一〇一一

4 

米国

 

米国には、国際裁判管轄に関する連邦法が存在しないため)136(

、連邦裁判所および州裁判所を含む米国の裁判管轄を判断

するにあたっては、州裁判所の裁判管轄理論)137(

が重要な役割を果たす。連邦裁判所および州裁判所の裁判管轄は、主に裁

判所が所在する州の判例法および制定法に依拠し、それぞれ合衆国憲法第五修正条項、第一四修正条項により制限され

る。州裁判所の裁判管轄理論によると、被告が法廷地州内に存在する場合、または被告が法廷地州内に存在しないが、

被告を法廷地州における裁判に服させることが適正手続(due process

)の要件に反しない場合には、州裁判所の裁判

管轄が認められる。

 

また、裁判所が民事紛争に有効な判決を下すためには、紛争に対する事物管轄(subject m

atter jurisdiction

)が必要

となるが、連邦反トラスト法に基づく民事訴訟の事物管轄は、連邦裁判所に認められ)138(

、連邦裁判所の専属管轄とされ

る)139(

。したがって、連邦反トラスト法事件においては、連邦裁判所の裁判管轄が問題となる。そのため、以下では、州裁

判所の裁判管轄理論および連邦裁判所の裁判管轄を概観した後、連邦反トラスト法事件における連邦裁判所の裁判管轄

に関する議論を紹介する。

⑴ 米国における裁判管轄

ⅰ 州裁判所の裁判管轄理論

 

米国の裁判管轄に関するリーディングケースは、P

ennoyer判決)140(

である。同判決において、連邦最高裁は、州の独立

した主権に基づき、州内に所在する被告に直接送達がなされた場合、被告が州内での裁判に合意した場合、または法人

が被告であり州内で設立されている場合には、当該州の裁判所に裁判管轄が認められることを示し、さらに、州裁判所

Page 28: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

七六

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇一二

の裁判管轄の行使が、第一四修正条項の適正手続により制限されることに初めて言及した。

 

その後、連邦最高裁は、International Shoe

)141(

判決において、被告が法廷地州に存在しない場合には、﹁訴訟の遂行が﹃公

正さと実質的正義の伝統的観念(traditional notions of fair play and substantial justice

)﹄に反しないとされる程度の、

一定の法廷地州との﹃最小限の関連(m

inimum

contacts

)﹄﹂を被告が有していることだけを、適正手続は求める﹂)142(

の﹁公正さの理論﹂を採用し、継続的かつ体系的な活動を行う州外の法人に対する裁判管轄の行使について新たな理論

を示した)143(

。これを受けて、各州は、適正手続に反しない限りで、州の領域外へ裁判管轄を行使するために、ロング・ア

ーム法を制定した。International Shoe

判決以降、州裁判所の裁判管轄の行使が第一四修正条項の適正手続に反するか

否かは、﹁最小限の関連﹂と﹁公正さと実質的正義の伝統的観念﹂の二つからなる﹁公正さの理論﹂により判断される。

すなわち、まず、被告と法廷地州との間に﹁最小限の関連﹂が存在するかが検討され、次に、以下の五つの考慮要素に

基づき、州裁判所の裁判管轄の行使が合理的であるかが検討される。すなわち、被告の負担、問題となる事案を審理す

る法廷地州の利益、便宜かつ実効的な救済を受けるとの原告の利益、紛争に最も効率的な解決を与えるべき連邦制度上

の利益、および基本的社会政策を促進するとの各州が共有する利益である)144(

 

International Shoe

判決において、﹁公正さの理論﹂が採用されたものの、この基準は、予見可能なほど明確なもので

はなかった。そのため、連邦最高裁は、﹁最小限の関連﹂の一定の判断基準として、﹁意図的利用﹂の要件を示した)145(

。こ

れによれば、﹁最小限の関連﹂を満たすためには、﹁法廷地州において活動をする特権を被告が意図的に利用し、法廷地

州の利益と保護を引き出す行為が存在すること(there be som

e act by which the defendant purposefully avails itself

of the privilege of conducting activities within the forum

State, thus and invoking the benefits and protections of its

law

))146(

﹂が必要とされる。

Page 29: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

七七

一〇一三

 ﹁最小限の関連﹂の基準は、被告と法廷地州との関連から生じる請求に限定されない一般裁判管轄、または被告と法

廷地州との関連に関係する請求に限定される特別裁判管轄により満たされる)147(

。一般裁判管轄は、訴訟が被告と法廷地州

との関連に関係しない場合であっても、州が被告に対して裁判管轄を行使するほど、被告と法廷地州との関連が継続的

かつ組織的であるときに存在する。他方で、特別裁判管轄は、州外の被告が法廷地州の居住者に意図的に損害を被らせ

たなどの、被告と法廷地州との一定の関連に関係する(related to

)、またはこの関連から生じる(arise out of

)場合に

存在する。

 

先述の通り、International Shoe

判決以降、州裁判所が裁判管轄を行使するためには、連邦最高裁により発展させら

れた憲法上の制限である﹁最小限の関連﹂および﹁公正さと実質的正義の伝統的観念﹂の二つからなる﹁公正さの理論﹂

が満たされなければならない。もっとも、この要件が満たされるか否かを判断するためには、﹁最小限の関連﹂に関し

て一定程度具体化された基準である﹁意図的利用﹂の要件が、個々の事案に応じて検討される。また、﹁最小限の関連﹂

として求められる関連の程度は、一般裁判管轄と特別裁判管轄とで異なる。

ⅱ 連邦裁判所の裁判管轄

 

州裁判所の裁判管轄は、先述の通り、第一四修正条項のもとで、International Shoe

判決以降発展してきた﹁最小限

の関連﹂および﹁公正さと実質的正義の伝統的な観念﹂の二つからなる﹁公正さの理論﹂による制限を受ける。連邦裁

判所の裁判管轄も、州裁判所と同様に、裁判管轄の行使が第五修正条項に反しないことが求められる)148(

。もっとも、連邦

裁判所の裁判管轄は、連邦民事訴訟規則(F

ederal Rules of C

ivil Procedure

)四条⒦⑴A)149(

のもとでは、州裁判所のそれ

とほぼ同一のものであるため、間接的に第一四修正条項における﹁公正さの理論﹂による制限を受ける。というのは、

Page 30: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

七八

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇一四

四条⒦⑴Aによると、召喚状の送達または送達放棄書(w

aiver of service of summ

ons

)の提出により、連邦裁判所は、

当該裁判所が所在する州の一般的管轄を有する州裁判所の裁判管轄に服する被告に対し、裁判管轄を有するからである。

すなわち、連邦裁判所の裁判管轄も、所在する州の判例法および制定法、とりわけ、ロング・アーム法に基づき、第五

修正条項による制限としての﹁最小限の関連﹂と﹁公正さと実質的正義の伝統的概念﹂の二つからなる﹁公正さの理論﹂

に反しない限りで認められる。もっとも、連邦反トラスト法事件において重要な役割を果たす四条⒦⑴Cおよび四条⒦

⑵などは、連邦裁判所の裁判管轄をより広く認める。

⑵ 連邦反トラスト法事件における連邦裁判所の裁判管轄

ⅰ 全国的または総合的関連(national or aggregate contacts

 

州裁判所の裁判管轄が適切であるか否かを判断する際に、被告と一定の法廷地州との関連が考慮される。しかし、連

邦反トラスト法事件に関しては、﹁最小限の関連﹂を評価する方法が異なり、外国法人に対する連邦反トラスト法事件

の最近の裁判例は、被告と米国全体との全国的関連を考慮する)150(

 

これらの裁判例は、連邦民事訴訟規則四条⒦⑴Cおよびクレイトン法一二条)151(

における全国的関連に依拠し、裁判管轄

を行使する)152(

。もっとも、クレイトン法一二条により、裁判管轄が認められるか否かについては争いがあり、クレイトン

法一二条を制定法上の根拠と解釈する裁判例がある一方で、クレイトン法一二条を裁判地の決定にのみ用いることがで

きると解釈する裁判例もある)153(

。後者の解釈による場合には、クレイトン法一二条は、単に裁判地を定めるものであり、

裁判管轄の制定法上の根拠とはならない。前者の解釈による場合には、全国的関連に基づく連邦裁判所の裁判管轄の行

使が合衆国憲法に違反するか否かが問題となる。この問題は、これまで連邦最高裁に二度言及されているが、答えは示

Page 31: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

七九

一〇一五

されていない)154(

。もっとも、下級審においては、全国的関連に基づくことは、適正手続に反しないとされている)155(

 

四条⒦⑴Cおよびクレイトン法一二条が連邦裁判所の裁判管轄を認める制定法上の根拠とならない場合には、連邦裁

判所は、他の制定法上の根拠に基づかなければならない。他の制定法上の根拠規定として、次の二つが挙げられる。

 

一つ目は、四条⒦⑴Aである。同規定によると、先述の通り、連邦裁判所は、所在する州の州裁判所と同一の裁判管

轄を有することになるため、州の判例法および制定法に基づくことになる。もっとも、この場合においても、連邦反ト

ラスト法事件における重要な主権者は連邦政府であるため、被告と米国全体との最小限の関連が判断される)156(

 

二つ目は、四条⒦⑵である。同規定によると、被告が一般的管轄を有する州裁判所の裁判管轄に服さず、また連邦裁

判所の裁判管轄の行使が合衆国の憲法および法律に適合する限りで、召喚状の送達または送達放棄書の提出により、連

邦法に基づく請求権に対する裁判管轄が連邦裁判所に認められる。四条⒦⑵においても、﹁管轄の行使が合衆国憲法と

調和するか否かは、被告が適正手続を満たす米国全体との最小限の関連を有するかに依拠する﹂)157(

とされるため、いずれ

にせよ、裁判管轄は、被告と米国全体との全国的関連に基づき判断される)158(

ⅱ 一般裁判管轄および特別裁判管轄

 

先述の通り、被告に求められる関連の対象が米国全体であるか、一定の法廷地州であるかについては、依然として議

論がなされるものの、連邦裁判所の裁判管轄は、連邦民事訴訟規則四条⒦⑴A、四条⒦⑴Cおよびクレイトン法一二条

ならびに四条⒦⑵に基づき、﹁公正さの理論﹂に反しない限りで認められる。連邦裁判所の裁判管轄が認められるため

の﹁最小限の関連﹂は、米国全体または一定の法廷地州との関連の程度に応じた一般裁判管轄または特別裁判管轄によ

り満たされる。そこで、以下では、連邦反トラスト法事件における一般裁判管轄および特別裁判管轄に関する議論を紹

Page 32: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

八〇

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇一六

介する。

a 一般裁判管轄

 

一般裁判管轄は、外国法人が米国で事業を拒否するような連邦反トラスト法事件などにおいて重要な役割を果たすと

される)159(

。というのは、このような場合には、原告の請求は、被告の行為と米国全体または法廷地州との関連から生じた

ものではなく、この関連の欠如から生じるからである。そのため、原告は、請求とは関係しない被告の米国における継

続的かつ体系的な事業上の関連に基づく一般裁判管轄に基づかなければならない。一般裁判管轄は、他の事件における

ものと異なるものではなく、連邦反トラスト法事件において、特別な問題は生じない。

⒝ 特別裁判管轄

 

他方で、被告が米国全体または一定の法廷地州との間に、一般裁判管轄を支持するほどの十分な関連を有しない場合

には、原告は、被告と米国全体または法廷地州との関連から生じる請求に限定される特別裁判管轄に基づくことになる。

連邦反トラスト法事件において、この一定の関連を満たす特別裁判管轄を根拠づけるものとして、次の二つの理論があ

げられる。

 

一つ目は、名誉毀損に関するC

alder

事件)160(

において発展した効果理論(effect theory

)である。効果理論は、不法行

為をある州に対し、﹁意図的に仕向け﹂、﹁その効果が発生した﹂ことを裁判管轄の根拠としていることから、反トラス

ト法事件においても参考になると主張される)161(

。この理論によると、被告がある州を意図的に不法行為の標的とする場合

には、その不法行為から生じる請求に関して、標的とされる州の裁判所による特別裁判管轄の行使が認められる。また、

Page 33: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

八一

一〇一七

抵触法第二リステイトメントにおいても、法廷地州外で行われた行為の法廷地州における効果に基づく裁判管轄の行使

は認められている)162(

 

Calder

事件において、連邦最高裁は、フロリダ州での被告の行為がカリフォルニア州において効果をもたらしたこ

とに基づき、カリフォルニア州の裁判所に裁判管轄を認めた。同事案は、カリフォルニア州に生活の本拠を有する芸能

人である原告Xが、フロリダ州の住民であり、問題となった新聞記事の記者および編集者である被告Yらに対し、カリ

フォルニア州の裁判所に名誉毀損に基づく損害賠償請求訴訟を提起した事案である。判決において、Yらは、過失では

なく、故意により、Xの名誉を毀損する記事を書いていることから、カリフォルニア州でYらの行為の効果が生じるこ

とを十分認識しており、またカリフォルニア州の保護または利益を意図的に利用しているとされた。また、W

orld-

Wide V

olkswagen

事件で問題となった﹁法廷地州の裁判所で訴えられることが合理的に予期﹂できたかという点につい

ても、Yらは、問題となった記事を執筆、編集したことから、記事の効果として、カリフォルニア州でXの名誉が毀損

され、XがYらに対し、カリフォルニア州の裁判所に訴訟を提起することは、﹁合理的に予期﹂できたはずであると判

示された。C

alder

判決以降、下級審の裁判例ではあるが、多くの裁判所は、競争制限行為が法廷地州に向けられてい

た限りで、効果理論に基づく裁判管轄の行使を認める)163(

 

もっとも、効果理論に対しては、次のことが指摘される)164(

。すなわち、競争制限行為が特定の市場に向けられている場

合、または米国市場が意図的に標的とされていることを直接的に示す証拠が存在する場合には、米国市場が意図的に標

的とされたことの立証は容易であり、効果理論が機能する。しかし、競争制限行為がより大きな、世界的な市場を標的

とする場合には、その立証はより困難となる。そのため、C

alder判決で示された効果理論は、特定の州に向けられた

行為に関するものであることから、複数の州を対象とすることで、責任が回避されうることである)165(

Page 34: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

八二

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇一八

 

二つ目は、共謀理論(conspiracy theory

)である)166(

。この理論は、被告が法廷地州と全く関連を有さず、法廷地州と関

連する直接的な事業関係も有しない場合においても、共謀者の行為に基づき裁判管轄の行使を認める。また、この理論

は、すべてのカルテル参加者を単一の訴訟で訴えることを可能とするため、連邦反トラスト法事件において、米国法上

最も重要な根拠とされる)167(

。もっとも、この理論は、すべての州で認められているものではない。この理論に基づき裁判

管轄を行使するためには、次の四つの要件が満たされなければならない)168(

。すなわち、複数の者が共謀すること、特定の

法廷地州における結果を合理的に予測できたこと、共謀を促進するために、共謀者のうちの一人が明白な行為を行った

こと、および当該行為が非居住者により行われた場合には、当該行為が法廷地州のロング・アーム法の下で当該非居住

者に対する裁判管轄を根拠づけることである。

 

この理論は、複数の被告を単一の訴訟に集約させる点においては、EUにおけるブリュッセルⅠ規則六条一号にほぼ

相当するものである。しかし、この理論は、被告の住所ではなく、ある共謀者の行為に基づく点において、ブリュッセ

ルⅠ規則六条一号とは異なる。

⑶ フォーラム・ノン・コンビニエンスの法理

 

米国の裁判管轄が認められる場合であっても、米国の裁判所が不適切な法廷地であり、他に適切な法廷地が存在する

と裁判所が判断するときには、フォーラム・ノン・コンビニエンスの法理に基づき裁判管轄が行使されないこともあ

る)169(

。フォーラム・ノン・コンビニエンスの法理を適用するにあたっては、規制の公益および便宜の私益の両方が考慮さ

れなければならない)170(

 

連邦反トラスト法事件に関しては、一九九八年のC

apital Currency E

xchange

判決)171(

において、初めて、フォーラム・

Page 35: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

八三

一〇一九

ノン・コンビニエンスの法理により訴えが却下された。同判決においては、EU競争法の規定と連邦反トラスト法の規

定が類似していること、および被告が英国においても訴えを提起できることから、英国が適切な法廷地であると示され、

訴えが却下された。

 

近年の国際ビタミンカルテルに関するE

mpagran

事件において、連邦最高裁は、フォーラム・ノン・コンビニエン

スの法理に基づき訴えを却下したと指摘される)172(

。というのは、連邦最高裁は、フォーラム・ノン・コンビニエンスの法

理に明示的に言及していないが、消費者には通常自国での訴訟が期待されていると示し、外国で生じた損害に関する連

邦反トラスト法に基づく外国原告の訴えを却下したからである。また、外国反トラスト法に基づく訴えも、同様にフォ

ーラム・ノン・コンビニエンスの法理により却下される)173(

⑷ 小括

 

連邦反トラスト法事件に関しては、事物管轄が連邦裁判所に専属的に認められることから、連邦裁判所の裁判管轄が

問題となる。米国法上、裁判所の裁判管轄は、伝統的に、一定の法廷地州との﹁最小限の関連﹂および﹁公正さと実質

的正義の伝統的な観念﹂の二つからなる﹁公正さの理論﹂に反しない限りで認められる。もっとも、連邦反トラスト法

事件における﹁最小限の関連﹂は、依然として争いがあるものの、一定の法廷地州ではなく、米国全体と被告との全国

的関連により判断される。連邦裁判所に裁判管轄が認められる場合には、その根拠となる関連の程度に応じて、米国全

体と被告との継続的かつ体系的な関連に基づく一般裁判管轄、または米国市場における効果に基づく効果理論もしくは

共謀者の行為に基づく共謀理論などにより特別裁判管轄が認められる。しかし、連邦裁判所に裁判管轄が認められる場

合であっても、外国における損害および外国競争法の適用を求める請求に関しては、フォーラム・ノン・コンビニエン

Page 36: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

八四

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇二〇

スの法理により、訴えは却下されるものと思われる。

 

具体例において、仮に、我が国の裁判所が米国における見解をとるとすると、Y社(スイス法人)およびZ社(米国

法人)は、日本に営業所等を有さず、継続的な取引も行っていないため、一般裁判管轄を得るほどの継続的かつ体系的

な関連は、存在しないと思われる。その一方で、①においては、日本市場が意図的に標的とされ、日本市場において、

競争制限効果が生じているため、特別裁判管轄が認められうる。その一方で、②においては、日本市場は意図的に標的

とされておらず、またそのような効果も生じていないため、特別裁判管轄も認められないであろう。

Ⅳ 

若干の検討

 

Ⅱにおいて、我が国における議論を概観し、Ⅲでは、一九九九年条約草案、EU、スイスおよび米国における議論を

紹介した。Ⅳでは、Ⅲで紹介したハーグ条約および諸外国の議論を参考に、競争法事件における国際裁判管轄原因とし

ての不法行為地の我が国における解釈を示す。

1 

加害行為地

 

まず、加害行為地について検討する。我が国では、加害行為地として、協定などの締結地)174(

、その実施地)175(

ならびに締結

地および実施地)176(

が主張されている。一九九九年条約草案においては、反トラスト法が違反される市場地)177(

が、スイスにお

いては、最終的に競争制限効果が生じる効果(市場)地)178(

が、加害行為地とされる。EUにおいては、議論が盛んであり、

締結地、実施地および本拠地が加害行為地として主張され、これらの地を巡り多くの見解が示される。そのため、以下

Page 37: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

八五

一〇二一

では、EUにおける議論を主に参照し、加害行為地を検討する。

 

第一に、締結地について検討する。なお、ここでいう、締結地とは、協定などが交渉または締結される地を意味する。

EUにおいては、競争ルールに違反する協定自体が実質法上禁止されることに基づき、締結地が加害行為地であると主

張される)179(

。我が国においても、協定自体が実質法上禁止されているところ)180(

、締結地を加害行為地と解釈することも可能

であると思われる。

 

とりわけ、協定などが一度限りの会合で締結されるまたは同一の地で毎年更新されるなど、単一の地が特定されうる

場合)181(

には、締結地は加害行為地として適切であると思われる。その一方で、締結地が複数存在する場合には、次の二つ

問題が生じるため、加害行為地として適切ではないとも思われる)182(

。一つ目は、締結地の遍在が加害行為地に基づく不法

行為地管轄の膨脹(Inflationierung)を導きうることである。二つ目は、カルテルなどの競争制限行為が長期的に様々

な地で更新される場合に、個々の行為と損害との因果関係の立証が非常に困難となり、さらにある行為から生じた損害

を損害全体から分離することが不可能となると思われることである。

 

しかし、これらの問題に対しては、次のように反論できる)183(

。すなわち、競争法に違反する交渉・締結などの重要な行

為が締結地で行われること、および締結地がカルテル参加者などの行為者により操作されうることから、締結地が複数

存在する場合であっても、各締結地は、加害行為地として不合理なものではない。ただし、複数の締結地が加害行為地

とされる場合であっても、各締結地で主張されうる損害は、因果関係を有する行為から生じた損害に限定される。しか

し、各締結地で主張されうる損害が因果関係を有するものに限定されるにせよ、問題とされる行為が既に明らかであり、

また当該行為が損害との明白な因果関係を有している場合には、各締結地を加害行為地と解釈するとしても何ら不合理

なものでもなく、むしろ加害行為地と解釈しない理由はないであろう。

Page 38: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

八六

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇二二

 

もっとも、締結地を加害行為地と解釈するにしても、締結地の特定は、通常困難であると思われる。というのは、カ

ルテルなどの交渉・締結は、通常秘密裏に行われ、またそれらに関する証拠が存在しない、または存在するとしても、

秘匿されうるからである。しかし、競争当局による違反認定を受けた後に提起される訴訟、いわゆる、追随型訴訟

(follow-on action

)の場合には、違反認定において締結地が言及されうるため、締結地は特定されうるであろう。この

場合には、当該認定に従い、各締結地が加害行為地とされるべきであろう。その一方で、違反認定が下される前に提起

される訴訟、いわゆる、独立型訴訟(stand-alone action

)の場合には、先に述べた競争制限行為の特殊性のため、締

結地を実際に特定、証明することは、極めて困難であると思われる。

 

第二に、実施地について検討する。ここでいう、実施とは、特定機関による価格などの情報調整、人為的に引き上げ

られた価格での物の販売、契約締結の拒否、特定の相手方グループの差別といった実際の競争制限効果に必要な要件の

決定である)184(

 

我が国では、英国の判決およびEUの学説)185(

との比較法的観点から実施地が加害行為地として主張される)186(

。EUにおい

て、実施地は、次のことを根拠に加害行為地として主張される。すなわち、競争法違反に関して、協定などの実施が重

要な要素であると判示した判決を援用した上で、実施地と影響を及ぼされる市場とが関連性を有すること、協定などが

実施されない場合には損害が生じないこと、不法行為地の遍在を導かないこと、および影響を及ぼされない地における

訴訟が排除されることである)187(

。我が国においても、協定自体が実質法上禁止されているが、実施されて、初めて効果が

生じることから、実施行為も競争法上の損害に関して重要な行為であり、実施地も加害行為地として適切であると思わ

れる。

 

しかし、実施地に対しては、次のような批判がなされる。すなわち、あるカルテルが世界各地の市場で実施される場

Page 39: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

八七

一〇二三

合には、加害行為地である実施地に基づく不法行為地管轄が遍在し、その結果、フォーラム・ショッピングのおそれ、

そして、法的不安定性をもたらすとの批判である)188(

。しかし、カルテル価格での物の販売といった協定などの実施は、各

カルテル参加者の独立した義務であり、各実施行為が独立した不法行為であるため)189(

、不法行為地は遍在しないであろう。

 

また、実施地は、多くの場合、結果発生地と解釈されうる市場地と一致すると思われるが)190(

、協定などの内容が特定機

関による価格などの情報調整に過ぎない場合には、市場地以外に実施地が認められうるであろう。

 

第三に、本拠地について検討する。本拠地は、加害行為地を本拠地に限定することにより、加害行為地が明確となり、

法的安定性が確保されることを根拠に主張される)191(

。しかし、本拠地は、一般管轄である被告住所地と一致することから、

本拠地を唯一の加害行為地とする解釈は、加害行為地の独立した重要性の考慮を欠き、原告に認められる特別管轄の一

つである加害行為地を意図的に排除することになろう)192(

。さらに、結果発生地の裁判所の審理範囲が、モザイク理論に基

づき、当該結果発生地で生じた損害に限定される場合には、すべての損害について審理することができる不法行為地管

轄がほぼ存在しないことになる。このような批判に対して、加害行為地が被告住所地と一致する場合であっても、事案

との関連性および正当な原告の利益保護を目的とする不法行為地は、結果発生地により追求されうると反論される)193(

。し

かし、本拠地を唯一の加害行為地とする解釈は、加害行為地の遍在を防ぐ一方で、被告を過度に優遇するおそれがあり、

とりわけ、競争法違反が既に競争当局により認定されている場合には、不適切であろう)194(

 

EUにおいては、本拠地は、単なるその所在ではなく、問題となる協定などについて経営上の重要な判断が下された、

すなわち、重要な行為が行われた場所であることが根拠とされる場合には、加害行為地の一つとして適切であると主張

される)195(

。しかし、本拠地は、既に一般管轄として認められているところ、本拠地を加害行為地の一つに含めたとしても、

加害行為地に基づく追加的な特別管轄は認められないことから、本拠地を加害行為地と解釈する必要はないであろう。

Page 40: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

八八

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇二四

 

EUにおいては、前述の通り、締結地、実施地および本拠地が加害行為地として主張される一方で、一九九九年条約

草案においては、反トラスト法が違反される市場地が、スイスにおいては、最終的に競争制限効果が生じる効果地(市

場地)が加害行為地とされる。

 

一九九九年条約草案においては、反トラスト法違反となる加害行為自体が明らかでないため、反トラスト法が違反さ

れる市場地自体も明らかではなく、さらなる解釈が必要と思われる。そのため、反トラスト法が違反される市場地を加

害行為地とする解釈は、適切ではないであろう。また、スイスにおいては、最終的に加害行為地に独自の裁判管轄が認

められず、効果理論に基づく結果発生地である効果地の利益となるよう、競争秩序に影響を及ぼされる効果地(市場地)

が唯一の不法行為地とされる)196(

。この解釈を支持する根拠として、次のように述べられる)197(

。すなわち、不法行為者が刑法

などの公法上の規制を考慮し、自身の行為を加害行為地法および結果発生地法に反しないものとしなければならない一

方で、加害行為地の市場に効果が及ぼされない限り、加害行為地の競争法は通常その適用を求められないことから、そ

のような自国の競争法を適用する利益を有さない法廷地に国際裁判管轄を認める意味がないことである。しかし、競争

法事件における国際裁判管轄原因としての加害行為地の解釈に当たっては、自国の競争法が効果理論に基づき適用され

うるか否かといった観点を重視すべきではないであろう。むしろ、証拠収集の便宜、被害者の提訴の便宜、加害者の予

見可能性および不法行為地の公序との関係といった観点を重視すべきであると思われる。

 

したがって、重要な行為が行われ、事案との関連性が希薄でない締結地および実施地を加害行為地と解釈すべきであ

る。もっとも、これらの地を加害行為地と解釈するとしても、多様な競争制限行為に応じた解釈が必要であろう。

 

締結地および実施地を加害行為地とするこの見解を具体例に当てはめると、カルテルが交渉・締結された各締結地に

加害行為地が認められる。また、具体例における実施地として、①では、日本を含む東アジア諸国、②では、A国に加

Page 41: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

八九

一〇二五

害行為地が認められる。この見解によると、加害行為地は広く認められるとも思われるが、各加害行為地において主張

されうる請求は、法廷地でなされた行為と因果関係を有する損害に限定される。

2 

結果発生地

 

次に、結果発生地について検討する。結果発生地については、競争制限行為により被る金銭的損害を一次的損害とす

る見解により、被害者の財産に実際に損害が及んだ地)198(

と被害者の本拠地)199(

が主張される。その一方で、競争秩序の侵害を

一次的損害とする見解により、競争秩序の侵害が発生した地(市場地)が主張される)200(

。たしかに、競争制限行為により

被る損害は金銭的損害であり、競争法上の私訴により当該損害の填補が求められることを考慮すると、金銭的損害が生

じた地を結果発生地とする解釈も可能である。しかし、独占禁止法が公正かつ自由な競争を促進する、すなわち、市場

における競争秩序の保護を一次的・直接的な目標としている)201(

ことを考慮すると、競争制限行為により被る金銭的損害は、

市場における競争侵害から生じる二次的損害に過ぎず、市場における競争秩序の侵害が一次的損害であるとも考えられ

る)202(

。そのため、スイスおよびEUにおける多くの見解と同様に、競争法の目的および損害の性質を抵触法上においても

考慮し)203(

、市場における競争秩序が影響を及ぼされる市場地を結果発生地とする解釈も可能であろう)204(

。また、米国におい

ても、米国または法廷地州に向けられた意図的な効果に基づき、裁判管轄が認められうる)205(

。そのため、行為者の意図が

求められるが、市場における効果に着目する点では、米国も類似する立場をとるものと思われる。したがって、市場地

を結果発生地とする解釈は、独占禁止法の目的に沿うだけでなく、比較法的観点からも適切なものと思われる。

 

市場地を結果発生地とするこの見解を具体例に当てはめると、①では、日本を含む東アジア諸国、②では、A国に結

果発生地が認められる。

Page 42: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

九〇

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇二六

 

もっとも、結果発生地である市場地に基づく不法行為地管轄が我が国の裁判所に認められる多くの場合には、カルテ

ル参加者などの行為者が既に我が国の市場で継続的な取引を行っていると思われる。そのため、結果発生地である市場

地に基づく不法行為地管轄は、三条の三第五号における事業活動地管轄と重複し、実務上、機能する場面が限定される

であろう。

3 

審理範囲

 

最後に、結果発生地に基づく場合の審理範囲について検討する。旧法の下では、訴えの客観的併合が認められること

から、審理範囲を我が国で生じた損害に限定しない見解)206(

、知的財産権侵害に関して、訴えの客観的併合の余地を認める

が、審理範囲を我が国で生じた損害に限定する見解)207(

、審理範囲を我が国で生じた損害に完全に限定する見解)208(

が示されて

いた。

 

EUの多くの見解は、モザイク理論に従い、審理範囲が結果発生地で生じた損害に限定されると主張する)209(

が、スイス

の多くの見解は、モザイク理論は適用されず、審理範囲がスイスで生じた損害に限定されないと主張する)210(

 

我が国における解釈として、結果発生地に基づく場合の審理範囲は、我が国で生じた損害に限定されるべきでないと

思われる。というのは、審理範囲が我が国で生じた損害に限定される場合でも、三条の六において、訴えの客観的併合

が認められうるからである。また、訴えの客観的が認められるためには、請求間の密接な関連が求められるが、同一の

行為から複数国で損害が生じる場合に、それぞれを別々の不法行為とみなしても、ここで求められる密接な関連が満た

されるほどの関連性が存在するであろう)211(

 

それに加えて、仮に、結果発生地に基づく場合の審理範囲が我が国で生じた損害に限定されるとすると、原告は、十

Page 43: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

九一

一〇二七

分な救済を得るために、損害を被った各結果発生地において、訴えを提起しなければならず、過度な負担が原告に強い

られることになる。そのため、不法行為地管轄が被害者保護を根拠の一つとしていることを考慮すると、このような解

釈は、適切ではないであろう)212(

。また、事案との密接性の観点からいっても、結果発生地に基づく場合の審理範囲が我が

国で生じた損害に限定される一方で、結果発生地でもない被告住所地に基づく場合の審理範囲がすべての損害に及ぶと

する区別に、合理的な理由は存在しないであろう)213(

 

さらに、スイスにおける主張と同様に、我が国では、ブリュッセルⅠ規則とは異なり、被告住所地国で下された判決

の承認執行が必ずしも保証されていないこと、および単一の訴訟による損害全体の審理が手続上経済的であり、またこ

れにより矛盾する判決が回避されうることからも)214(

、結果発生地に基づく場合の審理範囲が我が国で生じた損害に限定さ

れないとの解釈は、適切であると思われる。

 

具体例における結果発生地は、①では、日本を含む東アジア諸国、②では、A国であるので、①においてのみ、我が

国の裁判所に結果発生地に基づく国際裁判管轄が認められる。この場合の我が国の裁判所の審理範囲は、我が国で生じ

た損害に限定されず、カルテルの対象とされた東アジア諸国で生じた損害にも及ぶであろう。

Ⅴ 

おわりに

 

以上の通り、競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地は、協定などが交渉・締結される締結地およ

び協定などが実施される実施地が加害行為地として、競争秩序が影響を及ぼされる市場地が結果発生地として、解釈さ

れるべきであると考える。また、結果発生地に基づく場合の審理範囲は、訴えの客観的併合が認められうること、事案

Page 44: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

九二

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇二八

との密接性が結果発生地に認められること、被告住所地国を含む外国で下された判決が我が国で承認執行されない場合

が考えられること、および単一の訴訟が手続上経済的であることから、我が国で生じた損害に限定されず、事案全体に

及ぶと解釈されるべきであろう。もっとも、結果発生地である市場地が我が国に認められる多くの場合には、カルテル

参加者などの行為者が既に我が国の市場で継続的な取引を行っていると思われる。そのため、結果発生地である市場地

に基づく不法行為地管轄は、三条の三第五号における事業活動地管轄と重複するであろう。したがって、不法行為地管

轄は、次の場合に、特別に機能すると思われる。すなわち、営業所所在地管轄または事業活動地管轄の立証が困難であ

る場合、および締結地または競争制限効果が生じる市場地と一致しない実施地が我が国に認められる場合である。

 

競争法事件における国際裁判管轄が我が国の裁判所に認められる場合には、競争制限行為の準拠法が問題となる。競

争制限行為の準拠法を検討するに際し、そもそも外国競争法が準拠法として適用されうるのか。また、適用されうると

すると、どのような連結点を介して準拠法は決定されるのか、準拠競争法の自律的な適用範囲はどのように扱われるの

か、などが問題となると思われる。競争制限行為の準拠法に関するこれらの問題は、今後の研究課題としたい。

(1) 

我が国では、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)にあたる。規制内容は類似するが、各法域により呼び名が異なり、

競争法(com

petition law

)、反トラスト法(anti-trust law

)、競争制限法(G

esetz gegen Wettbew

erbsbeschränkungen

)、カルテル法(K

artellrecht

と呼ばれる。本稿では、それぞれの用語を同意義に用いる。

(2) S

ee, F. Hoffm

ann-LaR

oche, Ltd v. E

mpagran S.A

. 542 U.S. 155 (2004

)(以下、﹁E

mpagran

﹂という。); P

rovimi v A

ventis Anim

al Nutrition [2003

EW

HC

9661 (Com

m

)(以下、﹁P

rovimi

﹂という。); L

andgericht Dortm

und 01.04.2004, EW

S (2004

), S. 434

(以下、﹁L

G D

ortmund

﹂という。).

(3) 

我が国においては、これまで国際ビタミンカルテルに関して各国で提起されたような国際的な競争法上の私訴は、著者が調査した限りでは見つけ

られなかった。もっとも、競争法関係の事案として、独占的販売代理店契約の更新拒絶に関して競争制限の準拠法が問題となったとされる東京地判

平成二二年一月二九日判タ一三三四号二二三頁、独占的販売代理店契約における管轄合意の効力が問題となった東京地判平成二〇年四月一一日判タ

Page 45: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

九三

一〇二九

一二七六号三三二頁、被保全権利としての独占禁止法上の差止請求に関する東京地決平成一九年八月二八日判時一九九一号八九頁などがある。

(4) 

競争制限行為の準拠法については、今後の研究課題としたい。これについては、以下のものを参照。牛嶋龍之介﹁国際カルテル事件における外国

購入者からの損害賠償請求訴訟と独禁法の域外適用﹂自由と正義六一巻五号(二〇一〇年)一九頁、奥田安弘﹁域外適用問題のルーツ﹂同﹃国際取

引法の理論﹄(有斐閣、一九九二年)一九二

一九三頁、国際私法立法研究会﹁契約、不法行為等の準拠法に関する法律試案(二・完)﹂民商法雑誌

一一二巻三号(一九九五年)四八三頁、櫻田嘉章=道垣内正人編﹃注釈国際私法 

第一巻﹄(有斐閣、二〇一一年)四五二

四五三頁︹西谷祐子︺、

宗田貴行﹁不正競争行為及び競争制限行為の準拠法~ローマⅡ規則とわが国の法の適用に関する通則法の検討~︹上︺・︹中︺・︹下︺﹂国際商事法務

三七巻一二号(二〇〇九年)一六二三頁、三八巻一号(二〇一〇年)五七頁、三八巻二号二一三頁、同﹃独禁法民事訴訟﹄(レクシスネクシス・ジ

ャパン、二〇〇八年)三八四頁、高杉直﹁ヨーロッパ共同体の契約外債務の準拠法に関する規則(ローマⅡ)案について︱不法行為の準拠法に関す

る立法論的検討︱﹂国際法外交雑誌一〇三巻三号(二〇〇四年)三六七頁、道垣内正人﹁法適用関係理論における域外適用の位置づけ︱法適用関係

理論序説︱﹂松井芳夫ほか編﹃国際取引と法﹄(名古屋大学出版会、一九八八年)二一三頁、西谷祐子﹁不法行為の準拠法﹂須網隆夫=道垣内正人

編﹃ビジネス法務大系Ⅳ 

国際ビジネスと法﹄(日本評論社、二〇〇九年)一七二

一七四頁、野村美明﹁域外適用の法と理論︱国際法と国内法の

交錯﹂阪大法学四七巻四・五号(一九九七年)二五五頁、不破茂﹁域外適用の抵触法的分析︱競争制限法に関するEU規則(ローマⅡ六条三項)を

中心として﹂国際商取引学会年報一六号(二〇一四年)一〇九頁、法例研究会﹃法例の見直しに関する諸問題⑵︱不法行為・物権等の準拠法につい

て︱﹄別冊NBL八五号(商事法務、二〇〇三年)八八頁、山内惟介﹁競争法と国際私法の関係について︱国際私法による国際的競争行為の規制可

能性﹂同﹃二一世紀国際私法の課題﹄(信山社、二〇一二年)一八一頁、横溝大﹁私訴による競争法の国際的執行︱欧州での議論動向と我が国への

示唆︱﹂日本経済法学会年報三四号(二〇一三年)五六頁など。

(5) 

牛嶋・前掲注(4)一八

一九頁、奥田・前掲注(4)一九四

一九五頁、宗田・前掲注(4)三八四頁、金美善﹁EUにおける国際カルテルに

対する救済訴訟の国際裁判管轄﹂国際商取引法学会年報一六号(二〇一四年)八九頁。

(6) 

二〇一一年改正により新たに設けられた規定であり、事業活動地管轄については、以下のものを参照。多田望﹁国際取引事件の国際裁判管轄︱契

約債務履行地、事業活動地および財産所在地を中心に﹂日本国際経済法学会編﹃国際経済法講座Ⅱ 

取引・財産・手続﹄(法律文化社、二〇一二年)

一五九頁、田中美穂﹁業務関連訴訟についての国際裁判管轄︱事業活動地管轄における事業者の意義を中心に︱﹂近畿大学法学六〇巻三・四号(二

〇一三年)一頁、道垣内正人﹁日本の新しい国際裁判管轄立法について﹂国際私法年報一二号(二〇一〇年)一九三

一九五頁、野村美明﹁被告の

事業活動に基づく国際裁判管轄﹂阪大法学六三巻六号(二〇一四年)一頁、森下哲朗﹁新しい国際裁判管轄ルール:営業所所在地・事業活動管轄,

Page 46: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

九四

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇三〇

債務履行地管轄を中心に﹂国際私法年報一五号(二〇一三年)二九頁など。

(7) 

最判昭和五六年一〇月一六日民集三五巻七号一二二四頁(マレーシア航空事件)。

(8) 

最判平成九年一一月一一日民集五一巻一〇号四〇五五頁(ファミリー事件)。

(9) 

日本が加害行為地であるとして、不法行為地に基づく国際裁判管轄を認めた裁判例として、大阪地中間判昭和四八年一〇月九日判時七二八号七六

頁(関西鉄工事件)、東京地中間判平成元年六月一九日判タ七〇三号二四〇頁など。日本が結果発生地であるとして、不法行為地に基づく国際裁判

管轄を認めた裁判例として、東京地中間判昭和四九年七月二四日判タ三一二号二四一頁、東京地中間判昭和五九年三月二七日判時一一一三号二六頁

など。

(10) 

池原季雄﹁国際的裁判管轄権﹂鈴木忠一=三个月章監修﹃新・実務民事訴訟法講座(7))(日本評論社、一九八二年)三二頁、佐野寛﹁不法行為

地の管轄権﹂高桑昭=道垣内正人編﹃新・実務裁判体系三 

国際民事訴訟法(財産法関係)﹄(青林書院、二〇〇三年)九二頁、高橋宏志﹁国際裁判

管轄﹂澤木敬郎=青山善充編﹃国際民事訴訟法の理論﹄(有斐閣、一九八七年)六二頁、多田望﹁不法行為地管轄﹂国際私法年報一〇号(二〇〇八年)

五五頁など。

(11) 

関西鉄工事件・前掲注(9)、東京地判平成元年六月一九日判決・前掲注(9)、東京地判平成三年一月二九日判時一三九〇号九八頁。

(12) 

中西康﹁マスメディアによる名誉毀損・サイバースペースでの著作権侵害等の管轄権﹂高桑=道垣内編・前掲注(10)一〇一

一〇四頁ほか。も

っとも、サーバの所在地を加害行為地とすることに反対する見解として、山田恒久﹁インターネットを介した取引・不法行為事件の国際裁判管轄﹂

日本国際経済法学会編・前掲注(6)二〇九頁。

(13) 

東京中間判昭和六二年六月一日金商七九〇号三二頁(香港三越事件)。

(14) 

多田・前掲注(10)五九頁。

(15) 

一次的・直接的な損害の発生地に限定する裁判例および見解として、東京地判昭和五九年二月一五日判時一一三五号七〇頁、東京地判平成一八年

一〇月三一日判タ一二四一号三三八頁。池原・前掲注(10)三二頁、佐野・前掲注(10)九二頁、高橋・前掲注(10)六二頁、貝瀬幸雄﹁判批﹂ジ

ュリスト八五二号(一九八六年)二一七頁、渡辺惺之﹁判批﹂ジュリスト八三八号(一九八五年)二九一頁など。

(16) 

二次的・派生的な損害を含める裁判例および見解として、東京地判昭和四〇年五月二七日下民集一六巻五号九二三頁、東京地判平成元年三月二七

日労民四〇巻二・三号三二三頁。多田・前掲注(10)六四頁、石黒一憲﹃国際民事訴訟法﹄(新世社、一九九六年)一五〇

一五一頁、木川裕一郎﹁ブ

リュッセル条約五条三号による不法行為地の国際裁判管轄﹂石川明=石渡哲編﹃EUの国際民事訴訟法判例﹄(信山社、二〇〇五年)九一頁、木棚

Page 47: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

九五

一〇三一

照一ほか﹃国際私法概論[第五版]﹄(有斐閣、二〇〇七年)三〇一

三〇二頁︹渡辺惺之︺。

(17) 

黄靱霆﹁判批﹂櫻田嘉章=道垣内正人編﹃国際私法判例百選[第二版]﹄(有斐閣、二〇一二年)一九二頁、高桑昭﹃国際民事訴訟法・国際私法論集﹄

(東信堂、二〇一一年)五〇頁、高橋宏司﹁判批﹂重判平成二二年度(ジュリ臨増一四二〇号)(二〇一一年)三六〇頁。

(18) 

宗田・前掲注(4)三八四頁。

(19) 

金・前掲注(5)八九頁。

(20) 

奥田・前掲注(4)一九四頁。

(21) 

法制審議会国際裁判管轄法制部会﹁法制審議会国際裁判管轄法制部会第三回議事録﹂四頁︹古田啓昌発言︺(二〇〇八年一二月一九日)。同様の見

解と思われるものとして、宗田・前掲注(4)三八四頁。

(22) 

金・前掲注(5)八九頁。

(23) 

奥田・前掲注(4)一九四

一九五頁。競争は、﹁市場﹂において生じるため、市場地を指すものと思われる。

(24) 

審理範囲を限定する対応策に加え、結果発生地自体を限定する解決策も示されるが、加害行為地と結果発生地が複数国に所在する限り、国際訴訟

競合が生じる可能性は回避できないので、主な結果発生地のみに国際裁判管轄を認める必要はなく、国際訴訟競合の問題で処理すればよいとも示さ

れる。中西・前掲注(12)一〇三

-一〇五頁を参照。

(25) 

多田・前掲注(10)六〇頁、中西・前掲注(12)一〇三

一〇四頁、道垣内正人﹁サイバースペースと国際私法︱準拠法及び国際裁判管轄問題﹂

ジュリスト一一一七号(一九九七年)六六頁、同﹃ポイント国際私法[各論]﹄(有斐閣、二〇〇〇年)二五〇頁、芳賀雅顯﹁名誉毀損の国際裁判管轄﹂

石川=石渡編・前掲注(16)一〇四

一〇五頁。

(26) 

佐藤達文=小林康彦﹃一問一答平成二三年民事訴訟法等改正︱国際裁判管轄法制の整備﹄(商事法務、二〇一二年)一一九頁によると、﹁第三条の

六本文にいう﹃密接な関連﹄の有無は、事案ごとに判断されることとなりますが、併合する請求と併合される請求との関連性、その請求の基礎とな

る事実関係の関連性(契約が同一かどうか、原因行為が同一かどうかなど)等を総合的に考慮して判断されるものと考えられます﹂とされる。

   

二〇一一年改正以前は、国内土地管轄に関する七条に依拠していたが、現行法では、三条の六に明文の規定が定められている。

条の六 

一の訴えで数個の請求をする場合において、日本の裁判所が一の請求について管轄権を有し、他の請求について管轄権を有しないときは、当

該一の請求と他の請求との間に密接な関連があるときに限り、日本の裁判所にその訴えを提起することができる。ただし、数人からのまたは数人に対

する訴えについては、三八条前段に定める場合に限る。

Page 48: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

九六

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇三二

(27) 

石川明=小島武司編﹃国際民事訴訟法﹄(青林書院、一九九四年)四八頁︹小島武司=猪股孝史︺、渡辺惺之﹁客観的併合による国際裁判管轄﹂石

川明先生古稀祝賀﹃現代社会における民事手続法の展開[上]﹄(商事法務、二〇〇二年)三六二頁など。

(28) 

中西・前掲注(12)一〇四頁。

(29) 

多田・前掲注(10)六三頁。

(30) 

多田・前掲注(10)六三頁、芳賀・前掲注(25)一〇四

一〇六頁。

(31) 

渡辺惺之﹁知的財産侵害訴訟における国際裁判管轄﹂木棚照一編﹃国際知的財産侵害訴訟の基礎理論﹄(経済産業調査会、二〇〇三年)一五四頁。

(32) 

日韓共同研究会﹁日韓比較・国際知的財産法研究(7)知的財産権に関する国際私法原則(日韓共同提案原案)二〇一〇年八月二一日版の解説﹂

季刊企業と法創造七巻三号(二〇一一年)一一七頁以下。

(33) C

ase C-68/93 Shevill v P

resse Aliance [1995

] EC

R

Ⅰ-415.

この判決を詳細に検討するものとして、長田真理﹁損害多発型不法行為事件における国

際裁判管轄︱フランスにおける議論からの示唆﹂大阪外国語大学国際関係講座編﹃国際関係の多元的研究︱東泰介教授退官記念論文集﹄(大阪外国

語大学国際関係講座、二〇〇四年)三八七頁、中西康﹁出版物による名誉毀損事件の国際裁判管轄に関する欧州司法裁判所一九九五年三月七日判決

について﹂法学論叢一四二巻五・六号(一九九八年)一八一頁、芳賀・前掲注(25)九五頁などを参照。

(34) 

日韓共同研究会・前掲注(32)一二八頁。なお、特定の知的財産権に対する侵害行為が複数国で被害をもたらす場合には、主な侵害行為が行われ

た国の裁判所への裁判管轄の集中を認める。

二〇三条 

知的財産権侵害事件

(2) 

知的財産権に対する侵害行為が特定の国に向けて行われた場合には、当該国の裁判所は、自国で発生した被害に関する請求についてのみ、国際裁

判管轄を有する。

(35) 

日韓共同研究会・前掲注(32)一三〇

一三一頁。

二〇七条 

訴えの併合

(1) 

同一当事者間で複数の請求がなされる場合、当事者は、一つの請求につき国際裁判管轄を有する裁判所において、当該請求と密接に関連する他の

請求についても、訴えを提起することができる。ただし、二〇三条二項の規定によって国際裁判管轄が認められる場合には、それ以外の国で生じた

取引または侵害行為に関連した請求を併合することはできない。

(36) 

Prelim

inary Draft C

onvention on Jurisdiction and Foreign Judgm

ents in civil and comm

ercial matters adopted by the Special C

omm

ission and

Page 49: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

九七

一〇三三

Report by P

eter Nygh and F

austo Pocar [hereinafter P

relimin

ary D

ocum

ent N

o 11

].

日本語訳については、道垣内正人﹃ハーグ国際裁判管轄条約﹄

(商事法務、二〇〇九年)(以下、﹁道垣内二〇〇九﹂という。)七六頁以下を参照。一九九九年条約草案に関する研究として、以下のものを参照。小

川秀樹=小堀悟﹁﹃民事及び商事に関する裁判管轄権及び外国判決に関する条約準備草案﹄をめぐる問題﹂NBL六九九号(二〇〇〇年)二六頁、

小出邦夫﹁ヘーグ国際私法会議の﹃民事及び商事に関する国際裁判管轄及び外国判決承認執行に関する特別委員会﹄第四回会合の概要﹂国際商事法

務二六巻一〇号(一九九六年)一〇三八頁、同﹁ヘーグ国際私法会議の﹃国際裁判管轄及び外国判決承認執行に関する特別委員会﹄﹂民事月報五三

巻一〇号(一九九八年)七頁、黄靱霆﹁中国国際民事訴訟法とハーグ﹃裁判管轄と判決条約準備草案﹄﹂阪大法学五一巻二号(二〇〇一年)一三三頁、

始関正光﹁ヘーグ国際私法会議の﹃国際裁判管轄及び外国判決承認執行に関する特別委員会﹄について﹂国際商事法務二三巻六号(一九九五年)五

九八頁、同﹁ヘーグ国際私法会議の﹃国際裁判管轄及び外国判決承認執行に関する特別委員会﹄の概要﹂民事月報五〇巻四号(一九九五年)七二頁、

道垣内正人﹁ヘーグ国際私法会議の﹃民事及び商事に関する国際裁判管轄及び外国判決承認執行に関する特別委員会﹄第二回会合の概要﹂国際商事

法務二四巻一〇号(一九九六年)一〇二四頁、同﹁ヘーグ国際私法会議の﹃民事及び商事に関する国際裁判管轄及び外国判決承認執行に関する特別

委員会﹄第三回会合の概要﹂国際商事法務二六巻五号(一九九八年)四九一頁、同﹁ミックス条約としての国際裁判管轄及び外国判決承認執行条約

の作成︱ハーグ国際私法会議二〇〇〇年条約案(上)・(中)・(下)﹂ジュリスト一一六二号(一九九九年)一〇七頁、一一六三号一三〇頁、一一六

四号一一八頁、同﹁﹃民事及び商事に関する裁判管轄権及び外国判決に関する条約準備草案﹄について﹂ジュリスト一一七二号(二〇〇〇年)八二頁、

同﹁国際裁判管轄および外国判決承認執行条約案の検討︱ハーグ国際私法会議二〇〇〇年条約案の意義と問題点(1)︱(3・完)﹂NBL六七五

号(一九九九年)一二頁、六七六号三四頁、六七九号四四頁、同﹁﹃民事及び商事に関する裁判管轄権及び外国判決に関する条約準備草案﹄を採択

した一九九九年一〇月のヘーグ国際私法会議特別委員会の概要(1)︱(7)・完﹂国際商事法務二八巻二号(二〇〇〇年)一七〇頁、三号三〇七頁、

四号四六六頁、五号六〇四頁、六号七三五頁、七号八六〇頁、八号九八八頁、同﹁ハーグ裁判管轄外国判決条約案の修正作業︱外交会議の延期と打

開策の模索﹂ジュリスト一一九四号(二〇〇一年)七二頁、同﹁裁判管轄等に関する条約採択をめぐる現況(上)・(下)︱二〇〇一年六月の第一回

外交会議の結果﹂ジュリスト一二一一号(二〇〇一年)八〇頁(以下、﹁道垣内二〇〇一(上)﹂という。)、一二一二号八七頁、中野俊一郎﹁道垣内

正人編著﹃ハーグ国際裁判管轄条約﹄﹂国際法外交雑誌一〇九巻三号(二〇一〇年)一九三頁、野村美明﹁米国の裁判管轄ルールからみたハーグ管

轄判決条約案と日本の立場﹂国際私法年報四号(二〇〇二年)二一四頁、渡辺惺之﹁ヨーロッパの管轄ルールからみたハーグ管轄判決条約案と日本

の立場﹂国際私法年報四号(二〇〇二年)一七四頁など。

(37) 

これに関する文献として、道垣内二〇〇九・前掲注(36)、今井理﹁ヘーグ国際私法会議第二〇会期の概要︱管轄合意に関する条約を中心として︱﹂

Page 50: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

九八

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇三四

民事月報六〇巻一一号(二〇〇五年)四〇頁、佐藤やよひ﹁ハーグ管轄合意条約と著作権法﹂コピライト二〇〇六年六月号(二〇〇六年)三四頁、

道垣内正人﹁ハーグ国際私法会議の﹃裁判所の選択合意に関する条約作業部会草案﹄(上)・(下)﹂NBL七七二号(二〇〇三年)八頁、七七三号五

七頁、同﹁ハーグ国際私法会議﹃専属的合意管轄に関する条約案﹄︱二〇〇五年の外交会議に向けて﹂国際商事法務三二巻九号(二〇〇四年)一一

六四頁、同﹁専属的合意管轄に関するハーグ条約案(二〇〇四年)について﹂齋藤彰編﹃国際取引紛争における当事者自治の進展﹄(法律文化社、

二〇〇五年)一四三頁、同﹁ハーグ管轄合意に関する条約(二〇〇五年)の作成過程における日本の関心事項について﹂同志社法学三一五号(五八

巻三号)(二〇〇六年)二四三頁、同﹁専属的管轄合意と知的財産訴訟︱ハーグ管轄合意条約に関連して︱﹂季刊企業と法創造三巻一号(二〇〇六年)

四二頁、同﹁ハーグ管轄合意に関する条約(二〇〇五年)﹂新堂幸司=山本和彦編﹃民事手続法と商事法務﹄(商事法務、二〇〇六年)二五一頁を参照。

(38) 

Sum

mary of th

e Ou

tcome of th

e Discu

ssion in

Com

mission

Ⅱof the F

irst Part of th

e Dip

lomatic C

onferen

ce 6 - 20 Jun

e 2001: Interim

Text

[hereinafter Interim

Text 2001

].

この日本語訳として、道垣内二〇〇九・前掲注(36)二五二頁以下を参照。

(39) 

競争法事件に関しては、更なる検討が必要とされたが、カルテル、市場支配力の濫用、合併等の米国における﹁反トラスト法上の請求(anti-trust

claims

)﹂は、排除されるべきとの一般的合意があったとされる。他方で、欺罔的な行為などの﹁不正競争(unfair com

petition

)﹂とされるものは、

依然として含まれるとされる。S

ee, Interim Text 2001, su

pra

note 38, p. 2.

(40) P

reliminary D

ocument N

o.11, sup

ra note 36.

(41) A

rticle 10 Torts or delicts

1. A plaintiff m

ay bring an action in tort or delict in the courts of the State-

  

a

) in which the act or om

ission that caused injury occurred, or

  

b

) in which the injury arose, unless the defendant establishes that the person claim

ed to be responsible could not reasonably have foreseen that

the act or omission could result in an injury of the sam

e nature in that State.

2. Paragraph 1 b

) shall not apply to injury caused by anti-trust violations, in particular price-fixing or monopolization, or conspiracy to inflict econom

ic

loss.

3. A plaintiff m

ay also bring an action in accordance with paragraph 1 w

hen the act or omission, or the injury m

ay occur.

4. If an action is brought in the courts of a State only on the basis that the injury arose or may occur there, those courts shall have jurisdiction only in

respect of the injury that occurred or may occur in that State, unless the injured person has his or her habitual residence in that State.

Page 51: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

九九

一〇三五

一〇条 

不法行為

一.原告は、次のいずれかの国の裁判所に不法行為に基づく訴えを提起することができる。

  

a

) 損害の原因となった被告の行為(不作為を含む。以下この条において同じ。)がされた国

  

b

損害が発生した国。ただし、責任を問われている者が、その行為によってその国で同様の性質の損害が発生することを合理的に予見できなかった

ことを証明した場合は、この限りでない。

二.

前項b号の規定は、反トラスト法違反(特に価格維持または独占)または経済的損失を加える共同謀議を原因とする損害には適用しない。

三.原告は、行為または損害のおそれがある場合であっても、第一項の規定にしたがって、訴えを提起することができる。

四.訴えがその国で損害が発生し、または損害が発生するおそれがあることのみを基礎として当該国の裁判所に提起された場合には、その裁判所は、そ

の国において発生し、または発生するおそれのある損害についてのみ管轄権を有するものとする。ただし、損害を被った当事者が当該国に常居所を

有する場合はこの限りでない。

本規定の日本語訳に関しては、道垣内二〇〇九・前掲注(36)五六頁を参照。

(42) P

reliminary D

ocument N

o.11, sup

ra note 36, p. 59.

(43) Id

., p. 60.

(44) Id

.

(45) Id

.

また、反トラスト法事件を含めることに対する米国における強い反対、および反トラスト法事件について、経済的損失の発生地が結果発生地

ではないことを示すことにより、他の事件においては、経済的派生損失の発生地を結果発生地として認めるとの反対解釈を導くおそれがあることも

排除の要因であると指摘される。道垣内二〇〇一(上)・前掲注(36)七七頁。

(46) P

reliminary D

ocument N

o.11, sup

ra note 36, p. 60.

(47) Id

.

(48) Id

., p. 39.

この理由として、以下の五点が挙げられている。①原告被告共に予見可能であること、②原告および被告は、競争行為を行う地の法に

内在するリスクを予見しなければならないこと、③事実と密接に関連する法廷地は、市場および被害者への影響を評価するのに最も適切であり、判

断の根拠となる証拠を容易に入手できること、④被告が存在することから、問題となる行為の停止を命ずることができること、⑤市場占有率などの

Page 52: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

一〇〇

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇三六

問題となる市場の競争状況に基づいて、損害が包括的に評価されうることである。

(49) 

加害行為自体は明らかとされていないが、反競争的な協定の締結(anti-com

petitive agreement that caused the injury

)を加害行為とする見解も

ある。L

uca G

. Rad

icatidi B

rozolo, “An

titrust C

laims: W

hy E

xclud

e Th

em from

the H

ague Ju

risdiction

and

Jud

gmen

ts Con

vention

?”, E.C

.L.R

. (2004), pp. 787-788.

(50) C

oun

cil Regu

lation

(EC

) No 44/2001 of 22 D

ecember 2000 on

jurisd

iction an

d th

e recognition

and

enforcem

ent of ju

dgm

ents in

civil and

comm

ercial matters, O

fficial Journal L 012, 16/01/2001, pp. 1-23.

本規則の日本語訳に関しては、中西康﹁民事及び商事事件における裁判管轄及び裁

判の執行に関する二〇〇〇年一二月二二日の理事会規則(EC)四四/二〇〇一(ブリュッセルⅠ規則)︹上︺・︹下︺﹂国際商事法務三〇巻三号(二

〇〇二年)三一一頁、三〇巻四号(二〇〇二年)四六五頁を参照。なお、ブリュッセルⅠ規則は、二〇一二年に改正され、二〇一五年一月一〇日よ

り改正法が施行される。

(51) 

The C

onvention on jurisdiction and the recognition and enforcement of judgm

ents in civil and comm

ercial matters (L

ugano Convention

).

二〇

〇七年改正前の条文の日本語訳として、奥田安弘﹁EC・EFTAの裁判管轄および判決の執行に関するルガノ条約﹂同・前掲注(4)三〇八

三六頁を参照。ルガノ条約は、一九六八年のブリュッセル条約をモデルとして、リヒテンシュタインを除くEFTA構成国とEC構成国間で一九八

八年に締結され、二〇〇七年に改正された。ルガノ条約に関する文献として、関西国際民事訴訟法研究会﹁民事及び商事に関する裁判管轄並びに判

決の執行に関するルガノ条約公式報告書︹全訳︺︹一︺︱︹一三・完︺﹂国際商事法務二九巻四号(二〇〇一年)四八四頁、二九巻五号六二三頁、二

九巻六号七五五頁、二九巻七号八七七頁、二九巻八号一〇〇二頁、二九巻九号一一三三頁、二九巻一〇号一二六一頁、二九巻一一号一三九七頁、二

九巻一二号一五二五頁、三〇巻一号(二〇〇二年)九三頁、三〇巻二号二三六頁、三〇巻三号三八二頁、三〇巻四号五二四頁。

(52) 

二〇〇七年改正により、ルガノ条約は共同体法の一つとなり、欧州司法裁判所は、ルガノ条約の適用および解釈に関する先決裁定(prelim

inary

ruling

)を行うことが可能となった。G

erhard Walter und T

anja Dom

ej, Internationales Zivilprozessrecht der Schw

eiz, 5. Aufl. 2012, S. 179;

Protokoll 2 über die einheitliche A

uslegung des Übereinkom

mens und den Ständigen A

usschuss zum L

ugano-Übereinkom

men von 2007 P

räambel,

Art.1 und 2.

(53) A

rticle 5

A person dom

iciled in a Mem

ber State may, in another M

ember State, be sued:

3 in matters relating to tort, delict or quasi-delict, in the courts for the place w

here the harmful event occurred or m

ay occur;

Page 53: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

一〇一

一〇三七

 

五条 

構成国の領域内に住所を有する者は、次に定める場合においては、他の構成国の裁判所に訴えられる。

三 

不法行為または準不法行為事件においては,損害をもたらす事実が発生したか,発生する危険がある地の裁判所

(54) C

hristop

her W

ithers, Ju

risdiction

and

app

licable law in

antitru

st tort claims, J.B

.L. 250, 260

(2002

); James J. F

awcett an

d P

Torrem

ans,

Intellectu

al P

roperty

in P

rivate In

terna

tiona

l La

w 2

nd E

dition

(OU

P, 2011

) [herein

after Fa

wcett/Torrem

an

s

], p. 501; Jon

athan

Fitch

en,

“Allocating jurisdiction in private com

petition law claim

s within the E

U”, M

aa

stricht Jou

rna

l of Eu

ropea

n a

nd

Com

pa

rative L

aw

, Vol.13, N

o.4

(2006

), p. 381; Provim

i, sup

ra note 2, para. 38.

(55) C

ase C-21/76, H

andelswkerij G

.J. Bier B

.V. v Mines de P

otasse d’Alsace S.A

. [1976

] ECR

1735, paras. 19-23.

(56) C

ase C-220/88 D

umez F

rance and Tracoba v H

essische Landesbank (H

elaba

) [1990

] ECR

Ⅰ-49, para. 20.

(57) C

ase C-364/93 M

arinari v Lloyds B

ank [1995

] ECR

Ⅰ-2719, para. 14.

(58) H

ydrogen peroxide

カルテルに関する損害賠償請求において、競争法事件における不法行為地の解釈についての先行判決が求められている。

<at http://eur-lex.europa.eu/legal-content/E

N/T

XT

/?uri=uriserv:O

J.C_.2013.298.01.0002.01.E

NG

(59) T

reaty on the Functioning of E

uropean Union.

 

TF

EU

Article 101

1. Th

e followin

g shall b

e proh

ibited

as incom

patib

le with

intern

al market all agreem

ents b

etween

un

dertakin

gs, decision

s by association

s of

un

dertakin

gs and

concerted

practices w

hich

may affect trad

e between

Mem

ber States an

d w

hich

have as th

eir object or effect the p

revention

,

restriction or distortion of competition w

ithin the internal market, and in particular those w

hich:

(a

) directly or indirectly fix purchase or selling prices or any other trading conditions;

(b

) limit or control production, m

arkets, technical development, or investm

ent;

(c

) share markets or sources of supply;

(d

) apply dissimilar conditions to equivalent transactions w

ith other trading parties, thereby placing them at a com

petitive disadvantage;

(e

) make the conclusion of contracts subject to acceptance by the other parties of supplem

entary obligations which, by their nature or according to

comm

ercial usage, have no connection with the subject of such contracts.

Page 54: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

一〇二

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇三八

Article 102

An

y abuse by on

e or more u

nd

ertakings of a d

omin

ant p

osition w

ithin

the in

ternal m

arket or in a su

bstantial p

art of it shall be p

rohibited

as

incompatible w

ith the internal market in so far as it m

ay affect trade between M

ember States.

Such abuse may, in particular, consist in:

(a

) directly or indirectly imposing unfair purchase or selling prices or other unfair trading conditions;

(b

) limiting production, m

arkets or technical development to the prejudice of consum

ers;

(c

) applying dissimilar conditions to equivalent transactions w

ith other trading parties, thereby placing them at a com

petitive disadvantage;

(d

) making the conclusion of contracts subject to acceptance by the other parties of supplem

entary obligations which, by their nature or according to

comm

ercial usage, have no connection with the subject of such contracts.

 

TFEU一〇一条

一.加盟国間の取引に影響を及ぼすおそれがあり、かつ域内市場内の競争の妨害、制限または歪曲を目的とするか結果として生じさせる事業者間のすべ

ての協定、事業者団体の決定および協調行為、特に次のものは、域内市場と両立せず、禁止される。

 

⒜ 

購入価格、販売価格または他の取引条件の直接または間接の設定

 

⒝ 

生産、販売、技術開発または投資の制限または統制

 

⒞ 

市場または供給源の配分

 

⒟ 

取引の相手方に対し、同等の取引に関して異なる条件を適用し、その結果相手方を競争上不利にすること

 

⒠ 

その性質上または商慣習から契約の対象に関連のない追加の義務受け入れを契約締結の条件とすること。

一〇二条

 

一または二の企業者が域内市場または域内市場の主要な部分での自己の支配的な地位を濫用することは、加盟国間の取引がこれにより影響を受けるお

それがあるかぎり、域内市場と両立しないとして、禁止される。

そのような濫用は、特に次のものからなる。

Page 55: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

一〇三

一〇三九

 

⒜ 

不当な購入価格、販売価格その他の不当な取引条件を直接または間接に課するもの

 

⒝ 

生産、販売または、技術開発を消費者にとって不利に制限するもの

 

⒞ 

取引の相手方に対し、同等の取引ついて異なる条件を適用し、その結果相手方を競争上不利にするもの

 

⒟ 

その性質上または商慣習から契約の対象に関連のない追加の義務を相手方が受諾することを契約締結の条件とするもの

日本語訳に関しては、澤田壽夫ほか編﹃マテリアルズ国際取引法[第三版]﹄(有斐閣、二〇一四年)四〇

四一頁︹澤田壽夫訳︺を参照。

(60) 

締結地を唯一の加害行為地とするものとして、F

awcett/Torrem

ans, sup

ra note 54, p. 502.

締結地を加害行為地の一つとするものとして、D

avid

Ashton und C

hristian Vollrath, C

hoice of Court and applicable law

in tortious actions for breach of Com

munity com

petition law, Z

eitschrift für

Wettbew

erbsrecht

(2006) 1, S. 8 [hereinafter A

shton

/Vollra

th

]; Jürgen Basedow

, “International Carterls and the P

lace of Acting under A

rticle 5

(3

) of the Brussels

ⅠRegulation”, in Jürgen B

asedow, Stéphanie F

rancq and Laurence Idot (ed

), Intern

ation

al A

ntirtu

st Litiga

tion: C

onflict of

La

ws a

nd

Coord

ina

tion

(Hart P

ublish

ing, 2012

), p. 34; M

ihail D

anov, Ju

risdiction

an

d Ju

dgm

ents in

Rela

tion to E

U C

omp

etition L

aw

Cla

ims

(Hart P

ub

lishin

g, 2011), p

. 92; Peter M

ank

ow

ski, D

er euro

päisch

e Gerich

tsstand

des T

atortes au

s Art.5 N

r.3 Eu

GV

VO

bei

Schadenserersatzklagen bei Kartelldelikten, W

irtschaft und Wettbew

erb (2012

) 797, S. 801; Wolfgang W

urmnest, International Z

uständigkeit und

anwendbares R

echt bei grenzüberschreitenden Kartelldelikten, E

uropäische Zeitschrift für W

irtschaftsrecht (2012

) 933, S. 934f.

(61) C

ooper Tire&

Rubber C

ompany and O

thers v Shell Chem

icals UK

Ltd and O

thers

[2009

] EW

HC

2609

(以下、﹁C

ooper Tire

﹂という。), para.

65.

もっとも、本判決において、カルテルに関する会合が欧州の複数の国で開かれている場合に、最初に会合が開かれた地のみを加害行為地とする

ことに懸念が示され、現実的でないとも述べられている。さらに、加害行為は、実際には複数の国で行われており、加害行為地が特定できない場合

には、原告は、結果発生地にのみ基づくことができるとも述べられている。

(62) 

Oberlandesgericht H

amm

20. Zivilsenat 03.10.1978, R

IW 1980, S. 662.

(63) F

awcett/Torrem

ans, sup

ra note 54, pp. 502-503.

(64)

一度限りの会合で締結される場合または同一の地で毎年更新される場合などが考えられる。B

asedow, su

pra

note 60, p. 37; Wurm

nest, a.a.O.

(Fn.

60

), S. 934.

(65) B

asedow, su

pra

note 60, pp. 38-39; Withers, su

pra

note 54, at 261; Wurm

nest, a.a.O.

(Fn. 60

), S. 935; Friedlich W

enzel Bulst, Internationale

Zu

ständ

igkeit, anw

end

bares R

echt u

nd

Sch

aden

sberech

nu

ng im

Kartelld

eliktsrecht: D

ie En

tscheid

un

g des L

G D

ortmu

nd

vom 1.4.2004,

Page 56: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

一〇四

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇四〇

Euroäisches W

irtschafts- und Steuerrecht (2004

) 403, S. 405.(66) C

ase C-256/00 B

esix SA v W

asserreinigungsbau Alfred K

retzschmar G

mbH&

Co K

G

(WA

BA

G

) and Planungsund F

orschungsfesellschaft Dipl

Ing W K

retzschmar G

mbH&

KG

(Plafog

) [2002

] EC

R

Ⅰ-1699, para. 49.

地理的に特定されない契約上の債務が問題となった本事件において、欧州

司法裁判所は、次のように判示した。﹁[そのような債務は、]ある特別の地に特定されず、この債務に関する紛争を審理し、判決を下すのに適切な

裁判所にも特に結びつけられえない。いかなる場所においても行動を起こすことを控えるとの合意(undertaking

)から当然に、いかなる特別の裁

判所にも関連付けられない。そのような状況においては、裁判管轄は、ブリュッセル条約五条一号ではなく、二条のみに基づき判断される。﹂

(67) B

asedow, su

pra

note 60, p. 39

(68) M

ankowski, a.a.O

. (Fn. 60

), S. 801.

(69) ebd.

(70) R

egulation (EC

) No 593/2008 of the E

uropean Parliam

ent and of the Council of 17 June 2008 on the law

applicable to contractual obligations

(Rom

e

), Official Journal L

177, 4/7/2008, pp. 6-16.

(71) 

実施地を唯一の加害行為地とする見解として、W

ithers, sup

ra note 54, at 261.

実施地を加害行為地の一つとする見解として、A

shton/Vollrath,

a.a.O. (F

n. 60

), S. 8; Basedow

, sup

ra note 60, p. 34; D

anov, sup

ra note 60, p. 92; M

ankowski, a.a.O

. (Fn. 60

), S. 801; Wurm

nest, a.a.O. (F

n. 60

), S.

934f.

市場支配的地位の濫用については、実施地を加害行為地とする見解として、A

shton/Vollrath, a.a.O

. (Fn. 60

), S. 8; Faw

cett/Torremans, su

pra

note 54, p. 503.

(72) B

asedow, su

pra

note 60, p. 34; Mankow

ski, a.a.O. (F

n. 60), S. 801f.; W

urmnest, a.a.O

. (Fn. 60

), S. 935.

同様の見解として、 W

ithers, sup

ra note

54, at 261.

(73) P

rovimi, su

pra

note 2, para. 38.

(74) Joined cases, 89, 104, 114, 117 and 125 to 129/85 A

shlstrom O

sakeyhtio v Com

mission [1988

] ECR

5193 (以下、﹁W

ood Pulp

﹂という。), para. 16.

(75) D

anov, sup

ra note 60, p. 94; W

ithers, sup

ra note 54, at 261.

(76) W

ithers, sup

ra note 54, at 261.

(77) B

ulst, a.a.O. (F

n. 65

), S. 405.

(78) B

asedow, su

pra

note 60, p. 34.

Page 57: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

一〇五

一〇四一

(79) W

urmnest, a.a.O

. (Fn. 60

), S. 935.(80) B

ulst, a.a.O

.

(Fn

. 65

), S. 405; G

erald M

äsch, V

itamin

e für K

artellopfer: F

orum

Sh

opp

ing im

europ

äischen

Kartelld

eliktsrecht, P

raxis des

Internationalen Privat- und V

erfahrensrechts (2005

) 509, S. 515; S. Leible, in: T. R

auscher (Herg.

), Europäisches Z

ivillprozessrecht – Kom

mentar

Bd.1, 2. A

ufl., 2006, Art 5 B

rüssel

Ⅰ-VO

Rz. 88a.

同様の見解として、F

itchen, sup

ra note 54, p. 395.

(81) B

asedow, su

pra

note 60, p. 35; Mankow

ski, a.a.O. (F

n. 60

), S. 802; Wurm

nest, a.a.O. (F

n. 60

), S. 935.

(82) B

asedow, su

pra

note 60, p. 35.

(83) B

ulst, a.a.O. (F

n. 65

), S. 405.

(84) M

ankowski, a.a.O

. (Fn. 60

), S. 802.

(85) ebd.

(86) B

ulst, a.a.O. (F

n. 65

), S. 405f.; Mankow

ski, a.a.O. (F

n. 60

), S. 804f.; Wurm

nest, a.a.O. (F

n. 60

), S. 935.

(87) M

ankow

ski, a.a.O.

(Fn

. 60

), S. 804f.; M

ün

chen

er Kom

men

tar zum

Eu

ropäisch

en u

nd

Deu

tschen

Wettb

ewerb

srecht, 2007, E

inl. R

z. 846

[Schnyder

]; Rodriguez P

ineau, “Conflict of L

aws C

omes to the R

escue of Com

petition Law

: The N

ew R

ome

ⅡRegulation”, Jou

rna

l of Priva

te

Intern

ation

al L

aw

, Vol.5, N

o.2 (2009

), p. 321.

(88) B

ulst, a.a.O. (F

n. 65

), S. 406; Mankow

ski, a.a.O. (F

n. 60

), S. 804f.

(89) A

shton

/Vollrath

, a.a.O.

(Fn

. 60

), S. 8; D

anov, su

pra

note 60, p

. 97; Jan von

Hein

, Deliktisch

er Kap

italanlegersch

utz im

europ

äischen

Zuständigkeitsrecht, P

raxis des Internationalen Privat- und V

erfahrensrechts (2005

) 17, S. 22; Moritz B

ecker, Kartelldeliktsrecht:

§826 BG

B als

“Zuständigkeitshebel ” im

Anw

endungsbereich der EuG

VO

?, EW

S (2008

) 228, S. 230.

販売地を結果発生地とする見解も主張され、その根拠として、

単に銀行口座などが所在する地といった財産侵害地の探求よりも、販売地を探求する方が望ましいと述べられる。S

ee,Faw

cett/Torremans, su

pra

note 54, p. 504.

もっとも、製品が市場で販売される限り、販売地と市場地と一致するであろう。販売地と市場地が一致しない場合としては、見本市

などにおける販売が考えられるが、そのような場合には、販売地は第三国に不適当な裁判管轄を導きうると批判される。この批判については、

Bulst, a.a.O

. (Fn. 65

), S. 406f.

(90) D

anov, sup

ra note 60, p. 97; M

ankowski, a.a.O

. (Fn. 60

), S. 805f.; Wurm

nest, a.a.O. (F

n. 60

), S. 935.

(91) R

egulation (EC

) No 864/2007 of the E

uropean Parliam

ent and of the Council of 11 July 2007 on the law

applicable to non-contractual obligations

Page 58: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

一〇六

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇四二

(Rom

e

), Official Journal L

199, 31/7/2007, pp. 40-49.(92) 

もっとも、b号において、一定の条件が満たされる場合には、訴えが係属する裁判所が所在する地の法、すなわち、法廷地法が単一の準拠法とし

て当事者により選択されうる。

(93) L

G D

ortmund, a.a.O

. (Fn. 2

); SanDisk C

orp v Konklijke P

hilips Electronics N

V [2007

] EW

HC

332 (Ch

)(以下、﹁SanD

isk

﹂という。); M

agnus /

Mankow

ski / Mankow

ski, Brussels R

egulation (2nd ed. 2012

) art.5 notes 238-240a.

(94) L

eible, a.a.O. (F

n. 80

), Art. 5 B

rüssel

Ⅰ-VO

Rz. 86b; M

äsch, a.a.O. (F

n. 80

), S. 514f.

また、具体的な所在地が不明確な場合には、財産の中心地を

主張する見解として、B

ecker, a.a.O. (F

n. 89

), S. 232f.

(95) L

G D

ortmund, a.a.O

. (Fn. 2

).

(96) SanD

isk, sup

ra note 93.

(97) B

ulst, a.a.O. (F

n. 65

), S. 404; Danov, su

pra

note 60, pp. 94-97.

(98) B

ulst, a.a.O. (F

n. 65

), S. 404.

(99) SanD

isk, sup

ra note 93, para. 30.

(100) M

äsch, a.a.O. (F

n. 80

), S. 515f.

(101) C

ase C-18/02 D

anmarks R

ederiforening v LO

[2004

] ECR

I-1417.

(102) C

ase C-168/02 K

ronhofer v Maier [2004

] ECR

-I-6009.

(103) M

äsch, a.a.O. (F

n. 80

), S. 515ff.

(104) D

anmarks R

ederiforening, sup

ra note 101, paras. 44-45.

(105) K

ronhofer, sup

ra note 102, paras. 20-21.

(106) M

äsch, a.a.O. (F

n. 80

), S. 516.

この危険性に言及するものとして、P

eter Mankow

ski, EW

iR A

rt.5 EuG

2/98, S. 1086.

(107) B

asedow, su

pra

note 60, p. 33; Fitchen, su

pra

note 54, p. 391; Mankow

ski, a.a.O.

(Fn. 60

), S. 799; Withers, su

pra

note 54, at 262.

また、

SanDisk, su

pra

note 93, para. 25

も同旨である。

(108) C

omm

ission Staff Working P

aper, Annex to the G

reen Paper on dam

ages actions for breach of the EC

antitrust rules, SEC

(2005

) 1732 of 19

Decem

ber 2005, p. 67.

Page 59: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

一〇七

一〇四三

(109) C

ouncil Regulation (E

C

) No 1/2003 of 16 D

ecember 2002 on the im

plementation of the rules on com

petition laid down in A

rticle 81 and 82 of

the Treaty, O

fficial Journal L 001, 04/01/2003/, pp. 1-25.

また、同執行規則は、二〇〇四年、二〇〇六年に更に改正されている。

(110) D

anov, sup

ra note 60, p. 100.

(111) B

ulst, a.a.O. (F

n. 65

), S. 408; Danov, su

pra

note 60, p. 102.

(112) B

undesgesetz vom.18 D

ezember 1987 über das Internationale P

rivatrecht (SR 291

).

一九八七年に制定された当時の条文の日本語訳としては、奥

田安弘﹁一九八七年のスイス国際私法(一)︱(六・完)﹂戸籍時報三七四号(一九八九年)二頁、三七五号一八頁、三七六号四三頁、三七七号五

一頁、三七八号五四頁、三七九号五八頁、井之上宜信﹁スイスの国際私法典(一九八九年)について一・二完(資料)﹂法学新報九六巻一・二号(一

九八九年)三八九頁、九六巻五号(一九九〇年)二六九頁、三浦正人﹁一九八七年スイス国際私法仮訳﹂名城法学三九巻一号(一九八九年)六五頁

を参照。

(113) 

Art.129

1. Für K

lagen aus unerlaubter Handlung sind die schw

eizerishcen Gerichte am

Wohnsitz des B

eklagten oder, wenn ein solcher fehlt, diejenigen an

seinem

gewöh

nlich

en A

ufen

thaltsort zu

ständ

ig. Überd

ies sind

die sch

weizerisch

en G

erichte am

Han

dlu

ngs- od

er Erfolgsort sow

ie für K

lagen

aufgrund der Tätigkeit einer N

iederlassung in der Schweiz die G

erichte am O

rt der Niederlassung zuständig.

2.

⋮一二九条

一 

不法行為に関する請求については、被告の住所地のスイス裁判所、またはスイスに住所がない場合には、常居所地のスイス裁判所が管轄を有する。

さらに、加害行為地または結果発生地のスイス裁判所および営業所の活動に基づく請求については、営業所所在地のスイス裁判所が管轄を有する。

二 

(114) D

. Girsberger/A

. Heini/M

. Keller/J. K

ren-Kostkiew

icz/K. Siehr/F. V

ischer/P. Volken

(Hrsg.

), Zürcher K

omm

entar zum IP

RG

– Kom

mentar zum

Bu

nd

esgesetz über d

as Intern

ationale P

rivatrecht

(IPR

G

) vom 18. D

ezember 1987, 2., ergän

zete un

d verbesserte A

ufl., 2004

(zitiert: Zü

rcher

Kom

mentar

), Art.129 R

z. 55 [Volken

].

(115) A

. Furrer/D

. Girsberger/M

. Müller-C

hen (Hrsg.

), Handkom

mentar zum

Schweizer P

rivatrecht, Internationales Privatrecht, 2. A

ufl., 2012 (zitiert:

Page 60: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

一〇八

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇四四

Handkom

mentar

), Art.129 R

z. 11a [Schramm

/Buhr

].(116) H

andkomm

entar, a.a.O. (F

n. 115

), Art.129 R

z. 14 [Schramm

/Buhr

]; Walter/D

omej, a.a.O

. (Fn. 52

), S. 170; H. H

onsell/N. P. V

ogt/A. K

. Schnyder/

S. Berti (H

rsg.

), Basler K

omm

entar Internationales Privatrecht, 3. A

ufl., 2013 (zitiert: Basler K

omm

entar

), Art.129 R

z. 16 [Um

bricht/Rodriguez/

Krüsi

].

(117) B

asler Kom

mentar, a.a.O

. (Fn. 116

), Art.129 R

z. 19 [Um

bricht/Rodriguez/K

rüsi

]; Handkom

mentar, a.a.O

. (Fn. 115

), Art.129 R

z. 15 [Schramm

/

Buhr

]; Walter/D

omej, a.a.O

. (Fn. 52

), S. 170; BG

er. 2. 8. 1999 (BG

E 125

Ⅲ346

) E. 4c/aa.

本判決を含む連邦最高裁の判決は、スイス連邦最高裁のホ

ームページにて入手可能である。<

at http://ww

w.bger.ch/index/juridiction/jurisdiction-inherit-tem

plate/jurisdiction-recht/jurisdiction-recht-

leitentscheide1954.htm>

(118) B

asler Kom

mentar, a.a.O

. (Fn. 116

), Art.129 R

z. 25 [Um

bricht/Rodriguez/K

rüsi

]; Handkom

mentar, a.a.O

. (Fn. 115

), Art.129 R

z. 19 [Schramm

/

Buhr

]; BG

er 17. 12. 1987 (BG

E 113

Ⅱ476

) E. 3a; BG

er 2. 11. 1998 (BG

E 125

Ⅲ103

) E. 2b/aa.

(119) B

asler Kom

men

tar, a.a.O.

(Fn

. 116), A

rt.137 Rz. 30

[Dasser/B

rei

]; Han

dkom

men

tar, a.a.O.

(Fn

. 115

), Art.137 R

z. 16

[Sch

ramm

/Bu

hr

]; Axel

Delvoigt, W

ettbewerbsbeh

ind

erun

gen im

schw

eizerischen

IPR

-Gesetz, T

hèse B

âle

(1993

) S. 131ff.; A. K

. Sch

nyd

er, Wirtsch

aftskollisionsrech

t,

1990, Rz. 106; d

ers., Das n

eue IP

R-G

esetz : eine E

infü

hru

ng in

das B

un

desgesetz vom

18. Dezem

ber 1987 über d

as Intern

ationale P

rivatrecht

(IPR

G

), 2. Aufl., 1990, S. 116f.

競争法事件における効果理論に基づく特別な解釈を批判する見解として、Ivo Schw

ander, Ansprüche aus

Wettbew

erbsbehinderung im neuen IP

R-G

esetz, in : R. Z

äch (Hrsg.

), Kartellrecht auf neuer G

rundlage, 1989, S. 379; Volker B

ehr, Internationale

Tatortszuständigkeit für vorbeugende U

nterlassungsklagen bei Wettbew

erbsverstößen, G

RU

R Int’l (1992

) 604, S. 607.

また、B

Ger 5. 5. 2006 (B

GE

132

Ⅲ579

) E. 2.1

において、連邦最高裁は、ルガノ条約が適用された不正競争事件において、加害行為地に裁判管轄を認めた。

(120) Schnyder, a.a.O

. (Fn. 119

), Rz. 106.

(121) Schnyder, a.a.O

. (Fn. 119

), Rz. 108.

この見解は、ドイツにおけるR

ehbinder

の主張に基づく。E

ckard Rehbinder, in : U

. Imm

enga/E. M

estmäcker

(Hrsg.

), GW

B. G

esetz gegen Wettbew

erbsbeschränkungen. Kom

mentar, 2. A

ufl., 1992,

§98 Abs. 2 R

z. 258.

(122) Schnyder, a.a.O

. (Fn. 119

), Rz. 108; B

GH

23.10.1979, NJW

33 (1980

) 1224 (mit A

nmerkung Schlosser

).

(123) D

elvoigt, a.a.O. (F

n. 119

), S. 131; Schnyder, a.a.O. (F

n. 119

), Rz. 108.

(124) D

elvoigt, a.a.O. (F

n. 119

), S. 132; Schnyder, a.a.O. (F

n. 119

), Rz. 108.

Page 61: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

一〇九

一〇四五

(125) B

Ger 21. 3. 1967 (B

GE

93

Ⅱ192

) E. 3.(126) Schnyder, a.a.O

. (Fn. 119

), Rz. 109.

(127) D

elvoigt, a.a.O. (F

n. 119

), S. 133.

(128) ebd.

(129) B

asler Kom

mentar, a.a.O

. (Fn. 116

), Art.137 R

z. 30 [Dasser/B

rei

]; Delvoigt, a.a.O

. (Fn. 119

), S. 133f.; Handkom

mentar, a.a.O

. (Fn. 115

) Art.137

Rz. 16

[Schramm

/Buhr

]; Schnyder, a.a.O.

(Fn. 119

), Rz. 106.

不法行為地を効果地に限定する必要はないと主張する見解として、Z

ürcher

Kom

mentar, a.a.O

. (Fn. 114

), Art.137 R

z. 8 [Vischer

].

(130) G

ünther Beitzke, D

as Deliktsrecht im

schweizerischen IP

R-E

ntwurf, Schw

eizerisches Jahrbuch für internationals Recht =

Annuaire Suisse de

droit international, Vol.35 (1979

) 93, S. 102.

(131) D

elvoigt, a.a.O. (F

n. 119), S. 133.

(132) W

alter/Dom

ej, a.a.O. (F

n. 52), S. 236.

(133) B

asler Kom

mentar, a.a.O

. (Fn. 116

), Art.129 R

z. 27 [Um

bricht/Rodriguez/K

rüsi

]; Kurt Siehr, D

as Internationale Privatrecht der Schw

eiz, 2002,

S. 355; O

bergericht Z

ürich

vom 26.M

ärz E. 4.c, S

ic! : Zeitsch

rift für Im

materialgü

ter-, Inform

ations- u

nd

Wettbew

erbsrecht : revu

e du

droit la

propriété intellectuelle, de l’information et de la concurrence 10/2004, S. 793.

(134) B

asler Kom

mentar, a.a.O

. (Fn. 116

), Art.129 R

z. 27 [Um

bricht/Rodriguez/K

rüsi

]; Siehr, a.a.O. (F

n. 133

), S. 355.

(135) 

国内における訴訟の集中は、IPRG8a

条一項において認められており、次の五つの要件が認められる場合に、国内における訴訟の集中が認めら

れる。渉外的な法律上の紛争であること、スイスの裁判所がすべての被告に対し国際裁判管轄を有すること、ルガノ条約に国内土地管轄に関する規

定がないこと、IPRGに別途専属管轄が定められていないこと、および複数の被告に対する共同訴訟であることである。

(136) 

Restatem

ent (Second

) of Conflict of L

aws

(抵触法第二リステイトメント)に、裁判管轄に関する規定があり、一定の指針にはなると思われる。

(137) 

米国の裁判管轄に関しては、我が国においても多くの研究がなされており、次の書籍・論文を参照した。書籍としては、小林秀之﹃新版・アメリ

カ民事訴訟法﹄(弘文堂、一九九六年)、坂本正光﹃アメリカ法における人的管轄権の展開﹄(九州大学出版会、一九九〇年)、ウィリアム・M・リッ

チマン=ウィリアム・L・レイノルズ(松岡博ほか訳)﹃アメリカ抵触法(上巻)︱管轄権編︱﹄(レクシスネクシス・ジャパン、二〇〇八年)、ミ

ルトン・D・グリーン(小島武司ほか訳)﹃体系アメリカ民事訴訟法﹄(学陽書房、一九八五年)、P

ET

ER H

AY E

T AL., C

ON

FL

ICT O

F LA

WS

(5th ed. 2010

Page 62: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

一一〇

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇四六

など。論文としては、リース(高橋一修訳)﹁アメリカにおける国際裁判管轄とロング・アーム法﹂アメリカ法一九七七年一号(一九七七年)一頁、

江泉芳信﹁アメリカ合衆国における対人管轄権とロング・アーム法﹂早大法研論集一二号(一九七五年)二五頁、同﹁アメリカ合衆国における新し

い裁判管轄規則﹂青山法学論集二三巻二号(一九八一年)七五頁、小山昇﹁アメリカ合衆国における州裁判管轄権の判断基準についての一考察﹂法

と政治三三巻三号(一九八二年)一〇一頁、野村美明﹁アメリカにおける州裁判管轄権理論の最近の動向﹂阪大法学一二二号(一九八二年)二五頁、

同﹁アメリカにおける国際事件の裁判管轄問題(一)~(四・完)﹂阪大法学一二六巻(一九八三年)九一頁、一二七巻六七頁、一三一巻(一九八

四年)五五頁、一三二巻六五頁、同﹁日米裁判管轄法理の比較枠組み﹂阪大法学五二巻三・四号(二〇〇二年)六四七頁など。

(138) Sections 4, 4A

, 4C, 15 and 16 of the C

layton Act (15 U

.S.C.

§§15, 15a, 15c, 25 and 26

).

もっとも、連邦裁判所に事物管轄が認められるか否かは、

本稿では扱わないが、外国取引反トラスト改善法(T

he Foreign T

rade Antitrust Im

provements A

ct, FT

AIA

)の解釈に依るところが大きい。

(139) 28 U

.S.C.

§1337

(a

).同じ見解である連邦最高裁の判決として、M

arresse v. Am

. Academ

y of Orthopaedic Surgeons, 470 U

.S. 373, 375, reh’g

denied, 471 U.S. 1062 (1985

); Vendo C

O. v. L

ektro-Vend C

orp., 433 U.S. 623, 664 (1977

).

もっとも、州法上の請求がなされる場合には、州裁判所も

事物管轄を有すると思われる。

(140) P

ennoyer v. Neff, 95 U

.S.714 (1877). 本判決の評釈として、的場朝子﹁判批﹂樋口範雄ほか編﹃アメリカ法判例百選﹄(有斐閣、二〇一三年)一五

一五三頁。

(141) International Shoe C

o. v. Washington, 326 U

.S. 310 (1945

).

本判決の評釈として、高杉直﹁判批﹂樋口ほか編・前掲注(140)一五四

一五五頁。

(142) 326 U

.S. at 316.

(143) 

これに対して、法廷地州における被告の一回限りの行為を裁判管轄の根拠とする判決もある。S

ee, McG

ee v. International Life Ins. C

o., 355 U.S.

220 (1957

).

(144) B

urger K

ing C

orporation

v. Ru

dzew

icz, 471 U.S

. 462

(1985); W

orld-W

ide V

olkswagen

Corp

.v. Wood

son, 444 U

.S. 286,

(1980

); Asah

i Metal

Industry Co. v. Superior C

ourt of Cal., 480 U

.S. 102 (1987

).

(145) H

anson v. Denckla, 357 U

.S. 235 (1958

); Bu

rger Kin

g, 471 U.S. 462 (1985

); World

-Wid

e Volksw

agen

, 444 U.S. 286 (1980

).

(146) H

an

son, 357 U

.S. at 253; Bu

rger Kin

g, 471 U.S. at 475.

(147) 

連邦最高裁は、H

elicopteros Nationales de C

olumbia, S.A

. v. Elizabeth H

all et al 466 U.S. 408 (1984

).

において、初めて、一般裁判管轄と特別裁

判管轄に言及した。この判決の評釈として、小林秀之﹁判批﹂アメリカ法一九八六年一号(一九八六年)二四五頁を参照。

Page 63: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

一一一

一〇四七

(148) D

ata Disc, Inc. v. System

s Technology Associates, Inc., 557 F.2d 1280, 1286 (9th C

ir. 1977

).

もっとも、連邦裁判所が州のロング・アーム法に依拠

し、裁判管轄を行使する場合には、間接的に第一四修正条項の制限を受けることになる。

(149) F

ederal Rules of C

ivil Procedure 4 (k

(k

) Territorial Lim

its of Effective Service.

 (1

) In General. Serving a sum

mons or filing a w

aiver of service establishes personal jurisdiction over a defendant:

  (A

) who is subject to the jurisdiction of a court of general jurisdiction in the state w

here the district court is located;

  (B

) who is a party joined under R

ule 14 or 19 and is served within a judicial district of the U

nited States and not more than 100 m

iles from w

here

the summ

on was issued; or

  (C

) when authorized by a federal statute.

 (2

) Federal C

laim O

utsid

e State-C

ourt ju

risdiction

. For a claim

that arises u

nd

er federal law

, serving a su

mm

on or filin

g a waiver of service

establishes personal jurisdiction over a defendant if:

 (A

) the defendant is not subject to jurisdiction in any state’s courts of general jurisdiction; and

 (B

) exercising jurisdiction is consistent with the U

nited States Constitution and law

s.

(150) S

ee, e.g., Go-V

ideo, Inc. v. Akai E

lec, Co., L

td., 885 F. 2d 1406, 14 14-1415 (9th Cir. 1989

); United P

hosphorus Ltd v. A

ngus Chem

ical Co, 43 F.

Supp. 2d 904, 911

(ND

Ill 1999

); Dee-K

Enter., Inc. v. H

eveafil Sdn. Bhd., 982 F. Supp. 1138, 1148

(E.D

.Va. 1997

); Paper Sys. Inc. v. M

itsubishi

Corp., 967 F. Supp. 364, 369 (E

.D.W

is. 1997

); Miller P

ipeline Corp. v. B

ritish Gas, 901 F.Supp. 1416, 1420-1421 (S.D

.Ind. 1995

).

(151) 15 U

.S.C.A

.

§22 - District in w

hich to sue corporation

   

Any suit, action, or proceeding under the antitrust law

s against a corporation may be brought not only in the judicial district w

hereof it is an

inhabitant, but also in any district wherein it m

ay be found or transacts business; and all process in such cases may be served in the district of

Page 64: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

一一二

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇四八

which it is an inhabitant, or w

herever it may be found.

(152) 

学説においても、クレイトン法一二条に基づく裁判管轄の行使を認める見解が多い。S

ee, PE

TE

R HA

Y ET A

L., sup

ra note 137, at 474; H

annah L

Buxbaum

&R

alf Michaels, “Jurisdiction and C

hoice of Law

in International Antitrust L

aw – A

US P

erspective”, in J. Basedow

, S. Francq &

L. Idot

(ed), In

terna

tiona

l An

titrust L

itigation

– Con

flict of La

ws a

nd

Coord

ina

tion

(2012

) (herein

after Bu

xba

um

/Mich

aels

), p. 228; H

erbert

HovenK

amp, P

ersona

l Jurisd

iction a

nd

Ven

ue in

Priva

te An

titrust A

ctions in

Fed

eral C

ourts: A

Policy A

na

lysis, 67 Iowa L

. Rev. 485, 501-

03

(1982

); HE

RB

ER

T HO

VE

NK

AM

P, FE

DE

RA

L AN

TIT

RU

ST P

OL

ICY: T

HE L

AW

OF C

OM

PE

TIT

ION A

ND IT

S PR

AC

TIC

E, 761

(2nd

ed. 1999

); VO

N KA

LIN

OW

SK

I ET A

L.,

AN

TIT

RU

ST LA

WS A

ND T

RA

DE R

EG

UL

AT

ION. 8. 163-5 (2nd ed. 2000

).

(153) G

TE

New

Media Serv., Inc., v. B

ellsouth Corp., 199 F.3d 1343 (D

.C. C

ir. 2000

).

(154) O

mni C

apital International v. Rudolf W

olff & C

o., Ltd., 484 U

.S. 97, 102 n.5 (1987

); Asahi M

etal Industry Co. v. Superior C

ourt of Cal., 480 U

.S.

102, 113 n*

(1987

).

前者の事件においては、問題となる連邦法自体が全国的な送達を認めていなかった。後者の事件においては、第一四修正条項の

みが問題となった。

(155) 

See, G

o-Vid

eo, 885 F.2d at 1415-1417; Dee-K

En

ter., 982 F.Supp. 1145 n.15; Pa

per sys., 967 F.Supp. at 369; M

iller Pip

eline, 901 F.Supp. at

1421-1423.

(156) W

illiam S. D

odge, An

titrust a

nd

the D

raft H

agu

e Jud

gemen

ts Con

vention

, 32 LA

W &

PO

L’ Y I NT’ L B

US. 363, 368 (2000

).

(157) S

ee, e.g., Mutaka M

wani v. O

sama B

in Laden, 417 F.3d 1, 11 (D

.C. C

ir. 2005

).

(158) V

ON K

AL

INO

WSK

I ET A

L., sup

ra note 152, at 163-15.

(159) D

odge, sup

ra note 156, at 369.

(160) C

alder v. Jones 465 U.S. 773

(1984

).

この判決については、江泉芳信﹁電子商取引の裁判管轄権︱若干の英米法判例の検討︱﹂早稲田法学八六巻

一号(二〇一〇年)一二頁、小林秀之﹁判批﹂アメリカ法一九八六年二号(一九八六年)四七六頁を参照。

(161) 

Buxbaum

/Michaels, su

pra

note 152, pp. 228-229; Dodge, su

pra

note 156, at 370-71; VO

N KA

LIN

OW

SKI E

T AL., su

pra

note 152, at 163-8-9.

(162) R

estatement (Second

) of Conflict of L

aws

§37 and 50.

(163) S

ee, e.g., Access Telecom

, Inc. v. MC

I Telecomm

. Corp, 197 F.3d 694 (5th C

ir. 1999), cert. denied, 121 S. C

t. 275 (2000

).

(164) L

arry Dougherty, N

ote: Does a

Ca

rtel Aim

Ex

pressly? Tru

sting C

ald

er Person

al Ju

risdiction

Wh

en A

ntitru

st Goes G

lobal, 60 F

LO

RID

A L.

Page 65: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

一一三

一〇四九

RE

V. 915, 932-936 (2008

).(165) C

ole v. Tobacco, 47 F.Supp. 2d 812, 815 (E.D

. Tex. 1999

).(166) B

uxbaum/M

ichaels, sup

ra note 152, p. 229; D

odge, sup

ra note 156, at 371-72.

(167) B

uxbaum/M

ichaels, sup

ra note 152, p. 229.

(168) C

awley v. B

loch 544 F.Supp. 133, 135 (1982

).

(169) 

もっとも、従来は、裁判管轄を判断した後に、フォーラム・ノン・コンビニエンスに基づき訴えが却下されていたが、Sinochem

事件の連邦最高

裁判決は、裁判管轄を判断する前に、フォーラム・ノン・コンビニエンスに基づき訴えを却下した。S

ee, Sinochem International C

o. Ltd. v.

Malaysia International Shipping C

orp 549 U.S. 422 (2007

).

(170) G

ulf Oil C

orp. v. Gilbert 330 U

.S. 501 (1947

).

(171) C

apital Currency E

xchange NV

v. National W

estminster B

ank PL

C 155 F. 3d 603 (2nd C

ir. 1998

).

(172) B

uxbaum/M

ichaels, sup

ra note 152, p. 230.

(173) S

ee, e.g., In re A

ir Cargo Shipping Sevices A

ntitrust Litigation 2008 W

L 5958061, 24-30 (E

.D. N

Y 2008

); In re U

rethane Antitrust L

itigation 2010

WL

398094, 7 (D. K

an. 2010

).

(174) 

宗田・前掲注(4)三八四頁。

(175) 

金・前掲注(5)八九頁。

(176) 

奥田・前掲注(4)一九四

一九五頁。

(177) P

reliminary D

ocument N

o.11, sup

ra note 36, p. 60.

(178) D

elvoigt, a.a.O. (F

n. 119

), S. 133; Schnyder, a.a.O. (F

n. 119), R

z. 109.

(179) 

締結地を唯一の加害行為地とする見解として、F

awcett/Torrem

ans, sup

ra note 54, p. 502.

締結地を加害行為地の一つとする見解として、A

shton/

Vollrath, a.a.O

. (Fn. 60

), S. 8; Basedow

, sup

ra note 60, p. 34; D

anov, sup

ra note 60, p. 92; M

ankowski, a.a.O

. (Fn. 60

), S. 801; Wurm

nest, a.a.O.

(Fn. 60

), S. 934f.

(180) 

独占禁止法三条後段は、契約、協定等の名義をもって行われる不当な取引制限を禁止する。﹁不当な取引制限﹂の詳細な定義については、二条六

項を参照。

Page 66: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

同志社法学 

六六巻四号�

一一四

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

一〇五〇

(181) B

asedow, su

pra

note 60, P. 37; Wurm

nest, a.a.O. (F

n. 60

), S. 934.(182) B

asedow, su

pra

note 60, pp. 38-39; Bulst, a.a.O

. (Fn. 65

), S. 405; Withers, su

pra

note 54, at 261; Wurm

nest, a.a.O. (F

n. 60

), S. 935.(183) M

ankowski, a.a.O

. (Fn. 60

), S. 801.

(184) B

asedow, su

pra

note 60, p. 34; Mankow

ski, a.a.O. (F

n. 60

), S. 801f.; Wurm

nest, a.a.O. (F

n. 60

), S. 935.

同様の見解として、W

ithers, sup

ra note

54, at 261.

(185) 

実施地を唯一の加害行為地とする見解として、W

ithers, sup

ra note 54, at 261.

実施地を加害行為地の一つとする見解として、A

shton/Vollrath,

a.a.O. (F

n. 60

), S. 8; Basedow

, sup

ra note 60, p. 34; D

anov, sup

ra note 60, p. 92; M

ankowski, a.a.O

. (Fn. 60

), S. 801; Wurm

nest, a.a.O. (F

n. 60

), S.

934f.

市場支配的地位の濫用については、実施地を加害行為地とする見解として、A

shton/ Vollrath, a.a.O

. (Fn. 60

), S. 8; Faw

cett/Torremans, su

pra

note 54, p. 503.

(186) 

金・前掲注(5)八八

八九頁。

(187) W

ithers, sup

ra note 54, at 261.

(188) B

ulst, a.a.O. (F

n. 65

), S. 405.

(189) B

asedow, su

pra

note 60, p. 34.

(190) W

urmnest, a.a.O

. (Fn. 60

), S. 935.

(191) B

ulst, a.a.O.

(Fn. 65

), S. 405; Leible, a.a.O

.

(Fn. 80

), Art 5 B

rüssel

Ⅰ-VO

Rz. 88a; M

äsch, a.a.O.

(Fn. 80

), S. 515.

同様の見解として、F

itchen,

sup

ra note 54, p. 395.

(192) B

asedow, su

pra

note 60, p. 35; Mankow

ski, a.a.O. (F

n. 60), S. 802; W

urmnest, a.a.O

. (Fn. 60

), S. 935.

(193) B

ulst, a.a.O. (F

n. 65

), S. 405.

(194) B

asedow, su

pra

note 60, p. 35.

(195) M

ankowski, a.a.O

. (Fn. 60

), S. 802.

(196) B

asler Kom

mentar, a.a.O

. (Fn. 116

), Art.137 R

z. 30 [Dasser/B

rei

]; Delvoigt, a.a.O

. (Fn. 119

), S. 133f.; Handkom

mentar, a.a.O

. (Fn. 115

), Art.137

Rz. 16 [Schram

m/B

uhr

]; Schnyder, a.a.O. (F

n. 119

), Rz. 109.

(197) D

elvoigt, a.a.O. (F

n. 119

), S. 133.

Page 67: 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 · 競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地 同志社法学 六六巻四号

(    

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地

同志社法学 

六六巻四号�

一一五

一〇五一

(198) 

金・前掲注(5)八九頁。

(199) 

宗田・前掲注(4)三八四頁、法制審議会国際裁判管轄法制部会﹁法制審議会国際裁判管轄法制部会第三回議事録﹂︹古田啓昌発言︺・前掲注

(21)四頁。

(200) 

奥田・前掲注(4)一九四-

一九五頁。

(201) 

実質法上、この見解が通説である。今村成和﹃独占禁止法入門﹄(有斐閣、第四版、一九九三年)二頁、金井貴嗣ほか﹃独占禁止法﹄(弘文堂、第

四版、二〇一三年)四

五頁、根岸哲=舟田正之﹃独占禁止法概説[第四版]﹄(有斐閣、二〇一〇年)二七

二九頁など。

(202) B

ulst, a.a.O. (F

n. 65

), S.405f.; Mankow

ski, a.a.O. (F

n. 60

), S. 804f.

(203) M

ankowski, a.a.O

. (Fn. 60

), S. 804f.; Münchener K

omm

entar zum E

uropäischen und Deutschen W

ettbewerbsrecht, a.a.O

. (Fn. 87

), Einl. R

z. 846

[Schnyder

].

(204) 

EUにおける見解として、B

ulst, a.a.O. (F

n. 65

), S. 406; Mankow

ski, a.a.O. (F

n. 60

), S. 804f.; Wurm

nest, a.a.O. (F

n. 60

), S. 935.

スイスにおける

見解として、D

elvoigt, a.a.O. (F

n. 119), S. 132; Schnyder, a.a.O

. (Fn. 119

), Rz. 108.

(205) B

uxbaum/M

ichaels, sup

ra note 152, pp. 228-229; D

odge, sup

ra note 156, at 362-72; V

ON K

AL

INO

WSK

I ET A

L., sup

ra note 152, at 163-8-9.

(206) 

多田・前掲注(10)六〇頁、道垣内・前掲注(25)二五〇頁、中西・前掲注(12)一〇三

一〇四頁、芳賀・前掲注(25)一〇四

一〇五頁。

(207) 

渡辺・前掲注(31)一五四頁。

(208) 

日韓共同研究会・前掲注(32)一二八、一三〇

一三一頁。

(209) B

asedow, su

pra

note 60, p. 33; Fitchen, su

pra

note 54, p. 391; Mankow

ski, a.a.O. (F

n. 60

), S. 799; Withers, su

pra

note 54, at 262.

(210) B

asler Kom

mentar, a.a.O

. (Fn. 116

), Art.129 R

z. 27 [Um

bricht/Rodriguez/K

rüsi

]; Siehr, a.a.O. (F

n. 133

), S. 355.

(211) 

中西・前掲注(12)一〇四頁。

(212) 

多田・前掲注(10)六三頁。

(213) 

多田・前掲注(10)六三頁、芳賀・前掲注(25)一〇四

一〇六頁。

(214) B

asler Kom

mentar, a.a.O

. (Fn. 116

), Art.129 R

z. 27 [Um

bricht/Rodriguez/K

rüsi]; Siehr a.a.O

. (Fn. 133

), S. 355.