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粉じん作業特別教育
労働安全・労働衛生コンサルタント椎野由裕
特別教育
1
粉じん作業
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特別教育事業者に課せられた4つの安全衛生教育
2
教育名 対象者 準拠法令 教育内容
雇い入れ時教育 ・新入社員・中途採用者
労働安全衛生法第59条第1項
機械・原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取り扱い方法に関すること、作業開始時の点検に関すること、整理整頓、職業性疾病に関することなど
作業内容変更時教育
配置転換者 労働安全衛生法第59条第2項
職長教育 新任職長 労働安全衛生法第60条
作業方法の決定及び労働者の配置、リスクアセスメント、指導・教育に関すること、監督・指示に関すること、異常・災害時の措置に関すること
特別教育 危険又は有害業務従事者
労働安全衛生法第59条第3項
厚生労働省令で定めるものに労働者を就かせる時は、厚生労働省令で定めるところにより当該業務に関する安全または衛生のための特別の教育を行う今講習はここです!
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特別教育粉じん作業特別教育の根拠法
3
準拠法令 内容
労働安全衛生法第59条第3項
当該業務に関する安全または衛生のための特別の教育を行う
労働安全衛生規則第 36 条 29 号
特別教育を必要とする業務に「粉じん障害防止規則第2条第1項第3号の特定粉じん作業に係る業務」がある。
粉じん障害防止規則第2条第1項第3号
特定粉じん作業とは粉じん作業のうち、その粉じん発生源が特定粉じん発生源であるものをいう
粉じん障害防止規則第2条第1項第2号
特定粉じん発生源とは別表第二に掲げる箇所をいう
粉じん障害防止規則第2条第1項第2号別表第2
次のページ参照
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特別教育 特定粉じん発生源
4
別表第2 特定粉じん発生源
1 坑内において、鉱物等を動力により掘削する箇所
2 鉱物等を動力により破砕し、粉砕し、又はふるいわける箇所
3 鉱物等をずり積機等車両系建設機械により積み込み、又は積み卸す箇所
4 鉱物等をコンベヤー(ポータブルコンベヤーを除く。以下同じ。)へ積み込み、又はコンベヤーから積み卸す箇所(前号に掲げる箇所を除く。)
5 屋内の、岩石又は鉱物を動力(手持式又は可搬式によるものを除く。)により裁断し、彫り、又は仕上げする箇所
6 屋内の、研ま材の吹き付けにより研まし、又は岩石若しくは鉱物を彫る箇所
7 屋内の、研ま材を用いて動力(手持式又は可搬式によるものを除く。)により、岩石、鉱物若しくは金属を研まし、若しくはばり取りし、又は金属を裁断する箇所
8 屋内の、鉱物等、炭素原料又はアルミニウムはくを動力(手持式動力工具によるものを除く。)により破砕し、粉砕し、又はふるいわける箇所
9 屋内の、セメント、フライアッシュ又は粉状の鉱石、炭素原料、炭素製品、アルミニウム若しくは酸化チタンを袋詰めする箇所
10 屋内の、粉状の鉱石又は炭素原料又はこれらを含む物を混合し、混入し、又は散布する箇所
11 屋内の、原料を混合する箇所
12 耐火レンガ又はタイルを製造する工程において、屋内の、原料(湿潤なものを除く。)を動力により成形する箇所
13 屋内の、半製品又は製品を動力(手持式動力工具によるものを除く。)により仕上げる箇所
14 屋内の、型ばらし装置を用いて砂型をこわし、若しくは砂落としし、又は動力(手持式動力工具によるものを除く。)により砂を再生し、砂を混練し、若しくは鋳ばり等を削り取る箇所
15 屋内の、手持式溶射機を用いないで金属を溶射する箇所
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特別教育 粉じん作業特別教育の法的要求内容
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科目 範囲 時間
粉塵に係る疾病及び健康管理
粉塵の有害性 粉塵による疾病の病理及び症状健康管理の方法
1時間
粉じんの発散防止及び作業場の換気の方法
粉塵の発散防止対策の種類及び概要換気の種類及び概要
1時間
作業場の管理 粉塵発散防止対策に係る設備及び換気のための設備の保守点検の方法 作業環境点検の方法 清掃の方法
1時間
呼吸用保護具の使用方法
呼吸用保護具の種類、性能、使用方法及び管理
30分
関係法令 労働安全衛生法、労働安全衛生施行令労働安全衛生規則及び粉塵障害防止規則並びにじん肺法及びじん肺施行規則中の関係条項
1時間
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特別教育 今講座の目次
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章 題目 内容 時間
第1章 労働衛生管理 作業環境管理、作業管理、健康管理 15分
第2章 粉塵に係る疾病及び健康管理
粉塵の有害性 粉塵による疾病の病理及び症状健康管理の方法
1時間
第3章 粉じんの発散防止及び作業場の換気の方法
粉塵の発散防止対策の種類及び概要換気の種類及び概要
1時間
第4章 作業場の管理 粉塵発散防止対策に係る設備及び換気のための設備の保守点検の方法作業環境点検の方法 清掃の方法
1時間
第5章 呼吸用保護具の使用方法
呼吸用保護具の種類、性能、使用方法及び管理
30分
第6章 関係法令 労働安全衛生法、労働安全衛生施行令労働安全衛生規則及び粉塵障害防止規則並びにじん肺法及びじん肺施行規則中の関係条項
1時間
確認テスト 各章の巻末に設定重要ポイントの理解の確認
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粉じん作業特別教育
労働安全・労働衛生コンサルタント椎野由裕
1
1.労働衛生管理
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衛生の3管理と5管理
2
作業環境管理 作業管理健康管理
労働衛生教育労働衛生管理体制
健康診断
健康測定
環境測定
環境改善
1.労働衛生管理
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衛生の3管理と5管理
3
労働衛生管理体制
労働衛生教育
作業環境管理
作業管理
健康管理 結果確認・目標達成
ミクロ対策(ばく露予防)
マクロ対策(本質衛生化)
先取り基礎
不衛生行動防止
1.労働衛生管理
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作業環境管理
作業環境中の種々の有害要因を排除し、さらに快適な作業環境を維持することを狙いとするもので、作業環境をコントロールすることにより、労働者の粉じんへの曝露量を間接的に管理する方法
<方法>• 粉じんの種類・使用方法の把握• 気中濃度の測定と評価(作業環境測定)• 発生源対策• 局所排気・全体換気
作業環境管理
4
1.労働衛生管理
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作業環境管理
第 1 管理区分:作業環境が適切に行われている第 2 管理区分:作業環境管理になお改善の余地があると
判断される第 3 管理区分:作業環境管理が適切でないと判断される
※土石、岩石、鉱物の粉じんについては、管理濃度を算出するために粉じん中の遊離珪酸の含有率を必要に応じて測定する必要がある
作業環境測定-定期測定
作業環境気中の粉じんの濃度を測定し、その結果を評価し、その職場の管理区分を決定する。
5
1.労働衛生管理
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作業管理
労働者が作業そのものによって影響を受け、粉じんによる健康障害が発生しないように作業を管理し、労働者への影響と環境の悪化を極力少なくすること
<方法>・作業時間の適正化・作業強度の軽減・作業姿勢への配慮・呼吸用保護具の着用励行・呼吸用保護具の保守点検(ろ過材の効力など)
作業管理
6
1.労働衛生管理
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健康管理
定期的に健康診断を実施し、個々の労働者の健康状態を定期的にチェックし、異常が発見された者に対しては、適切な治療はもとより、粉じん業務以外の業務への配置換えを含めた事後措置を実施するとともに、異常者の作業方法の再チェック、その作業環境の見直し、作業環境測定の実施、その結果評価による作業環境の状況の把握をし、問題があれば直ちに改善をする
<方法>・一般定期健康診断・特殊健康診断 など
健康管理
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1.労働衛生管理
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粉じん作業特別教育
労働安全・労働衛生コンサルタント椎野由裕
1
2.粉じん疾病と健康管理
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空気は何か
2
2.粉じん疾病と健康管理
空気は窒素(78%)+酸素(21%)+その他(アルゴン・二酸化炭素等様々な微量気体)+水蒸気(0.5%~4%+ 粒子状の物質粉じん
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呼吸すると
3
2.粉じん疾病と健康管理
私たちは呼吸するとどうなるか人は、1回に約0.5 L の空気を吸います⇒1分間に約22回⇒1日の呼吸量は約14,400リットル⇒四畳半の部屋の大きさに相当する⇒重さに換算すると1日20 kg 近い空気を体内に入れる⇒空気中の粒子がそれだけ体内に吸引される⇒健康への影響が心配
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粉じんとは
• 粉のように細かく気体中に浮遊する塵(ちり)状の固体の粒子<特徴>①空気より軽い ➁肺胞に到達する ③分解されない
粉塵とは?
4
2.粉じん疾病と健康管理
※ヒューム:煙気(えんき)のことで、溶接の際、金属が溶けて蒸気となり、それが空気中で固まって粒子状になったもの
• 鉛を多く含んだ粉塵を多量に吸いこむと、「鉛中毒」を起こす
• 有害物質を含んでいない粉塵でも、長時間にわたって吸い込み続けると、肺に粉塵が溜まって「じん肺」にかかることがある
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粉じんの種類
粉じんの種類
5
2.粉じん疾病と健康管理
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粉塵の有害性
粉塵の種類・有害性のレベルの区分
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2.粉じん疾病と健康管理
有害性のレベル
粉じんの種類
a(重い)
遊離珪酸含有率 10% 以上の粉塵石綿を含む粉塵
B (第 1 種粉塵) 滑石、ろう石、アルミニウム、アルミナ、珪藻土、硫化鉱、硫化焼鉱、ベントナイト、カオリナイト、活性炭、黒鉛
C (第 2 種粉塵) 遊離珪酸含有率 10 %未満の鉱物性粉じん、酸化鉄、カーボンブラック、石炭、酸化亜鉛、二酸化チタン、ポートランドセメント、大理石、線香材料粉じん、穀粉、綿じん、木粉、革粉、コルク粉、ベークライト
d(軽い)
(第 3 種粉塵) 石灰石、その他の無機および有機粉じん
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健康障害の発生経路
有害化学物質による健康障害の発生経路と防止対策①
7
2.粉じん疾病と健康管理
① 有害化学物質の使用の中止、有害性の少ない物質への転換② 生産工程・作業方法の改良による有害物質の発散防止③ 設備の密閉化、自動化、遠隔操作、有害工程の隔離④ 局所排気による汚染物質の拡散防止⑤ 全体換気による汚染物質の希釈排出
有害化学物質
作業
発散①
②ガス粉塵ヒュームミスト
環境空気汚染
拡散⑤
④
③
①~⑤及び⑥・⑦は工学的対策 後述の⑧・⑨は医学的対策、⑩は教育的対策
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健康障害の発生経路
有害化学物質による健康障害の発生経路と防止対策➁
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2.粉じん疾病と健康管理
⑥ 作業環境測定による管理状態のチェック⑦ 臨時作業等に対する保護具の使用による人体侵入の防止⑧ 雇い入れ時の特殊健康診断による適正配置の確保⑨ 定期の特殊健康診断による早期発見と治療⑩ 不注意、不適当な作業方法、姿勢等による異常曝露の防止
環境空気汚染
高濃度
⑥
低濃度
呼吸器
皮膚
消化器
人体侵入
代謝反応
蓄積
排泄
健康障害⑧ ⑨ ⑩⑦
前頁の①~⑤及び⑥・⑦は工学的対策 ⑧・⑨は医学的対策、⑩は教育的対策
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1. ほとんどの場合、呼吸によって体の中に入る。2. 人間が吸い込む空気中の粉じんは、まず鼻腔でひっかかる。3. 次に気管支のせん毛によって外へ送り出されるが、非常に細かい粉じんは、肺の一番奥にある小さな袋(肺胞)にまで侵入していく。
4. 肺胞に入った粉じんも大部分は息を吐くときに一緒に外に出されるが、肺の奥の方にくっついた粉じんは取り除かれず少しずつたまっていく。
粉じんの侵入
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2.粉じん疾病と健康管理 粉塵の侵入
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1. 粉じんが人間の身体に侵入すると、人間の身体は粉じんに対して反応を示すが、その反応は粉じんの性質と量によって異なる。
2. 人間の身体は外からの異物の侵入に対して、身体を守り恒常性(ホメオスターシス)を維持しようとする機能を持っており、防御のバランスが崩れると病的な状態となり、疾病になることがある。
3. 粉じんを吸入した場合に起こる疾病の重要な因子として次のようなことがある。①粉じんの科学的組成②粉じんの粒径③粉じんの吸入量④人体側の要因
粉じんの有害性を左右する因子
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2.粉じん疾病と健康管理 有害性因子
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物質粒子の大きさ
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2.粉じん疾病と健康管理 粒子の大きさ
SPM
PM2.5
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粒子の大きさと沈着率
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2.粉じん疾病と健康管理 粒子の大きさ
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吸入空気の流れ
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2.粉じん疾病と健康管理 粉じんの吸入
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肺の構造
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2.粉じん疾病と健康管理 粉じんの吸入
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繊維状物質の肺胞内への吸入
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2.粉じん疾病と健康管理 粉じんの吸入
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有害化学物質による疾病
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2.粉じん疾病と健康管理 疾病
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粉塵作業場での光景です。さて、問題点は?
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2.粉じん疾病と健康管理 粉じん職場の問題
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ガーゼ繊維と粉塵の大きさ
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2.粉じん疾病と健康管理 粉じん職場の問題
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じん肺の症状
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2.粉じん疾病と健康管理 じん肺
肺胞の中に粉塵が溜まって起こる
粉塵が肺胞の周りに移るもの
石綿による特徴的なもの
肺胞の中に入った粉塵の量が増大して、炎症が起こり弱い線維化が起こる
肺胞内の粉塵が、肺の細胞に取り込まれ、肺胞の周りやリンパ節の中に入って炎症が起こる
細い気管支を中心に線維化が起こる
※線維化:正常の肺胞が壊れて、硬い組織が出来てくること
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じん肺の起こり方
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2.粉じん疾病と健康管理 じん肺
初期にはほとんど自覚症状はない。⇒ 進行すると、息切れが起こり、せきや痰が出る。⇒ さらに進行すると、息切れがひどくなり、⇒ 歩いただけでも息が苦しく、⇒ 動悸がして仕事も出来なくなる。
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じん肺の主な原因物質と疾患名
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2.粉じん疾病と健康管理 じん肺
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じん肺の合併症
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2.粉じん疾病と健康管理 じん肺
合併症の中で最も恐ろしいのが「肺結核」である。肺結核の他にも次のような病気にかかりやすくなる。①結核性胸膜炎:結核菌によって起こる肋膜炎②続発性気管支炎:痰の量が多くなり、その痰が黄色くなったもの
③続発性気管支拡張症:気管支が膨らんで元に戻らなくなるもの
④続発性気胸:肺に穴があいて、肺と肺との間に空気が入ってきて、肺を押しつぶしたようになるもの
⑤原発性肺がん:肺以外の部位から転移したものではない肺がん
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じん肺の予防
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2.粉じん疾病と健康管理 じん肺
• 職場の空気中の粉じん量を可能な限り少なくする
• 職場で作業している時に吸込む空気中の粉じんを出来るだけ減らす
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じん肺及びじん肺合併症者数の推移
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2.粉じん疾病と健康管理 じん肺
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じん肺の健康診断
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2.粉じん疾病と健康管理 じん肺健康診断
「じん肺法第3条に規定」① 粉じん作業の職歴の調査② 胸部エックス線直接撮影検査③ 胸部に関する臨床検査④ 肺機能検査⑤ 結核精密検査⑥ 肺結核以外の合併症に関する検査
「事業者が行なう健康診断」① 就業時健康診断② 定期健康診断③ 定期外健康診断④ 離職時健康診断
じん肺にかかっている人(管理区分 2 または3)は、やめた後も「健康管理手帳」を国から貰って無料で健康診断を受けることができる
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じん肺管理区分とは
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2.粉じん疾病と健康管理 じん肺健康診断
※管理区分は、健康診断結果をもとに都道府県労働局長が決定し一人ひとりに通知書で知らされる
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じん肺管理区分等通知書
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2.粉じん疾病と健康管理 じん肺健康診断
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