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取材を終えて 株式会社 Cutting−Art 代表取締役社長 内藤 亮 〒566–0062 大阪府摂津市鳥飼上3-14-13 TEL. 072-668-2676 FAX. 072-668-2677 資本金/5,000千円 従業員/4名 主な取引先いすゞ自動車販売近畿(株)、大江戸温泉物語箕面観光ホテル、 大阪日野自動車(株)、京都日野(株)、近畿三菱ふそうトラック・ バス(株)、(株)トランテックス、日本フルハーフ(株)、兵庫 日産自動車(株)、SGモータース(株)、UDトラックス(株) 主な保有設備ボディープリンタ、大判ラミネーター、大判イン クジェットプリンタ、カッティングプロッターなど 主力製品/従来からのシールや、新たに導入した特殊インクによる インクジェット方式を使った車両への広告等の施工 08 株式会社 Cutting−Art ステッカーに代わり インクジェットで車体にデザイン ӦۀΒ·ͰҰ؏ 「Cutting−Art」は平成19年に創業し、 これまで主にトラック、バスや商用車などの車両への 広告および看板などへカッティングステッカー施工を 行っている。 同社の強みは複雑な形状や局面にも施工できる 技術とノウハウを持っていることで、営業活動から デザイン提案、データ制作、見積もり、製作、施工 までを自社にてすべて一貫して行えるところにある。 དྷͷΒͳͲʹ しかし、これまで一般的だったステッカーでは施工 時に作業者の技術に基づく品質のばらつきが避けら れず、施工時の軽微なミスが経年劣化以上の大きな クレームを呼ぶことがあった。加えて、ステッカーの 施工材質は塩化ビニールで、トラックの車体などの 凹凸面にはきれいに貼れないこと、紫外線による 硬化や色あせが避けられないなどの問題もあった。 事業内容 ΠϯΫδΣοτͰۀ࡞ػցԽ 補助事業において、従来のステッカーの施工に 代わる、特殊インクを利用したインクジェット方式の 導入を図った。そして、これまで作業者の人的要素 が大きかった作業工程を機械化し、ヒューマンエラー の軽減、作業者の技量不足による施工に対する クレームの低減を目指した。また作業者の技量に 頼ることが少なくなった分、雇用の確保と人材育成も 容易に行えるなどのメリットも考えられた。 ͷదਖ਼ԽͳͲ४උ (株)エルエーシーのオートボディプリンタを平成 27年11月に入荷し、速やかに設備の据え付け、 検査、調整を行った。そして、装置の基本的な操作 方法や制御調整方法、メンテナンス方法などの研修 の後、具体的な部材別・形状別の施工条件の適正化 と、施工条件のシミュレーション、装置の適正設定 条件の確立を行い、平成28年6月から営業を始めた。 補助事業 ఏҊӦۀՄʹ この新技術の導入により大手企業への提案営業 が可能になった。施工単価も下がったほか、他分野 への進出の検討もできるようになった。そして、 作業者の技量の差が出にくくなるとともに、今後は 品質の向上とクレームの減少につながることが 期待されている。 ਓ材อ༰қʹ 従来のシールは経年劣化したものをはがす際、 トラックやバスなどの車体を傷めるトラブルが多々 起こっていた。このため車両売却時の下取り査定も、 シールが貼られている車は通常の車と比べて査定 が安くなる場合があり、利用者にとってはコスト高 につながっていた。新システムは貼り替え施工に 特殊な溶剤を使うことで、車体を傷めることなく、 作業そのものの簡便化と作業時間の短縮につな がった。 また、熟練の作業者しかできなかった作業が、 少しの習熟度で施工可能となったため、人材確保 も容易で、現在同社でも社長以外に20代の若手 3名が働いている。当面はさらに営業と現場作業で 2名ほどの採用を考えている。 具体的成果 طސ٬を ߞ新技術の導入は、同社の対応範囲を大幅に広げて いる。具体的には、大手トラック販売ディーラーに 対してこの技術をアピールすることで、今まで以上 の信頼を獲得することが期待でき、売り上げ増を 目指している。 また、これまで施工実績の少なかった業界、例 えば乗用車販売ディーラーおよびカスタムショップ、 移動広告を主とするバスや電車などの公共交通 機関、屋外広告物にも多角的な営業活動を行い、 顧客の多様化と経営の安定化を図ることができる。 ҟۀछʹて ۃతͳӦ׆ۀಈをల։ 「痛車(いたしゃ)」と呼ばれるアニメ等のキャラク ターをプリントした車両を街中で時折見かけるが、 こうした需要にも対応できそうだ。また、車以外に もその応用はさまざまな分野で可能だ。靴、コン クリートブロック、シャッター、楽器など、これ まで想像できなかったものにまで対応できる。 同社では展示会などに出展を予定するなど異業種 に向けても積極的な営業活動を行っていくことに している。 今後の戦略 いずれもトラックの施工例 導入したオートボディプリンタ 作業場とバスの施工例 དྷのज़ʹऔΘΔもΕͳ৽ज़ݱΕͱɺͲରԠΔ ͰۀاのઌߦӈΕΔɻΘもΔΒͳ ͳಀΕΒΕͳのৗɻ౻ΕΛりӽɻ·༻తʹ ڧ໘もΔɺҟۀछͱのίϥϘϨʔγϣϯͳͲɺԿ ΕҰʹؾٴΔՄもߟΒΕΔɻτϥοΫのମΛҬの׆ ԽʹもͼくΑͳΞΠσΞもߟΒΕりɺޙࠓのಈΕΔɻ ୈͰҰʹؾٴ http://www.cutting-art.co.jp/ この新しい技術を始めて目にしたとき、従来 の技術に対して言いようのない危機感に 襲われました。実際には従来のシール施工 と両立する形で市場開拓できるのではない かと考えており、その可能性に挑戦してい ます。 新しい技術の可能性に挑戦 代表取締役社長 内藤 亮 短納期 企画力 小ロット OK 量産 OK 試作 OK 連携力 平成26・27年度ものづくり補助金成果事例集 平成26・27年度ものづくり補助金成果事例集 21 20

Cutting−Art...「Cutting−Art」は平成19年に創業し、 これまで主にトラック、バスや商用車などの車両への 広告および看板などへカッティングステッカー施工を

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Page 1: Cutting−Art...「Cutting−Art」は平成19年に創業し、 これまで主にトラック、バスや商用車などの車両への 広告および看板などへカッティングステッカー施工を

取材を終えて

株式会社 Cutting−Art代表取締役社長 内藤 亮〒566–0062 大阪府摂津市鳥飼上3-14-13TEL. 072-668-2676  FAX. 072-668-2677資本金/5,000千円 従業員/4名主な取引先/いすゞ自動車販売近畿(株)、大江戸温泉物語箕面観光ホテル、

大阪日野自動車(株)、京都日野(株)、近畿三菱ふそうトラック・バス(株)、(株)トランテックス、日本フルハーフ(株)、兵庫日産自動車(株)、SGモータース(株)、UDトラックス(株)

主な保有設備/ボディープリンタ、大判ラミネーター、大判インクジェットプリンタ、カッティングプロッターなど

主力製品/従来からのシールや、新たに導入した特殊インクによるインクジェット方式を使った車両への広告等の施工

08株式会社 Cutting−Art

ステッカーに代わりインクジェットで車体にデザイン

営業から施工まで一貫「Cutting−Art」は平成19年に創業し、

これまで主にトラック、バスや商用車などの車両への広告および看板などへカッティングステッカー施工を行っている。

同社の強みは複雑な形状や局面にも施工できる技術とノウハウを持っていることで、営業活動からデザイン提案、データ制作、見積もり、製作、施工までを自社にてすべて一貫して行えるところにある。

従来は品質のばらつきなどに問題しかし、これまで一般的だったステッカーでは施工

時に作業者の技術に基づく品質のばらつきが避けられず、施工時の軽微なミスが経年劣化以上の大きなクレームを呼ぶことがあった。加えて、ステッカーの施工材質は塩化ビニールで、トラックの車体などの凹凸面にはきれいに貼れないこと、紫外線による硬化や色あせが避けられないなどの問題もあった。

事業内容

インクジェット方式で作業を機械化補助事業において、従来のステッカーの施工に

代わる、特殊インクを利用したインクジェット方式の導入を図った。そして、これまで作業者の人的要素が大きかった作業工程を機械化し、ヒューマンエラーの軽減、作業者の技量不足による施工に対するクレームの低減を目指した。また作業者の技量に頼ることが少なくなった分、雇用の確保と人材育成も容易に行えるなどのメリットも考えられた。

施工条件の適正化など準備(株)エルエーシーのオートボディプリンタを平成

27年11月に入荷し、速やかに設備の据え付け、検査、調整を行った。そして、装置の基本的な操作方法や制御調整方法、メンテナンス方法などの研修の後、具体的な部材別・形状別の施工条件の適正化と、施工条件のシミュレーション、装置の適正設定条件の確立を行い、平成28年6月から営業を始めた。

補助事業

提案営業が可能にこの新技術の導入により大手企業への提案営業

が可能になった。施工単価も下がったほか、他分野への進出の検討もできるようになった。そして、作業者の技量の差が出にくくなるとともに、今後は品質の向上とクレームの減少につながることが期待されている。

人材確保も容易に従来のシールは経年劣化したものをはがす際、

トラックやバスなどの車体を傷めるトラブルが多々起こっていた。このため車両売却時の下取り査定も、シールが貼られている車は通常の車と比べて査定が安くなる場合があり、利用者にとってはコスト高につながっていた。新システムは貼り替え施工に特殊な溶剤を使うことで、車体を傷めることなく、作業そのものの簡便化と作業時間の短縮につながった。

また、熟練の作業者しかできなかった作業が、少しの習熟度で施工可能となったため、人材確保も容易で、現在同社でも社長以外に20代の若手3名が働いている。当面はさらに営業と現場作業で2名ほどの採用を考えている。

具体的成果

既存顧客を深耕新技術の導入は、同社の対応範囲を大幅に広げて

いる。具体的には、大手トラック販売ディーラーに対してこの技術をアピールすることで、今まで以上の信頼を獲得することが期待でき、売り上げ増を目指している。

また、これまで施工実績の少なかった業界、例えば乗用車販売ディーラーおよびカスタムショップ、移動広告を主とするバスや電車などの公共交通機関、屋外広告物にも多角的な営業活動を行い、顧客の多様化と経営の安定化を図ることができる。

異業種に向けても積極的な営業活動を展開へ「痛車(いたしゃ)」と呼ばれるアニメ等のキャラク

ターをプリントした車両を街中で時折見かけるが、こうした需要にも対応できそうだ。また、車以外にもその応用はさまざまな分野で可能だ。靴、コンクリートブロック、シャッター、楽器など、これまで想像できなかったものにまで対応できる。同社では展示会などに出展を予定するなど異業種に向けても積極的な営業活動を行っていくことにしている。

今後の戦略

いずれもトラックの施工例導入したオートボディプリンタ

作業場とバスの施工例

従来の技術に取って代わるかもしれない新技術が現れたとき、どう対応するかで企業の先行きは左右される。しかしわかってはいても今ある制約からなかなか逃れられないのが常だ。内藤亮社長はそれを乗り越えた。まだ用途的に嗜好性が強い面もあるが、異業種とのコラボレーションなど、何かきっかけがあれば一気に普及する可能性も考えられる。トラックの車体を使って地域の活性化にも結び付くようなアイデアも考えられており、今後の動きが注目される。

きっかけ次第で一気に普及も

http://www.cutting-art.co.jp/

この新しい技術を始めて目にしたとき、従来の技術に対して言いようのない危機感に襲われました。実際には従来のシール施工と両立する形で市場開拓できるのではないかと考えており、その可能性に挑戦しています。

新しい技術の可能性に挑戦

代表取締役社長 内藤 亮

短納期 企画力 小ロットOK

量産OK

試作OK 連携力

平成26・27年度ものづくり補助金成果事例集平成26・27年度ものづくり補助金成果事例集

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