18
ϚϧνεέʔϧߏΛ Core-Periphery Ϟσϧͷਓޱύλʔϯ ߴ و1 ɾদ 2 ɾখ3 1 ਖ਼ձһ Ѫඤେॿ ڭେӃཧڀݚՊʢ˟ 790-8577 ژ3 ൪ʣ E-mail: [email protected] 2 ਖ਼ձһ ౦େڭେӃใՊڀݚՊʢ˟ 980-8579 ੨༿רߥ੨༿ 6-6ʣ E-mail: [email protected] 3 ਖ਼ձһ גձ ίϯαϧλϯτʢ˟ 812-0013 ԬതଟതଟӺ౦ 3-6-18ʣ E-mail: [email protected] ࡁܦΛѻདྷͷཧ (e.g., New Economic Geography: NEG) ͰɼεέʔϧͷҟͳΔ୯ Ґ (e.g., ౦ϒϩοΫʙٶݝҬʙઋݍࢢ) ʹΔ׆ࡁܦಈͷ૬࡞ޓ༻తʹߟΕͳɽຊ ڀݚͰɼͷ૬࡞ޓ༻Λతʹಋೖ֊త (Ϛϧνεέʔϧ) ߏΛ Core-Periphery Ϟσϧ ΛߏஙΔɽͷߧۉղͷݱذΛ Akamatsu et al. 1),2) ͱಉͷख๏ͰղੳՌɼҬɾҬ қඅ༻ͷ߹ʹԠɼඇৗʹଟͳɾύλʔϯੜΔͱΒʹΕΔɽͳͰɼ Ҭڝ૪ͷଘʹࡏΑҬͰͷݱىΔͱݟɼεέʔϧߏΛͷ NEG ཧʹରΔߟ࠶ΛଅΔɽ Key Words : agglomeration economy, core-periphery model, bifurcation, multi-scale space 1. Ίʹ (1) ڀݚͷഎܠͱత զΛΊͱΔࡁܦઌਐॾͰɼʑͳ εέʔϧͰͷ׆ࡁܦಈͷɾݱݟΒΕΔɽ ΛʹͱΕɼ·ɼࢹڊతͳεέʔϧ ͰΔҬϒϩοΫ (e.g., ւಓɼ౦ɼɼट ݍ...) ˙ Ͱɼάϩʔόϧࡁܦͷਐలͱͱʹटݍ ͷҰۃதԽΔɽʹɼΑΓඍతͳ εέʔϧͰҬϒϩοΫ ˙ ΛݟΔͱɼதͷ׆ࡁܦಈͷͱখͷਰୀͱ˙ Ͱ ͷݱੜΔɽΒʹඍతͳεέʔ ϧͰΔ˙ ϨϕϧͰɼయܕతͳݱͱ ɼ(CBD)” ͷଘݟΒΕΔɽͷεέʔϧͰ ɼɼࢹڊతͳεέʔϧͱٯͷݱ ( ৺ͷਰୀ) ଟͷͰਐߦΔɽ ͷΑͳʑͳεέʔϧʹΔ׆ࡁܦಈͷ ݱΛઆΔཧɼεέʔϧʹԠɼ ࡁܦࢢΑͼ৽ࡁܦ(NEG) Ͱݸผʹ ڀݚΕɽલͷࡁܦࢢͰɼBeckmann 3) Λઌۦڀݚͱɼ৺ͷܗϝΧχζϜΛཧత ʹઆΑͱڀݚΕΔɽɼ ͷͷڀݚʹݶఆΕΓɼ Ո ɾҬϒϩοΫɾͱɼΑΓࢹڊతͳ εέʔϧͰͷݱ΄ͱΜͲߟΕͳɽ ޙͷ NEG ͰɼKrugman 4) ͷ Core-Periphery (CP) Ϟσϧʹ·ΔҰ࿈ͷཧʹڀݚΑΓɼҬϒϩο ΫͰͷੜཁૉͷϝΧχζϜఏΕΔɽ ΕΒͷݟͷதͰجຊతͳɼCP Ϟσϧʹ Δʮ༌ૹඅ༻ͷԼҰۃதΛಋʯ 1 (ΘΏΔ ετϩʔՌ) ͰΔɽΑΓ۩ମతʹɼCP ϞσϧͰ ɼҬқʹӨڹΛ༩Δ௨අ༻ͷԼʹͱ ͳɼରশͳߧۉղෆఆԽɼੜཁૉ (ۀاɾ࿑ ) ҰҬʹத (“Ұۃ”) ߧۉঢ়ଶͱ ذΔɽͷجຊɼ௨ج൫උқ࿈ ͷ՝੫ҬʹࡁܦେͳӨڹΛ༩ΔͱΛ ΔΊɼͷؤଟͷʹڀݚΑ ݕ౼Εɽɼདྷͷཧత౼ݕͷେɼ ҬεέʔϧͷΈʹண (Δɼεέʔϧ ೦Λ) “2 ҬϞσϧΛલఏͱ߹ 2 ʹ ݶΒΕΔɽ ͷΑʹདྷͷཧεέʔϧผʹஅΕ Δɼ ݱͷɾݱɼάϩʔόϧͳ (e.g., Ҭ) ׆ࡁܦಈͱϩʔΧϧͳ (e.g., Ҭɼ) ׆ࡁܦಈͷ ࡞ޓͷՌͱੜΔͱߟ ΒΕΔ (e.g., Brakman et al. 5),6) , Br¨ ulhart 7) ) ɽͷ Αͳ૬࡞ޓ༻ੜΔجຊతͳཧ༝ɼ ݱ1 (2) Ͱड़ΔΑʹɼফඅͷҟΛߟ߹ʹ ɼҰۃதͷޙΒʹ༌ૹඅ༻ΛԼΔͱɼߧۉ(“”) ੜΔɽ 2 εέʔϧͷߟʹڀݚɼ(2) Λরɽ 土木学会論文集D3(土木計画学), Vol. 70, No. 1, 113-130, 2014. 113

Core-Peripheryモデルの人口集積パターンakamatsu/Publications/PDF/...Core-Peripheryモデルの人口集積パターン 高山雄貴1・赤松隆2・小坂直裕3 1正会員

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マルチスケール空間構造を持つCore-Peripheryモデルの人口集積パターン

高山 雄貴1・赤松 隆2・小坂 直裕3

1正会員 愛媛大学助教 大学院理工学研究科(〒 790-8577 松山市文京町 3 番)E-mail: [email protected]

2正会員 東北大学教授 大学院情報科学研究科(〒 980-8579 仙台市青葉区荒巻青葉 6-6)E-mail: [email protected]

3正会員 株式会社 福山コンサルタント(〒 812-0013 福岡市博多区博多駅東 3-6-18)E-mail: [email protected]

集積経済を扱った従来の立地理論 (e.g., New Economic Geography: NEG) では,スケールの異なる空間単位 (e.g., 東北ブロック~宮城県域~仙台都市圏) における経済活動の相互作用が明示的に考慮されていない.本研究では,その相互作用を明示的に導入した階層的 (マルチスケール) 空間構造を持つ Core-Peripheryモデルを構築する.その均衡解の分岐現象を Akamatsu et al.1),2) と同様の手法で解析した結果,地域間・地域内交易費用の組合せに応じて,非常に多様な集積・分散パターンが生じうることが明らかにされる.なかでも,地域内競争の存在によって地域間での再分散現象が起きるという発見は,空間スケール構造を軽視してきた従来の NEG 理論に対する再考を促している.

Key Words : agglomeration economy, core-periphery model, bifurcation, multi-scale space

1. はじめに

(1) 研究の背景と目的

我が国をはじめとする経済先進諸国では,様々な空

間スケールでの経済活動の集積・分散現象が見られる.

日本国内を例にとれば,まず,最も巨視的なスケール

である地域ブロック (e.g., 北海道,東北,北陸,首都

圏...) 間では,グローバル経済の進展とともに首都圏へ

の一極集中が深化しつつある.次に,より微視的な空

間スケールで地域ブロック内を見ると,地方中核都市

への経済活動の集積と小都市の衰退といった都市間で

の集積現象が生じている.さらに微視的な空間スケー

ルである各都市内レベルでは,典型的な集積現象とし

て,“都心 (CBD)” の存在が見られる.このスケールで

は,近年,巨視的な空間スケールとは逆の分散現象 (都

心の衰退) も多くの地方都市で進行している.

このような様々な空間スケールにおける経済活動の

集積現象を説明する理論は,空間スケールに応じて,都

市経済学および新経済地理学 (NEG)分野で個別に研究

されてきた.前者の都市経済学分野では,Beckmann3)

を先駆的研究として,都心の形成メカニズムを理論的

に説明しようとした研究が蓄積されている.しかし,こ

の分野の研究対象は都市内空間に限定されており,国家

間・地域ブロック間・都市間といった,より巨視的な空

間スケールでの集積現象はほとんど考慮されていない.

後者の NEG 分野では,Krugman4)のCore-Periphery

(CP)モデルに始まる一連の理論研究により,地域ブロッ

ク間での生産要素の集積メカニズムが提示されている.

これらの知見の中で最も基本的な命題は,CPモデルに

おける「輸送費用の低下は一極集中を導く」1(いわゆる

ストロー効果)である.より具体的には,CPモデルで

は,地域間交易に影響を与える交通費用の低下にとも

ない,対称な均衡解が不安定化し,生産要素 (企業・労

働者) が一地域に集中した (“一極集中”) 均衡状態へと

分岐する.この基本命題は,交通基盤整備や交易関連

の課税政策が地域経済に大きな影響を与えることを示

唆しているため,その頑健性が多くの研究によって検

討されてきた.ただし,従来の理論的検討の大半は,地

域間スケールのみに着目した (あるいは,空間スケール

概念を捨象した) “2地域モデル” を前提とした場合2に

限られている.

このように従来の理論は空間スケール別に分断され

ているが,現実の集積・分散現象は,グローバルな (e.g.,

地域間) 経済活動とローカルな (e.g., 地域内,都市内)

経済活動の “相互作用”の結果として生じていると考え

られる (e.g., Brakman et al.5),6), Brulhart7)) .その

ような相互作用が生じる最も基本的な理由は,集積現

1 (2) で述べるように,地代や消費者の異質性を考慮した場合には,一極集中の後さらに輸送費用を低下させると,分散均衡状態 (“再分散”) が生じる.

2 都市内スケールの立地も考慮した研究については,(2) を参照.

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象 (生産要素移動) の基本単位である企業・消費者が,

(NEG で着目される地域間スケールのみならず) 複数

の空間スケールをまたぐ交易活動を行っていることに

ある.そして,その様な交易活動に影響を与える “交通

費用”は,適切な交通モードの違いから,空間スケール

ごとに大きく異なる.一方,NEGの理論に沿って考え

れば,“交通費用” の変化は,生産要素の空間的集積を

生みだす決定的な要因である.従って,複数の空間ス

ケールに対する複数の “交通費用” が,交易活動パター

ンを決定し,ひいては,生産要素の空間的集積パター

ンを決定するであろう.そう考えると,従来のNEG理

論 (CPモデル) による予測の (複数空間スケールの導

入に対する) 頑健性には疑問が残る.

本研究の目的は,2地域CPモデルで得られた基本命

題 (「輸送費用の低下は一極集中を導く」) が,より詳

細スケール (i.e., 地域内) の空間構造の仮定によらず,

頑健に成立するか否かを理論的に検証することである.

そのために, 本稿では,まず,2 地域 CPモデルを拡張

し,スケールの異なる 2階層の空間構造を持つ多都市

モデルを構築する.より具体的には,従来モデルにお

ける地域間の空間構造に加え,各地域内に複数の都市

を設定し,地域内の空間構造を明示的にモデル化する.

そして,各空間スケールに対応する輸送費用の低下に

伴って生じる均衡解の分岐 (集積パターン)を解析する.

その具体的な解析では,まず,Akamatsu et al.1),2)で

示された分岐解析法の活用によって,分散状態から発

生する分岐が示される.さらに,各空間スケールに応

じた輸送費用のさらなる低下に伴い生じる分岐過程 (地

域間・地域内の集積パターンの進展) の全貌が明らかに

される.

本研究で明らかにされる集積パターンの進化過程は,

従来の (単一スケール) 2地域 CPモデルでは表現でき

ない多様性に富むものである.なかでも注目すべき新

たな発見は,地域間輸送費用の低下に伴い,地域間ス

ケールで “再分散” 現象が生じるという事実である.よ

り具体的には,まず,輸送費用の低下に伴って地域間

での集積現象が起こる.そして,さらなる輸送費用の

低下により, 再び地域間での分散状態が安定化する.こ

こで示される “再分散” は,従来研究8),9),10),11),12) で

示されている分散力 (e.g., 地代,通勤費用,消費者の

異質性) の導入に起因するものではなく,地域内スケー

ルでの空間的競争が地域間スケールの分散力として働

いた結果である.すなわち,単一スケールの従来モデ

ルでは考慮できない複数の空間スケール間の相互作用

の結果である.従って,単一スケールのみに着目した

NEG理論の予測は必ずしも頑健ではなく,複数の空間

スケールを同時に考慮した理論の展開が必要であるこ

とが,本研究の結果から示唆される.

本稿の以降の構成は以下のとおりである.本章の (2)

では,本研究に関連する既存研究をより詳しく議論す

る.第 2,3章では,本研究で用いる多都市 CP モデル

の短期・長期均衡状態を定式化する.第 4章では,本研

究で解析対象とするマルチスケール空間構造を定義し,

分岐 (集積・分散パターン創発) 解析の基礎となる固有

値・固有ベクトルを導出する.第 5,6章では,各空間

スケールにおける交通費用減少に伴って生じる長期均

衡解の分岐のメカニズムを解明する.第 7章では,都

市数を増やした場合の解析を行い,前章までに得られ

た解析結果の頑健性を確認する.最後の 8章では,本

研究の結論を示す.

(2) 関連研究と本研究の位置づけ

本研究の関心は,スケールの異なる 2つの空間 (e.g.,

地域間と地域内)をまたぐ交易経済活動および立地集積

現象を扱いうる理論にある.従来,複数の空間スケー

ルを同時に扱った 2系統の研究があるが,いずれも,現

在までに得られている知見は,限定的である.

第一の系統は,Helpman8), Tabuchi9),Murata and

Thisse12)に代表される,都市間スケールと都市内スケー

ルでの経済活動を同時に扱った研究である.この系統

の研究は,都市内スケールでの地代や通勤費用の存在

が “再分散” 現象を発生させることを示した意義はあ

るものの,2 つの空間スケールにおける企業集積形成

を内生的に扱っているわけではない.より具体的には,

これらの研究では,都市間スケールでの企業の集積メ

カニズムは, (“地域” を “都市” と読み替えた) 標準的

な CPモデルによって表現されている.一方,都市内

スケールの立地の記述は,Alonso流の住宅立地モデル

のみに留まっている.すなわち,企業の立地点は予め

単一のCBDに固定されており,都市内空間での企業の

集積 (CBD形成) は表現されていない.

第二の系統は,国内地域間スケールと国際スケー

ルでの経済活動を同時に扱った研究 (Krugman and

Elizondo13), Monfort and Nicolini14), Crozet and

Koenig-Soubeyran15), Behrens et al.16),17),18))である.

これらの研究も,NEGの対象空間を拡大する意義はあ

るものの,2つの空間スケールにおける企業集積形成を

明示的には扱っていない.より具体的には,これらの

研究は,生産要素 (労働者・企業家) の移動を国内地域

間のみに限定した標準的 CP モデルに国際貿易を導入

した解析である.すなわち,これらの研究で構築され

たモデルと標準的 CPモデルの相違点は,財の交易範

囲のみであり,国際スケールでの生産要素の移動は全

く表現されていない3.

3 最近,Zeng and Zhao19) は,2 国-4 地域 (各国に 2 地域) の複数空間スケールでの生産要素の移動を解析している.しかし,その解析の枠組は,労働者・企業が移動可能な標準的 CP モデル

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以上の様に,複数の空間スケールでの生産要素の移

動と経済活動の相互作用を同時に捉えた上で,全スケー

ルを通じて生じる集積パターン形成を明示的に扱いう

る理論はない.その結果,NEG (CPモデル) の基本命

題が空間スケール構造の導入に対して頑健か否かは,そ

の含意の重要性にも関わらず,理論的に検証されてい

ない.

本研究は,この未解決課題に対し,分析方法論およ

び得られた結論の 2つの観点で貢献している.まず第

一は,2階層 (地域間・地域内) の空間構造を明示的に

考慮した集積経済モデルの数学的な分析手法を提示し

たことである.提示された解析法は,従来研究には類を

見ず,集積の経済学 (economics of agglomeration) の

分析方法論上の進展に貢献している.第二は,NEGの

基本命題が (地域内空間の導入に対して) 頑健ではない

ことを明らかにしたことである.このような結論は,従

来研究では全く知られておらず,集積経済を扱う理論

の発展に必要とされる今後の研究方向を示唆する意義

がある.

2. モデルの設定と短期均衡状態

本研究では,Pfluger21) の 2都市 CP モデルと全く

同一の仮定に基づき,マルチスケール空間構造下での

多都市 CPモデルの特性を調べる.そのために,本章

では,都市・経済環境の設定を示した後,一般的な多

都市の枠組みで財・労働市場の均衡条件を定式化する.

(1) 都市・経済環境の設定

a) 労働者

本稿で考える労働者は,知識・技術水準に応じて

skilled workerとunskilled workerに分類される.skilled

workerは,高度な知識・技術を活かして,知識集約的

な作業に従事する労働者であり,自らが労働・居住す

る都市を選択できる.unskilled worker は,高度な知

識・技術を持たず,労働集約的作業に従事する労働者

である.この unskiled workerは,すべての都市に一様

に分布し,労働・居住する都市を選択できない.skilled

worker,unskilled workerの総人口は,各々,H,Lであ

り,全都市に一様に分布する unskilled workerの各都

市の人口が l = 1となるように人口の単位を定義する.

また,全ての労働者は,非弾力的に労働を供給すると

仮定する.

(“Footloose Entrepreneur (FE) model”) ではなく,移動可能な生産要素が資本のみと仮定された “Footloose Capital (FC)model”20) である.従って,この研究は,CP/FE モデルにおいて,複数の空間スケールの導入が集積パターンに与える影響を検証する本研究とは,ほぼ無関係である.

b) 都市経済システム

離散的な K 個の都市が存在する都市経済システム

を考える.この経済には,農業部門と工業部門の 2部

門が存在する4.農業部門は,収穫一定の技術により,

unskilled workerの労働を生産要素として 1種類の同質

な財を生産する完全競争的な部門である.工業部門は,

収穫逓増の技術により,skilled 及び unskilled worker

の労働を生産要素として,差別化された財を生産する

独占競争的な部門である.ある都市で生産された財は,

隣接する都市間を結ぶ交通ネットワークにより他の都

市へ輸送できるため,どの都市でも消費できる.

(2) 消費者行動

都市 iの消費者は,効用関数 U(CMi , C

Ai )を所得制約

Yi の下で最大化するように,工業財と農業財の消費量

CMi , C

Ai を決定する:

maxCM

i ,CAi

U(CMi , C

Ai ) = µ lnCM

i + CAi , (1a)

s.t. pAi CAi +

∑j

∫ nj

0

pji(k)qji(k)dk = Yi. (1b)

ここで,µ ∈ (0, 1)はパラメータ,pAi は都市 iにおける

農業財の価格である.kは,工業財の種類 (バラエティ)

を表すインデックスであり,常に工業財のバラエティが

連続的かつ無限に存在すると仮定するため,連続変数

とする.pji(k), qji(k)は,各々,都市 jで生産され,都

市 iで消費される工業財のバラエティ毎の価格,消費量

を表す.nj は都市 jの財のバラエティ数である.また,

CMi は,工業財の消費量 qji(k)を代替の弾力性 σ > 1

を用いて集計した,

CMi =

∑j

∫ nj

0

qji(k)(σ−1)/σdk

σ/(σ−1)

(2)

によって定義される.

効用最大化問題 (1)を解くことにより,農業財・工業

財の消費量が価格 pAi , pji(k),所得 Yiの関数として,次

のように導出される:

CAi =

YipAi

− µ, CMi =

µpAiρi

, (3a)

qji(k) = µpAi {pji(k)}−σρσ−1i . (3b)

ここで,ρi は都市 iでの工業財の価格指数である:

ρi =

∑j

∫ nj

0

pji(k)1−σdk

1/(1−σ)

. (4)

得られた工業財の消費量は,所得 Yiの消費者が消費す

る量である.そのため,都市 i全体で消費する都市 jで

生産された工業財のバラエティkの消費量Qji(k)は,各4 本稿で用いる “農業”と “工業”という表現は,理解を容易にするための便宜上のものである.ここで重要なのは,生産部門が完全競争・不完全競争的な部門に分けられる点のみである.

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都市の skilled worker の人口を h = [h0, h1, ..., hK−1]⊤

とすると,次のように表される:

Qji(k) = qji(k)(hi + 1). (5)

(3) 生産者の行動と独占的競争

農業部門の企業は,unskilled workerの労働のみを生

産要素とし,同質な財を完全競争のもとで収穫一定の

技術により生産する.この場合,一般性を失うことな

く,1単位の unskilled workerにより,1単位の財が生

産されると基準化できる.したがって,限界費用原理

から,各都市の農業財の価格 pAi は,unskilled worker

の賃金wLi と等しくなる.また,農業財の輸送には費用

がかからないと仮定するため,全ての都市の農業財価

格は等しい.したがって,ある都市の農業財をニュー

メレールとすれば,次の等式が得られる:

pAi = wLi = 1 ∀i. (6)

工業部門では,企業はDixit-Stiglitz22)型の独占的競

争を行う.すなわち,自由に参入・撤退できると仮定し

た企業が,収穫逓増の技術により差別化された工業財

を生産する.規模の経済,消費者の多様性の選好,な

らびに供給できる財のバラエティに制限がないことか

ら,どの企業も必ず他企業とは異なるバラエティの財

を生産する.そのため,供給される財のバラエティ数

ni は,生産を行う企業の数に等しい.また,企業が工

業財を生産するためには,skilled workerの労働を固定

的に α単位と,生産量 xi(k)に応じて unskilled worker

の労働を βxi(k)単位,生産要素として投入する必要が

あると仮定する.この仮定から,企業数 ni は,都市 i

の skilled worker 人口 hi と次の関係を持つ5:

ni = hi/α. (7)

さらに,工業財の生産費用関数 c(xi(k)) は,skilled

workerの賃金を wi とすると,次のように表現される:

c(xi(k)) = αwi + βxi(k). (8)

ここで,wi は skilled workerの賃金である.

工業財の輸送には,氷塊型の輸送費用がかかると考

える.すなわち,都市 i, j間で 1単位の工業財を輸送す

ると,最初の 1単位のうち 1/ϕij 単位だけが実際に到

着し,残りは解けてしまうと考える.そのため,工業

財の需要量 Qij(k)と供給量 xi(k)との間に次の関係が

成立する:

xi(k) =∑j

ϕijQij(k). (9)

工業部門では,Dixit-Stiglitz型の独占的競争を仮定

しているため,都市 iの企業は価格指数 ρi,消費者の5 各都市の企業数と skilled worker 数の一対一関係 (7)から,以降で示される skilled worker の集積パターンは,産業集積パターンを表しているとも考えることができる.

需要関数 (5)を所与として自ら生産する工業財の価格

pij(k)を設定する.このとき,企業の利潤最大化行動

は,次のように定式化される:

max{pij(k)}

πi(k) =∑j

pij(k)Qij(k)− c(xi(k)). (10)

この企業の最適条件と工業財の需要関数 (5)より,工業

財の価格 pij(k)が次のように導出される:

pij(k) =σβ

σ − 1ϕij . (11)

この結果から明らかなように,工業財の価格は,財のバ

ラエティkには依存しない.したがって,Qij(k), xi(k)

も同様に,財のバラエティkには依存しない.そこで,

以降では,各変数の kを省略し,pij , Qij , xiと表記する.

(4) 短期均衡条件と均衡解の導出

都市経済システムにおいて,財の生産・消費量と賃

金,財価格は,skilled workerが移住できない程,短期

間で均衡すると仮定する.この状態を “短期均衡状態”

と呼ぼう.短期均衡状態では,企業の参入・撤退が自由

であることから,企業の利潤が常にゼロとなる6.した

がって,skilled workerの賃金は次のように表される:

wi =1

α

∑j

pijQij − βxi

. (12)

さらに,短期均衡状態では,工業財の市場清算条件が

成立する.工業財には輸送費用がかかるため,この市

場清算条件は,式 (9) で表わされる.

以上の条件から得られる短期均衡解を示そう.都市 i

の価格指数 ρiは,式 (4)に式 (7), (11)を代入すること

で,以下のように与えられる:

ρi(h) =σβ

σ − 1

(∆i(h)

α

)1/(1−σ)

. (13)

また,skilled workerの均衡賃金 wiは,式 (12)に価格

指数 ρi,式 (5), (9), (11) を代入することで次のように

導出される:

wi(h) =µ

σ

∑j

(dij

∆j(h)

)(hj + 1). (14)

ここで,dij は,次のように定義される,都市 i, j 間の

交易に関する条件である:

dij ≡ ϕ1−σij . (15)

∆i(h)は都市 iの工業財市場の大きさを表わす指標で

ある:

∆i(h) ≡∑j

djihj . (16)

したがって,dji/∆j(h)は,都市 iの企業が都市 jで獲

得できる工業財市場のシェアの大きさを表わす.6 この仮定は,NEG分野で標準的に用いられる仮定である.その詳細は,例えば,Fujita et al.23), Baldwin et al.20), Combeset al.24) などの教科書を参照.

土木学会論文集D3(土木計画学), Vol. 70, No. 1, 113-130, 2014.

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均衡賃金および間接効用は,都市間の交易に関する

条件を表す空間割引行列:

D ≡ [dij ] (17)

を利用することで,その数学的構造を明確にできる.具

体的には,均衡賃金w(h)は次のように表記できる:

w(h) =µ

σ

{wL(h) +wH(h)

}, (18a)

wL(h) = M⊤1, (18b)

wH(h) = M⊤h, (18c)

M ≡{diag

[D⊤h

]}−1D. (18d)

これらの結果から,次の補題が得られる:

補題 2.1 本モデルの間接効用関数 v は skilled worker

の各都市の人口 hの陽関数として表現できる:

v(h) = S(h) + σ−1[wH(h) +wL(h)

]. (19)

ここで,wH(h),wL(h)は式 (18b)と (18c)によって定

義され,S(h)は次式で定義される:

S(h) ≡ (σ − 1)−1 ln[Dh]. (20)

また,ベクトルの各要素に対数をとる場合,ln[w] ≡[lnw0, lnw1, ...]

⊤ と表記した.

この補題は,多都市システムの枠組みであっても空間

割引行列Dを利用することで,間接効用関数 vが hの

陽関数で与えられることを示している.

3. 長期均衡状態と調整ダイナミクス

長期的には,skilled workerは,自らの得る効用を最

大化するように労働・居住する都市を選択できる.そ

こで,skilled workerの都市選択行動が長期的に落ち着

く状態を “長期均衡状態”と呼ぼう.長期均衡状態では,

後に示すように,複数の均衡解が存在する.そのため,

均衡解には安定・不安定解が存在し,パラメータの変

化によってその安定性が変化する.したがって,創発

する均衡パターンを調べるためには,均衡解周辺の局

所安定性を調べる必要がある.そこで,本節では,長

期均衡状態を定義し,その安定性を調べる方法を示す.

(1) 長期均衡状態

長期均衡状態は,立地均衡を扱った従来研究と同様,

どの skilled workerも自らの立地選択変更のみでは効用

を改善できない状態と定義する.すなわち,次の 2条

件を満たす状態 h∗ が長期均衡状態である:V ∗ − vi(h) = 0 if hi > 0,

V ∗ − vi(h) ≥ 0 if hi = 0,(21a)

∑i

hi = H. (21b)

ここで,V ∗ は均衡効用水準である.

(2) 均衡解の安定性

次に,長期均衡状態の安定性を定義するために,

skilled worker の人口分布が均衡状態へ到達するまで

の調整ダイナミクスを示す.本研究では,進化ゲーム理

論で最もよく知られる replicator dynamics を用いる7.

すなわち,都市 iに居住する skilled worker人口の変化

率を次のように定める:

h = F (h) ≡ diag[h] {v(h)− v(h)1} , (22a)

v(h) ≡ H−1h⊤v(h). (22b)

このダイナミクスは,微分可能,skilled worker 人口の

増加率が効用と正の相関をもつ,という望ましい性質

を持つため,Fujita et al.23) を始めとして NEG 分野

で標準的に利用されている.

長期均衡状態の安定性については,局所的な漸近安

定性を採用する.その正確な定義は,以下の通りであ

る; 時点 tでの skilled worker 分布を h(t)とすると,次

の 2つの条件を満たす h∗ は漸近安定である.

1) 任意の実数 ϵ > 0に対して ||h(0) − h∗|| ≤ δ のと

き ||h(t)−h∗|| ≤ ϵが任意の実数 t ≥ 0で満たされ

るような実数 δが存在する.

2) 時点 tの極限で limt→∞ h(t) = h∗ が成り立つ.

局所的な漸近安定性は,動的システム理論でよく知られ

ているように,調整ダイナミクスの右辺F (h∗)のJacobi

行列の固有値により調べることができる.より具体的

には,均衡状態 h∗は,次の調整ダイナミクスの Jacobi

行列

∇F (h∗) = diag[v(h∗)− v(h∗)1]

+H−1diag[h∗][(HI − 1h∗⊤)∇v(h∗)− 1v(h∗)⊤

](23)

の固有値の実部が負であれば,(局所的)安定的である:

したがって,Jacobi行列∇F (h∗)の固有値の実部の符

号が変化する際に,均衡解 h∗が分岐する.ここで,調

整ダイナミクスの Jacobi行列に含まれる∇v(h)は,間

接効用関数 v(h)の Jacobi行列であり,以下のように

与えられる:

∇v(h) = ∇S(h) + σ−1[∇wL(h) +∇wH(h)

],

(24a)

∇S(h) ≡ (σ − 1)−1M , (24b)

∇wL(h) ≡ −M⊤M , (24c)

∇wH(h) ≡ M⊤ −M⊤diag[h]M . (24d)

7 本稿で用いる replicator dynamicsの定常状態は,必ずしも長期均衡状態とは一致しない (ただし,長期均衡状態は必ず replicatordynamics の定常状態である).これは,式 (22) のみでは条件V ∗ − vi(h) ≥ 0を満たさない場合が存在しうるためである.ただし,長期均衡条件 (21)を満たさない replicator dynamics の定常状態は,Sandholm25) でも示されているように,必ず不安定となることが知られている.したがって,本稿では,長期均衡状態 h∗ の安定性を,replicator dynamicsの定常状態の安定性を確認する手法により調べる.

土木学会論文集D3(土木計画学), Vol. 70, No. 1, 113-130, 2014.

117

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地域B地域A

0

1

2

3

図–1 マルチスケール空間: 2× 2構造

4. 空間構造の設定と解析の準備

従来の NEG 分野の研究と同様の空間設定では,ス

ケールの異なる空間単位における経済活動の相互作用

の性質を調べることができない.そこで本章では,地

域間・地域内 (都市間)での経済活動の際に生じる財の輸

送費用を明示的に区別できる空間構造を定義する.具体

的には,内部に複数の都市を有する地域が存在し,各々

の地域が交通ネットワークで結ばれた状態を考える.さ

らに本章では,この空間設定の下での長期均衡解の安

定性を調べる準備を行う.ここで,均衡解の安定性の

確認方法として,Akamatsu et al.1) は離散 Fourier変

換 (DFT) を利用した分岐解析方法を提示している.本

研究ではこの手法を拡張し,高山・赤松26) と同様,2

次元 DFTを用いることで分岐特性を明らかにする.

(1) マルチスケール空間構造

本稿で扱う空間構造は,図–1に示されるように 2つ

の都市を内部に有する 2つの地域がネットワークによ

り結ばれている8.この構造を 2× 2構造と表記しよう.

この 2 × 2構造の下では,地域 Aには都市 0, 1が,地

域 Bには都市 2, 3が所属している.

本研究では,ネットワーク上の任意の都市間におい

て,工業財取引や労働者の移住が可能な状況を考える.

ここでは,このネットワーク構造は対称であると仮定

する.具体的には,地域内の都市間距離 t1はいずれの

地域でも等しく,地域間の都市間距離 t2も任意の組み

合わせの都市間で等しいとする.

また,地域内及び地域間の単位距離あたりの輸送費

用を τ1, τ2 と定義する.

都市間の工業財の輸送に必要な氷塊型の輸送費用 ϕij

は,2つの都市 i, j間の距離と,地域内・地域間の輸送

費用の大きさを表すパラメータ τ1, τ2 により,次のよ

うに与える:

ϕij ≡

exp(τ1t1) (i, j) = (0, 1) or (2, 3),

exp(τ2t2) otherwise.(25)

したがって,空間割引行列D = [dij ]は,次のように表

8 ここで用いる “地域”や “都市”は,適切な交通モードの違いから,単位距離あたりの輸送費用が大きく異なる 2 種類の空間スケール毎に定義する.したがって,“地域”・“都市”共に,必ずしも行政区画と一致するものではないことに注意が必要である.

される:

D =

[D1 D2

D2 D1

], (26a)

D1 =

[1 r1

r1 1

], D2 = r2E[2]. (26b)

E[i] は全ての要素が 1の i× i行列である.また r1,r2は,各々,地域内,地域間における輸送に関する条件を

表し,次のように定義される:

r1 ≡ exp[−(σ − 1)τ1t1] (27a)

r2 ≡ exp[−(σ − 1)τ2t2]. (27b)

式 (27)より,r1, r2 は各空間スケール (i.e., 地域内・

地域間) の輸送費用パラメータ τ1, τ2の単調減少関数で

ある.より具体的には,τi ∈ [0,∞)の減少と ri ∈ (0, 1]

の増加は同義であると考えてよい.そこで,r1, r2 を,

各々,“地域内交易自由度”,“地域間交易自由度”と呼

び,以降の解析では r1, r2の増加に伴う均衡解の分岐特

性を調べる.

(2) 空間割引行列の固有値

本章で提示したマルチスケール空間構造では,空間

割引行列は Block Circulant with Circulant Blocks (以

降,BCCB) の性質を持つ (BCCBの性質については,

付録 II参照).より具体的には,D を構成するブロッ

ク行列D1,D2が巡回行列の順に並び,さらに各ブロッ

ク行列も巡回行列の構造を持つ (巡回行列の性質につ

いては,付録 I参照).この性質を持つ行列は,2次元

DFT行列 Z

Z ≡ Z[2] ⊗Z[2] =

[Z[2] Z[2]

Z[2] −Z[2]

](28)

による相似変換を施すことで対角化できることが知ら

れている (e.g., Davis27)).ここで,⊗はクロネッカー積,Z[2] は 2× 2の DFT行列である:

Z[2] =

[1 1

1 −1

](29)

以降の分岐解析のために,空間割引行列の行和 d =

(1 + r1 + 2r2)で正規化した (i.e., D の各要素を dで

除した) 行列D/dの固有値・固有ベクトルを調べると,

次の補題が得られる.

補題 4.1 マルチスケール空間構造下での空間割引行列

D/dの固有値・固有ベクトルは,以下の特性を持つ.

1) 第 2i + j 固有ベクトル (i, j = 0, 1) は,次の 2次

元 DFT行列の第 2i+ j 列ベクトルで与えられる:

z2i+j =

[z[2],j

(−1)iz[2],j

](30)

ここで,z[2],j はDFT行列Z[2]の第 j列ベクトル

である.

土木学会論文集D3(土木計画学), Vol. 70, No. 1, 113-130, 2014.

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2) 第 2i + j 固有値 (i, j = 0, 1) は,次のとおり与え

られる:

f2i+j =

1 if i = j = 0,

(1 + r1 − 2r2)/d if i = 1, j = 0,

(1− r1)/d otherwise.

(31)

3) f1, f3 の値域は (0, 1] であり,r1 ∈ (0, 1] の単調

減少関数である.f2 の値域は (−1/3, 1) であり,

1+ r1 > 2r2であれば正,1+ r1 < 2r2であれば負

である.

(3) 調整ダイナミクスの Jacobi行列の固有値

本モデルにおいて創発する集積パターンを調べる準

備として,skilled workerが全ての都市に h = H/4 ず

つ均等に分散した人口分布 h (分散均衡状態) を初期の

状態とする.このとき,∇F (h)が BCCB となること

を示そう.skilled workerの人口分布が h = hである

場合,

M = (hd)−1D (32)

であるから,間接効用関数とその Jacobi行列は,次の

ように表される:

v(h) = v(h)1, (33)

∇v(h) = h−1[b(D/d)− a(D/d)2

]. (34)

ここで,a, bは

a ≡ σ−1(1 + h−1), (35a)

b ≡ (σ − 1)−1 + σ−1. (35b)

BCCBの和,積も BCCBであることを利用すると,調

整ダイナミクスの Jacobi行列

∇F (h) = h

(I − 1

4E[4]

)∇v(h)− v(h)

4E[4] (36)

もまた BCCB であることがわかる.ここで,E[k]は全

要素が 1の k × k行列である.

以上より,Jacobi行列∇F (h)の固有値 g = [gk]は,

∇F (h)が BCCBであるため,以下の命題に示される

ように,行列D/dの固有値・固有ベクトルによって特

徴づけられる.

補題 4.2 マルチスケール空間 2× 2構造下で,skilled

workerが各都市に均等に分散した均衡状態 hを考える.

このとき,CPモデルの調整ダイナミクスの Jacobi行

列 ∇F (h) は以下の特性を持つ:

1) 第 k固有ベクトル (k = 0, 1, 2, 3) は,行列D/dの

固有ベクトルと同様,2次元離散 Fourier変換行列

Z の第 k列ベクトル zk で与えられる.

2) 第 0固有値は常に −v(h)である.第 k 固有値 gk

(k = 1, 2, 3)は,行列D/dの第 k固有値 fkの 2次

a) パターン 00: 分散均衡 b) パターン 10: 地域間集積

c) パターン 01: 地域内集積 d) パターン 11: 一極集中

図–2 自明解の集積パターン (赤色の都市のみに skilledworkerが存在)

関数で与えられる:

gk = G(fk), (37a)

G(x) ≡ bx− ax2. (37b)

ここで,a, bはパラメータ h, σ から決まる定数で

あり,式 (35)により表される.

補題 4.2で示された調整ダイナミクスの Jacobi行列

の固有値 gkは,分散均衡状態における第 k固有ベクト

ル方向への純集積力 (≈ 効用の増分) を表している.す

なわち,純集積力 gkが正であれば,分散均衡状態 h は

不安定であり,skilled worker は固有ベクトル zk 方向

に集積する.逆に,純集積力 gk が全て負であれば,分

散均衡状態は安定となる.これは,どの方向に集積パ

ターンが変化しても skilled workerの効用が増加しない

状態を表している.

本章で定義した空間構造の下では,固有値 gk の符号

は地域内交易自由度 r1 と地域間交易自由度 r2 に依存

して変化する.さらに,それぞれの固有値は r1, r2 の

変化に対して大きく異なる反応を示す.そのため,各

集積パターンの安定性及び分岐時の集積方向は,r1, r2のレベルに応じて複雑に変化する.そこで,次節では,

創発しうる集積パターンを特定した上で,その集積パ

ターンと固有ベクトルとの対応を示す.

(4) 立地パターンと固有ベクトル

均衡解の安定性解析を行うために,まずは式 (21)の

条件を満たす自明解を特定しておこう9.マルチスケー

ル空間のように全ての都市の空間的条件が等しい (e.g.,

9 本モデルの安定均衡解は,ここで示す自明解以外にも存在し得る.しかし,Ikeda et al.28) で示されているように,(対称性が低い,もしくは対称性のない) 非自明解が安定的となるのはごく限定的なパラメータ領域のみであり,特殊ケースと考えることができる.さらに,対称性の高い自明解は,全てのパラメータ領域において,安定的となることも確認されている.実際,以降の分析で明らかにされるように,本研究で対象とするマルチスケール空間構造下では,パラメータの変化に伴う集積パターンの進展過程で見られるのは,ここで示す自明解のみである.

土木学会論文集D3(土木計画学), Vol. 70, No. 1, 113-130, 2014.

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1

10

��

�� ��,�

����∗

��∗

0

1

11

���� ��,�

����∗

��∗

��

��∗

��∗= 0

��(+) (−)

a) gk と fk の関係 b) fk と r1 の関係 c) fk と r2 の関係

図–3 空間割引行列D/dの固有値 fk と調整ダイナミクス Jacobi行列 ∇F の固有値 gk

全ての都市のリンク数・都市間距離が等しい) 場合,対

称性をもつ自明解が存在する.本研究で考えるマルチ

スケール空間 2× 2構造の下では,式 (21)を満たす自

明解の集積パターンは,図–2に示す 4種類に限定され

る.これらの集積パターンを明快に区別するために,2

進数を用いたパターンの分類を考えよう.ここでは,地

域間での集積の状態を p,地域内における都市の集積状

態を q とし,集積パターンを pq,skilled workerの集

積パターンを hpq と表記する.各空間スケール (地域

間・地域内) での集積パターンは,分散均衡状態が安定

的であれば 0,一極集中が安定的であれば 1と表す.例

えば,図–2 b) の集積パターンはパターン 10,skilled

workerの人口分布は h10 と表記する.

補題 4.2で示された調整ダイナミクスの固有ベクト

ル zk は,その要素の配列パターンによって各都市へ

の skilled workerの人口集積パターンを表現している.

具体的には,z0 は全要素が 1 であり,skilled worker

が均等に分散した状態 (図–2 a) ) に対応する; z2 =

[1, 1,−1,−1]⊤は,図–2 b) で示される,一方の地域へ

と skilled worker が集積し,内部の都市には均等に人

口が分布した状態 (地域間集積状態) に対応する; 同様

に z1 = [1,−1, 1,−1]⊤, z3 = [1,−1,−1, 1]⊤は,各地域

の内部において集積が起こった状態 (地域内集積状態)

である (図–2 c) ).

次章以降では,本章で得た ∇F (h) の固有値・固有

ベクトルを用いて,輸送費用の低下に伴い創発する集

積パターンの進展過程を分析する.

5. 分散均衡状態からの分岐

本章では,マルチスケール空間構造を持つ CP モデ

ルで創発する集積パターンを明らかにする.そのため

に,分散均衡状態を初期状態として,輸送費用の低下

に伴い発生する分岐の挙動を調べる.具体的には,ま

ず,(1)節で安定均衡状態からの分岐が発生する条件を

示す.次に,(2)節では,分散均衡状態から分岐によっ

て創発する集積パターンを調べる.そして,(3)節では

地域間集積状態から輸送費用の低下によって “地域間で

の再分散現象”が発生することを示す.

(1) 分岐の発生条件

均衡解の分岐現象は,補題 4.2で示した∇F (h)の固

有値 gk が符号変化したときに発生する.この符号変化

が起こるには,fk の値域の範囲内で

G(fk) = 0 (38)

が実数解を持つ必要がある.したがって,交易自由度

の変化によって,skilled workerが少数の都市へ集積し

た均衡状態へ分岐するためには,CP モデルのパラメー

タが次の条件を満足している必要がある:

b

a< 1. (39)

この条件 (39)は,CPモデルの既存研究でもよく知

られている black-holeの非存在条件である.この条件

が満たされない場合,輸送費用などのパラメータ値に

関わらず,必ず正の gk が存在するため,分散均衡状態

が常に不安定的 (集積均衡解が安定的)となる.そこで,

以降の分岐解析では,この条件 (39)が満たされている

状況のみを考える.

(2) 分散均衡状態からの分岐: 集積の創発

均衡解の分岐現象は,gk の符号が変化する際に発生

する.すなわち,G(fk) = 0の解

x∗+ =b

a> 0, x∗− = 0 (40)

は,分岐が発生する fk の臨界値を意味している.3章

で示したように,均衡状態は全ての kについて gkが負

であれば安定,そうでなければ不安定である.したがっ

て,交易自由度と分散均衡状態の安定性の関係は,「gkと fk の関係」・「fk と r1, r2の関係」を調べることで明

らかとなる.そこで,まず,地域内・地域間の交易自由

度 r1, r2と fkの関係について考えよう.r1 = r2 = 0を

土木学会論文集D3(土木計画学), Vol. 70, No. 1, 113-130, 2014.

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初期状態とすると,任意の k に対して fk = 1となる.

この状態から地域内交易自由度 r1または地域間交易自

由度 r2が増加すると,fkが減少する.そして,その fk

が式 (40)で示した臨界値 x∗+ に到達した瞬間に gk の

符号が変化し,分岐が発生する.

地域内・地域間交易自由度 r1, r2,空間割引行列の固

有値 fk,そして調整ダイナミクスの Jacobi 行列の固

有値 gk の関係をより明快にするために,分散均衡状態

(h = h) かつ r1 = r2 = 0とした状態から r1, r2を増加

させた場合の gk, fkの挙動を図–3に示す.図–3 a) は,

∇F (h)の固有値 gk と,D/d の固有値 fk の関係を表

したものである.図–3 b) は,r2 = 0としたときの fk

と地域内交易自由度 r1 の関係を示している.図–3 c)

は,r1 = 0とした場合の fk と地域間交易自由度 r2 の

関係を表している.

調整ダイナミクスの Jacobi行列の固有値 gkと地域内

の交易自由度 r1 の関係を知るために,図–3 a), b) に

着目しよう.まず,地域内輸送費用が十分に高く,0 <

r1 < r∗1 の満たしている状態では,空間割引行列D/d

の全ての固有値 fkについて x∗+ < fkが成立する.この

とき,図–3 a) より∇F の全ての固有値 gkが負となる

ため,分散均衡状態は安定的となる.次に,地域内輸

送費用の低下 (i.e., 地域内交易自由度 r1 の増加) によ

り r∗1 ≤ r1 が満たされると,f1 = f3 ≤ x∗+ となる.こ

のとき,g1, g3の符号が正となるため,分散均衡状態は

不安定的となる.このとき集積パターンは,r1 = r∗1 と

なる瞬間に,符号変化する固有値 g1, g3 に対応した固

有ベクトル z1, z3 方向 (i.e., パターン 01方向) へと分

岐する.

gkと地域間の交易自由度 r2の関係についても,図–3

a), c) から同様の議論が可能である.まず,地域間輸送

費用が十分に高く,0 < r2 < r∗2 の満たしている状態

では,空間割引行列D/dの全ての固有値 fk について

x∗+ < fk が成立する.このとき,∇F の全ての固有値

gk が負となるため,分散均衡状態は安定的となる.次

に,地域間輸送費用の低下 (i.e, 地域間交易自由度 r2の

増加)により r∗2 ≤ r2が満たされると,f2 ≤ x∗+となる.

このとき,g2 の符号が正となるため,分散均衡状態は

不安定的となる.このとき集積パターンは,r2 = r∗2 と

なる瞬間に,g2 に対応した固有ベクトル z2 方向 (i.e.,

パターン 10方向) へと分岐する.

各空間スケールの輸送費用を同時に変化させる場合,

分岐方向は,D/dの最小固有値に対応した固有ベクト

ル方向となる.そこで,輸送費用の変化とD/dの最小

固有値の関係をより調べよう.最小固有値となり得る

のが f1(= f3), f2のみであることから,両固有値の大小

関係を確認する.f2 − f1 = 2(r1 − r2)/dより,地域内

交易自由度 r1 と地域間交易自由度 r2 の大小関係から,

D/dの最小固有値が決定される.具体的には,r1 < r2

であれば10,f2 が最小固有値となる.このとき,地域

間交易自由度 r2 が臨界値

r∗2 =(a− b)(1 + r1)

2(a+ b)(41)

に到達した瞬間に z2方向への分岐が発生する.この固

有ベクトルはパターン 10方向を示しており,地域間集

積状態の創発を表している.一方,r1 > r2となる場合

には,最小固有値は f1(= f3)となる.このとき,地域

内交易自由度 r1 が臨界値

r∗1 =a− b(1 + 2r2)

a+ b(42)

に到達した瞬間に z1, z3 方向への分岐が発生する.こ

れらの固有ベクトルはいずれもパターン 01方向を示し

ており,地域内での集積が起こることを示している.

以上で示された,本モデルにおける分散均衡状態に

おける分岐特性を命題としてまとめておこう.

命題 5.1 マルチスケール空間 2× 2構造の CP モデル

において,各空間スケールでの輸送費用が十分に高く,

分散均衡状態が安定的な状態を考える.このとき,地

域内・地域間輸送費用の低下に伴う集積パターンの変

化は次の特性を持つ:

1) 地域内交易自由度 r1 が地域間交易自由度 r2 より

大きい場合,r1 が式 (42)で定義される臨界値 r∗1

に達する瞬間に地域内集積状態 (パターン 01方向)

への分岐が発生する.

2) 地域間交易自由度 r2 が地域内交易自由度 r1 より

大きい場合,r2 が式 (41)で定義される臨界値 r∗2

に達する瞬間に地域間集積状態 (パターン 10方向)

への分岐が発生する.

(3) 地域間集積からの再分散

前節では,分散均衡状態における fk の臨界値 x∗+の

みについて議論した.そこで,本節では,fk がもうひ

とつの臨界値 x∗− = 0に到達する場合について議論す

る.式 (31)より,r1, r2 ∈ (0, 1)の範囲内で x∗− に到達

し得る,空間割引行列の固有値は f2 のみである.これ

は,f2 < x∗+ となり,第 2固有ベクトル方向の分岐が

発生した後に,f2 < x∗− が満たされることにより,不

安定化した分散均衡状態が再び安定化する可能性があ

ることを意味している.より具体的には,パターン 10

方向への分岐が発生した後,g2 < 0と g1 = g3 < 0に

対応する次の 2条件が満たされる場合,分散均衡状態

は再び安定的となる:

1 + r1 − 2r2 < 0, (43a)

10 この条件は,地域内輸送費用より地域間輸送費用の方が低いことを意味している.ただし,この状況は,必ずしも非現実的なものではない.例えば,都市間高速輸送網の発達に伴い,首都圏内の都市間と比較すると,首都圏・東海・関西間の輸送費用の方が低くなる状況は想定し得る.

土木学会論文集D3(土木計画学), Vol. 70, No. 1, 113-130, 2014.

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f1 = f3 > x∗+. (43b)

この現象は再分散と呼ばれており,従来の 2地域CP

モデルでは,ある特殊な条件下でしか見られない現象

である.具体的には,この現象は混雑効果や消費者の

異質性など,各地域に局所的に作用する (i.e., 空間的な

スピルオーバー効果のない) 分散力が存在する場合に発

生する.それに対し,本モデルでは,先に述べた再分散

の要因は一切存在しないにも関わらず,地域間での再

分散現象が起こっている.これは,地域間集積に伴う

集積地域内の都市間競争の激化が,地域間の分散力と

して作用するためである.一方,f1, f3は常に正の値を

とることから,分散均衡状態からパターン 01方向への

分岐が発生した場合には,地域内部での再分散現象は

起こらない.これは,地域間競争の激化は,地域内の

分散のみでは回避することができないためである.以

上の再分散現象に関する性質を命題としてまとめてお

こう.

命題 5.2 マルチスケール空間 2× 2構造の CP モデル

は,再分散現象について次のような特性を持つ.

1) パターン 10 (地域間集積状態) が安定化している

状態からさらに輸送費用が低下する状況を考える.

このとき,式 (43a), (43b)から得られる条件

1 + r1 − 2r2 < 0 (44a)

1− r11 + r1 + 2r2

>b

a(44b)

を満たす場合,地域間で再分散現象が起こり,分

散均衡状態が再び安定化する.

2) パターン 01 (地域内集積状態) が安定化している

状態において,地域内での再分散は生じない.

6. 集積パターンの進展

本章では,分散均衡状態から分岐により発生したパ

ターン 10と 01の安定性と,そのパターンからの分岐

挙動を調べる.そのために,分散均衡状態で分岐が発

生し,パターン 01またはパターン 10へと変化した状

況を考える.そして,この状態から地域内・地域間輸

送費用を低下させると,再び分岐による集積が起こり,

いずれの集積パターンからも一極集中状態へと集積パ

ターンが推移することを明らかにする.

(1) 地域間集積状態 (パターン 10) からの分岐

パターン 10 の安定性を調べるには,skilled worker

の人口分布が h10 = [2h, 2h, 0, 0]⊤となる際の,調整ダ

イナミクスの Jacobi行列 ∇F (h10)の固有値を調べる

必要がある.しかし,h = h10 の場合,skilled worker

が居住している地域と居住していない地域では効用水

準が異なるため,空間割引行列は BCCB とはならず,

前章までに示した手法では固有値を解析的に導出でき

ない.そこで,skilled worker の空間分布の部分的な対

称性をうまく利用することで,固有値を得ることを考え

る.具体的には,パターン 10の場合,調整ダイナミクス

の Jacobi行列と空間割引行列の各ブロック行列は,共

に巡回行列となる.この性質を利用すると,Akamatsu

et al.1)と全く同様の手順により,∇F (h10)を対角化で

きる.その結果,次の補題が得られる.

補題 6.1 地域間集積状態 (パターン 10) での調整ダイ

ナミクスの Jacobi行列 ∇F (h10)の固有値は次のよう

に与えられる:

gk =

−v(h10) k = 0

G(f(1)k ) k = 1

v10(h10)− v(h10) otherwise

(45)

G(x) = bx− ax2 (46)

ここで,a ≡ σ−1{1+ (2h)−1}であり,f (1)k はD1を行

和 d1 ≡ 1 + r1 で正規化した行列D1/d1 の第 k固有値

である:

f(1)k =

1 if k = 0,

1− r11 + r1

if k = 1.(47)

v10(h10)は skilled workerが居住していない都市の効用

水準を表す.また,第 k 固有ベクトルは対角ブロック

に 2× 2の DFT 行列 Z[2] を持つ行列

Z ≡ diag[Z[2],Z[2]

]=

[Z[2] 0

0 Z[2]

](48)

の第 k列ベクトルによって与えられる.

パターン 10からの集積パターンの変化には,パター

ン 00方向・パターン 11方向の 2種類が存在し得る.前

者は命題 5.2で述べた,パターン 00が再び安定となる

再分散現象である.これに対し,後者は補題 6.1で示し

たように,パターン 10での∇F (h10)のいずれかの固

有値 gk が正となることで生じるものである.前者につ

いては既にその条件を述べたため,ここではパターン

11方向に分岐する条件を示そう.式 (47)より,f (1)k は

r1の単調減少関数である.したがって,パターン 11方

向への分岐が生じるには,パターン 10が安定均衡状態

となる状況下で,地域内交易自由度 r1 が臨界値

r1 = r(10)∗1 ≡ a− b

a+ b(49)

に到達する必要がある.以上の結果をまとめると,集

積パターンの進展に関する次の命題が得られる.

命題 6.1 地域間集積状態 (パターン 10) からさらに輸

送費用が低下する局面を考える.このとき,パターン

土木学会論文集D3(土木計画学), Vol. 70, No. 1, 113-130, 2014.

122

Page 11: Core-Peripheryモデルの人口集積パターンakamatsu/Publications/PDF/...Core-Peripheryモデルの人口集積パターン 高山雄貴1・赤松隆2・小坂直裕3 1正会員

10が安定均衡状態となる状況下で,地域内輸送自由度

r1が式 (49)で与えられる臨界値 r(10)∗1 に達すると,集

積パターンは一極集中状態 (パターン 11) 方向へと分

岐する.

(2) 地域内集積状態 (パターン 01) からの分岐

パターン 01 (h01 = [2h, 0, 2h, 0]⊤)の安定性を調べる

には,前節と同様に,集積パターンの部分的な対称性を

利用する必要がある.そのために,調整ダイナミクスの

Jacobi行列を skilled workerが居住する都市と居住し

ていない都市に分割する.具体的には,パターン 01は,

都市 0と都市 2に skilled workerが居住しているため,

行列の列ベクトル及び行ベクトルを [0123] → [0213]の

順に組み換える.この組み換えのために,次の置換行

列を用いる:

P ≡

1 0 0 0

0 0 1 0

0 1 0 0

0 0 0 1

. (50)

空間割引行列Dは,この置換行列P により,次のよ

うに変換される:

D♯ ≡ PDP⊤ =

[D3 D4

D4 D3

], (51a)

D3 =

[1 r2

r2 1

], D4 =

[r1 r2

r2 r1

]. (51b)

組み換え後の空間割引行列は,全てのブロックが巡回

行列であるため,∇#F (h01) ≡ P∇F (h01)P⊤ の各ブ

ロックも巡回行列となる.この性質を利用することで,

前節同様の手順から次の補題が得られる.

補題 6.2 地域内集積状態 (パターン 01) での調整ダイ

ナミクスの Jacobi行列 ∇F (h01)の固有値は,次のよ

うに与えられる:

gk =

−v(h01) if k = 0,

G(f(3)k/2)− (2σh)−1(f

(4)k/2)

2 if k = 2,

v01(h01)− v(h01) otherwise.

(52)

ここで,f (3)k はD3 を行和 d3 ≡ 1 + r2 で正規化した

行列 D3/d3 の第 k 固有値であり,f (4)k は D4 を行和

d4 ≡ r1 + r2で正規化した行列D4/d4の第 k固有値で

ある:

f(3)k =

1 if k = 0,

1− r21 + r2

if k = 1,(53a)

f(4)k =

1 if k = 0,

r1 − r2r1 + r2

if k = 1.(53b)

また,第 k固有ベクトルは,Z♯ ≡ PZP⊤ の第 k列ベ

クトルで与えられる.

パターン 01からパターン 11への分岐が発生するに

は,g2 が負から正に符号変化する必要がある.その分

岐臨界値 r∗1 , r∗2 は,条件 g2(r

∗1 , r

∗2) = 0を整理すること

で,次の通り与えられる:

r∗1 =1− ψ(r∗2)

1 + ψ(r∗2), ψ(x) ≡

√2σhG

(1− x

1 + x

). (54)

これまでの結果を整理すると,次の命題が得られる.

命題 6.2 地域内集積状態 (パターン 01) からさらに輸

送費用が低下する局面を考える.このとき,パターン

01が安定的である状況下で,地域内・地域間輸送自由

度 r1, r2 が式 (54)を満たすとき,集積パターンは一極

集中状態 (パター ン 11) 方向へと分岐する.

(3) 一極集中状態からの再分散

前節までの解析により,一極集中状態 (パターン 11)

に到達するまでの集積パターンの進展過程が明らかと

なった.そこで本節では,パターン 11から別のパターン

へと再分散する可能性を調べる.具体的には,式 (45),

または式 (52)で与えられる固有値 gk が,再び全て負

になる条件を示す.

まず,パターン 10での固有値 gk の性質を調べよう.

パターン 10から 11への分岐発生後,式 (45)の第 2固

有値 g2は正となる.ここで,f(1)1 が r1の単調減少関数,

かつ,f (1)1 ∈ (0, 1]であることに注目すると,g2が再び

負となることはないことがわかる.したがって,パター

ン 11からパターン 10方向への再分散は起こらない.

次に,パターン 01での固有値 gkの性質を調べる.こ

の場合,分岐発生に伴い,正の値をとる g2は,式 (52)

で示した第 2項の影響により,再び負になり得る.以

上より,パターン 11における再分散現象について,次

のような命題が得られる.

命題 6.3 一極集中状態 (パターン 11) が安定である状

態を考える.この状態から輸送費用が変化し,式 (52)

で示した g2の符号が負となるとき,地域内集積状態 (パ

ターン 01) が再び安定的となる.

(4) 交易自由度平面上での各均衡パターンの安定領域

前節までに得られた解析結果を明快に示すために,

(r1, r2)平面上に各均衡解が安定的となる領域を図示し

よう.本モデルでは,式 (37a)で示される調整ダイナミ

クスの Jacobi行列が持つ固有値 gk が 0となる break

point r1, r2の集合を境界として均衡解の安定性が変化

する.したがって,break point を (r1, r2) 平面上に図

示することにより,各集積パターンが安定的になる領

土木学会論文集D3(土木計画学), Vol. 70, No. 1, 113-130, 2014.

123

Page 12: Core-Peripheryモデルの人口集積パターンakamatsu/Publications/PDF/...Core-Peripheryモデルの人口集積パターン 高山雄貴1・赤松隆2・小坂直裕3 1正会員

00

10

0

1

1

2r

00

01

01

11

(地域内交易自由度)

(地域間交易自由度)

1r

図–4 (r1, r2) 平面上での集積パターンの安定領域

域が明らかとなる.図–4は,前章までの解析によって

得られた break pointを分散均衡状態から順に図示した

ものである (図–4の作成過程は付録 VII参照).なお,

この図は,パラメータを H = 1, σ = 10と設定した場

合の結果である.この図より,交易自由度 (r1, r2) の増

加する局面で生じる集積パターンを全て網羅できる.

7. 都市数を増やした場合のモデル解析

(1) 空間構造の設定: 2× 4構造

本稿で提示した手法を用いれば,都市数や地域数を

拡張した場合でも全く同様に解析できる.その一例と

して,地域内に 4つの都市が存在するモデル (マルチ

スケール空間 2× 4構造) を考えよう.ここでは,地域

内部の都市が円周上に等間隔に配置されていると仮定

する.このとき,空間構造の対称性や Ikeda et al.28),

Akamatsu et al.1)の成果から,安定化し得る自明解は,

図–5に示す 6 種類のパターンに分類できる.そこで,

これらのパターンの安定性を調べよう.なお,図–5で

表記されている 2× 4構造での集積パターン番号は,1

桁目が地域内スケールの集積パターン,2桁目が地域間

スケールの集積パターンを表している.具体的には,地

域内の都市に skilled workerが分散していれば下一桁を

0, 二極集中していれば 1, 一極集中していれば 2とし,

各地域に skilled worker が分散していれば上一桁を 0,

片方の地域に集中していれば 1 とした.一例を示すと,

パターン 01は地域間では分散状態であり地域内で二極

集中状態であるパターンを表す.

(2) 数値計算による集積パターン進展の確認

前節で示したマルチスケール空間 2× 4構造の下で,

2×2構造の場合と同様に各均衡解の安定領域を地域内・

地域間交易自由度 (r1, r2) 平面に図示すると,図–6が

得られる.なお,ここでは,隣接する都市・地域間の距

離を,各々,t1, t2と仮定した.したがって,隣接する都

市・地域間の交易自由度は,各々,r1, r2としている.ま

a) パターン 00 b) パターン 10

c) パターン 01 d) パターン 11

e) パターン 02 f) パターン 12

図–5 2× 4構造下の自明解の集積パターン

00

10

11

0001

01

02

02

12

1r

2r

図-7-b

図-7-a

図-7-c 図-7-f図-7-d 図-7-e

(地

域間

交易

自由

度)

(地域内交易自由度)

1

10

図–6 2× 4構造下での集積パターンの安定領域

た,パラメータは,2× 2モデルと同様,H = 1, σ = 10

とした.図–4と図–6を比較すると,地域内の都市数が

異なるにもかかわらず,両者ともほぼ全く同様の特徴

を有していることがわかる.具体的には,各均衡解の

分岐挙動や地域間における再分散現象といった基本的

な性質は都市数を拡張しても変わらない.ただし,都

市数を増加させることにより均衡解のパターンが増加

したため,より多様で複雑な集積パターンの進展が見

られる.

2× 4構造下の集積パターン及び分岐プロセスの確認

と,輸送費用の低下に伴う集積パターンの推移をより

明快に理解するために,理論解析と比較しやすい数値

計算例をいくつか示す.具体的には,図–6に示した点

線に沿って輸送費用を変化させた場合の,集積パター

ンの進展を確認する.顕在化する集積パターンを調べ

るために本研究では,Ikeda et al.28),29) と同様,計算

分岐理論と群論的分岐理論を適切に組み合わせた手法

土木学会論文集D3(土木計画学), Vol. 70, No. 1, 113-130, 2014.

124

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0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

00 01 02ℎ�/�

��

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

00 12 02

ℎ�/�

��

01 11

地域 B

地域A

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

00 01 02

ℎ�/�

��

10 00

a) r2 = 0.15の場合 b) r2 = 0.40の場合 c) r1 = 0.10の場合

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

00 01 02

ℎ�/�

��

01 11

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

02 02

ℎ�/�

��

12

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

00 12

ℎ�/�

�� = ��

11

d) r1 = 0.30の場合 e) r1 = 0.80の場合 f) r1 = r2 の場合

図–7 計算分岐理論による数値実験結果

を用いる (計算分岐理論や群論的分岐理論の詳細につい

ては,例えば,藤井ら30),Ikeda et al.31),32),33)参照).

実験の結果は図–7に示す通りである.これらの図は,

横軸に地域内または地域間交易自由度,縦軸に各地域

の人口最大都市の skilled worker人口割合 hi/Hをとっ

たものである.なお,実線は地域 Aの人口最大都市の

人口割合,破線は地域 Bの人口最大都市の人口割合を

示している.したがって,両者が重なる場合は各地域に

skilled worker が分布している状態を,重なっていない

場合は地域間集積が発生している状態を表している.

a) 地域内交易自由度 r1の増加に伴う集積パターンの

推移

まず,地域間交易自由度 r2を固定し,地域内交易自

由度 r1の変化による skilled worker の人口分布の推移

を数値的に調べる.図–7 a)は地域間の輸送費用が非常

に大きい場合であり,この結果は既存の CP モデルの

解析結果と全く同様の性質を示している.具体的には,

輸送費用の低下に伴って集積パターンが 00 → 01 → 02

と推移する.図–7 b) は地域間の輸送費用が小さい場

合の分岐挙動を表している.この場合,集積パターン

は 00 → 01 → 11 → 12 → 02と推移する.このように

地域間の輸送費用の違いのみによって,集積パターン

の推移が大きく変化することがわかる.

b) 地域間交易自由度 r2の増加に伴う集積パターンの

推移

次に,地域内の交易自由度 r1を固定し,地域間交易

自由度 r2の変化による skilled workerの人口分布の推

移を調べた.ここでは,地域内交易自由度の大きさに応

じて 3種類の数値実験を行った.図–7 c)は,r1が非常

に小さい場合の結果である.この場合,集積パターンは

00 → 10 → 00 → 01 → 02と進展する.r1 を増加させ

た図–7 d) の場合,集積パターンは 00 → 01 → 11 →01 → 02と推移する.r1 を非常に大きくした図–7 e)

は,集積パターンが 02 → 12 → 02と推移する.以上の

結果から,地域間交易自由度の減少に伴う集積パター

ンの進展過程には,必ず再分散現象がみられることが

わかる.

c) 地域内・地域間交易自由度が同時に増加する場合

の集積パターンの推移

最後に,地域間の輸送費用と地域内の輸送費用が同

一 (i.e., r1 = r2) と仮定した場合の安定均衡状態の推

移を調べる.図–7 f) に示すように,この場合,集積パ

ターンは 00 → 01 → 12と進展する.この結果からも

明らかなように,地域内と地域間で同一の輸送費用を

設定した場合,地域間集積を引き起こす分岐は,地域

内集積をもたらす分岐と同時に発生する.

土木学会論文集D3(土木計画学), Vol. 70, No. 1, 113-130, 2014.

125

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(3) 均衡解の分岐挙動の考察

本モデルで創発する集積パターンの進展過程は,図–

4,図–6からも明らかなように非常に多様なパターン

が存在する.このような多様性は,分岐のトリガーと

なる空間割引行列の固有値 fk が,r1, r2 という独立し

た 2つのパラメータによって構成されていることに起

因している.そこで,集積パターンの推移特性を明らか

にするために,図–7の数値実験結果から,集積パター

ンの進展をより詳しく観察しよう.

まず,最も単純な集積パターンの推移は,“各空間ス

ケールの輸送費用の低下に応じて,輸送費用が減少す

る空間スケールのみで集積が進展する”ものである.実

際,図–7 a)では,地域内の輸送費用の低下に伴い,各

地域の内部での集積が進展している.これは,従来の

CP モデルに見られる特性と全く同様の性質である.ま

た,図–7 f) では地域内と地域間での同時集積が起こ

るものの,各空間スケールを個別に観察すれば,輸送

費用の低下に伴って集積が進展するという点は共通し

ている.さらに,図–7 e) も同様に,地域間輸送費用

の低下に伴い,地域間の集積パターンの変化が起こる.

この数値実験結果ではパターン 12からパターン 02へ

の再分散現象が生じているものの,地域間輸送費用の

変化に伴い,地域間で集積パターンが変化するという

点は同じである.

これらの実験結果に対し,図–7 b), c), d) では,地

域間輸送費用の低下に伴う地域内集積や,地域内輸送

費用の低下に伴う地域間集積が生じる.これは,空間

割引行列の固有値 fk が,両空間スケールの交易自由度

r1, r2を変数に持つためである.この結果より,地域間・

地域内の交易活動は,各空間スケールでの産業集積現

象に対して相互に影響を与えることが確認できる.

次に,本モデルの集積過程で生じる再分散現象につ

いて確認しよう.数値実験では,図–7 b), c), d), e) で

地域間の再分散現象が確認できる.この現象は,5章で

も示したように,地域内の空間的競争が地域間に分散

力としての影響を与えているために生じるものである.

従来の CPモデルで生じる再分散現象は,ある特殊

な条件を導入した場合にのみ生じることが知られてい

る.具体的には,unskilled workerが空間的に分散して

存在することによるグローバルな (空間的なスピルオー

バー効果をもつ) 分散力だけでなく,局所的に作用する

(空間的なスピルオーバー効果のない) ローカルな分散

力 (e.g., 地代,混雑効果) の存在が考慮されているモデ

ルにおいて,再分散現象が生じる.しかし,従来研究

とは異なり,本研究で扱ったモデルには,これらのロー

カルな分散力は全く考慮されていない.その代わりに,

地域内部の空間競争の激化が地域間の分散力として作

用し,再分散現象をもたらしている.これは,ある地

域の内部に,より小さな空間単位 (e.g., 都市) の立地点

を複数考慮することによって,各地域にローカルな分

散力が内生的に発生することを意味している.ただし,

本モデルでは,地域内の再分散現象は生じないことに

注意が必要である11.これは,地域間競争の激化は地域

内分散のみでは回避できないためであり,この結果は

従来の CP モデルと整合的である.以上の分岐特性を

命題としてまとめておこう.

命題 7.1 マルチスケール空間を設定したCPモデルは,

輸送費用の低下に伴う集積パターンの変化について以

下の特性を持つ.

1) 地域内・地域間交易自由度 (r1, r2) の変化は,各空

間スケールでの地域内集積現象・地域間集積現象

に相互に影響を及ぼす.すなわち,地域内交易自

由度 r1の変化に伴う地域間での集積パターンの変

化や,地域間交易自由度 r2の変化に伴う地域内で

の集積パターンの変化が生じうる.

2) 地域内の空間的競争は,地域間の集積現象に対し

分散力として作用する.その結果,地域間では再

分散現象が生じうる.

3) 地域内では,集積した都市の再分散現象は生じず,

最終的には地域内一極集中へと推移する.

本研究で得られた結果は,都市内モデルや 2地域間

のCPモデルのように個別の空間単位を対象とした研究

では得られない新しい結果である.この命題より,様々

な空間スケール上で生じる集積現象を統一的に扱うこ

との重要性が示唆される.

8. おわりに

本研究では,地域間と地域内というスケールの異な

る 2階層の空間構造を持つ多都市 CP モデルを構築し,

各空間スケールに対応する輸送費用の低下に伴って生

じる均衡解の分岐 (集積パターン) を明らかにした.そ

の結果,以下の事実が示された:

1) 地域間輸送費用の低下に伴い,地域内スケールで

の空間的競争が地域間スケールの分散力として働

き,地域間スケールの “再分散” 現象が生じる.

2) 地域間・地域内輸送費用の低下に伴って創発する

地域間・地域内の集積・分散パターンおよびその

進化過程は,単一空間スケールの従来理論では表

現・予測できない多様性に富む.

事実 1) は,単一空間スケールの従来理論では考慮で

きない複数の空間スケール間の相互作用が集積パター

ンに大きく影響することを意味している.一例として,11 既存研究で知られているローカルな分散力 (e.g., 地代) を本研究で扱ったモデルに導入した場合は,当然の事ながら地域内での再分散現象も生じる.

土木学会論文集D3(土木計画学), Vol. 70, No. 1, 113-130, 2014.

126

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リニア新幹線の整備のような地域間交通コストの大幅

な改善を考えよう.従来のNEG分野の知見では,交通

コストの改善により,首都圏への一極集中がされに進

展すると考えられる.しかし,本研究の結果を鑑みれ

ば,必ずしも一極集中を導くとは限らず,分散均衡状

態へと推移する可能性もあり得る.

事実 2) は,現実の空間経済システムにおいて多様な

集積パターンが観察される要因の一つがスケールの異

なる階層的な空間構造にあることを示唆している.いず

れの事実も,単一の空間スケールのみに着目したNEG

理論の予測は必ずしも頑健ではなく,より詳細スケー

ルの空間構造の仮定に依存して変化し得ることを示し

ている.これらの結果は,現実的な産業・人口の集積

現象を解析・予測するためには,複数の空間スケール

を統一的に扱いうる理論のさらなる展開が必要となる

ことを物語っている.

なお,階層数を増加させた場合 (e.g., 国際–地域間–

都市間,あるいは,地域間–都市間–都市内の 3階層) に

ついても,本研究で示した解析と同様のアプローチに

よって,分岐特性 (集積パターンの進展) を明らかにす

ることが可能である.また,本研究で取り扱った枠組

みでの厚生分析も,菅澤ら34)と同様の手順で,実施す

ることができる.紙面の制約から本稿では取り扱うこ

とができなかったものの,これらの理解は複数の空間

スケールを統一的に扱う理論の発展のために不可欠な,

今後の重要な研究課題である.

謝辞: 本論文は,日本学術振興会・科学研究費補助

金 (課題番号 24360202/24760415/25630212)の助成金

を受けた研究の一部である.ここに記し,感謝の意を

表する.

付録 I 巡回行列の定義と基本特性

要素の並び方に以下の規則性がある (第m行は,第

m − 1行の要素の並びを巡回的に 1つずらしたものと

なっている)K ×K 行列:

A ≡

a0 a1 . . . aK−2 aK−1

aK−1 a0 a1 . . . aK−2

......

...

a2 a3 . . . a0 a1

a1 a2 . . . aK−1 a0

(I.1)

は,K次元ベクトル a = [a0, a1, . . . , aK−1]から作られ

る “巡回行列 (circulant matrix)”と呼ばれる.

巡回行列には,よく知られた (様々な分野で頻繁に応

用される) 以下の特性がある:

(1) 任意の K 次元ベクトル a = [a0, a1, . . . , aK−1]か

ら作られる巡回行列Aは,固有ベクトル:

zk ≡ [1, ωk, ω2k, . . . , ω(K−1)k]⊤ (I.2)

ω ≡ exp[i(2π/K)] k = 0, 1, . . . ,K − 1 (I.3)

を持ち,対応する固有値は,

λk =K−1∑l=0

alωkl (I.4)

で与えられる.すなわち,任意の巡回行列 Aは,

DFT行列 Z を用いて,

A = ZΛZ∗ (I.5)

と表現される.ここで,Λ ≡ diag[λ0, λ1, ..., λK−1].

(2) 任意の巡回行列の和・積・逆行列は,再び巡回行

列となる:

1) A ∈ C, B ∈ C ⇒ A+B ∈ C,

2) A ∈ C, B ∈ C ⇒ AB = BA ∈ C,

3) A ∈ C ⇒ A−1 ∈ C.

ここで,C は巡回行列の集合である.

付録 II BCCBの定義と固有値の導出

要素の並び方に以下のような特徴を持つ (行列をブ

ロックに分割した際に,各ブロック行列が巡回行列であ

り,さらに各ブロック行列が巡回行列の順に並ぶ)行列:

B ≡

A0 A1 . . . AK−2 AK−1

AK−1 A0 A1 . . . AK−2

......

...

A2 A3 . . . A0 A1

A1 A2 . . . AK−1 A0

(II.1)

は,BCCB (Block Circulant with Circulant Blocks)と

呼ばれる.ここで,Aiは各々,L× Lの巡回行列であ

る.式 (II.1)は,K×K個の巡回行列からなるBCCB

を表している.BCCBは,次の特性を持つ.

1) BCCBは,次の行列によって対角化される:

Z[K,L] ≡ Z[K] ⊗Z[L]. (II.2)

ここで,Z[K] は K × K の DFT行列であり,次

のように定義される:

Z[K] = [z0,z1, ..., zK−1, ], (II.3)

zi = [ω0, ωi, ..., ω(K−1)i]⊤, (II.4)

ω = exp[i(2π/K)] (II.5)

すなわち,BCCB の特性を持つ行列 B の固有値

λk は,

diag[fk] = ZBZ−1 (II.6)

で与えられ,λkに対応する固有ベクトルはZの第

k列ベクトル zk となる.

2) BCCBの和・積・逆行列は BCCBとなる:

1) D ∈ F, E ∈ F ⇒ D +E ∈ F ,

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2) D ∈ F, E ∈ F ⇒ DE = ED ∈ F ,

3) D ∈ F ⇒ D−1 ∈ F .

ここで,F は BCCBの集合である.

付録 III 補題 4.1の証明

1) 空間割引行列D/dは BCCBであり,BCCBは 2

次元離散 Fourier変換 (DFT) 行列 Z によって対

角化できる.したがって,行列Dの固有ベクトル

は Z の列ベクトルで与えられる.

2) 空間割引行列の各ブロック行列Di は巡回行列で

あるため,固有値 f (i)はZ[2]による相似変換で導

出できる:

Z[2]DiZ−1[2] = diag[f (i)]. (III.1)

さらに,空間割引行列Dは Z = Z[2] ⊗ Z[2] の相

似変換で対角化できる.したがって,Dの固有値

f は次のように与えられる:

diag[f ] =

1∑k=0

diag[z[2],k]⊗ diag[f (i)]. (III.2)

式 (III.2)を計算することで,式 (31)が得られる.

また,行列Dの第 0列ベクトルを dとすれば,

f = Zd⊤ (III.3)

を計算しても同様の結果が得られる.

付録 IV 補題 4.2の証明

1) ∇F (h)が BCCBであることから明らか.

2) 式 (36)で与えられる ∇F (h)に 2次元 DFTによ

る相似変換を施すと,

Z∗∇F (h)Z =− v(h)diag[δ]

+ h(I − diag[δ])diag[e] (IV.1)

が得られる.上式の δ = [1, 0, 0, 0]⊤ は (1/4)E[4]

の固有値,eは第 k 要素が以下のように与えられ

る∇V (h)の固有値である:

ek = h−1(bfk − af2k ). (IV.2)

従って,∇F (h)の固有値 gが式 (37a)で表される.

付録 V 補題 6.1の証明

h10 = [2h, 2h, 0, 0]⊤を式 (23)に代入すると,∇F は

次の式で与えられる:

∇F =

[F (00) F (01)

0 F (11)

], (V.1)

F (0i) ≡ 2h(I − (1/2)E(2))v(0i) − (vi/2)E(2), (V.2)

F (11) ≡ (v − v1). (V.3)

ここで,vi は i = 0であれば v(h10),i = 1であれば

v1(h10)となる変数である.また,v(ij) は式 (24)で示

した∇vの i, jブロック行列であり,∇vを構成する行

列M は次のように与えられる:

M = (2h)−1

[D1/d1 D2/d1

D2/d2 D1/d2

], (V.4)

d1 = 1 + r1, d2 = 2r2. (V.5)

以上の結果から,v(ij) が巡回行列であることが確認で

きる.すなわち,式 (V.1) の各ブロック行列 F (ij) も

巡回行列であることがわかる.したがって,∇F (h10)

は 2× 2の DFT行列 Z[2] を対角ブロックに持つ Z ≡diag[Z[2], Z[2]]による相似変換により,全てのブロック

行列を対角化できる.さらに,(V.1)より,対角化後の行

列は上三角行列であるため,その対角要素が∇F (h10)

の固有値となる.これを計算すると,式 (45)が得られる.

付録 VI 補題 6.2の証明

h01 = [2h, 0, 2h, 0]⊤ を式 (23) に代入すると,

∇#F (h01)は次の式で与えられる:

∇#F =

[F (00) F (01)

0 F (11)

]. (VI.1)

ここで,式 (V.1) と式 (VI.1) を比較すると,パター

ン 01 での組み換え後のダイナミクスの Jacobi 行列

∇#F (h01)は,パターン 10でのダイナミクスの Jacobi

行列 ∇F (h10)と全く同様の構造を持つことがわかる.

すなわち,Z を用いれば,全く同様の手順で固有値を

導出できる.

付録 VII 図-4の作成過程

本節では,図–4の作成方法を説明する.(r1, r2)平面

上での安定均衡状態の領域図である図–4は,分散均衡

状態からの集積進展過程上の分岐点 (break point)を順

に求めることで図示できる.そこで,その具体的な手

順を示しておこう.

ここでは,分散均衡状態 h下で r1 = r2 = 0となる

状況から,輸送費用が低下 (輸送自由度が増加) する状

況を考える.このとき,命題 5.1より,空間割引行列D

の最小固有値が fk = x∗+ = b/aとなる瞬間に分岐が生

じる.ここで (41),(42)より,その break point は次

の通り与えられる:r1 = r∗1 ≡ a− b(1 + 2r2)

a+ bif r1 > r2,

r2 = r∗2 ≡ (a− b)(1 + r1)

2(a+ b)if r1 < r2.

(VII.1)

得られた break pointを (r1, r2)平面上に図示すると,

図–8 a) 中の直線A,Bが得られる; 直線A:r1 = r∗1 は

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ba

ba

!3

ba

*

2: ! xfB

*

31: !! xffA

)(2 ba

ba

!

aba

ba

ba

barD

!"ˆ

ˆ:1

ba

c 021:21 !" rrCc 021:

21 rrC

bb

a

d

c

d

c

f

0:2 gE

bb

e

a

a) 図–4の作成手順 1 b) 図–4の作成手順 2 c) 図–4の作成手順 3

図–8 図–4 の作成手順

集積パターンが 00→ 01と推移する場合の break point;

直線 B:r2 = r∗2 はパターンが 00→ 10と推移する際

の break point.以上より,図中に示す領域 aがパター

ン 00の安定的になる領域であることが分かる.さらに,

直線AまたはBを跨ぐと,各々,集積パターンが 01ま

たは 10へと進展する.

次に,地域間輸送費用 r2が低下し,人口分布がパター

ン 10へと推移した状態を考える.この時,さらなる輸

送費用の低下による人口分布の変化は 2種類考えられ

る.1つは,地域内輸送費用 r1 の低下により,再びパ

ターン 00が安定となる場合である.これは,図–3に示

すように,パターン 00におけるダイナミクスの最小固

有値が再び正の値をとることに起因している.この符

号変化の境界は f2 = x∗−を満たす地点であり,式 (43a)

より,次式で表される:1 + r1 − 2r21 + r1 + 2r2

= 0. (VII.2)

これを (r1, r2)平面上に図示すると直線Cが得られ,図

中に示す領域 cはパターン 00が安定的になる領域とな

る.なお,領域 c から直線 Aを跨ぐ場合,上述した議

論から,パターン 01が創発することも分かる.

もう 1つは,地域間輸送費用 r2の低下によって生じ

る,パターン 10から 11への分岐である.この分岐現象

は,先に述べたパターン 00からの分岐と全く同様のメ

カニズムによって生じる.このときの break pointは,

式 (45)より,f (1)1 = x∗+を満たす点となる.具体的にこ

れを計算すれば,式 (49)が得られる.この式を図–8 b)

中に示すことで直線 Dが得られる.以上より,パター

ン 10が安定となる領域は図中に示す領域 bとなる.

最後に,パターン 01からの分岐について考える.こ

の時,輸送費用の低下による分岐は,パターン 11方向

に発生する.この時の break pointは式 (52)の値が 0

となる点である.これを図示すると,図–8 c) 中の曲

線 Eが得られる.したがって,曲線 Eによって分断さ

れる領域 d,eではパターン 01が安定的となることがわ

かる.また,パターン 11が創発してからは,輸送費用

の低下による分岐は発生しないため,領域 fでは常にパ

ターン 11が安定的となる.

参考文献1) Akamatsu, T., Takayama, Y. and Ikeda, K.: Spa-

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23) Fujita, M., Krugman, P. R. and Venables, A. J.: TheSpatial Economy: Cities, Regions and InternationalTrade, MIT Press, 1999.

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25) Sandholm, W. H.: Population Games and Evolution-ary Dynamics, MIT Press, 2010.

26) 高山雄貴, 赤松隆: 2 次元集積経済モデルによる Losch型集積パターンの創発: 三角形格子状の都市モデルにおける理論的解析, 土木計画学研究・論文集, Vol. 27, pp.109–120, 2010.

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30) 藤井文夫, 大崎純, 池田清宏: 構造と材料の分岐力学, コロナ社, 2005.

31) Ikeda, K. and Murota, K.: Imperfect Bifurcation inStructures and Materials, Springer, 2010.

32) Ikeda, K., Murota, K. and Akamatsu, T.: Self-organization of Losch’s hexagons in economic agglom-eration for core-periphery models, International Jour-nal of Bifurcation and Chaos, Vol. 22, No. 08, 2012.

33) Ikeda, K. and Murota, K.: Bifurcation Theory forHexagonal Agglomeration in Economic Geography ,Springer, 2014.

34) 菅澤晶子, 赤松隆, 高山雄貴: 多都市 Core-Peripheryモデルの経済厚生分析, 土木計画学研究・論文集, Vol. 26,No. 2, pp. 393–402, 2009.

(2013. 8. 19 受付)

AGGLOMERATION PATTERNS OF A CORE-PERIPHERY MODEL WITH

MULTI-SCALE SPATIAL STRUCTURE

Yuki TAKAYAMA, Takashi AKAMATSU and Naohiro KOSAKA

Interaction of economic activities between different spatial scales (e.g., Country-Region-City) has neverbeen examined in traditional location theory (e.g., New Economic Geography: NEG). In this paper, wedevelop the Core-Periphery model with hierarchical (i.e., multi-scale) spatial structure which introduces theinteraction between inter-regional and intra-regional transportation costs explicitly, and analyze bifurcationphenomena of the equilibrium by the approach proposed by Akamatsu et al.1),2). Results of our analysisreveal that combinations of inter-regional and intra-regional transport costs can yield a wide variety ofagglomeration (dispersion) patterns depending on the transportation parameter values. In particular, oneof the most interesting transitions of agglomeration patterns is inter-regional re-dispersion caused by intra-regional competition. This findings suggest that traditional theory disregarding spatial scales should bereconsidered.

土木学会論文集D3(土木計画学), Vol. 70, No. 1, 113-130, 2014.

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