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岡田安弘(KEK/総合研究大学院大学)
高エネルギー加速器科学セミナー
2011年4月26日 KEK
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LHCへの3つの期待 ヒッグス粒子またはそれに代わるもの
(必ず存在する。LHCで現れる。)
力の統一
(あるかもしれない。既に示唆はある。)
暗黒物質
(必ず存在する。LHCで見つかるかもしれない。)
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CERN LHC 実験4実験 (ATLAS, CMS, LHCb, ALICE)ATLAS と CMS がエネルギーフロンティア実験
2011年 7TeV 引き続き2012年も実験継続2014 年から~14 TeV実験へ
1. ヒッグス場とヒッグス粒子 ヒッグス粒子はヒッグス場からNGボソンの自由度を除いた残り
最も簡単な模型では中性のスピン0粒子が一つだけ現れる。
拡張した模型ではいろいろな可能性がある。
(2ヒッグスダブレットモデル、中性3つと荷電1組)
ヒッグス粒子が存在しない模型も考えられるが、すでに1990年代の電弱理論の精密測定の実験結果と相性が悪い。
本当に知りたいことは、電弱対称性の背後の新しい物理法則。ヒッグス粒子はその手掛かり。
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ヒッグス粒子の質量 素粒子は質量は大きいほど、ヒッグス場との結合力は大きい。
ヒッグス粒子の質量もヒッグス場自身の自己相互作用が大きいほど大きくなる。
ヒッグスの質量は標準模型を超える物理への手がかり。
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ヒッグスポテンシャル
ヒッグス粒子
トップクォーク
W粒子
Z粒子 ヒッグス場の真空期待値
素粒子の質量公式
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標準模型がそのままプランクスケールまで変更をうけないと。
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超対称模型などでは…
MSSM = Minimal Supersymmetric Standard Model
ヒッグス粒子の質量に関する実験的制限
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LEP実験による直接探索
陽電子
電子
Z粒子
Z粒子
ヒッグス粒子
電弱相互作用の精密測定による間接的制限
LEP EW Working Group
TEVATRON によるヒッグス粒子の質量の制限
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SM Higgs 粒子の崩壊分岐比
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H->gg
H->ZZ-> 4l
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H->WW-> lnln
LHC Higgs discovery
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Discovery of the Higgs boson at 10 fb-1
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2012 年までのヒッグス粒子の発見の可能性
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いったんヒッグス粒子が見つかったら、ヒッグス粒子に関する相互作用を決めることが重要になる。
High Luminocisy (HL)-LHC: 2020-30年に3000fb-1 データをためるInternational Linear Collider (ILC) : 次世代電子・陽電子コライダーの主要な目標となる。
~30km
ヒッグス粒子の結合の精密測定ゲージ力と違ってヒッグス粒子に関する結合は重い粒子ほど強い。
完全な比例関係からのずれを探すことが重要。
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ILCにおけるヒッグス結合定数の決定
ILC Reference Design Report, 2007
LHC: 結合常数の比が0(10)%
LC: 結合常数自身を数%の精度で決められる。
2.力の統一 三つのゲージ力は小さな距離では似た性質を持っている。もともと同じ力から分かれたのではないか?(大統一理論)
SU(5) やSO(10)などの大きな群をとると、クォークとレプト
ンがうまくこの枠組みに収まる。陽子と電子の電荷の大きさが等しいことが群論的に説明できる。
1990年代のLEP などの実験で3つのゲージ結合定数が精密に決定された。その結果は、超対称粒子がTeVスケールに存在する場合は、大統一が起こると解釈できる。
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超対称性 ボソン(整数スピン粒子)とフェルミオン(半整数スピン粒子)の間の対称性。
相対論の拡張になっている。 重力を含む統一理論への道を拓く対称性。 通常の粒子に対して超対称粒子が存在する。
超対称粒子の質量は同じとは限らない。(超対称性の自発的破れ)
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スーパースペース (時空の概念が拡張されたと思ってよい)
超対称大統一理論 LEP実験などで決定された三つのゲージ結合定数をインプットにすると、超対称性というボソン フェルミオン間の対称性を導入したときのみ結合定数の大統一がおきる。
ニュートリノが小さな質量を持つことともうまく合う。(シーソー機構)
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超対称性がある場合
超対称性が無い場合
LHC 実験でのSUSYの探索
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Missing energy signal によってスクォーク、グルイーノが2-3 TeVまでSUSY 粒子の探索領域が広がる。
mSGURA
ATLAS
スクォークやグルーイーノといったカラーを持った超対称粒子が大量に生成され、その崩壊からいろいろな超対称粒子が見つかる。
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現在の制限 (LHC 7TeV)
An example
もし最も単純な超対称模型(MSSM)なら、軽いヒッグス粒子が存在する
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MSSM Higgs discovery at LHC
最も軽いヒッグス粒子は140 GeV以下重いヒッグス粒子も存在する
もしLHCでSUSYが見つかったら 超対称性の破れを通じて、電弱スケール(TeV)とプランクスケール(1019GeV=重力とゲージ力の統一が起こるエネルギー)を行ったり来たりして調べることができる。
大統一が起こるか、ニュートリノの質量生成機構は、宇宙のバリオン数はいつ生成したか等に答えることができるかもしれない。
そのためには、いろいろな実験が必要。(lepton colliders, Super B factories, precise muon experiments, electric dipole moments 等)
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ゲージフェルミオン質量項 スクォーク、スレプトン質量項
LHC+ILC
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t->mg
t->eg
m->eg
レプトンフレーバーの破れ
SU(5) Supersymmetric Grand Unified Theory
T.Goto,Y.Okada., T.Shindou,M.Tanaka, 2007
スレプトンのフレーバー混合=>m->eg, t->mg, t->eg
slepton massSuper KEKB, J-PARC の物理
3.暗黒物質 銀河の回転曲線を説明するには見えない物質があるはずであることは古くから提唱されていた。
近年、CMBの観測等で宇宙のエネルギー組成が正確に見積もられ、暗黒物質の量が正確に見積もられた。
銀河クラスターの衝突の様子から、確かに通常の物質と違うほとんど重力しか感じない物質が存在するらしい証拠がある。
暗黒物質の正体を突き止めることは、現代科学の大きな課題の一つ。
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宇宙のエネルギー組成
銀河クラスターの衝突
CMBの揺らぎ
WIMP の宇宙初期からの残存量
高温で熱平衡にあったWIMPは宇宙が冷えるとともに対消滅。ある温度で対消滅の相互作用が凍結する。
対消滅の断面積が大きいほどWIMPの残存量は尐ない。
WIMPの候補SUSY 模型のneutralinoKaluza-Klein 模型のKK-photonLittle Higgs 模型のheavy photon
など。 TeV ぐらいの質量だと大体残存量があう。
ただし、Axion等別の可能性もあり
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LHCでの暗黒物質の発見
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neutralino
sneutrino
KK photon
もし、カラーを持った粒子の崩壊により安定な暗黒物質が生成されるなら、LHCではMissing energy のシグナルで暗黒物質の候補が見つかる可能性がある。
どんな模型が正しいかは詳細に調べる必要がある。
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超対称模型の場合
LHCとILCで得られる情報を組み合わせることにより、宇宙の残存量の計算と比較することができる。このようにして、暗黒物質の正体を同定する。
E.A.Baltz,M.Battaglia,M.E.Peskin,and T.Wizansky
Cosmological parameterdetermination
WMAP, Planck, …
Direct and indirect (g, e+,anti-p, n ) searches
for dark matter
Collider search for a dark matter candidateparticle at LHC and ILC.
宇宙の歴史 暗黒物質の銀河中の分布
暗黒物質の残存量 暗黒物質の測定確率
暗黒物質を通じて新しい科学の分野を拓く
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1TeV=103GeV
弱い力標準模型 ヒッグス物理
電磁力
強い力.
重力
大統一理論超対称性
シーソーニュートリノ
複合ヒッグス模型など
100 GeV
暗黒物質
物質優勢宇宙
インフレーション宇宙
宇宙項
1019 GeV
超弦理論
LHCの物理。素粒子物理のこれからの方向を決めるのに決定的な役割を果たす。
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まとめ 素粒子標準模型では素粒子の質量はヒッグス機構によって生じる。しかし、このことはまだ実験的な検証がなされていない。
素粒子の質量生成機構を検証するには、ヒッグス粒子を発見し、その性質を詳しく調べることが必要。そのためにLHC実験が行われ、ILC実験が計画されている。
ヒッグス機構の背後にある物理は何か、力は統一されるか、宇宙の暗黒物質の正体は何かなどの問いは、標準模型を超える物理ではじめて答えが得られる。LHC実験により始まるTeVスケールの物理の探索は素粒子物理の進む方向を決める分かれ目になる。
TeVスケールの物理の全貌を明らかにするには、LHC/ILCだけでなく、フレーバー物理、暗黒物質探索、低エネルギーの基本的対称性の精密測定などいろいろな実験が必要。