Upload
others
View
3
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
Functional Magnetic Resonance Imaging 輪読会 担当:村田,2015/5/28,p.211-229
1
Chapter 7. BOLD fMRI: Origins and Properties
6章では機能的充血(functional hyperemia)について述べた
・ 感覚,運動,認知処理に関わる局所的神経活動による血流上昇 ・ 代謝説:活動する脳組織の代謝に必要な酸素やグルコースの供給 ・ 神経性(neurogenic)説:神経細胞の方略的制御,代謝需要と酸素やグルコースの供給を分離
・ 両者は異なるタイムスケールで働く
機能的充血により,脳組織が消費するよりも多くの酸素を供給するのはなぜか?
・ 脳の低酸素状態を防ぐ安全装置:血管から離れたところに位置する神経細胞へ,
確実に適量の酸素を送る ・ この酸素の過剰供給は,血流や酸素の供給および消費の増減がその背景にある神
経活動のマーカーになることを意味
このような血流動態変化をどのように MR信号として測定するのか?
本章では,血液酸化水準依存コントラスト(blood-oxygenation-level-dependent(BOLD) contrast)を説明し,この問いに答える.
・ 血液の磁性から BOLD信号の発見,そして fMRIの発展 ・ BOLD fMRIの空間及び時間特性
o BOLD信号とその背景にある神経活動の時空間的一致の程度 o fMRIの性能とその限界を理解すべき
History of BOLD fMRI
・ ヘモグロビンの分子構造研究(1936) o Linus Pauling(アメリカ人化学者・ノーベル賞受賞者)とその学生 Charles
Coryell o 酸素との結合の有無により,ヘモグロビン分子の磁性が変化することを発
見
■酸化ヘモグロビン(Oxygenated hemoglobin: Hb)
・ 反磁性(diamagnetic)=磁場の不安定さを弱める ・ 不対電子(no unpaired electrons)なし,磁気モーメントなし
■還元ヘモグロビン(Deoxygenated hemoglobin: dHb)
・ 常磁性(paramagnetic)=周囲の磁場を不安定にする ・ 不対電子あり,磁気モーメントあり
Functional Magnetic Resonance Imaging 輪読会 担当:村田,2015/5/28,p.211-229
2
・ 完全に酸化された血液よりも,完全に還元された血液の方が磁化率(magnetic susceptibility)が約 20%高い
・ 19世紀の偉大な物理学者Michael Faraday*を含む過去の研究者たちは, 動脈血(Hbのみ)と静脈血(Hb & dHb)を区別しなかったため,この磁性変化を発見できず
*直流電流を流した電気伝導体の周囲の磁場を研究し,物理学における電磁場の基礎理論を確立
・ 常磁性物質(dHb)は周囲の磁場を歪める → 周辺のプロトンが異なる磁場強度の影響をうける → 異なる周波数で歳差運動する(位相揃わず) → 横磁化(transverse magnetization)の緩和が早まる(i.e., 短い T2*)
・ T2に感度を持つパルス・シーケンスは,より酸化された血液で大きなMR信号を示し,より還元された血液には小さなMR信号を示す
・ Thulborn et al. (1982):横磁化の減衰がテストチューブ内の Hbの割合に依存することを実証(Figure 7.1) o 0.5T以下の低い静磁場では効果なし.1.5T以上で効果が見られる)
→ 血中の T2*コントラスト撮像には高い静磁場が必要 Figure 7.1 MR緩和定数(relaxation constants)に対する還元血液の効果. X軸:血中 dHb量の 2乗値(グラフには Hb).Y軸:緩和速度. dHbの増大に応じて横緩和速度(1/T2)が速い.縦緩和速度(1/T1)は dHbの影響を受けず. ⇒ MRIを用いて酸化血液の変化が測定可能
Discovery of BOLD contrast
1980年代・ 小川誠二(ベル研究所): MRIによる脳活動の検討
・ 体内で も多くの割合を占める水中水素が代謝反応に伴う僅かな血流変化の検出
を妨げるため,脳活動を直接検討するには不向き ・ 血流を用いて代謝作用を間接的に測定 ・ 代謝には赤血球内のヘモグロビンによって供給される酸素が必須
→ 血中酸素濃度を操作し,血管の T2*画像を比較
Ogawa, Lee, Navak, and Glynn (1990)
・ 7.0T以上の静磁場・グラディエントエコー(GE)法で麻酔をかけた齧歯類をスキャンし,T2画像を比較(吸気の酸素濃度を操作)
→ dHbの常磁性の磁化率を可視化(Figure 7.2)
Functional Magnetic Resonance Imaging 輪読会 担当:村田,2015/5/28,p.211-229
3
Figure 7.2(A)吸気酸素率 100%では構造画像に差は見られず(B)21%(常態の空気)では,大脳皮質に表面に対して垂直な細い線が見られた.さらに 0%ではより顕著な線を観察.
この解釈を確認するため,さらなる実験(Figure 7.3)
・ 生理食塩水を入れたコンテナ内に酸化 or 還元血液を含むチューブを入れ,スピンエコー(SE)法と GE法で撮像
・ SE法は T2*効果の影響をほぼ受けないが,GE法は T2*減衰によって画像が歪む(cf. Chapter 5)
Figure 7.3 (A)SE法・酸化血液(B)GE法・酸化血液(C)SE法・還元血液(D)GE法・還元血液.テストチューブ内の dHbの存在が,テストチューブ周辺の水分子のMR信号を減少させた.
(p.214)
・ BOLDコントラストを用いて活性化する脳領域の同定が可能 ・ BOLDコントラストに影響し得る2つの要因:酸素の消費と供給
酸素消費:Ogawa, Lee, Kay, and Tankによるラットの実験
・ 麻酔濃度で神経活動を操作 o 麻酔をかけたラットの T2*画像・脳波で脳活動を測定 o 高い麻酔レベル(3%ハロセン)
・ 脳活動急減(神経活動減衰 → あまり酸素を必要としない) ・ BOLDコントラストはほぼ見られず(皮質の細い線は見られず,脳構造のみ)
o 低い麻酔レベル(0.75%ハロセン) ・ 脳活動上昇(神経活動増大 → 酸素を必要とする) ・ 大きな BOLDコントラスト(細静脈や静脈内の dHb増大を示す細い線を確認)
⇒ BOLDコントラストは神経活動が酸素を必要とする程度に依存
酸素供給:神経活動とは独立に,血流が BOLDコントラストへ与える影響を検討
・ 2つの吸入条件:1)酸素 100% 2)酸素 90%・二酸化炭素 10% o 血中二酸化炭素は常磁性をもたないが,神経活動やその代謝要求を変化さ
せることなく,全体の血流量を増加させる (e.g., 矢状静脈洞(sagittal sinus)内の血液濃度を 300%まで増加)
o 結果:酸素 100%のガスを吸入すると BOLDコントラストが得られたが,二酸化炭素が混在するガスでは,コントラストが得られず
Functional Magnetic Resonance Imaging 輪読会 担当:村田,2015/5/28,p.211-229
4
⇒ 代謝要求を伴わない血流増加の場合,dHb が静脈システムから流れ出て(flush)しまい,Hbのみが残る.Hbは反磁性体で磁場を歪めないため,T2*撮像で信号が得られない
(p.215)
・ BOLDコントラストは脳領域に存在する dHbの総量に依存 = 酸素の消費(神経活動)と供給(血流)のバランスに依存
・ 局所的に dHb量が増加すると BOLD信号は減少.局所的に dHbが減少するとBOLD信号は増加
・ 神経活動は血流を増大させ,需要を超える酸素を供給(Chapter 6) ・ 過剰な酸化血流により,活動する神経組織をサポートする毛細血管や下流細静
脈から dHbが流し出される
⇒ 神経活動による BOLD 信号の増大は,Hb が MR 信号を増強するからではなく,MR信号を弱める dHbが失われるために生じる(Figure 7.4)
Figure 7.4 BOLD信号生成のまとめ.(A)通常状態では Hbが一定の割合で dHbに変換される(B)神経細胞が活動すると,血管系が必要以上に血流を上昇させ, Hbを過剰供給する.その結果 dHb量が減少すると共に T2*効果も弱まり,MR信号が減衰する(Mosely and Glover, 1995)
・ 神経活動の増大によって T2*信号が増強し,結果としてポジティブ BOLD信号が得られる.
・ しかし, 血流上昇を伴わず酸素の消費が増え,局所的 dHbが増大することで,ネガティブ BOLD信号が得られることもある.
・ initial dip:ネガティブ BOLD信号の一例.ポジティブ BOLD信号の直前に観察される.血流と酸素消費に関して,各イベントが複雑な時間的シーケンスをも
つことを示唆. ・ 後ほど initial dipとネガティブ BOLD信号について説明する
Thought Question
血液は神経活動の 2種類のエネルギーとして酸素とグルコースを供給する.なぜ,BOLD信号は酸素の供給と消費のみに直接的に依存するのか?
Functional Magnetic Resonance Imaging 輪読会 担当:村田,2015/5/28,p.211-229
5
The Growth of BOLD fMRI (p.216)
・ Ogawa et al.の一連の研究により,MRIによる血中酸素変化が測定可能 ・ 次は,BOLD信号を用いてヒトの脳の異なる機能を局在化できることを示さなければならない
・ 初期の機能研究では,すでに明らかな局在化機能を追試し,この新しい技術の
妥当性を検証 ・ 初は,視覚(チェッカーボード)や運動(把握)に関する研究 ・ これらの初期の研究を紹介する前に,Chapter 1で述べた歴史を振り返り,時代の文脈における初期の fMRI研究を紹介
Contributing factors
・ fMRI は様々な要因の組み合わせによって誕生(Figure 7.5) ・ ヘモグロビンの常磁性は Thulborn et al.の研究(血中の Hbと dHbをMRによって検討)の半世紀前にはすでに知られていたが, 初の fMRI研究が公刊されるまでにその後 10年を要した
・ このゆっくりとした進歩は,脳への興味関心が薄かったからではなく,他の手
法がメジャーであったため o 1960年初頭から脳波,1980年代初頭には PET
・ fMRIの急激な発展にはMRIの臨床応用に関わる 2つの外的要因が貢献
1)パルス・シーケンスデザインとスキャナのハードウェアの改良により,撮像時
間が短縮(数秒→数 10ミリ秒)
例)初期の撮像時間は非常に長く,2分/ボクセル.現在のように数千ボクセルを撮像すると一ヶ月/ボリューム!
・ Chapter 1で述べたように,1970年代後半の Peter Mansfieldの研究により発展したエコプラナー法(EPI)により, ひとつのパルス(single excitation pulse≒シングルショット EPI?)で全体の撮像が可能となった(Figure 7.6) o シングルショット EPI: 1回の RFパルス後の 1回の信号収集時に,傾斜磁
場の反転を何度も繰り返し,多数のグラディエントエコーをつくり,特定
空間のすべてのラインを埋める方法 ・ しかしハードウェアの制約により実践的利用は遅れた
o EPIに必要な高速傾斜磁場変化は,スキャナ内の金属部分に電流を生じさせ,画像にアーティファクトを生じさせる.
o この問題を解決するため,ハードの改良ではなく, EPIのようにスキャナに負荷をかけない”FLASH: fast low (flip) angel shot”と呼ばれる方法が開発された
・ 1985年,Mansfieldらの研究に基づき, 反対方向への外部螺旋勾配(outer gradient winding)をもつ勾配遮蔽法?(gradient-shielding techniques)が発展(同年:アメリカでMRIが保険適用化).外部螺旋によりスキャナ内で発生する電流は減るが,より多くの電力が必要
Functional Magnetic Resonance Imaging 輪読会 担当:村田,2015/5/28,p.211-229
6
• その後数年の間に,多くの製造業者が遮蔽勾配?(shielded gradients)を標準スキャナプラットフォームへ追加.
• 1990年代初期,Turnerによって提唱された高速切替勾配法?(fast switching gradient technology)とWongらが発展させた高勾配直線?(high gradient linearity)により,EPIが実用化
Figure 7.6 初期の EPI画像のひとつ.ヒトの指の横断面図.生きているヒトの組織を EPIによってスキャンした初めての画像のひとつ
2)構造MRIの臨床応用
・ 1970年代,数少ないMRスキャナの多くは産業用に利用されており,病院ではほぼ使用されず
・ 画像診断には CTスキャナを使用 (Figure 7.7).CTの高解像度はでドクターや患者のニーズにあっており,$300,000以上と高額にも関わらず,1980年代初期までに世界中で 5000台以上使用されていた.
・ 病院が CTの補助的にMRIを検討(開発者である Raymond Damadianが熱心だったこともある)
・ Danmadian’s Fonar Corporation, General Electricや Varianを含むいくつかの医療機器会社が,CTを遥かに上回る高解像度のMRIスキャナを製造
・ GEは 1982年,世界 初の 1.5T臨床用スキャナをデューク大学に設置.1.5Tスキャナはその後 20年以上にわたり,臨床と研究におけるスタンダートとして使用
・ 1985年,MRスキャニングに保険が適用.多くの病院がMRI($2 million)を導入し,MRI台数が急増(例. 初の高磁場スキャナの登場からたった 20年後の 2002年には,10,000台以上.2012年には 23,000台使用され,うち 11,000台はアメリカ国内)
・ 多くの研究は傾斜磁場コイルのような補足的ハードウェア(臨床用の製品を改
善)によって促進.初期の fMRI研究も,構造MRIに対する臨床的なニーズを満たすために発展.
Figure 7.7 (A)CTは組織の 3次元マップを作成するため,移動(moving)X線源(X線発生装置)を使用.CT画像により,脳の脳脊髄液(cerebrospinal fluid: CSF)から灰白質/白質といった組織タイプを分離.(B)X線と同様,解像度とコントラストに限界がある.(C) 構造MRI画像では,より多くの組織間でコントラストが得られる.
Functional Magnetic Resonance Imaging 輪読会 担当:村田,2015/5/28,p.211-229
7
Early fMRI studies
1990年代初頭: MRIによる脳機能画像を目指す
・ 外因性(exogenous)コントラスト(Box 7.1) ・ より新しい内因性(endogenous)BOLDコントラスト(cf. Ogawa et al., 1992)
ヒトの脳を対象とした 初の fMRI研究(Kwong et al., 1992)
・ GE-EPIシーケンス・1.5T ・ 視覚刺激(LEDパターンの点滅 )のオン・オフ(各 60s)を記録 ・ 刺激呈示後,鳥距溝(calcarine fissure)辺りのMR信号が増加(10sで約 3%,
Figure 7.8). ・ 刺激呈示中は増加が持続し,刺激が消失(オフ)するとベースラインへ戻る ・ Ogawa et al. (1992), Frahm et al. (1992), Blamire et al. (1992)による追試成功
Figure 7.8 BOLDを使用したヒトの脳の機能マッピング画像.2種類の撮像:SE(血流変化),GE(BOLDコントラスト)(A)オフと比較してオンの間,後頭葉で信号増加(flow-sensitive IR sequence)(B)SE法および(C)BOLDコントラストで記録した信号の時間的変化
Ogawa et al. (1992)
・ GE,視覚刺激呈示時間を延長(e.g., 100s),4T,T2*効果に依存する BOLD ・ TE 40s:BOLD強度変化,TE 8ms: 変化なし(本章後半・resolution timeの考察)
(p.222)
Blamire et al. (1992): 単一刺激によって生じる BOLD信号の時間的変化を示す 初の
研究
・ SE EPIシーケンス・2.1T ・ 単一刺激の呈示時間を操作 ・ 結果:長時間呈示(10-90s)すると視覚皮質に大きな信号変化(10%)(Kwong
et al., 1992と一致) ・ 単時間(2s)でも視覚皮質に有意な信号変化 (Figure 7.9) ・ 刺激呈示とMR信号変化間に,短いが測定可能な遅延が見られ,平均して,刺激呈示の 3.5s後に一次視覚皮質で信号変化が生じた
Figure 7.9 単一イベント提示中の BOLD変化.単一イベントに対する BOLD増強を初めて示す.現在は一般的な event-related法は 1990年代に普及.
Bendettini et al.: 運動に関わる fMRI研究
Functional Magnetic Resonance Imaging 輪読会 担当:村田,2015/5/28,p.211-229
8
・ 視覚刺激を用いた初期の fMRI研究とは異なり,運動課題(各指と親指のタッチング)遂行中の脳活動を検討(GE-EPI,1.5T).
・ 一次運動皮質に有意な活性が見られた
Thought Question
なぜ,短時間呈示刺激と BOLD活性との間に測定可能な時間が存在することが重要なのか.fMRI実験にとってどのような意味をもつのか?
fMRI研究の過去と現在
・ 静磁場強度(1.5T, 2.1T, 4.0T)が類似 ・ EPIパルス・シーケンスは現在も一般的に使用(現在は spiral imagingのような他のシーケンスが大部分を占めるが)
・ 撮像時間の短縮 o 初期のスキャナで使用されていた傾斜コイルは短時間で変化できない弱い
磁場しか生成できず,撮像時間が長かった(例.比較的長い繰り返し時間
TR(repetition time)で1〜数スライス)が,現在は1秒につき 20以上のスライスを得られる.さらに高解像度の whole-brain acquisitionでは,1秒につき 50以上のスライスを得られる(Chapter 12)
データ解析における重要な相違(前処理・統計)
・ 初期研究は,頭部の動きや生理学的変数を補正する前処理(Chapter 8)を行っていない(Blamireらは,脳の端にあるボクセルが信号強度に応じたシステマティックな振れを記録し,この揺れの原因は心周期に関連する脳の脈動であると
記述) ・ 初期の研究では,一般線形モデルを使用していない(Chapter 10)
o 統制条件と比較して課題条件で ROIが増大するか(非常に単純な視覚や運動課題では十分なパワーを持つ)
o 複雑な実験ではより複雑な解析が必要
相違点はあるが,初期 fMRI研究は現代 fMRI研究の基盤であることは間違いない
------------------
Functional Magnetic Resonance Imaging 輪読会 担当:村田,2015/5/28,p.211-229
9
■緩和
・ スピンがその 低のエネルギー状態(平衡状態)に戻っていく状態を意味 ・ RFパルスが断たれると,プロトンは静磁場方向に並び,超過エネルギーを放出 ・ 縦磁化緩和時間(T1),横磁化緩和時間(T2)
■位相分散
・ RFパルスが断たれた直後は,すべてのスピンは同位相(同じ方向&同じ周波数で回転)
・ 同位相を崩すのは1)スピン相互作用(2つのスピンが隣り合うとき,1つのプロトンの磁場が隣のプロトンに影響する)と2)外磁場(静磁場)の不均一性…T2*
■自動誘導減衰(free induction decay: FID)
・ RFパルス後,観測される信号の振幅が時間とともに減衰する現象
■スピンエコー法
・90°の RFパルス後、再収束(refocusing, rephasing)180°RFパルスを加える
・ 静磁場の不均一性を修正することで、位相のばらつきを除去 ・ 時間 π
o 90°RFパルスから 180°RFパルスまでの時間 o 180°RFパルスから信号強度が 大(エコー)となるまでの時間
・ 時間 2π o エコー時間(TE: echo delay time) o 90°RFパルスから信号強度が 大となるまでの時間
■グラディエントエコー法
・ 撮像の高速化を目的とする ・ 90°RFパルスの代わりに小さなフリップ角を用いる(180°RFパルスなし) ・ 繰り返し時間(TR: repetition time)が非常に短い
------------------
Functional Magnetic Resonance Imaging 輪読会 担当:村田,2015/5/28,p.211-229
10
The BOLD Hemodynamic Response
血流動態反応(hemodynamic response, HDR):神経活動によって引き起こされるMR信号の変化(Figure 7.10)
Figure 7.10 BOLD血流動態反応(A)単一刺激を短時間呈示(B) 複数の連続的な刺激に対する BOLD信号の大きさ
・ 神経活動の頻度が上がると HDRが増大し,神経活動の持続時間が長いほど HDRの増大幅が伸びると予測するかもしれない
・ 神経活動と fMRI活性化間の実際の関係は,2つのプロセスの異なる動態によって複雑化
・ 血流動態変化は神経活性に遅れて生じる o 皮質の神経反応は感覚刺激呈示後数 10ミリ秒以内に生じるが,血流動態変化は 1-2秒後まで生じない
・ 本章の残りを通して,血流動態波形の異なる側面について述べていくので,各用
語を定義づける
BOLD fMRI
• ボクセル内の dHbの総量の経時変化を 測定 • dHb量は活動する神経細胞による酸素の消費(extract)だけでなく,BOLD血流動態反応を形成する血流や血液容量の変化に依存する(Figure 7.11)
Figure 7.11 神経活動に続く脳血流量(CBF)と脳血流容量(CBV)の相対的変化.ラットの前足を 30秒間刺激する間の CBFと CBVを示す.刺激オフセット後 CBFはすぐにベースラインへ戻る.CBVがゆっくりと刺激前のレベルに戻ることも報告されている(灰色).CBFに比べて CBVが高いため,dHbの総量が増加し,オフセット後の アンダーシュートが生じる.しかし 近の研究では,オフセット後に
CBVが急激に刺激呈示前レベルに戻ることを示した(黒).これらの研究から酸素消費量の増大といった他の要因が BOLDのアンダーシュートに深く関わっていることを示唆.
BOLD反応の流れ
1. initial dip:(刺激オンセット後?)1-2秒で生じるネガティブ BOLD反応 ボクセル内で一時的に dHbが増加することで生じる
2. 刺激オンセットの約 2秒後に,BOLD信号が増大 神経活動の増大により酸化血液の流入が増大
3. 約 5秒後に BOLD信号がピーク(peak)に達する.刺激の持続時間が長ければ平坦域(plateau)が見られる 酸素の過剰供給によりボクセル内の dHb総量が減少
Functional Magnetic Resonance Imaging 輪読会 担当:村田,2015/5/28,p.211-229
11
4. アンダーシュート(undershoot):刺激オフセット後,BOLD信号がベースラインまで減衰し,しばらくの間ベースラインを下回る 神
経活動終了
バルーンモデル(balloon model)・Buxtonらの生物物理学的モデル
1. 神経の活性化が血液を流入させる(過剰供給) 2. 血液容量が増大し,静脈システムが風船のように膨張 3. 神経活動の終了により,血流低下(血液容量の減少より早い) 4. 血液容量は高いまま,血流がベースラインへ戻るため,多くの dHbが残り,全体的な fMRI信号がベースラインを下回る
5. 血液容量がゆっくりとベースラインへ戻り(下がり),fMRI信号もゆっくりとベースラインへ戻る(上がる)ことで,アンダーシュートが終わる
<実証データの欠如>
・ 血液容量に敏感な造影剤(contrast agents)を用いた研究により,CBVは刺激呈示後に増大しないことが示され(バルーンモデル 2の反論),バルーンモデルを支持する実証データは欠如している
・ Zijl et al.の競合モデル:刺激呈示後の酸素代謝が延長した結果 dHbが増大 ・ Harshbarger & Song (2008):視覚刺激に対して,一次視覚皮質のある領域はアンダーシュートを示したが,高次視覚領域は示さなかった o 両領域の血管系(vasculature)は類似している o 領域によって異なる代謝要求がアンダーシュートの出現に影響
・ しかし,Zijlらが記したように,酸素代謝延長仮説も直接的実証データなし o 間接的に支持する動物研究のみ・刺激後の酸素分圧*(oxygen tension)低下
の延長に類似 * 赤血球は酸素分圧が高い場所で酸素を受け取り二酸化炭素を吐き出し,酸素分圧の低い場所では酸素を放出して二酸化炭素を受け取る.
血流動態反応のサンプル(Figure 7.12)
• 視覚刺激に対して両手把握課題でのMR信号の経時変化 • 反応後,血流動態変化がベースラインへ戻るのに十分な時間を設けた
Figure 7.12 (A)課題遂行中の運動皮質内単一ボクセルから得た fMRI信号.16-18秒毎に 2秒の把握.S/N比の高い課題だが,血流動態反応に変動あり.(B)各イベントの fMRI信号.毎回変動はあるが,5-6秒でピークに達する(色線は,類似パターンが見られることを示すためにランダムにつけられたもの)
Functional Magnetic Resonance Imaging 輪読会 担当:村田,2015/5/28,p.211-229
12
The initial dip
神経活動によって生じるポジティブ BOLD反応の前に、小さなネガティブ BOLD信号が生じる → イニシャル・ディップ
・ 動物の光分光法研究:dHb急激な増加が見られ、少なくとも 初は、その領域が
活動しているニューロンの領域に一致 ・ Menon et al. (1995) は、fMRIでこの現象を確認(Figure 7.13)
点滅する視覚刺激を 10秒間提示(4T, TR=100ms, EPI)
→ 鳥距溝に沿う灰白質(一次視覚皮質)で BOLD信号減衰を観察(その後のポジティブ信号の半分以下のサイズ).しかし、ポジティブ BOLD信号に関わる領域は拡張(静脈や白質も含む)
Figure 7.13 BOLDイニシャル・ディップの空間特異性。(A)矢状断。視覚刺激に対してポジティブ BOLD反応を示した鳥距溝(一次視覚皮質)付近のボクセル.(B) 初のネガティブ反応(イニシャル・ディップ)を示したボクセル.(C)全てのボクセルから得られた BOLD反応.イニシャル・ディップが観察できる.
イニシャル・ディップの空間特異性
・ Duong et al. (2001): 一次視覚皮質の BOLD反応,ネコ(4.7T, 9.4T) o 方位選択性コラム(orientation columns): 刺激の向きに特異的に反応
→ イニシャル・ディップは空間特異性をもつ(e.g., 45°の線に対してイニシャル・ディップを示したボクセルは、135°の線に対してイニシャル・ディップを示さない
ポジティブ BOLD反応は 45°と 135°の両刺激に対して生じる BOLD反応の空間特異性は、 初の 2秒で 大となり、その後減少 ⇒ イニシャル・ディップ: 付近の毛細血管内の酸素の減少を反映 ポジティブ BOLD反応: 周囲にある静脈の排水システムへの酸化血液の過剰供
給を反映 イニシャル・ディップが多くの fMRI研究で報告されていないのはなぜ?
1. イニシャル・ディップは静磁場の強さに影響を受けるため 大きな血管から記録される信号よりも、小さな血管から記録される信号の 方が静磁場の影響を受ける
2. 広い領域、長いタイムスケールで平均することで、イニシャル・ディップが不明瞭になるため
Functional Magnetic Resonance Imaging 輪読会 担当:村田,2015/5/28,p.211-229
13
Tian et al. (2010): イニシャル・ディップが血流上昇前の酸素消費の増加を表すことを示す(Figure 7.14)
・ ラットの前肢に電気刺激 ・ 二光子顕微鏡(two-photon microscopy)によって体性感覚皮質の各層内の穿通細動脈(penetrating arterioles)の拡張タイミングを測定
↓
拡張の空間的勾配を観察
・ 皮質表面へ向かう血管拡張の上流伝搬と局所毛細血管床(local capillary beds)への下流伝搬に応じて生じる
・ 第 6層:刺激後すぐに血管拡張 → 酸素消費少 → イニシャル・ディップなし
・ 第 1層:刺激後すぐには血管拡張せず → 酸素消費多 → イニシャル・ディップあり
Figure 7.14 ラットの体性感覚皮質の各層から得た BOLD信号.(A)刺激誘発活動中の体性感覚皮質の冠状断面図(B) BOLD信号の時間変化.第 1層でイニシャル・ディップが 大となる.
Goense et al. (2012): サルでも BOLD反応パターンが皮質層で異なる
→ fMRIを用い,フィードフォワードやフィードバックの抑制性・興奮性の神経プロセスを担う皮質層にまたがる神経回路(laminar circuitry)の区別が可能
注意といった心理的プロセスがこれらの信号に与える影響も考察
今後の課題
・動物実験(高空間解像度)により,イニシャル・ディップの“酸素消費仮説(oxygen extraction hypothesis)”が支持されているが,異なる課題で異なる脳領域を検討し,そのメカニズムを詳細に説明する必要がある.例)一時的な血流低下や,
大量増大も BOLD信号を弱める
・ 神経活動と BOLD信号の特異的な関係も詳細な説明が必要 o Li and Freeman (2007): dHbの増大は,ポジティブ BOLD反応よりも神経活
動の持続時間と線形・非線形の関係を示す ・ イニシャル・ディップと心理的構成概念
Functional Magnetic Resonance Imaging 輪読会 担当:村田,2015/5/28,p.211-229
14
o 高時間・空間分解能,高磁場スキャナが増えれば,ポジティブ BOLD反応だけでなくイニシャル・ディップに焦点を当てた研究も増えるだろう
これまで大きなポジティブ BOLD反応に加え,一時的なネガティブ BOLD反応としてイニシャル・ディップ,アンダーシュートについて述べてきたが,異なる課題遂
行中に別の脳領域では,大きく且つ持続的なネガティブ BOLD反応が観察される.この反応の神経血管性基盤およびその機能的意義について Box 7.2で述べる.
Box 7.1: Functional Studies Using Contrast Agents p.220-
・ BOLDコントラストはヘモグロビンのパラメータ特性(周囲のプロトンの位相コヒーレンスを弱め,T2 強調画像で測定可能)に依存するが,ヘモグロビンが周囲のプロトンへ与える影響はわずかであり,大きな BOLD効果でも約 1%の信号変化しかもたらさない.
・ 画像コントラストをあげる別の手法として,外因性の造影剤(静脈へ注射.健全
な血液脳関門*(blood-brain barrier)を通らない高常磁性物質)を使用. *血液と脳(脊髄を含む中枢神経系)の組織液との間の物質交換を制限する機構
・ ガドリニウム DPTA(Gadolinium Diethylenetriaminepentaacetic Acid: Gd-DTPA) o 副作用:軽い頭痛や吐き気
・ 病理組織の発見など,臨床場面で役立つ o 健常脳では,Gd-DTPAは血液中の水素陽子の T1を短縮し,血管に対する
信号のみ増大(T1短縮効果) o 血液脳関門が損なわれている場合,造影剤が血液から流出し,周囲の組織
へ入り込む.その結果,周囲の組織の T1強調画像での信号が増大
機能研究への利用
・ 造影剤は高い常磁性と強い磁場モーメントを持ち,血管内外の組織の不均質性を
高めるため,血管内外の不均質性を大きくする. o Chapter 5: 磁化率アーチファクト.磁場勾配がスピン歳差運動(spin
precession)へ異なる影響を与えるため,均一磁場での急勾配は信号欠損を引き起こす(?)
o T2*効果に感度をもつパルスシーケンスにより,造影剤の局所濃度の時間変化を測定できる(T2 緩和を利用し,T2 強調画像上の信号減衰を測定?)
・ BOLDコントラストが血流と酸素消費に依存するのに対し,造影剤法は脳活動に関わる血流容量のみに依存
・ 制限時間あり:脳を通った後は脈管系(vascular system)に散乱 ・ dHbよりも高い常磁性を持ち,非常に大きな信号を生じさせるため,一度の通過でもデータを得られる(T2)
Functional Magnetic Resonance Imaging 輪読会 担当:村田,2015/5/28,p.211-229
15
Belliveau et al. (1991): 初の fMRI実験・造影剤使用
・ 視覚皮質測定, スピンエコーEPI, 1.5T, 1ボーラス(bolus) Gd-DTPA注入 ・ 実験条件:8Hzで光る視覚パターン提示(一次視覚皮質活性).統制条件:刺激無し
・ 仮説:磁化率上昇により,MR信号が減衰.この減衰は血流容量が局所的に増大する領域で顕著
→ 造影剤が一次視覚皮質を通過し,一時的にMR信号が減衰.Gd-DTPA注入から信号減衰まで 8-10秒の遅延(前肘(ぜんちゅう)静脈(antecubital vein)から心臓を取って一次視覚皮質へ到達するまでの時間).
・ 両条件で視覚皮質の信号減衰が見られたが,実験条件でより大きな減衰がより早
く生じた(Figure 2)
⇒ 鳥距皮質で血流容量が増大し,鳥距皮質の神経細胞が視覚に関与
Figure 2 造影剤の通過.実験条件(赤)と統制条件(青).造影剤の磁化率効果によりMR信号が減衰.減衰は実験条件でより早く大きく生じる
・ 造影剤の使用は大きな信号変化の測定を可能にする ・ 試行数のメリット ・ しかし,条件ごとの造影剤注入といったデメリットもあるため,ヒトの fMRI研究ではあまり用いられない.動物実験が主(Chapter 12)
Box 7.2: Sustained Negative BOLD Signals p.230-
・ ポジティブ BOLD反応: 神経活動に伴う局所的 dHbの減少(Hbの過剰供給)を反映
・ 一時的なネガティブ BOLD反応(イニシャル・ディップ): 神経活動による血流上昇前の一時的な dHbの蓄積
持続的なネガティブ BOLD反応の神経基盤や関連する心理状態はまだ明らかではないが,異なる課題遂行中の異なる神経状態を反映することは確か.
Devor et al. (2007): ラットの体性感覚皮質,ポジティブ・ネガティブ BOLD反応の神経血管性基盤を検討
・ fMRIではなく,分光イメージング法で Hb & dHbを測定.電位感受性色素(voltage sensitive dyes)と電極アレイで神経活動を測定.二光子顕微鏡で細動脈の血管拡張と収縮を測定
→ 前肢への刺激に対応する対側体性感覚皮質領域が脱分極(興奮)+血管拡張+血流+Hb増加.一方,周辺では過分極(抑制)+血管収縮+Hb減少
Functional Magnetic Resonance Imaging 輪読会 担当:村田,2015/5/28,p.211-229
16
⇒ ポジティブ・ネガティブ BOLD反応はそれぞれ機能的興奮と抑制と解釈できる
ネガティブ BOLD反応の背景にはアクティブな血管収縮がある
誘発された興奮・抑制に関わる血管作動性構成物が神経血管性信号を伝達し,
それぞれ血管拡張・収縮を導く
体性感覚皮質は対側支配の原則に従う
・ 身体の片側からの求心性入力は,対応する対側の体性感覚皮質を興奮させる. ・ 同側からの直接投射は受け取らないが,脳梁を通じて対側皮質からの間接投射
を受ける
ヒトの fMRI研究より:体性感覚刺激は,対側体性感覚皮質のポジティブ BOLD反応だけでなく,同側体性感覚皮質でネガティブ BOLD反応を生じさせる.
このネガティブ BOLD効果の神経血管性基盤は?
Devor et al. (2008): PET, 対側・同側体性感覚皮質のグルコース消費量を測定
→ 前肢への刺激により,対応する対側皮質の小さな領域で Hb増加+血管拡張
同側皮質の dHbが増加+血管収縮(Figure 1)
⇒ ネガティブ BOLD反応が dHb増加と血流低下に関連
Figure 1 (A)血流:スペックルコントラスト減少=血流上昇.血流は同側で低下し,対側で増加.Hbも同様のパターンを示すが,dHbは血流低下部位(同側)で増加(B)対側(青線)および同側(赤線)皮質の細動脈の拡張と収縮.対側では大きな血管拡張後に小さな収縮.同側では小さく短時間の拡張後に大きな収縮.
しかし,Devor et al. (2007)では周辺皮質(対側)で過分極および Hbと血流の低下を観察したのに対し,Devor et al. (2008)では同側皮質で神経スパイクとグルコース消費量の増加が見られた.
代謝によるネガティブ BOLD効果の説明に矛盾
グルコース消費+神経スパイク増加 ⇔ 血流+Hb低下
同側皮質におけるスパイク増加は何を意味するのか?神経発火の増加と神経活動の
抑制の関係は?
Devor et al. (2008)らの解釈
・ 対側皮質から同側皮質へ向けて脳梁を通る軸索が,同側皮質内の抑制性 GABA介在ニューロンを活性化させる
Functional Magnetic Resonance Imaging 輪読会 担当:村田,2015/5/28,p.211-229
17
・ これらの抑制性介在ニューロンが,血流を低下させる血管作動薬?(vasoactive agent)を放出
・ これらの抑制性介在ニューロンの活動にはグルコースが必要だが,これらの介
在ニューロンの活動の 終結果として,同側皮質が機能的に抑制される(エビ
デンスについては言及されず)
Kastrup et al. (2008): ヒトの fMRIと行動研究により,同側皮質のネガティブ BOLD信号の機能的相関を示した
・ fMRI計測:右の正中神経(手の母指(親指)を支配する運動−感覚神経)に 40回/秒の電気パルスを 30秒間与え,30秒間休憩(計 6回実施)
→ 対側(左)の一次体性感覚皮質でポジティブ BOLD反応,同側(右)で持続的ネガティブ BOLD反応を確認(Figure 2)
Figure 2 冠状断(左)と水平断(右).対側で BOLD信号増加(赤色).同側では BOLD反応見られず,血流低下(青色).
・ 行動実験:fMRIと同様の課題遂行中に,左人差し指への電気パルスの検出閾値を測定
→ 休憩ブロックと比較して,右正中神経刺激時の閾値が上昇.fMRI実験でより大きな同側ネガティブ BOLD反応を示した参加者はより上昇.
⇒ 左人差し指への刺激に反応する右体性感覚皮質領域は,右正中神経刺激に対してネガティブ BOLD反応を示す皮質領域に重なるため,右正中神経刺激による同側ネガティブ BOLD反応が同側体性感覚皮質を機能的に抑制.
Schäfer et al. (2012):一次体性感覚皮質の体部位局在を利用し,さらなる検討
・ Kastrup et al. (2008)に右足親指刺激条件を追加(皮質領域が異なり,右正中神経刺激による同側抑制領域にあたらない)
→ 右足親指刺激への閾値上昇は見られず
⇒ 正中神経の刺激によって身体の右側への選択的注意が全体的にシフトしたわけではない
・ PETで局所脳血流量(rCBF)を測定
→ 左で上昇,右で低下
ある状況においては,持続的ネガティブ BOLD信号は行動を伴う機能的神経抑制を表す.ただし,この BOLD信号の極性と神経の活性化の関係が常に成り立つかどうかは不明.
Functional Magnetic Resonance Imaging 輪読会 担当:村田,2015/5/28,p.211-229
18
Lauritzen et al. (2012): 神経活動,CMRO2,CBFを異なる組み合わせでまとめた
・ CMRO2: ATPのターンオーバー≒エネルギー生成による制御 ・ 刺激誘発性の CBF上昇(i.e., 機能的充血):Ca2+を通した神経性および血管性メ
カニズムによる制御 ・ たまに見られる刺激誘発 CMRO2および CBFの増加パターンの解離,さらにポジティブ/ネガティブ信号は,この制御メカニズムの違いによって説明できる