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政策提言の作り方のポイント
1.これまで作成してきた提言を紹介します
これまで強い産業構造創出委員会で作成してきた提言について幾つかご紹介します。作成した時期や提出先などによって若干異なる部分がありますが、基本的には一つの提言について、現状、問題、提言内容、効果を、わかりやすく記載することを心がけています。
関連法令 労働基準法
現状 中小企業が労働者に支払う残業代が大企業並みに引き上げられ、企業の負担が増えると考えられる。
問題点 労働時間は長いが、労働生産効率が伸び悩んでおり、少子高齢化による労働需給減少に対応するために、効率よく生産できる雇用制度が求められている。
提案内容 労働者が労働時間を貯蓄しておける制度。従来の均等配分時間原則とは大きく異なり、通常の労働時間を繁忙期などに配分することを可能にする。
想定される経済的効果
企業は労働時間を減らさずに、労働需要の短期的な変動に対応する自由度が高まり、残業に必要な追加的な手当の支払いの必要がなくなる。また、人材活用の柔軟度が向上し、生産性向上による企業収益増に繋がる。
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例)生産性向上へ向けた労働時間貯蓄制度の導入
以下は強い産業構造創出委員会で作成した提言の一例。まずは概要を記載し、その後、証拠資料を添付している。
1-2.現状
中小企業が労働者に支払う残業代が大企業並みに引き上げられ、企業の負担が増えると考えられる。
時間外労働に対しての賃金負担が増大していく。
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※平成31年4月1日から、中小企業における月60時間超の時間外労働への割増賃金率の適用猶予が廃止される。平成22年の労働基準法改正で1ヶ月あたり60時間を超える時間外労働に対して5割の割増率で計算した割増賃金を支払うことが決定されたが、中小企業は当面の間割り増し率の適用が猶予されていた。平成26年8月ごろから猶予を見直すことが検討されていたが、平成31年の4月1日から割増賃金率の適用猶予の廃止が決定した。
1-3.問題点
労働時間は長く、労働生産効率が伸び悩んでおり、少子高齢化による労働需給減少に対応するために、効率よく生産できる雇用制度が求められている。
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上記表のように、日本に比べドイツの労働時間は短いが、左記表の通りドイツの生産性は高い
出典:(日本生産性本部http://www.jpc-net.jp/intl_comparison/)
1-4.提案内容
労働者が口座に労働時間を貯蓄しておける制度。従来の均等配分時間原則とは大きく異なり、通常の労働時間を繁忙期などに配分することを可能にする。
ドイツでは、企業と従業員は通常の労働時間の強い拘束から解放された。従業員は時間を積み立て、職場外での活動に自由に使うことが可能となった。他方、企業は残業に必要な手続きや追加的な手当の支払いなどの制約を受けなくてすむようになった。また、労働需要が変動しても、企業は投入する労働力の調整を、従業員数ではなく労働時間の調整によって実現することが可能となったのである。
「より短く」から「より柔軟」へ
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労働時間貯蓄制度の導入企業に制度維持のための
補助金支給
職場で定めた労働時間と、実際に働いた時間の差を勤務先の口座に積み立て、後から従業員が有給休暇などに振り替えて利用できる仕組み。企業は残業時間を増やさず、生産調整が出来る。
貯蓄
2.提言の作り方
強い産業構造創出委員会がこれまでどのように提言を作成してきたか、手順をお伝えします。ただし、これはあくまで強い産業構造創出委員会が試行錯誤してやってきたことであり、絶対的なものではありません。
①提言のもととなる情報を集める。
様々なメディアから情報収集。以下ではシミュレーションとして石川県金沢市に対しての政策提言を作成する。まずは問題点や改善点、論点などいろいろな情報を集める。金沢についての市が公表している資料や有識者の論文、レポート、個人ブログなどいろいろなヒントから探す。基本的には、最初はアイデアをたくさん出す。徐々に実現可能性が高く、行政に対する提言になりそうなテーマに絞られていくので、最初はとにかく数をたくさん出す。
例)・宿泊施設が足りない・新幹線効果が薄れてきている・大学が多いのでそれを活かしたまちづくりが必要・新しい価値と文化の両立が大事・若者の流出・まちなかに大きなコンベンションセンターがない・英語の案内サインが少ない・2度・3度と観光に来る魅力がない
なんでもいいので目についたものを、たくさん出す
②様々な問題点等を列挙して提言の候補を選定する
集めたアイデアをメンバーで取捨選択。明らかに提言にならないものなどあれば除外する。「つよさん」でも出したアイデアの殆どが却下になったこともある。
「大学が多いのでそれを活かしたまちづくり」とか「新しい価値と文化の両立」
上記2例のように、論点があいまいなものは、具体的な提言を作りにくいので除外するか論点を明確にしてみる。
例えば、「大学が多い」のに「若者が流出している」という点に着目して「大学が多いのに、学生が卒業後が定着しない」なら、その原因と対策が提言になるかもしれない。
②証拠を探す
提言の候補がいくつか決まったら、それらが正しい情報かどうか根拠を確かめる。ネットの情報には根拠が見つからないもの、数値化できないもの、間違っているものもたくさんある。
例えば以下のような資料が見つかる。これには金沢には大学生が多いのに卒業すると地元に帰ってしまう学生が多い、というような一節がある。
金沢型創造産業を考える研究成果報告書 平成16年10月http://www4.city.kanazawa.lg.jp/data/open/cnt/3/12482/1/1D.pdf
③さらに証拠を探す
前ページの資料だけでは根拠としては薄弱。出典も不明であるし、データが古いのでさらに補強する資料がないか探してみる。この作業中、あまりに資料がないものや難解すぎる提言は除外することとなる。今回の例では以下のような資料が見つかった。
金沢市人口ビジョン 平成27年10月http://www4.city.kanazawa.lg.jp/data/open/cnt/3/22560/1/jinnkoubijyonn.pdf
④さらに調査し提言にしていく
③の資料で根拠は見つかったが、原因がわからないと提言を作ることができないので、提言につながりそうな資料を探す。
今回の例の場合、探してみると「北陸地域における中小企業の雇用に関する調査及び研究(平成28年3月)」という資料がみつかった。http://www.hiac.or.jp/works/pdf/H27koyou_houkoku.pdf
この指摘の妥当性を検討し、事実であるならば、学生への機会の提供を促進するようなアイデアがあれば提言になる可能性がある。
⑤提言を考え、補強する
テーマが絞り込まれてきたら、そのテーマについて県外や国外で似通った例がなかったかの事例や、研究論文、造形の深いメンバーがいれば聞き取りするなどして提言内容を補強する。全く前例がない、理論の裏付けもない、賛同する人もいないような突飛すぎる提言に説得力をもたせるのは難しい。
冒頭で紹介した「労働時間貯蓄制度」の提言ではドイツの前例を参考にしています。前例や研究論文の内容を、金沢にあわせて修正するなどして、新たな提言が作れるかもしれない。
⑥提言内容を確定し、まとめる
提言を確定し、それまで集めた資料を元に、提言の背景と効果をまとめる。その後、根拠資料を作成する。
⑦作成した提言をブラッシュアップする。
委員会内で作成した提言を更にブラッシュアップしていく。以下のような方法が考えられる。
◯ JCメンバーや知人などで、提言内容に該当する業界の方の話を聞いて、妥当な提言になっているのか確認する
◯ 有識者や政治家に確認し、提言内容に不備がないかどうか確認する。
このように外部の意見を聞いて修正する、という作業を繰り返して完成させる