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拠点とゾーンの整備方針 ~皆がつどい活動する地域の拠点を造るために~ 126 鎌倉市都市マスタープラン 11 1.都市拠点の整備 「骨格的な都市構造」を踏まえて、緑により分 節化された市街地の中に鎌倉駅周辺、大船駅周辺、 深沢地域国鉄跡地周辺を都市機能の集積と市民生 活の向上を図る拠点として位置付けます。 都市拠点の整備に際しては、「まちづくりの新た な視点」として位置付けた、鎌倉ならではの空間 文化 の再構築や防災・減災まちづくり、環境共生 まちづくり、暮らしのサポート等の視点を踏まえ て、整備計画の充実を図ります。 1)鎌倉駅周辺地区 ()考え方 鎌倉地域の中心市街地として、社寺等の歴史的 遺産や公共公益施設の集積等をいかした、修景的 な整備を図ります。 ()整備の方向性 ①景観整備 ・景観地区の指定を踏まえた、良好な都市環境、 都市景観の創出 ・歴史的環境の保全、活用 ②基盤整備 ・古都鎌倉の玄関口にふさわしい質の高い駅前広 場の再編 ・安全で安心して歩くことのできる歩行環境の更 なる改善 ③商業基盤、観光基盤整備 ・歴史的環境と調和した商業及び観光基盤の充実 ・歩行環境の改善、まち並みの形成、公共トイレ の改善など、来訪者をもてなす快適な環境整備 の推進 ④公共施設整備 ・文化発信拠点の整備 ・「鎌倉市公共施設再編計画」(平成 27 3 月)を 踏まえた、公共施設の再編整備 2)大船駅周辺地区 ()考え方 大船駅の交通結節性と地域の個性をいかし、活 力に溢れ、豊かな生活文化を創造し発信するまち を目指します。そのため、商業拠点の形成と都市 機能の強化によるにぎわいの創出と、安全、安心 で優しさと快適さを備えた魅力ある都市環境の創 造を図り、大船全体の魅力と拠点性を高めます。 ()整備の方向性 ①大船駅圏域の拡大 大船駅の交通結節性の強化やアクセス道路の整 備、地区の再開発などにより、集客性や拠点性の向 上を図ります。 2 つの核による都市づくりの推進 大船駅直近と鎌倉芸術館周辺の 2 つを核として、 これらを繋ぐシンボルロードを軸にコンパクトタ ウン「大船生活街」の醸成を図ります。 ③バランスのある都市整備の推進 横浜市及び本市が協調・協力しながら、芸術館通 り周辺(中央地区)、芸術館通りの北部地区及び南 部地区の各地区のバランスのある都市整備とこれ らの連携強化を図ります。 ④地域の拠点となる緑地保全と河川環境の整備 大船観音周辺や戸部の丘陵地などの拠点緑地を 保全します。また、砂押川などの親水空間の創出を 図ります。 ⑤生活文化都市としての“大船”ブランドの確立 下町のようなにぎわいや親しみやすさと、古都鎌 倉の玄関口としての役割、鎌倉芸術館を中心とする 文化及び教育環境をいかして、新たな大船の魅力を 創出し、大船ブランドの確立を目指します。 ()主要な都市(まち)づくり事業 ・大船駅東口第一種市街地再開発事業(第 2 地区) ・大船駅北第二地区第一種市街地再開発事業(横浜市)

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拠点とゾーンの整備方針 ~皆がつどい活動する地域の拠点を造るために~

126 鎌倉市都市マスタープラン

11 1.都市拠点の整備

「骨格的な都市構造」を踏まえて、緑により分

節化された市街地の中に鎌倉駅周辺、大船駅周辺、

深沢地域国鉄跡地周辺を都市機能の集積と市民生

活の向上を図る拠点として位置付けます。

都市拠点の整備に際しては、「まちづくりの新た

な視点」として位置付けた、鎌倉ならではの空間

文化*の再構築や防災・減災まちづくり、環境共生

まちづくり、暮らしのサポート等の視点を踏まえ

て、整備計画の充実を図ります。

1)鎌倉駅周辺地区

(1)考え方

鎌倉地域の中心市街地として、社寺等の歴史的

遺産や公共公益施設の集積等をいかした、修景的

な整備を図ります。

(2)整備の方向性

①景観整備

・景観地区の指定を踏まえた、良好な都市環境、

都市景観の創出

・歴史的環境の保全、活用

②基盤整備

・古都鎌倉の玄関口にふさわしい質の高い駅前広

場の再編

・安全で安心して歩くことのできる歩行環境の更

なる改善

③商業基盤、観光基盤整備

・歴史的環境と調和した商業及び観光基盤の充実

・歩行環境の改善、まち並みの形成、公共トイレ

の改善など、来訪者をもてなす快適な環境整備

の推進

④公共施設整備

・文化発信拠点の整備

・「鎌倉市公共施設再編計画」(平成 27年 3月)を

踏まえた、公共施設の再編整備

2)大船駅周辺地区

(1)考え方

大船駅の交通結節性と地域の個性をいかし、活

力に溢れ、豊かな生活文化を創造し発信するまち

を目指します。そのため、商業拠点の形成と都市

機能の強化によるにぎわいの創出と、安全、安心

で優しさと快適さを備えた魅力ある都市環境の創

造を図り、大船全体の魅力と拠点性を高めます。

(2)整備の方向性

①大船駅圏域の拡大

大船駅の交通結節性の強化やアクセス道路の整

備、地区の再開発などにより、集客性や拠点性の向

上を図ります。

②2つの核による都市づくりの推進

大船駅直近と鎌倉芸術館周辺の 2 つを核として、

これらを繋ぐシンボルロードを軸にコンパクトタ

ウン「大船生活街」の醸成を図ります。

③バランスのある都市整備の推進

横浜市及び本市が協調・協力しながら、芸術館通

り周辺(中央地区)、芸術館通りの北部地区及び南

部地区の各地区のバランスのある都市整備とこれ

らの連携強化を図ります。

④地域の拠点となる緑地保全と河川環境の整備

大船観音周辺や戸部の丘陵地などの拠点緑地を

保全します。また、砂押川などの親水空間の創出を

図ります。

⑤生活文化都市としての“大船”ブランドの確立

下町のようなにぎわいや親しみやすさと、古都鎌

倉の玄関口としての役割、鎌倉芸術館を中心とする

文化及び教育環境をいかして、新たな大船の魅力を

創出し、大船ブランドの確立を目指します。

(3)主要な都市(まち)づくり事業

・大船駅東口第一種市街地再開発事業(第 2地区)

・大船駅北第二地区第一種市街地再開発事業(横浜市)

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部門別方針/拠点とゾーンの整備方針 Ⅲ-11

鎌倉市都市マスタープラン 127

3)深沢地域国鉄跡地周辺地区

(1)考え方

「健康生活拠点・深沢」をまちの将来像とし、

市民を始め、そこで暮らし、働き、学び、訪れる

人たちが、健康で快適な生活を送るための拠点と

します。

「鎌倉市公共施設再編計画」(平成 27 年 3 月)

と調整を図りながら、さまざまな機能の集積と連

携の中から優れた環境を創造し、豊かなライフス

タイルの提案、新しい鎌倉ブランドの発信につな

がる、総合的な健康社会を先取りしたまちの実現

を図ります。

(2)整備の方向性

①人々が集まり活気のあるまちの実現

交通利便性等の地区のポテンシャルをいかしな

がら、商業、居住、教育等のさまざまな機能の導入

を図り、多様な人が集まり住まう、活気に満ちたに

ぎわいと個性のある拠点を形成します。

②安全・安心なまちの実現

防災機能の強化、防犯対策・交通安全対策を図る

と共に、公共交通等のバリアフリー化の促進及び大

型施設等におけるユニバーサルデザイン*の誘導

により、誰もが安全で安心して健やかに暮らせる居

住環境を整備します。

③地域資源をいかした緑・水の豊かなまちの実現

斜面緑地や柏尾川等の周辺の自然環境や泣塔等

の歴史資源をいかしながら、深沢らしさを感じられ

る新たな緑と水環境を創出します。

④環境と共生するまちの実現

省エネルギーや省資源、再生可能エネルギー*の

活用等を公民の連携のもと積極的に取組み、本市に

おける先導的でモデル的な環境都市の構築を目指

します。

⑤公民連携により育てるまちの実現

行政主導ではなく、住民、民間事業者等がまちづ

くりに係わり、まちづくりを継続していくことので

きるシステムを構築し、新しいまちづくりを実現・

発信しながら、みんなでまちを育てていきます。

(3)主な導入機能

整備にあたっては、関係機関等と調整をしなが

ら、事業計画の策定を進めていきます。また、新

たな拠点の形成を図るために、市有地やJR大船

工場跡地等を中心とした「面整備ゾーン」に次の

機能の導入について検討します。

・公園・広場

・総合情報センター的機能

・保健・医療・福祉関連機能・スポーツ関連機能

(総合体育館等)

図 大船駅周辺の地区整備の考え方

[資料]大船駅東口第2地区基本計画(案)(H23.11)

図 大船駅東口第 2地区再開発のイメージ

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Ⅲ-11 部門別方針/拠点とゾーンの整備方針

128 鎌倉市都市マスタープラン

・交通結節機能

・都市型住宅

・都市型産業・研究・研修機能

・商業・業務機能

・都市・生活サービス機能

・文化・教育機能

2.地域活性化拠点の整備

生活や観光など、地域活性化を推進する拠点と

して、腰越駅周辺地区及び玉縄城跡周辺地区等を

位置付けます。

1)腰越駅周辺地区

(1)考え方

歴史や自然をいかしながら、住環境の整備、漁

港・商店街の機能充実を図り、うるおいと活力あ

る地域づくりを目指します。

(2)整備の方向性

①腰越漁港の整備

腰越地域の核となるよう、腰越漁港整備基本計

画に基づき、非常時等の海上輸送拠点として、ま

た漁業者だけでなく広く市民や観光客が利用でき

る施設として整備します。

②商店街の活性化

漁港整備と一体となった腰越駅周辺商業地の環

境整備を検討します。

③歴史的遺産と自然の保全・整備

小動岬や満福寺に代表される歴史的遺産と自然

の保全、整備を図ります。

④道路整備

路地のあるまち並み環境を保全すると共に、地

域の防災性の向上を図ります。

また、電車みち(江ノ電と道路の併用区間)の

整備のあり方について検討します。

⑤多様な主体の連携による地域まちづくりの推進

地域の人々や腰越漁業協同組合、腰越商店街、

江ノ電、行政等の多様な主体が連携した地域まち

づくりの推進を図ります。

2)玉縄城跡周辺地区等

(1)考え方

玉縄地域は大規模な土地利用転換をはじめ多く

の開発が進み、地域の姿が変わってきています。

このため、田園や文教施設等と住宅地が調和した

地域づくりを目指します。

(2)整備の方向性

玉縄城跡周辺地区については、独自の地域資源

や玉縄城跡等の歴史的資源の活用を検討します。

また、地域の人々や文教施設、行政等の多様な主

体が参画した地域まちづくり計画の策定を検討し

ます。

腰越駅周辺地区や玉縄城跡周辺地区の他にも、

各地域の特性に応じた地域活性化拠点の整備を推

進します。

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部門別方針/拠点とゾーンの整備方針 Ⅲ-11

鎌倉市都市マスタープラン 129

3.ゾーンの整備

歴史的遺産や緑と共に古都鎌倉を特徴づける海

岸、本市のシンボルとなっている若宮大路、利便

性に恵まれている大船駅周辺拠点と深沢地域国鉄

跡地周辺拠点を結ぶ地区を将来の都市構造上、重

要な地区、新たな可能性のある地区としてゾーン

と位置付けます。

1)海岸ゾーン

(1)考え方

相模湾に面して広がる海岸線は貴重な資源であ

り、市民や来訪者のために整備し、活用を図ります。

整備にあたっては、海浜の自然環境、和賀江嶋

や稲村ヶ崎の歴史的遺産を保全すると共に、東日

本大震災の教訓を踏まえた防災・減災対策と一体

となった海浜景観の創出、水と緑が一体となった

レクリエーションの場の創出、マリンスポーツへ

の対応等海浜環境の総合的な整備を図ります。

(2)整備の方向性

①自然環境・景観

・海岸ゾーンの景観や歴史をいかした海浜環境の

総合的な整備

・古都景域における原風景の継承

・海岸線の魅力ある景観の創出、デザインガイド

ライン*の策定

・和賀江嶋等の歴史的遺産の保全・整備

・材木座、由比ガ浜、坂ノ下、稲村ガ崎、七里ガ

浜、腰越の各海浜の特性に応じた整備

②基盤整備

・漁業継続のための漁港施設の検討、漁港建設の検討

・国道 134 号沿いの遊歩道や自転車利用のための

ネットワーク整備と交通安全施設の整備

・鎌倉海浜公園の整備(スポーツ、レクリエーシ

ョン施設、としての機能強化など)

・国道 134 号の機能強化や防災・減災機能、景観

に配慮した整備の検討

・避難路、避難場所、案内板等の整備(特に避難

困難地域となっている材木座、由比ガ浜、長谷・

坂ノ下地区)

③土地利用の規制誘導

・低層の住宅地を基本としつつ、各海岸の特性に

応じて、公共施設や福祉施設、保養・観光・商

業の施設等の立地を規制誘導

・公共施設、災害時要援護者に関わる施設を新設

する場合には、できるだけ津波浸水の危険性の

低い場所に立地するように誘導

・浸水区域に既に立地している公共公益施設につ

いては、「鎌倉市公共施設再編計画」(平成 27年

3月)等と調整を図り、再配置(現位置または移

転)について検討

・国道 134 号沿道では、一部中層の建築物を認め

ながらも、低層を基本として規制誘導

・津波避難困難地域等において津波一時避難施設

が必要となる場合には、周辺の低層住宅地に配

慮した上で、特例的な建物高さの基準を検討

2)鎌倉シンボルゾーン

(1)考え方

本市のシンボル道路として、景観地区の指定を踏

まえた、歴史や文化を感じさせ、上品で落ちつきの

ある若宮大路沿道のまち並みの整備を図ります。

(2)整備の方向性

①景観

・若宮大路(景観重要公共施設)を中心としたシ

ンボル性の高い歴史的都市軸の形成

・建物の高さに配慮した都市景観の形成

・沿道建物相互の景観的調和

・公共事業による景観整備

②土地利用

・にぎわいのある土地利用の誘導

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Ⅲ-11 部門別方針/拠点とゾーンの整備方針

130 鎌倉市都市マスタープラン

3)大船・深沢ゾーン

(1)考え方

大船駅周辺と深沢地域国鉄跡地周辺を結ぶ地区

は、新たな発展の可能性がある地区として、今後

の本市の成長を支える適切な土地利用の誘導、都

市基盤の整備を図ります。

(2)整備の方向性

①土地利用

・産業複合地としての住環境と産業の調和

・住環境と調和する新しい産業の誘導(新規成長

産業等)

②基盤

・大船駅周辺地区と深沢地域国鉄跡地周辺地区を

結ぶ道路等の基盤の整備

・JR東海道本線大船-藤沢駅間における新駅構想

との連携

③景観

・柏尾川(景観重要公共施設)の河川景観の整備

・大規模施設の緑化などの推進

・建物相互の景観的調和

・車窓景観への配慮

4)深沢・腰越ゾーン

(1)考え方

深沢地域国鉄跡地周辺の拠点と腰越駅周辺を結

ぶ地区は、本市の成長を支える、玉縄-大船-深沢-

腰越の各拠点をつなぐ地区として、都市基盤の整

備を図ります。

(2)整備の方向性

①土地利用

・生活型商業地と住環境との調和

・鎌倉の環境や文化、潜在的な資源に惹かれて立

地し、住環境と調和する新しい産業の誘導(腰

越漁港の海産物の活用や、深沢拠点の都市機能

と連携した産業等)

②基盤

・深沢地域国鉄跡地周辺と腰越駅周辺を結ぶ道路

等の基盤の整備

・神戸川の改修

5)鎌倉・大船ゾーン

(1)考え方

鎌倉駅周辺と大船駅周辺を結ぶ地区として、北

鎌倉駅周辺を始めとしたまち並みの整備や歩行環

境の整備等を図ります。また雪ノ下大船線(鎌倉

街道)は、市内に唯一の第1次緊急輸送道路*とな

っていることから、沿道建築物の耐震化を進め、

建物倒壊による道路閉塞の防止を図ります。

(2)整備の方向性

①景観

・北鎌倉駅周辺を中心とした歴史的都市軸の形成

・建物の高さに配慮した都市景観の形成

・沿道建物相互の景観的調和

・公共事業による景観整備

②土地利用

・観光型商業地及び生活型商業地と、住環境との

調和

③基盤

・鎌倉駅周辺と大船駅周辺を結ぶ道路等の基盤の

整備