4
∪.nC る21.039.558:る21.039.524.4 原子炉HTRの繰り返しパルス運転 Repetitive Pulse Operation of a Nuclear Reactor,HTR 清* KiyoslliInoue 和* KiyokazuInagaki 九州 Munemaro Imai 西 之** Motoyuki Nishikava 彰* Aとira Doi 昭** Hideaki SeiltO 原子炉HTRに繰り返レヾルス炉としての性能を追加した。試験用燃料棒をパルス照射した実験で被覆管 温度の一時的上昇を観測し,理論計算と関連づけて,燃料棒バーンアウトの前兆現象であると結論した。原 子炉の繰り返しパルス運転データを使って,反応度事故解析用計算コードREACTの計算結果を検証した。 また,小形電子計算機HITAClOで繰り返しパルス運転中にデータ処理し,安全性増大に寄与させた。 l.緒 原子炉炉心に過大な反応度が付加されたと想定Lて,原子炉の 安全性を評価する方法がある。これを反ん‾E度事故評価法という。 こうした場合には,原了・炉出力が異常に増大し,燃料棒が温度上 昇のために破損することが考えられる。想定したこの事故に雫る 過程を正しく推測するには,理論解析の方法や使用している数値 が信頼できるものでなければならない。原一丁炉パルス運転の研究 は,上記の反応度車扱評価に役立たせる目的をもって,昭和40年 に開始された(1ト(6)。昭和42年に原子炉HTR(日立教育訓練用原 了∵炉,定常運転出力100kW)をパルス運転可能な原子炉に改造し ている。昭和45年には,主として原子炉の計測制御系を改めて, 繰り返Lパルス炉に発展させた。そして,前記した反応度事故で 考えられている燃料破損について,基礎的な研究資料を得るため に,繰I)返レヾルス照射時の燃料棒のf温度上昇を測定した。この 報文は,練り返レヾルス照射実験を紹介しながら,拐ミ子炉繰り返 レヾルス運転中の計i札 パルス運転特性と燃料挙動に対する理論 解析について述べるものである。 2.運 従来の単発パルス運転では,その都度(つど)原子炉制御棒が落 下して炉心に入り,原子炉をスクラムさせていた。繰り返しパル ス運転の場合にはパルス棒を炉心に対して出し入れし,制御棒を 運転終了時にはじめて炉心にそう入するようにしている。図1は パルス運転時のパルス棒の動作と,これに伴う原子炉出力の時間 的変化を概念的に示している。表1は繰り返レヾルス運転におけ る安全操作を要約したものである。図2はパルス運転に対する計 測系を示している。計測系からの信号を受けて,制御棒が自動的 に炉心に入るようにきれている。 繰り返しパルス運転では,第1回目の反応度投入のときだけ,投 入反応度の精度を上げるために臨界状態にある炉心からパルス棒 を引き抜き,第2回目以降は末臨界炉心に対して反応度投入を繰り 返すようにした。原子炉を安全にパルス運転するための措置であ る。設定投入反応度を与える炉心内そう入深さにパルス棒を位置 ぎめして繰り返しパルス運転を開始し,第1回目のパルス棒再そう 入以後は,原子炉炉心に最も深〈パルス棒をそう入した状態で, 次の反応度投入の時期を待つ。このためにパルス棒駆動装置の引 日立製作所原子力研究所 ** 東京原子力産業研究所 〆r F ′ノ=〃 ‥エ L1. (\. ./ 60 最大投入反応度(1) B C A 61 120 (s) 繰り返しパルス運転1.0%△k/k (2)単発パルス運転1.1%△k/k 操作 A パルス棒引抜き B パルス棒そう入開始 C パルス棒そう入完了 D 正常運転の後,安全棒Ⅰとシム棒をそう人 E 炉間期スクラム・シグナル F 炉出力スクラム・シグナル G スクラムによる安全棒Ⅰとシム棒のそう入 (安全棒ⅠⅠのそう人条件は表1に記入されている) 図1 HTRパルス運転の概要 表1 HTR繰り返レヾルス運転における安全操作 B C 121 180 パルス運転 パルス棒のそう入と引抜き 1.0.1sで引抜き 2.1.Osでそう入開始 3.1.8sでそう人完了 安全棒Ⅰ,シム持そう入 1.炉出力37MW以_L 2.炉周期27ms以下 3.反応度投入回数を終了したとき 4.パルス運転時間を終了したとき バックアップ 安全俸ⅠⅠそう入 1.燃料中心温度1,4000c以上 2.被覆管温度2000c以上 3.パルス棒がパルス運転の条件ど おりでないとき 4.パルス棒を操作する系のタイマ が故障のとき 金機構を2段にしている。図3はパルス棒駆動装置の略図である。 図4は標準パルス運転炉心を示したものである。原子炉炉心を 構成する燃料集合体は,図5のように,同寸法の燃料棒(10%濃 縮UO2ペレット使ノ軋 ステンレス鋼製被覆管で密封,He封入,外 径7.8m≠)9本組みの構造であり,炉心冷却水がケース内部を流 下している。2組の計測燃料は,それぞれ燃料棒に熟電対を取り 付けて,燃料中心,燃料被覆管,冷却水の各温度を測定できるよ うにした燃料集合体である。一組は平均の大きさの中性子束があ る炉心格子にそう入し,他の一組(高温阜計測燃料として区別し ている)は炉心中央の中性子束が大きい場所にそう入している。

原子炉HTRの繰り返しパルス運転 - Hitachi∪.nC る21.039.558:る21.039.524.44 原子炉HTRの繰り返しパルス運転 Repetitive Pulse Operation of a Nuclear Reactor,HTR

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∪.nC る21.039.558:る21.039.524.44

原子炉HTRの繰り返しパルス運転Repetitive Pulse Operation of a Nuclear Reactor,HTR

井 上 清*KiyoslliInoue

稲 垣 清 和*KiyokazuInagaki

今 井 宗 九州Munemaro Imai

西 川 元 之**Motoyuki Nishikava

土 井 彰*Aとira Doi

清 野 英 昭**Hideaki SeiltO

要 旨

原子炉HTRに繰り返レヾルス炉としての性能を追加した。試験用燃料棒をパルス照射した実験で被覆管

温度の一時的上昇を観測し,理論計算と関連づけて,燃料棒バーンアウトの前兆現象であると結論した。原

子炉の繰り返しパルス運転データを使って,反応度事故解析用計算コードREACTの計算結果を検証した。

また,小形電子計算機HITAClOで繰り返しパルス運転中にデータ処理し,安全性増大に寄与させた。

l.緒 □

原子炉炉心に過大な反応度が付加されたと想定Lて,原子炉の

安全性を評価する方法がある。これを反ん‾E度事故評価法という。

こうした場合には,原了・炉出力が異常に増大し,燃料棒が温度上

昇のために破損することが考えられる。想定したこの事故に雫る

過程を正しく推測するには,理論解析の方法や使用している数値

が信頼できるものでなければならない。原一丁炉パルス運転の研究

は,上記の反応度車扱評価に役立たせる目的をもって,昭和40年

に開始された(1ト(6)。昭和42年に原子炉HTR(日立教育訓練用原

了∵炉,定常運転出力100kW)をパルス運転可能な原子炉に改造し

ている。昭和45年には,主として原子炉の計測制御系を改めて,

繰り返Lパルス炉に発展させた。そして,前記した反応度事故で

考えられている燃料破損について,基礎的な研究資料を得るため

に,繰I)返レヾルス照射時の燃料棒のf温度上昇を測定した。この

報文は,練り返レヾルス照射実験を紹介しながら,拐ミ子炉繰り返

レヾルス運転中の計i札 パルス運転特性と燃料挙動に対する理論

解析について述べるものである。

2.運 転 方 法

従来の単発パルス運転では,その都度(つど)原子炉制御棒が落

下して炉心に入り,原子炉をスクラムさせていた。繰り返しパル

ス運転の場合にはパルス棒を炉心に対して出し入れし,制御棒を

運転終了時にはじめて炉心にそう入するようにしている。図1は

パルス運転時のパルス棒の動作と,これに伴う原子炉出力の時間

的変化を概念的に示している。表1は繰り返レヾルス運転におけ

る安全操作を要約したものである。図2はパルス運転に対する計

測系を示している。計測系からの信号を受けて,制御棒が自動的

に炉心に入るようにきれている。

繰り返しパルス運転では,第1回目の反応度投入のときだけ,投

入反応度の精度を上げるために臨界状態にある炉心からパルス棒

を引き抜き,第2回目以降は末臨界炉心に対して反応度投入を繰り

返すようにした。原子炉を安全にパルス運転するための措置であ

る。設定投入反応度を与える炉心内そう入深さにパルス棒を位置

ぎめして繰り返しパルス運転を開始し,第1回目のパルス棒再そう

入以後は,原子炉炉心に最も深〈パルス棒をそう入した状態で,

次の反応度投入の時期を待つ。このためにパルス棒駆動装置の引

日立製作所原子力研究所**

東京原子力産業研究所

〆rF

′ノ=〃‥エ

L1.

(\../

60

最大投入反応度(1)

B C A

61 120

(s)

繰り返しパルス運転1.0%△k/k

(2)単発パルス運転1.1%△k/k

操作 A パルス棒引抜き

B パルス棒そう入開始

C パルス棒そう入完了

D 正常運転の後,安全棒Ⅰとシム棒をそう人

E 炉間期スクラム・シグナル

F 炉出力スクラム・シグナル

G スクラムによる安全棒Ⅰとシム棒のそう入

(安全棒ⅠⅠのそう人条件は表1に記入されている)

図1 HTRパルス運転の概要

表1 HTR繰り返レヾルス運転における安全操作

B C

121 180

操 作 条 件

パルス運転 パルス棒のそう入と引抜き

1.0.1sで引抜き

2.1.Osでそう入開始

3.1.8sでそう人完了

ス ク ラ ム 安全棒Ⅰ,シム持そう入

1.炉出力37MW以_L

2.炉周期27ms以下

3.反応度投入回数を終了したとき

4.パルス運転時間を終了したとき

バックアップ 安全俸ⅠⅠそう入

1.燃料中心温度1,4000c以上

2.被覆管温度2000c以上

3.パルス棒がパルス運転の条件ど

おりでないとき

4.パルス棒を操作する系のタイマ

が故障のとき

金機構を2段にしている。図3はパルス棒駆動装置の略図である。

図4は標準パルス運転炉心を示したものである。原子炉炉心を

構成する燃料集合体は,図5のように,同寸法の燃料棒(10%濃

縮UO2ペレット使ノ軋 ステンレス鋼製被覆管で密封,He封入,外

径7.8m≠)9本組みの構造であり,炉心冷却水がケース内部を流

下している。2組の計測燃料は,それぞれ燃料棒に熟電対を取り

付けて,燃料中心,燃料被覆管,冷却水の各温度を測定できるよ

うにした燃料集合体である。一組は平均の大きさの中性子束があ

る炉心格子にそう入し,他の一組(高温阜計測燃料として区別し

ている)は炉心中央の中性子束が大きい場所にそう入している。

Page 2: 原子炉HTRの繰り返しパルス運転 - Hitachi∪.nC る21.039.558:る21.039.524.44 原子炉HTRの繰り返しパルス運転 Repetitive Pulse Operation of a Nuclear Reactor,HTR

396 日 立 評 論

灯原

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図2 HTRパルス運転における過堰変化量の計測系

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図3 HTRパルス運転用パルス棒駆動装置

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1

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9

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スクラム粂什

(a)原寸炉=プノ

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(ぐ)パ′Lス逆転Jl川l制

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(d)燃料付注性

(e)繰_;.垣L′りレス逆転

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他7)計測公告

(a)チエレンコ7陳拙器

(b)ンンナレーションJ十数器

(c)

′垂〕巳甘

l

図4 HTR標準パルス運転炉心

高温点計測燃料は,燃料集合体にとって最大のパルス照射効果を

温度変化として測定することで,原子炉運転上の安全確認に役立

っている。後述するように,高批良計測燃料の温度上昇結果を見

て,繰り返しパルス運転の続行を判断した。計測燃料は原子炉過

渡特性を解析するときの基準になる温度上昇結果を与える。

図4の標準パルス運転炉心には,周辺部の炉心格子H3にモニ

タ燃料がそう入されている。モニタ燃料とは,燃料棒1本だけを

水を入れた密封容器に収めた構造のもので,他の燃料集合体にお

けるよりも,その燃料棒は熟的にきびしい条件の下におかれる。

燃料破損を先行検出する機能をもつためにモニタ燃料と名づけた。

容器内の水を遠隔操作で採取し,水中に漏出する核分裂生成物の

ⅤOL.54 N0.5

660

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1972

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807

頂蘇l 名 称

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図5 HTRの燃料集合体

0ム 』こ芸土当・姐実

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11下恥安fk

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卜乱7くうぅJこし・′ト

被招管

図6 HTRパルス運転用制御盤

有無を調べて,燃料棒の健全性を確認してきた。モニタ燃料に使

用した燃料棒は,熱電対を付けた温度計測用の燃料棒である。

図2に繰り返しパルス運転の計装を示した。線形出力測定系5

チャネル,対数出力・炉周期測定系3チャネル,温度測定系12チ

ャネルを備えている。原子炉の出力と炉周期の測定系をそれぞれ

3チャネルとって前述のスクラム系を構成させ,2-Ou卜of-3方式

で原子炉をスクラムさせる。繰り返しパルス運転の測定結果は秒

速60inの磁気テープに記録する(図6の制御盤に組み込んだ,左

側中段に見えるデータ・レコーダを使用する)ほか,高速電磁オ

シログラフに秒速50mmで記録する。また,電子計算機HImClO

を用い,繰り返レヾルス運転中にオンライン・データ処理し,次

l

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の反応度投入以前に,原子炉出力,原子炉周期,放出エネルギー,

燃料中心温度,燃料被覆管温度をタイプさせている。これらを総

合的に安全性の立場で判断して,原子炉運転班長がパルス運転の

続行を指示するようにしてある。

3.理 論 解 析

繰り返しパルス運転時の原子炉特性は,初期値を変えた単発パ

ルス運転の繰r)返しとして理論解析できる。解析計算コードは,

REACTと名づけた反応度事故解析用のもので,2点近似の原子

炉動特性計算方式を採用している。原子炉炉心における空間的な

計算点が,すでに述べた計測燃料をそう入した平均中性子束の格

子位置と,高温点計測燃料のある高中性子束の格子位置で代表さ

れている。燃料棒に対する熱計算のために,半径方向に燃料ペレ

ットと被覆管を多数領域に分割して,核発熱や熱流の状況を理論

的に処理する。燃料被覆管内での燃料ペレットの偏心や熱膨張を

計算に組み入れてあり,バーンアウト熟流束で燃料棒表面の熱流

束が頭打ちになるとする解析法が用いられている。

図7は繰り返しパルス運転の理論解析結果である。要約すると

下記のようになる。

(1)第1回目の反応度投入1分後に,.まだ約100kWの原子炉出

力が残っている。第2回目の反応度投入はこうした初期出力

でなされ,パルス出力がパルス棒引き抜き後早い時刻にい〈

らか低い値で発生する。原子炉出力の時間的変化が,パルス

棒を引き抜いてから3秒を経過すると,第1回目・と第2回目

は同程度の大きさで同様な傾向を示すので,第2回目以降の

原子炉運転特性は第2回目の反応度投入時のそれの繰り返し

になると考えられる。

(2)燃料中心温度と燃料被覆管温度は,ともに第2回目の反応

度投入時には冷却水の温度よr)も高い初期温度になっている

が,第1回目と同程度の最高温度に達して後ほとんど同じ冷

却曲線にのる。投入反応度1.0%△k/kの練り返レヾルス運転

では,高塩点計測燃料でも燃料中心温度が約1,0000c,燃料

被覆管温度が約1500cをこえないと判断できる。なお,計算

上は高塩点の出力密度比を2.0としており,実際の高温点計

測燃料の出力密度比よりも高い値が選ばれている。

図8は投入反応度1.0%△k/kにおけるパルス出力波形の理

論と実験の比較を示したものである。0.7秒付近から現われ

てくるポイド補償反応度の効果はまだじゅうぶんに理論解析

に組み込まれていないが,ドップラ補償反応度で出力上昇を

自動的に抑制してパルス出力を形作る点での,理論と実験の

対応はよい。図9は燃料被覆管温度がパルス運転で一時的に

30

20

<U

5

3

2

ハU

(Lぎき

〔(主筆㌧捗

0.5

0.3

0.2

原/-か出ノJ 投入反応度l.0%△k/k

反応度投人時間間隔60秒

節1r頭目

第2回口

己JJi品∴耳

(出力掛空比2.0)

0.2 0.3 0.5 1.0 2 3 5 10 20 30 50

パルス棒引抜き†;;ぢ一かJ〕の【棚】軌坦(s)

図7 HTR練り返しパルス運転の理論解析結果

2,000

1,000

500

(UL

世讃

爪U

O

∧U

爪U

(U

O

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O

O

3

2

1

5

3

2

(きヲニ〔≠ヨ旦十蜂

原子炉HTRの繰り返しパルス運転 397

柁人反応度1.0%△k/k

/実測

理論解析

0.4 0▲5 仇6 0.7 0.8 0.9

パルス棒引抜き信号からの時間経過(s)

図8 パルス出力波形に対する理論と実験の比較

320

280

240

戸200

160

120

80

40

ノ0.6s

0月s

>0.3s

スクラム岬】jり在れ1.Os

1.0 2.0

ノJルス肘Jl拭き仁主ぢ-か

3.0

(s)

同9 燃料被覆管iふL度の過渡変化を示す理論解析の結果

上昇する可能性を見いだした計算例である。投入反応度1.1%

△k/kの単発パルス運転に対する理論解析で,スクラムさせる

時刻を0.3秒以上遅らせると,出力密度比2.0の高温点にそ

う入する燃料棒でこの現象が起きることが予測された。これ

は燃料棒バーンアウトの前兆現象である。

4.実 験 結 果

図10は繰r)返しパルス運転の記録である。図4に示した標準パ

ルス運転炉心を部分的に変えてモニタ燃料を炉心中央のE5格子

に移し,投入反応度1.0%△k/kの3回線り返レヾルス運転をしてい

る。モニタ燃料に収納された熱電対付きの燃料棒(出力密度比2.7)

に対し,過渡的な温度上昇を測定することにパルス照射実験の目

的があった。原子炉出力と燃料集合体の出度は理論解析で予測さ

れたとおりの時間的変化をしていたが,モニタ燃料の燃料被覆管

温度だけは特徴ある過渡変化をした。燃料中心温度は3回の反応

度投入のたびに約1,350PCに上昇し,毎回ほぼ一定したピーク値

であったが,燃料被覆管温度は第3回目の反応度投入で前回まで

の1400cから1600Cに変わった。モニタ燃料では自然対流で燃料

棒が冷却されており,容器内の水の温度上昇もあって,図9の理

論解析をそのまま適用できないけれども,第3回目の反応度投入

時に観測した燃料被覆管温度の--一一時的上昇は,燃料棒バーンアウ

トの前兆現象と考えることができる。なお,モニタ燃料から採取

した水には核分裂生成物が含まれておらず,燃料棒の外観にも全

く異常がなく,燃料破損を起こしていないことを確認した。

表2は,繰り返レヾルス運転で′ト形電子計算機HITAClOを使

って実施した,オンライン・データ処理の結果例を示すものであ

る。計算結果は表中に記入してあるように,データ・レコーダや

オシログラフで記録した実験結果(図‖に代表的な記録例を示す)

の解析とよく一致している。原子炉出力,原子炉周期,放出エネ

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398 日 立 評 論

【』10 投人反応度1.0%△k/k,

60s間隔の3回練り返し

パルス運転

垂コ=■甲+〓諾+?:1小トロ人ヤ頒与

言ノ00/

/

/

/

ゝ一/

、′1

(む

/

1.0 1.560 60.5

し㌢

軋/

代三 、官:

00\●----・・●-●-

ノノ

/

61 61.5120 120.5

第1回目のパルス棒引抜き信号からの時間経過(s)

/

嘩/

/ノ′

121 121.5

裸形出力 時間信号

被柏管子吉ん度

対数出ナJ

被覆管f止圧

水中圧力 裸形出力線形出ナJ

被覆管i上1度

燃料「トL、塩1空

線形出力

対数出力

Lスクラム

燃料中心温度

被覆管温度

線形出力

放出エネルギー 扱覆管温度

被覆管温度l民度

水中圧力

水温

ポイド

燃料中心温度放出エネルギー

被覆管i温度

燃料中心温度

線形出力

\被覆管温度0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

時間(s)

表2 HTR繰り返レヾルス運転(8)中のHImClOによるオンライン・データ処理結果

原 子 炉同 期パルス出力と発

生時刻仙放出エネルギー(C)

燃料被覆管の温

度上昇仙と発生

時玄小b〉

燃料中心塩度の

卜昇d)と発生時

則(b)

実験継続の

判定養準27ms以上 37MW以下 12MW-S以下 2000c以下 14000c以下

第1回反応

度投入(e)

29.35ms

(28.9ms)

31.73MW 9.802MW-S

(9.7MW-S)

115.80c 765.60c

528ms 875ms 1269 ms

(32.5MW) (1140C) (7700c)

第2回反応

圧殺人(e)

42.91Ⅰ℃S 24.80MW 9.183 MW-S 118.10C 731.10C

454 ms 1171ms 1061ms

1(25・OMW)(116凸C) (7408C)

第3tp】反応

度投入(e)

44.37 ms 22.94MW 9.085 MW-S 115.8bc 731.10c

464 ⅡlS 791ms 1053Ⅰ□S

(23.5MW) (1150C) (740ロC)

ルギー,燃料中心温度,燃料被覆管温度のうち,どれか一つでも

制限条件に触れる場合には,繰り返しパルス運転を中止する。制

限範囲内にあるときは,前述したとおり,原子炉運転班長が指示

してパルス運転続行のボタン・スイッチを押させる。なお,表l

に要約した安全操作は自動的になされており,このデータ処理は

パルス運転法の安全性増大の効果をもっている。

5.結 口

軽水冷却形原子炉の安全性研究の一環として,燃料のパルス照

射特性を測定した原子炉HTRの繰り返しパルス運転について記

述した。内容を要約すると,

(1)原子炉繰り返レヾルス運転の技術が開発され,投入反応度

1.0%△k/k,反応度投入時問間隔1分の実験例を図川に示し

た。この実験で,モニタ燃料の燃料被覆管温度が一時的に上

昇したことを観測し,燃料棒バーンアウトの前兆現象である

と結論した。

(2)反応度事故解析用計算コードREACTを使って,繰l)返し

パルス運転時の原子炉出力や燃料温度の過渡変化をよく説明

VOL.54 N0.5 1972

図11HTRパルス運転における原子炉

出力,燃料温度などの過渡変化

(a)図4の標準パルス運転炉心を用いた繰り

返しパルス運転(投入反応度1.0%d丘/た

如己度投入時問間隔60秒)の場合を例示

した。

(b)時刻はパルス運転用制御棒引抜き仁号の

時刻からの時間経過で示す。

(c)放出エネルギーは2秒間の出力栢分値で

ある。

(d)原子炉炉心の熱出力分布から最大の温度

上昇を示す燃料集合体を選定L,これに

iムふ度計測用燃料棒を組み込んでいる。

(e)表rF∫()内の数値はオシログラフなどの

記錨から読み取ったもので、オンライン

処理結果と対応させた。

することができた。この研究で,燃料棒内の変化(燃料ペレッ

トの熱膨張による,ギャップ・熟コンダクタンスの変化)を組

み入れて,ドップラ効果による補償反応度の計算が充実した。

(3)図2に示した計測制御系で,安全に繰り返レヾルス運転を

しており,急激な過渡変化量に対す.る炉内計測技術が発展し

た。′ト形電子計算機HITAClOを用いてオンライン・データ

処理をし,繰り返しパルス運転の安全性をさらに増大させた。

ニの報文を終わるにあたって,原子炉繰り返しパルス運転によ

る燃料棒パルス照射実験は,科学技術庁の原子力平和利用研究委

託費で行なわれたことを申し述べ,深く謝意を表する。

参 考 文 献

山田、今井,井_L,田上,

今井,加藤,西川,田上,

Imai,Yamada,Tagami,Kato

Kato,Ⅰ皿ai:ibid.,6,215

飯塚:日立評論 50,646(昭43-7)

山札 井上:日立評論 52,355(昭45-4)

:J.Nucl.Sci.Tecbnol.6,69(Feb.1969)

(Apr.1969)

Kato,Imai,Yamada,Inoue,Iizuka:ibid.,6,637(Nov.196g)

田上:日本原子力学会誌10,149(昭43-3)

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