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LABIO 21 JUL. 201836
インドネシア
日栁 政彦
世界文化遺産ボロブドゥール遺跡をたずねて
バンドン（注1）から空路ジョグ
ジャカルタ（注2）に着いた時はす
でに日はとっぷり暮れていた。
途中左手窓の外にインドネシア
で最も活発な火山の一つと言わ
れているムラピ山が雲上にそび
えていた。
ジョグジャの街は古都らしく
素朴でしっとりとした雰囲気の
漂う街である。インドネシアと
いえば熱帯気候で高温多湿を覚
悟していたが、ここジョグジャ
はバンドンと同じく熱帯モン
スーン気候で到着した9月3日は
丁度乾季に当たり思ったより涼
しく思えた。
ジョグジャに来たのは、世界
最大級の仏教遺跡で、ユネスコ
の世界文化遺産に登録されてい
るボロブドゥールやプランバナ
ンの寺院遺跡群を訪れるためで
ある。ボロブドゥール遺跡はこ
の 街 か ら 約1時 間 程 度 で40数
km、北西方向にあるとのこと。
ジョグジャ初日はインドネシ
ア滞在3日目である。この歳では
そろそろ疲れが出てくる頃であ
る。明日の遺跡巡りは夜明け前
の出発であり、結構強行軍だと
いうことで早く床に就いた。女
房も疲れたと見え、もうスースー
寝息を立てていた。
早朝というよりまだ夜の続き
といってよい午前3時半ホテル
出発。と言うのは、日の出をボ
ロブドゥールから見るとの趣向
インドネシア ジャワ島地図 出典元 :「旅行のとも、ZenTech」
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インドネシア
のためである。実際、この遺跡
を訪れるほとんどの観光客はこ
の時間帯にジョグジャを出発し
ている。なるべくいい場所で日
の出を見るためにと早くホテル
を出たが、ボロブドゥール遺跡
の受付ハウスに着いた頃はまだ
真っ暗にもかかわらず、すでに
数十人の観光客が着いていた。
係員から懐中電灯を渡され
た。周囲の様子が全く分からな
いところを懐中電灯の光を頼り
に真っ暗な坂道を登っていく。
立ち止まって空を仰ぐと南半球
での満点の星が輝いている。ゆっ
くり星空を楽しみたいが後ろか
ら観光客の督促の声で、期待の
南十字星を見るところではな
かった。
15分ほど登っていくと、前方
にぼんやり大きなドーム状のシ
ルエットが見え始めた。ボロブ
ドゥール寺院遺跡に到着したこ
ろは東の空にうっすら明るみが
出ていた。暗さに目が慣れてき
たのか、暗い中に遺跡の全体が
眼前にはっきり見えてきた。
寺院は天然の丘に盛土のう
え、岩を積み上げてつくられて
いる。いちばん下に方形の基壇
があり、その上に基壇と相似形
をなした5層の方形壇、さらにそ
の上に3層の円形壇があり、全体
で9層の階段ピラミッド状の構造
となっている。この構造は、仏
教における三界をあらわしてい
ると考えられているとのこと。
（ウィキペディアより）
真正面に地面から6層目まで
まっすぐ急な階段が構えてい
た。最上の方形壇は回廊があり、
更に3層の円形壇が壇ごとに階段
が設けられ最上壇まで登れる。
女房が二年前転んで大腿骨頭部
骨折し人工股関節置換術を受け
ていたので、この急な階段を登
れるのか心配したが、後ろを気
にせず、石段を踏みしめながら
ゆっくりゆっくり手すりのない
階段を上り詰めた。
我々一行は、娘夫婦とバンド
ンから一緒に来た娘婿の両親に加
え、昨日ジョグジャカルタ空港で
合流した現地ガイドさんを含め7
名である。婿の両親は息子夫婦と
一緒に長旅するのは初めとのこと
で、今回の息子夫婦の招待が嬉し
くて仕方ない様子で、歳を感ぜず
結構しっかりした足取りで上がっ
ていた。一行は最も高い壇上の、
やや赤みを帯びた東の空が真正面
に見える側に陣取り、日の出を待
つこととなった。
日の出まで未だ時間があると
のことで、ホテル側で準備して
くれたサンドイッチ等の朝食を
周りの観光客を気にすることな
く、多少冷気を感ずる中、談笑
しながら美味しく食べた。
ちなみに、我々以外の観光客
のほとんどは欧米人であり、日
本で爆買いしている中国人など
アジアの人々はほとんど見当た
らなかった。
朝食を済ませて間もなく東の
空の赤みが増し、うっすらと地
平線に漂う薄い雲の縁がきらり
と光りを帯びた。私を含めほと
んどの観客はカメラを構え日
の出の瞬間を待った。思わず、
二十歳代の頃の富士山頂からご
来光を待った情景を思い出した。
一筋の光が一直線に我々の目の
前まで延び、ご来光が現れた瞬間、
ボロブドゥール寺院最上円形壇でのご来光（日出の左側に薄くムラピ山を望む）
ボロブドゥール・目透かし格子が破壊されたストゥーパ（内部の仏像が露出）
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まるで示し合わせたかの様に一斉
に歓声と拍手が起こった。実にす
がすがしく神々しい光景である。
これが初めて南半球で見たお日様
のお出ましである。
周囲の風景は遮るものはなく、
空も雲一つなく、日の出の方角に
富士山のようなムラピ山の雄姿
を観ることができた。私はバルト
三国旅行は例外として、これまで
海外旅行でほとんど雨に当らない
ラッキーな天気男である。
日が昇り周りがすっかり明る
くなると、ボロブドゥール寺院
固有の大きな釣鐘状のストゥー
パと呼ばれる仏塔が、最上部中
央のひと際大きなストゥーパを
中心に3層の円形壇の周囲を規則
的に配置されていることがよく
分かった。なんでも全部でなん
と72基あるという。このストゥー
パは石のブロックを目透かし格
子状に積み上げた仏塔である。
内部を覗くと仏像が安置されて
いる。一部はストゥーパが破壊
され中の仏像が露出していた。
仏像やストゥーパ、そして遺跡
を囲む朝霧に煙る樹海、写真が
趣味の方には格好の素材ではな
かろうか。丁度日本の平安京初
期の頃に建造された石仏塔で、
近代になって修復工事が施され
たものの、今日までよく残って
いたものである。
それもそのはず、例のムラピ
山が噴火し火山灰が大量に降り
注ぎこの寺院をすっかり覆い隠
し、久しく忘れ去られ密林のな
かに埋もれていたという。一方
で、イスラム教徒による破壊を
おそれて人びとが埋めたという
説もあるが。いずれにせよ、密
林によってその姿を消し地元民
にも忘れ去られていた建造物が
1814年イギリス人のラッフルズ
によって偶然発見され、28年後
の1842年、オランダ人のハルト
マンにより本格的な発掘調査が
始まり、その後、当初の予定を
大幅に経過した12年後の1854年
にやっと遺跡の大部分が掘り起
こされたとのガイドの説明。
公表されている遺跡の大きさ
は、高さ約33メートル、一辺が
約120メートルのほぼ正方形の基
壇1層の上に5層の方形と3層の
円形の壇が積み重ねられている
高度な石造りの建造物である。
幾多の戦争を経てきて東南アジ
アにあって、奇跡的に残ったも
のは事実であり世界遺産に登録
されるに値する大遺跡である。
（と案内書にあり）
夜がすっかり明け、素晴らし
いご来光も拝したことから、最
上円壇を別の階段から下り、回
廊のある方形壇に順次下壇し、
各壇の回廊の壁に配している仏
教にまつわる物語の浮彫彫刻レ
リーフをガイドの説明を受けな
がら見て回った。外縁の壁に安
置されている仏像は極めて精巧
な作りでこの時代の彫刻師の技
術に感心した。ゆっくり見ると
1・2時間は裕にかかる。
ウィキペディアによると、「総
延長5kmに及ぶと言われる、仏
教説話にもとづいた1460面にお
よぶ浮彫彫刻レリーフが時計回
りにつづいており、登場人物は1
万人におよぶとされている。同
様に1212面の装飾浮彫には、天
人や羅刹、鳥獣、植物文様およ
びインド神話に登場する伝説上
の鳥獣などがみられる。」とある。
5層から地上に降り、今一度ボ
ロブドゥール寺院遺跡の全姿を限
りなく写真に収めた。遠くから眺
めると、この遺跡の壮大さがよく
分かる。また、外層、内層ともに
四方に階段をもち、各面いずれも
全く同形同構造で、どこを正面と
するかわからない、幾何学的に均
斉な構造となっていることが本当
によく理解できた。
プラオサン遺跡・復元された仏堂ジャワ中部地震で崩壊したプラオサン遺跡の寺院・仏塔
方形壇の壁の浮彫彫刻レリーフ
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インドネシア
ボロブドゥール遺跡を後にし、
我々一行はいったんホテルに戻
り、昼食後同じく世界遺産であ
るプランバナン遺跡群の一つプ
ラオサン遺跡を見学した。
プラオサン寺院の敷地（境内
か）は実に広大であるが、その
寺院や仏堂の多くが崩壊し、無
数の建造石が建っていたであろ
う場所々々に無残に重なりあっ
て転がっていた。広大な境内の
中央に南北2棟の仏堂が修復され
ており、入場料を払い境内に立
ち入り、仏堂の堂内を見ること
ができ、当時の様子をガイドの
説明によりよく理解することが
できた。
プラオサン寺院はヒンドゥー教
のサンジャヤ王家と 仏教のシャ
イレンドラ王家の姫との結婚を記
念して建立したものという。
遺跡群の中心であるプランバ
ナン寺院に着いた頃は日がそろ
そろ傾きかけていた。ここもま
た広大な敷地であるが、ここの
寺院は整備が行き届き、遺跡と
いうより公園の中に寺院遺跡群
がある遺跡公園になっている。
ガイドによると、プランバナ
ン寺院は古マタラム王国のバリ
トゥン王（在位898年～ 910年）
による建立と言われるヒンズー
教の寺院群であり、ヒンドゥー
教の遺跡としてはインドネシア
最 大 級 で、 仏 教 遺 跡 の ボ ロ ブ
ドゥール寺院遺跡と共にジャワ
建築の最高傑作の一つとされて
いる。残念ながら、ジャワ中部
地震で甚大な被害を受けた。そ
の後日本からの無償資金供与に
より修復途上にあるという。
この遺跡は、ボロブドゥール
やプラオサンと異なり完全に観
光化され、敷地（境内？）の入
り口内外には多くの土産もの屋
やレストランがあり、様式は違
えど、まるで日本の京都や奈良
のようである。入り口から遺跡
群へはかなり遠く、トロッコバ
スが送迎していた。行きは歩い
たせいか遺跡群に着くや一行は
熱帯の暑さに凝り、寺院見学ど
ころではなくどっかり座り込ん
でしまった。せっかく来たのに
と思い、私と娘婿だけで修復さ
れた寺院まで行き内部を見て回
り、ヒンズー世界の香りの一部
を嗅いできた。帰りはトロッコ
バスで帰ろうと思ったが、閉鎖
時間の5時を過ぎていることから
乗車を拒否されてしまった。さ
すがガイド。大いにガイド風を
ふかし、頑なに断る係員と運転
手を懐柔し無事入り口の駐車場
広場に戻れた。
ホテルに着いた時はとっぷり
日が暮れていた。世界文化遺産
の長い一日がようやく終わった。
翌朝、再びジョグジャカルタ
空港からバンドンに戻り、1泊
したのち翌日娘婿の両親と別れ、
シンガポール経由で帰国すると
いう、インドネシア6泊8日の旅
を無事終えた。
最後に忘れてはならない体験
を書き置く。世界一高価で幻の
コーヒーとして有名な「ジャコ
ウネココーヒー」の工房を訪れ、
ジャコウネコを目の当たりにし
て知ることができた。また、ジャ
コウネコのフンから回収された
コーヒー豆の生成過程をすべて
夕日を背にしたプランバナン遺跡の全景（中央がシヴァ寺院・両側にブラフマー寺院）
プランバナン公園の中心に建つシヴァ寺院
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洗練された技術理想への貢献
販 売 ●実験用動物 ●関連商品 ●実験動物輸送飼育受託 ●実験動物全般の飼育管理業務（オープンシステム・バリアシステ
ム・アイソレータシステム等）●飼育施設環境管理（洗浄業務から各種環境測定まで） ●実験支援・代行●各第三者認証への対応
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動物実験導入教育訓練用マウスシミュレータ
Mimicky Mouseボディ：1体／尾1本付属品：専用潤滑剤1本／ベビーパウダー1本
製品内容
インドネシア
見ることが叶えられ、かつ、日
本では100g1万円はする最高級で
めったに口にすることのできな
いジャコウネココーヒー、あの
幻のルアークコーヒー（ルアー
クとはインドネシア語でジャコ
ウネコのこと ？ 別名：コピル
アク。コピはコーヒーのインド
ネシア語）を口にすることがで
きた。更には、製造工房で現地
価格ということから極めて安く
土産として持ち帰ることができ
た。これは特筆すべき思い出で
ある。
（注1）バンドン：インドネシア
の5大都市のひとつで西ジャワ
の州都。首都ジャカルタからに
西200kmに位置する高原都市。
ジャワの学術中心地。植民地時
代は政治・経済・文化の中心地。
1955年、第1回アジア・アフリカ
会議開催地でバンドン会議とし
て有名。最近では2005年・2015
年の50周年・60周年会議も開催
（注2）ジョグジャカルタ：イン
ドネシアのジャワ島中部南岸に
位置する。ジャカルタから東へ
空路1時間余り。上述の2つの世
界文化遺産が象徴しているよう
に古くから仏教やヒンドゥー教
の王宮文化が栄えた日本でいう
京都や奈良にあたる古都。地元
ではジョグジャと呼ばれている。
（日動協ホームページ、LABIO21
カラーの資料の欄を参照）
ジャコウネコ・ルアークコーヒー工房にてジョグジャカルタ郊外
現ハメンクブウォノ 10 世が居住の王宮ジョグジャカルタ市内
バンドン市立公園にてback は Bandung Grand Mosque
