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CFRP製プロペラについて~一般商船への挑戦!~
コンポジット事業室 山磨 敏夫
西部性能部会200回記念講演会
2016年4月18日広島ガーデンパレス 於
本日の発表項目
• ナカシマグループの紹介
• 舶用プロペラの変遷
• CFRP製プロペラ、一般商船への挑戦!
• 燃料およびCO2削減例
• 納入実績の紹介2
ナカシマグループの紹介
3
ナカシマプロペラの事業・海外展開
創業~1970年代
1926 ナカシマプロペラ創業(中島善一)(岡山市北区中島田町)
59 2代目中島保 アメリカ視察
63現在の本社工場完成(岡山市東区上道北方)
71 東欧圏への大形プロペラ輸出成約
71 イギリス ストン社と技術提携
76 ルーマニアへの製造技術供与の締結
78 ドイツ ベッカー社と技術提携
78 韓国市場へ取り組み(大宇・三星重工)4
ナカシマプロペラの事業・海外展開
1980~1990年代
1981 第二次オイルショック発生
84 中国大連プロペラと製造技術ライセンス契約
87 神戸製鋼所がプロペラ生産から撤退
88 アメリカ最大のボートメーカより受注
88 メディカル事業部門の発足
91 ドイツ ショッテル社と販売提携
95 ISO 9001の認証(ロイド船級)
5
ナカシマプロペラの事業・海外展開
2000年~現在2001 中国市場への取り組み
02 欧州ボート市場に参入
05 倉敷市に玉島工場完成
05 ベトナムに現地法人を設立
08 ナカシマホールディングスを核としてグループ再編ナカシマメディカルを分社化
09 ミカドプロペラを吸収 フィリピン工場を傘下に
12 シンガポールに販売拠点を開設
12 アメリカのプロペラメーカーへ資本参加
616 ナカシマプロペラ創業90周年
ナカシマホールディングス株式会社
ナカシマグループは
船舶用から医療分野など
さまざまな分野へ事業展開しています
グループ会社の構成
Philippine
Vietnam
Okayama
Tokyo
Singapore
ナカシマミツワプロペラ
株式会社
ナカシマエンジニアリング
株式会社
NAKASHIMAVIETNAM
ナカシマプロペラ株式会社
NAKASHIMA PHILIPPINES
株式会社ナック
帝人ナカシマメディカル株式会社
株式会社システムズナカシマ
NAKASHIMAASIA PACIFIC
舶用プロペラの変遷
8
プロペラの誕生
• スクリュープロペラ
ジョン・スチブンスが4翼のスクリュープロペラを2機搭載した小型艇(2軸船)を造る
リットル・ジュリアナ号(1804年、イギリス)
イギリスでは、ウィリアム・リットルトンが スクリュープロペラを考案
リットルトンのスクリュープロペラ(1794年、イギリス)
9
プロペラの実用化
• 1845年3月、イギリス海軍はプロペラ船と外輪船の性能を比較するため、スクリュープロペラを備えた867トンのラトラー号と800トンの外輪蒸気軍艦アレクト号を風向きや帆走併用など条件を変えて競走させた。
• いずれもラトラーが勝ち、最後に綱引きを行なわせた結果、ラトラーが2.8ノットでアレクトを曳航したことで、ラトラーのスクリュープロペラが有効であると結論付けられた。
10
プロペラ形状の変遷
11
大型船舶用 漁船用高速船用フェリー用
CFRP製プロペラへの挑戦!
12
研究開発の背景
13
過去12年間のLME銅相場
14
世界の銅の埋蔵量と採掘量
• 可採年数=世界の埋蔵量/年間採掘量(2014年)
=700,000千㌧÷18,700千㌧/年=約37年 15
出典:Mineral Commodity Summaries 2003~2015
16
そこで、複合材料に着目
FRPの特徴
・軽量・高強度(CFRP)・耐腐食性・異方特性・低&高弾性・高減衰性・非磁性(GFRP)・耐摩耗性(ArFRP)・大型一体構造
FRPの使用例- 航空機・人工衛星- 風力発電のタービンブレード- 自動車- 小型ボート・掃海艇- スポーツ用品- 建築・土木
©海上自衛隊
©Boeing
©トヨタ自動車
©三菱重工
世界での複合材料のプロペラ適用実績
17
ドイツ海軍潜水艦プロペラとして2002年からHDW(ホヴァルツヴェルケ)製造/試験現在、直径3.5mを搭載予定。
オランダ海軍/Alkmaar級掃討艇用に開発された直径2.5mのCPP(2010年)
これまでの研究状況
フェーズ1(H19~20年度)
日本舶用工業会の補助金で、FS実施
フェーズ2(H21~23年度)
日本財団の補助金で、材料評価、水槽試験、小型艇での実船試験を実施
フェーズ3(H24~26年度)
日本海事協会との業界要望による共同研究NK船級取得および一般商船への実用化
フェーズ4(H26~27年度)
JRTTの高度船舶技術の実用化事業JG船級取得およびメンテナンス・補修要領作成
18
CFRPの材料特性
19
20
炭素繊維および成形法
VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)
炭素繊維のトウ 炭素繊維のシート
CFRP : Carbon Fiber Reinforced Plastic
材料比較
21
CFRP GFRP NAB SUS
密度 ρ [g/cm3] 1.5 2 7.6 7.9
※1: 擬似等方積層 ※2: スラッシュバーは降伏応力
複合材料製プロペラの弾性変形
• プロペラAは、ピッチが増加する方向に変形する
• プロペラBは、ピッチが減少する方向に変形するハイスキュー形状では加速時や急激な負荷が作用した場合、弾性変形により流力的に力が逃げる
22
プロペラA
水槽試験状況
モデルプロペラ
プロペラB
23
NAB相当 CFRP相当
CFRP製プロペラは、荷重状態で変形しキャビテーションの発生量を抑制する!→船尾振動の低減にも繋がる!
キャビテーション発生の抑制
24
実船試験(加速性)
No NAB CFRP
加速時間[s]
往路 9.72 7.46
復路 8.19 7.44
平均 8.96 7.45
NAB CFRP
5→20ノット
船速 馬力
回転数
船速 馬力
回転数
CFRP製プロペラは荷重度が高い加速時に、弾性変形によりピッチが大きく減じる→ 荒天時等の高負荷状態で、ピッチを減じ、エンジン負荷を軽減する
総トン数 :3.3G/T(10.50m×2.75m×1.4m)エンジン出力 :220kW/2600rpm船 速 :約26ノット
振動試験結果
25
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
100 1000 10000
Dam
pin
g ra
tio
(%)
Resonance frequency (Hz)
Fabric-iso
UD-iso
NAB(CAC703)
1st-Twist
1)材料自体の減衰特性
CFRP自体の減衰率は、NABの5倍以上固有周波数はほぼ同じ
2) 構造体としての減衰特性
CFRP製プロペラの減衰率は、NAB製プロペラの10倍以上であり、制振性が期待できる。
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
100 1000 10000
Da
mp
ing
rati
o (%
)
Resonance frequency (Hz)
Fabric-iso
UD-iso
NAB(CAC703)
Material Propeller
一般商船への適用
26
499G/Tケミカルタンカー「大興丸」
サイドスラスタ
入 力 :165kW
直 径 :850mm
公称推力 :2.5トン
平成24年9月搭載27
平成24年9月:就航
主推進用プロペラ
MCR :735kW
直径 :2,120mm
平成26年5月搭載
主推進用プロペラおよび軸系
従来型(CAC703製)
新設計(CAC703製)
新設計(CFRP製)
翼数 4 ← ←
プロペラ直径(mm) 1,950 2,120 ←
ボス径(mm) 363 420 ←
展開面積比 0.63 0.50 ←
プロペラ質量(kg) 715 851(114%) 422(59%)
慣性モーメント(kg-m2) 112 153(137%) 36.8(33%)
中間軸径(mm) φ210-1,290 φ240-1,290 φ150-1,290
プロペラ軸径(mm) φ220-3,625 ← ←
軸質量(kg) 1,440 1,545(107%) 1,265 (88%)
28エンジン :阪神内燃機工業製LH28GMCR :735kW×355rpm(本船用)
プロペラ単独性能試験
• プロペラ単独性能現行プロペラの効率を1としたときの比率
29
現行新設計
(金属製)新設計
(樹脂製)
プロペラ直径(㎜) 250 271.79
展開翼面積比 0.63 0.50
プロペラ単独効率ηo 1 1.082 1.083
船殻効率ηh(1-t/1-W) 1 0.977(推定) 0.977(推定)
プロペラ効率比ηR 1 1(推定) 1(推定)
推進効率η 1 1.057 1.058
キャビテーション試験
• 船尾変動圧力現行プロペラの1次成分を1としたときの比率
30
省エネキャップ
• フィン付ボスキャップ(エコキャップ)の影響
31
通常キャップ エコキャップ
エコキャップによりハブボルテックスが消滅することを確認
→ハブボルテックスによるエネルギーロスを回収
実機および性能について
32
33
CFRP製プロペラ取り付け
ブレード(CFRP)
ボス(NAB)
CFRPプロペラ
押え板(NAB)
CFRP製プロペラの構造
34
CFRP製プロペラ 取付完了
換装前後での速力試験結果の比較
35
9.0%減
36
燃料消費量(参考値)
空船時 載荷時
100
110
120
130
140
150
160
170
180
190
11 11.5 12 12.5 13
燃料
消費
(L/h)
基準船速(nots)
CAC703製
CFRP製
100
110
120
130
140
150
160
170
180
190
11 11.5 12 12.5 13
燃料
消費(L/h)
基準船速(nots)
CAC703製
CFRP製
約9%減 約9%減
実船性能の検討
37
水槽試験結果 実船試験結果
プロペラ単独効率ηo 1.083約1.09
+0.5~1%(実機アップ)
船殻効率ηh(1-t/1-W) 0.977(推定) ←
プロペラ効率比ηR 1(推定) ←
推進効率η 1.058約1.065
+0.5~1%(実機アップ)
エコキャップ効率ηc 1.0111.023
+1~1.5%(実機アップ)
総合推進効率η’ 1.070約1.09
(海上試運転結果)
38
振動計測結果
• 各計測場所における加速度を計測(興亜産業殿による計測)• 上下、左右、前後の加速度の値を合成
39
振動・騒音計測結果
振動計測結果 騒音計測結果
プロペラ直上の振動計測比較
40
キャビテーション試験
ねじり振動計測結果
41
NAB CFRP
計算値
プロペラ軸(I-6)付加応力(N/mm2) 12.9 5.3
ピーク回転数(min-1) 245 251
計測値
プロペラ軸(I-6)付加応力(N/mm2) 15.3 1.7
ピーク回転数(min-1) 242 270
使用禁止範囲(min-1) 230~255無
(255~285)
納入実績の紹介
42
499G/T ケミカルタンカー向けサイドスラスタ
• 型 式 : TFN-150S
• 入力馬力 :165kW
• プロペラ直径 :850mm
• 公称推力 :25kN
43
2012年8月 : JG 設計承認2012年10月 :就航
130G/T旅客船向けサイドスラスタ
44
2013年6月 :就航
• 型 式 : TFN-50S
• 入力馬力 :90.5kW
• プロペラ直径 :500mm
• 公称推力 :10kN
45
3.3G/T遊漁船用主推進用プロペラ
2013年12月: JCI設計承認
• 出 力 :221kW
• プロペラ直径 :0.68m
• プロペラ回転数 :1008rpm
499G/Tケミカルタンカー向け主推進用プロペラ
• 出 力 :735kW
• プロペラ直径 :2.12m
• プロペラ回転数 :355rpm
46
2014年5月 : NK製造法および設計承認2014年5月 :就航(プロペラ換装)
NK承認:直径2.12m以下
195G/T両頭船フェリー向け主推進用プロペラ
47
2014年9月 : JG設計承認2014年9月 :プロペラ換装(船首側)2014年10月: 就航
JG承認:直径4m以下
• 出 力 :441kW
• プロペラ直径 :1.6m
• プロペラ回転数 :346rpm
499G/Tケミカルタンカー向け主推進用プロペラ
• 出 力 :735kW
• プロペラ直径 :2.12m
• プロペラ回転数 :355rpm
482015年6月 : CFRP製プロペラに換装
CFRP製プロペラの特徴
49
ブレード(CFRP)
ボス(NAB)
CFRPプロペラの特徴①
軽量★従来材のNABの約1/5の比重により
軽量となり据付が容易★慣性モーメントの低減
→軸系の軽量化
CFRPプロペラの特徴③
低振動★軽量化および高減衰率により、振動が低減
★居住環境改善
CFRPプロペラの特徴②
高強度★従来材より疲労強度が高く、信頼性も
高い
CFRPプロペラの特徴⑤
高効率★軽量化により容易に大直径化が図れ
プロペラ性能向上を実現★キャビテーション発生抑制
CFRPプロペラの特徴⑥
メンテナンス性★予備ブレードをストックしておけば、
損傷時にも早急に対応が可能★交換に専門性不要★補修も可能
CFRPプロペラの特徴④
過負荷低減★ブレードの形状が流れにマッチング
するように変形し、荒天時等の過負荷を低減
CFRPプロペラ
比強度の高いCFRPを使用することで、従来の金属製では成立できなかった(成立が困難であった)大直径化が図れ、推進性能アップおよび船体振動低減を実現!
押え板(NAB)
ご清聴有難うございました。
50
第6回 モノづくり日本大賞内閣総理大臣賞受賞
2015年11月9日