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経済統計11回:指数について(1) ── 経済指数の理論 2015620元山斉 石田和彦・吉野克文・美添泰人 1

経済統計Ⅰ 第11回:指数について(1) ── 経済指数の理論1)-11.pdf · ⑫製造工業稼働率指数・生産能力指数 ⑬製造工業生産予測指数

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経済統計Ⅰ第11回:指数について(1)

── 経済指数の理論2015年6月20日

元山斉

石田和彦・吉野克文・美添泰人

1

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経済指数とは?

① 景気動向指数

② 消費者物価指数(CPI)

③ 消費水準指数

④ 家計消費指数

⑤ 貿易指数

⑥ 常用雇用指数、賃金指数、労働時間指数

⑦ 農業物価指数

⑧ 鉱工業生産指数

⑨ 生産者出荷指数

⑩ 生産者製品在庫指数

⑪ 生産者製品在庫率指数

⑫ 製造工業稼働率指数・生産能力指数

⑬ 製造工業生産予測指数

⑭ 第3次産業活動指数

⑮ 全産業活動指数

⑯ 全産業供給指数

⑰ 建設工事費デフレーター

⑱ 企業物価指数(CGPI)

⑲ 企業向けサービス価格指数(SPPI)

⑳ 製造業部門別投入・産出物価指数(IOPI)

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• 現在作成・公表されている主な経済指数

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経済指数とは?(続き)

① 単に基準年の平均値等で「割り算」をして基準年=100 の形式としたもの

── 常用雇用指数、賃金指数、労働時間指数、等

② DI (Diffusion Index)的な指数

── 内閣府景気動向指数 (DI)、日銀短観(DI)、等

③ 加重平均として「指数理論」的な意味での「指数」

── 何らかの指数算式を用いて、に集約したもの

I. 生産量:鉄1トンと自動車1台は合計できない→ 「鉱工業指数」

II. 価格指数の例:→各種物価指数

(「企業物価指数」、「企業向けサービス価格指数」)

④ 経済的に明確な概念を反映する指標

「消費者物価指数」

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• 一括りに「経済指数」と称されるが、性格の異なるものが混在

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指数算式の例(1):物価上昇率をどう測るか

① 単純平均算式:

米の価格上昇率 = 1000/500 -1 = 1 (%表記では 100%の上昇)

テレビの価格上昇率= 110,000/100,000 - 1 = 0.1 (%表記では 10%の上昇)

→ 平均物価上昇率= (1+0.1)/2 = 0.55 (%表記では、55%の上昇)

→ この数字にはどのような意味があるか?

② 米1kgとテレビ1台の「合計価格」は、第0期:100,500円 → 第t期:111,000円→ 物価上昇率:111,000/100,500-1=0.1044 (%表記では、10.4%の上昇)

→ この数字にはどのような意味があるか?

4

米1kg: 第0期(基準時) 500円 → 第t期 1000円 (2倍に上昇)テレビ1台:第0期(基準時) 10万円 → 第t期 11万円 (10%価格上昇)

• 単純な設例:

• どちらの期にも、「米1Kgとテレビ1台だけ」を購入する場合なら、

それぞれどのような意味があるだろうか.

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指数算式の例(1):物価上昇率をどう測るか(続き)

③ 仮に、両期中の実際の購入数量が以下のようにわかっていたとすると、第 0期:米100kgとテレビ1台を購入支出は 100×500+100,000=150,000円第 t 期:米 70kgとテレビ1台を購入支出は 70×1000+110,000=180,000円

→ 支出の比率は 180,000/150,000=1.2支出の増加率は20%

→ これを、物価上昇率とみなすことは適切か?

→ 価格の変化ではなく、購入数量の変化による支出の変化が混入しているので、物価上昇率とは言い難い・・・

④ ラスパイレス算式: 「基準時(第0期)の購入数量を、第t期にも購入した」とすれば、支出はどれだけ増加するか

→ 第0期の購入数量は、米100kgとテレビ1台支出は 150,000円

→ 第t期にも同じ数量を購入したとすると支出は 100×1000+110,000=210,000円

→ 支出の比率は 210,000/150,000=1.4 支出の増加率は40%

→ これなら、物価上昇率とみなすことができるように見える(購入数量の変化による支出の変化は混入していないことに注意)

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指数算式の例(1):物価上昇率をどう測るか(続き2)

⑤ パーシェ算式

: 「第t期の購入数量を、基準時(第0期)にも購入していた」とすれば、

支出はどの程度増加するか

第0期に米70kgとテレビ1台を「購入していたら」 支出は、70×500+100,000=135,000円第t期は米70kgとテレビ1台を「 実際に」購入 支出は、70×1000+110,000=180,000円→ 支出の比率は 180,000/135,000=1.333・・・ 支出の増加率は33%→ これを、物価上昇率とみなすことができるように見える

(この場合も、購入数量の変化による支出の変化は混入していない)

⑥ ラスパイレス算式の変形

: 基準時の、米に対する支出=50,000円、テレビに対する支出=100,000円、

なので両者の総支出に対する比率は1/3:2/3→ それぞれの価格上昇率をこのウェイトで加重平均すると

2×1/3+1.1×2/3=1.4(加重平均の)物価上昇率は 40% ラスパイレス指数に一致

ラスパイレス指数

= ∑(各品目の価格上昇率)×(基準時の各品目に対する支出ウェイト)6

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QUIZ(第11回講義関連)

• 以下の簡単な数値例において、「ラスパイレス算式」と「パーシェ算式」による「現時点」の物価指数、および、その基準時対比の騰落率を計算せよ。

• 余白に、本日の講義の感想等を記入して下さい。

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自動車 テレビ スーツ

価格(万円) 購入量(台) 価格(万円) 購入量(台) 価格(万円) 購入量(着)

基準時 100 30 50 50 5 500現時点 120 20 25 150 6 400

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QUIZ(第11回講義関連)の解答例

• ラスパイレス指数

基準時の支出:

100×30+50×50+5×500=8000(万円)・・・①

基準時の購入数量を、現時点の価格で購入した場合の支出:

120×30+25×50+6×500=7850(万円)・・・②

→ ラスパイレス価格指数: ②/①×100=98.1→ 基準時対比1.9%の物価下落

• パーシェ指数

現時点の購入数量を、基準時の価格で購入した場合の支出:

100×20+50×150+5×400=11500(万円)・・・③

現時点の支出:

120×20+25×150+6×400=8550(万円)・・・④

→ パーシェ価格指数 ④/③×100=74.3→ 基準時対比25.7%の物価下落

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指数算式の例(2):生産量の変化をどう測るか

• 単純な設例:

自動車の生産量:第0期(基準時) 100台 → 第t期 200台 (2倍に増加)

テレビの生産量: 第0期(基準時)1,000台 → 第t期 1,500台 (50%増加)

① 単純平均算式

自動車の生産量増加率:200/100-1 =1 (%表記では 100%(=2倍) の増加)

テレビの生産量増加率: 1500/1000-1 =0.5 (%表記では 50% の増加)

→ 平均の生産量増加率: (1+0.5)/2 =0.75 (%表記では 75% の増加)

→ どのような意味のある数字か?

② 自動車とテレビの「合計生産台数」は、第0期 1,100台→ 第t期 1,700台

→ 生産量の増加率: 1,700/1,100=1.5454 (%表記では、54.5%の増加)

→ ほとんど意味のない数字

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指数算式の例(2):生産量の変化をどう測るか(続き)

③ 仮に、両期中の自動車とテレビの価格が以下のようにわかっていたとする:

第0期:自動車1台100万円、テレビ1台10万円→生産額:100×100+1,000×10=20,000万円第t期: 自動車1台105万円、テレビ1台11万円→生産額:105×200+1,500×11=37,500万円

→ 生産額の比率は 37,500/20,000=1.875 → 生産額の増加率は87.5%

→ これを、生産量の増加率とみなすことは適切か?

→ 生産量の変化ではなく、価格の変化による生産額の変化が混入しているので、生産量の増加率とは言い難い・・・

③ ラスパイレス算式: 「基準時(第0期)の価格で、第t期の生産額を評価した」とすれば、

生産額はどの位増加するか

→ 第0期の価格は、自動車1台100万円、テレビ1台10万円 → 生産額:20,000万円

→ 第t期も価格が同じだったとすると → 生産額: 100×200+1,500×10=35,000万円

→ 生産額の比率は 35,000/20,000=1.75 → 生産額の増加率は75%

→ これを、生産量の増加とみなすことができる(価格の変化による生産額の変化は混入していないことに注意)

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指数算式の例(2):生産量の変化をどう測るか(続き2)

⑤ パーシェ算式

: 「第t期の価格で基準時(第0期)の生産量も評価する」とすれば、

生産額はどの程度増加するか

第0期の価格が、「もし、自動車1台105万円、テレビ1台11万円であったとしたら」

→ 生産額は 100×105+1,000×11=21,500万円、第t期の「実際の」生産額は 37,500万円

→ 生産額の比率は 37,500/21,500=1.7442 生産額の増加率は74.4%

→ これを生産量の増加率とみなすことができる

(この場合も価格変化による生産額の変化は混入していない)

⑥ ラスパイレス算式の変形

: 基準時の自動車の生産額=10,000万円、テレビの生産額=10,000万円

なので両者の生産額の比率は 1/2:1/2 (50%:50% )

→それぞれの生産量増加をこのウェイトで加重平均すると

2×0.5+1.5×0.5=1.75(加重平均の)生産量増加率は 75% ラスパイレス指数に一致

ラスパイレス指数

= ∑(各品目の生産量増加率)×(基準時の各品目の生産額ウェイト)

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ラスパイレス価格指数算式

• 基準時(第0期)の数量を、現時点(第t期)の価格で購入・消費したら、支出額は基

準時に比べてどの程度変化するかを測る

── 𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖:第t期における第i品目の価格、𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖𝑖:第t期における第i品目の消費量

(以下、同様)

⇒∑𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖∑𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖

= 𝑃𝑃1𝑖𝑖𝑄𝑄1𝑖+𝑃𝑃2𝑖𝑖𝑄𝑄2𝑖+⋯+𝑃𝑃𝑛𝑛𝑖𝑖𝑄𝑄𝑛𝑛𝑖𝑃𝑃1𝑖𝑄𝑄1𝑖+𝑃𝑃2𝑖𝑄𝑄2𝑖+⋯+𝑃𝑃𝑛𝑛𝑖𝑄𝑄𝑛𝑛𝑖

⇒ これを変形すると:

∑ ⁄𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖 ∑𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖 × 𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖/𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖 = ∑𝑤𝑤𝑖𝑖𝑖 × ( ⁄𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖 𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖)ただし 𝑤𝑤𝑖𝑖𝑖 = 𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖 𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖/∑𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖 : 基準時の支出ウェイト

⇒ 「基準時からの価格変化を、基準時の支出ウェイトで加重平均する」という、

通常用いられるラスパイレス価格指数算式が導出される

• 消費者物価指数、企業物価指数、企業向けサービス価格指数、等の物価指数

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ラスパイレス数量指数算式

• 現時点(第t期)での生産、出荷、購入等の数量を基準時(第0期)の価格で評価した

ら、基準時に比べて生産額、出荷額、購入額等はどの程度変化しているかを測る

⇒∑𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖𝑖∑𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖

= 𝑃𝑃1𝑖𝑄𝑄1𝑖𝑖+𝑃𝑃2𝑖𝑄𝑄2𝑖𝑖+⋯+𝑃𝑃𝑛𝑛𝑖𝑄𝑄𝑛𝑛𝑖𝑖𝑃𝑃1𝑖𝑄𝑄1𝑖+𝑃𝑃2𝑖𝑄𝑄2𝑖+⋯+𝑃𝑃𝑛𝑛𝑖𝑄𝑄𝑛𝑛𝑖

⇒ これを変形すると:

∑ ⁄𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖 ∑𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖 × ⁄𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖𝑖 𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖 = ∑𝑤𝑤𝑖𝑖𝑖 × ( ⁄𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖𝑖 𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖)ただし 𝑤𝑤𝑖𝑖𝑖 = 𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖/∑𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖 : 基準時の生産額等のウェイト

⇒ 「基準時からの数量変化を、基準時の生産額、出荷額等のウェイトで

加重平均する」という、通常用いられるラスパイレス数量指数算式が導出される

• 鉱工業指数、第3次産業活動指数、等

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パーシェ指数算式① パーシェ価格指数:

⇒∑𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖𝑖∑𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖𝑖

= 𝑃𝑃1𝑖𝑖𝑄𝑄1𝑖𝑖+𝑃𝑃2𝑖𝑖𝑄𝑄2𝑖𝑖+⋯+𝑃𝑃𝑛𝑛𝑖𝑖𝑄𝑄𝑛𝑛𝑖𝑖𝑃𝑃1𝑖𝑄𝑄1𝑖𝑖+𝑃𝑃2𝑖𝑄𝑄2𝑖𝑖+⋯+𝑃𝑃𝑛𝑛𝑖𝑄𝑄𝑛𝑛𝑖𝑖

⇒ これを変形すると:

∑𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖𝑖∑𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖𝑖

= ∑𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖𝑖∑ 𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖𝑖 ×

𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖

= 1

∑𝑤𝑤𝑖𝑖𝑖𝑖×𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖

ただし𝑤𝑤𝑖𝑖𝑖𝑖 = 𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖𝑖/∑𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖𝑖 : t 時点(直近時)の支出ウェイト

② パーシェ数量指数:

⇒∑𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖𝑖∑𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖

= 𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖𝑖+𝑃𝑃2𝑖𝑖𝑄𝑄2𝑖𝑖+⋯+𝑃𝑃𝑛𝑛𝑖𝑖𝑄𝑄𝑛𝑛𝑖𝑖𝑃𝑃1𝑖𝑖𝑄𝑄1𝑖+𝑃𝑃2𝑖𝑖𝑄𝑄2𝑖+⋯+𝑃𝑃𝑛𝑛𝑖𝑖𝑄𝑄𝑛𝑛𝑖

⇒ これを変形すると:

∑𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖𝑖∑𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖

= ∑𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖𝑖∑𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖𝑖×

𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖𝑖

= 1

∑𝑤𝑤𝑖𝑖𝑖𝑖×𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖𝑖

ただし𝑤𝑤𝑖𝑖𝑖𝑖 = 𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖𝑖/∑𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖𝑄𝑄𝑖𝑖𝑖𝑖 :t 時点(直近時)の生産額等のウェイト14

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ラスパイレス指数算式の実際の使用

• 実際には、同じ統計から各時点の価格(Pit)、数量(Qit)を入手できることは少ない

→ 多くの経済指数は、毎月の価格変化(Pit / Pi0)や数量変化(Qit / Qi0)と、

ウェイト算出に別々の統計を用いて作成されている

例:① 消費者物価指数価格変化=「小売物価統計調査」、ウェイト=「家計調査」② 鉱工業生産指数数量変化=「生産動態統計調査」、ウェイト=「工業統計調査」

• こうした過程で、次第に価格・数量とウェイトが独立し、本来のP、Q算式とは

やや離れた原統計を用いて算出される指数も発生

—付加価値ウェイトの鉱工業生産指数—第3次産業活動指数(ウェイトは5年毎の「産業連関表」による付加価値)—企業物価指数(ウェイトは「工業統計調査」の出荷額)、等

• 逆に言えば、年次や5年毎の構造統計からウェイトを算出できるので、

経済指数の作成にはラスパイレス算式が広く用いられている

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指数理論:その他の指数算式等

• フィッシャー指数算式:ラスパイレス指数とパーシェ指数の幾何平均──理論的には、ラスパイレス指数やパーシェ指数よりも望ましい性質を有するとされる(「フィッシャー理想指数」と呼ばれることもある)

• 連鎖指数:基準年を固定するのではなく、毎年(場合によっては毎期)のラスパイレス指数、ないしパーシェ指数を繋げていく方式

• ラスパイレス指数の「上方バイアス」問題

—一般に、価格が低下した財の購入・消費は増加し、価格が上昇した財の購入・消費は減少するはずなので、「ラスパイレス価格指数」は、物価上昇を過大評価する

—実際、この条件が満たされる時は、ラスパイレス算式≧パーシェ算式が成立

→それにもかかわらず、経済指数の算定にラスパイレス算式が広く用いられるのは、データの入手や計算作業が容易なため

★なお最近では、日本も含めて主要国では部分的に進んだ算式の採用が検討されている

→日本における例外: 「貿易指数」(フィッシャー算式) 通関記録に基づく業務統計であり、申告された数量と金額から毎月のP、Qが分かる。(理論的な検討をした結果ではない。実際には品質の違いを無視するなど問題点が少なくない)

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指数の基準時

• 指数の基準時:指数= 1 とする時点

… 実際上、上昇率や増加率はパーセントで表記するので、指数=100とすることが多い

• ラスパイレス指数算式による指数の基準時

… 通常は、ウェイトを固定する時期(理論算式でいえば、第0期)が基準時になる

→ 基準時から時間が経つと:

① 基準時の「支出額」や「生産額」等のウェイトが、現実の経済におけるものと大きく異な

るようになり、指数が、現実の物価や生産の動向を適切に捉えられなくなる (いわゆる

「上方バイアス」問題はその一例)

② 基準時にはなかった品目(新商品等)が出現したり、逆に指数に含まれる品目が実際

には生産や消費されなくなる

→ 定例的な、品目やウェイトの変更が必要 = 「指数の基準改定」

• 基準改定時には、ウェイトの再算定だけでなく、指数の構成品目の見直しも行わ

れるのが通例

• 日本の消費者物価指数については、基準時点の変更を待たずに新製品を取り入

れたり、ウェイトを変更することができる

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(参考) 「指数の基準時に関する統計基準」

1 指数の基準時の原則

指数の基準時は、5年ごとに更新することとし、西暦年数の末尾が0又は5である年とする。

2 ウェイトを固定する指数

(1) ウェイトを固定する指数は、当該指数の基準時である年のウェイトにより算出するものと

する。

(2) ウェイトを固定する指数について、やむを得ない理由により基準時の更新に必要なウェイ

トを設定できないときは、1の項(指数の基準時の原則)の定めにかかわらず、当該必要な

ウェイトが設定できるまで指数の基準時を更新しないことができる。この場合において、指数

の基準時が西暦年数の末尾が0又は5である年以外の年となるときは、その後の指数の基準

時ができるだけ速やかに1の項の定めに従ったものとなるよう、適切な措置を執るものとする。

3 基準時を更新した場合の利便確保措置

指数の基準時を更新したときは、新指数と旧指数とのリンクその他の利用者の利便のための

適切な措置を講ずるものとする。

4 その他

指数の基準時について、法令の定め又は法令に定める手続があるときは、その定め又は手

続によるものとする。

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2016年度「経済統計(I)」課題 (4)

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必須、提出期限:7月11日(各指標の詳細は次週以降の講義で紹介する)

① 2010年以降の「消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)」(総務省統計局)、

「国内企業物価指数」(日本銀行)、「企業向けサービス価格指数」(同)、それぞれの月次データをダウンロードし、毎月の「前月比変化率」のグラフを描け。

② 問① で描いた3つのグラフを見ながら、「消費者物価指数(生鮮食品を除く

総合)」、「国内企業物価指数」、「企業向けサービス価格指数」に「季節変動」があると考えられるか否かを考察せよ。

③ 問② の季節変動に関する考察も踏まえて、近年の日本の物価動向、デフ

レからの脱却状況などについて、問①で描いたグラフから読み取れることを記せ。