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香港ࡍࠃ香港 フΝーΣイຊ(深圳) ΤΫスϓレスʗʗ大ख3香港ల։ ۀا12 ถதຎͰมΘΔ՚ɾ港 香港 広州 中国 特集 2019 昭和44年9月30日第三種郵便物認可禁無断転載Ⓒ海事プレス社2019日刊、但し土・日・祝日は休刊 KAIJI PRESS CO.,LTD. Transport & Logistics News 2019 10 25

香港 中国特集 - Daily-CargoTransport & Logistics News 2019 年10月25日 2 中国特集 第3種郵便物認可 2019年10月25日(金) 区を結ぶシャトルバスの停留所のあ

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Page 1: 香港 中国特集 - Daily-CargoTransport & Logistics News 2019 年10月25日 2 中国特集 第3種郵便物認可 2019年10月25日(金) 区を結ぶシャトルバスの停留所のあ

香港国際空港 香港CT

ファーウェイ本社(深圳)

SFエクスプレス/OOCL/大手3社香港展開EC物流4社/注目企業12社

米中摩擦で変わる華南・香港

香港

深圳広州

中国特集2019

昭和44年9月30日�第三種郵便物認可��禁無断転載�Ⓒ海事プレス社2019��日刊、但し土・日・祝日は休刊

KAIJI PRESS CO.,LTD.Transport & Logistics News

2019年10月25日

Page 2: 香港 中国特集 - Daily-CargoTransport & Logistics News 2019 年10月25日 2 中国特集 第3種郵便物認可 2019年10月25日(金) 区を結ぶシャトルバスの停留所のあ

中国特集2 第3種郵便物認可 2019年10月25日(金)

区を結ぶシャトルバスの停留所のある緑豊かな沿道はジョギングコースとして整備され、いく人かのランナーとすれ違った。訪れたのが週末の午前だったからだろう、世界をにぎわす巨大企業の本拠地とは思えないほど、静かに、落ち着いていた。

巨大企業の閑静なおひざ元

 華為技術(ファーウェイ)。通信機器で世界的大手に上り詰めた同社は、米国の「GAFA(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル)」と双壁を成す、中国の先端IT企業4社

「BATH(バイドゥ・アリババ・テンセント・ファーウェイ)」の一角にも、位置付けられる。 その影響力の大きさから、米中貿易摩擦でやり玉に上がったファーウェイの本社は、ここ深圳にある。 8月前半、気温27度。熱帯気候の華南では、青々とした夏空が一転して時折、薄灰色に変わって雨がパラつき、湿気で体中に汗を帯びる。天に突き出した高層ビルに覆われた深圳市中心部から、北へ。郊外に高層マン

ションが多く広がっているのは、さすが中国最多の人口1億人を超える省の大都市だ。ただ、その大半は出稼ぎ労働者で、人口1400万人の深圳の純粋な地場の出身者は100万人程度ともいわれている。 30分ほどして小高い丘陵部を抜け、ベッドタウンに囲まれた広大な開発区のような土地に出た。深緑色の外壁に濃い紅文字で「HUAWEI」と記された大きなビルが見えてきた。深圳に2カ所あるファーウェイの本社の一つ、坂田本部だ。 総面積200万平方メートルの敷地に、工事中も含む大型工場やたくさんの事務所棟、従業員用だろう住居棟などがA〜Kの10区域に分かれ、一帯を徒歩で回れば丸1日かかること受け合いだ。各

深圳から始まる次代のSC

 中国南部・華南地区の中心地の一つ、深圳。「世界の工場」を牽引し、労働集約型輸出製造業が経済を支える伝統的な広東省の都市としてのその顔は、米中貿易摩擦の直撃を受け、変化のスピードを速めている。米国との鎖が硬直する一方、成長を遂げた中国発のグローバル企業、「チャイナ・グローバル」が華南から世界へ羽ばたき、次代のサプライチェーン(SC)が着々と構築されている。

ファーウェイの店舗

Page 3: 香港 中国特集 - Daily-CargoTransport & Logistics News 2019 年10月25日 2 中国特集 第3種郵便物認可 2019年10月25日(金) 区を結ぶシャトルバスの停留所のあ

中国特集 32019年10月25日(金) 第3種郵便物認可

ルでSCをつくる。当社はそれに応じて、国際輸送、通関、最終配送を一体化したサービスを行っている。VMIやクロスドック、JIT配送、ラストワンマイル配送、中には「ATO(半製品在庫による受注後最終組み立て)」への物流対応も含めて、グローバルでソリューションを提供している。最近では、中国の工場の東南アジアやインドなどへの移管に伴う設備や原材料の輸送も多い。 一方で中国には今、すさまじい量の国外商品が越境ECで入ってきている。海外から中国への輸送を当社がサポートする。ECでは東南アジア発中国向けの話が増えている。

フレックスポートと合作で

 —海運・航空のフォワーディング事業に参入するとの報道があった。ライセンスは取得したのか。 肖 2月に米国のデジタルフォワーダー(実輸送を行わずに物流会社と荷主の間を取り持つプラットフォームを提供する事業者)、フレックスポートの10億ドルの資金調達に応

中国企業の海外展開支える

 —現在の事業概況を。 肖 当社は創業者の王衛氏が19 93年に順徳(広東省)に設立し、現在までに、生産、調達、販売、出荷といった顧客のサプライチェーン(SC)全般にわたるソリューションを確立している。物流サービスは「時間指定宅配」「低価格宅配」「市内配送」「倉庫サービス」「国際宅配」があり、特積みトラックや重量物の速配、生鮮・食品・医薬のコールドチェーンも提供している。 中国国内は中核ハブセンター9カ所、地域ハブセンター143カ所、航空・鉄道拠点49カ所、サテライト配送拠点330カ所、倉庫170カ所・計177万平方メートル弱、自営・外注の幹線輸送トラック3万5000台で全土9万7000路線を運行し、二輪を除く最終配送車両は7万6000台。昨年12月時点の配送員は約29万1400人。44カ所のハブセンターでは全自動仕分けシステムを導入し、北京の最大のセンターは15万件/

時の仕分け能力だ。 —国際の主要商品は。 肖 ドア・ツー・ドアの速達サービスの「国際標快」、輸送時間にこだわらない顧客向け経済的エクスプレスサービスの「国際特惠」、越境EC商品の航空輸送の「ECエクスプレス」の3種類を標準商品としている。国際標快、国際特惠は米国、欧州、ロシア、カナダ、日本、韓国、インド、ブラジル、メキシコ、チリなど62カ国・地域、ECエクスプレスは6月にコンゴ、ウガンダ、マリなどアフリカ8カ国を追加して225カ国・地域をカバーしている。 —エクスプレス業者として、国際は越境EC関連が主要顧客なのか。 肖 それも一つだが、不特定の業種にさまざまな顧客がいる。中国の優秀な企業や商品の「走出去(海外進出)」と海外の優秀な企業や商品の

「引進来(中国への受け入れ)」を支えるのが、われわれの使命だ。  携帯電話など中国 の 大手セットメーカーとそのサプライヤーが「走出去」で海外に出ていき、グローバ

 中国・深圳から世界へ。新たな国際物流の巨龍が、着実に海外へ歩みを進めている。同国民営快逓(小包や文書のエクスプレス)大手、順豊速運(SFエクスプレス)は国内配送員約29万人を抱え、50機以上の自社貨物機を活用して「ECエクスプレス」で225カ国・地域をカバーする。DHLサプライチェーンの中国事業の買収、米デジタルフォワーダー・フレックスポートへの出資と布石を打ち、次なるステージは航空・海運の一般貨物のフォワーディングだ。増え続ける中国発着のEC貨物と中国企業の海外展開に軸足を合わせ、米中貿易摩擦の逆風の中でも、「海外事業の今年の売上目標は4割増」。海外部門の肖建恒グローバルセールス&プロダクト・ヘッドが深圳本社で本紙のインタビューに応えた。�(文中敬称略)

肖建恒グローバルセールス&プロダクト・ヘッド

Interview 肖 建恒 氏SFエクスプレス グローバルセールスヘッド

航空・海運FWD本格化、深圳から世界へ

Page 4: 香港 中国特集 - Daily-CargoTransport & Logistics News 2019 年10月25日 2 中国特集 第3種郵便物認可 2019年10月25日(金) 区を結ぶシャトルバスの停留所のあ

中国特集4 第3種郵便物認可 2019年10月25日(金)

じた。世界のフォワーディング市場は1兆ドルに迫るが、集中度が低く、運賃が不透明。伝統的なフォワーダーが効率の低下に直面する中、フレックスポートは科学技術で新たなサービスを提供する新時代のフォワーダーだ。中国を中心とする当社の輸配送ネットワークとフレックスポートの機能を融合して両社が合作し、パートナーシップで(フォワーディングを)展開する。海運事業は当初、フレックスポートの地盤である米国と中国のレーンから開始する。 —DHLサプライチェーンの中国・香港・マカオ事業を買収した。 肖 2月に買収を完了し、「順豊DHLサプライチェーン」に社名を変更した。DHLグループには長年の経験とノウハウがある。当社はエクスプレス、国内配送、市内配送、国際、航空などを事業として多様化が進んでいる。各部門の異なるネットワークとサービスをどうつなげるか。彼らから学び、一層発展させる。 —DHLグループには、肖氏自身がかつて所属していた。 肖 DHLやTNTのグループ会社で幹部を経験した。SFに移ってからはまだ2年。SFは若い会社だ。海外事業の開始は2010年、海外部門の設立は15年9月。海外事業はこの数年で年率2割以上成長し、(同部門の)人員は深圳300人、米国300人、シンガポール200人、韓国100人、日本60人などと拡大してきたが、さらに学び、より強く改変しなければならない。 —B to Bのフォワーディング分野は競争が激しい。どう進めていくか。 肖 単にA地点からB地点に運ぶ運賃ではなく、当社は在庫コストの低減に貢献するソリューションで勝負する。国内外の倉庫の最適化や、B to CとB to Bを連結したフルフィルメ

ントの輸送、陸・海・空・鉄とドアまでのJITを組み合わせた配送など、付加価値を生み出す総合的なサービスだ。従来型のフォワーディングを長年提供してきた伝統的フォワーダーはモデルを変化させづらい。当社は、新しい会社だ。新しいコンセプトを常に押し出していきたい。

積み込み年124万トン 自社機材国際11都市

 —グループの順豊航空(SFエアラインズ)は初の長距離路線として米国線を開設した。国際線の運航状況は。 肖 米国線は杭州−ニューヨーク・JFKで、米アトラスエアワールドワイド・ホールディングスが運航するB747−400F 型フレイターの週3便だ。大型機材で100トン以上積載できる。昨年からチャーターベースで運航して8月に定期便化した。自社貨物機では印チェンナイ、シンガポール、ドイツに就航している。自社機材はこれまで国内外2134路線に就航し、昨年は153万2000便、毎日平均4196便(いずれも便名ベース)を運航して中国43都市・国際11都市をカバーした。昨年の航空貨物積み込み量は123万8000トン、日平均3391トンで、国内の積み込み量は同年の中国の国内航空貨物・郵便量の23%を占めた。昨年の航空快逓業務量は8億件(伝票ベース)で、当社全体の快逓業務量の21.5%だ。 —今後の路線計画は。 肖 チェンナイは今年、自社のB747−400ER 型貨物機に大型化したが、早期にデーリー化したい。日本路線は昨年、関西線を運航し、スケジュールの関係でいったん停止した

が、チャンスを待っている。機材のさらなる整備も検討し、自社ネットワークを活用した自社便による国際線を増やすことで、伝統的なフォワーダーにはない特長を打ち出していく。 —湖北省鄂

がく

州しゅう

市に建設する中国初の貨物専用空港プロジェクトに参画している。 肖 昨年、国務院の同意を受けて基礎工事に着工し、来年に基礎部分を完成、2021年に運用開始予定だ。アジア最大の貨物空港、中国最大の民営空港となる。鄂州は中国全土の中心となる立地で、国内の主要大都市に1〜2時間(のフライト)で行ける。米国で言えば(米UPSが本拠を置く)ケンタッキー州のような場所だ。空運に加えて鉄道や海運(長江水運)の結節点でもある。SFエアラインズが国内線、国際線を接続するハブ空港として活用する。 —今は深圳や杭州をハブ空港としているが、集約する目的か。 肖 現在、自社機材による輸送は全取扱貨物の20%超で、残り70%以上は委託している。輸送量を増やすには大型のハブ空港が必要だ。深圳や杭州は継続し、中国西部(のハブ機能)を西安から鄂州に移す。ハブ&スポークの取り組みの中で有効活用を探る。 【略歴】(スケン・シャオ)ニュージーランド・マッセー大学、オーストラリア・ビクトリア大学卒。DHLやTNTグループの中国法人などで幹部を歴任し、国際物流業で15年の経験を持つ。2017年にSFに参画し、現職。中国広東省出身。

9月頭に57機目を受領したSFエアラインズの機材

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中国特集 52019年10月25日(金) 第3種郵便物認可

米中摩擦の裏で絡まる要素

 米中摩擦を受け、中国の8月の対米貿易は、輸出が前年同月比16%減、輸入が22%減といずれも大幅に減少した。輸出は7月が7%減で、一層拡大した。8月、米トランプ政権による対中関税第4弾の9月の発動発表後、一部品目の12月への後ろ倒しの決定を前にして、駆け込み輸送は「ほとんどみられなかった」と現地の物流関係者は口をそろえた。 昨年来、都度、荷量の一定の波があった関税引き上げ回避の動きがほぼゼロ。この事実は、「既にある程度の在庫を米国内に積んでいる」「サプライチェーンの組み換えや調達先の切り替えが進んでいる」(現地の物流関係者)との予測を裏付ける。米中レーンはもはや、「凪」。今年のピークシーズンの盛り上がりを期待する声は、現地でほとんどなかった。 ただし、だ。8月、中国の輸出はアセアン向けが11%増、特にベトナム向けは26%増と急伸した。政府方針を対外公表する現地メディアでもある中国国営CCTVは、1〜8月の輸出が「一帯一路(新シルクロード政策)」沿線国で10%増だったと強調した。相手国のある貿易統計は、ごまかしがきかない。中央アジア・欧州と、東南アジア・インド・中東・アフリカの両方面に伸びる一帯一路。米国と真

逆に位置するレーンが堅調なのもまた、事実である。 ファーウェイ本社から路線バスに揺られて30分。向かったのは、EMS

( 電子製品受託製造 )世界最大手、鴻海精密工業(フォックスコン)の深圳工場。かつて初代iPhoneを生産していた、華南製造業を代表する老舗の外資拠点だ。同社の中国法人名、

「富士康」をそのまま名付けた停留所で降りると、目の前に年季の入った建屋があった。トタン屋根にさびが浮き、現在は使っていないよう。今も数十万人が働くようだが、8年前にiPhone生産は内陸の鄭州(河南省)に移されている。 「経済特区として外資を呼び込み、大量の人口を背景に電子機器の生産が早期に始まり、人材が育ち、部材供給網が整った。深圳の強みだ。電機産業の世界的成長に伴い、輸出が増大するとともに、生産品は高度化。香港や台湾も近く、(本土でない)外の感覚を吸収できる。今日のIT産業の勃興につながった」。現地物流大手の幹部の広東人は話す。 来料加工(外資企業と製造委託先との無償委託加工取引)を中心に輸出製品の生産委託に甘んじていた過去から、技術と人材の蓄積で現地企業が飛躍した。ファーウェイに加え、IT大手テンセント、EV(電機自動車)大手BYD、ドローン大手JDIも深圳

本社で、世界に知られる「チャイナ・グローバル」。快逓(小包や文書のエクスプレス)大手、SFエクスプレスも深圳に本社を置く。現在、同市はITスタートアップが集まる「中国のシリコンバレー」とも呼ばれる。 現地のある物流関係者は明かした。8月頭時点で、ファーウェイが物流業者に対して「航空輸出の積み地を香港から中国内の空港に変えるよう要望があった」と。スマートフォン

(スマホ)出荷台数でアップルを抜いた同社は、インドやアフリカなどの新興国市場で膨大な量のスマホを売りさばいているとされる。自国の輸出堅持の命を受けつつ、米中摩擦での傷を癒すように、次代の市場への攻勢を強めはしないか。 ここにきて中国政府は、香港、珠海、マカオをつなぐ「港珠澳大橋」の完成を機に「粤港澳大湾区(華南一体の発展政策)」をぶち上げた。米中摩擦のウラで、静かに、しかし着々と、変化が起きている。華南の行く末を見るべき要素は、絡まり合いながら複雑になっている。

EMS世界最大手、台湾フォックスコンの深圳工場

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中国特集6 第3種郵便物認可 2019年10月25日(金)

 「過去にない状況だ」 欧米系フォワーダーの香港・華南の営業担当者は9月半ば、米中摩擦を受けた香港発の荷動きについてそう述べた。足掛け10年以上にわたって現地に住み、活躍する同氏にして

「最悪の環境。リーマン・ショックを超えるほど」と言わしめた。 深圳から陸路で向かう最中、いつも人民でごった返すボーダーは、デモの影響で空いていた。8月前半、気温33度。到着した香港の港湾CTの入口は朝だというのに、日差しがぐいぐいと照りつけ、思わず額に手をやった。出勤したばかりだろう門番は既にぐったり。高架下の幹線道路をドレージ車両が猛スピードで行き来し、1台ずつ巨大なロジスティクスセンターに吸い込まれていった。 港湾のコンテナ取扱量(右上グラフ①)は、2000年代前半まで長年、香港が世界一だった。しかし10年に上海に抜かれ、13年に深圳において行かれ、昨年には広州にも追い越された。10年前のリーマン・ショックでの落ち込みを引きずりながら、香港は12年以降、コンテナの取り扱いを思うように増やせていない。 香港と深圳、広州を合わせた珠江デルタ全体の取扱量は、香港が振る

わないにもかかわらず、大陸各港の躍進で直近5年間、6000万TEUを超え続けている。昨年は6721万TEUで世界首位の上海の4201万 TEUを大きく上回り、蘇州と上海を合わせた長江デルタの4837万 TEUにも大差をつけた。華南一帯の発展を目指す「大湾区」が進行したならば、香港の「海運テコ入れ」につながるかもしれない。 一方、依然として香港が世界トップを堅持しているのが、空港の貨物取扱量だ。右上グラフ②のとおり、こちらは12年以降も香港が上昇を続けて安定的であり、深圳や広州に4倍近い差をつけている。 日系フォワーダーの現地幹部は

「香港は航空貨物のハブの位置付けは変わらず、営業次第で底上げできる。ただ、海上はマーケット自体が落ち込んでおり、パイの取り合いとなることは否めない」と総括する。 先んじて来料加工を始め、生産拠点の大陸シフトとともに物流と金融のハブとして機能してきた香港。

1997年7月、英国から中国に回帰し、初代行政長官に香港海運大手、OOCL 創業者の息子の董建華(C・H・トン)氏が就任したあの時代から、二十数年。当時を知り、現在も香港に駐在する日本人は、華南に押されて沈みゆく中で「20年間で(香港と中国の)立ち位置はひっくり返った。

(97年)当時は想像することなど、できなかった」と語る。 加速したのが、やはり港湾取扱量にも反映されるこの10年間。リーマン・ショック後の景気対策として、4兆

香港 深圳 広州

2012年 2013 2014 2015 2016 2017 2018

*アルファライナー統計より本紙作成

1,200

1,600

2,000

2,400

2,800

香港・深圳・広州の港湾コンテナ取扱量グラフ❶

100

200

300

400

500

600

2012年 2013 2014 2015 2016 2017 2018

*国際空港評議会(ACI)、中国民用航空局の統計より本紙作成

香港 深圳 広州

香港・深圳・広州の空港貨物取扱量グラフ❷

万TEU

万㌧

香港版「失われた10年」、救世主は?

 「光復香港 時代革命(香港を取り戻せ、革命の時だ)」—。「逃亡犯条例」への反対から、政府・警察に対する大規模な運動に発展している香港のデモ。背景に香港版「失われた10年」と、進む中国化への反発が透けて見える。米中摩擦で、マーケットは急速に冷え込んでいる。香港が築いてきたハブとしての立ち位置もまた、変革されるのか。

香港空港の到着ターミナルで窮状を訴える人 (々8月10日撮影)

Page 7: 香港 中国特集 - Daily-CargoTransport & Logistics News 2019 年10月25日 2 中国特集 第3種郵便物認可 2019年10月25日(金) 区を結ぶシャトルバスの停留所のあ

中国特集 72019年10月25日(金) 第3種郵便物認可

世界210港カバー、週190便

香港に初寄港した「OOCL Hongkong」

 オーシャンアライアンスに加盟する香港の海運大手、OOCLは世界80カ国・地域に約370拠点を構える。世界210港をカバーする週190便のコンテナ船サービスに加えて、物流・ロジスティクスサービスも世界各地で展開する。中国・香港を代表するキャリアの1社だ。東西旗艦航路で顧客第一に努めるソリューションを展開して「業界最高品質のサービスの一つ」と自負し、今年は「巨大な貿易ハブとなるアフリカマーケットにつながるネットワークの拡大に焦点を当てている」。 傘下の海運ポータル会社、カーゴスマートと最新技術の活用に取り組む。カーゴスマートはデータベースをもとに世界800港・1400CT、1万2000隻以上の船舶やトラック、複数の船社の3000以上のサービス・1000万のスケジュールをカバーするモニタリングを提供している。このデータベースとAIにより、「Global Vessel Voyage Monitoring Center(GVVMC)」では、船舶やターミナル、キャリアの生産性やパフォー

マンスの分析を可能とし、燃費コストを削減する適正ルートや船速をはじき出す。 昨年、大手船社とターミナルオペレーターが共同で設立したブロックチェーンのデジタルプラットフォーム、

「GSBN(Global Shipping Business Net-work)」に参画した。GSBNでカーゴスマートは、危険物を対象とするブロックチェーンのアプリケーションの試験を進め、危険物をよりトレーシング、コントロールしやすいような貨物の見える化を試みている。 中国政府の「粤港澳大湾区」については、「輸送・ロジスティクスの向上を目指したインフラ整備での協力を通して、旅客・貨物の両面で成長への大きな可能性がある」と見ている。

OOCL

元(約52兆円)のインフラ投資で内需を振興、急成長につなげた中国に対し、ゲートウエーの香港は世界経済に翻弄されてきた。香港の一般の人々の意思とは裏腹に、中国との経済的な結び付きは強固となっていき、政府は中国に依る姿勢を強めた。一方で、「倉庫賃料は過去10年で倍になった」ともいわれるほどの不動産価格の高騰や、高位安定する物価が人々を悩ませ続けている。 成長が鈍化した「失われた10年」を経た昨年、香港の象徴のOOCLは中国の海運最大手、コスコ・シッピングに買収され、香港はGDPで深圳に抜かれた。「物流ハブの冠も、間もなく失ってしまうのかもしれない」。

ECに白羽の矢

 物流面での希望は「電子部品に替わる、新規貨物としてのEC」(現地の物流関係者、以下同)だ。どちらも香

港に優位性のある航空貨物で、電子部品は米中摩擦によって落ち込みが顕著だが、ECは「一昨年に突如、爆発した。昨年は落ち着いていたが、期待できる」との声が多い。中国向けECのゲートウエーとしての輸入に加えて、華南生産のEC貨物の輸出で荷が集まるようだ。 EC貨物をメインとする中国の快逓業務量のうち、越境輸送の割合は全体の2%ほどなものの、1〜8月の金額ベースでは全体の1割を占めた。都市別は広州が首位、深圳が3位。大陸側空港の国際線の乗り入れに比べて、香港の航空ネットワークはまだまだ優れている。「(航空で)特殊な『コ・ロード文化』があり、路線ごとに強いフォワーダーに任せる傾向がある」ともされ、事業者別取り扱いシェアがほぼ固定されているという安定的な香港の航空マーケットだが、ECという新規出物は注目される。

 また、市場が閉鎖的な人民元と違い、米ドルとペッグ(連動)する国際通貨の香港ドルの活用用途は大きく、「香港の金融機能は、中国政府にとってなくてはならないもの。金融ハブは残る」との見方は強い。中国に絡む決済機能を香港で提供するフォワーダーは多い。 とはいえ、足元は激化する香港のデモの動向が懸念事項だ。直接的な物流への影響はないが、空港の閉鎖による取り扱い不能、地下鉄やバスなどが利用できないことによる作業員の出勤難、そもそも顧客の香港離れを誘う事態が想定される。さまざまな立場の人々で構成される黒シャツのデモ隊の行動が、将来の変化に与える影響は少なくないだろう。 次のページからは、日系フォワーダー大手3社の香港展開、越境ECを含むEC物流事業者、また注目企業の中国展開を紹介する。

香港海運大手

Page 8: 香港 中国特集 - Daily-CargoTransport & Logistics News 2019 年10月25日 2 中国特集 第3種郵便物認可 2019年10月25日(金) 区を結ぶシャトルバスの停留所のあ

中国特集8 第3種郵便物認可 2019年10月25日(金)

 近鉄エクスプレスの香港現地法人、近鉄国際貨運(香港)は、荷動きが減速する中で航空、海運ともに輸出を伸ばしている。今年4〜7月の両モードの香港発輸出はそれぞれ若干増で、航空の日本、米州向けはいずれも1割増。海運は運賃の高い北米向けに注力し、グループのAPLロジスティクス(APLL)と統合した海運プロキュアメントの本部を香港に置き、キャリア管理を強めながら連携している。 航空輸出は本船に積みきれずに航空で緊急輸送する貨物に狙いを定め、事務機器や靴、EC、電子機器などを幅広く取り込んだことで、中国向けは大幅減が続くものの、日本や米州向けで物量を伸ばした。一方、「香港発日本向けと北米向けの運賃差は航空が5倍程度だが、海上は20〜

30倍にもなる。海上は北米向けの強化が業績に直結する」(伊藤尚・東アジア・オセアニア本部副本部長)として、新たに米国荷主専用の米系アカウントの担当者を置いた。 今年4〜7月の物量はほかに航空輸入大幅減、海運輸入横ばい。航空は米中摩擦で電子部品の荷動きが不振。全体として同期の売上高、利益は減少した。 昨年から伊藤副本部長は香港と広州のトップを兼務し、香港から華南全体のフォワーディングを統括するよう体制を改めた。航空では香港でBSA

(ブロック・スペース・アグリーメント)を増やし、仕出し地の広州、深圳の貨物を香港に寄せて混載効率を高めるなどしている。 APLLと仕入れを統合した「グループプロキュアメントセンター」は香港

を本部、世界各地を合わせて計15人の体制。主に日本出し以外の海運仕入れを統括し、物量の集約による運賃競争力の向上のほか、船社やコ・ローダーの選定などで「共通のストラテジーを設けて管理を強化している」(同センター本部の平岡智朗グループヘッド)。 香港法人は今年50周年。香港の売上構成は航空60%、海運20%、ロジスティクス16%。香港・華南に計10拠点、人員1450人で、うち日本人駐在員20人。倉庫は香港4カ所、深圳7カ所で計約27万平方メートル。

伊藤尚・東アジア・オセアニア本部副本部長

日本・米州向け航空輸出1割増■近鉄香港

資 料

2018年世界港湾コンテナ取扱量

*アルファライナーの統計をもとに本紙作成。順位の( )は前年

1(1)2

(2)3

(4)4

(3)5

(7)6

(6)7

(5)8

(8)9

(10)10(9)1416252630

4,201

3,660

2,635

2,574

2,187

2,166

1,960

1,932

1,601

1,4951,070

977649636511

4.6

8.7

6.9

1.9

8.8

5.8

▲5.6

5.6

6.4

▲2.7― ― ― ― ―

上海

シンガポール

寧波

深圳

広州

釜山

香港

青島

天津

ドバイ厦門大連営口蘇州東京

順 位 港 湾 前年比(%)

コンテナ取扱量(万TEU)

1

*ACIの統計をもとに本紙作成。順位の( )は前年

順 位 空 港 前年比(%)

貨物取扱量(万㌧)

1(1)2(2)3(3)4(4)5(5)6(6)7(7)8(9)9(8)10(13)1617

香港

メンフィス

上海・浦東

仁川

アンカレジ

ドバイ(DXB)

ルイビル

台北・桃園

成田

ロサンゼルス北京広州

512

447

377

295

281

264

262

232

226

221

207

189

1.5

3.1

▲1.5

1.0

3.5

▲0.5

0.8

2.4

▲3.2

2.4

― ―

2018年世界空港貨物取扱量

(6)7

(5)8

1,960 ▲5.6香港

11(1)2

香港 512 1.5

大手3社香港展開

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中国特集 92019年10月25日(金) 第3種郵便物認可

「 華南混載センター」の 中心機能を設置、マルチゲートウエー化を図っている。 売上構成は航空が比較的大きく、次いで海運、ロジスティクス・配送が拡大している。香港日通は4拠点、人員520人で、うち日本人駐在員13人。空港至近や屯門地区にもロジスティクスセンターを置く。香港での抗議活動激化への対応についても、設定したBCP(事業継続計画)に従い、香港の空港や港が使用できない場合の中国側空港、港の使用を計画し、顧客への影響の抑制を準備している。

 今年40周年を迎えた日本通運の香港法人、香港日本通運は電機・電子産業の航空輸送をメインに成長してきた。輸配送では香港・珠海・マカオをつなぐ大橋を使う「ハイスピードサービ ス 」を 開始。旗艦倉庫 の「Hong Kong Unified Nippon Express Cargo Terminal(HUNT)」(4階建て・延べ床面積約4万7000平方メートル)では医療機器・体外診断用医薬品 の ISO 認証、「ISO13845」を取得、防塵・防虫などを徹底して品質を保持し、納品までのデータ管理も行う専門のサービスを始めた。 大橋開通を受けて昨年11月から、特定顧客向けに香港空港まで定期トラック便を走らせている。「これまで主にバージか大きく迂回するトラックだったが、橋を利用すれば半日〜

1日ほど輸送時間を短縮できる」(香港日通・加瀬洋平社長)。今春、橋を使った陸送をタイムアドバンテージサービス「NEX South China Ex-press」と銘打って販売を始めた。 香港は長寿世界一として知られ、先進介護用の商品の輸入や、中国やアセアン生産の医療機器・部品を非居住者在庫として欧米向け輸出のハブとする動きがあり、医療専門のサービスでこれらに応じる。 香港日通の今年上期の取扱量は航空・海運ともに微減。航空輸出は昨年までプラスを維持し、今年は仕入れをコントロールしながら混載コストを抑えて利益創出に努めている。日通東アジアブロックによる航空積み地の最適化を図る取り組みでは、香港積みから広州・深圳の活用を広げる

医療機器、大橋利用で新サービス■香港日通

 郵船ロジスティクスは4月、グローバル本社機能を日本と香港に分割した。香港で同機能を担うのが、現地法人の郵船ロジスティクス・グローバルマネジメント。主にフォワーディング事業の企画・管理、IT開発、デジタル技術開発と、新たな柱に育てるサプライチェーン・ソリューション(SCS)事業を香港で統括する。マネージングダイレクター(MD)の友膳誠司執行役員は「フリーポートとしての物流先進性、東アジアと東南アジアのハブとなる立地、豊富な人材市場から拠点を香港に決めた」と話す。 同社の前身は2000年設立の香港法人、郵船グローバルフレート・マネジメントで、主な機能は海上・航空のプロキュアメントと中国に絡む海外

精算業務だった。4月、郵船ロジのグローバル戦略の統括組織、「GHQ」の立ち上げにあたり社名を変更、主に海上・航空フォワーディング、プロセスマネジメント(PM)、ITデペロップメント、デジタルイノベーションとSCSの各グループを担当する機能会社となった。PMはグローバルでの海上・航空フォワーディングの業務プロセスの改革が任務。プロキュアメントに次いで、「販売手法、プロセス管理を共通化して、事業運営の効率化を進めていく」(友膳執行役員)。SCSは顧客の物流課題を解決するソリューションを事業化するのが使命だ。 香港事業会社の郵船ロジスティクス(香港)の今年上期の取扱量は海上がマーケットの落ち込みを受けて

弱含み。同社の小野隆MDは「昨年後半から荷動き状況が変化し、昨今の香港情勢も相まってマーケット状況が混沌としている」と話す。航空輸出は日本向けが最多、続くTC3はタイ・ベトナム向けが堅調だ。香港の売上構成は航空45%、海上35%、CL20%。香港から深圳を管轄、香港2法人・8拠点で人員は計約700人、うち日本人駐在員約30人。倉庫は7カ所・計約10万平方メートルで、Tsuen Wan地区で冷凍・冷蔵倉庫も運営する。

香港でFWD事業管理とSCS統括■郵船ロジ・グローバルマネジメント

(右から)友膳誠司執行役員、郵船香港の小野隆MD、郵船ロジ・グローバルマネジメントの小玉真也リージョナルCHRO

加瀬洋平社長

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中国特集10 第3種郵便物認可 2019年10月25日(金)

藤村俊樹総経理㊧と橋口慶和副総経理

 伊藤忠商事の中核物流子会社、伊藤忠ロジスティクスの中国の3PL事業会社、伊藤忠物流(中国)は昨年の同国のECの大型セール、「双11(ダブルイレブン)」で消費者から前年比約2割増の668万件の注文を受け、単日最大8000人で対応した。地場物流会社を含めても、ECの3PLでは同国トップクラスの規模で、全土の総倉庫面積は約50万平方メートル。事業拡大で今年の売上高は1割増の見込みだ。 日系、欧米系のほか、一部地場ブランドの衣服類や靴、バッグ、アクセサリー、スポーツアパレルなどをメインに、二十数社を顧客に持つ。3PLの取り扱いは、アパレル関連のEC、店舗向けが各40%で、残り20%が

日用品や家電・自動車関連などだ。  北京本社 で 同国14都市・30拠点。3万平方メートル以上の大型倉庫は上海・安亭や太倉2カ所などに加えて、昨年に昆山、1月に上海・青浦を立ち上げ、7月には太倉に増設、天津にも新設。天津倉庫は5万平方メートル規模と安亭に並ぶ同社最大級だ。人員は5月末時点で約2600人、繁忙期は臨時工を雇って毎年1万人規模まで拡大する。日本人駐在員は研修生を含み11人。加えてコールセンターのオペレーター約100人がおり、繁忙期はIT系の大学と提携して300人規模となる。 藤村俊樹総経理は「ダブルイレブンなどのイベントごとに、ブランドの販売目標とは別に自社として荷量の

予測値を立てる。物量は通常時の何倍にもなるため、予測をもとに、増員して人員体制を組みながら、コンベヤーや自動仕分け機などの増設も計算する」と話す。業務別、顧客別に策定したKPIをもとに「全倉庫の数値目標と実績が毎日、管理職に報告される。デイリーで業績管理と人員管理を見える化している」(橋口慶和副総経理・南ブロック総経理)。  今後 は EC の「O to O(Online to Offline)」へのシフト、ヘルスケア分野の積極化、「3級」「4級」都市へのネットワーク拡大に取り組む。

ダブルイレブンEC注文668万件■伊藤忠ロジスティクス

EC物流事業者

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中国特集 112019年10月25日(金) 第3種郵便物認可

 設立4期目で、取扱量10倍。中国向けを中心に1日1万件の越境EC 貨物を扱う。中国のECフォワーダー、ECMS の 日本法人、ECMSジャパン(本社=東京都中央区、小松英樹代表取締役社長)は、アマゾンを主力とする中国向けを軸に、日本発アジア各国向けエクスプレスサービス、

「B2Cダイレクト」を展開する。中国向けでは、商品種別や宅配先の住所などから、独自のロジックで最適の輸送ルートや通関方式をAIで割り出す自社開発の「スマートルート」システムで、通関で止まることのない安定した輸送を確立する。 ECMSは2013年、EC世界大手、アマゾンの中国向け越境EC商品の小口貨物・小包の国際輸送をメインに北京で設立。現在は中国各地と東

京のほか、香港、韓国、米国、オランダ、英国に自社拠点、ほかにも世界各地に提携拠点を持つ。日本にネットワークを広げるにあたり、日本通運で国際航空貨物分野に従事して越境EC業務に精通していた小松氏が独立する格好で16年1月、ECMSジャパンを立ち上げた。日本法人を支える幹部メンバーは、いずれも日通出身。ECMSジャパンは昨年までに第2種(航空宅配・外航海運)と第1種の貨物利用運送の認可、6月に国際航空運送協会(IATA)の 公認貨物代理店資格を取得した。 日本での主力業務は、アマゾンが販売する中国内消費者への直販商品の国際輸送だ。越境EC直送サービス、「B2Cダイレクト」は中国のほか、香港、台湾、韓国、タイ、シンガポー

ル、マレーシア向けに提供し、近くインドネシアも追加予定で、今後ベトナム、フィリピンも狙う。全体の半数が中国向け、香港、台湾が各1割、韓国や東南アジア各国も伸びる。現在は1万件/日、重量月200〜300トンほどで、物量は10倍となった。 成田空港外に保税の「成田空港物流センター」、千葉県印西市に内貨の「印西フルフィルメントセンター」の各1000平方メートルほどの倉庫を構え、出荷前商品の保管、梱包を提供するフルフィルメントサービス、

「FULFILL4E」などで活用する。

アマゾン主力に越境EC物量10倍■ECMSジャパン

(左から)元田至管理部部長、小松英樹代表取締役社長、武田新一郎運営部部長

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中国特集12 第3種郵便物認可 2019年10月25日(金)

 ペガサスグローバルエクスプレスは、日本に渡航する中国人旅行客が購入した商品をその場で中国へ輸送できるサービス「Shop Express」の販売を開始している。同サービスは中国郵政香港の認可を受けて中国向け越境 ECサービスを提供する、香港の中郵電商が展開しているもので、同社との提携の下、日本での販売に至ったもの。大阪の百貨店で試験的にスタートしており、今後、実施店舗を拡大していく方針だ。  ペガサスは越境 EC の 事業強化を進めており、最大市場の中国向けでは、従来から強みとする国際宅配サービスに加え、中国「ECフォワーダー」大手の4PXエクスプレス(逓四方速逓)と提携するなどしてサービス拡充を図っている。今回のShop

ExpressもEC事業拡大戦略の一環として取り組むものだ。 Shop Expressは協力企業の店舗 に海外輸送受付カウンター(集荷ボックス)を設置し、旅行者が購入した商品をその場で輸送できる。類似サービスより15〜20%安く輸送できるのが特徴。昨年、香港でサービスを開始し、既にイタリア、タイにも展開。百貨店やドラッグストアなどの小売店を中心に店舗を拡大している。 日本では5キロまで輸送できるMサイズと7キロまで輸送できるLサイズから展開する。輸送日数は7〜10日程度。ペガサスは総代理店として販売する。 また、中国人旅行客が購入した商品輸送販売に先駆けて、他にも海外輸送受付カウンターのサービスを開

始。9月末より、大阪のキリン堂の店舗にカウンターを設置し、こちらは銘東との協業による中国向け輸送サービスを開始している。 同社の伊藤義雄営業本部EC事業部次長は「当社のサービスコンセプトとして、まず、利用していただけるサービスを増やし、その中から最適なサービスを提供し、利用していただく“ペガサスマイチョイス”がある」と話す。「利便向上や、販売拡大につながる“環境”を提案し、選ばれることが重要。サービス店舗の売上拡大にも寄与していきたい」としている。

訪日旅行客の買い物支援サービス■ペガサスグローバルエクスプレス

Shop Expressの受付カウンター

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中国特集 132019年10月25日(金) 第3種郵便物認可

 日本郵便は中国向け越境ECに適した多彩な国際配送サービスを展開している。国際宅配便「ゆうグローバルエクスプレス」(UGX)では、中国快逓大手の申通快逓(STO)と連携して中国の「越境EC総合税」に対応する配送サービスを展開、制度変更を受けて6月から「行郵税」に対応するサービスも開始した。「中国側の制度変更で1月から海外セラーは中国国内の代理店企業が必須となり、対応できない顧客から要望を受け、行郵税の対応も始めた」(久田雅嗣国際事業部長、以下同)。 中国向けUGXの「越境EC総合税配送サービス」は、日本側の集荷から国内輸送、輸出通関、国際輸送までを日本郵便、中国側の輸入通関と現地配送を申通が担う。航空輸送に

よるB to B to Cの直送を基本とする。申通のシステムを活用し、中国側配送先への送り状ラベルは顧客が日本側であらかじめ荷物に貼付。成田または関空の両空港で航空搭載し、中国側のゲートウエーに空輸する。現地税関の動向に応じて、中国側のゲートウエーは随時、最適の空港を選択している。パートナーの申通については、「オペレーションや価格などで柔軟に対応してくれる。システムも顧客の作業工程に合わせてカスタマイズして提供しており、顧客の評判も上々」という。EMSより安価な運賃も特長だ。申通との連携は2017年10月に開始、主に中国の越境EC輸入のプラットフォームで「直郵」「保税販売」の輸送方式に適用される越境EC総合税に対応するサービスを提

供してきて、中国側の制度変更を受け、越境EC総合税の適用が難しい顧客向けに、一般個人貨物 の通関にかかる行郵税対応サービスを始めた。 日本郵便が出資する香港のレントングループと連携して、UGX のクーリエ(KJ)通関サービスとe-Expressサービスも提供している。いず れも 行郵税( た だしe-Expressサービスは限度額1件800元)適用で、e-Expressサービスは香港を経由して中国へ配送。加えて、保税販売による大量輸送に対応するため、海上輸送も提供する。そのほか、EMSに代表される国際郵便の中で小形物品を追跡付きで安価に配送できる

「国際eパケット」「国際eパケットライト」が越境EC利用で伸びている。

中国向け越境ECで多彩なサービス■日本郵便

久田雅嗣国際事業部長

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中国特集14 第3種郵便物認可 2019年10月25日(金)

注目企業

 全日本空輸は、中国では香港を含む12都市・13空港に日本との間で自社便を運航。このうち、上海、青島、大連、天津、厦門、広州、香港の7空港で貨物便を運航するなど充実した自社路線網を敷く。これら12都市は海外拠点では唯一、貨物営業を自社展開して中国発貨物を取り込んでいる。自社便が飛ばない深圳、マカオ、寧波、昆明の4拠点でも貨物総代理店(GSA)の起用で貨物営業を行う。 中国の貨物事業で最大の物量・収入を稼ぐのが上海。毎週、日本との間で旅客便63便、貨物便19便の計82便にのぼる豊富なスペースを供給している。最も物量が多い成田線はB767F型機で週13便を運航していたが、7月から同路線に大型

貨物機、B777F型機を投入。現在は週13便のうち、5便を同型機に置き換え、スペース供給を大きく増やしている。 日中間の航空貨物市場は米中貿易摩擦の影響を受けるなど、年初から減速が強まる。全日空の日中間の取扱量も4〜9月累計で日本発が1割、中国発が2割程度の前年割れ。全日空の貨物事業室中国統括室長を務める吉田昌弘氏は「中国発の物量は地域を問わず減少傾向だが、B777F型機には、ほぼ当初想定通りの貨物量を搭載できている。足元では半導体製造装置が動いていることから、今後は半導体などの荷動きも上向くと見ている」と話す。 中国では、ピークシーズンとなる

秋以降は需給の改善も見込まれるなか、B777F 型機は B767F 型機と比べて2倍の約100トンの搭載が可能で、大型貨物の輸送需要にも対応できる。既に受託がある半導体製造装置に加え、完成車や医薬品など同型機に適した大型・特殊貨物の取り込みを強める。同型機は10月末から米シカゴへの就航も控える。吉田氏は「米国向け貨物は成田で降ろさず、直行便に近い形で運べる強みもアピールしていく」と話す。

B777F型機で大型貨物取り込み■全日本空輸

(右から)吉田昌弘ANA貨物事業室中国統括室長と太田泉ANA CARGOグローバルセールス部部長

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中国特集 152019年10月25日(金) 第3種郵便物認可

 近鉄エクスプレスの中国のフォワーディング事業法人、近鉄国際物流(中国)は北米レーンを強化する。今年上期の物量は海運輸出が若干増も、航空輸出入と海運輸入は大幅に減少。堅調な海運輸出は日本向けの集荷拡大策が奏功しており、これを受けて「日本に続いてトランスパシフィックレーンでもプロジェクトを立ち上げた」(平沼浩董事長)。日本と同様に中国の人員が米国に出張してセールスし、ターゲットの米系小売り荷主などの要望に応じるサービスを確立する。 上期は航空輸出が北米向け電子部品などで大口荷主の荷量が減り、航空輸入、海運輸入は昨年好調だった中国向け半導体製造装置・部材の市況悪化が直撃した。これにより、同期

の全体の売上高は減少した。 海運輸出は、2016年から取り組んできた日本向け集荷拡大策を昨年に中国・香港9港発を対象とする

「オールチャイナ・ナイン」プロジェクトとして強化、各港の担当者が日本に出張して営業するなどして実績を大幅に伸ばしている。昨年実績で海運輸出は日本向けが6割に達し、リテール関連の取り扱いが伸びる。続いて、全体の1割を占める北米向けに狙いを定めた。 航空輸出では、主力の上海浦東国際空港発で米州はシカゴ、ロサンゼルス、欧州は蘭アムステルダムに集約するよう努めている。昨年実績で航空輸出の仕向け地は日本が50%弱、東アジア20%弱、米州15%、東南アジア12%。航空輸入はスキン

ケア商品、健康関連器具、医療関連などのヘルスケア関連で米国を中心に取り込みを強め、化学品やリテールにも注力する。 売上構成は航空60%超、海運3 0%超、ロジスティクス数%。近鉄は福建省・華東以北のフォワーディングを近鉄中国、ロジと保税物流などの国内物流を北京近鉄運通運輸の現地 法人2社で分担しており、華東以北に9法人・31都市・79拠点を置く。人員は計約1900人で、うち日本人駐在員27人。同地域の総倉庫面積は計約24万2000平方メートル、自社車両は一般、リーファー、エアサス、保税を合わせて125台を保有している。華南・香港は香港法人が統括している。

北米強化、中国から直接営業■近鉄エクスプレス

平沼浩董事長

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中国特集16 第3種郵便物認可 2019年10月25日(金)

 日本通運東アジアブロックは海運と鉄道の取り扱いを大きく伸ばしている。中国の今年上期の取扱量は航空輸出が数%減も、海運輸出は2割増。海運は北米向けが停滞するが、欧州向け電機・電子関連や自動車関連が好調。「東アジアは世界最大の海運市場。営業強化で物量を一層拡大する」(杉山龍雄常務執行役員東アジアブロック地域総括)。同社として東アジア全体の海運の物量は日本発着を上回る規模だ。中国−欧州の鉄道輸送は今年5割増と急成長を続け、往復で昨年の倍の目標を掲げた。 海運輸出は日本向けが50%を占め、アセアン向けが続く。上期は、中国が航空輸入微減、海運輸入2割増。航空の落ち込みを海運でカバーし、同期は全体で売上高が横ばい、営業利

益は海・空とも仕入れ価格の下落と効率化が寄与して3割増。航空輸出では「チャイナマーケティングプランニングセンター」を設置、積み地の最適化を追求し、一部で上海でなく鄭州積みに変更するなど、欧米向け長距離路線を中心に適正化を図る。海運輸入では日本の各地方港とのビジネス連携強化を進める「W-ing」プロジェクトを始動。各地方港を扱う日通の各国内ブロックに上海から出張させ、共同セールスに乗り出した。 中欧鉄道輸送は昨年が一昨年の倍に増やしたが、今年さらに急伸させて「『鉄道=日通』を定着させていく」

( 杉山常務執行役員 )。中欧鉄道ではリアルタイムのトレーシングに力点を置き、コンテナ内にロガーを設置して緯度と経度、温・湿度、加速度、加

重などを計測、上海の東アジア総括室内の大型スクリーンで確認する。東アジアブロックとしてカザフスタンに進出、鉄道輸送のオペレーション管理にも力を注ぐ。 日通東アジアブロックは中・香・台・韓の4カ国・地域に60都市・19法人・168拠点。人員5110人、うち日本人駐在員98人。中国の総倉庫面積は約45万平方メートル。中国国際貨運代理協会がまとめた昨年の同国フォワーダーランキングで、日通国際物流(中国)は15位で日系トップを堅持した。

海運輸出2割増、中欧鉄道5割増■日本通運

杉山龍雄常務執行役員(中央)と中欧鉄道の担当者

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中国特集 172019年10月25日(金) 第3種郵便物認可

 郵船ロジスティクスは中国で、事業への産業別アプローチを強めている。グループ全体で強化する自動車、航空機、リテール、ハイテク製品、ヘルスケア、食品などの分野に同国でも注力し、中国法人の日郵物流(中国)

(以下、郵船ロジ中国)は現地で半導体製造装置やメディカルデバイスの取り扱いに乗り出した。原秀則執行役員東アジア地域総括は「プロダクトはできてきている。今後はトレードレーンごとなどで産業別の分析を進め、戦略的に足りない部分を補うよう進める」とする。 近年、同国で新工場の建設プロジェクトの相次ぐ半導体では、現地パートナーを選定して中国系、韓国系半導体メーカーの製造装置の輸送入札に応じるなど、事業を確立した。

医療機器は、日本郵船、郵船ロジ、現地物流企業が出資する合弁会社の上海安吉日郵物流を通して取り組み、上海・臨港地区の倉庫で取り扱いのライセンス取得を目指す。今秋にも認可を受け次第、営業を開始する予定だ。 郵船ロジ中国の今年4〜6月のフォワーディング取扱量は、マーケットの伸び悩みに伴って海上、航空ともに減少した。原執行役員は「(企業の)下半身の強化が必要。業務プロセスを見直し、骨太の体制にしなければならない」と語る。販売強化に向けて産業別分析を行い、「予算に対するPDCAサイクルをシステム的に進め、特に産業別に『ミッシングパーツ』を見極め、スタッフの配置を含めてどう手を打つか判断する」(原執行役員)。

 4月に立ち上げた郵船ロジのグローバル戦略の司令塔となる統括組織、「GHQ」の始動に合わせて、中国でも「事業軸で管理できるよう、機能や役割で組織を一部、見直した」(郵船ロジ中国・大橋春彦経営企画部・行政財務部執行官総経理)。特にGHQ傘下のビジネスデベロップメントグループが進める開発営業に中国でも力を入れている。 郵船ロジ中国は同国25支店。人員は全土約1300人、うち日本人駐在 員40人。

半導体装置、医療機器に注力■郵船ロジスティクス

原秀則執行役員㊨と大橋春彦執行官総経理

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中国特集18 第3種郵便物認可 2019年10月25日(金)

 商船三井ロジスティクス(MLG)の上海現地法人、上海華加国際貨運代理は、同国の物流最大手、中外運

(シノトランス)グループのフォワーダー、中外運空運発展(シノトランス・エア)と本格的な営業協力で連携した。昨年春にパートナーシップを確立、昨秋に正式にアライアンスを締結した。同社では近年、顧客層の拡大にも力を入れており、一例として今年、台湾系・日系電機大手の同国発日本向け製品輸送を初受注した。 フォワーディング事業を展開する上海華加の今年上期の業績は航空輸出、航空輸入が大幅に減少した。航空の不振を受け、同期の全体の売上高は1割減。呂智強(プレストン・ルイ)常務取締役東アジア地域・GSM(Global Sales Meeting)・

NVOCC推進担当は「中国マーケットは土台が良好で長期的には安定する見込みだが、米中摩擦のインパクトが大きく、昨年後半からチャレンジングな環境。年始の予測以上に現在(7月末時点)は悪くなっている」と話す。 テコ入れ策の一つが、シノトランス・グループとの提携だ。昨年11月に正式に提携契約を結び、中国発は中国内でシノトランス、海外側でMLGのネットワークを活用、半導体関連などの新規分野を開拓する。中国向け半導体製造装置輸送では一部、シノトランス・エアのパートナーとして案件を受託した。アライアンスはセールス面での連携で、オペレーションやプロキュアメントは対象外。 上期の海運輸出は2割増、海運輸入は数%増。「航空から海上へのシ

フトが増えている。全社としてNVO CC、海上ビジネスに力を入れる中で、営業を強化している」(古川泰史執行役員上海華加総経理)。シノトランス・グループとは海上輸送でも連携していく。 中国は上海華加など現地法人3社で、計15拠点。人員は中国約310人、香港150人。今年、上海の副総経理を香港のトップとして派遣し、香港では日本人以外で初の責任者に据えた。日本人駐在員は中国、香港各6人。

シノトランス・エアと営業連携■商船三井ロジスティクス

呂智強常務取締役㊧と古川泰史執行役員

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中国特集 192019年10月25日(金) 第3種郵便物認可

 山九は中国で、主力の国内物流を多様化している。同社グループとして初めて上海の倉庫で医療機器に関わる認証を取得し、営業を開始した。

「自動車、消費財、化成品・素材に次ぐ第4の柱として医療機器に取り組んでいく」(桑田文雄執行役員中国・東アジア事業部長兼中国総代表)。化学品から、自動車部品や電子部品に横展開している構内作業では昨年と今年も順調に現場を増やしている。同社の中国事業の売上構成は、国内物流と構内作業を合わせて7割を超えた。 上海法人の上海経貿山九儲運が1月、中国国家薬品監督管理局から、医療機器の3PLに関わる経営許可証を取得、上海山九の内貨の旗艦倉庫「浦東物流センター」(上海市浦東

新区)の約6500平方メートルを専用エリアとして登録した。防塵、防虫を徹底し、専用のシステムによってシリアルナンバーによる在庫管理やトレーシングなどを行う。稼働に合わせて、「来年は医療機器を伸ばしていきたい」(桑田執行役員、以下同)と期待を込める。 売上構成は今年上期時点で、国内物流66%、国際物流29%、構内作業5%程度。国内では、幹線輸送、ミルクラン、門前倉庫、JIT配送といった自動車物流を全土で展開し、売上高全体の4割弱を占める主力事業とする。ただ、自動車部品は昨年後半から荷量が減少傾向にあり、今年さらにその傾向が強まっているという。その中で構内作業では昨年4現場、今年3現場を新たに獲得した。山九は

長年、日系化学メーカー向けに中国の複数の工場で構内作業を手掛けており、近年は他産業への横展開を進めてきた。特に自動車部品の工場向けでは、「構内物流と自動車物流の知見を掛け合わせることで、顧客のニーズに合ったサービスを提供できている」。構内作業の事業比率は今後十数%まで高めたい考えだ。 山九は中国8法人・20支店・19事業所と香港1法人で、人員は計約2050人、うち日本人駐在員41人。中国法人3社では、現地社員が副総経理を務めている。総倉庫面積は中国42万8000平方メートル、香港1万8000平方メートル、自社車両は中国207台、香港3台。

医療機器、構内作業で国内物流多様化■山九

桑田文雄執行役員

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中国特集20 第3種郵便物認可 2019年10月25日(金)

 日新は台湾を開拓する。4月、台湾の家電大手グループとともに現地法人を立ち上げ、6月に本格的に営業を開始した。同社は中国で中国系荷主からの受託を次々に獲得して国内物流を伸ばす。このノウハウも移管し、台湾では倉庫・輸配送業務を中心に展開。米中摩擦の影響で中国から生産拠点が回帰する「台湾回帰」がある中、フォワーディングの拡大も狙う。章征栄執行役員中国統轄は「台湾はこれまで拠点がなかったが、今後は中国から統括して営業を積極化する」と話す。 台湾の家電大手、SAMPOグループの物流会社、東源物流事業股份をパートナーとし、現地に日新日茂国際物流を設立した。既存会社に対して日新の香港法人が出資し、現地法

人とした。SAMPOは「台湾で世界の大手ブランドのOEM生産をし、家電販売の7割を扱う代理商(家電卸)でもある。日系大手家電ブランドも多く扱っている」(章執行役員)という。台湾法人はトラック輸送に加えて海・空のフォワーディングのライセンスも持ち、台湾でのDCや輸配送の受託拡大を目指すほか、台湾企業の中国からの生産シフトも見据えつつ、日新の既存のフォワーディングの台湾代理店と連携しながら国際貨物も狙っていく。 日新は中国に現地法人5社。今年上期は売上高微増、営業利益微減。昨年後半から航空貨物の需要低迷が続くが、同期の海上貨物の物量は輸出入とも増加傾向で、中国系小売りの日本向け家具の今秋〜来年頭のス

ポット輸送を獲得するなど堅調だ。香港を含む6現法で人員は約1000人、うち日本人駐在員38人。 中国ではDC事業が好調だ。現地小売り荷主を新たに獲得し、昨年に杭州、5月に寧波で各1万平方メートルをオープン。5月には日系スポーツ用品、家電を扱う太倉倉庫を増床して5万3000平方メートルまで拡大した。全土の倉庫面積は約15万平方メートル。中国事業の売上構成はロジスティクスが3割強、海上3割、航空3割弱とバランスが取れている。 中欧鉄道では中国発を中心に月数十本を定期的に輸送する。日本発着海上輸送を厦門で鉄道に接続する欧州向けシー&レールも既に営業している。

台湾開拓、国内物流ノウハウ移管■日新

章征栄執行役員

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中国特集 212019年10月25日(金) 第3種郵便物認可

輸出が華南物流センター(龍華区)、広州が同白雲区と同黄埔区、香港が新界地区。ECUとしては深圳、広州ともに全世界向けで各3CFSを設定している。ECUは、深圳発では24カ国・地域、広州発で19カ国・地域、香港発で48カ国・地域に海上混載サービスを展開している。 ECUグループはウェブ上でスケジュール公表、ブッキング、B/Lや請求書など電子書類の配布、トレーシングなどのサービスを提供しており、グローバルサイトでは積み港と揚げ港を入力すれば2カ月先までの全世界のスケジュールが確認できる。

 海上混載世界最大手、イーキューワールドワイド(ECU)は、中国・華南発着貨物の集荷に力を入れている。日本発では今年、関東・関西発蛇口(深圳)向けダイレクト混載をスタートした。東京・横浜は毎週土曜ETD、大阪・神戸は同金・土ETDで各週1便。そのほかの国内17港発でも、釜山トランシップで蛇口向けを仕立てる。 日本出し華南向けは蛇口、広州・心、香港に直航サービスを展開している。関東・関西発蛇口向けは従来の広州・南沙向けを振り替える格好で、6月に開始した。T/T は関東6日、関西4日で、「自動車パーツ関連を中心に毎週、一定量が集まっている」(有田一登取締役)。名古屋・博多・門司・清水・苫小牧・石狩・仙台・新潟・

直江津・富山・金沢・四日市・広島・下関・松山・熊本・那覇の17港発は釜山経由で、釜山−深圳は毎週火ETDの週1便。釜山のT/Tは4日。 広州・ 心向けは関東、関西発各週1便で、 心で河川港を中心とする華南各地のCTに接続している。香港向けの週間便数は関東、関西各3便、名古屋2便、清水、門司各1便。ほかの日本発中国向けは上海、大連、天津新港、青島の4港に直航サービスを提供している。 日本向け直航は週間に、深圳発が関東2便、名古屋、関西各1便、広州・黄埔発が関東、関西各2便、名古屋1便、香港発が関東、名古屋、関西各2便、清水、門司・博多各1便。 日本レーンの中国側CFSは深圳が、輸入が蛇口の前海湾(南山区)、

華南注力、蛇口向け直行混載■イーキューワールドワイド

ECU深圳事務所のメンバー

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中国特集22 第3種郵便物認可 2019年10月25日(金)

 築港は中国で地場の協力会社のネットワークを生かした情報力を武器に、厳格化、複雑化する同国の危険品規制に対応している。上海に現地法人、築港国際貨運代理(上海)を設立して約10年。現地の協力会社と関係を構築してきた。石田純一取締役東京営業部営業部長は「同国の危険品規制は厳格化しており、変更も多い。情報収集が欠かせない」と話す。 近年増えたトラブルは、国際海上危険物規程(IMDGコード)上では一般品の化学品が中国独自の規制で危険品に該当、または該当する可能性があるとみなされるケースだ。一般品だと証明するには輸出者やフォワーダーが中国の公的機関に貨物の内容の分析を依頼し、一般品だと示す証明書を入手する必要がある。ただ、分析には

サンプルの提出が必要で証明書を準備する顧客、フォワーダーは少ない。 同社には一般品の海上混載を手掛けるフォワーダーから、トラブル回避のために一般品に該当する化学品も危険品混載で輸送したいとの要望が増えている。危険品の輸送・保管コストは一般品の約3倍。ただ、危険品とみなされた化学品を一般品として扱った場合、中国では倉庫が営業停止になったり、当該貨物が一般品と認められるまで引き取りが一週間以上かかったりすることがあるという。「何を危険品とみなすかといった情報は、日本側では入手しづらい」と石田取締役は話す。その上で「地場の協力会社から、情報を収集して対応している」と語った。 現在、同社は横浜・神戸発で上海

向け、香港向けの海上混載サービスをそれぞれ週1便。上海発大阪向け を不定期で手掛けている。貨物は引火性液体類が主力だ。顧客はメーカーや商社などが多い。 中国側では港から工場までの国内輸送の相談が増えている。現地法人は地場の運送事業者などとの関係が強く、広域へ輸送できる。現在、香港を除く地域への国内輸送を全て上海から行っている。東京営業部複合輸送課の森田哲生課長は「華南地区へは香港で揚げて陸送を考える人もいるが、危険品の通関は条件が厳しく、実施は難しい」と語った。

現地の情報力、協力会社との連携で■築港

 タカセは中国事業の収支改善を図っている。昨年は上海、香港の倉庫需要に応じて適正規模に縮小して事業の安定化を図ったが、今年は借り増して事業の成長を追求する。加藤税中国・香港事業統括は「物量に合わせて倉庫を適正に配置し、競争力のある体制を整備している」と話す。今年上期のフォワーディングの物量は香港・華南地区で伸長。上期の中国事業全体の売上高は微増、利益は増益を達成した。  上海 の 倉庫運営会社、高瀬物流

(上海)は現在、上海で青浦、宝山の両区と外高橋地区で3倉庫を運営する。2017年に宝山倉庫を借り換えて4000平方メートルほどに縮小し、昨年は利益が改善した。これを受

けて、今期以降の物量増の予測に対応するため、9月には近隣で2000平方メートルを借り増しする。香港法人の雅達通運も収支改善を目的に昨年1400平方メートルほどに倉庫スペースを縮めたが、7月に600平方メートル増床。上海、香港の総倉庫面積は9月時点で、計約3万1000平方メートルとなる。上海の3倉庫では日用品、原材料、工業用品、音響機器などをメインに取り扱う。 フォワーディングは上海の高瀬国際貨運代理(上海)や、香港の雅達貨運、中山(広東省)の雅達貨運(中山)と同社の深圳分公司で展開。日用品、電子部品、音響機器、自動車部品などを扱い、輸出は日本向けが大部分だ。今年上期の物量は上海が輸出、

輸入とも大きく減ったが、香港・華南で大口顧客の荷量が増え、全体は微増と上海の落ち込みをカバーした。 08年に上海に赴任して駐在11年を超え、現在は香港も管轄する加藤統括は、「コストが厳しくなる分、事業性の判断も厳しくしている。適正な規模で倉庫を持ち、それに合わせて業務を行うことで、当社に合った事業構造の構築を実現している」とし、今後も手綱を緩めず、事業運営にあたっていく考えだ。

倉庫の適正配置で収支改善■タカセ

石田純一取締役

上海・青浦の倉庫

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中国特集 232019年10月25日(金) 第3種郵便物認可

 日陸は中国で危険品・化学品の温度管理に注力している。近年、電気自動車(EV)関連のリチウムイオンバッテリーの電解液など、化学品の品質維持で温度管理の需要が高まっている。栃木良治取締役パッケージソリューション事業部長は「地場の倉庫会社の品質が上がっている。温度管理倉庫で差別化を図る」と話す。 上海では外高橋保税区と臨港地区に常温、冷蔵(5度)、冷凍(マイナス20度)の3温度帯の危険品倉庫を置く。日本国内では9カ所の危険品倉庫で温度管理を手掛け、危険品の温度管理に知見を持つ。 注力する貨物はEV関連、半導体関連、医薬品、化粧品など。EV関連でリチウムイオンバッテリーや電解液、半導体関連で半導体洗浄用薬液の需要

を見込む。半導体関連は第5世代移動通信システム(5G)の普及で、5Gに対応する機器の開発が盛んになると期待。また、同国全体の生活水準の向上、高齢化が進めば、医薬品や化粧品の流通も拡大する。「化学品は温度で性質が変化する場合がある。温度管理が必要」と栃木取締役は話す。 現地企業との取引拡大も図る。同社は上海で危険品倉庫業の日陸物流

(上海)、上海日陸外聯発物流、危険品輸送事業の上海日陸北方物流の3つの現地法人を持つ。顧客は日系と欧米系で7割を占めており、現地企業は2〜3割だ。「現地企業との取引を増やさなければ、中国のマーケットに入り込んだとは言えない」(栃木取締役)。 現地では日本人駐在員を最小限と

し、約200人の現地スタッフに業務を任せている。近年、中国企業は製品などの保管、輸送で高い品質と法令順守を求めており、国内事情に精通したスタッフが対応する。2018年度(17年10月〜18年9月)の売上 高は3社で約20億円。売上高構成比 は倉庫事業60%、輸送事業25%、フォワーディング事業と通関業務15%だった。 中国で危険品倉庫の新設も考えている。内容を検討中の次期中期経営計画(20年10月期から)では海外展開に力を入れる方針で、新倉庫の建設計画も盛り込む考えだ。

危険品温度管理倉庫で差別化■日陸

 安田倉庫の中国の倉庫事業が順調だ。海外初の自社倉庫プロジェクトを上海郊外で開始して4年、満床の1期棟に加え、昨年7月開設の2期棟を合わせて稼働率80%を超え、2棟で作業員は100人に達した。「日本基準」の設備を生かした高品質なサービスを続けるべく、人材教育に集中し、人事制度を刷新した。 上海西南部の同市青浦区で2017年春に1期倉庫( 平屋建 て・約79 00平方メートル)、昨年夏に2期倉庫(3階建て・2万6000平方メートル)をオープンした。2期棟の稼働で総延べ床面積は当初の4倍以上に大きく拡大。2期棟は1階が天井有効高8.8メートル、床荷重2トン/平方メートル、2〜3階が同5.7メートル、

同1.5トン/平方メートルで、5トンエレベーター6基を設置、1期と接する側を低床として車両が直接庫内に乗り入れ可能、逆側は高床だ。自社使用も含めて1期棟、2期棟合わせて約1500平方メートルの事務所等も併設。両建屋の中央に13メートルのひさしを設けて全天候型とし、自家発電機も導入した。 倉庫運営会社の安田物流(上海)は15年設立。2期棟は「80% 超が埋まった。華東や華中周辺の店舗向け輸入品の文具や化粧品などが中心で、配送手配や、ラベル貼り、販促品のセット組みなどの作業も行っている」

(實正洋平営業部長)。 武藤博幸取締役は「日系の品質を担保できるよう、作業員のサービス

水準を一定レベルに引き上げることが重要」とし、今年からフォークリフトの運転講習などの安全研修を始めた。日本から講師を呼び、乗車テストも行う。定着率向上も目指して昨年4月には人事制度を刷新。ポジションに応じて給与とタスクを明確にした

「発展空間」という概念を採用した。 フォワーディング事業の安田中倉国際貨運代理(上海)は、日本向け建材で海上輸送と日本側の陸送を合わせた一貫輸送を提供。1月に華東以南で初の拠点として石材などの仕出し地の厦門に分公司を設立した。

上海自社倉庫堅調、人材教育重視■安田倉庫

武藤博幸取締役㊨と實正洋平営業部長

栃木良治取締役

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