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DIP パッケージマイコン 78K0S/KA1P CX NEC エレクトロニクス 8 ビットマイコンのあゆみ 参考資料 1.70 ~ 80 年代 マイクロプロセッサの黎明期 インテル社が 1971 年に 4 ビットマイクロプロセッサ 4004 を発表しました。それまではコンピュータの基本的構 成(ALU やレジスタなど)を別素子として基板に配置していたのを、1つのシリコンチップ上に作りこんだ世界初 1 チップのマイクロプロセッサでした。その後 8 ビットマイクロプロセッサ(80081972 年)、 80801974 年))、 16 ビットマイクロプロセッサ(80861978 年))と続けて発表しました。 インテル社に対抗する形で、モトローラ社も 1974 年に 8 ビット MPUMicro Processing Unit)の MC6800 を発表しました。モ トローラ社の MPU はインテルよりも後発だったためシェアを奪 うことはできませんでしたが、使いやすさで一定の評価を得てい ました。その後 1979 年に 16 ビット MPU MC68000 を発表しイ ンテル社の 8086 と双璧をなすようになりました。 ザイログ社も 1976 年に 8 ビットマイクロプロセッサ Z80 を、 1979 年に 16 ビットの Z8000 を発表します。Z80 はインテル社の 8080 プロセッサをより使いやすくしたもので、その後 8 ビットマ イクロプロセッサの標準となるほど長く使われました。 16 ビットマイクロプロセッサは、各社が激しい競争を繰り広げ ますが、事実上インテル社とモトローラ社の 2 社の一騎打ちとな りました。 (1)日本国内メーカーの動向 アメリカでのマイクロプロセッサ市場の拡がりを受け、日本国内の各メーカーによるマイクロプロセッサの開発も さかんに行われました。 他に先駆けて発売されたインテル社、モトローラ社、ザイログ社のマイクロプロセッサはすでに広く使われており、 市場に出回ったものと同じ仕様のものが求められるようになりました。そこで、後発メーカーはインテル社やザイロ グ社のマイクロプロセッサのセカンドソース品か、あるいは互換性の高い製品を発売するようになります。 当時は半導体製造の歩留まり(不良品でない製品の発生率)が良くありませんでした。製造できる設備の整った工 場も少なく、災害や事故が起きると供給が止まってしまう可能性もありました。そこで顧客への安定供給のために他 社とセカンドソース契約を結び、セカンドソース品の製造、販売を認めていたのです。また知的財産の重要性が今ほ ど認識されておらず、他社が互換性のあるプロセッサを製造、販売することはあまり問題とされていませんでした。 大きな流れとしては、インテル社のセカンドソース品を NEC(正式名は日本電気株式会社、2002 年に半導体事業 NEC エレクトロニクス社として分社する)などが、モトローラ社のセカンドソース品を日立製作所、富士通株式 会社などが、ザイログ社のセカンドソース品をシャープ株式会社などが発売するようになりました。 80 年代中ごろになると製造技術の進歩もあり、インテル社は他社によるセカンドソースあるいは互換性のあるプ ロセッサの製造、販売を禁止する方向に転換しました。 世界の動向 1968年 インテル社設立(元フェアチャイルドセ ミコンダクター社員が設立した) 1969年 AMD 社(Advanced Micro Devices)設 立(元フェアチャイルドセミコンダク ター社員が設立した) 1971年 インテル社が世界初の 4 ビット マイク ロプロセッサ 4004 を発表 1972年 インテル社が世界初の 8 ビット マイク ロプロセッサ 8008 を発表 1974年 ザイログ社設立(元インテル社社員が設 立した) モトローラ社初の MPU MC6800 を発表 1976年 ザイログ社初の 8 ビット マイクロプロ セッサ Z80 を発表 1978年 インテル社が16ビットマイクロプロ セッサ 8086 を発表 1979年 モトローラ社 16 ビット MPU MC68000 を発表 ザイログ社が 16 ビット マイクロプロ セッサ Z8000 シリーズを発表

DIPパッケージマイコン 78K0S/KA1P CX NECエレク …...DIPパッケージマイコン 78K0S/KA1P CX NECエレクトロニクス 8ビットマイコンのあゆみ 参考資料

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DIP パッケージマイコン 78K0S/KA1P CX

NEC エレクトロニクス 8ビットマイコンのあゆみ

参考資料

1.70 ~ 80 年代 マイクロプロセッサの黎明期 インテル社が 1971年に 4ビットマイクロプロセッサ 4004を発表しました。それまではコンピュータの基本的構成(ALUやレジスタなど)を別素子として基板に配置していたのを、1つのシリコンチップ上に作りこんだ世界初の 1チップのマイクロプロセッサでした。その後 8ビットマイクロプロセッサ(8008(1972年)、8080(1974年))、16ビットマイクロプロセッサ(8086(1978年))と続けて発表しました。 インテル社に対抗する形で、モトローラ社も 1974年に 8ビットMPU(Micro Processing Unit)のMC6800を発表しました。モトローラ社のMPUはインテルよりも後発だったためシェアを奪うことはできませんでしたが、使いやすさで一定の評価を得ていました。その後 1979年に 16ビットMPU MC68000を発表しインテル社の 8086と双璧をなすようになりました。 ザイログ社も 1976年に 8ビットマイクロプロセッサ Z80を、1979年に 16ビットの Z8000を発表します。Z80はインテル社の8080プロセッサをより使いやすくしたもので、その後 8ビットマイクロプロセッサの標準となるほど長く使われました。 16ビットマイクロプロセッサは、各社が激しい競争を繰り広げますが、事実上インテル社とモトローラ社の 2社の一騎打ちとなりました。

(1)日本国内メーカーの動向 アメリカでのマイクロプロセッサ市場の拡がりを受け、日本国内の各メーカーによるマイクロプロセッサの開発もさかんに行われました。 他に先駆けて発売されたインテル社、モトローラ社、ザイログ社のマイクロプロセッサはすでに広く使われており、市場に出回ったものと同じ仕様のものが求められるようになりました。そこで、後発メーカーはインテル社やザイログ社のマイクロプロセッサのセカンドソース品か、あるいは互換性の高い製品を発売するようになります。 当時は半導体製造の歩留まり(不良品でない製品の発生率)が良くありませんでした。製造できる設備の整った工場も少なく、災害や事故が起きると供給が止まってしまう可能性もありました。そこで顧客への安定供給のために他社とセカンドソース契約を結び、セカンドソース品の製造、販売を認めていたのです。また知的財産の重要性が今ほど認識されておらず、他社が互換性のあるプロセッサを製造、販売することはあまり問題とされていませんでした。 大きな流れとしては、インテル社のセカンドソース品を NEC(正式名は日本電気株式会社、2002年に半導体事業を NECエレクトロニクス社として分社する)などが、モトローラ社のセカンドソース品を日立製作所、富士通株式会社などが、ザイログ社のセカンドソース品をシャープ株式会社などが発売するようになりました。 80年代中ごろになると製造技術の進歩もあり、インテル社は他社によるセカンドソースあるいは互換性のあるプロセッサの製造、販売を禁止する方向に転換しました。

世界の動向

1968年 インテル社設立(元フェアチャイルドセミコンダクター社員が設立した)

1969年AMD 社(Advanced Micro Devices)設立(元フェアチャイルドセミコンダクター社員が設立した)

1971年 インテル社が世界初の 4 ビット マイクロプロセッサ 4004 を発表

1972年 インテル社が世界初の 8 ビット マイクロプロセッサ 8008 を発表

1974年ザイログ社設立(元インテル社社員が設立した)モトローラ社初の MPU MC6800 を発表

1976年 ザイログ社初の 8 ビット マイクロプロセッサ Z80 を発表

1978年 インテル社が 16 ビットマイクロプロセッサ 8086 を発表

1979年モトローラ社 16 ビット MPU MC68000を発表ザイログ社が 16 ビット マイクロプロセッサ Z8000 シリーズを発表

(2)NEC による日本初のマイクロプロセッサ NEC(2002年に半導体事業を NECエレクトロニクス社として分社する)は 1973年に日本初の 4ビットマイクロプロセッサ µCOM4を発売したのを始めに、1974年に µCOM8(8ビット)、µCOM16(16ビット)シリーズを発売しました。 当初は、オリジナルのものや、既に発売されていたインテル社やザイログ社のマイクロプロセッサに互換性がありながらも独自の特長を持たせたものを発売しましたが、市場の要求から完全互換のセカンドソース品を発売するようになります(当時の逸話ですが、オリジナルのマイクロプロセッサが持っていたバグも忠実にコピーしたほどです)。

NEC製マイクロプロセッサ/マイクロコンピュータの系譜(1973年~84年)

µCOM-41µCOM-4

µCOM-42µCOM-47

µCOM-43 ~ 46µCOM-43N(N-ch 型 MOS)

µCOM-43C

(CMOS)

µPD75xx シリーズ

75Xシリーズ

75XL シリーズ

インテル社のセカンドソース

オリジナル

1973 年~

’80 年代前半まで主力

µCOM-8(µPD753)

µCOM-80(µPD8080A)µCOM-80F(µPD8080AF)

µCOM-82(µPD780)

µCOM-87 シリーズ

µCOM-87LCシリーズ

µPD70008

µCOM-85(µPD8085)

µCOM-84(µPD8048)µCOM-84C(µPD80C48H)

µCOM-87AD

µPD78C11

1974 年

’75 年

’78 年1978 年

’80 年

’79 年

インテル社のセカンドソース

µCOM-16(µPD755,6)

※ただし 1チップではなく µPD755(ALU、レジスタ)、 µPD756(コントローラ)の 2チップで構成されていた

µCOM-1600(µPD768)

µCOM-86(µPD8086)

16 ビット VシリーズV20,V30V40,V50,V25V33,V33A,V55

1974 年

’78 年

1980 年

1984 年~

1978 年~

PCなどプリンタ ,FAXなど制御用

ザイログ社のセカンドソース

オリジナル

オリジナル

オリジナル

LCD、FIP(蛍光表示管)等の制御用(全てC-MOS化)

電子レジスタやPOSシステムなど主に計算用

4bit

8bit 16bitµPD780DZilog 社 Z80の互換品

µUPD780C-1Zilog 社 Z80の互換品

参考資料NEC エレクトロニクス 8 ビットマイコンのあゆみ

µPD8085AIntel 社 8085Aの互換品

■マイクロプロセッサ、CPU、マイコン…マイクロプロセッサ: 集積回路(LSI)技術を用いて実現したプロセッサ(演算処理装置)

をさします。同様の表現がモトローラのMPU(マイクロプロセッシン

グユニット)です。

CPU(中央処理装置):コンピュータの中心になる演算処理装置ということで、機能からの呼

び名といえます。

これらはコンピュータのキーになる部品ではありますが、これだけではコンピュータにはなりま

せん。コンピュータにするためにはプログラムやデータを格納するためのメモリや、外部とデータ

をやり取りするためのI/Oポートと組み合わせる必要があります。

これらがそろって初めてコンピュータといえますが、特にCPUやMPUを中心にして構成され

たものをマイクロコンピュータと呼びます。これらが1個のチップに集積されたものをシングル

チップ・マイコン、ワンチップ・マイコンと呼びます。これは日本独自の呼び方です。日本では

TK-80(先日情報処理学会で情報処理技術遺産に認定)に始まるホビー分野では「自分の」の意

味もかけてマイコン(マイ・コンピュータ)と呼んでいました。

世界的にみるとMCU(マイクロ・コントロール・ユニット)が一般的です。

PickUpPickUp

2.80 年代以降の NEC 8 ビットオリジナルマイコンの歩み(1)初のオリジナル 8 ビットマイコンシリーズ µCOM-87 ファミリ 1978年に NECは、8ビットでは初めてのオリジナルアーキテクチャによる µCOM-83を開発しました。当時としては画期的な乗除算命令をもったものでしたが、その分チップサイズが大きくなり過ぎ、販売するにまではいたりませんでした。 翌々年の 1980年に µCOM-87(ミューコム ハチナナ)ファミリをリリースします。この µCOM-87ファミリはC-MOS版 となる µCOM-87LCシリーズ、A/D変換器を追加した µCOM-87ADと展開されます。当時は A/D変換器の内蔵は大きなインパクトでした。最後にリリースした A/D変換器内蔵の C-MOS版 UPD78C11は世の中に広く受け入れられ、この後に µCOM-78Kファミリがリリースされた後も永く使い続けられました。 内蔵された ROMは、大量生産に適したマスク ROM、1度だけ書き込める少量生産に適したワンタイム PROM、再書込み可能な評価に適した UV-EPROMがありました。

セカンドソースからオリジナルマイコンµCOM-87ファミリまで

µCOM-8(µPD753)

µCOM-80(µPD8080A)µCOM-80F(µPD8080AF)

µCOM-82(µPD780)

µCOM-87 シリーズ

µCOM-87LCシリーズ

µPD70008

µCOM-85(µPD8085)

µCOM-83(µPD767) ★販売されなかった

µCOM-84(µPD8048)

µCOM-84C(µPD80C48H)

µCOM-87AD

µPD78C11

インテル 8080 とピンコンパチブル、80F で完全に互換になった

ザイログZ80、Z80Aのコンパチブル

インテル 8048 のコンパチブル

C-MOS化(省電力、高速化)

インテル 8085 のコンパチブル

オリジナル

µCOM-87 の C-MOS化

µCOM-87 の AD機能追加

µCOM-87ADの C-MOS化

インテル 8080 とソフトウェア互換(端子数、配置は異なる)

1974 年

1975 年

1978 年

1980 年

1978 年

1979 年

1980 年

1978 年

C-MOS化(省電力、高速化)

インテル社のセカンドソース

オリジナルマイコンシリーズ

ザイログ社のセカンドソース

ROM、RAM、I/O外付け

ROM、RAM、I/Oを内蔵したワンチップ

■C-MOS化C-MOSとは、ComplementaryMetalOxideSemiconductor の略で、P型(Positive)とN

型(Negative)のMOS-FET(電解効果トランジスタ)を使うことからComplementary(組み合

わせることで補完する)が付けられています。

技術の変革としては、P型MOS→N型MOS→C-MOSと、より高速に、より低消費電力にという

要求に応えるべく移行していきました。

C-MOS ICはP型MOS、N型MOSのICと比べると製造が複雑でコストがかかるため、移行期は

初めにN型MOS版のICをリリースして、需要の多い品種をC-MOS化していました。

PickUpPickUp

参考資料NEC エレクトロニクス 8 ビットマイコンのあゆみ

UPD78C11 ブロック図(データシート抜粋)

■ 特殊機能レジスタのマッピング 1このシリーズでは、I/Oポートなどの周辺機能のレジスタ(SFR:特殊機能レジスタ)がメ

モリ空間(あるいはI/O空間)にマッピングされておらず、アドレスを持っていません。CPU

内部の汎用レジスタと同じように、固有のアドレス線が命令を実行する制御回路から配線され

ていることが考えられます。

µPD78C11のレジスタ説明図の一例(データシート抜粋)

拡張機能のレジスタ図にアドレスの表記がありません

PickUpPickUp

■ 特殊機能レジスタのマッピング 2データを転送する「MOV」命令の機械語をみると、SFRにアクセスする場合はアドレスで

はなく、個々に割り当てられたコードで指定していることがわかります。

メモリ(あるいはI/O)空間にマッピングしない方式は、アドレッシングという意味では

CPU内部の汎用レジスタとほぼ同格になりますので、一部の命令の実行速度が速くなります

が、マッピングされている場合に比べてCPU内部の配線が多く回路が大きくなると予想され

ます。

次のµCOM-78Kファミリでは、SFRはメモリ空間上にマッピングされる方式となりまし

た。

µPD78C11のニーモニック命令表の一例(データシート抜粋)

PickUpPickUp

参考資料NEC エレクトロニクス 8 ビットマイコンのあゆみ

(2)マイクロプログラム方式の高機能 C-MOS マイコンシリーズ 78K ファミリ 1986年にこれまでのシリーズを刷新した、78Kファミリがリリースされます。78Kファミリは主にサーボ制御用の 78K/1、汎用マイコンの 78K/2シリーズ、16ビットマイコンの 78K/3シリーズ(後に 78K/6、78K/4と展開しました)に分かれていました。マイクロプログラムを内蔵した高機能なマイコンで、全品種 C-MOSの ICで発売した初めてのシリーズでした。

µPD78112

µPD7813x

µPD7814x

78K/1 シリーズ(専用サーポ)

µPD7821x

µPD7824x

µPD7822x

µPD7823x

78K/2 シリーズ(汎用)

µPD7831x

µPD7832x

µPD7833x

µPD7835x

78K/3 シリーズ(高機能版)

8bit16bit

78K ファミリ

※ シリーズ名は 78K/Ⅰ、78K/Ⅱとギリシャ数字で表記されている場合もあります。 また、その後 78K1、78K2 とスラッシュが無い表記になりました。

■ マイクロプログラム 方式機械語命令をCPU内部のマイクロプログラムで解釈し実行する方法を、マイクロプログ

ラム方式といいます。機械語命令をデコードして制御回路から各レジスタやALUに制御信

号を発生する代わりに、制御信号を表すコード(マイクロプログラムのコード)を専用の

ROMに保存しておき、制御信号を発生させます。

このころは、ひとつの命令でさまざまな処理を実行できるようにしたり、複雑なアド

レッシングモードに対応したりすることが競われていました。マイクロプログラム方式

は、限られたチップサイズの中でこれらの要求に応えるべく考えられた方式です。

その後RISC(Reduced InstructionSetComputer:命令を簡略化することでパイプ

ライン処理の効率を高める方法)などメモリアクセスを含めた命令実行の高速化が考え出

されたり、メモリの性能が向上したりして、この方法はあまり使われなくなりました。

命令セットの仕様変更やバグの修正、異なる命令セットを持つCPUのプログラムのエ

ミュレーションなどを、ハードウェア(ワイヤードロジック)で実現した場合より容易で

あることも特長です。

PickUpPickUp

■ 複雑な動作をする命令ビット操作命令は1つの命令で指定したレジスタのビット操作をする命令です。ストリ

ング命令は1つの命令でブロック転送を行います。このように少ないバイト数の命令で複

雑な動作を行うのがマイクロプログラム方式の特長です。

次の78K0、78K0SマイコンではCPUがマイクロプログラム方式ではなくなったた

め、ビット操作命令は違う方式で実装され、ストリング命令などはなくなりました。

µPD78112 (8ビットマイコン)のビット操作命令(データシート抜粋)

CPU内部のレジスタなどの記憶領域は8ビット幅なので、ビット操作は、他ビットのマスクなど数ステップが必要になります

µPD78312 (16ビットマイコン)のストリング命令(データシート抜粋)

Cレジスタに設定した回数だけ、DEレジスタで表すアドレスから順にAレジスタの内容を格納してゆきます

PickUpPickUp

参考資料NEC エレクトロニクス 8 ビットマイコンのあゆみ

■ マクロサービスマクロサービスとは、自動的にメモリ転送をCPUに行わせる機能です。この機能も次の

78K/0シリーズへは継承されませんでした。

µPD78312、78310のマクロ・サービス(データシート抜粋)

PickUpPickUp

�0

(3)マイコン市場の拡張に伴い、シンプルで低価格な 78K/0 シリーズをリリース 1990年代に入り半導体製造技術の進歩による歩留まりの改善や、設計開発のスピード化が進むと、マイコンの価格競争はさらに激しくなりました。また、これまでマイコンが組み込まれる応用製品はプリンタや FAXなど限られたものでしたが、マイコンの認知度が上がるにつれて家電をはじめ様々な機器に組み込まれるようになり、機能を絞り込んだ低価格なマイコンが求められるようになりました。 1995年に、さらにシンプルな回路構成で低価格を実現した 78Kファミリのシリーズとして、 これまでの 78K/1~78K/3シリーズのコアを刷新した「78K/0」シリーズ(その後スラッシュ(/)がとれて「78K0」の表記になりました)がリリースされました。このシリーズでは、78Kファミリの基本的なアーキテクチャは踏襲しつつ、マイクロプログラム方式や、マクロサービスなど一部の機能はなくなりました。なお、型番が µPD7800xxのようになったころからフラッシュメモリ内蔵品が登場し始めます。このころのフラッシュメモリ内蔵品は評価用のイメージが強く、マスク ROM品にあったマスクオプションは持っておらず、そのまま製品に組み込まれることはありませんでした。 汎用的な制御一般用途の他、特定用途として FIP®(蛍光表示管)駆動用、LCD駆動用、分野対応(ASSP)、メーター用と展開されました。

78K0 シリーズ

制御用 µPD7801x ~ 5x、7x、8x µPD78001x ~ 3x、5x ~ 7x 

FIP®駆動用 µPD7804x µPD7802xx

LCD駆動用 µPD7806x µPD7803xx

分野対応(ASSP) µPD7809x µPD7808xx µPD7809xx

メーター用 µPD780958 

8bit

78K ファミリ

……

※ シリーズ名は 78K/0 とスラッシュがある表記もあります。

1995 年~

��

参考資料NEC エレクトロニクス 8 ビットマイコンのあゆみ

(4)フラッシュマイコンの幕開け 78K0/Kx1+、78K0/Kx2 シリーズをリリース 2002年に、製品に組み込まれることを意識してつくられたフラッシュメモリを内蔵した「78K0/Kx1」シリーズがリリースされました。これまでのフラッシュメモリ内蔵品と違い、マスク ROM品が持っていたマスクオプションの機能に対応した品種をそろえることで、製品への組み込みを可能にしました(後の製品で、このマスクオプションの機能はオプションバイトで置き換えられています)。ただし、このシリーズのフラッシュメモリは、マイコン動作のための電源とは別に書き込み用の電源が必要でした。 2004年には単一電源で動作 /書き込みができるフラッシュメモリを内蔵した「78K0/Kx1+」シリーズがリリースされました。このシリーズのフラッシュメモリには、Silicon Strage Technology社の SuperFlash技術が導入されました。 その後すぐに「78K0/Kx2」シリーズと、小ピン版マイコン「78K0S/Kx1+」シリーズがリリースされました。 同じ 2004年にNECエレクトロニクス社は「ALL Flash宣言」として、今後新規開発をするマイコンには全てフラッシュメモリを内蔵することを宣言しました。 半導体技術の進歩により、マスク ROM内蔵品種と同価格で安定したフラッシュメモリを内蔵したマイコンが実現し、これまでは企業の量産向け用途とされていた 1チップマイコンが、個人ユーザーにもさらに広く普及しました。 その後「78K0/Kx2」、「78K0S」シリーズは広く受け入れられ、現在に至るまでシリーズも拡充しています。

78K ファミリ

78K0 シリーズ

78K0/Kx1 グループ(フラッシュメモリ搭載)

8bit

※書き込みのために 別電源必要

78K0/Kx1+ グループ(フラッシュメモリ搭載)※単一電源※SuperFlash 技術

78K0/Kx2 グループ(フラッシュメモリ搭載)

※単一電源※SuperFlash 技術

2002 年

2004 年

78K0S シリーズ

78K0S/Kx1+ グループ(フラッシュメモリ搭載)※小ピン版※単一電源※SuperFlash 技術

2004 年

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■ メモリの種類

マスク ROMマスクROMとは、半導体製造工場でシリコンウエハに回路パターンを焼き付ける段階

で、メモリの内容も焼き付けられるROMのことをいいます。メモリの内容(プログラ

ム、データ)ごとにフォトマスクを用意するので初期費用がかかりますが、量産効果が期

待できる方法で、大量生産向けです。後からの書き換えはできません。

UV-EPROMUV-EPROM(UVErasableProgrammableROM)は、複数回(数十回ほど)の書

き換えが可能なメモリです。製造時にはメモリに内容が書き込まれず、書き込みは通常

ROMライタでおこない、消去はパッケージ上の窓に紫外線を当てます。パッケージ上に

窓が必要なのでワンタイムPROM(下記参照)に比べるとコストがかかりますが、繰り

返し書き換えられるので評価に向いています。

ワンタイム PROMワンタイムPROM(OnetimeProgrammableROM)は、UV-EPROMのパッケージの

窓をなくしたROMです。製造時にはメモリに内容が書き込まれず、ユーザーがROMライ

タを使って内容を書き込みます。1度書き込むと後からの書き換えはできません。多品種

少量生産向けです。

フラッシュメモリフラッシュメモリは、電気的に書き換えができるメモリで、基板に実装した状態での書

き換えが可能です。書き換え回数は数百回~数千回(内容保証年数によって異なります)

です。初期のフラッシュメモリは大変高価なものでしたが、各メーカーの回路、プロセス

技術の向上によりマスクROMとも遜色のない位の価格となりました。また、書き換えに

動作電源とは別の高電圧の電源が必要になるなど、使いにくい面がありましたが、半導体

技術の向上により単一電源での書き換えが可能になり、書き換え回数も増加していきまし

た。

フォトマスク

ランプ

プロジェクションレンズ

シリコンウエハ

マスクROM内蔵マイコン

半導体工場で回路パターンと共にメモリの内容も焼き付ける

ROMライタで基板実装前に書き込む

UV-EPROMの場合はイレーサで消去できる 基板に実装した状態で

PC等と通信して書き代える

UV-EPROM、ワンタイムPROM内蔵マイコン

フラッシュメモリ内蔵マイコン

PC

紫外線

PickUpPickUp

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参考資料NEC エレクトロニクス 8 ビットマイコンのあゆみ

(5)16 ビットマイコン 78K0R シリーズが登場 2006年には 78K0シリーズのコアを拡張した 16ビットマイコンシリーズ「78K0R」がリリースされました。当時 NECエレクトロニクス社の「ALL Flash」製品は、8ビットの 78Kファミリ、32ビットの V850と展開していましたが、16ビット製品はありませんでした。78K0Rの登場により 8、16、32ビットと出そろったことになりました。

78K0S/KB1+

78K0S/KA1+

78K0S/KY1+

78K0S/KU1+

2004 年 2004 年

78K0S シリーズ(8ビット小ピン)

78K0/Kx2

78K0/Kx2-L

78K0/Lx2

78K0/Lx3

78K0/Ix2

µPD179Fxx

µPD78F0730

µPD78F07x

78K0 シリーズ(8ビット)

78K0R/Kx3

78K0R/Ix3

78K0R/Lx3

78K0R/Kx3-L

78K0R/Kx3-C

78K0R/Kx3-A

µPD78F8043

µPD78F8058

78K0R シリーズ(16 ビット)

8bit 16bit

78K ファミリ

2006 年

(6)合併により「ルネサス エレクトロニクス社」として、新マイコンファミリもスタート 2010年に NECエレクトロニクス社を存続会社として、ルネサス テクノロジ社(2003年に日立製作所と三菱電機の半導体部門の事業統合によって設立)と合併し、新たに「ルネサス エレクトロニクス社」としてスタートすることになりました。 2000年に入って続いた半導体会社の合併は、国内での足固めを強固にすることにより、海外展開をさらに積極的にすすめたい各社の思惑が一致したものでした。合併により、各マイコンシリーズも新しいシリーズに移行することになりました。 78Kファミリは、78K0Rシリーズと旧ルネサス テクノロジ社の 16ビットマイコンシリーズ「R8Cファミリ」が統合され、「RL78ファミリ」として、そのコアが引き継がれることになります。

1974 1979 1986 200420021995 20112010

µCOM-87 ファミリ

78Kファミリ RL78 ファミリ

R8Cファミリ

78K0 シリーズ用途別に品種展開

78K/1 シリーズµcom-87µcom-87LCµcom-87ADµPD78C11

µcom-8µcom-80µcom-85µcom-84µcom-84C

µcom-82µPD70008

78K/2 シリーズ78K/3 シリーズ(16 ビット)

78K0/Kx1+ グループ78K0/Kx2 グループ

µCOM-8、80、82、85、84

ALL Flash 宣言

NECから半導体部門を分社化してNECエレクトロニクス社となる※

ルネサス テクノロジ社と合併しルネサス エレクトロニクス社としてスタート

CISC全盛のころ高機能なマイコン

78K0S シリーズ

78K0S/Kx1+ グループ

新製品からC-MOS IC としてリリース高機能なCISCコンピュータ全盛期

インテル社とザイログ社のセカンドソース

初のオリジナルマイコンµPD78C11はロングセラーとなる

マイコンの応用分野が拡がり、小物家電などにも組み込まれるシンプルな構成で価格を追求

フラッシュメモリ内蔵さらに低消費電力化、外部回路の内蔵化など使いやすさを追求

旧ルネサス テクノロジ社のR8Cファミリと78Kファミリのテクノロジーを受け継いだローエンドクラスシリーズ「RL78ファミリ」として新たにスタート

78K マイコンのあゆみ(1974 ~ 2011)

旧ルネサス テクノロジ社16 ビットマイコンシリーズ

低消費、高性能な78K0Rのコアと多機能なR8Cファミリの周辺機能を併せた新シリーズ

ホームページ:www.sunhayato.co.jp2012 年 10月 20日発行REV.1.00SG12024

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◎おわりに―変わるものと変わらないもの CPUのアーキテクチャは、現在も半導体技術の進歩と共に進化し続けています。現在では 64ビットクラスのCPUが市場に出回り、命令の実行も 1度に 1命令づつメモリから読み出して実行する逐次処理から、前もって読み出しておいたり(プリフェッチ)、同時に平行して実行する(パイプライン)方法などが考え出されました。また、複数の CPUが 1つの ICにパッケージされたマルチコア ICも実用化されています。 その一方で、CPUの特長を表現するときに「80系」「68系」「86系」「68K系」などという言い方をする場合があります。これは、現在でも現役の一部の CPUが、70年代に競って開発されたインテル社、モトローラ社のマイクロプロセッサのアーキテクチャを引き継いでいることを表しています。

 特に 8ビットクラスのマイコンは、ターゲットとされる市場が大変広く、シリーズが進化しても互換性を保つことが要求されたため、創始以来のアーキテクチャを引き継いできたともいえます。78Kマイコンもレジスタの構成を見ると、ザイログ社の Z80に似ていることがわかります。また 78Kマイコンは、命令の実行も逐次処理(1回づつ命令を読み出して実行すること)の方式で、マイクロプロセッサの原型に近いともいえます。 コンピュータのテクノロジーが発達しても、CPUがメモリから命令を読み出して実行するという基本原理はいままで変わりませんでしたし、これからも大きく変わることはないでしょう。コンピュータを基本から学習したい場合は、78Kマイコンのようなマイクロプロセッサの原型に近いマイコンを使うことをお勧めします。

◎参考文献・日本電気株式会社 「シングル・チップ (8ビット)1985」データシート・日本電気株式会社 「8、16ビット・シングル・チップ・マイクロコンピュータ 1988」データシート・その他、各種マイコンデータシート、発表資料など

CPUの特長を表す~系

(インテル社とモトローラ社)ビット幅 インテル社 モトローラ社8 ビット 80 系(8085、ザイログ社 Z80 も含む) 68 系16 ビット 86 系 68K 系