12
運動疫学研究 2018; 201: 37-48. Copyright c 2018 by the Japanese Association of Exercise Epidemiology 37 児童・生徒における身体活動関連指標の 47 都道府県間の比較 ―“REPORT CARD ON PHYSICAL ACTIVITY FOR CHILDREN AND YOUTH” に基づく国際指標を用いた検討- 田中 千晶 1) 安部 孝文 2) 岡田 真平 3) 田中 茂穂 4) 奥田 昌之 5) 1)桜美林大学総合科学系 2)島根大学地域包括ケア教育研究センター 3)公益財団法人身体教育医学研究所 4)国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所国立健康・栄養研究所栄養代謝研究部 5)山口大学大学院理工学研究科環境共生系学域 【要約目的:本研究の目的は,国際指標に基づいて 47 都道府県の児童・生徒の身体活動の関連指標の 都道府県間差を性別に検討することであった。 方法:“Report Card on Physical Activity for Children and Youth”において国際的な指標とされている身体 活動関連指標について,47 都道府県の児童・生徒の代表的なデータを用いて,各指標について基準を満 たす者の割合を算出し,それに基づいて,各指標の等級付けを性別に行った。 結果47 都道府県で活動的な移動手段および体型の等級は, A B であった。組織化されたスポーツ への参加は BC,体力は BD,座位行動は CD であった。家族および仲間の影響は D あるいは F であった。日常の身体活動量と活動的な遊びは評価ができなかった。性差をみると,女子の等級は男子 に比較して,組織化されたスポーツへの参加と家族および仲間の影響はいずれの都道府県でも,活動的 な移動手段は,一部の地域において低かった。男子の座位行動の等級は,いずれの都道府県でも女子に 比較して低かった。 結論:体力を除く各指標の等級の地域間差は概して小さかった。しかし,一部の指標の等級はいずれ の地域でも低く,改善が必要である。また,組織的なスポーツへの参加,家族および仲間の影響および 座位行動,一部の都道府県の活動的な移動手段に性差があり,地域ごとに性差を考慮した対策の必要性 が示唆された。 Key words:運動,性差,地域,家族,スクリーンタイム 1.緒 子ども・青少年において,日常の身体活動量は, 生活習慣病の予防をはじめ健康の保持・増進にと って重要な要素の 1 つとされ,世界保健機関によ る国際的なガイドラインにより「1 日当たり 60 以上の中高強度の身体活動を行うこと」が推奨さ れている 1) 。しかし,世界 105 か国の中学生の 80.3%がそのガイドラインを満たしていない 2) このような世界的な不活動を解決するための国際 的な取り組みの 1 つとして,2014 年に国際機関 Active Healthy Kids Global Alliance が結成された 3) 2016 年には,子ども・青少年の身体活動の現状や サーベイランスシステムの状況および変動要因 家族および仲間の影響などについて,共通の指 標および枠組みを用いて等級づけを行った 38 か国 の“The Report Card on Physical Activity for Children and Youth”が公表されている 4) 。その結果,日常 全般の身体活動量と座位行動の 38 か国の平均等 級は 5 段階評価のうち下から 2 番目の D 評価であ った。また,収入の低い国は,概して,高収入の 国に比較して身体活動,活動的な移動手段および 座位行動の等級が優れていたが,家族や仲間の支 援などに関連する指標は劣っていたことが報告さ れている 4) 。このように,共通指標を定めそれら の結果を比較検討することにより,国際的な課題 の検討が行われ,現在,参加国を増やして更なる 連絡先:田中千晶,桜美林大学総合科学系,〒194-0294 東京都町田市常盤町 3758[email protected] 投稿日:2018 1 31 ,受理日:2018 4 13

児童・生徒における身体活動関連指標の 47 都道府 …jaee.umin.jp/REE/J/20_1_37.pdf方法:“Report Card on Physical Activity for Children and Youth”において国際的な指標とされている身体

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Page 1: 児童・生徒における身体活動関連指標の 47 都道府 …jaee.umin.jp/REE/J/20_1_37.pdf方法:“Report Card on Physical Activity for Children and Youth”において国際的な指標とされている身体

運動疫学研究 2018; 20 1 : 26-36. http://jaee.umin.jp/REE.html

36

【Practice Article】

Global Trends in Evaluation Methodology of Physical Activity Questionnaires for Children and Adolescents

Tetsuhiro Kidokoro1), Chiaki Tanaka2), Shigeho Tanaka3), Motohiko Miyachi4),

Shigeru Inoue5), Takafumi Abe6), Koya Suzuki7)

Abstract

Objective: Understanding which physical activity questionnaires are commonly used globally could help in studies of international comparisons in the future. This study aimed to summarize the global trends in the evaluation methodology of physical activity questionnaires for children and adolescents.

Methods: Literatures from 38 countries that participated in “The Report Card on Physical Activity for Children and Youth (Report Card)” were identified. Evidence to grade the overall physical activity levels in each country was collected to summarize the evaluation methodology of physical activity questionnaires for children and adolescents.

Results: The Health Behaviour in School-aged Children (HBSC) questionnaire was used most frequently among the 38 countries (12 countries, 31.6%). The Global School-based student Health Survey (GSHS) questionnaire was the second popular questionnaire used in 6 countries (15.8%). In both HBSC and GSHS questionnaires, participants were asked to respond with “the number of days in which they achieved 60 minutes/day of moderate to vigorous physical activity (MVPA)”. On the other hand, several questionnaires contained “frequency” and “volume/time” of MVPA (IPAQ, GPAQ, PAQ-C/A, SHAPES, CLASS, AQuAA); however, only a few countries used those questionnaires.

Conclusion: The present study showed that evaluating the frequency of achieving 60 minutes/day of MVPA (e.g., HBSC and GSHS) was the most frequently used question to evaluate the overall physical activity in children and adolescents among 38 countries.

Key words: school-aged children, exercise, evaluation method, trend, Report Card

1)Institute of Health and Sports Science & Medicine, Juntendo University, Inzai, Japan 2)Division of Integrated Sciences, J.F. Oberlin University, Machida, Japan 3)Department of Nutrition and Metabolism, National Institute of Health and Nutrition, National Institutes of Biomedical

Innovation, Health and Nutrition, Tokyo, Japan 4)Department of Physical Activity Research, National Institute of Health and Nutrition, National Institutes of Biomedical

Innovation, Health and Nutrition, Tokyo, Japan 5)Department of Preventive Medicine & Public Health, Tokyo Medical University, Tokyo, Japan 6)Center for Community-Based Healthcare Research and Education (CoHRE), Shimane University, Izumo, Japan 7)Faculty of Health and Sports Science, Juntendo University, Inzai, Japan

運動疫学研究 2018; 20 1 : 37-48. Copyright ○c 2018 by the Japanese Association of Exercise Epidemiology

37

【資 料】

児童・生徒における身体活動関連指標の 47都道府県間の比較 ―“REPORT CARD ON PHYSICAL ACTIVITY FOR CHILDREN

AND YOUTH” に基づく国際指標を用いた検討-

田中 千晶 1) 安部 孝文 2) 岡田 真平 3)

田中 茂穂 4) 奥田 昌之 5)

1)桜美林大学総合科学系 2)島根大学地域包括ケア教育研究センター 3)公益財団法人身体教育医学研究所 4)国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所国立健康・栄養研究所栄養代謝研究部 5)山口大学大学院理工学研究科環境共生系学域

【要約】目的:本研究の目的は,国際指標に基づいて 47都道府県の児童・生徒の身体活動の関連指標の都道府県間差を性別に検討することであった。 方法:“Report Card on Physical Activity for Children and Youth”において国際的な指標とされている身体

活動関連指標について,47都道府県の児童・生徒の代表的なデータを用いて,各指標について基準を満たす者の割合を算出し,それに基づいて,各指標の等級付けを性別に行った。 結果:47都道府県で活動的な移動手段および体型の等級は,A+~Bであった。組織化されたスポーツ

への参加は B~C,体力は B~D,座位行動は C~D+であった。家族および仲間の影響は D-あるいは Fであった。日常の身体活動量と活動的な遊びは評価ができなかった。性差をみると,女子の等級は男子

に比較して,組織化されたスポーツへの参加と家族および仲間の影響はいずれの都道府県でも,活動的

な移動手段は,一部の地域において低かった。男子の座位行動の等級は,いずれの都道府県でも女子に

比較して低かった。 結論:体力を除く各指標の等級の地域間差は概して小さかった。しかし,一部の指標の等級はいずれ

の地域でも低く,改善が必要である。また,組織的なスポーツへの参加,家族および仲間の影響および

座位行動,一部の都道府県の活動的な移動手段に性差があり,地域ごとに性差を考慮した対策の必要性

が示唆された。 Key words:運動,性差,地域,家族,スクリーンタイム

1.緒 言

子ども・青少年において,日常の身体活動量は,

生活習慣病の予防をはじめ健康の保持・増進にと

って重要な要素の 1つとされ,世界保健機関による国際的なガイドラインにより「1日当たり 60分以上の中高強度の身体活動を行うこと」が推奨さ

れている 1)。しかし,世界 105 か国の中学生の80.3%がそのガイドラインを満たしていない 2)。

このような世界的な不活動を解決するための国際

的な取り組みの 1 つとして,2014 年に国際機関Active Healthy Kids Global Allianceが結成された 3)。

2016年には,子ども・青少年の身体活動の現状やサーベイランスシステムの状況および変動要因

家族および仲間の影響など について,共通の指

標および枠組みを用いて等級づけを行った 38 か国の“The Report Card on Physical Activity for Children and Youth”が公表されている 4)。その結果,日常

全般の身体活動量と座位行動の 38 か国の平均等級は 5段階評価のうち下から 2番目の D評価であった。また,収入の低い国は,概して,高収入の

国に比較して身体活動,活動的な移動手段および

座位行動の等級が優れていたが,家族や仲間の支

援などに関連する指標は劣っていたことが報告さ

れている 4)。このように,共通指標を定めそれら

の結果を比較検討することにより,国際的な課題

の検討が行われ,現在,参加国を増やして更なる

連絡先:田中千晶,桜美林大学総合科学系,〒194-0294 東京都町田市常盤町 3758,[email protected] 投稿日:2018年 1月 31日,受理日:2018年 4月 13日

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運動疫学研究 2018; 20 1 : 37-48. http://jaee.umin.jp/REE.html

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国際比較研究が進められている 3)。日本について

は,初版の“The 2016 Japan Report Card on Physical Activity for Children and Youth” 以下,2016 Japan Report Card により,日本全体の子ども・青少年の課題は明らかとなった 5)。しかし,国内において

子ども・青少年の不活動を解決するためには,地

域 都道府県や基礎自治体 の実情に応じた具体的

な対策を講じる必要があり,地域単位の実情を明

確にすることが重要である。平成 28 年度の国民健康・栄養調査では,成人における歩数などの主

な生活習慣の状況や Body mass index BMI について,都道府県別に年齢調整を行い,高いほうから

低いほうに 4区分に分け,上位群と下位群の状況を比較している 6)。その結果,歩数,BMI で,それぞれ上位群と下位群の間に有意な差がみられた

ことが報告されている 6)。そのため,成人同様,

日本人の子ども・青少年の身体活動やその変動要

因にも地域差があるかもしれない。 第 2期「スポーツ基本計画」では,スポーツを

通じた女性の活躍促進がスポーツ振興に関する施

策の 1 つとして挙げられている 7)。しかし,2016 Japan Report Card

5) では,他国同様,等級に関する

性別の検討はなされていない。前述の身体活動量

の国際比較において,女子は男子に比較して不活

動であることが報告されている 2)。一方,日本全

国の子ども・青少年における日常の身体活動量の

状況は不明であるが,東京都教育委員会が実施し

た平成 23 年度東京都児童・生徒の日常生活活動に関する調査によると,日常の歩数は,男子より

も女子で少なかったことが報告されている 8)。そ

のため,より地域の現状を明確にするため,性差

の検討が必要である。 そこで,本研究の目的は,児童・生徒の身体活

動に関する地域課題を明らかにするために,世界

共通指標を用いた 2016 Japan Report Card 5) の枠組

みを基盤とし,身体活動などの行動指標 日常生活

全般の身体活動量,座位行動など ,健康関連指標

体力,体型 および身体活動に影響を及ぼし得る

要因 家族および仲間の影響 について,47の都道府県それぞれを代表する調査データを用いて,都

道府県間差を男女別に検討することとした。

2.方 法

2-1.評価指標 本研究は,2016 Japan Report Card 5) の枠組みを,

原則として踏襲した。各国の Report Cardは,子ども・青少年の日常生活全般の身体活動量などの行

動指標,健康関連指標やその変動要因としての環

境指標から構成されている 3)。 先ず,47都道府県別のデータが得られる指標に

ついて検討した。その結果,2016 Japan Report Card 5)

で用いた学校,地域社会と構築環境および政府戦

略と投資については,国としての指標であり,ま

た都道府県間の共通の尺度がないため,本研究で

は指標から除外し,指標 1:日常生活全般の身体活動量,指標 2:組織化されたスポーツへの参加,指標 3:活動的な遊び, 指標 4:活動的な移動手段,指標 5:座位行動,指標 6:体力,指標 7:体型,および指標 8:家族および仲間の影響の 8 つを指標として採用した。 2-2.データの検索 本研究で用いた調査は,47都道府県の性別のデ

ータが公開されている,1)スポーツ庁の全国体力・運動能力,運動習慣等調査 9-12),および 2)文部科学省の学校保健統計調査であった 13)。2016 Japan Report Card 5) では,4歳からのデータを用いたが,本研究では,学校保健統計調査の 5歳児からのデータを除いて幼児期の 47 都道府県のデータは存在しなかった。そこで,全国体力・運動能力,運

動習慣等調査における都道府県のデータは,小学

校 5年生および中学校 2年生のデータを,学校保健統計調査については小学校 1 年生から中学校 3年生のデータを用いることとした。データが得ら

れた指標について,スポーツ庁のデータにおける

指標 2:組織化されたスポーツへの参加については小学校 5年生のみのデータ,他の指標については,小学校 5年生および中学校 2年生のデータを用いた。また,用いたデータの年度は,2016 Japan Report Card

5) に合わせ,平成 27年度とした。 なお,

指標 4:活動的な移動手段については,平成 27年度のスポーツ庁の質問票にはみられず,平成 28年度の質問票にのみみられたことから,平成 28 年度のデータを用いた 11,12)。 2-3.等級付けの方法 指標 1:日常生活全般の身体活動量について,

国による推奨値は策定されていないことから,世

界保健機関による国際的な身体活動量のガイドラ

インである「1日当たり 60分以上の中高強度の身体活動を行う」の生徒の割合を検討した 1)。指標 2:

運動疫学研究 2018; 20 1 : 37-48. http://jaee.umin.jp/REE.html

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組織化されたスポーツへの参加の状況について,

国による推奨値は策定されていないことから,組

織化されたスポーツへの参加者の割合を検討した。

指標 3:活動的な遊びに関する,国による推奨値

は策定されていないことから,38 か国の“The Report Card on Physical Activity for Children and Youth”の基準として用いられた,「非構造化 非組

織化された活動的な遊びを 1 日数時間実施してい

る生徒の割合」を検討した 4)。指標 4:活動的な移

動手段の推奨値は策定されていないことから,徒

歩あるいは自転車通学の生徒の割合を検討した。

指標 5:座位行動についても,国による推奨値は

策定されていないことから,国際的なガイドライ

ンである「テレビ・ビデオの視聴時間,座ったま

までのゲーム,コンピューターの使用などの余暇

としての電子媒体の使用を 1 日 2 時間未満」に基

づき等級を検討した 14-16)。指標 6:体力は,体力

の総合評価の A および B の割合を合算した。 指

標 7:体型については,肥満傾向児および痩身傾

向児の出現率を合算した。指標 8:家族および仲

間の影響について,成人に関する都道府県別のデ

ータがみられないことから,本研究では,スポー

ツ庁の全国体力・運動能力,運動習慣等調査にお

ける「家の人と運動する頻度」が週 1 回以上の割

合を検討した 添付資料 1 。 各指標の等級は,2016 Japan Report Card 5) では,

5 段階および「データが存在しない」の 6 つでな

されている。2016 Japan Report Card5) と同年に発行

された他国の Report Card では,各等級を更に 3 段

階 例:A+,A および A- に分け,より詳細な検

討を行っている国もみられた 4)。そこで,本研究

では,アジアの国の 1 つであるタイの Report Cardに基づき以下のとおり等級付けを行った 17)。

子どもおよび青少年の大部分が該当する: A+: 96~100%,A: 86~95%,A-: 81~85% 子どもおよび青少年の半分以上が該当する: B+: 76~80%,B: 66~75%,B-: 61~65% 子どもおよび青少年のおよそ半分が該当する: C+: 56~60%,C: 46~55%,C-: 41~45% 子どもおよび青少年の半分以下が該当する: D+: 36~40%,D: 26~35%,D-: 21~25% 子どもおよび青少年の僅かが該当する: F: 0~20% 等級を評価するためのデータがない,あるいは,

推奨値がない場合: INC Incomplete data combined with lack of an

evidence-based recommendation また,指標ごとに 47 都道府県の平均,標準偏差

を求めた。各都道府県の割合のばらつきを評価す

るため,割合 p は二項分布をすると仮定し,p±2×square root p 1-p 47 の範囲から外れた場合,

ばらつきが大きいとした。

3.結 果

各指標の等級を,全対象者および男女別に

Table1 に示した。指標 1:日常生活全般の身体活

動量および,指標 3:活動的な遊びに関するデー

タは,2016 Japan Report Card 5) で用いた以降の年度

についてもデータは存在しなかったため,INC と

した。また,データの得られた 6 指標について,

最も高い等級と最も低い等級の都道府県について,

Table 2 に示した。 指標 2:組織化されたスポーツへの参加の状況

については,都道府県別の等級は「B~C」の範囲

にあった(Table 1, 2)。男女別では,すべての都道

府県において男子の等級は女子より高かった。ま

た,男女ともに最も等級が高かったのが熊本県 男

子:A-,女子:B- ,最も等級が低かったのが高

知県 男子:B-,女子:C- であった。また,女子

では北海道,宮城県,茨城県,岡山県および沖縄

県が低かった C- 。 指標 4:活動的な移動手段については,都道府

県別の等級が「A+~B」の範囲にあった(Table 1, 2)。男女別では,男子の等級はすべての都道府県

において,女子と同じか,高かった。男女ともに

最も等級が高い「A+」は埼玉県,東京都,神奈川

県,愛知県,大阪府および兵庫県であった。一方,

男女ともに最も低い等級の「B」は青森県,岩手県,

秋田県および沖縄県であった。 指標 5:座位行動に関する都道府県別の等級は

「C~D」の範囲にあった。最も高い等級の「C」が

みられたのは,宮崎県であった。最も低い等級の

「D」がみられたのは,27 県であった(Table 1, 2)。男女別ではいずれの都道府県でも,男子の等級は

女子より低かった。男子で最も高い等級の「D+」

がみられたのは,宮崎県であった。最も等級が低

かった「D-」が 18 道府県でみられた。その他の

都道県では,「D」であった。一方,女子で最も等

級が高かったのは,宮崎県の「C+」であった。ま

た,最も等級が低かったのは,11 道府県の「D+」

であった。

Page 3: 児童・生徒における身体活動関連指標の 47 都道府 …jaee.umin.jp/REE/J/20_1_37.pdf方法:“Report Card on Physical Activity for Children and Youth”において国際的な指標とされている身体

運動疫学研究 2018; 20 1 : 37-48. http://jaee.umin.jp/REE.html

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国際比較研究が進められている 3)。日本について

は,初版の“The 2016 Japan Report Card on Physical Activity for Children and Youth” 以下,2016 Japan Report Card により,日本全体の子ども・青少年の課題は明らかとなった 5)。しかし,国内において

子ども・青少年の不活動を解決するためには,地

域 都道府県や基礎自治体 の実情に応じた具体的

な対策を講じる必要があり,地域単位の実情を明

確にすることが重要である。平成 28 年度の国民健康・栄養調査では,成人における歩数などの主

な生活習慣の状況や Body mass index BMI について,都道府県別に年齢調整を行い,高いほうから

低いほうに 4区分に分け,上位群と下位群の状況を比較している 6)。その結果,歩数,BMI で,それぞれ上位群と下位群の間に有意な差がみられた

ことが報告されている 6)。そのため,成人同様,

日本人の子ども・青少年の身体活動やその変動要

因にも地域差があるかもしれない。 第 2期「スポーツ基本計画」では,スポーツを

通じた女性の活躍促進がスポーツ振興に関する施

策の 1 つとして挙げられている 7)。しかし,2016 Japan Report Card

5) では,他国同様,等級に関する

性別の検討はなされていない。前述の身体活動量

の国際比較において,女子は男子に比較して不活

動であることが報告されている 2)。一方,日本全

国の子ども・青少年における日常の身体活動量の

状況は不明であるが,東京都教育委員会が実施し

た平成 23 年度東京都児童・生徒の日常生活活動に関する調査によると,日常の歩数は,男子より

も女子で少なかったことが報告されている 8)。そ

のため,より地域の現状を明確にするため,性差

の検討が必要である。 そこで,本研究の目的は,児童・生徒の身体活

動に関する地域課題を明らかにするために,世界

共通指標を用いた 2016 Japan Report Card 5) の枠組

みを基盤とし,身体活動などの行動指標 日常生活

全般の身体活動量,座位行動など ,健康関連指標

体力,体型 および身体活動に影響を及ぼし得る

要因 家族および仲間の影響 について,47の都道府県それぞれを代表する調査データを用いて,都

道府県間差を男女別に検討することとした。

2.方 法

2-1.評価指標 本研究は,2016 Japan Report Card 5) の枠組みを,

原則として踏襲した。各国の Report Cardは,子ども・青少年の日常生活全般の身体活動量などの行

動指標,健康関連指標やその変動要因としての環

境指標から構成されている 3)。 先ず,47都道府県別のデータが得られる指標に

ついて検討した。その結果,2016 Japan Report Card 5)

で用いた学校,地域社会と構築環境および政府戦

略と投資については,国としての指標であり,ま

た都道府県間の共通の尺度がないため,本研究で

は指標から除外し,指標 1:日常生活全般の身体活動量,指標 2:組織化されたスポーツへの参加,指標 3:活動的な遊び, 指標 4:活動的な移動手段,指標 5:座位行動,指標 6:体力,指標 7:体型,および指標 8:家族および仲間の影響の 8 つを指標として採用した。 2-2.データの検索 本研究で用いた調査は,47都道府県の性別のデ

ータが公開されている,1)スポーツ庁の全国体力・運動能力,運動習慣等調査 9-12),および 2)文部科学省の学校保健統計調査であった 13)。2016 Japan Report Card 5) では,4歳からのデータを用いたが,本研究では,学校保健統計調査の 5歳児からのデータを除いて幼児期の 47 都道府県のデータは存在しなかった。そこで,全国体力・運動能力,運

動習慣等調査における都道府県のデータは,小学

校 5年生および中学校 2年生のデータを,学校保健統計調査については小学校 1 年生から中学校 3年生のデータを用いることとした。データが得ら

れた指標について,スポーツ庁のデータにおける

指標 2:組織化されたスポーツへの参加については小学校 5年生のみのデータ,他の指標については,小学校 5年生および中学校 2年生のデータを用いた。また,用いたデータの年度は,2016 Japan Report Card

5) に合わせ,平成 27年度とした。 なお,

指標 4:活動的な移動手段については,平成 27年度のスポーツ庁の質問票にはみられず,平成 28年度の質問票にのみみられたことから,平成 28 年度のデータを用いた 11,12)。 2-3.等級付けの方法 指標 1:日常生活全般の身体活動量について,

国による推奨値は策定されていないことから,世

界保健機関による国際的な身体活動量のガイドラ

インである「1日当たり 60分以上の中高強度の身体活動を行う」の生徒の割合を検討した 1)。指標 2:

運動疫学研究 2018; 20 1 : 37-48. http://jaee.umin.jp/REE.html

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組織化されたスポーツへの参加の状況について,

国による推奨値は策定されていないことから,組

織化されたスポーツへの参加者の割合を検討した。

指標 3:活動的な遊びに関する,国による推奨値

は策定されていないことから,38 か国の“The Report Card on Physical Activity for Children and Youth”の基準として用いられた,「非構造化 非組

織化された活動的な遊びを 1 日数時間実施してい

る生徒の割合」を検討した 4)。指標 4:活動的な移

動手段の推奨値は策定されていないことから,徒

歩あるいは自転車通学の生徒の割合を検討した。

指標 5:座位行動についても,国による推奨値は

策定されていないことから,国際的なガイドライ

ンである「テレビ・ビデオの視聴時間,座ったま

までのゲーム,コンピューターの使用などの余暇

としての電子媒体の使用を 1 日 2 時間未満」に基

づき等級を検討した 14-16)。指標 6:体力は,体力

の総合評価の A および B の割合を合算した。 指

標 7:体型については,肥満傾向児および痩身傾

向児の出現率を合算した。指標 8:家族および仲

間の影響について,成人に関する都道府県別のデ

ータがみられないことから,本研究では,スポー

ツ庁の全国体力・運動能力,運動習慣等調査にお

ける「家の人と運動する頻度」が週 1 回以上の割

合を検討した 添付資料 1 。 各指標の等級は,2016 Japan Report Card 5) では,

5 段階および「データが存在しない」の 6 つでな

されている。2016 Japan Report Card5) と同年に発行

された他国の Report Card では,各等級を更に 3 段

階 例:A+,A および A- に分け,より詳細な検

討を行っている国もみられた 4)。そこで,本研究

では,アジアの国の 1 つであるタイの Report Cardに基づき以下のとおり等級付けを行った 17)。

子どもおよび青少年の大部分が該当する: A+: 96~100%,A: 86~95%,A-: 81~85% 子どもおよび青少年の半分以上が該当する: B+: 76~80%,B: 66~75%,B-: 61~65% 子どもおよび青少年のおよそ半分が該当する: C+: 56~60%,C: 46~55%,C-: 41~45% 子どもおよび青少年の半分以下が該当する: D+: 36~40%,D: 26~35%,D-: 21~25% 子どもおよび青少年の僅かが該当する: F: 0~20% 等級を評価するためのデータがない,あるいは,

推奨値がない場合: INC Incomplete data combined with lack of an

evidence-based recommendation また,指標ごとに 47 都道府県の平均,標準偏差

を求めた。各都道府県の割合のばらつきを評価す

るため,割合 p は二項分布をすると仮定し,p±2×square root p 1-p 47 の範囲から外れた場合,

ばらつきが大きいとした。

3.結 果

各指標の等級を,全対象者および男女別に

Table1 に示した。指標 1:日常生活全般の身体活

動量および,指標 3:活動的な遊びに関するデー

タは,2016 Japan Report Card 5) で用いた以降の年度

についてもデータは存在しなかったため,INC と

した。また,データの得られた 6 指標について,

最も高い等級と最も低い等級の都道府県について,

Table 2 に示した。 指標 2:組織化されたスポーツへの参加の状況

については,都道府県別の等級は「B~C」の範囲

にあった(Table 1, 2)。男女別では,すべての都道

府県において男子の等級は女子より高かった。ま

た,男女ともに最も等級が高かったのが熊本県 男

子:A-,女子:B- ,最も等級が低かったのが高

知県 男子:B-,女子:C- であった。また,女子

では北海道,宮城県,茨城県,岡山県および沖縄

県が低かった C- 。 指標 4:活動的な移動手段については,都道府

県別の等級が「A+~B」の範囲にあった(Table 1, 2)。男女別では,男子の等級はすべての都道府県

において,女子と同じか,高かった。男女ともに

最も等級が高い「A+」は埼玉県,東京都,神奈川

県,愛知県,大阪府および兵庫県であった。一方,

男女ともに最も低い等級の「B」は青森県,岩手県,

秋田県および沖縄県であった。 指標 5:座位行動に関する都道府県別の等級は

「C~D」の範囲にあった。最も高い等級の「C」が

みられたのは,宮崎県であった。最も低い等級の

「D」がみられたのは,27 県であった(Table 1, 2)。男女別ではいずれの都道府県でも,男子の等級は

女子より低かった。男子で最も高い等級の「D+」

がみられたのは,宮崎県であった。最も等級が低

かった「D-」が 18 道府県でみられた。その他の

都道県では,「D」であった。一方,女子で最も等

級が高かったのは,宮崎県の「C+」であった。ま

た,最も等級が低かったのは,11 道府県の「D+」

であった。

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運動疫学研究 2018; 20(1): 37-48. http://jaee.umin.jp/REE.html

40

指標 6:体力に関する都道府県別の等級は「B-

~D」の範囲にあった(Table 1, 2)。男女別では,

すべての都道府県において女子の等級は男子より

高かった。次に男子で最も等級が高かったのは,

秋田県,茨城県,新潟県,石川県および福井県で

「C」,最も等級が低かった「D」が 23 都道府県で

みられた。女子で最も等級が高かったのは,茨城

県および福井県で「B」あった。この 2 県は男女と

Table 1 Grade of each indicator

Prefectures

Boys Girls All Boys Girls All Boys Girls All Boys Girls All Boys Girls All Boys Girls All

Hokkaido INC B C- C INC A A- A- D- D+ D D D+ D A A A D- F FAomori INC B C B- INC B B B D C- D+ D+ C C- A A A D- F D-

Iwate INC B C C+ INC B B B D C- D C- C+ C A A A D F D-

Miyagi INC B C- C INC A- B+ B+ D C- D D C D+ A A A D- F D-

Akita INC B+ C+ B INC B B B D C D+ C B- C A A A D F D-

Yamagata INC B C B- INC A A- A- D- D+ D D C C- A A A D F D-

Fukushima INC B C C+ INC B+ B B D- C- D D C D+ A A A D- F D-

Ibaraki INC B C- C+ INC A A A D- D+ D C B C+ A A A D- F D-

Tochigi INC B C C+ INC A A A D- C- D D C C- A A A D F D-

Gumma INC B C B- INC A A A D C- D+ D C C- A A A D F D-

Saitama INC B C B- INC A+ A+ A+ D C- D C- B- C A A A D- F FChiba INC B+ C B- INC A A A D C- D C- B- C A A A D- F FTokyo INC B+ C B- INC A+ A+ A+ D C- D D C D+ A A A D- F F

Kanagawa INC B C B- INC A+ A+ A+ D- C- D D D+ D A A A D- F FNiigata INC B C B- INC A A- A- D- D+ D C B- C A A A D- F FToyama INC B C B- INC A A A D- D+ D D+ C+ C A A A D D- D-

Ishikawa INC B C B- INC A A- A D C- D C B- C A A A D- F D-

Fukui INC B C B- INC A A- A- D C D+ C B B- A A A D- F D-

Yamanashi INC B C C+ INC A A- A- D C- D D C D+ A A A D- F D-

Nagano INC B C C+ INC A A- A- D C D+ D+ C C- A A A D F D-

Gifu INC B C C+ INC A A A D C D+ D+ C C- A A A D D- D-

Shizuoka INC B C B- INC A A A D C- D+ D+ C+ C A A A D- F D-

Aichi INC B C+ B- INC A+ A+ A+ D- C- D D C D+ A A A D- F FMie INC B C C+ INC A A A D- D+ D D C C- A A A D- F D-

Shiga INC B C C+ INC A A A D- C- D D C C- A A A D- F D-

Kyoto INC B+ C+ B INC A A A D- D+ D D C D+ A A A D- F FOsaka INC B C B- INC A+ A+ A+ D- D+ D D C- D+ A A A F F FHyogo INC B C B- INC A+ A+ A+ D C- D+ D C- D+ A A A D- F FNara INC B C C+ INC A A A D- C- D D+ C C- A A A D- F F

Wakayama INC B C B- INC A A A D- D+ D D+ C C- A A A D- F FTottori INC B C B- INC A A- A- D C- D+ D+ C C A A A D F D-

Shimane INC B C+ B- INC A A A D C- D+ D+ C C- A A A D F D-

Okayama INC B C- C+ INC A A A D- D+ D D+ C C A A A D F D-

Hiroshima INC B C C+ INC A A A D- C- D C- C+ C A A A D F D-

Yamaguchi INC B C C+ INC A A A D C- D+ D C D+ A A A D F D-

Tokushima INC B C C+ INC A- A- A- D C- D+ D C C- A A A D- F D-

Kagawa INC B C B- INC A A A D- C- D D C C- A A A D- F D-

Ehime INC B C C+ INC A A A D C C- D C C- A A A D- F FKochi INC B- C- C INC A- B+ B+ D D+ D D+ C C- A A A D- F F

Fukuoka INC B C C+ INC A A A D C- D D C C- A A A D- F FSaga INC B C C+ INC A A- A D C D+ D+ C C- A A A D- F F

Nagasaki INC B C C+ INC B+ B+ B+ D C C- D C C- A A A D- F FKumamoto INC A- B- B INC A A A D C D+ D+ C C- A A A D- F F

Oita INC B C C+ INC A A- A D C- D+ C- C C A A A D- F FMiyazaki INC B C C+ INC A A A D+ C+ C D+ C C A A A D- F D-

Kagoshima INC B C C+ INC A- A- A- D C C- D C D+ A A A D- F D-

Okinawa INC B C- C INC B B B D C C- D C- D+ A A A D- F FThe 2016 Japan

Report Card INC C INC A C C A D

Index 6: Physical Fitness Index 7: Weight StatusIndex 8: Family and Peer

InfluenceIndex 1: Overall

PhysicalActivity Levels

Index 3:ActivePlay

Index 2: Organized SportParticipation

Index 4: ActiveTransportation

Index 5: Sedentary Behavior

The grade for each indicator in the 2016 Japan Report Card on Physical Activity for Children and Youth was based on the percentage of children and youth meeting a defined benchmark5): A is 81% to 100%; B is 61% to 80%; C is 41% to 60%, D is 21% to 40%; F is 0% to 20%; INC is incomplete data.

運動疫学研究 2018; 20 1 : 37-48. http://jaee.umin.jp/REE.html

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もに最も等級が高かった。また,女子で最も等級

が低かったのは北海道および神奈川県の「D+」であった。この 2県は男女ともに最も等級が低かった。 指標 7:体型については,すべての都道府県の

等級が「A」であった。また,男女別でもすべての都道府県の等級が「A」であった。 指標 8:家族および仲間の影響の等級は,「D-」

が 27県,「F」が 20都道府県であった Table 1, 2 。男女別では,大阪府を除くすべての都道府県にお

いて,男子の等級は女子より高かった。男子で最

も等級が高かったのは,13県で「D」,最も等級が低かったのは大阪府の「F」であった。女子では,富山県および岐阜県の「D-」であり,その他の都道府県は,「F」であった。 更に,各指標における該当者割合を Table 3に示

した。割合の格差も等級の格差と似た傾向があっ

た。推定誤差から外れたのは,指標 4:活動的な移動手段で,青森県,岩手県,秋田県,福島県,

埼玉県,愛知県,大阪府および沖縄県であった。

また,指標 6:体力で,福井県であった。

4.考 察

本研究では,世界共通指標を用いた日常生活全

般の身体活動量などの行動指標,健康関連指標お

よび身体活動量の変動要因を評価する 2016 Japan Report Card 5) の枠組みを基盤とし,全国体力・運

動能力,運動習慣等調査および学校保健統計調査

を用いて,児童・生徒の身体活動量などの行動指

標,健康関連指標および身体活動量の変動要因に

関する地域間比較を男女別に行った。その結果,

活動的な移動手段および体型の等級は,いずれの

都道府県でも良好であった。組織化されたスポー

ツへの参加は,中程度の地域と低い地域がみられ

た。座位行動および体力の等級は,低い地域とか

なり低い地域がみられた。家族と仲間の影響の等

級はいずれの都道府県でもかなり低かった。日常

生活全般の身体活動量と活動的な遊びは 47 都道府県を代表するデータが見つけられなかったため,

等級付けすることができなかった。また,女子は

男子に比較して,組織化されたスポーツへの参加

と家族および仲間の影響がいずれの都道府県でも

低く,活動的な移動手段の等級も一部の地域にお

Table 2 Prefectures ranked by grade (Both genders) Index 2: Index 4: Index 5: Index 6: Index 7: Index 8: Organized

Sport Participation

Active Transportation

Sedentary Behavior

Physical Fitness

Weight Status

Family and Peer

Influence

Prefectures with highest

grades

【B】 【A+】 【C】 【B-】 【A】 【D-】

Akita Saitama Miyazaki Fukui 47 27 Kyoto Tokyo prefectures prefectures

Kumamoto Kanagawa omission) omission) Aichi Osaka Hyogo

Prefectures with lowest

grades

【C】 【B】 【D+】 【D】 None 【F】

Hokkaido Aomori Aomori Hokkaido 20 Miyagi Iwate Akita Kanagawa prefectures Kochi Akita Gumma omission)

Okinawa Fukushima Fukui Okinawa Nagano Gifu Shizuoka Hyogo Tottori Shimane Yamaguchi Tokushima Saga Kumamoto Oita

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指標 6:体力に関する都道府県別の等級は「B-

~D」の範囲にあった(Table 1, 2)。男女別では,

すべての都道府県において女子の等級は男子より

高かった。次に男子で最も等級が高かったのは,

秋田県,茨城県,新潟県,石川県および福井県で

「C」,最も等級が低かった「D」が 23 都道府県で

みられた。女子で最も等級が高かったのは,茨城

県および福井県で「B」あった。この 2 県は男女と

Table 1 Grade of each indicator

Prefectures

Boys Girls All Boys Girls All Boys Girls All Boys Girls All Boys Girls All Boys Girls All

Hokkaido INC B C- C INC A A- A- D- D+ D D D+ D A A A D- F FAomori INC B C B- INC B B B D C- D+ D+ C C- A A A D- F D-

Iwate INC B C C+ INC B B B D C- D C- C+ C A A A D F D-

Miyagi INC B C- C INC A- B+ B+ D C- D D C D+ A A A D- F D-

Akita INC B+ C+ B INC B B B D C D+ C B- C A A A D F D-

Yamagata INC B C B- INC A A- A- D- D+ D D C C- A A A D F D-

Fukushima INC B C C+ INC B+ B B D- C- D D C D+ A A A D- F D-

Ibaraki INC B C- C+ INC A A A D- D+ D C B C+ A A A D- F D-

Tochigi INC B C C+ INC A A A D- C- D D C C- A A A D F D-

Gumma INC B C B- INC A A A D C- D+ D C C- A A A D F D-

Saitama INC B C B- INC A+ A+ A+ D C- D C- B- C A A A D- F FChiba INC B+ C B- INC A A A D C- D C- B- C A A A D- F FTokyo INC B+ C B- INC A+ A+ A+ D C- D D C D+ A A A D- F F

Kanagawa INC B C B- INC A+ A+ A+ D- C- D D D+ D A A A D- F FNiigata INC B C B- INC A A- A- D- D+ D C B- C A A A D- F FToyama INC B C B- INC A A A D- D+ D D+ C+ C A A A D D- D-

Ishikawa INC B C B- INC A A- A D C- D C B- C A A A D- F D-

Fukui INC B C B- INC A A- A- D C D+ C B B- A A A D- F D-

Yamanashi INC B C C+ INC A A- A- D C- D D C D+ A A A D- F D-

Nagano INC B C C+ INC A A- A- D C D+ D+ C C- A A A D F D-

Gifu INC B C C+ INC A A A D C D+ D+ C C- A A A D D- D-

Shizuoka INC B C B- INC A A A D C- D+ D+ C+ C A A A D- F D-

Aichi INC B C+ B- INC A+ A+ A+ D- C- D D C D+ A A A D- F FMie INC B C C+ INC A A A D- D+ D D C C- A A A D- F D-

Shiga INC B C C+ INC A A A D- C- D D C C- A A A D- F D-

Kyoto INC B+ C+ B INC A A A D- D+ D D C D+ A A A D- F FOsaka INC B C B- INC A+ A+ A+ D- D+ D D C- D+ A A A F F FHyogo INC B C B- INC A+ A+ A+ D C- D+ D C- D+ A A A D- F FNara INC B C C+ INC A A A D- C- D D+ C C- A A A D- F F

Wakayama INC B C B- INC A A A D- D+ D D+ C C- A A A D- F FTottori INC B C B- INC A A- A- D C- D+ D+ C C A A A D F D-

Shimane INC B C+ B- INC A A A D C- D+ D+ C C- A A A D F D-

Okayama INC B C- C+ INC A A A D- D+ D D+ C C A A A D F D-

Hiroshima INC B C C+ INC A A A D- C- D C- C+ C A A A D F D-

Yamaguchi INC B C C+ INC A A A D C- D+ D C D+ A A A D F D-

Tokushima INC B C C+ INC A- A- A- D C- D+ D C C- A A A D- F D-

Kagawa INC B C B- INC A A A D- C- D D C C- A A A D- F D-

Ehime INC B C C+ INC A A A D C C- D C C- A A A D- F FKochi INC B- C- C INC A- B+ B+ D D+ D D+ C C- A A A D- F F

Fukuoka INC B C C+ INC A A A D C- D D C C- A A A D- F FSaga INC B C C+ INC A A- A D C D+ D+ C C- A A A D- F F

Nagasaki INC B C C+ INC B+ B+ B+ D C C- D C C- A A A D- F FKumamoto INC A- B- B INC A A A D C D+ D+ C C- A A A D- F F

Oita INC B C C+ INC A A- A D C- D+ C- C C A A A D- F FMiyazaki INC B C C+ INC A A A D+ C+ C D+ C C A A A D- F D-

Kagoshima INC B C C+ INC A- A- A- D C C- D C D+ A A A D- F D-

Okinawa INC B C- C INC B B B D C C- D C- D+ A A A D- F FThe 2016 Japan

Report Card INC C INC A C C A D

Index 6: Physical Fitness Index 7: Weight StatusIndex 8: Family and Peer

InfluenceIndex 1: Overall

PhysicalActivity Levels

Index 3:ActivePlay

Index 2: Organized SportParticipation

Index 4: ActiveTransportation

Index 5: Sedentary Behavior

The grade for each indicator in the 2016 Japan Report Card on Physical Activity for Children and Youth was based on the percentage of children and youth meeting a defined benchmark5): A is 81% to 100%; B is 61% to 80%; C is 41% to 60%, D is 21% to 40%; F is 0% to 20%; INC is incomplete data.

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もに最も等級が高かった。また,女子で最も等級

が低かったのは北海道および神奈川県の「D+」であった。この 2県は男女ともに最も等級が低かった。 指標 7:体型については,すべての都道府県の

等級が「A」であった。また,男女別でもすべての都道府県の等級が「A」であった。 指標 8:家族および仲間の影響の等級は,「D-」

が 27県,「F」が 20都道府県であった Table 1, 2 。男女別では,大阪府を除くすべての都道府県にお

いて,男子の等級は女子より高かった。男子で最

も等級が高かったのは,13県で「D」,最も等級が低かったのは大阪府の「F」であった。女子では,富山県および岐阜県の「D-」であり,その他の都道府県は,「F」であった。 更に,各指標における該当者割合を Table 3に示

した。割合の格差も等級の格差と似た傾向があっ

た。推定誤差から外れたのは,指標 4:活動的な移動手段で,青森県,岩手県,秋田県,福島県,

埼玉県,愛知県,大阪府および沖縄県であった。

また,指標 6:体力で,福井県であった。

4.考 察

本研究では,世界共通指標を用いた日常生活全

般の身体活動量などの行動指標,健康関連指標お

よび身体活動量の変動要因を評価する 2016 Japan Report Card 5) の枠組みを基盤とし,全国体力・運

動能力,運動習慣等調査および学校保健統計調査

を用いて,児童・生徒の身体活動量などの行動指

標,健康関連指標および身体活動量の変動要因に

関する地域間比較を男女別に行った。その結果,

活動的な移動手段および体型の等級は,いずれの

都道府県でも良好であった。組織化されたスポー

ツへの参加は,中程度の地域と低い地域がみられ

た。座位行動および体力の等級は,低い地域とか

なり低い地域がみられた。家族と仲間の影響の等

級はいずれの都道府県でもかなり低かった。日常

生活全般の身体活動量と活動的な遊びは 47 都道府県を代表するデータが見つけられなかったため,

等級付けすることができなかった。また,女子は

男子に比較して,組織化されたスポーツへの参加

と家族および仲間の影響がいずれの都道府県でも

低く,活動的な移動手段の等級も一部の地域にお

Table 2 Prefectures ranked by grade (Both genders) Index 2: Index 4: Index 5: Index 6: Index 7: Index 8: Organized

Sport Participation

Active Transportation

Sedentary Behavior

Physical Fitness

Weight Status

Family and Peer

Influence

Prefectures with highest

grades

【B】 【A+】 【C】 【B-】 【A】 【D-】

Akita Saitama Miyazaki Fukui 47 27 Kyoto Tokyo prefectures prefectures

Kumamoto Kanagawa omission) omission) Aichi Osaka Hyogo

Prefectures with lowest

grades

【C】 【B】 【D+】 【D】 None 【F】

Hokkaido Aomori Aomori Hokkaido 20 Miyagi Iwate Akita Kanagawa prefectures Kochi Akita Gumma omission)

Okinawa Fukushima Fukui Okinawa Nagano Gifu Shizuoka Hyogo Tottori Shimane Yamaguchi Tokushima Saga Kumamoto Oita

Page 6: 児童・生徒における身体活動関連指標の 47 都道府 …jaee.umin.jp/REE/J/20_1_37.pdf方法:“Report Card on Physical Activity for Children and Youth”において国際的な指標とされている身体

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中学校 2年生の,原則として全児童・生徒であった。平成 27 年度と平成 28 年度の参加率 参加学

校数 調査対象者の在籍する学校の総数 は,都道

府県別には公表されていないものの,全体の状況

としては,各々小学校調査が 98.8% 20,477校 と

98.8% 20,272校 ,中学校調査が 96.6% 10,578校と 97.3% 10,593校 であった 18,19)。一方,平成 27年度の学校保健統計調査の対象は,幼稚園,小学

校,中学校,高等学校および中等教育学校のうち,

文部科学大臣があらかじめ指定する学校 調査実

施校 に在籍する満 5歳から 17歳 平成 27年 4月1日現在 までの幼児,児童および生徒の一部とさ

れている 20)。また,本研究で用いた発育状態調査

の結果は,層化二段無作為抽出法が用いられ,年

齢別,男女別に系統抽出法により対象児童等が抽

出された。調査実施校数は,小学校が 2,820 校,中学校が 1,880校,高等学校が 1,410校,調査対象者数は,各々270,720名,225,600名および 126,900名であった。そのため,いずれの調査についても

サンプリングバイアスはほとんどないと考えられ

る。 指標 1:日常生活全般の身体活動は,2016 Japan

Report Card 5) の作成時同様,47都道府県別においても INC であった。平成 28 年度についても同様に,日常生活全般の身体活動の調査結果は報告さ

れていない。他の青少年の身体活動量の国際比較

研究においても,日本のデータは見つけられない

ことが指摘されている 2)。本調査の主要アウトカ

ムである身体活動量が評価できなかったのは大き

な課題である。前述したように,地域別には,歩

数により日常生活における身体活動量を評価した

東京都のような地域もある 8)。今後,その他の地

域でも,身体活動量の現状が明らかにされること

が望まれる。 指標 2:組織化されたスポーツへの参加の状況

について,都道府県別の等級は「B~C」の範囲にあった Table 1, 2 。2016 Japan Report Card 5) の等

級は「C」と報告されているが,その内訳は,4~5歳の男子が 30.1%,女子が 27.7%,6~11歳では各々61.8%と 44.0%,12~14 歳では 90.1%と68.7%,15~17 歳では 70.2%と 45.7%であった。いずれの年齢でも,男子の参加率は女子より高か

ったが,本研究で地域別に検討しても同様の結果

が得られた。日本における第 2期「スポーツ基本計画」では,女子生徒の運動習慣の二極化を含め

女性特有の課題の整理があげられている 7)。Table

3 に示した女子の下位の地域におけるスポーツ参加率は,約 40%に留まっていた。幼少期の運動をはじめとする身体活動量は,年齢が上がっても持

ち越されことが報告されている 21)。生涯を通じた

女性の運動参加の観点からも,いずれの地域にお

いても女子のスポーツ参加率を児童期から高める

対策が重要である。 指標 3:活動的な遊びは,2016 Japan Report Card5)

と同様,47都道府県別においても INCであった。スポーツ庁の平成 28 年度全国体力・運動能力調査結果では,幼児期の外遊びの頻度が多い児童ほ

ど運動習慣が身に付いており,体力テストの合計

点が高い傾向がみられたことが報告された 22)。今

後,活動的な遊びに関する調査が望まれる。 指標 4:活動的な移動手段について,本研究で

は,2016 Japan Report Card 5) の作成後に報告され

たスポーツ庁の平成 27 年度の調査におけるデータを用いた。その結果,全体的には高い評価が得

られたものの,男女ともに最も低い等級の「B」となったのは東北地方の一部の地域や沖縄県であり,

これらの地域において対策を講じる必要性がある。

2016 Japan Report Card 5) における全国の等級は「C」と報告され,本調査では全体的には高い評価とな

った。2016 Japan Report Card 5) における活動的な移

動手段を用いた登園・通学の内訳は,4~5 歳が28%,6~11歳が 93%,12~14歳が 88%,15~17歳が 68%であり,幼児を除くと,年齢が上がるにつれて低下していた。幼児期は,就学前施設のバ

スや保護者が運転する車や自転車などの利用が多

いのかもしれない。また,学齢期では学区のない

私立の学校の生徒数の割合が,小学校は 1.0%,中学校は 7.0%,高等学校では 29.7%と,徐々に増加することが報告されている 23)。本研究では,小学

校 5年生および中学校 2年生が対象であったことから,2016 Japan Report Card 5) の等級よりいずれの

都道府県でも高い等級がみられたものと考えられ

る。 指標 5:座位行動に関しては,すべての都道府

県において,男子は女子に比較して等級が低かっ

た。国際的にみても,座位行動の等級は低い国が

多い 4)。幼少期のスクリーンタイムは,年齢が上

がっても持ち越されることがシステマティックレ

ビューにより指摘されている 21)。更に,加速度計

で客観的に評価した座位時間の縦断研究に関する

システマティックレビューでも,座位時間は幼児

期を除き,加齢に伴い増加することが報告されて

運動疫学研究 2018; 20(1): 37-48. http://jaee.umin.jp/REE.html

42

いて低かった。一方,男子の座位行動の等級は,

いずれの都道府県でも女子に比較して低かった。 本研究で用いたデータは,平成 27 年度と平成 28

年度の全国体力・運動能力,運動習慣等調査 9-12),

および学校保健統計調査であった 13)。前者の調査

対象は,国・公・私立学校の小学校 5 年生および

Table 3 Percentages of each indicator (%)

Prefectures

Boys Girls All Boys Girls All Boys* Girls* All* Boys** Girls** All** Boys Girls All Boys Girls All Boys Girls All

Hokkaido 66.3 42.6 54.5 85.5 83.3 84.4 76.6 75.1 75.8 66.5 40.5 53.5 29.9 39.5 34.7 12.9 11.8 12.3 21.5 15.7 18.6Aomori 74.4 52.9 63.7 70.0 65.5 67.8 74.5 73.3 73.9 58.4 34.7 46.5 35.1 51.0 43.0 13.5 11.5 12.5 23.9 19.0 21.4Iwate 69.7 47.6 58.7 71.5 67.0 69.2 76.4 76.4 76.4 57.4 34.4 45.9 41.5 56.6 49.1 12.5 11.2 11.9 26.8 19.5 23.1Miyagi 65.4 40.2 52.8 81.3 77.5 79.4 76.8 75.6 76.2 60.0 36.2 48.1 31.6 46.7 39.1 12.1 10.1 11.1 23.0 17.5 20.2Akita 78.0 57.6 67.8 72.1 66.6 69.4 73.4 72.1 72.7 58.9 33.1 46.0 45.2 60.4 52.8 12.6 10.9 11.7 28.5 19.5 24.0

Yamagata 73.3 53.2 63.3 85.8 83.4 84.6 79.0 78.2 78.6 62.6 35.5 49.1 33.8 52.2 43.0 12.7 10.1 11.4 26.2 20.0 23.1Fukushima 69.1 47.2 58.2 77.1 71.9 74.5 77.0 74.9 76.0 62.4 37.5 49.9 30.5 47.8 39.2 12.9 10.8 11.9 23.9 19.2 21.5

Ibaraki 66.9 43.8 55.4 88.7 86.5 87.6 78.1 75.9 77.0 62.8 37.3 50.0 48.6 66.9 57.7 11.8 10.2 11.0 24.4 19.2 21.8Tochigi 69.2 47.6 58.4 90.1 88.1 89.1 77.7 74.6 76.1 60.0 32.1 46.0 33.2 51.2 42.2 12.3 10.9 11.6 26.0 19.9 22.9Gumma 70.8 50.2 60.5 89.4 87.1 88.3 76.7 74.1 75.4 58.6 32.8 45.7 33.7 50.8 42.2 10.5 9.1 9.8 25.3 19.2 22.3Saitama 72.0 49.2 60.6 97.7 97.7 97.7 76.0 73.5 74.7 60.6 34.9 47.8 43.3 63.4 53.3 9.7 9.5 9.6 22.0 16.8 19.4Chiba 75.3 53.9 64.6 92.6 90.8 91.7 75.7 72.4 74.0 61.8 36.4 49.1 43.5 61.1 52.3 9.3 7.9 8.6 21.6 16.7 19.1Tokyo 75.0 54.0 64.5 95.5 95.4 95.4 75.6 72.8 74.2 62.2 38.9 50.5 30.0 47.0 38.5 9.5 7.9 8.7 22.2 15.8 19.0

Kanagawa 74.9 52.9 63.9 96.2 95.7 96.0 75.9 73.5 74.7 62.9 38.7 50.8 28.3 39.4 33.8 8.7 8.0 8.3 20.9 15.3 18.1Niigata 73.4 51.4 62.4 85.8 82.4 84.1 78.7 77.4 78.1 65.1 37.7 51.4 46.1 61.4 53.8 10.2 9.4 9.8 22.9 16.8 19.8Toyama 72.6 53.5 63.1 89.0 85.6 87.3 78.4 75.7 77.0 64.1 37.5 50.8 39.2 56.0 47.6 8.6 8.5 8.6 26.0 20.2 23.1Ishikawa 73.5 49.6 61.6 86.8 83.6 85.2 76.7 76.5 76.6 58.4 33.5 45.9 45.9 60.1 53.0 8.9 7.6 8.3 23.0 17.1 20.0

Fukui 74.0 52.7 63.4 85.0 83.2 84.1 72.9 71.1 72.0 59.0 32.0 45.5 51.3 69.6 60.5 8.8 7.2 8.0 23.2 18.0 20.6Yamanashi 70.5 46.6 58.6 85.8 83.3 84.6 76.3 75.7 76.0 58.7 33.6 46.1 30.7 46.8 38.7 12.3 8.9 10.6 23.8 19.3 21.5

Nagano 70.3 49.2 59.8 85.8 82.7 84.2 73.7 71.9 72.8 55.6 30.6 43.1 36.1 49.8 42.9 9.6 8.2 8.9 25.9 18.8 22.3Gifu 70.5 47.8 59.2 91.3 90.3 90.8 73.9 71.6 72.8 59.7 35.3 47.5 35.9 51.1 43.5 8.6 8.2 8.4 27.7 21.5 24.6

Shizuoka 73.8 54.1 64.0 92.0 90.4 91.2 74.7 72.1 73.4 62.2 35.6 48.9 35.9 56.0 45.9 9.6 8.0 8.8 24.2 18.7 21.5Aichi 74.7 55.1 64.9 97.6 97.4 97.5 76.7 74.2 75.4 62.9 37.6 50.3 27.9 45.3 36.6 9.0 7.5 8.2 22.1 17.2 19.6Mie 68.8 48.2 58.5 92.4 90.5 91.4 77.6 75.8 76.7 64.7 38.2 51.4 33.9 48.8 41.3 9.9 8.5 9.2 24.0 19.4 21.7

Shiga 71.2 48.6 59.9 93.7 92.8 93.2 77.1 74.8 75.9 63.2 37.2 50.2 34.9 47.0 40.9 8.1 7.2 7.7 23.6 18.3 21.0Kyoto 75.7 56.0 65.9 94.3 94.1 94.2 77.0 75.7 76.3 63.1 38.2 50.6 31.6 47.4 39.5 8.3 7.7 8.0 21.1 15.2 18.1Osaka 71.3 50.2 60.8 98.0 98.0 98.0 77.2 75.8 76.5 64.6 40.2 52.4 28.0 42.6 35.3 8.4 8.3 8.4 19.3 14.0 16.6Hyogo 71.2 50.5 60.9 95.3 95.2 95.2 76.0 73.4 74.7 58.4 33.7 46.0 28.9 44.5 36.7 7.9 7.1 7.5 21.9 16.3 19.1Nara 70.5 47.7 59.1 93.4 92.2 92.8 75.9 74.3 75.1 62.2 37.0 49.6 35.9 47.6 41.7 9.4 7.2 8.3 22.2 15.8 19.0

Wakayama 71.4 51.2 61.3 87.4 85.6 86.5 77.0 75.4 76.2 67.0 39.9 53.4 36.6 53.4 45.0 9.9 8.5 9.2 22.5 16.9 19.7Tottori 74.0 52.9 63.5 85.7 82.9 84.3 77.6 75.8 76.7 55.0 30.0 42.5 36.5 54.1 45.3 9.0 8.6 8.8 26.6 18.9 22.7

Shimane 74.7 55.1 64.9 87.1 85.4 86.3 76.3 75.3 75.8 55.5 30.2 42.9 35.2 49.4 42.3 9.0 8.4 8.7 26.3 18.2 22.2Okayama 68.0 44.8 56.4 93.3 91.7 92.5 77.5 76.8 77.1 61.0 37.9 49.5 39.6 51.9 45.7 9.7 8.5 9.1 25.2 18.5 21.8Hiroshima 70.1 48.1 59.1 89.6 87.0 88.3 76.9 74.8 75.8 60.6 35.3 47.9 42.5 58.5 50.5 9.0 8.5 8.7 25.8 18.8 22.3Yamaguchi 72.3 47.1 59.7 92.9 90.6 91.7 75.8 73.5 74.6 58.8 34.7 46.7 30.2 47.6 38.9 9.4 8.9 9.1 25.8 19.5 22.6Tokushima 69.2 47.2 58.2 84.8 82.0 83.4 73.9 71.7 72.8 60.1 36.2 48.1 33.6 48.7 41.2 12.5 10.7 11.6 24.7 19.5 22.1Kagawa 71.8 51.6 61.7 90.8 88.3 89.5 78.1 75.3 76.7 62.6 36.1 49.3 33.7 49.2 41.4 9.6 9.5 9.5 25.0 19.0 22.0Ehime 69.1 49.7 59.4 92.4 91.0 91.7 73.6 69.9 71.7 56.8 31.5 44.1 32.7 49.1 40.9 9.4 8.8 9.1 21.4 16.4 18.9Kochi 63.8 41.7 52.8 82.0 75.7 78.9 75.8 75.3 75.5 61.1 37.0 49.1 35.5 47.5 41.5 10.5 10.6 10.5 22.5 16.2 19.3

Fukuoka 70.4 45.9 58.2 90.0 87.6 88.8 75.9 74.2 75.0 58.8 35.4 47.1 34.0 47.3 40.6 9.8 8.0 8.9 21.1 16.3 18.7Saga 70.2 46.9 58.6 86.4 84.4 85.4 75.4 72.4 73.9 55.0 29.4 42.2 35.4 48.7 42.0 8.5 9.5 9.0 21.6 16.5 19.1

Nagasaki 72.0 46.9 59.5 79.9 78.2 79.1 75.0 73.1 74.0 52.4 25.4 38.9 33.3 51.3 42.3 9.1 8.9 9.0 21.5 16.8 19.1Kumamoto 80.4 63.6 72.0 88.5 86.3 87.4 75.2 73.2 74.2 55.4 28.9 42.2 35.3 52.9 44.1 10.0 9.5 9.7 21.9 17.0 19.5

Oita 72.5 47.2 59.9 86.7 84.7 85.7 75.3 73.7 74.5 58.3 33.8 46.0 40.9 53.6 47.3 11.4 10.3 10.9 23.3 16.3 19.8Miyazaki 69.3 45.6 57.5 92.4 90.3 91.3 70.9 67.5 69.2 50.0 27.2 38.6 39.5 53.2 46.3 10.9 9.6 10.3 24.5 19.9 22.2

Kagoshima 70.8 48.0 59.4 82.7 80.4 81.5 73.5 70.6 72.0 50.1 26.0 38.0 29.7 48.0 38.8 9.9 9.2 9.5 23.1 17.8 20.4Okinawa 66.6 42.2 54.4 71.8 66.9 69.4 71.6 67.2 69.4 52.7 31.0 41.9 31.7 44.5 38.1 9.7 9.5 9.6 20.9 15.7 18.3

Mean 71.5 49.6 60.5 87.7 85.4 86.6 75.9 73.9 74.9 59.7 34.6 47.2 35.9 51.4 43.6 10.1 9.0 9.6 23.6 17.8 20.7SD 3.2 4.5 3.8 6.9 8.2 7.5 1.8 2.3 2.0 3.9 3.7 3.7 5.7 6.5 6.0 1.5 1.2 1.3 2.1 1.7 1.8

All over Japan 72.0 50.3 61.2 88.7 82.6 85.6 74.2 70.2 72.2 56.9 33.8 45.3 34.4 51.7 43.0 9.7 8.7 9.2 22.7 17.2 19.9

Index 5: Sedentary BehaviorIndex 2: OrganizedSport Participation

(Percentage of "Yes")

Index 4: ActiveTransportation(Percentage of

"walking or cycling")

Index 6: Physical Fitness(Percentage of

"A and B")

Index 7: Weight Status(Percentage of

"overweight/obesityand underweight")

Index 8: Family andPeer Influence***

*: more than 1 hour per day of watching TV, videos or DVDs viewing (Not playing video games) on weekdays, **: more than 1 hour per day playing video games (PCs, portable electronic devices having a game function, cellular or smart phones) on weekdays, ***: more than once per week play sports or exercise with your family, SD: standard deviation.

Page 7: 児童・生徒における身体活動関連指標の 47 都道府 …jaee.umin.jp/REE/J/20_1_37.pdf方法:“Report Card on Physical Activity for Children and Youth”において国際的な指標とされている身体

運動疫学研究 2018; 20 1 : 37-48. http://jaee.umin.jp/REE.html

43

中学校 2年生の,原則として全児童・生徒であった。平成 27 年度と平成 28 年度の参加率 参加学

校数 調査対象者の在籍する学校の総数 は,都道

府県別には公表されていないものの,全体の状況

としては,各々小学校調査が 98.8% 20,477校 と

98.8% 20,272校 ,中学校調査が 96.6% 10,578校と 97.3% 10,593校 であった 18,19)。一方,平成 27年度の学校保健統計調査の対象は,幼稚園,小学

校,中学校,高等学校および中等教育学校のうち,

文部科学大臣があらかじめ指定する学校 調査実

施校 に在籍する満 5歳から 17歳 平成 27年 4月1日現在 までの幼児,児童および生徒の一部とさ

れている 20)。また,本研究で用いた発育状態調査

の結果は,層化二段無作為抽出法が用いられ,年

齢別,男女別に系統抽出法により対象児童等が抽

出された。調査実施校数は,小学校が 2,820 校,中学校が 1,880校,高等学校が 1,410校,調査対象者数は,各々270,720名,225,600名および 126,900名であった。そのため,いずれの調査についても

サンプリングバイアスはほとんどないと考えられ

る。 指標 1:日常生活全般の身体活動は,2016 Japan

Report Card 5) の作成時同様,47都道府県別においても INC であった。平成 28 年度についても同様に,日常生活全般の身体活動の調査結果は報告さ

れていない。他の青少年の身体活動量の国際比較

研究においても,日本のデータは見つけられない

ことが指摘されている 2)。本調査の主要アウトカ

ムである身体活動量が評価できなかったのは大き

な課題である。前述したように,地域別には,歩

数により日常生活における身体活動量を評価した

東京都のような地域もある 8)。今後,その他の地

域でも,身体活動量の現状が明らかにされること

が望まれる。 指標 2:組織化されたスポーツへの参加の状況

について,都道府県別の等級は「B~C」の範囲にあった Table 1, 2 。2016 Japan Report Card 5) の等

級は「C」と報告されているが,その内訳は,4~5歳の男子が 30.1%,女子が 27.7%,6~11歳では各々61.8%と 44.0%,12~14 歳では 90.1%と68.7%,15~17 歳では 70.2%と 45.7%であった。いずれの年齢でも,男子の参加率は女子より高か

ったが,本研究で地域別に検討しても同様の結果

が得られた。日本における第 2期「スポーツ基本計画」では,女子生徒の運動習慣の二極化を含め

女性特有の課題の整理があげられている 7)。Table

3 に示した女子の下位の地域におけるスポーツ参加率は,約 40%に留まっていた。幼少期の運動をはじめとする身体活動量は,年齢が上がっても持

ち越されことが報告されている 21)。生涯を通じた

女性の運動参加の観点からも,いずれの地域にお

いても女子のスポーツ参加率を児童期から高める

対策が重要である。 指標 3:活動的な遊びは,2016 Japan Report Card5)

と同様,47都道府県別においても INCであった。スポーツ庁の平成 28 年度全国体力・運動能力調査結果では,幼児期の外遊びの頻度が多い児童ほ

ど運動習慣が身に付いており,体力テストの合計

点が高い傾向がみられたことが報告された 22)。今

後,活動的な遊びに関する調査が望まれる。 指標 4:活動的な移動手段について,本研究で

は,2016 Japan Report Card 5) の作成後に報告され

たスポーツ庁の平成 27 年度の調査におけるデータを用いた。その結果,全体的には高い評価が得

られたものの,男女ともに最も低い等級の「B」となったのは東北地方の一部の地域や沖縄県であり,

これらの地域において対策を講じる必要性がある。

2016 Japan Report Card 5) における全国の等級は「C」と報告され,本調査では全体的には高い評価とな

った。2016 Japan Report Card 5) における活動的な移

動手段を用いた登園・通学の内訳は,4~5 歳が28%,6~11歳が 93%,12~14歳が 88%,15~17歳が 68%であり,幼児を除くと,年齢が上がるにつれて低下していた。幼児期は,就学前施設のバ

スや保護者が運転する車や自転車などの利用が多

いのかもしれない。また,学齢期では学区のない

私立の学校の生徒数の割合が,小学校は 1.0%,中学校は 7.0%,高等学校では 29.7%と,徐々に増加することが報告されている 23)。本研究では,小学

校 5年生および中学校 2年生が対象であったことから,2016 Japan Report Card 5) の等級よりいずれの

都道府県でも高い等級がみられたものと考えられ

る。 指標 5:座位行動に関しては,すべての都道府

県において,男子は女子に比較して等級が低かっ

た。国際的にみても,座位行動の等級は低い国が

多い 4)。幼少期のスクリーンタイムは,年齢が上

がっても持ち越されることがシステマティックレ

ビューにより指摘されている 21)。更に,加速度計

で客観的に評価した座位時間の縦断研究に関する

システマティックレビューでも,座位時間は幼児

期を除き,加齢に伴い増加することが報告されて

運動疫学研究 2018; 20(1): 37-48. http://jaee.umin.jp/REE.html

42

いて低かった。一方,男子の座位行動の等級は,

いずれの都道府県でも女子に比較して低かった。 本研究で用いたデータは,平成 27 年度と平成 28

年度の全国体力・運動能力,運動習慣等調査 9-12),

および学校保健統計調査であった 13)。前者の調査

対象は,国・公・私立学校の小学校 5 年生および

Table 3 Percentages of each indicator (%)

Prefectures

Boys Girls All Boys Girls All Boys* Girls* All* Boys** Girls** All** Boys Girls All Boys Girls All Boys Girls All

Hokkaido 66.3 42.6 54.5 85.5 83.3 84.4 76.6 75.1 75.8 66.5 40.5 53.5 29.9 39.5 34.7 12.9 11.8 12.3 21.5 15.7 18.6Aomori 74.4 52.9 63.7 70.0 65.5 67.8 74.5 73.3 73.9 58.4 34.7 46.5 35.1 51.0 43.0 13.5 11.5 12.5 23.9 19.0 21.4Iwate 69.7 47.6 58.7 71.5 67.0 69.2 76.4 76.4 76.4 57.4 34.4 45.9 41.5 56.6 49.1 12.5 11.2 11.9 26.8 19.5 23.1Miyagi 65.4 40.2 52.8 81.3 77.5 79.4 76.8 75.6 76.2 60.0 36.2 48.1 31.6 46.7 39.1 12.1 10.1 11.1 23.0 17.5 20.2Akita 78.0 57.6 67.8 72.1 66.6 69.4 73.4 72.1 72.7 58.9 33.1 46.0 45.2 60.4 52.8 12.6 10.9 11.7 28.5 19.5 24.0

Yamagata 73.3 53.2 63.3 85.8 83.4 84.6 79.0 78.2 78.6 62.6 35.5 49.1 33.8 52.2 43.0 12.7 10.1 11.4 26.2 20.0 23.1Fukushima 69.1 47.2 58.2 77.1 71.9 74.5 77.0 74.9 76.0 62.4 37.5 49.9 30.5 47.8 39.2 12.9 10.8 11.9 23.9 19.2 21.5

Ibaraki 66.9 43.8 55.4 88.7 86.5 87.6 78.1 75.9 77.0 62.8 37.3 50.0 48.6 66.9 57.7 11.8 10.2 11.0 24.4 19.2 21.8Tochigi 69.2 47.6 58.4 90.1 88.1 89.1 77.7 74.6 76.1 60.0 32.1 46.0 33.2 51.2 42.2 12.3 10.9 11.6 26.0 19.9 22.9Gumma 70.8 50.2 60.5 89.4 87.1 88.3 76.7 74.1 75.4 58.6 32.8 45.7 33.7 50.8 42.2 10.5 9.1 9.8 25.3 19.2 22.3Saitama 72.0 49.2 60.6 97.7 97.7 97.7 76.0 73.5 74.7 60.6 34.9 47.8 43.3 63.4 53.3 9.7 9.5 9.6 22.0 16.8 19.4Chiba 75.3 53.9 64.6 92.6 90.8 91.7 75.7 72.4 74.0 61.8 36.4 49.1 43.5 61.1 52.3 9.3 7.9 8.6 21.6 16.7 19.1Tokyo 75.0 54.0 64.5 95.5 95.4 95.4 75.6 72.8 74.2 62.2 38.9 50.5 30.0 47.0 38.5 9.5 7.9 8.7 22.2 15.8 19.0

Kanagawa 74.9 52.9 63.9 96.2 95.7 96.0 75.9 73.5 74.7 62.9 38.7 50.8 28.3 39.4 33.8 8.7 8.0 8.3 20.9 15.3 18.1Niigata 73.4 51.4 62.4 85.8 82.4 84.1 78.7 77.4 78.1 65.1 37.7 51.4 46.1 61.4 53.8 10.2 9.4 9.8 22.9 16.8 19.8Toyama 72.6 53.5 63.1 89.0 85.6 87.3 78.4 75.7 77.0 64.1 37.5 50.8 39.2 56.0 47.6 8.6 8.5 8.6 26.0 20.2 23.1Ishikawa 73.5 49.6 61.6 86.8 83.6 85.2 76.7 76.5 76.6 58.4 33.5 45.9 45.9 60.1 53.0 8.9 7.6 8.3 23.0 17.1 20.0

Fukui 74.0 52.7 63.4 85.0 83.2 84.1 72.9 71.1 72.0 59.0 32.0 45.5 51.3 69.6 60.5 8.8 7.2 8.0 23.2 18.0 20.6Yamanashi 70.5 46.6 58.6 85.8 83.3 84.6 76.3 75.7 76.0 58.7 33.6 46.1 30.7 46.8 38.7 12.3 8.9 10.6 23.8 19.3 21.5

Nagano 70.3 49.2 59.8 85.8 82.7 84.2 73.7 71.9 72.8 55.6 30.6 43.1 36.1 49.8 42.9 9.6 8.2 8.9 25.9 18.8 22.3Gifu 70.5 47.8 59.2 91.3 90.3 90.8 73.9 71.6 72.8 59.7 35.3 47.5 35.9 51.1 43.5 8.6 8.2 8.4 27.7 21.5 24.6

Shizuoka 73.8 54.1 64.0 92.0 90.4 91.2 74.7 72.1 73.4 62.2 35.6 48.9 35.9 56.0 45.9 9.6 8.0 8.8 24.2 18.7 21.5Aichi 74.7 55.1 64.9 97.6 97.4 97.5 76.7 74.2 75.4 62.9 37.6 50.3 27.9 45.3 36.6 9.0 7.5 8.2 22.1 17.2 19.6Mie 68.8 48.2 58.5 92.4 90.5 91.4 77.6 75.8 76.7 64.7 38.2 51.4 33.9 48.8 41.3 9.9 8.5 9.2 24.0 19.4 21.7

Shiga 71.2 48.6 59.9 93.7 92.8 93.2 77.1 74.8 75.9 63.2 37.2 50.2 34.9 47.0 40.9 8.1 7.2 7.7 23.6 18.3 21.0Kyoto 75.7 56.0 65.9 94.3 94.1 94.2 77.0 75.7 76.3 63.1 38.2 50.6 31.6 47.4 39.5 8.3 7.7 8.0 21.1 15.2 18.1Osaka 71.3 50.2 60.8 98.0 98.0 98.0 77.2 75.8 76.5 64.6 40.2 52.4 28.0 42.6 35.3 8.4 8.3 8.4 19.3 14.0 16.6Hyogo 71.2 50.5 60.9 95.3 95.2 95.2 76.0 73.4 74.7 58.4 33.7 46.0 28.9 44.5 36.7 7.9 7.1 7.5 21.9 16.3 19.1Nara 70.5 47.7 59.1 93.4 92.2 92.8 75.9 74.3 75.1 62.2 37.0 49.6 35.9 47.6 41.7 9.4 7.2 8.3 22.2 15.8 19.0

Wakayama 71.4 51.2 61.3 87.4 85.6 86.5 77.0 75.4 76.2 67.0 39.9 53.4 36.6 53.4 45.0 9.9 8.5 9.2 22.5 16.9 19.7Tottori 74.0 52.9 63.5 85.7 82.9 84.3 77.6 75.8 76.7 55.0 30.0 42.5 36.5 54.1 45.3 9.0 8.6 8.8 26.6 18.9 22.7

Shimane 74.7 55.1 64.9 87.1 85.4 86.3 76.3 75.3 75.8 55.5 30.2 42.9 35.2 49.4 42.3 9.0 8.4 8.7 26.3 18.2 22.2Okayama 68.0 44.8 56.4 93.3 91.7 92.5 77.5 76.8 77.1 61.0 37.9 49.5 39.6 51.9 45.7 9.7 8.5 9.1 25.2 18.5 21.8Hiroshima 70.1 48.1 59.1 89.6 87.0 88.3 76.9 74.8 75.8 60.6 35.3 47.9 42.5 58.5 50.5 9.0 8.5 8.7 25.8 18.8 22.3Yamaguchi 72.3 47.1 59.7 92.9 90.6 91.7 75.8 73.5 74.6 58.8 34.7 46.7 30.2 47.6 38.9 9.4 8.9 9.1 25.8 19.5 22.6Tokushima 69.2 47.2 58.2 84.8 82.0 83.4 73.9 71.7 72.8 60.1 36.2 48.1 33.6 48.7 41.2 12.5 10.7 11.6 24.7 19.5 22.1Kagawa 71.8 51.6 61.7 90.8 88.3 89.5 78.1 75.3 76.7 62.6 36.1 49.3 33.7 49.2 41.4 9.6 9.5 9.5 25.0 19.0 22.0Ehime 69.1 49.7 59.4 92.4 91.0 91.7 73.6 69.9 71.7 56.8 31.5 44.1 32.7 49.1 40.9 9.4 8.8 9.1 21.4 16.4 18.9Kochi 63.8 41.7 52.8 82.0 75.7 78.9 75.8 75.3 75.5 61.1 37.0 49.1 35.5 47.5 41.5 10.5 10.6 10.5 22.5 16.2 19.3

Fukuoka 70.4 45.9 58.2 90.0 87.6 88.8 75.9 74.2 75.0 58.8 35.4 47.1 34.0 47.3 40.6 9.8 8.0 8.9 21.1 16.3 18.7Saga 70.2 46.9 58.6 86.4 84.4 85.4 75.4 72.4 73.9 55.0 29.4 42.2 35.4 48.7 42.0 8.5 9.5 9.0 21.6 16.5 19.1

Nagasaki 72.0 46.9 59.5 79.9 78.2 79.1 75.0 73.1 74.0 52.4 25.4 38.9 33.3 51.3 42.3 9.1 8.9 9.0 21.5 16.8 19.1Kumamoto 80.4 63.6 72.0 88.5 86.3 87.4 75.2 73.2 74.2 55.4 28.9 42.2 35.3 52.9 44.1 10.0 9.5 9.7 21.9 17.0 19.5

Oita 72.5 47.2 59.9 86.7 84.7 85.7 75.3 73.7 74.5 58.3 33.8 46.0 40.9 53.6 47.3 11.4 10.3 10.9 23.3 16.3 19.8Miyazaki 69.3 45.6 57.5 92.4 90.3 91.3 70.9 67.5 69.2 50.0 27.2 38.6 39.5 53.2 46.3 10.9 9.6 10.3 24.5 19.9 22.2

Kagoshima 70.8 48.0 59.4 82.7 80.4 81.5 73.5 70.6 72.0 50.1 26.0 38.0 29.7 48.0 38.8 9.9 9.2 9.5 23.1 17.8 20.4Okinawa 66.6 42.2 54.4 71.8 66.9 69.4 71.6 67.2 69.4 52.7 31.0 41.9 31.7 44.5 38.1 9.7 9.5 9.6 20.9 15.7 18.3

Mean 71.5 49.6 60.5 87.7 85.4 86.6 75.9 73.9 74.9 59.7 34.6 47.2 35.9 51.4 43.6 10.1 9.0 9.6 23.6 17.8 20.7SD 3.2 4.5 3.8 6.9 8.2 7.5 1.8 2.3 2.0 3.9 3.7 3.7 5.7 6.5 6.0 1.5 1.2 1.3 2.1 1.7 1.8

All over Japan 72.0 50.3 61.2 88.7 82.6 85.6 74.2 70.2 72.2 56.9 33.8 45.3 34.4 51.7 43.0 9.7 8.7 9.2 22.7 17.2 19.9

Index 5: Sedentary BehaviorIndex 2: OrganizedSport Participation

(Percentage of "Yes")

Index 4: ActiveTransportation(Percentage of

"walking or cycling")

Index 6: Physical Fitness(Percentage of

"A and B")

Index 7: Weight Status(Percentage of

"overweight/obesityand underweight")

Index 8: Family andPeer Influence***

*: more than 1 hour per day of watching TV, videos or DVDs viewing (Not playing video games) on weekdays, **: more than 1 hour per day playing video games (PCs, portable electronic devices having a game function, cellular or smart phones) on weekdays, ***: more than once per week play sports or exercise with your family, SD: standard deviation.

Page 8: 児童・生徒における身体活動関連指標の 47 都道府 …jaee.umin.jp/REE/J/20_1_37.pdf方法:“Report Card on Physical Activity for Children and Youth”において国際的な指標とされている身体

運動疫学研究 2018; 20 1 : 37-48. http://jaee.umin.jp/REE.html

44

いる 24)。いずれの地域においても,スクリーンタ

イムを減少させるための対策や,客観的な指標を

用いた座位時間の検討が望まれる。 指標 6:体力に関する国による基準値は,成人

については厚生労働省により最大酸素摂取量が示

されているものの 25),子ども・青少年については

示されていない。しかし,スポーツ庁では,性別,

年齢別に新体力テストの総合得点から「A~E」の評価値を示している。スポーツ庁の平成 27 年度体力・運動能力調査結果において,未だ昭和 60年代に比較して全国の子どもの体力は低いことが報

告されている 26)。本研究より,体力は地域差が顕

著であった。また,体力・運動能力の上位 5位の地域と下位 5位の地域は,男女ともにほぼ同じ地域であった Table 3 。そのため,男女にかかわらず,各地域での対策が重要であることが明らかと

なった。このように,体力については地域特性が

あり,日本の身体活動に関連する課題であり,施

策に活かしやすい指標であろう。 指標 7:体型について,瀧本 27)

は,平成 24年学校保健統計調査の 5,10 および 16 歳児の都道府県別肥満傾向児割合と同年の国民健康・栄養調査

における成人の都道府県別平均 BMI 値が,16 歳男子以外で有意な正の相関を認めたことを報告し

ている。更に,成人期に発症する生活習慣病を小

児期からの介入により予防していくためには,地

域の状況を踏まえた取り組みが重要であると指摘

している。本研究において,体型の地域差は,他

の指標に比較すると小さかったが,最も低い地域

兵庫県 7.5% と最も高い地域 青森県 12.5% で

は,5%の差がみられた Table 3 。 指標 8:家族および仲間の影響の等級は,概し

て評価が低く,男女差もみられた。諸外国におい

て,親子の身体活動量は正の関係があることが複

数報告されている 28,29)。本研究より,家の人と運

動する頻度は,最も高い岐阜県でも 24.6%であった。上位 5位の地域をみると,岐阜県を除き男女で異なる地域であったが,下位 5位ではほぼ同じ地域であった。男女ともに最も等級が高かった岐

阜県においても,等級は男子の「D」であり,本研究で検討した指標の中で,最も等級が低かった。そ

のため,男女にかかわらず,各地域における,家庭

での取り組みが必要であることが明らかとなった。 各都道府県が全国データの 1つのサンプルと考

えると,各都道府県のばらつきはサンプル誤差と

いえる。割合は二項分布に従うので,誤差は割合

が 50%のときに最大で,小さくても大きくても誤差は小さくなる。今回の指標のうち割合が 50%に近い指標で地域格差が大きくなったことは妥当で

ある。等級のように割合の絶対評価だけでなく,

順位づけで各地方自治体の実態が把握しやすくな

る。また今後,割合の差による絶対値の評価だけ

でなく,地域相関研究のように他の要因との関連

性も考慮して保健事業等に活用できる資料にする

ことが可能である。 本研究の限界として,2016 Japan Report Card 5) と

では,対象とした年齢層が同一ではないため,一

概に比較できないという限界がある。すなわち,

本研究は, 主に小学校 5年生と中学校 2年生を対象に,都道府県別に公表されているデータを用い

て評価した等級であったのに対し,2016 Japan Report Card 5) は,幼児から高校生までを対象に,

国の状況を示したデータによる等級であった。ま

た,指標 7:体型を除き,対象者が小学校 5 年生と中学校 2年生のみに限られていることから,すべての児童と生徒をとらえているわけではないと

いう点でも限界がある。更に,経年的に 47都道府県の順位が安定している場合には,地域特性を表

していることになるため,地域の特性を評価する

には経年安定性や経年変化も評価すべきである。

しかし,本研究では,年度により質問内容が異な

る項目があったため,経年安定性や経年変化を検

討することができないという限界があった。また,

公表データを使用することにより,都道府県別と

いう大きな集団単位でしか結果が把握できない点

は限界であり,より小さい単位の社会・経済的要

因をふまえた身体不活動のリスクの高い集団を明

らかにすることは今後の課題である。このような

限界はあるものの,国際的な手法を都道府県別の

状況の評価に適用した初めての取り組みである点

に意義がある。国際的にみられる各指標の地域間

変動や一般的な集団における標準偏差のようなバ

ラツキの指標の値を考慮すると,本研究により示

された各指標における地域間差は,体力を除き小

さく,国際比較とは異なっていた 4)。これは,本

研究が,同じ調査結果を用いて比較可能であった

ことにもよると考えられる。また,等級としての

差は小さいものの,Table 3に示したとおり,各指標の該当する割合でみると,地域間差の存在が明

確となった。 一方, 各地域での一部の指標の等級

は,いずれの地域でも低く,それらの改善が必要で

あることが示唆された。 更に,2016 Japan Report

運動疫学研究 2018; 20 1 : 37-48. http://jaee.umin.jp/REE.html

45

Card 5)では等級付けが実施されていない性差に関

して,性差のあった指標が,活動的な移動手段を

除き 47 都道府県間でほぼ一致していることが明らかとなった。このことは,性差に関しては,ど

の地域も同じような取り組みが有益である可能性

を示唆している。

5.結 論

本研究においては,世界共通指標を用いた日常

生活全般の身体活動量の関連指標を評価する

2016 Japan Report Card 5) の枠組みを基盤とし,全

国体力・運動能力,運動習慣等調査および学校保

健統計調査を用いて,児童・生徒の身体活動の関

連指標に関して地域間比較を男女別に行った。そ

の結果,活動的な移動手段および体型の等級は,

いずれの都道府県でも良好であった。組織化され

たスポーツへの参加は,中程度の評価が得られた

地域と低い評価の地域がみられた。座位行動およ

び体力の等級は,評価が低い地域とかなり低い地

域がみられた。家族と仲間の影響の等級は,いず

れの都道府県でもかなり低かった。日常全般の身

体活動量と活動的な遊びのデータは 47 都道府県を代表するデータがなかったため,等級付けする

ことができなかった。また,女子は男子に比較し

て,組織化されたスポーツへの参加と家族および

仲間の影響の等級はいずれの都道府県でも,そし

て,活動的な移動手段の等級は一部の地域におい

て,低い傾向にあった。一方,座位行動は,男子

の等級がいずれの都道府県でも女子に比較して低

かった。このように,体力などの指標では地域特

性をとらえることができ,それぞれの地域での施

策立案に活用できるものである。また等級付けを

することで,数値データと似た結果を示すことが

でき,万人にわかりやすく伝えられる。ただし,

指標の元データがない,等級を決める基準値がな

いという課題があり,全国的な身体活動量測定,

データの継続的な収集,身体活動関連要因との因

果関係を示す研究が必要である。

謝 辞

本研究は、平成 28年度 第 29回 中冨健康科学

振興財団「研究助成金」により実施した。開示す

べき COI状態はない。

文 献 1) World Health Organization. Global recommenda-

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8) 東京都教育委員会.平成 23年度東京都児童・生徒体力・運動能力,生活・運動習慣等調査 報告書.2011. http://www.kyoiku.metro.tokyo. jp/pickup/23sporttest.htm 2018 年 2 月 24 日アクセス可能

9) スポーツ庁.平成 27 年度全国体力・運動能力,運動習慣等調査集計結果.2015. http:// www.mext.go.jp/prev_sports/comp/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2015/12/18/1365277_2.pdf

2017年 11月 7日アクセス可能 10) スポーツ庁.平成 27 年度全国体力・運動能

力,運動習慣等調査集計結果.2015. http:// www.mext.go.jp/prev_sports/comp/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2015/12/18/1365277_5.pdf

2017年 11月 7日アクセス可能 11) スポーツ庁.平成 28 年度全国体力・運動能

力,運動習慣等調査集計結果.2016. http://

Page 9: 児童・生徒における身体活動関連指標の 47 都道府 …jaee.umin.jp/REE/J/20_1_37.pdf方法:“Report Card on Physical Activity for Children and Youth”において国際的な指標とされている身体

運動疫学研究 2018; 20 1 : 37-48. http://jaee.umin.jp/REE.html

44

いる 24)。いずれの地域においても,スクリーンタ

イムを減少させるための対策や,客観的な指標を

用いた座位時間の検討が望まれる。 指標 6:体力に関する国による基準値は,成人

については厚生労働省により最大酸素摂取量が示

されているものの 25),子ども・青少年については

示されていない。しかし,スポーツ庁では,性別,

年齢別に新体力テストの総合得点から「A~E」の評価値を示している。スポーツ庁の平成 27 年度体力・運動能力調査結果において,未だ昭和 60年代に比較して全国の子どもの体力は低いことが報

告されている 26)。本研究より,体力は地域差が顕

著であった。また,体力・運動能力の上位 5位の地域と下位 5位の地域は,男女ともにほぼ同じ地域であった Table 3 。そのため,男女にかかわらず,各地域での対策が重要であることが明らかと

なった。このように,体力については地域特性が

あり,日本の身体活動に関連する課題であり,施

策に活かしやすい指標であろう。 指標 7:体型について,瀧本 27)

は,平成 24年学校保健統計調査の 5,10 および 16 歳児の都道府県別肥満傾向児割合と同年の国民健康・栄養調査

における成人の都道府県別平均 BMI 値が,16 歳男子以外で有意な正の相関を認めたことを報告し

ている。更に,成人期に発症する生活習慣病を小

児期からの介入により予防していくためには,地

域の状況を踏まえた取り組みが重要であると指摘

している。本研究において,体型の地域差は,他

の指標に比較すると小さかったが,最も低い地域

兵庫県 7.5% と最も高い地域 青森県 12.5% で

は,5%の差がみられた Table 3 。 指標 8:家族および仲間の影響の等級は,概し

て評価が低く,男女差もみられた。諸外国におい

て,親子の身体活動量は正の関係があることが複

数報告されている 28,29)。本研究より,家の人と運

動する頻度は,最も高い岐阜県でも 24.6%であった。上位 5位の地域をみると,岐阜県を除き男女で異なる地域であったが,下位 5位ではほぼ同じ地域であった。男女ともに最も等級が高かった岐

阜県においても,等級は男子の「D」であり,本研究で検討した指標の中で,最も等級が低かった。そ

のため,男女にかかわらず,各地域における,家庭

での取り組みが必要であることが明らかとなった。 各都道府県が全国データの 1つのサンプルと考

えると,各都道府県のばらつきはサンプル誤差と

いえる。割合は二項分布に従うので,誤差は割合

が 50%のときに最大で,小さくても大きくても誤差は小さくなる。今回の指標のうち割合が 50%に近い指標で地域格差が大きくなったことは妥当で

ある。等級のように割合の絶対評価だけでなく,

順位づけで各地方自治体の実態が把握しやすくな

る。また今後,割合の差による絶対値の評価だけ

でなく,地域相関研究のように他の要因との関連

性も考慮して保健事業等に活用できる資料にする

ことが可能である。 本研究の限界として,2016 Japan Report Card 5) と

では,対象とした年齢層が同一ではないため,一

概に比較できないという限界がある。すなわち,

本研究は, 主に小学校 5年生と中学校 2年生を対象に,都道府県別に公表されているデータを用い

て評価した等級であったのに対し,2016 Japan Report Card 5) は,幼児から高校生までを対象に,

国の状況を示したデータによる等級であった。ま

た,指標 7:体型を除き,対象者が小学校 5 年生と中学校 2年生のみに限られていることから,すべての児童と生徒をとらえているわけではないと

いう点でも限界がある。更に,経年的に 47都道府県の順位が安定している場合には,地域特性を表

していることになるため,地域の特性を評価する

には経年安定性や経年変化も評価すべきである。

しかし,本研究では,年度により質問内容が異な

る項目があったため,経年安定性や経年変化を検

討することができないという限界があった。また,

公表データを使用することにより,都道府県別と

いう大きな集団単位でしか結果が把握できない点

は限界であり,より小さい単位の社会・経済的要

因をふまえた身体不活動のリスクの高い集団を明

らかにすることは今後の課題である。このような

限界はあるものの,国際的な手法を都道府県別の

状況の評価に適用した初めての取り組みである点

に意義がある。国際的にみられる各指標の地域間

変動や一般的な集団における標準偏差のようなバ

ラツキの指標の値を考慮すると,本研究により示

された各指標における地域間差は,体力を除き小

さく,国際比較とは異なっていた 4)。これは,本

研究が,同じ調査結果を用いて比較可能であった

ことにもよると考えられる。また,等級としての

差は小さいものの,Table 3に示したとおり,各指標の該当する割合でみると,地域間差の存在が明

確となった。 一方, 各地域での一部の指標の等級

は,いずれの地域でも低く,それらの改善が必要で

あることが示唆された。 更に,2016 Japan Report

運動疫学研究 2018; 20 1 : 37-48. http://jaee.umin.jp/REE.html

45

Card 5)では等級付けが実施されていない性差に関

して,性差のあった指標が,活動的な移動手段を

除き 47 都道府県間でほぼ一致していることが明らかとなった。このことは,性差に関しては,ど

の地域も同じような取り組みが有益である可能性

を示唆している。

5.結 論

本研究においては,世界共通指標を用いた日常

生活全般の身体活動量の関連指標を評価する

2016 Japan Report Card 5) の枠組みを基盤とし,全

国体力・運動能力,運動習慣等調査および学校保

健統計調査を用いて,児童・生徒の身体活動の関

連指標に関して地域間比較を男女別に行った。そ

の結果,活動的な移動手段および体型の等級は,

いずれの都道府県でも良好であった。組織化され

たスポーツへの参加は,中程度の評価が得られた

地域と低い評価の地域がみられた。座位行動およ

び体力の等級は,評価が低い地域とかなり低い地

域がみられた。家族と仲間の影響の等級は,いず

れの都道府県でもかなり低かった。日常全般の身

体活動量と活動的な遊びのデータは 47 都道府県を代表するデータがなかったため,等級付けする

ことができなかった。また,女子は男子に比較し

て,組織化されたスポーツへの参加と家族および

仲間の影響の等級はいずれの都道府県でも,そし

て,活動的な移動手段の等級は一部の地域におい

て,低い傾向にあった。一方,座位行動は,男子

の等級がいずれの都道府県でも女子に比較して低

かった。このように,体力などの指標では地域特

性をとらえることができ,それぞれの地域での施

策立案に活用できるものである。また等級付けを

することで,数値データと似た結果を示すことが

でき,万人にわかりやすく伝えられる。ただし,

指標の元データがない,等級を決める基準値がな

いという課題があり,全国的な身体活動量測定,

データの継続的な収集,身体活動関連要因との因

果関係を示す研究が必要である。

謝 辞

本研究は、平成 28年度 第 29回 中冨健康科学

振興財団「研究助成金」により実施した。開示す

べき COI状態はない。

文 献 1) World Health Organization. Global recommenda-

tions on physical activity for health. 2010. http://www.who.int/dietphysicalactivity/factsheet_young_people/en/ 2017年 12月 15日アクセス可能

2) Hallal PC, Martins RC, Ramírez A. The Lancet Physical Activity Observatory: promoting physi-cal activity worldwide. Lancet. 2014; 384: 471-2.

3) 田中千晶.日本の子供における日常の身体活動およびその変動要因の国際比較に向けた

評価法の確立.体力科学.2017; 66(4): 235-44. 4) Tremblay MS, Barnes JD, Gonzalez SA, et al.

Global Matrix 2.0: Report Card Grades on the Physical Activity of Children and Youth Compar-ing 38 Countries. J Phys Act Health. 2016; 13(11 Suppl 2): S343-66.

5) Tanaka C, Tanaka S, Inoue S, Miyachi M, Suzuki K, Reilly JJ. Results From Japan’s 2016 Report Card on Physical Activity for Children and Youth. J Phys Act Health. 2016; 13(11 Suppl 2): S189-94.

6) 厚生労働省.平成 28年国民健康・栄養調査結果の概要.2017. http://www.mhlw.go.jp/stf/ houdou/0000177189.html 2017 年 11 月 7 日アクセス可能

7) スポーツ庁.スポーツ基本計画.2017. http:// www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop01/list/1372413.htm 2017年 11月 7日アクセス可能

8) 東京都教育委員会.平成 23年度東京都児童・生徒体力・運動能力,生活・運動習慣等調査 報告書.2011. http://www.kyoiku.metro.tokyo. jp/pickup/23sporttest.htm 2018 年 2 月 24 日アクセス可能

9) スポーツ庁.平成 27 年度全国体力・運動能力,運動習慣等調査集計結果.2015. http:// www.mext.go.jp/prev_sports/comp/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2015/12/18/1365277_2.pdf

2017年 11月 7日アクセス可能 10) スポーツ庁.平成 27 年度全国体力・運動能

力,運動習慣等調査集計結果.2015. http:// www.mext.go.jp/prev_sports/comp/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2015/12/18/1365277_5.pdf

2017年 11月 7日アクセス可能 11) スポーツ庁.平成 28 年度全国体力・運動能

力,運動習慣等調査集計結果.2016. http://

Page 10: 児童・生徒における身体活動関連指標の 47 都道府 …jaee.umin.jp/REE/J/20_1_37.pdf方法:“Report Card on Physical Activity for Children and Youth”において国際的な指標とされている身体

運動疫学研究 2018; 20 1 : 37-48. http://jaee.umin.jp/REE.html

46

www.mext.go.jp/prev_sports/comp/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2016/12/15/1380511_02.pdf

2017年 11月 7日アクセス可能 12) スポーツ庁.平成 28 年度全国体力・運動能

力,運動習慣等調査集計結果.2016. http:// www.mext.go.jp/prev_sports/comp/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2016/12/15/1380511_05.pdf

2017年 11月 7日アクセス可能 13) 文部科学省.学校保健統計調査平成 27 年度

都道府県表.2016. http://www.e-stat.go.jp/SG1 /estat/List.do?bid=000001070660&cycode=0

2017年 11月 7日アクセス可能 14) Department of Health, Physical Activity, Health

Improvement and Protection. Start Active, Stay Active: A report on physical activity for health from the four home countries’ Chief Medical Officers. United Kingdom. 2011. www.dh.gov. uk/en/Publicationsandstatistics/Publications/PublicationsPolicyAndGuidance/DH_128209 2017年 11月 7日アクセス可能

15) Canadian Society for Exercise Physiology: Canadian Physical Activity Guidelines and Canadian Sedentary Behaviour Guidelines. 2012. http://www.csep.ca/en/guidelines/get-the-guidelines

2017年 11月 7日アクセス可能 16) Australian Government Department of Health.

Australia’s Physical Activity & Sedentary Behav-iour Guidelines for Children (5-12 years). 2014.http://www.health.gov.au/internet/main/publishing.nsf/content/F01F92328EDADA5BCA257BF0001E720D/$File/brochure%20PA%20Guidelines_A5_5-12yrs.pdf 2017年 11月 7日アクセス可能

17) Amornsriwatanakul A, Nakornkhet K, Katewongsa P, et al. Results From Thailand’s 2016 Report Card on Physical Activity for Children and Youth. J Phys Act Health. 2016; 13(11 Suppl 2): S291-8.

18) 文部科学省.2015. http://www.mext.go.jp/com- ponent/a_menu/sports/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/12/11/1365117_1.pdf 2018 年 2 月 16 日アクセス可能

19) スポーツ庁.2016. http://www.mext.go.jp/prev _sports/comp/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2016/12/15/1380539_01.pdf 2018年 2月 16日アクセス可能

20) 文部科学省.2016. http://www.mext.go.jp/com-

ponent/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2016/ 03/28/1365988_02.pdf 2018 年 2 月 16 日アクセス可能

21) Jones RA, Hinkley T, Okely AD, et al. Tracking physical activity and sedentary behavior in childhood: a systematic review. Am J Prev Med. 2013; 44: 651-8.

22) スポーツ庁.平成 28年度体力・運動調査結果の概要及び報告書について.2017. http:// www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/tairyoku/kekka/k_detail/1396900.htm 2017 年11月 7日アクセス可能

23) 文部科学省.教育指標の国際比較 平成 20年版 付録 3 各国の私立学校の割合.2008. http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/001/08030520/021/003.htm 2017年 11月 7日アクセス可能

24) Tanaka C, Reilly JJ, Huang WY. Longitudinal changes in objectively measured sedentary behavior and their relationship with adiposity in children and adolescents: systematic review and evidence appraisal. Obes Rev. 2014; 15: 791-803.

25) 運動所要量・運動指針の策定検討会.健康づくりのための運動基準 2006―身体活動・運動・体力―報告書.2006. http://www.mhlw. go.jp/bunya/kenkou/undou02/pdf/data.pdf

2017年 11月 7日アクセス可能 26) スポーツ庁.平成 27年度体力・運動能力調査

結果の概要及び報告書について.2016.http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/tairyoku/kekka/k_detail/1377959.htm

2017年 11月 7日アクセス可能 27) 瀧本秀美.小児期からの生活習慣病対策及び

生涯の健診等データの蓄積・伝達の重要性に

ついて―都道府県別調査データの再解析よ

り―.日本衛生学雑誌.2017; 72: 1-4. 28) Dunton GF, Liao Y, Almanza E, et al. Joint

physical activity and sedentary behavior in parent-child pairs. Med Sci Sports Exerc. 2012; 44: 1473-80.

29) McMurray RG, Berry DC, Schwartz TA, et al. Relationships of physical activity and sedentary time in obese parent-child dyads: a cross-sectional study. BMC Public Health. 2016; 16: 124.

運動疫学研究 2018; 20 1 : 37-48. http://jaee.umin.jp/REE.html

47

【Practice Article】

Comparison of Indicators for Physical Activity in Primary School and Junior High School Students in 47 Prefectures

-According to International Indicators Based on “REPORT CARD ON PHYSICAL ACTIVITY FOR CHILDREN AND YOUTH” -

Chiaki Tanaka1), Takafumi Abe2), Shinpei Okada3),

Shigeho Tanaka4), Masayuki Okuda5)

Abstract

Objective: The aim of the present study is to compare indicators of physical activity by gender in primary school and junior high school students in 47 prefectures based on international indicators.

Methods: The determinants of physical activity based on international ind icators of “Report Card on Physical Activity for Children and Youth” were evaluated by representative data from 47 prefectures in primary school and junior high school students. The percentage of students meeting the criteria for each indicator was calcula ted and each indicator, divided by gender, was assigned a grade. Results: “Active Transportation,” and “Weight Status,” received from A+ to B grades in all 47 prefectures. The grade for “Organized Sport Participation” was from B to C, while “Physical Fitness” grades ranged from B to D. The grade for “Sedentary Behavior” was from C to D+. In the influences domain, “Family and Peer Influence” were graded as D- or F. “Overall Physical Activity” and “Active Play” could not be graded. In terms of gender differences, girls’ grades for “Organized Sport Participation” and “Family and Peer Influence” were lower than those of boys in every prefecture. In some prefectures, girls also had lower grades for “Active Transportation” than those of boys. In keeping with this trend, boy’s grades in “Sedentary Behavior” were also lower than those of girls in every prefecture. Conclusion: The differences in all indicators except for “Physical Fitness” among prefectures were small. However, grades for some indicators were low, which has to be improved. One notable finding was that girls lagged behind boys in indicators for “Sports Participation” and “Family and Peer Influence”, and also for “Active Transportation” in some prefectures. Boys’ “Sedentary Behavior” was lower than that of girls in every prefecture; this suggests there is a need for strategy appropriate to each prefecture, considering the gender differences.

Key words: exercise, gender difference, region, family, screen time

1)Division of Integrated Sciences, J.F. Oberlin University, Machida, Japan 2)Center for Community-Based Healthcare Research and Education (CoHRE), Shimane University, Izumo, Japan 3)Physical Education and Medicine Research Foundation, Tomi, Japan 4)Department of Nutrition and Metabolism, National Institute of Health and Nutrition, National Institutes of Biomedical

Innovation, Health and Nutrition, Tokyo, Japan 5)Department of Environmental Medicine, Graduate School of Science and Engineering, Yamaguchi University, Ube, Japan

Page 11: 児童・生徒における身体活動関連指標の 47 都道府 …jaee.umin.jp/REE/J/20_1_37.pdf方法:“Report Card on Physical Activity for Children and Youth”において国際的な指標とされている身体

運動疫学研究 2018; 20 1 : 37-48. http://jaee.umin.jp/REE.html

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www.mext.go.jp/prev_sports/comp/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2016/12/15/1380511_02.pdf

2017年 11月 7日アクセス可能 12) スポーツ庁.平成 28 年度全国体力・運動能

力,運動習慣等調査集計結果.2016. http:// www.mext.go.jp/prev_sports/comp/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2016/12/15/1380511_05.pdf

2017年 11月 7日アクセス可能 13) 文部科学省.学校保健統計調査平成 27 年度

都道府県表.2016. http://www.e-stat.go.jp/SG1 /estat/List.do?bid=000001070660&cycode=0

2017年 11月 7日アクセス可能 14) Department of Health, Physical Activity, Health

Improvement and Protection. Start Active, Stay Active: A report on physical activity for health from the four home countries’ Chief Medical Officers. United Kingdom. 2011. www.dh.gov. uk/en/Publicationsandstatistics/Publications/PublicationsPolicyAndGuidance/DH_128209 2017年 11月 7日アクセス可能

15) Canadian Society for Exercise Physiology: Canadian Physical Activity Guidelines and Canadian Sedentary Behaviour Guidelines. 2012. http://www.csep.ca/en/guidelines/get-the-guidelines

2017年 11月 7日アクセス可能 16) Australian Government Department of Health.

Australia’s Physical Activity & Sedentary Behav-iour Guidelines for Children (5-12 years). 2014.http://www.health.gov.au/internet/main/publishing.nsf/content/F01F92328EDADA5BCA257BF0001E720D/$File/brochure%20PA%20Guidelines_A5_5-12yrs.pdf 2017年 11月 7日アクセス可能

17) Amornsriwatanakul A, Nakornkhet K, Katewongsa P, et al. Results From Thailand’s 2016 Report Card on Physical Activity for Children and Youth. J Phys Act Health. 2016; 13(11 Suppl 2): S291-8.

18) 文部科学省.2015. http://www.mext.go.jp/com- ponent/a_menu/sports/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/12/11/1365117_1.pdf 2018 年 2 月 16 日アクセス可能

19) スポーツ庁.2016. http://www.mext.go.jp/prev _sports/comp/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2016/12/15/1380539_01.pdf 2018年 2月 16日アクセス可能

20) 文部科学省.2016. http://www.mext.go.jp/com-

ponent/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2016/ 03/28/1365988_02.pdf 2018 年 2 月 16 日アクセス可能

21) Jones RA, Hinkley T, Okely AD, et al. Tracking physical activity and sedentary behavior in childhood: a systematic review. Am J Prev Med. 2013; 44: 651-8.

22) スポーツ庁.平成 28年度体力・運動調査結果の概要及び報告書について.2017. http:// www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/tairyoku/kekka/k_detail/1396900.htm 2017 年11月 7日アクセス可能

23) 文部科学省.教育指標の国際比較 平成 20年版 付録 3 各国の私立学校の割合.2008. http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/001/08030520/021/003.htm 2017年 11月 7日アクセス可能

24) Tanaka C, Reilly JJ, Huang WY. Longitudinal changes in objectively measured sedentary behavior and their relationship with adiposity in children and adolescents: systematic review and evidence appraisal. Obes Rev. 2014; 15: 791-803.

25) 運動所要量・運動指針の策定検討会.健康づくりのための運動基準 2006―身体活動・運動・体力―報告書.2006. http://www.mhlw. go.jp/bunya/kenkou/undou02/pdf/data.pdf

2017年 11月 7日アクセス可能 26) スポーツ庁.平成 27年度体力・運動能力調査

結果の概要及び報告書について.2016.http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/tairyoku/kekka/k_detail/1377959.htm

2017年 11月 7日アクセス可能 27) 瀧本秀美.小児期からの生活習慣病対策及び

生涯の健診等データの蓄積・伝達の重要性に

ついて―都道府県別調査データの再解析よ

り―.日本衛生学雑誌.2017; 72: 1-4. 28) Dunton GF, Liao Y, Almanza E, et al. Joint

physical activity and sedentary behavior in parent-child pairs. Med Sci Sports Exerc. 2012; 44: 1473-80.

29) McMurray RG, Berry DC, Schwartz TA, et al. Relationships of physical activity and sedentary time in obese parent-child dyads: a cross-sectional study. BMC Public Health. 2016; 16: 124.

運動疫学研究 2018; 20 1 : 37-48. http://jaee.umin.jp/REE.html

47

【Practice Article】

Comparison of Indicators for Physical Activity in Primary School and Junior High School Students in 47 Prefectures

-According to International Indicators Based on “REPORT CARD ON PHYSICAL ACTIVITY FOR CHILDREN AND YOUTH” -

Chiaki Tanaka1), Takafumi Abe2), Shinpei Okada3),

Shigeho Tanaka4), Masayuki Okuda5)

Abstract

Objective: The aim of the present study is to compare indicators of physical activity by gender in primary school and junior high school students in 47 prefectures based on international indicators.

Methods: The determinants of physical activity based on international ind icators of “Report Card on Physical Activity for Children and Youth” were evaluated by representative data from 47 prefectures in primary school and junior high school students. The percentage of students meeting the criteria for each indicator was calcula ted and each indicator, divided by gender, was assigned a grade. Results: “Active Transportation,” and “Weight Status,” received from A+ to B grades in all 47 prefectures. The grade for “Organized Sport Participation” was from B to C, while “Physical Fitness” grades ranged from B to D. The grade for “Sedentary Behavior” was from C to D+. In the influences domain, “Family and Peer Influence” were graded as D- or F. “Overall Physical Activity” and “Active Play” could not be graded. In terms of gender differences, girls’ grades for “Organized Sport Participation” and “Family and Peer Influence” were lower than those of boys in every prefecture. In some prefectures, girls also had lower grades for “Active Transportation” than those of boys. In keeping with this trend, boy’s grades in “Sedentary Behavior” were also lower than those of girls in every prefecture. Conclusion: The differences in all indicators except for “Physical Fitness” among prefectures were small. However, grades for some indicators were low, which has to be improved. One notable finding was that girls lagged behind boys in indicators for “Sports Participation” and “Family and Peer Influence”, and also for “Active Transportation” in some prefectures. Boys’ “Sedentary Behavior” was lower than that of girls in every prefecture; this suggests there is a need for strategy appropriate to each prefecture, considering the gender differences.

Key words: exercise, gender difference, region, family, screen time

1)Division of Integrated Sciences, J.F. Oberlin University, Machida, Japan 2)Center for Community-Based Healthcare Research and Education (CoHRE), Shimane University, Izumo, Japan 3)Physical Education and Medicine Research Foundation, Tomi, Japan 4)Department of Nutrition and Metabolism, National Institute of Health and Nutrition, National Institutes of Biomedical

Innovation, Health and Nutrition, Tokyo, Japan 5)Department of Environmental Medicine, Graduate School of Science and Engineering, Yamaguchi University, Ube, Japan

Page 12: 児童・生徒における身体活動関連指標の 47 都道府 …jaee.umin.jp/REE/J/20_1_37.pdf方法:“Report Card on Physical Activity for Children and Youth”において国際的な指標とされている身体

運動疫学研究 2018; 20(1): 37-48. http://jaee.umin.jp/REE.html

48

添付資

料1.

本研究で用

いた各指標

の調査デー

タおよび

質問文など

指標

2:組

織化された

スポーツへの参加

指標

4:活動

的な移動

手段

資料

5:座位行動

指標

6:体力

指標

7:体型

指標

8:家

族および仲

間の影響

調査

全国体力・運動能力,

運動習慣等調査

全国体力・運動能力,

運動習慣等調査

全国体力・運動能力,運動習慣等調査

全国体

力・運動能力,

運動習

慣等調査

学校保

健統計調査

全国体力・運動能力,

運動習慣等調査

所管

スポーツ庁

スポーツ庁

スポーツ庁

スポー

ツ庁

文部科

学省

スポーツ庁

年度

平成

27年度

平成

28年度

平成

27年

平成

27年度

平成

27年度

平成

27年度

対象

小学校第

5学年

小学校第

5学年およ

び中学校第

2学年

小学校第

5学年および中学校第

2学年

小学校

第5学年およ

び中学

校第

2学年

小学校

第1学年から

中学校第

3学年

小学校第

5学年およ

び中学校第

2学年

質問

文も

しく

は評価指標

校の

運動

部や

学校

外の

スポ

ーツ

クラ

に入

って

いま

すか

(ス

ポー

ツ少

年団

ふくみます)

ふだ

んの

登校

方法

つい

て聞

きま

す。

ては

まる

もの

を全

選んでください。

ふだんの平日(月~金曜

日)について聞きます。

1日

にど

れく

らい

の時

間,

テレ

ビや

ビデ

オ・

DV

Dを見たり,聞いた

りして

います

か。

(テレ

ビゲ

ーム

をす

る時

間は

除きます)

ふだんの平日(月~金曜

日)について

聞きます。

1日

にど

れく

らい

の時

間,テ

レビ

ゲーム

(コ

ピューターゲ

ーム,けい

帯式のゲーム

,けい帯電

話や

スマ

ート

フォ

ンを

使った

ゲー

ムをふ

くむ

)

をしますか。

総合評

価Aおよび

Bの割合

満傾

向児

およ

び痩

身傾向

児の出現率

の人

とい

っし

に,

運動

やス

ポー

をど

のく

らい

しま

か。

選択肢

1.

入って

いる,

2.入

っていない

1.

徒歩,

2.自転車,

3.スクールバス,

4.路線バス・電車・自家

用車

1.5時間以上

,2.

3時

間以上

5時間未満,

3.1時間以上

3時間未満

4.1時間未満,

5.全く

見たり,聞いたりしない

1.5時

間以上,

2.3時

間以上

5時

間未満,

3.1時間以上

3時間未満,

4.1時間

未満,

5.全く

しない

1.週に

1回以上,

2.2週間に

1回程度,

3.1か月に

1回程度,

4.年に数

回,

5.全く

しない

運動疫学研究 2018; 20 1 : 49-53. Copyright ○c 2018 by the Japanese Association of Exercise Epidemiology

49

【日本運動疫学会声明】

スポーツ庁「FUN+WALK PROJECT」を支持する声明

日本運動疫学会公式声明委員会

山本 直史 桑原 恵介 丸藤 祐子

國井 実 神野 宏司 澤田 亨

公式声明委員会は 2018 年 1 月 18 日にスポーツ

庁の「FUN+WALK PROJECT」を支持する声明を

発表しました。 .声明

日本運動疫学会は,働き盛り世代のスポーツ参

画人口拡大を目指したスポーツ庁の「FUN+WALK PROJECT」*1 を支持します。 .概要

スポーツ庁は,「楽しい」と「歩く」を組み合わ

せて,スポーツに取り組むきっかけを促す「FUN+ WALK PROJECT」の開始を発表しました。20~40歳代のいわゆるビジネスパーソンのスポーツ実施

率は低く,国民全体のスポーツ実施率の向上の ためには,ビジネスパーソンの実施率を引き上 げることが重要とされています。「FUN+WALK PROJECT」は,これらビジネスパーソンを中心的

なターゲットとして,普段の生活から気軽に取り

入れることのできる 「歩くこと」 に焦点を当てた,

スポーツをする時間の取れない働き盛り世代に対

する環境整備を目指したプロジェクトです。2018年 3 月からは,スニーカー通勤やソールの厚い革

靴,リュックでの通勤など“歩きやすい服装”を

奨励する第 1 弾のキャンペーンがスタートします。

このキャンペーンでは 1 日の歩数を普段よりも

1,000 歩増加させることを目標としています。 ま

た,「FUN+WALK PROJECT」は民間企業や団体と

連携しながら社会全体を盛り上げ,活動の普及啓

発を行っていくこととしています。身体活動*2 に

よる国民の健康の保持・増進効果や身体活動 の促進方法を研究している日本運動疫学会は

「FUN+WALK PROJECT」を支持し,特にその評価・

検証の重要性を考慮しつつ,積極的に協力してい

きます。 .声明の背景

2010 年,世界保健機関 WHO は,国家レベルの

政策立案者を対象に,健康のための身体活動に関

する国際勧告を発表しました*3。2012 年,世界ト

ップレベルの医学誌である「ランセット」が身体

活動不足の特集号*4 を組み,身体活動不足は世界

的な大流行 パンデミック の状態であること,健

康上の悪影響はタバコと同等であること,1 年間

で全世界の 530 万人が身体活動不足が原因で死亡

していると報告しています。2016 年に発表された

「ランセット」の特集第 2 報*5 は,世界における

身体活動不足の状況に大きな変化がないことを憂

慮し,この問題を解決するためには,多部門の協

働と対策の規模拡大 スケールアップ が必要であ

ることを指摘しています。 エコロジカルモデル*6 では,多くの人に影響を

与える「環境」を整備することによってポピュレ

ーションレベルでの身体活動促進を行うことがで

き,かつ個人を対象としたプログラムも効果的に

機能する可能性が考えられています。今回のスポ

ーツ庁の「FUN+WALK PROJECT」は,身体活動・

スポーツに関する環境の改善に着目した多部門の

協働による大規模キャンペーンであり,ポピュレ

ーションレベルにおける身体活動量の増加が期待

されます。今回目標値として掲げられた 1 日 1,000歩の増加 10 分の身体活動時間の増加 が達成さ

れれば,個人に対してはがんをはじめとした生活

習慣病や死亡に対するリスクの 3~4%の軽減が

期待できます。更に,多くの人が歩数を 1,000 歩

ずつ増加すれば国民の平均値は確実にシフトし,

国民医療費抑制等の国民全体への大きな効果も期

待できます。しかし同時に,国内外の多くの研究

によって,身体活動を地域・国全体のレベルで高

めていくことは非常に難しい課題であることも分

かっています。キャンペーンが本当に社会的に良

い効果をもたらすためには,これら身体活動の「普

及戦略」に関する科学的知見に基づき,キャンペ

ーンをしっかりと評価・検証し,定期的に改善を

図りながら長期的に取り組んでいくことが必要と

考えられます。