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理化学研究所における 老化研究の取組について 平成28年2月22日 理化学研究所 研究政策審議役 石井 俊輔 資料1-2

理化学研究所における 老化研究の取組についてCOX/SDH 二重染色で局在 性ミトコンドリア機能障害を 可視化 mtDNA 維持機構に障害をも つモデルマウスを用いた老化

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理化学研究所における老化研究の取組について

平成28年2月22日

理化学研究所 研究政策審議役

石井 俊輔

資料1-2

osakaki
osakaki
osakaki
参考資料7
osakaki
H28.2.22 基礎・横断戦略作業部会資料

ライフサイエンスの横断的取組による超高齢社会課題解決への貢献

○日本では超高齢社会が進展し、高齢者の健康維持が重要な課題となっている。 ○一方、健康維持の鍵となる老化現象の理解は時間的・遺伝的・環境的要因が複雑に 絡み合うため、科学的解明は途上の段階。

【課題】

【政策的 位置づけ】

○「我が国の基礎科学研究を展開して世界最先端の医療技術の開発を推進し、その成果 を活用した医療による健康寿命の延伸を実現するとともに、医療制度の持続性を確保 することが、焦眉の課題」(科学技術イノベーション総合戦略:42ページ)

「理研は、総合研究所として研究開発のポテンシャルを高め、至高の科学力を以って国の科学技術戦略の担い手となる」(理研科学力展開プラン)という新しい理研の方向性の下、これまでのライフサイエンス系研究センターにおける研究開発成果を基盤として理研全体で新たに老化の解明に向けた横断的基礎研究に着手、総合力を活かしたアプローチにより研究開発成果の最大化を図り、これらを医療分野の研究開発につなげ、社会課題解決に貢献。

【理研の 方向性】

理研のライフサイエンス関連分野の一体的な取組みにより「老化」の理解に基礎的な知見を与え、各個人における老化の進行度を科学的な指標に基づいて分析するための基盤を構築(例:老化に特徴的な遺伝子発現ネットワークの抽出法の開発)、この基盤を医療分野の取組み(医療機関や健康診断等での利活用)へ展開。

期待される成果

概 要

1

2

DNA

RNA

蛋白質

シナプス

細胞

回路

DNA ダメージ

局所翻訳異常

蛋白凝集

恒常性破綻

前駆細胞機能低下

回路機能の変調

理研の神経・免疫・代謝研究、物理・化学の基礎研究、モデル動物、オミックス解析等の基盤

脳と神経 免疫や様々な系を 介した恒常性の維持

先天性免疫

適応免疫

環境との相互作用

脳神経系等

発生

数理モデル

代謝

有機合成化学

メタボローム

インスリンシグナル

ストレス シグナル

代謝物と ミトコンドリア

脂質シグナル動態

リプログラ ミング

プラットフォーム

代謝制御研究

日本は超高齢社会に直面し、高齢者の健康維持が重要な問題となっている。この鍵となるのが老化現象の理解であるが、時間的・遺伝的・環境的要因が複雑に絡み合うため、色々な角度からの総合的アプローチが必要である。このため、理研の総合力を生かし、老化現象の鍵となる「脳と神経」「免疫系などを介した恒常性の維持」「代謝」の3つの方向から、研究を遂行する。

理研の総合力を活かした老化メカニズムの解明への取組み(検討中)

ライフサイエンスの一体的な取組みにより「老化」の理解に基礎的な知見を与え、ヘルスケア産業の取組みに科学的な裏付けを提供、「健康な老化」に導くための基盤を構築

期待される成果

構造生物学 化合物

スクリーニング

脳・神経 機能異常

特徴的な 代謝変化 恒常性

破綻

7 センター + ILs 25 チーム

3

理研老化研究 1)脳・神経 脳の老化は、認知症、うつ病などのさまざまな精神神経疾患の原因となる。脳老化において、DNA、RNA、蛋白といった分子レベルの病態が、シナプス、細胞レベルの機能を引き起こし、これが神経回路レベルの変調を引き起こす。老化細胞から放出されるSASPは、環境因子と相まって、さらに細胞レベルの病態を悪化させるという悪循環を引き起こす。本研究では、脳老化の進行を把握し、可視化し、神経ネットワーク老化の制御機構を総合的に解明する。

DNA レベル

RNA

蛋白質

シナプス

細胞

回路

老化に伴う病態 . DNAダメージ

局所翻訳異常

蛋白凝集

恒常性破綻

前駆細胞機能低下

回路機能の変調

SASP*

*Senescence-Associated Secretory Phenotype

炎症 酸化ストレス

可視化 - 脳透明化 - 分子間相互作用

(CMI)イメージング - 高時間分解能

rsfMRI - 炎症・酸化ストレス

可視化マウス

バイオマーカー

加藤

田中

合田

片岡

西道

行動 創薬

理研の神経・免疫・代謝研究、物理・化学の基礎研究、オミックス解析等の基盤

4

脳老化の終末像:アルツハイマー病(AD) 生体老化

加齢

<成果>

プレクリニカルAD

発症前診断法の確立

超早期病態

AD発症 -5年 -10年 -20~-15年

未病理期 未発症期 発症期 病態ステージ

老人斑(Aβ)

神経原線維変化(タウ)

神経細胞死・機能障害

神経炎症(グリア活性化) Aβ病理、神経炎症病理蓋然性の高いADマウスモデル完成! Nature Neurosci (2014)

解析済み

理研から世界中の研究室に140件以上!

解析中

ヒ ト と 同 様 の タ ウisoformを発現するマウスの完成! (論文準備中)

血漿バイオマーカーの探索 病理・病態形成の分子機構の解明 神経変性・神経細胞死の分子機構解明

根本的な予防・治療法のための標的の同定と応用

健康長寿の達成へ!!

・病理形成における神経炎症の役割 ・Aβ分解機構の解明

・ADマウスモデル血漿における候補因子の探索・同定 ・ヒト血漿を用いた妥当性の検証 ・Tau病理促進/抑制因子の同定

APP knockinマウス

Tau knockinマウス

・Tau病理由来神経変性・死誘導因子の探索・同定

APP/Tau double-knockin マウスによる究極のADモデルマウスの創出

<成果>

<成果>

西道

5

mtDNA維持機構の障害を起こすPolg(mtDNA合成酵素)変異マウスは早期老化マウス (Trifunovic et al, Nature 2004)

加齢に伴う精神神経疾患: 認知症、パーキンソン病、 うつ病←メカニズム不明

mtDNAは神経突起で常に複製→ mtDNA変異は脳老化の要因

変異mtDNA蓄積部位の探索により、

脳老化に伴う疾患を起こす脳部位の同定が可能

COX/SDH 二重染色で局在

性ミトコンドリア機能障害を可視化

mtDNA維持機構に障害をも

つモデルマウスを用いた老化に伴う精神疾患発症メカニズ

ムの解明

加藤

6

Homeostatic maintenance of synaptic health │老化に耐えるシナプス恒常

性機構

恒常的シナプス可塑性破綻 Homeostasis breakdown

Ageing 乳幼児期 老年

シナプス異常 Synapse dysfunction

神経細胞死 neuronal death

回路維持 Circuit maintenance

シナプス可塑性・形態変化 synapse remodelling

恒常的シナプス可塑性 Homeostatic synaptic plasticity

合田

7

アポUnaG ビリルビン

老齢マウス脳の海馬歯状回で起こる 神経新生(緑) 赤色は血管

ニホンウナギ由来のUnaGを使って、ビリルビン(アンチエイジング分子)の定量法

老化の可視化

老齢アルツハイマー病マウスの全脳に分布する アミロイド斑(緑) 赤色部分は血管炎

ScaleA2試薬で透明化 Fucci トランスジェニックマウス 神経新生を可視化

ScaleS試薬で透明化 AbScale + ChemScale アミロイドーシスを可視化

宮脇

8

RIKEN 老化プロジェクト 2)免疫系などを介したホメオスターシス

若年

免疫系

脳神経系

環境ストレス

他の制御系 (代謝系等)

免疫老化

食生活の変化 活動性の低下

加齢

恒常性維持機構 の脆弱化

遺伝的素因

炎症 代謝産物の変化

細胞老化

細菌叢の変化/易感染性

遺伝学を使った動物モデルを用い、免疫学、微生物学、 生理学、数理学的解析等 を駆使した総括的な研究手法により加齢に伴う恒常性低下のメカニズムを解明する

酸化ストレス 化学物質ヘの暴露 胸腺萎縮

免疫系機能障害

前駆細胞 機能不全

SASP(Senescence-Associated Secretory Phenotype)

本田

茂呂

Fagarasan

谷内

古澤

北島

西村

9

行動解析、脳内代謝産物、 遺伝子発現プロファイル解析

腸内細菌叢の変化に起因する代謝産物の変化がどのように脳内微小環境に影響し、 神経変性疾患の発症に関与するか解明する

脳内環境変化 腸内細菌叢 の変化

代謝産物の変化

Immune disregulation

免疫系による脳内微小環境制御機構の解明 Fagarasan

獲得免疫系が腸内細菌叢の構成を変える (Science 2002) 濾胞性T細胞が重要(Science 2012, Immunity 2014)

慢性炎症モデルマウス: 統合的オミックス解析 脳内ストローマ細胞の解析 脳神経系の機能解析

10

高齢者

菌叢解析 (次世代シーケンサー)

無菌マウス

宿主の老化・炎症を誘導する菌の 分離培養

便

無菌マウス

便

無菌マウス

便

希釈・投与

宿主の老化・炎症を誘導する 菌の選択

希釈・投与

希釈・投与

高齢者の健康および免疫老化・炎症に影響を及ぼす腸内常在菌種の特定 本田

健康成人腸管由来クロストリジア属17株が 制御性T細胞を誘導し、腸炎を抑制 (Nature 2013) 潰瘍性大腸炎患者からのTh17誘導菌を特定 (Cell 2015)

11

「加齢による免疫老化機序の解明」

加齢に伴い易感染性、慢性炎症等に代表される免疫老化が生じる。最近の知見から、Tリンパ球の恒常的な産生は、胸腺

内に定住する前駆細胞からの産生に依存すると考えられる。加齢に伴い胸腺微小環境がどのような影響を受け、Tリンパ球

プールの恒常性の維持にどのように影響するか解明することは、加齢による免疫老化機序の解明に繋がる。

胸腺在住の前駆細胞は定常状態では交換され

にくい。我々の作製したCbfb2欠損マウスでは胸

腺定住前駆細胞が激減し、ニッチに空きスペース

ができ、交換可能になる。

A. 若年野生型マウスと若年/老齢Cbfb2欠損マウスとのパラビオーシスを行い。

1) 老齢胸腺環境への若年前駆細胞の移入によるT細胞分化

2) 炎症、非炎症環境での若年胸腺環境への若年前駆細胞の移入によるT細胞分化

を誘導し、T細胞のレパトアと機能分化に対する影響を検討する.

B. 加齢・炎症によるT細胞分化障害が見られた場合、胸腺微小環境(上皮細胞)を採取し、 遺伝

子発現プロファイル解析等により、加齢/炎症によって誘導される機能障害の分子基盤を明らか

にする.

[これまでの研究成果] [研究計画]

期待される成果

[背景]

またCbfb2欠損マウスは肺、腸管に炎症性疾患を自

然発症し、人為的なCbfb2発現操作により炎症抑制

が可能なユニークなマウスである。

T細胞レパトア

機能分化解析

正常胸腺 Cbfb2 KO胸腺

胸腺上皮

細胞解析 加齢/炎

症による

胸腺環境

増悪因子

の同定

正常胸腺

Cbfb2 KO胸腺

胸腺への前駆細胞移入率

加齢による組織定住型前駆細胞の維持機構の機能変化の分子実体(例;

エピジェネティック変化)、そして免疫老化のメカニズムが明らかになること

が期待される。

谷内

12

加齢性疾患におけるグループ2自然リンパ球の役割 茂呂

1. アレルギー性疾患における老化の関与を明らかにするために、若年性喘息と加齢によって起こる喘息を比較しながたILC2の役割を解明する。

2. 慢性炎症における老化とILC2の関与を明らかにするため、ILC2の関与が明らかになっている食餌誘導性肥満だけでなく加齢性の肥満に焦点を当てて研究を行い、メタボリックシンドローム発症機構の解明を目指す。

研究計画

IL-13

IL-5

ILC2s 好酸球浸潤

IL-33

IL-4

粘液産生

肥満

IL-25

B細胞

IgE

アレルギー性 炎症

慢性炎症

老化

自然リンパ球(ILC: Innate lymphoid cell) 自然免疫で働くリンパ球

グループ2自然リンパ球(ILC2)の同定 (Nature 2010)

13

老化にともなう卵子の染色体数異常の原因

母体の老化

卵子の染色体数異常

弱まった染色体接着

原因は卵母細胞にある

内在性の性質 老化による影響

染色体分配エラー

不安定な紡錘体の形成 弱いチェックポイント

ダウン症など 先天性疾患

不妊、流産

結果として卵子では

マウスから得られる知見 を集積 ヒト卵母細胞で検証

卵母細胞特異的な 紡錘体形成機構の解明

紡錘体が不安定である 原因を明らかにする

卵母細胞で

決める機構の解明 チェックポイントの厳密性を

チェックポイントが弱い 原因を明らかにする

卵母細胞で

染色体接着が弱まる 機構の解明

人工的に染色体を接着させる 手法の開発

老化による影響を抑える

老化 卵子の染色体数異常 流産やダウン症など

卵子の染色体数 異常の原因を

分子レベルで解明

リスク診断や 克服する技術の

開発に貢献

北島

Cell (2011) Dev Cell (2015)

14

数理モデルを用いた老化プロセスの理論研究

老化

Questions: どのようにして、細胞内の様々な

要素が関与する老化プロセスを 理解できるか?

複雑かつ高次元の細胞内ダイナミクスから、老化プロセスを特徴づける 重要な少数自由度を切り出すことは可能か?

プラン 1: 抽象化した細胞モデルを用いた老化プロセスの理論研究

複雑な反応ネットワークを持つ複製細胞モデル

計算機シミュレーションと理論解析を用いた老化プロセスが持つ一般的性質の解析

老化プロセスにおける細胞内 ダイナミクスが持つ一般則の理解

プラン 2: 老化プロセスを適切に記述する 特徴抽出手法の開発

機械学習を用いたオミクス解析と画像解析データからの特徴抽出

高次元データからの老化プロセスを 特徴づける重要な自由度の抽出

古澤

15

プラットフォーム

白水 構造生物学

有田 メタボローム 長田

化合物 スクリーニング

袖岡 有機合成化学

吉田 代謝物と

ミトコンドリア 窪田 インスリン シグナル

今本 ストレス シグナル

品川 リプログラ ミング

上田 脂質シグナル

動態

代謝制御研究

理研老化プロジェクト — 代謝研究グループ

16

m/z

m/z

m/z

m/z

m/z

m/z

高網羅的な MS/MS検出

データベース構築 Q-TOF MS

Q1 Q3 R.T

tripleQ MS 定量解析

代謝物同定

標的分子の精製・同定

ノンターゲット解析 ワイドターゲット解析

分子プローブの合成

1. 機能性代謝物のメタボローム解析

2. 標的分子の同定

光親和性部位

アルキン

機能性代謝物 標的分子 UVクロスリンク

click chemistry N3 biotin-azide

標的分子 アフィニティー精製 プロテオミクス

有田

Nat Methods (2015) Nat Com (2015) JEM (2014)

17

バイオプローブの 評価並びに最適化

バイオプローブの 分子標的同定・分類

老化に関与する代謝制御化合物の探索と作用標的解析

・ ケミカルビーズを用いた標的分子解析 ・ プロファイリングによる分類 (MorphoBase, ChemProteoBase)

・ ケミカルアレイスクリーニング ・ 表現型スクリーニング

・ 化合物ライブラリ(NPDepo, MaxPlanck) ・ フラクションライブラリ

・ フラックスアナライザーによる代謝解析 ・ 最適化のための作用メカニズム解析

研究プラットフォームを用いたグループを超えた支援研究 (神経科学や 免疫科学)

バイオプローブのスクリーニング

長田

18

ミトコンドリア

Ragu

lato

r

eIF2B

リボソーム

小胞体ストレス

miss-folded protein

protein

小胞体ストレス応答

eIF2

ATF4

P*

長寿

タンパク合成

mTORC1 mTOR

Raptor

DEPTOR

mLST8

PRAS40

Rag A/B Rag C/D

Rheb

TSC1/2

AMPK

アミノ酸 低エネルギー

p70S6K 4E-BP1/2 eIF4B

脂質代謝 ミトコンドリア代謝…

栄養、 エネルギー源 成長因子

代謝による細胞老化調節の構造生物学的な理解と制御

メタボライト・脂質等の低分子を共存させた膜タンパク質や酵素の無細胞合成系・再構成系を開発し、老化に関わるタンパク質制御の分子・原子レベルでの理解と制御を目指し、X線結晶構造解析、クライオ電子顕微鏡法、計算科学などの構造生物学的手法により下記の解析を行う 。

・nutrient sensing→mTOR-シグナリング→タン

パク質合成経路および小胞体ストレス応答に関わる分子複合体の解析

・膜タンパク質と脂質膜環境を再構成する技術を用いて、ミトコンドリアに局在する膜タンパク質(VDAC等)の解析

・短鎖脂肪酸アシル基転移酵素およびアシル化リジン認識タンパク質等の候補分子の機能・構造解析

・プロジェクト内で新たに発見されるメタボライトとその標的タンパク質の複合体の構造解析

・老化・神経変性疾患に特徴的なタンパク質高次凝集構造形成機構の超高磁場固体NMR等による解析

白水

Nature (2015), Nat Chem Bio (2015), NSMB (2014) 19

alkyne-tagged lipid

cell

alkyne-tagged metabolites

metal-based purification

M metal beads

lipid metabolites

metabolism

native lipid

アルキンタグを用いて特定の脂肪酸由来の代謝物の網羅的解析を可能にする方法の開発

複雑な脂質混合物の中からアルキンを含む代謝物を選択的に精製し同定する

OHO

COOH

OHHO

O

COOH

OO

OH

COOH

O

COOH

COOH

COOHOOH

OH

COOH

OH

OH

OHO

COOH

OH

COOH

OH

OH

M OHO

COOH

金属との錯形成を鍵とする精製

COOH

開発する基盤技術:アルキンと遷移金属の特異的な相互作用を利用したアルキンタグ分子の濃縮法

脂質代謝物解析ための基盤技術開発

期待される成果 癌化など「老化」に伴い増加する疾患に関連する細胞内脂質代謝の変化を調べることにより、疾患の進展や悪性化に関与する脂質代謝物を見いだせれば、疾患の診断や治療に繋がる可能性がある。

研究ターゲット:脂質代謝物(特に不飽和脂肪酸由来の酸化脂質群)

プロスタグランジンに代表される不飽和脂肪酸由来の酸化脂質は、さまざまなシグナル伝達分子として働いている。 癌、糖尿病、免疫・炎症疾患、精神・神経疾患など加齢により増加する疾患との関連も示唆されている。

本研究における取りくみ:脂質代謝物解析のための化学的手法の開発

LC-MS解析 ・新規生物活性脂質代謝物の発見 ・リピドミクス解析への貢献

袖岡

JACS (2012) Nat Protoc (2013)

20

老化は細胞のエネルギー代謝と密接に結びついているプロセスである。本プロジェクトでは、これまで築き上げてきた様々なハイスループットスクリーニングの技術や、全遺伝子発現株などのゲノムワイドなリソースを活用し、内因性代謝物によるエネルギー代謝の制御機構を明らかにすることにより、寿命制御機構へと迫る。

内因性代謝物によるエネルギー代謝制御と老化

21

3.エネルギー代謝とミトコンドリア生合成機構の解明

分裂酵母の全遺伝子発現株コレクション

本研究を支えるゲノムワイドなリソースと高性能機器

タンパク質アレイ技術 ハイスループット スクリーニング技術

1.代謝物の新しい活性を見いだすためのプラットフォーム 内在性代謝物がもつエピジェネティクス制御等の新規活性スクリーニング

ミトコンドリアの生合成機構 mtDNA複製機構

DNA / ヒストン Me

Me Ac P

エピジェネティクス

代謝酵素 P Ac

脂質・化合物ライブラリー 老化研究の優れたモデル生物 S. pombe C. elegans

2.モデル生物を用いた寿命制御因子の探索

経時老化の制御に関わる遺伝子のゲノムワイドなスクリーニング

老化を人為的に制御できる化合物のスクリーニング

老化マーカーの開発

代謝

活性化?

阻害?

一次代謝産物

エネルギー代謝変換・エピジェネティクスの人為的制御 アンチエイジング薬 ストレス耐性の獲得

I III IV II

O2

酸化的リン酸化

H2O ADP ATP

e-

TCA 回路

グルコース 解糖系

期待される成果

吉田

Sci Signal (2015) Nat Chem Bio (2010)

全能性細胞における遺伝子発現および代謝の研究 ~ 老化のメカニズムを理解するために ~

多能性幹細胞は卓越した自己複製能を有しており、それによって老化を免れていると考えられている。本研究では、最近ES細胞中に見つかった全能性細胞に焦点をあて、幹細胞維持のメカニズムに迫る。

全能性細胞を誘導する因子の探索 遺伝子発現 胚発生のどの時期に最も近いのか

代謝

・低分子化合物 ・卵子中の因子

期待される成果 どのようにして幹細胞が維持されているのか、どのような機構が最終的に幹細胞の加齢に伴う機能低下をもたらすのかについて理解が進むことが期待される。

ピルビン酸 酸化

酸化的 リン酸化

受精卵 多能性幹細胞

? ES細胞由来 全能性細胞

→ シグナル伝達経路

品川

Cell Stem Cell (2014)

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マウス

エピゲノム解析

老化研究の基盤として、老齢マウスと若いマウスとで、遺伝子発現パターン、エピゲノム状態、メタボロームの違いを明らかにすることは有用である。また人でも同様の解析が可能であれば、基盤として大変重要である。

ゲノム解析による基盤作製(検討中)

ヒト (検討中)

トランスクリプトーム解析

老齢マウス 若いマウス

メタボローム解析

多くの組織・細胞 が解析可能 飼育条件を 変更可能

トランスクリプトーム解析

血液サンプル

メタボローム解析?

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理研で出来る事・得意な事

臨床研究

老化:時間的・遺伝的・環境的要因が複雑に絡み合うため、色々な角度からの総合的アプローチが必要。 大学や他の研究機関での老化研究を推進し、効率的な共同研究を推進し、総合的なアプローチが必要。

All Japan での老化研究の必要性

All Japan での総合的な取組みにより「老化メカニズム」を理解し、老化関連疾患の診断等に基礎的な知見を与え、「健康な老化」に役立てる

期待される成果

個別研究

モデルマウス

可視化技術 ゲノム解析

メタボローム解析 化合物ライブラリー ハイスループット スクリーニング

構造解析

理研で出来ない事・不得意な事 豊富な基盤と、 それを利用した研究

幅広い個別研究

臨床サンプルを用いた研究

連携

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