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緑化木の幹折れ危険度診断 共生基盤学専攻 修士課程 池田 啓輔

緑化木の幹折れ危険度診断 - 北海道大学lab.agr.hokudai.ac.jp/woosci/timeng/theses/pdf/2008/2008...4 レジストグラフを用いて樹木をなるべく傷つけずに内部の腐朽程度を簡便に求める方法、そしてデ

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緑化木の幹折れ危険度診断

共生基盤学専攻 修士課程

池田 啓輔

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目次

1 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

2 かたどりゲージによる断面外周形状の測定法の検証

2.1 測定・検証方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

2.2 結果・考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

3 内部腐朽程度の測定法の検証

3.1 測定・検証方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

3.2 結果・考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9

4 樹冠の水平投影面積の測定

4.1 測定・検証方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10

4.2 結果・考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12

5 幹折れ危険度診断

5.1 測定・検証方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12

5.2 結果・考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

6 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15

参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16

謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17

付録

1 モデル断面の断面係数・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18

2 伐根断面の断面係数・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19

3 幹折れ危険度診断のデータ

3.1 一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20

3.2 樹幹断面形状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21

3.3 樹冠水平投影図・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29

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1 はじめに

樹木は加齢にともなって主に心材から腐朽が入り、それが進行すると強度が低下する。内部腐朽

によって強度が落ちた大径老齢木は強風で倒れることがあり、それが緑化木のように人が多く集ま

る場所にあると非常に危険である。

したがって、樹木の耐風性を正確に評価し、危険な樹木は樹冠の一部を剪定したり、全て伐採し

たりする必要がある。そのためには風圧によって生じる風圧モーメント、風圧モーメントに対する

樹幹の曲げ耐力と根返り耐力を評価しなければならない。この三つのうち本研究では幹折れの指標

となる樹幹の曲げ耐力と、風圧モーメントの評価に焦点をあてた。

樹幹の曲げ耐力を評価するには樹幹断面の形状(外周形状・内部の腐朽程度)を知る必要がある。

しかし、外周形状は真円のように単純ではないため、特に大径の広葉樹老齢木では正確に形状を測

定することは難しい。池田(2006)はかたどりゲージ(以下「ゲージ」)を用いて外周形状の測定

をおこなっているが、ゲージの測定可能スパンに対してある程度大きい樹幹断面であると測定誤差

が大きくなっている。

また、内部の腐朽程度の評価についてはこれまで X線や超音波、弾性波を用いた非破壊的な測定

方法や、これらをさらに発展させた CT 装置が開発されている(渡辺,2000;飯塚,2007)。これら

は内部の腐朽程度を正確に推定できる方法であるが、野外で測定をおこなうには装置が大がかりで、

高額である。樹幹に小さな穴を開ける半破壊的な測定方法にはレジストグラフなどのキリの貫入抵

抗を測定する機具、材の硬さを測定するピロディン(山下香菜;岡田直紀;藤原健,2007)、成長

錘で得たコア試料に荷重をかけて強度を測定するフラクトメーターなどがある(渡辺,2000;飯塚,

2007)。その中でもレジストグラフは研究報告が多く、使用方法が簡便で、比較的安価なため、特

に欧米では広く用いられている(渡辺,2000;飯塚,2007)。しかし、耐力上有効な木部厚を測定

して定量的に樹幹の曲げ耐力を算出し、かつ樹幹になるべくダメージを与えずに簡便に評価する方

法はなかった。

風圧によって生じる樹幹の曲げモーメントを評価するには樹木の水平投影面積と抗力係数を求

める必要がある。これまで樹木の水平投影面積は樹冠の形を三角形や楕円形、ひし形などに簡略化

して求められていた(椎貝,1993;石川,2005)。

そこで、本研究はかたどりゲージ(以下ゲージ)を用いてより正確に外周形状をかたどる方法と、

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レジストグラフを用いて樹木をなるべく傷つけずに内部の腐朽程度を簡便に求める方法、そしてデ

ジタルカメラを用いて水平投影面積をより正確に求める方法の検討を目的としておこなった。

最後に、ケーススタディとして北海道大学構内の緑化木の断面形状と水平投影面積からその樹木

の限界風速を出し、幹折れの危険度を定量的に診断した。

2 かたどりゲージによる断面外周形状の測定法の検証

2.1 測定・検証方法

かたどりゲージによる断面外周形状の測定法の検証はモデル断面と北海道大学構内の伐根(表 1)

を試験体にしておこなった。モデル断面とは、樹幹断面の形状やサイズによって外周形状の測定精

度に差があるかを検証するために作成した仮想の樹幹断面である。厚材を横接ぎした板をジグソー

で切り抜いて、4種類 4サイズ(直径 30、60、90、120cm)の樹幹モデル断面(図 1)を作成した。

なお、本研究で扱った伐根と立木の直径は、樹幹周囲長(コンベックスを用いて測定)を円周率で

除した値を採用した。

外周形状の詳しい測定方法は池田(2006)の測定方法と同様であるのでここでは簡単に説明する。

外周形状の測定は、まず樹幹外周をゲージでかたどり、そのゲージをデジタルカメラ(RICOH 製

CaplioR4)で撮影し、区切り点を 0 標点、1 標点、2 標点とした。各標点間の距離を測って多角形

の各標点の位置関係(座標)を算出し、座標平面上幾何学操作ソフト「Math’98」(フリーソフト)

を用いて多角形を決定した。次に、画像編集ソフト「ペイント」を用いてその多角形の各辺にゲー

ジでかたどった画像を貼り付けるという手順でおこなった(図 2)。

多角形の各辺にゲージの画像を貼り付けて得られた画像の外周部分(ゲージでかたどられたライ

樹種 直径(cm)ヨーロッパクロマツ 44.0

ハンノキ 60.0アカナラ 79.3ハルニレ 75.8ハルニレ 70.3ハルニレ 81.8ハルニレ 86.0

ただしハルニレ(75.8cm)の 29cm

のゲージのデータは欠測

表 1 試験体(伐根)一覧

図 1 4種類のモデル断面 左からクローバー型、手裏剣型、楕円型、円型

上段が模式図、下段が写真

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ン)を「ペイント」を用いてフリーハンドで選択した。選択した部分を画像編集ソフト「JTrim」(フ

リーソフト)を用いて二値化することで断面外周形状の二値画像を得て(モノクロ BMP ファイル

形式で保存)、その二値画像から数値計算で断面係数を求めた(Koizumi;Hirai,2006)。外周形状

を測定して得られた断面二値画像の断面係数と、伐根やモデル断面の写真を同様に二値化して得ら

れた画像の断面係数を比較することで測定精度を検証した(断面係数とは曲げ耐力に関係する値で、

断面の形状によってその値が決まる。「曲げ応力=曲げモーメント/断面係数」の関係にある)。

池田(2006)によると 29cm のゲージに対して大きな伐根断面での測定精度が低くなり、その理

由はゲージによる測定回数が増えたため、標点数が増え、多角形決定時の累積誤差が大きくなった

ためであった。そのため、本研究では測定可能スパンが 90cmのゲージを自作した(図 3)。これは、

ゲージによる測定回数を少なくして標点数を減らし、累積誤差を小さくするためである。なお、90cm

のゲージによる断面外周形状の測定方法は 29cm のゲージとほぼ同様であるが、多角形の各辺長さ

と、0 標点と各標点間の距離をコンパスとコンベックスの代わりにキャリパー(Haglöf Sweden 製

Mantax Precision)を用いて測定した点が異なる。

φ6mm×350mmアルミパイプ×91本

900mm

図 3 90cmのゲージの写真(上)と模式図(右)

図 2 測定方法の模式図

4 3

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モデル断面と伐根の外周形状を 29cm のゲージ(新潟精機製 CG‐300S)と 90cm のゲージで測

定し、得られた断面画像から断面係数を算出し、それらの値とモデル断面のデジタル写真画像の断

面係数とを比較することで測定精度を検証した。なお、断面係数は同一の断面であっても、その断

面が対称な形状でない限り、荷重方向の違いによってその値が変わる。そのため比較検証には断面

係数を 30°毎 6方向の値について算出し、その平均値を用いた。

また、ゲージによる測定法の再現性を検証した。4 種類のモデル断面の直径 30cm の試験体につ

いては 2つのゲージを用いて、実際の樹幹1体(ハルニレ 直径 123.8cm)については 90cmのゲー

ジを用いてそれぞれ計 5回ずつ測定した。断面係数は 45°毎 4方向の値を算出し、その平均値の変

動係数を求めた。

2.2 結果・考察

ゲージのサイズ、樹幹断面の形状やサイズによる外周形状の測定精度の差異を検証した。図 4に

各サイズ、種類のモデル断面を 2つのゲージで測定したときの測定精度を示した。横軸がモデル断

面のサイズ、縦軸が断面係数比(ゲージを用いて測定した断面画像の断面係数の、試験体の写真断

面画像について算出した断面係数に対する比)である。この断面係数比が 1に近いほど測定精度が

高いことを示している。断面係数比はほとんどの断面形、サイズにおいて 1 に近かった。しかし、

手裏剣型、クローバー型といった複雑な断面形状、または大きなサイズの断面において測定精度が

低くなり、その傾向は特に 29cmのゲージで顕著にみられた。

また、

表 2 に

断 面 の

形、サイ

ズ 毎 の

断 面 係

数 比 の

平 均 値

図 4 モデル断面の各種類、サイズによる測定精度

0.8

0.9

1.0

1.1

1.2

0 30 60 90 120

断面サイズ(cm)

断面係数比

クローバー型

手裏剣型

円型

楕円型

それぞれ塗り潰しは29cm、白抜きは90cm

各ゲージについて、上段が断面係数

比の平均値、下段が標準偏差

表 2 モデル断面の各種類、サイズによる測定精度

ゲージの大きさ クローバー 手裏剣 円 楕円

1.04 0.95 1.01 1.00

0.08 0.05 0.04 0.03

1.02 0.96 0.99 0.98

0.04 0.06 0.02 0.01

ゲージの大きさ 30cm 60cm 90cm 120cn

0.97 1.00 1.00 1.03

0.01 0.02 0.03 0.11

0.96 0.99 1.00 0.99

0.03 0.02 0.03 0.07

29cm

90cm

断面形種類

断面サイズ

29cm

90cm

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と標準偏差を示した表 2を見ても手裏剣型、クローバー型といった複雑な断面形状、または大きな

サイズの断面において測定精度が低くなった。その理由はゲージによる測定回数が多くなったこと

により標点数が増え、測定誤差が累積したためである。この問題は 90cm のゲージを用いることに

より解消された。しかし、90cmのゲージを用いて直径 30cmのモデル断面を測定した場合、精度が

若干低くなった(表 2)。その理由は断面に対してゲージのアルミパイプ太すぎて、測定が荒くなっ

たことが考えられるが、問題ない範囲だと考えられる。

その他 90cm のゲージのメリットとして、29cm のゲージに比べて、90cm のゲージはかたどる回

数や標点間の距離測定回数、パソコンを用いた諸作業が少なくてすみ、かなりの作業効率化が図ら

れたことが挙げられる。

図 5には伐根を 2つのゲージで測定した結果を示した。実際の樹幹断面においてもハルニレ(直

径 81.8cm)を除いて、29cm のゲージより 90cm のゲージの方が測定精度は高いことが示された。

ハルニレ(直径 81.8cm)に関しては測定ミスであると考えられる。

再現性の実験の結果(表 3)、それぞれのゲージで測定した断面の断面係数の変動係数は小さいた

め、再現性は問題ないことが示された。

なお、本研究では多角形の各辺にゲージの画像を貼り付けて得られた画像の外周部分を選択し、

二値化する工程を「ペイント」と「JTrim」を用いておこなったが、「Adobe Photoshop」(アドビシ

ステムズ製)を用いた方が作業性がよいと感じた。

また、本研究では三角形を組み合わせることで多角形を決定したが、三角形を決定するときには

鏡像の関係にある三角形と混同しないよう、標点間の距離測定時に注意する必要がある。

表 3 各試験体の断面係数の変動係数(%)

試験体 29cm 90cm

クローバー型 1.1 0.7

手裏剣型 2.0 3.8

楕円型 1.5 4.1

円型 1.0 3.2

ハルニレ 1.1

図 5 実際の伐根における2つのゲージの測定精度

0.9

1.0

1.1

1.2

40 50 60 70 80 90

直径(cm)

断面係数比

90cm

29cm

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3 内部腐朽程度の測定法の検証

3.1 測定・検証方法

レジストグラフ(IML 製 F500)による内部腐朽の推定は、表 4 に示す北海道大学構内の緑化木

について、外周形状測定時の各標点から樹幹中心方向にキリを貫入しておこなった。レジストグラ

フとは樹幹に直径 1.5mm(先端部は 3mm)の細いキリを貫入して、キリにかかる貫入抵抗を指標

として木材の硬さ分布を推定する機器である。成長錐に比べてキリが細く、貫入孔に切りくずを残

すため、樹木に与えるダメージが少ない。

レジストグラフでの木部厚の測定は外周形状測定時に用いた各標点(標点数は 3~5)から樹幹中

心方向におこなった。キリの貫入深さは樹幹半径を目安にしたが、半径が 50cm(レジストグラフ

の測定可能スパン)を超えるものは 50cm までとした。この測定の時点で腐朽が確認された樹幹に

ついては、さらに隣り合う標点間や腐朽が確認された位置付近から測定した。本研究では、レジス

トグラフの抵抗値が急激に落ちた貫入深さ以降を腐朽とみなし、それ以前を健全な木部とみなした。

池田(2007)によると、腐朽部分の形状を正確に決定することは困難であった。本研究では抵抗

値が急激に落ちた位置までの貫入距離の平均値をその樹幹の平均木部厚とする方法(以下「平均木

No. 樹種 直径(cm) 樹高(m)

1 イチョウ 80.2 16.8

2 イチョウ 76.7 20.6

3 ハルニレ 122.9 17.1

4 ハルニレ 66.0 19.0

5 ハルニレ 118.4 26.0

6 ハルニレ 110.5 25.8

7 ハルニレ 123.8 24.9

8 プラタナス 38.5 14.8

9 ポプラ 128.0 26.1

10 ポプラ 90.0 27.0

11 ポプラ 89.9 30.3

12 キハダ 92.9 18.9

13 ハンノキ 45.2 14.8

14 ハンノキ 46.3 14.8

15 ニセアカシア 48.6 20.7

表 4 北海道大学構内の調査緑化木一覧

No.13、14は同個体だが、地面付近で二股に

なっているため別々に扱った

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部厚法」)と、抵抗値が急激に落ちた位置を通るスプライン曲線に囲まれた部分を腐朽部とする方

法(以下スプライン法)をおこない、推定精度を比較した(図 6)。スプライン曲線の作図には作図

ソフト「ISHTAR Free ver1.00」(フリーソフト)を用いた。

3.2 結果・考察

表 4の調査木のうちレジストグラフにより腐朽が確認された No.3、4、6、10、12、13 について、

2 つの腐朽程度の推定法における断面係数減少比の違いを表 5 に示した。断面係数減少比とは、腐

朽を考慮した樹幹断面の断面係数の、腐朽を無視した樹幹断面の断面係数に対する比であり、値が

小さいほど腐朽による断面係数の減少影響が大きいことを表している。平均木部厚法の場合と比べ

ると、スプライン法によって腐朽程度を推定した場合は断面係数減少比にばらつきがあり、モーメ

表 5 2つの腐朽程度推定法における断面係数減少比の違い

1 つの樹種に 2 種類の値があるが、上段がスプライン法で、下段が平均

木部厚法で腐朽部を推定した値 断面係数は 6方向の平均値

断面係数

(10-2

m3) 平均値 最大値 最小値

3 スプライン 11.43 0.95 1.00 0.88

平均木部厚 0.99 1.00 0.99

4 スプライン 1.93 0.78 0.93 0.67

平均木部厚 0.99 0.99 0.99

6 スプライン 5.18 0.64 0.69 0.56

平均木部厚 0.63 0.68 0.56

10 スプライン 6.79 0.95 0.98 0.87

平均木部厚 0.91 0.92 0.88

12 スプライン 5.08 0.83 0.87 0.78

平均木部厚 0.88 0.88 0.87

13 スプライン 0.71 0.86 0.92 0.80

平均木部厚 0.92 0.93 0.91

断面係数減少比腐朽推定法No.

図 6 2つの腐朽推定法

左がスプライン法、右が平均木部厚法

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ント荷重の方向の違いによる腐朽の影響の差異(断面係数減少比の違い)をより正確にとらえてい

るといえる。また、表 5と図 7 を対応させて考えると、平均木部厚法による内部腐朽程度の推定は、

腐朽部が中心部に位置する樹幹ではうまく推定できるが、そうでない樹幹の場合はうまくいかなか

ったことがわかり、最も危険な(断面係数が小さい)荷重方向の断面係数評価ができない。それに

対してスプライン法では腐朽部のおおまかな位置を推定し、危険側の断面係数評価ができるといえ

る。なお、本研究ではレジストグラフによる測定を 1 つの調査木につき 3~7 回おこなったが、腐

朽程度を推定するにあたって問題はなかったと思われる。

4 樹冠の水平投影面積の測定

4.1 測定・検証方法

樹冠の正確な水平投影面積を求めるために、表 4 の調査木の樹冠をデジタルカメラで撮影した。

得られた画像を遠近補正した。外周形状測定時と同様に二値画像に加工して、数値計算により水平

投影面積を算出した。

デジタルカメラを用いて物体を見上げて撮影すると、実像は歪んだ状態で CCD に投影される。

この歪んだ写真像を実像に修正することを遠近補正という。遠近補正は画像編集ソフト「DxO Optics

Pro 5.3.1 体験デモ版」(DxO Labs 製)を用いておこなった。

このソフトは長方形の画像を台形にすることで遠近補正することができる(図 8)。このとき、補

正後の台形の下底/上底は図 9 の OB/OA に等しい。OA=l/cosα、OB=l/cosβであるから下底

図 7 腐朽程度を 2つの推定法で推定された各立木の断面形状

上段がスプライン法で、下段が平均木部厚法 左から順に、表 3の上から順に並んでいる

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実像

写真像

θ e

θ

α

β

l

B

O

A

図 9 遠近補正の概要図

α:樹冠上端の仰角、β:根の俯角、θ:画角の 1/2、e:カメラの仰角、l:観測者と調査木との距離

上底

下底 図 8 遠近補正前(左)と補正後(右)

/上底=cosα/cosβとなる。このソフトの場合、200×cosα/cosβ-200 を「補正パレット」→「ジ

オメトリ」の「上/下」に入力することで遠近補正した画像を得た。

本研究では撮影場所からの樹冠の上下端の仰角、根元の俯角を測定した。撮影された画面の上辺

と下辺の近くに樹冠の上端と下端(もしくは根元)が位置するように撮影することでα、βを得た。

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4.2 結果・考察

水平投影面積を求める樹木が比較的疎な林分で、他の樹木の樹冠と重なっていない場合は、デジ

タルカメラで撮影された画像から求める樹冠の投影図をうまく抜き出すことができた。しかし、そ

の他の樹冠が重なって写っている場合は正確におこなえない場合があった(図 10)。

本研究では樹冠の上下端、根元の俯角から遠近補正をおこなったが、より簡便に遠近補正をおこ

なうためには、撮影時のカメラの仰角 eを測定すればよい。デジタルカメラの画角 2θは CCDの大

きさと焦点距離から計算できるので、e とθから画面上下端の仰角(俯角)α、βが求められる(図

7)。

5 幹折れ危険度診断

5.1 測定・検証方法

北海道大学構内の緑化木(表 4、図 11)について幹折れを引き起こす限界風速を算出した。

樹幹の高さ方向の曲げ応力の分布には、樹幹の直径の高さ方向の分布を表すテーパー率が関係し

ている。テーパー率が一定の場合、曲げ応力は風心高における樹幹径の 1.5 倍の樹幹径である樹高

で最大値をとり、それ以下ではあまり変化しない(小泉,1987)。したがって、本研究では測定し

やすい地上高 1m前後で測定をおこなった。

図 10 他の樹冠と重なっていない場合(左)と密な林分の場合(右)

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樹幹の外部形状を 2.1と同様に 90cmのかたどりゲージで測定し、内部腐朽を 3.1と同様に 2つの

方法で測定した。外部形状と内部腐朽を合わせて樹幹断面の二値画像を作成した。樹皮厚測定器

(SUUNTO製)を用いて各標点の樹皮厚を測定し、その平均値を求めた。外周形状の輪郭を樹皮厚

平均値だけオフセットして(樹幹中心方向に平行移動して)樹皮を除いた木部の外周形状を求めた

(ベクトルグラフィック製作ソフト Adobe ILLUSTRATOR CS4 体験版(アドビシステムズ製)使

用)。数値計算により断面係数を 30°毎に 6方向の値を算出した。

樹冠の水平投影面積は 4.1 の方法で 30°毎に 6 方向から測定した(障害物のため一部欠測)。断

面係数と水平投影面積は風圧モーメント荷重の方向を対応させた。これらを考慮して限界風速を算

出した。

Mayhead(1973)の式より限界風速 vは(1)式で表される。

AHHC

ZMORv

mwD

)(

2

(1)

ここで、MOR:樹幹曲げ強さ、Z:断面係数、CD:抗力係数、ρ:大気密度(1.20kg/m3)、Hw:風心

高、Hm:断面形状を測定した位置の高さ、A:樹冠水平投影面積。

1

2 7

4

5

6

3

8

9

10

11

12

13

14

15

図 11 調査緑化木の位置

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14

MORは文献値(寺西,2008;Wood Handbook,1994)を用いた。文献値が気乾材(含水率 12%)

の場合は、生材(含水率 30%)の値に換算するために減少率を考慮した。Wood Handbook(1994)

によると含水率が 12%から 20%に変化すると MOR は 25%低下するので、含水率が 1%増加するに

つれ MORが 3.125%低下すると仮定した。したがって含水率が 12%から 30%に変化した場合、MOR

は 56.25%低下すると判断した。抗力係数は針葉樹 6樹種の実大樹木風洞実験からMayhead(1973)

が見積もった値を参考にして 0.2~0.4の範囲とした。Hwは樹冠の水平投影図の重心を数値計算で算

出し、枝下高を考慮して求めた。

5.2 結果・考察

表 6 に診断結果を示した。本研究の調査木においては抗力係数を 0.4 という安全側の値と仮定し

た場合、風速 25m/s の強い風では幹折れは起こらないという診断結果が得られた。限界風速が小さ

い No.8 のプラタナスや No.15 のハルニレは樹幹直径に対して樹冠水平投影面積が大きく、より風

を受けやすい樹形であるといえる。

また、風倒の形態は根返りや幹の座屈など様々であるので、本研究で示した限界風速よりも弱い

風で倒れる危険性はある。2008 年 12 月末に風倒した No.15 のニセアカシアは、測定位置では腐朽

は確認されなかったが、根元にベッコウタケ(Fomitella fraxinea)の子実体(図 8)が確認されてい

た。また、2008 年 12 月 31 日の札幌の最大瞬間風速は 27.1m/s、最大風速は 15.8m/s であった。冬

季は葉を落としているため、当時の幹折れ限界風速は 40m/s を超えていたと考えられる。したがっ

て、風倒の形態は根が腐朽により強度を失ったことによる根返りと考えられる。

本研究では断面形状の測定を地上高 1m 前後でおこなった。しかし、この地上高 1m 付近の腐朽

は根から広がってくることが多いので、腐朽が予測される樹幹の場合は、地面近くでも断面形状を

測定する必要があるだろう。そして、地面近くで腐朽が確認された場合は、その付近での幹折れと

合わせて、根返りの可能性も高いと疑うべきであろう。

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15

6 まとめ

本研究では以下の結論が得られた。

(1)直径が 1m程度までの樹幹における外周形状の測定では、90cmのゲージを用いることで 29cm

のゲージ使用時に生じた測定誤差を解消することができた。また、90cm のゲージによる測定の高

い再現性も示された。

(2)レジストグラフによる腐朽部の測定はスプライン曲線でおこなった方が、風圧モーメントが

生じる方向による断面係数の違いをうまく測定できている可能性が高く、より安全側の(限界風速

が小さい)評価がおこなえた。

図 8 No.15 ニセアカシア

の根元

2008 年 8月 21 日撮影

No.は表 4 に対応しており、一つの No.に 3 種類の値があるものは、上段が腐

朽部無視、中段がスプライン法で、下段が平均木部厚法で腐朽部を推定したと

きの値

樹冠投影面積、断面係数は 6 方向の平均値、限界風速は 6 方向中の最小値

MOR

(MPa) C D =0.4 C D =0.21 35.7 74.1 3.30 81.6 115.4

2 35.7 112.3 2.84 58.5 82.7

3 45.0 58.6 11.43 183.1 258.9

スプライン 10.81 176.4 249.5

平均木部厚 11.37 176.9 250.2

4 45.0 59.6 1.93 62.4 88.2

スプライン 1.50 52.6 74.4

平均木部厚 1.92 62.1 87.9

5 45.0 195.6 13.06 65.7 92.9

6 45.0 103.8 5.18 59.8 84.6

スプライン 3.24 47.9 67.8

平均木部厚 3.28 45.1 63.8

7 45.0 136.4 12.32 91.8 129.8

8 44.8 113.8 0.47 28.3 40.1

9 39.0 179.2 12.50 88.1 124.6

10 39.0 130.3 6.79 72.2 102.1

スプライン 6.43 70.6 97.8

平均木部厚 6.19 69.4 98.2

11 39.0 132.6 3.94 48.0 67.9

12 59.2 147.3 5.08 81.0 114.5

スプライン 4.24 74.7 105.6

平均木部厚 4.46 76.1 107.7

13 42.1 28.8 0.71 57.2 80.9

スプライン 0.61 54.3 76.8

平均木部厚 0.66 55.2 78.0

14 42.1 38.3 0.68 47.7 67.5

15 75.3 86.1 0.76 38.4 54.4

No.断面係数

(10-2

m3)

限界風速(m/s)樹冠水平投影

面積(m2)

表 6 調査木の診断結果

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(3)デジタルカメラで撮影された画像から求める樹冠の投影図を抜き出すことは、その他の樹冠

が重なって写っている場合は正確におこなえない場合があった。遠近補正をおこなうためには、撮

影時のカメラの仰角を測定すればよい。

(4)本研究の調査木の幹折れに対する診断結果が得られた。しかし、風倒の形態は根返りや幹の

座屈など様々であるので、本研究で示した限界風速よりも弱い風で倒れる危険性はある。腐朽部が

予測される樹幹の場合は、地上高 1m付近だけでなく地面近くでも断面形状を測定する必要がある

だろう。

参考文献

1)Forest Product Laboratory:”Wood Handbook”,USDA Forest Service,Madison (1994).

2)G.J.Mayhead:Some drag coefficients for British forest trees derived from wind tunnel studies,

Agricultural Meteorology,12,(123-130) (1973).

3)飯塚康雄:機器による樹木腐朽診断,樹木医学研究,11(3),(135-139) (2007).

4)池田啓輔:立木の木部断面形状の非破壊推定法の検討,北海道大学農学部卒業論文 (2006).

5)石川仁:樹木の流体力学特性の実験的解明,ながれ,24,(483-490) (2005).

6)小泉章夫:生立木の非破壊試験による材質評価の研究,北海道大学農学部演習林研究報告,44

(4),(1329-1415) (1987).

7)Koizumi,A;Hirai,T:Evaluation of the section modulus for tree-stem cross section of irregular shape,

J Wood Science,52(3),(213-219) (2006).

8)椎貝博美:樹木の流体抵抗について,ながれ,12,(11-19) (1993).

9)寺西真隆:広葉樹材の強度材質の評価指標,北海道大学大学院農学院修士論文 (2007).

10)渡辺直明:野外現場で使用可能な樹木診断装置,樹木医学研究,4(1),(23-32) (2000).

11)山下香菜,岡田直紀,藤原健:ピロディンを用いた容積密度推定法とスギ生材丸太のクラス分

けへの応用,木材学会誌,53(2),(72-81) (2007).

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謝辞

本研究を進めるにあたって、また、有意義な学生生活をおくるにあたって小泉章夫准教授には熱

心なご指導とご協力をいただきました。平井卓郎教授、澤田圭助教、佐々木義久技官には的確なア

ドバイスをいただきました。木材工学研究室の学生の皆様、森林科学科の皆様には研究のお手伝い

や心の潤いをいただきました。皆々様、本当にありがとうございました。

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付録

1 モデル断面の断面係数(cm3)

「写真」は断面写真画像、「29cm」は 29cmのゲージで測定した断面画像、「90cm」は 90cmのゲ

ージで測定した断面画像からそれぞれ断面係数を算出した。断面係数は中立軸の角度によってこと

なり、0°は中立軸が紙面横方向の場合で、例えば 60°のときは中立軸が反時計回りに 60°回転し

たときの場合の断面係数である。

角度(°) 写真 29cm 90cm 写真 29cm 90cm 写真 29cm 90cm 写真 29cm 90cm

0 105943 127667 115356 53470 46937 48577 159957 168115 165566 92236 93471 90329

30 90624 108405 97965 61194 53676 54505 160052 168693 163716 100985 102542 99138

60 89575 103179 96595 61911 53574 54330 160536 169797 165866 117450 118870 114879

90 104993 120940 112609 54923 46762 47583 161435 170967 165694 124580 125015 121565

120 89925 103652 95915 62467 53303 55040 161474 168849 163953 117024 117539 115147

150 89662 107575 96760 61923 53619 56121 161170 167325 163887 100631 101243 100313

平均値 95120 111903 102533 59315 51312 52693 160771 168958 164780 108818 109780 106895

角度(°) 写真 29cm 90cm 写真 29cm 90cm 写真 29cm 90cm 写真 29cm 90cm

0 50991 42515 50512 27662 20279 28304 70610 73494 70364 39793 40209 38137

30 44073 46211 43887 21219 23646 22335 70286 73261 69722 43385 43959 40969

60 43571 45461 43637 21622 23065 22687 70116 73850 69951 49812 50688 47951

90 51050 42576 50324 27558 20795 28381 70829 74673 70391 53257 54024 51000

120 43908 46618 43960 21040 24104 21630 70599 73812 70618 50402 50593 48550

150 43411 45749 43449 21457 23221 22281 70519 73637 70255 43982 43818 42055

平均値 46167 44855 45961 23426 22518 24269 70493 73788 70217 46772 47215 44777

角度(°) 写真 29cm 90cm 写真 29cm 90cm 写真 29cm 90cm 写真 29cm 90cm

0 14184 14325 14378 5820 5746 5893 21028 20738 20482 11779 12179 11735

30 12422 12768 12606 6603 6656 6694 21129 20753 20214 12675 13266 12855

60 12184 12531 12407 6643 6506 6620 21122 20978 20456 14767 15160 14805

90 14194 14319 14317 5827 5706 5701 21232 20878 20531 15779 15865 15603

120 12438 12800 12648 6603 6506 6424 21147 20889 20462 15012 15163 14690

150 12176 12482 12411 6693 6521 6705 21073 20730 20304 13024 13221 12694

平均値 12933 13204 13128 6365 6273 6340 21122 20828 20408 13839 14142 13730

角度(°) 写真 29cm 90cm 写真 29cm 90cm 写真 29cm 90cm 写真 29cm 90cm

0 1838 1791 1795 758 734 714 2653 2564 2579 1481 1415 1477

30 1566 1516 1523 871 842 788 2642 2579 2559 1622 1526 1493

60 1567 1528 1546 837 843 786 2644 2580 2569 1869 1765 1729

90 1849 1807 1808 743 729 659 2654 2588 2578 1985 1898 1905

120 1579 1530 1540 873 840 758 2645 2570 2596 1866 1785 1898

150 1559 1522 1536 850 833 789 2642 2560 2591 1612 1545 1679

平均値 1660 1616 1625 822 804 749 2647 2573 2579 1739 1656 1697

クローバー型 手裏剣型 円型 楕円型

直径120cm

直径90cm

直径60cm

直径30cm

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2 伐根の断面係数(cm3)

「写真」は断面写真画像、「29cm」は 29cmのゲージで測定した断面画像、「90cm」は 90cmのゲ

ージで測定した断面画像からそれぞれ断面係数を算出した。角度ごとの断面係数は付録 1と同様で

ある。

角度(°) 写真 90cm 29cm 写真 90cm 写真 90cm 29cm

0 8161 8186 8335 31265 34294 45832 46555 49463

30 8463 8299 8504 30257 34216 41829 42377 45717

60 8393 8493 8336 31314 34663 44863 46202 49360

90 8890 8905 9212 36458 41032 44155 45967 48531

120 8003 8100 8382 39772 43401 45197 46403 49300

150 8072 8217 8481 36115 40568 46386 47443 50808

平均値 8330 8367 8542 34197 38029 44710 45824 48863

角度(°) 写真 90cm 29cm 写真 90cm 29cm

0 23704 23556 24582 65350 65414 58881

30 23420 23872 25025 61933 62080 60601

60 25468 24828 25318 66477 67004 70065

90 28575 28675 28537 65786 67521 68987

120 23045 23110 23108 60452 60596 63294

150 21155 21273 22027 65825 66119 63025

平均値 24228 24219 24766 64304 64789 64142

角度(°) 写真 90cm 29cm 写真 90cm 29cm

0 39475 49203 44351 16028 17132 19240

30 32843 39759 48660 16414 18345 18079

60 35432 40666 49331 16177 17405 17895

90 39005 45612 47700 16275 18010 17944

120 42041 49746 41124 16524 17492 18492

150 41250 50700 41468 16346 17591 19108

平均値 38341 45948 45439 16294 17663 18460

ハルニレ(70.3cm) ハルニレ(86.0cm)

ヨーロッパクロマツ(44.0cm) ハルニレ(75.8cm) アカナラ(79.3cm)

ハルニレ(81.8cm) ハンノキ(60.0cm)

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3 幹折れ危険度診断のデータ

3.1 一覧

No.は表 4 に対応している。角度は樹幹中心からの方位を表しており、各項目の値はその方向か

ら見たときの数値である。断面係数、限界風速が 3列あるのは、左から順に腐朽部を無視した(ま

たは確認されなかった)ときの値、スプライン法で腐朽部を推定した値、平均木部厚法で腐朽部を

推定した値である。抗力係数 CDについては、0.2と 0.4 のときの風速を算出した。

水平投影 H w -H m

面積(m2) (m) 腐朽無視 スプライン 平均木部厚 C D =0.2 C D =0.4 C D =0.2 C D =0.4 C D =0.2 C D =0.4

1 280 76.10 9.00 3.28 119.42 84.44310 77.91 8.19 3.24 123.00 86.97340 60.78 8.46 3.53 143.03 101.14370 77.09 8.21 3.24 123.53 87.35400 86.12 8.47 3.26 115.42 81.61430 66.41 9.03 3.22 126.50 89.45

2 310 112.33 10.99 2.84 82.71 58.493 190 63.18 9.81 10.41 10.41 10.35 250.89 177.41 250.96 177.45 250.22 176.93

220 57.33 9.67 10.88 10.33 10.79 271.31 191.84 264.42 186.97 270.16 191.03250 62.95 8.94 11.15 9.78 11.14 272.60 192.76 255.34 180.55 272.47 192.66280 50.70 7.83 11.44 10.53 11.33 328.76 232.47 315.42 223.04 327.17 231.35310 71.01 9.53 12.10 11.23 12.07 258.89 183.07 249.45 176.39 258.64 182.89340 46.58 10.94 12.60 12.58 12.53 304.49 215.31 304.21 215.11 303.66 214.72

4 0 45.55 11.25 2.05 1.38 2.03 122.47 86.60 100.35 70.96 121.93 86.2130 89.31 11.05 2.05 1.46 2.03 88.19 62.36 74.44 52.64 87.87 62.1360 56.98 10.72 1.92 1.56 1.90 108.49 76.71 97.89 69.22 107.89 76.2990 66.99 11.86 1.87 1.74 1.85 93.93 66.42 90.72 64.15 93.35 66.01120 36.85 13.64 1.85 1.58 1.84 117.56 83.13 108.42 76.67 117.24 82.90150 61.63 12.44 1.87 1.31 1.86 95.61 67.61 80.17 56.69 95.30 67.39

5 180 208.00 15.43 14.47 130.06 91.96210 250.81 15.93 12.12 106.64 75.41240 315.69 14.85 10.78 92.86 65.66270 116.26 16.50 11.87 152.33 107.72300 117.52 17.38 13.79 159.14 112.53330 165.05 16.03 15.36 147.54 104.33

6 320 142.47 16.30 4.47 3.08 2.52 84.93 60.06 70.53 49.88 63.80 45.11350 114.97 16.71 4.36 2.99 2.78 92.31 65.27 76.45 54.06 73.70 52.11380 181.68 16.18 5.62 3.60 3.80 84.64 59.85 67.80 47.95 69.63 49.24410 46.62 19.80 6.19 3.45 3.88 158.62 112.16 118.42 83.74 125.57 88.79440 33.39 19.52 5.26 3.08 3.43 173.88 122.95 133.19 94.18 140.53 99.37

7 0 129.53 15.50 13.51 158.86 112.3330 154.52 15.95 11.06 129.76 91.7660 160.10 15.23 11.41 132.47 93.6790 124.30 15.14 11.08 148.60 105.07120 125.53 14.02 13.31 168.43 119.10150 124.72 14.78 13.54 165.99 117.38

8 90 133.28 8.04 0.46 40.06 28.33120 146.50 7.09 0.47 40.93 28.94150 127.52 7.60 0.43 40.72 28.80180 89.61 8.14 0.49 49.94 35.31210 72.05 7.44 0.50 59.10 41.79

9 315 179.24 14.60 12.50 124.56 88.0710 300 146.07 13.08 6.13 5.86 5.67 102.12 72.21 99.82 70.58 98.20 69.44

330 142.53 12.85 6.06 5.90 5.56 103.67 73.30 102.27 72.32 99.33 70.24360 127.94 12.24 7.47 7.32 6.82 124.49 88.03 123.22 87.13 118.92 84.09390 119.34 12.02 8.14 7.77 7.47 135.82 96.04 132.63 93.79 130.11 92.00420 116.66 12.74 6.59 6.28 6.08 119.99 84.85 117.15 82.84 115.26 81.50450 129.32 12.58 6.32 5.47 5.54 112.32 79.42 104.55 73.93 105.23 74.41

No.断面係数Z(10-2m3)

角度スプライン 平均木部厚

限界風速(m/s)

腐朽無視

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21

(前項の表の続き)

3.2 樹幹断面形状

腐朽が確認された樹幹については、左がスプライン法、右が平均木部厚法で推定した画像である。

断面係数の角度による違いは付録 1 と同様である。言い換えると、紙面上が北(0°)で、例えば

3.1 の表の角度に 270とあれば、樹幹を西(紙面左)から荷重が加わったときの断面係数を 3.1の表

に示している。また、縮尺は個体間で異なる。

No.1

水平投影 H w -H m

面積(m2) (m) 腐朽無視 スプライン 平均木部厚 C D =0.2 C D =0.4 C D =0.2 C D =0.4 C D =0.2 C D =0.4

11 0 105.01 15.94 4.28 91.15 64.4530 114.27 16.25 4.63 89.97 63.6260 138.10 15.68 4.02 77.69 54.9390 149.63 15.84 3.51 69.35 49.04120 164.19 15.22 3.54 67.88 48.00150 124.17 16.22 3.65 76.68 54.22

12 280 150.37 11.86 4.85 4.14 4.27 115.92 81.97 107.12 75.74 108.66 76.83310 138.06 11.24 4.75 3.69 4.17 122.94 86.93 108.28 76.57 115.19 81.45340 143.26 12.05 5.03 3.90 4.43 119.92 84.79 105.62 74.68 112.52 79.56370 127.13 11.35 5.10 4.43 4.45 132.09 93.40 123.14 87.07 123.40 87.26400 149.54 11.75 5.44 4.73 4.74 123.60 87.40 115.22 81.47 115.44 81.63430 175.26 11.42 5.32 4.57 4.70 114.53 80.99 106.16 75.07 107.66 76.13

13 195 32.21 9.90 0.68 0.63 0.63 86.69 61.30 83.00 58.69 83.02 58.70225 35.40 10.20 0.67 0.61 0.63 80.89 57.20 76.80 54.31 78.04 55.18285 24.77 9.68 0.77 0.61 0.72 106.06 75.00 94.81 67.04 102.39 72.40315 28.52 9.80 0.75 0.60 0.69 96.92 68.53 86.95 61.48 93.38 66.03345 22.94 9.73 0.68 0.59 0.62 103.25 73.01 96.60 68.31 98.52 69.66

14 195 28.24 9.47 0.75 99.35 70.25225 30.89 9.35 0.67 90.51 64.00285 29.85 9.68 0.61 86.16 60.93315 50.34 10.19 0.67 67.50 47.73345 52.26 9.76 0.71 69.86 49.40

15 180 92.65 12.93 0.81 65.21 46.11210 57.09 13.63 0.81 80.82 57.15240 86.30 11.02 0.75 70.22 49.65270 125.29 11.66 0.69 54.37 38.44300 82.23 11.69 0.69 67.21 47.52330 73.20 12.71 0.81 73.73 52.14

スプライン 平均木部厚No. 角度

断面係数Z(10-2m3) 腐朽無視

限界風速(m/s)

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No.2

No.3

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No.4

No.5

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No.6

No.7

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No.8

No.9

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No.10

No.11

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No.12

No.13

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No.14

No.15

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3.3 樹冠水平投影図

3.1 の表にある角度(樹幹からの方位)から見た投影図を、表の角度順に、上段左から右へ、次

は下段左から右の順に掲載する。

個体内では縮尺は揃えてあるが、個体間では揃っていない。

No.1

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No.2

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No.3

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No.4

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No.5

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No.6

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No.7

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No.8

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No.9

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No.10

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No.11

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No.12

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No.13

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No.14

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No.15