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発達障がいの二次障害
Rabbit Developmental Research医学博士
平岩 幹男
大きいか小さいかは別としてかけらはみんなが
持っている
問題はかけらがトゲになって刺さるかどうか
発達障害のかけら
• 目を合わせて話すことが得意ではない
• 多少なりとも自分なりのこだわりがある
• 話し始めると止められないことがある
• じっとしているだけでいらいらすることがある
• 予定が急に変更されると戸惑うことがある
• 集中力が途切れがちになることがある
• 突然していることを投げ出したくなることがある
対応のゴールはかけらを消すことではなく
トゲによって起きる社会生活上の
困難を減らすこと
今そこにあるトゲだけではなく
将来刺さらないようなトレーニング
問題はトゲが刺さるかどうか:環境も 発達障害とは?
• 発達障害
発達の過程で明らかになる行動やコミュニケーションなどの障害で、根本的な治療は現在ではないが、適切な対応により社会生活上の困難は軽減される障害
発達そのものの障害ではない
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発達障害の種類
• 自閉症スペクトラム障害(ASD)→知的障害を伴う(言葉の遅れがある)→知的障害がない(言葉の遅れがない)
• ADHD(注意欠陥・多動性障害)
• 学習障害
周辺としてトゥレット障害や選択性緘黙など
• これらはしばしば合併する
発達障害の抱える問題
• 行動やコミュニケーションの問題を抱えるので→注意されたり叱られたりしやすい→めったにほめられない→そして二次障害につながる・・キレる
• Self-esteem(自己肯定感、自尊感情)の低下→低下しては行動は改善しない→Life skills training(LST)などの訓練が必要
• 薬物療法だけではなかなかうまくいかない
発達障害は治るか
• 発達障害の特性は消えないだろう→しかし「目立たない」ことはできるかもしれない→それによって暮らしやすくすること
• 原因が明らかでなければ対応できない?→症状に対する特異的治療は今後の課題
• 最終的には成人期に自立を目指すこと→自立している人たちも多い→もし自立が無理でもbetterを目指そう
発達障害で考えること
• 幼児のASDへの個別療育
• ADHDや高機能自閉症などの幼児期~学童期の具体的な対応
• 思春期から成人期に向けた自立課題
• 二次障害としての不登校や精神疾患
• 成人移行と就労支援
• 学習障害の合併、特にディスレクシアへの対応
• 選択性緘黙への対応
• 発達性協調運動障害への対応
自閉症スペクトラム障害(ASD)
Autism Spectrum Disorder
自閉症スペクトラム障害(1)
• 自閉症スペクトラム障害社会性や対人関係の障害(コミュニケーションも)こだわり(常同行動や感覚過敏・鈍麻を含む)
• 脳の機能的障害で「知的能力」にも「症状」にも強弱などを含めて連続性(スペクトラム)がある
• 全体での頻度は1~2%とする報告が多い
• 男子が3~6倍多い
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自閉症スペクトラム障害(2)
• Kannerの自閉症(ASDの25~35%)→1943 Leo Kanner が最初に報告→多くは言葉の遅れ、知的障害と見なされる→療育的対応によって変化がでることもあるが知的課題を抱えたまま成人期に至ることもある
• 高機能自閉症(ASDの65~75%)→1944 Hans Asperger が最初に報告→言葉の遅れはないかあっても軽度→しばしば二次障害で発見される
• 現在わかっている遺伝子で説明できるのは数%以下、今後は増加する可能性が高い
自閉症のブラックイメージに
医療も保健も教育も社会もそして保護者も
染まっているかもしれない
小学校4年生のレベル
• 日常生活で一般的に使用する「読み」「書き」「算数」は→基本的に小学校4年生レベル→読み・書きは語彙と漢字が増える→算数は電卓(スマホ)を使う
• このレベルの確保が生活の自立につながる→先を急ぐより、ここを丁寧に
• 特別支援教育の場合も→ゆっくりだけではなく明確に目標にする
HFASD(高機能自閉症)時にはAsperger症候群
知的には劣っていないのに→会話がうまくつながらない、指示が通らない→友達ができない、うまく遊べない→何かに熱中しはじめると止まらない
という子どもたちがいることを1944年にオーストリアの小児科医Hans Aspergerが最初に報告し、その後色々とわかって来た
たとえば高機能自閉症の集中力
• 疲れを知らない、集中するパワーは、すごい
• 凡人にはまねができない
• しかし子どもの時には、集中力は社会的に必要とされないことで発揮されることが多い
• そのパワーが授業中に発揮されれば・・・障害・・社会的に必要とされていない場合には
• そのパワーが職業に生かせれば・・・・・・才能
思春期以降の高機能自閉症
• 目合わせ、挨拶が苦手→練習すればできるようになる
• 例え話、比喩がわからない、空気が読めない→「ことわざ」を学習する
• 黒白はっきりさせたがる→まあいいかを練習する
• 騙されやすい、裏ルールがわからない→詐欺や性被害などに会いやすい→文字にすること、とりあえず連絡すること
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社会性(社会的相互交渉)の障害
• 人と関わることが苦手→目を見ること、視線を合わせることが苦手
目を見ていると錯覚してもらう→手をつなぐ、体に触る・・苦手
短時間から慣らす→同時に何人かと対応する・・とても苦手
順番に対応する
• 急な変更に対応できない→予定の急な変更・・あらかじめわかるように
こだわり
• 手順や道順にこだわる→いろいろなやり方をマスターする
• 感覚過敏がある→基本は馴化。場合によっては回避→イアーマフ、ヘッドフォン→違和感のない手触りの良いもの
• ひとりごとや反復性行動→場所を選ぶ
想像力の障害
• ここはどんな場所なのかが理解できない→静かにしている場所?騒ぐ場所?→テンションコントロールにはカウントダウン
• 相手がどう感じているかが理解できない→だから自己主張が強いと思われてしまう→話す順序を学習する
• 見ればわかるだろう・・わからない→見なければわからない・・適切な指示が必要
高機能自閉症:その将来は?
• 高機能自閉症では、コミュニケーションが下手なかわりに、正直、まじめ、率直、正義感(my)などが長所
• 向いていない職業としては
→営業マン(特に訪問販売など)、店員
→窓口業務が主な公務員、銀行員など
• 向いている職業としては→技術者、音楽家、芸術家、棋士、コンピューター関
連(SE,インストラクターなど多数)、研究者、教師、
警察官・自衛官、介護、動物関連
ADHD
注意欠陥(欠如)多動性障害
幼児期のADHDは診断を慎重に
• 多動や不注意の症状は普通に見られる→特に男児では
• 衝動性の症状は見分けが難しい→何かが欲しくなれば出ても不思議ではない
• 診断するよりも困り事への介入を→未就学児への薬物治療は勧められない
• その他の原因でも似た症状が出る→児童虐待、保護者との別離、施設収容
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ADHD
• 一次性の症状→不注意性、衝動性、多動性
• これらの症状により社会生活に困難がある
• 2つ以上の場面で6か月以上続いている
• 12歳以下に症状が明らかになる
• 自閉症との併存例もある
• 適切に対応しないと早期から二次症状が出やすい
• 児童虐待でも似た症状になりうる
• てんかん、熱性けいれん、母の喫煙は危険因子
ADHDの治療戦略
• 抱えている社会的困難を理解する
• SST, LSTなどのトレーニングをする
• 家庭・学校などの環境調整をする
• DBDマーチを防ぐ(なっていれば進行を抑える)
• Self-esteemを高める
• 二次障害を予防あるいは治療する
• 症状を軽減するために薬物療法をする
不注意の症状
• 集中できない、注意がそれる→スモールステップ化してできたらほめる
• 努力することをいやがる→スモールステップ化してできたらほめる
• 忘れ物が多い→連絡帳の活用、メモの習慣
• すぐにものをなくす→不必要なものを持たない
ADHDの衝動性のコントロールは生き延びるか落ちるか
セルフコントロールをするか
適切な人的サポートを受けるか
クレジットカードは使わない
衝動性の症状
• 話や列に割り込む→だまっていられない、一番がよい→砂時計:がまんで「ほめられる」
• 突然行動を起こす→行動の原因を考える→問題となる原因をへらす
• 衝動的に手を出す→原因と状況を考えて「ほめて消す」
多動の症状
• 注意をしても止まるのは「その時」だけ
• じっとしているのが苦手→坐っていてもすぐにもじもじ→1分座っていたら「ほめる」から始める→小さなお手伝いをさせてほめる
• 動き回る→本の読み聞かせでも歩き回る→1分座っていたらほめて時間を延ばす
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薬物療法よりは練習
• できなかったことを「場面設定をして練習する」ことで「できてほめられる」ようにしよう
• 不注意の症状や衝動の症状はとかく薬物療法の適応とされがちだが、練習することで「できること」を増やすのが先
• 発達障害があろうとなかろうと基本は同じ
• 叱って子どものself-esteemを下げるより→できるように練習して、ほめて上げる
ADHD:その将来は?
• ADHDを抱えていると、動き回ったり気分を変えることが得意→まるで二人乗り自転車(tandem)
• じっくり取り組むことは苦手
• 得意な職業:セールスマン、営業担当、電話勧誘、マスコミ関係、窓口業務、案内係りなど
• 不得意な職業:技術・設計関係、著述業、教師、警察官、音楽家、プログラマーなど
学習障害
限局性学習症
学習障害で最も多いのは・・
• 発達性読み書き障害(ディスレクシア)→読むことが苦手・・読めないまでスペクトラム→読めないまま放っておくと語彙が増えなくなる→読めなければ書く障害も出てくる→読みの障害:音韻障害が見つかりやすい
「かえる」を反対から言わせて見よう
• 算数障害→しばしば空間認識の障害もある
2+3 5+3 8+3 11-4
ディスレクシア
• ほとんどのケースは診断すらされていない
• 当日の朝食の内容と前日の夕食の内容が言えるのに、国語の点数が低い・・疑ってよい
• ひらがながきちんと読めない
• 音のまとまりとして単語が認識できない
• 放っておくと語彙の習得が遅れる
• 軽症を入れると2%?
• 診断書があれば共通一次の試験時間延長
• スペクトラムなので軽症例から重症例まで
学習障害にこう対応してみたら・・
• ひらがなを間違えずに読む(ICTやカード)
• 音のまとまりとして単語を読む
• 単語読みから文章読みへ→いぬと ねこが あるいてる (30P ゴチック)
• 読みの異なる漢字は熟語で覚える
• フォントを工夫する
• 鳥取大学音読:iphoneもiPadもandroidも:無料
• 教科書、本の読み上げ(DAISY)(Access Reading)
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思春期~青年期における問題点
• 発達障害の基本症状による障害• 二次障害の発生• その他の病態への移行• Self-esteemの問題、自己コントロールの問題• いじめの問題、性の問題、メディアの問題• 就労に向けての問題• 葛藤処理の練習• 移行期医療の問題
• 社会資源の乏しさ
思春期とは何か
• 思春期を通って成人になる
• 明治時代から使われるが起源は不明
• Puberty(pubic hair)が生えてくる(10~15歳)
• Adolescence(Adonisに因む)(10~20歳)
• 国際的には10~21歳が定説に
• 第二次性徴が出てくる(初潮、精通)
• 性ホルモンの分泌が増える
• 自我の発達でも転機を迎える→大きな子どもでも未熟な大人でもない
思春期のNEVER!!
• 問題点にいきなり入ること→問題点はしばしば「触れられたくない」
• 善悪の判断を述べること→多くの場合には子どもたちにもわかっている
• 結論を急ぐこと→話を聞いてもらったと子どもが感じることがとても大切・・結論は子どもが出す
• 短時間で結論を出すこと→子どもは「押し付けられた」と感じる
思春期のMUST!!
• 子どもをほめる・・・達成感を目指す
• 次につなげる・・・急がない→何気ない関係性を強化していく→握手、ハイタッチ、子どもにしゃべらせる
• 相槌を打ちながら子どもの話を聞く→途中で意見を挟まない
• どうするかは子どもと相談して決める
カウンセリングは
• こちらが指導し、伝えることではない
• 同じ目線で話を聞くこと、話ができるような設定をすること、無理して話させないこと
• 自分の言葉で話し始めれば、自分の考えが話せるようになれば、仕事の半分は終わり
• とりあえず聞いて、それから可能なら話し合い
• 善悪のジャッジはいらない、子どもが引く
• また来たい心地よい場所を目指そう
ライフスキルトレーニング
大人になるまでに
できることを増やそう
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砂時計は使える まずは1分間座る練習から
• ちゃんと1時間座っていなさいではなく・・
• まずは1分間砂時計
• それを少しずつ延ばす
• できたらほめる
• 途中で立ったら続きから
• 足を床につける
1分待てたよ!
• いつも会話に割り込んでいた
• 砂時計を見ながら1分間待つことを覚えた
• 待てたら褒めてもらえた
• 途中でそれたら続きから
バスケット法
• ちゃんと片付けなさいではうまくいかない
• ちらかっているものをとりあえずバスケットに
• そこでまずほめる
• バスケットの中の整理は、それからゆっくりと
• 最初は2~3個で練習
• 片付いた状況の写真
あいさつ
• おはようございます
• こんにちは
• さようなら
• いただきます
• ごちそうさま
• ありがとう
• ごめんなさい
「やめて」と「ごめんさい」
• 腕を掴まれた方が「やめて」
• そう言われたら掴んだ方が「ごめんなさい」
• これを交互に10回繰り返す
• 練習は役に立つ
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「どうして(なに?)」を言う
• 気になったことがあって肩をたたかれた
• 叩かれたと思って殴り返した
• 叩かれたときに
「どうして(なに?)」と聞くことができればトラブルは減少する
まずは子どもと練習
心の中で言う(する)練習
• 「もういやだ」「早く帰りたい」「やめろ」「早くしろ」→口に出して言ったらトラブルの原因→心の中で言う「練習」をする→練習しないとできるようにはならない
• 「耳ほじほじ」「鼻ほじほじ」→しているところを見られると嫌われる→心の中で「イメージしてしたつもり」になる→やはり練習しないとできるようにはならない
距離感を保つ
• 対人関係には心理的だけでなく物理的距離感も重要である
• 1m前後の距離が話しやすい
• 体の部分接触も時には有効
心理的距離感と物理的距離感は関連する
自分でクールダウン
• 腹が立った時怒りのエネルギーはものに当たるのではなく
• 自分の両手を握りしめて10数える・・クールダウン
• 失敗したら途中からもう一度
• くりかえすうちに自分なりの方法を編み出すことも多い→ペンダント、耳たぶ、ネクタイ
• 深呼吸も有効
基本症状による社会生活の困難
• 自閉症スペクトラム障害(ASD)→コミュニケーションや対人関係課題→こだわり課題、感覚過敏
• ADHD(注意欠陥・多動性障害)→不注意の課題→多動・衝動の課題
• 学習障害→読み書き算数の障害
思春期以降に二次障害や
社会生活上の困難に繋がりやすいのは
高機能自閉症では
コミュニケーション課題より
感覚過敏
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感覚過敏をめぐって
• 聴覚、視覚、触覚、味覚、嗅覚→過敏も鈍麻も見られる
• 過敏が社会生活上の困難になるなら→少しずつ急がずに慣らそう(馴化)
• 過敏が自分の世界への入口ならば→切り替えることを考えよう
• 過敏は「こだわり」の一部なので→慣れる、切り替えるが基本
• 共感覚(synesthesia)
感覚過敏と感覚鈍麻
過敏 鈍麻
視覚 回転、縞模様、格子 文字・数字の間違い
聴覚 大きな音、特定の音、エアータオル
音声指示が入りにくい、聞こえにくい
触覚 肌触り、洋服のタグ 怪我に気づかない
味覚 味や食感こだわり 噛まない、食べ過ぎ
嗅覚 香水、タバコ 区別がつかない
感覚過敏には馴化か開き直り
• 馴化して慣れた方が生活はしやすい→しかしすべて馴化できるとは限らない
• 物理的に感覚を遮断、減弱→イアーマフ、ヘッドホン、耳栓、プロテクター→鼻つまみ、目隠し、サングラス→オブラート、飲み込む、混ぜ食べ
• 開き直る→できないものはできない→ときどき感覚遮断に逃げ込む→野菜嫌いでも青汁、ビタミンを飲めば良い
• ときどき逃げ込んで時間を稼ぐ
うまくいかなければ
二次障害がやってくる
うつ病・軽症うつ病
• うつ状態は生活の質に影響し、不登校、事故、自殺についても重要な因子である
• 成人では生涯有病率が13人に1人以上(最近では6~7人に1人ともいわれる)
• 睡眠、食欲、意欲低下、倦怠感が代表症状
• 思春期・青年期にも多いといわれている
• 病像が多様化してきた
うつ病
• 従来のうつ病はいわゆるメランコリー親和型(憂うつ気分が続く)
• 最近では非定型うつ病が増えている学校に行っていると憂うつになる入学後に憂うつになる(やる気が出ない)
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うつ病の治療
• カウンセリング→指導することではなく、基本は話を聞くこと
• 身体活動性を上げる→すべての基本のひとつ
• 薬剤→SSRI、三環系、スルピリド、それ以外
• まずは診断すること→診断なく、励まされ、強制されることが多い
身体活動性を上げる
• 動きたくない・・動かない:の悪循環はうつ病を増悪させる。動くことは予防にもなりうる
• 少し汗ばむ程度で十分・・朝がよい
• 可能であれば習慣(ルーチン)にする
• 外に出れなければ家の中でもよい
• 手軽なところでストレッチも
• それによって気分も睡眠も改善する可能性
双極性障害
• Ⅰ型(そう状態がはっきりしている)Ⅱ型(そう状態が軽い)
• 子どもではⅡ型もかなり見られ、うつ病と診断されていることもある
• 状態の移り変わりが早い(phase reversal)• 国際的にはSSRIではなく非定型向精神薬の使用が勧められている(わが国でも保険適応)
パニック障害
• 広場恐怖型(人前に出られない)
• 突然パニック発作に襲われる:予期不安も
• 予期不安への対応は重要
• 基本的にはカウンセリング
• 予期不安を減少させる
• 必要に応じて薬物療法(SSRI,入眠剤)
強迫性障害
• 手を洗う、ドアノブを拭くなどの行動が止まらず社会生活に支障を来たす
• 多発性チック(トウレット障害)の合併もある
• 基本はカウンセリング→多くはそれだけでは無理
• 薬物療法も行うことが多い(SSRI)
• しばしば背後にADHDが見つかる
不登校のリスクは
学力低下
健康不安
社会不適応
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発達障害の不登校問題:現状
• ADHDでは「いじめ」「学業不振」
• 高機能自閉症では「いじめ」「孤立」
• 学習障害では「いじめ」「学業不振」
• いじめの問題は避けて通れない
• 教員による不適切介入もある
• 不登校になる率は高く、高機能自閉症ではひきこもりにつながりやすい
不登校
• 不登校=悪いことではない
• 再登校が解決とは限らない
• 子どもが笑顔でいられること
• 子どもに将来の目標ができること
• 生活の質やself-esteemが高まること
• それが不登校の最終的解決
発達障害といじめ
• 70%が小中学校でいじめの被害を経験
• ADHDでは衝動的な行動が周囲を敵に回す→調子に乗っていじめに参加する場合もある
• 高機能自閉症では「場」が読めないので孤立し、いじめにつながりやすい→時には、それと感じていないこともある→場や状況が把握できないので加害者になると程度がわからない
• 学習障害では学業不振でいじめられる
いじめの加害者と被害者
• 加害者=悪者、被害者=かわいそう→構図は単純ではない
• 子どもたちは被害者にも加害者にもなりうる→発達障害を抱えていても同じ→6人に1人は加害。被害両方の経験がある
• 加害者と被害者には共通点がある→精神保健状況がよくない→不定愁訴が多い→孤独になりやすい
いじめをめぐる問題:対応
• 「いじめ」は隠れて行われることが多い
• 特にADHDでは「ふざけ」、高機能自閉症では「からかい」と認識されやすい
• 保護者を交えて対応を考える。場合によっては医療からの助言やトレーニングも必要
• 学校が対応しないならまず休ませる→法的対応を考えることもある
生活課題のいくつか
トレーニングと教育は
二次障害を減少させる
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小学校4年生のレベル
• 日常生活で一般的に使用する「読み」「書き」「算数」は→基本的に小学校4年生レベル→読み・書きは語彙と漢字が増える→算数は電卓(スマホ)を使う
• このレベルの確保が生活の自立につながる→先を急ぐより、ここを丁寧に
• 特別支援教育の場合も→ゆっくりだけではなく明確に目標にする
社会的妥協
• 自分をコントロールする→テンションをコントロールする
• 見て見ぬふりをする→社会的ルールとの折り合い
• 譲りたくないけど席を譲る、順番を変わる→ユニバーサルデザインとの協調
• 行きたくないけど参加する→つきあいを覚える
• これらは設定して練習する(シミュレーション)
生活の問題(共通)• セルフコントロールを練習する
→セルフクールダウンの練習
• 記録をつける→メモをとる習慣をつける、記憶は時に裏切る
• 社会的妥協を身に付ける→世の中、自分の思い通りには動かない
• 秘密を守る→パスワードや暗証番号を教えない
• 身だしなみを整える→見た目は大切
性の問題:女性
• 月経をめぐる問題:ちゃんと練習する→身長が急に伸び始めたら性教育→使用後は1つずつビニール袋にパック
• だまされやすさに関連すること:話には裏が・・→リベンジポルノの危険性
• 誘われた時どうする:手順は決めておく
• 男性と二人きりで飲みに行かない
アスピーガールの心と体を守る性のルールデビ・ブラウン著 TOYOKAN
性の問題:男性
• 母と一緒に入浴しなくなったら性教育
• 異性や同性への距離感の取り方
• メールではなく、リアルに話す重要性
• 二次障害を起こすとしばしば性暴力が起きる
• 自慰は構わないが時に構造化が必要→やり方も教える、床オナはダメ
• 裏ビデオなどの見方(一人で見ない)
• 思い込みからストーカー
性教育
• 自分を大切にしたいならば相手も大切に!
• 寝た子はちゃんと起こす
• 妊娠予防と性感染症予防の教育ではない→しかし正確な知識は必要→緊急避妊(ポストピル)の知識も
• 「産みたくなった時に安心して安全に産めるようにすること」が大人の役割
• 性の商品化(メイド喫茶なども含む)
• LGBTの理解(当事者のLGBTもある)
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現在の性教育の問題点(1)
• 男女とも自分の体のことを意外に知らない→性教育には体を知ることも含まれる
• 知識がないために陥る罠は避けたい→妊娠や性感染症→しかし知識の供給が性教育ではない
• 性を教えることは「寝た子を起こす」→国際的には「寝た子はきちんと起こす」→知識がないための悲劇は防ぎたい
現在の性教育の問題点(2)
• 学習指導要領と刑法のずれ→法律が教えられない
• 不都合かもしれないが中学生も妊娠→統計はないが相当数が人工妊娠中絶
• 高校生でもクラミジア感染は珍しくない→中学生の人工妊娠中絶もある
• ポストピルをめぐる問題→すべての女性にレイプリスクはある
法律上の性行為同意年齢
• 刑法176条(強制わいせつ罪)の規定においては、男女ともに性的同意年齢は13歳
• 刑法177条(強制性交等罪)にも、男女ともに同じく13歳とする
• 強制性交:暴行や脅迫などによって相手の同意を得ないで性器を被害者の性器、肛門、口腔へ挿入する行為
• 学習指導要領では性交は使えないが中学生でも刑法規定は適用される・・矛盾
中学校学習指導要領NGワード
• 性交→性的接触
• 避妊→妊娠しないためにすること
• 人工妊娠中絶→妊娠を途中でやめるということ
• 言い換えるとしたら以上だが「不自然」
子どもたちを守るためには
• 刑法規定がある以上→学習指導要領で使いにくい言葉があっても→伝えることを考えていくべき
• どう伝えるかを議論することも大切だが→議論している時間に教育したら?→使いにくい言葉を使わなくても最低限のことは伝えていこう
• 性教育をどこまでするかの是非論は目の前の子どもたちには役に立たない
性的嫌がらせ
セクシャルハラスメント(セクハラ)
• 「男性から女性に」が多いが逆もあります→基本的には「異性間」だが「同性間」も
• 言葉によるもの→胸大きいねなどプライベートゾーンを話題にしたり、彼氏いないの変だねと言われたり
• 態度や触りに来ること→胸をじろじろみたり、体に触ろうとしたり
• しばしば交換条件を持ち出されることもあります→胸の写真送ってくれればつきあってあげるよ
• すべてアウトです
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セクハラを受けたと思ったら
• まず記録しましょう→いつ、だれに、どんなことを:具体的に→日時も正確に→スマホなどでの録音もあり
• セクハラをした人間には自覚がありません→本人に直接話すことは多くの場合無駄
• 信頼できる家族、第三者にきちんと話すことです→誰かが声をあげなければ被害者は増えます
性にもさまざまな性がある
L:レスビアン
G:ゲイ
B:バイセクシャル
T:トランスセクシャル
LGBT
• 実際にはレズビアン、ゲイ、バイセクシャルは性的な指向でありトランスセクシャルは性自認
• LGBTは性的な少数者(マイノリティ)とは限らない
• SOGIという概念が国際的に広がりつつある→sexual orientation:性的指向→gender identity: 性的自認
• 国際的な潮流としては「性」としての男女の垣根は低くなっていく
ファッションへの興味が違うように
• ファッションへの興味がそれぞれ異なるように→性への好みも異なっているかもしれない
• 自分の好きなファッションは尊重されたい→性への好みも尊重されるべき
• 異なる性への認識も→あって不思議ではない→そのために不利益を受けるべきではない→尊重されることは尊重すること
SNS、メールのリテラシー
• SNS(Lineを含む)、メールは必ず下書きする→読み直してから投稿する
• 5分ルールには乗らない
• SNSやメールで批判はしない
• TwitterやFacebookは間違ったと思ったら消す→それでも残ることがある
• 自分の部屋で撮った写真は送らない→送った写真は一生残ってしまう(リベンジポルノ)
• 寝ている間にスマホを居間に置くことが目標
ICT(information and communication technology)
• ICTは社会で生きていくのに必須
• 苦手だけどICTなら出来るならICTに任せよう→大人になればそれで生活できる
• 子どもたちはICTに興味津々
• 最初からアルファベット入力で!
• タブレットは読む障害にも書く障害にも使える
• ゲームをする人?作る人?
• プログラミングの学習は小学校に入れば可能
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お金の計算を覚える
• 出来るかどうかで時給にも自立にも影響する
• コインには5の単位がある(5円50円500円)
• 実生活ではお金の足し算より→指定した金額を揃える方が重要
• ソフトウェアも使える→お金の学習1、お金の学習2、コインクロス
• 紙幣3種類はコインができてから
• プリペイドカードでの練習もある
金銭管理
• 記録する習慣は小学生から(小遣い帳は基礎)
• 予算を立てることの重要性(計画性を作る)
• 見えるお金と見えないお金→クレジットカードはプリペイド→スマホゲームなどの課金は危ない
• 努力しないで儲かる話は「ない」
• 自分のお金の話を他人にしない
• お金を稼ぐ(お手伝い、アルバイト)
自己管理
• セルフコントロール
• 朝起きて、夜寝るまでの1日のルーチン
• 栄養、清潔の管理
• 友人関係のつくり方
• パートナーの選び方
• 一人暮らしの問題、1週間の一人旅
• 適切な余暇活動→何をしてもいい時間は混乱しやすい→作業の目先を変えるだけでも十分なことも
ICT(information and communication technology)
• ICTは社会で生きていくのに必須
• 苦手だけどICTなら出来るならICTに任せよう→大人になればそれで生活できる
• 子どもたちはICTに興味津々
• 最初からアルファベット入力で!
• タブレットは読む障害にも書く障害にも使える
• ゲームをする人?作る人?
• プログラミングの学習は小学校に入れば可能
インターネット依存性(中毒)
• オンラインを含むゲーム依存(昼夜逆転)
• You Tube 依存
• SNSやメールを含むコミュニケーション依存
• いわゆるネットサーフィンへの依存
• プログラミングなど指向性の高い依存
• Internet addiction test (IAT)→20~100点に分布、40点以上要注意http://www.kurihama-med.jp/tiar/tiar_07.html
将来を考える
• 子どもたちでは25歳のときに何をしているか
• 大人たちの場合には3年後、5年後
• 具体的に考えよう→どうやって食べて行くか→どんなところで生活するか→そのためには何が必要か
• 今のことだけではなく、将来目標が大切
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子どもから大人へということ
• 15歳で義務教育が終わる
• 18歳で児童が終わる
• 20歳で成人になる→年齢とともに利用できる資源は減少する
• 小児科の初診は多くは15歳まで→再診もそうなっていることがあるが・・→15歳~20歳は二次障害の併発にも注意
• 米国ではmedical homeのシステムがある岡明・平岩幹男監訳:Autism:米国小児科学会編 小児医事出版
成人ケアへの移行
• 社会生活上の困難を抱えているならば→サポート資源は必要
• 医療資源は途中で切れやすい→20歳までは継続で見るべきだと思うが→多くの医療機関はその前に診療をやめる→思春期~青年期は二次障害リスクも高い
• 行政・福祉の資源は乏しい→年齢とともに支援は減少する
• 成人ケアは結局医療か就労支援に限られる
GOAL:最終目標
• 自分に自信の持てる子(self-esteem)の高い子どもに育てる
• 社会で生きていけるように育てる→社会生活習慣を身につける→自分で稼げるようにしよう:自立を目指そう
• すべての対応や療育はこのためにある
• 発達障害だけではなくすべての子のために
大人になって自立すること
十分にはできなくてもそれに
近づくこと
自立とは
• 何でも自分でできるようになることではない
• 基本的な生活習慣を身に付ける→生活習慣、身の回り(掃除、洗濯、炊事)
• 基本的な収入を確保する
• 何より大切なのは→頼める、相談できる場所をなるべく多く見つける→1か所だったり少なかったらリスクが大きい→それが使えるようにしておく
子どもたちが年を重ねるときに
大人に向けての
階段を上る手助けをする