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発酵食品由来抗がん・抗発酵食品由来抗がん・抗発酵食品由来抗がん・抗発酵食品由来抗がん・抗ウィルスウィルスウィルスウィルス及び及び及び及び抗菌剤抗菌剤抗菌剤抗菌剤
伊藤英晃
工学資源学研究科生命科学専攻・教授
理工学部生命科学科・教授
発酵食品開発研究所・所長
研究の背景研究の背景研究の背景研究の背景
2
ヨーグルトなどの発酵食品は,古来より健康食品と
して広く知られている。
秋田県には,日本酒,納豆,味噌・醤油などの発酵
食品関連産業が多い。
健康食品の一つである納豆の成分に,生体生体生体生体にとってにとってにとってにとって
未知の有効な成分未知の有効な成分未知の有効な成分未知の有効な成分があるかも知れないと思い,解析す
ることにした。
納豆抽出成分によるがん細胞死滅効果納豆抽出成分によるがん細胞死滅効果納豆抽出成分によるがん細胞死滅効果納豆抽出成分によるがん細胞死滅効果
死滅死滅死滅死滅僅かな効果僅かな効果僅かな効果僅かな効果
MTT 法:法:法:法:死細胞検出法の一つ
24時間
分画 B分画なし添加前
納豆分画成分を添加する納豆分画成分を添加する納豆分画成分を添加する納豆分画成分を添加するとととと
細胞細胞細胞細胞はははは死滅死滅死滅死滅
納豆抽出成分のがん細胞死滅効果納豆抽出成分のがん細胞死滅効果納豆抽出成分のがん細胞死滅効果納豆抽出成分のがん細胞死滅効果
納豆からタンパク質抽出
↓
ある方法で分画
↓
がん細胞死滅 (24時間後)
煮豆からタンパク質抽出
↓
ある方法で分画
↓
がん細胞生存 (24時間後)
ヒト子宮頸部がん由来細胞 HeLa細胞
納豆抽出成分納豆抽出成分納豆抽出成分納豆抽出成分(-) 納豆抽出成分納豆抽出成分納豆抽出成分納豆抽出成分(+)
煮豆抽出成分煮豆抽出成分煮豆抽出成分煮豆抽出成分(-) 煮豆抽出成分煮豆抽出成分煮豆抽出成分煮豆抽出成分(+)
ヒト子宮頸部がん由来細胞 HeLa細胞
納豆菌そのものは変化無し
HeLa 細胞細胞細胞細胞(ヒト子宮頚部がん細胞)に(ヒト子宮頚部がん細胞)に(ヒト子宮頚部がん細胞)に(ヒト子宮頚部がん細胞)に対対対対
する納豆する納豆する納豆する納豆菌と煮豆成分の影響菌と煮豆成分の影響菌と煮豆成分の影響菌と煮豆成分の影響
6×107 [CFU/ml] 6×108 [CFU/ml]
24時間
煮豆成分も変化無し
24時間
分画 B
添加前
添加前 分画なし
納豆菌納豆菌納豆菌納豆菌 ・煮豆・煮豆・煮豆・煮豆の添加ではの添加ではの添加ではの添加では変化は見られない変化は見られない変化は見られない変化は見られない
イソフラボンではない!イソフラボンではない!イソフラボンではない!イソフラボンではない!
Raji細胞細胞細胞細胞ヒトバーキットリンパヒトバーキットリンパヒトバーキットリンパヒトバーキットリンパ腫腫腫腫Bリンパ球様細胞リンパ球様細胞リンパ球様細胞リンパ球様細胞
へのへのへのへの納豆抽出物添加納豆抽出物添加納豆抽出物添加納豆抽出物添加
細胞増殖細胞増殖細胞増殖細胞増殖抑制抑制抑制抑制 細胞細胞細胞細胞の完全消失の完全消失の完全消失の完全消失
がん細胞で活性化されているがん細胞で活性化されているがん細胞で活性化されているがん細胞で活性化されている2つのつのつのつの経路経路経路経路では説明がつかないでは説明がつかないでは説明がつかないでは説明がつかない
抗菌ペプチドの
プラス電荷が,
マイナス荷電の
細胞膜に結合
らせん構造が膜
を貫通
細菌の細胞膜を
えぐり取るよう
に孔を開け,内
容物の流出によ
り殺菌
抗菌ペプチドの作用機序抗菌ペプチドの作用機序抗菌ペプチドの作用機序抗菌ペプチドの作用機序
抗菌ペプチド
細菌の細胞膜はフォスファチジルグリセロールとカルジ
オリピンのような酸性リン脂質に富む。これらのリン脂
質の頭部は非常に強く負に荷電している。
納豆納豆納豆納豆由来抗菌ペプチドの抗がん作用由来抗菌ペプチドの抗がん作用由来抗菌ペプチドの抗がん作用由来抗菌ペプチドの抗がん作用
多くのがん細胞表面には,正常細胞と比較し,フォスファ
チジルセリンやムチンなどの陰性荷電分子が高発現する。
抗菌ペプチドの陽性電荷によって,静電相互作用による膜
破壊が誘導される。
納豆納豆納豆納豆
抗菌ペプチド抗菌ペプチド抗菌ペプチド抗菌ペプチド
煮豆煮豆煮豆煮豆
納豆菌納豆菌納豆菌納豆菌
○○○○
XXXX
XXXX
抗菌ペプチド:納豆のみ抗菌ペプチド:納豆のみ抗菌ペプチド:納豆のみ抗菌ペプチド:納豆のみ
納豆保存期間納豆保存期間納豆保存期間納豆保存期間 抗菌ペプチド抗菌ペプチド抗菌ペプチド抗菌ペプチド抗菌ペプチド抗菌ペプチド抗菌ペプチド抗菌ペプチド
製造直後製造直後製造直後製造直後
(出荷直前)(出荷直前)(出荷直前)(出荷直前)
冷蔵庫冷蔵庫冷蔵庫冷蔵庫1111週間週間週間週間
冷蔵庫冷蔵庫冷蔵庫冷蔵庫2ヶ月ヶ月ヶ月ヶ月(廃棄処分)(廃棄処分)(廃棄処分)(廃棄処分)
○○○○
○○○○
○○○○
納豆経納豆経納豆経納豆経時時時時変化による変化による変化による変化による
抗菌ペプチド効果抗菌ペプチド効果抗菌ペプチド効果抗菌ペプチド効果
細菌細菌細菌細菌
肺炎双球菌肺炎双球菌肺炎双球菌肺炎双球菌
緑膿菌緑膿菌緑膿菌緑膿菌
ウィルスウィルスウィルスウィルス
ヘルペスウィルスヘルペスウィルスヘルペスウィルスヘルペスウィルス
がんがんがんがん
固形がん固形がん固形がん固形がん
非固形がん非固形がん非固形がん非固形がん抗菌ペプチド抗菌ペプチド抗菌ペプチド抗菌ペプチド
現在までに確認できた抗菌ペプチド効果現在までに確認できた抗菌ペプチド効果現在までに確認できた抗菌ペプチド効果現在までに確認できた抗菌ペプチド効果
• 納豆には,抗菌ペプチドが含まれている。
• 抗菌ペプチドのプラス電荷が,マイナス荷電の多いがん細胞膜や細菌,ウィルスの殻に結合し,膜破壊膜破壊膜破壊膜破壊を起こす。
• 各種がん細胞に対する抗がん作用,肺炎双球菌,緑膿菌に対する抗菌作用,及び単純ヘルペスⅠ型ウィルスに抗ウィ
ルス作用の効果が確認できた。
• 機能性食品,サプリメント,抗菌,抗ウィルス製品の開発を視野に入れている。
納豆抗菌ペプチドの抗納豆抗菌ペプチドの抗納豆抗菌ペプチドの抗納豆抗菌ペプチドの抗がんがんがんがん・・・・抗菌抗菌抗菌抗菌・及び抗ウィルス作用機構・及び抗ウィルス作用機構・及び抗ウィルス作用機構・及び抗ウィルス作用機構
16
従来技術とその問題点従来技術とその問題点従来技術とその問題点従来技術とその問題点
既に実用化されている抗ウィルス剤としては,
ヘルペスウィルスの増殖を良く制する薬剤として,
アシクロビルがあるが,あくまで増殖抑制であり,
再発等の問題がある。
肺炎球菌ワクチンがあるが,ワクチンの有効期間は5年間とされており,ワクチンの定期接種の必要性がある。
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アシクロビルアシクロビルアシクロビルアシクロビル
ヘルペスウイルスのヘルペスウイルスのヘルペスウイルスのヘルペスウイルスの増殖増殖増殖増殖を抑える薬を抑える薬を抑える薬を抑える薬
ウイルス感染細胞内で活性化し,ウイルスDNA鎖の伸長を停止,ウイルスDNAの複製を阻害。
肺炎球菌ワクチン肺炎球菌ワクチン肺炎球菌ワクチン肺炎球菌ワクチン
肺炎球菌ワクチンは, 1回の接種で約5年間有効。
18
新技術の特徴・従来技術との比較新技術の特徴・従来技術との比較新技術の特徴・従来技術との比較新技術の特徴・従来技術との比較
・納豆由来の抗菌ペプチドは,がん細胞,
肺炎双球菌,緑膿菌,及び単純ヘルペスⅠ
型ウィルスの細胞膜,及び殻を破壊細胞膜,及び殻を破壊細胞膜,及び殻を破壊細胞膜,及び殻を破壊するた
め,がん細胞,肺炎双球菌,緑膿菌,及び
単純ヘルペスⅠ型ウィルスを死滅させるた
め,変異体や耐性菌等が出来ない。
・廃棄処分する納豆からも抗菌ペプチドが
精製可能なため,コスト低減コスト低減コスト低減コスト低減が見込まれ
る。
19
想定される用途想定される用途想定される用途想定される用途
• 本技術の特徴を生かすためには,抗がん
剤,抗菌剤,抗ウィルス剤が考えられる。
• 上記以外に,予防の効果が期待される。
• 例えば,抗菌マスクやアルコールが苦手な
人用の抗菌,抗ウィルススプレー等が考え
られる。
20
実用化に向けた課題実用化に向けた課題実用化に向けた課題実用化に向けた課題
• 現在、基礎研究について特定の細菌,特定
のウィルスについて検討済み。しかし,イ
ンフルエンザ等,他の細菌やウィルスの解
析が未解決である。
• 今後,動物について実験データを取得し,
人に適用していく場合の条件設定を行って
いく。
21
企業への期待企業への期待企業への期待企業への期待
• 未解決の動物実験については,現在,秋田
大学医学部と共同研究を行っており,克服
できると考えている。
• 製薬メーカ-,健康関連企業との共同研究
を希望。
• また,抗菌剤を開発中の企業,食品分野へ
の展開を考えている企業には,本技術の導
入が有効と思われる。