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資料2
第1回検討会の議事要旨および発表資料
平成26年度の調査結果
1
2015-2-10
H26インベントリ事業検討会
2014インベントリ調査結果
1) 事業の全体像
22014インベントリ調査結果
全体フロー
3
2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
日本国温室効果ガス
インベントリ報告
京都議定書報告
本
事
業
京都議定書第一約束期間
枯死木・リター・土壌の炭素蓄積量(現存量)を明らかにする・全国3000ヶ所の調査
森林の【地上部バイオマス】 【地下部バイオマス】
【枯死木】 【リター】 【土壌】の炭素吸排出量報告
CENTURY‐jfos
専門家会合
反映
検証モデルによる算定
開発.改良を重ねる.
第一期の調査を繰り返し,炭素蓄積量の変化量を明らかにする・全国3000ヶ所の調査
第一期 第二期
• 業務の全体像
2014インベントリ調査結果
2) 調査および精度管理
42014インベントリ調査結果
今年度の予定調査地点
枯死木調査ラインインターセクト法:倒木と根株の計測(第一期から継続)ベルト法(全数法):ライン1m内の立枯木と根株の全量調査(第二期から)
2014インベントリ調査結果
• カテゴリA:232ヶ所枯死木調査
リター採取
土壌採取
• カテゴリB:235ヶ所
枯死木調査
平成26年度の実施状況
2014インベントリ調査結果6
北海道91.1%全体の実施率
82.7%
東北87.9%
関東85.1%
中部近畿76.4%
中国四国75.6%
九州79.0%
43
データ精度向上の取り組み
① マニュアルの改良
② 補足資料の作成
③ 実務者手引きの作成
④ 講習会の実施
⑤ 仮提出資料のチェック
⑥ 昨年度試料の再分析
72014インベントリ調査結果
補足資料の一例
地域講習会の様子
3) 結果の概要
82014インベントリ調査結果
データの品質管理
2014インベントリ調査結果 9
リター 土壌
調査実施 除外 除外率 データ数 調査実施 除外 除外率 データ数
格⼦点数 185 3 1.6 182 185 6 3.2 179
総地点数 703 10 1.4 693 703 119 16.9 584
総層位数 2812 16 0.6 2796 2109 147 7.0 1962
断⾯チェック 1OC異常値 15
断⾯チェック 0試料調整チェック 41BD異常値 0BD外れ値 32OC異常値 103OC外れ値 2
2014インベントリ調査結果 10
炭素蓄積量
2014地点数
2014平均±S.D.
第⼀期全体平均±S.D.
枯死⽊(第⼀期の⽅法) 386 0.29 ± 0.43 0.42 ± 0.67
枯死⽊(第⼆期の⽅法) 386 0.64 ± 0.86 ―
リター 182 0.35 ± 0.20 0.49 ± 0.32
⼟壌 179 8.74 ± 3.76 6.94 ± 3.25
3-pool合計(第⼀期の⽅法) 176 9.41 ± 3.88 7.88 ± 3.37
(kg m-2)(kg m-2)
**
***
***
***
2014インベントリ取りまとめ 11
枯死木炭素蓄積量の経年変化
炭素
蓄積
量(k
gm-2
)
炭素
蓄積
量(k
gm-2
)
全体(ライン法)
全体(ベルト法)
枯死木(ライン法)
根株(ベルト法)
枯死木(ライン法)
●2014年度は枯死⽊蓄積量低い→ 低いのは北海道(0.14), 九州(0.17)
他ブロックは平年並み
2014インベントリ取りまとめ 12
リター炭素蓄積量の経年変化
炭素
蓄積
量(k
gm-2
)
全 体 T
● 2012以降,全体の蓄積量も各要素の蓄積量もほぼ安定
L
F
H
44
2014インベントリ取りまとめ 13
土壌炭素蓄積量の経年変化
炭素
蓄積
量(k
gm-2
)
炭素
蓄積
量(k
gm-2
)
全 体 0-5cm
● 2014年度も第⼆期に⼊ってからの増加傾向が続く.特に最深層で増加.
5-15cm
15-30cm
今年度結果 まとめ
●根株と立枯木に全数法による推定を適用したところ、枯死木の炭素蓄積量は大幅に増加した。
●第一期のラインインターセクト法で比べると、枯死木の炭素蓄積量は、第一期より小さかった。
●堆積有機物の炭素蓄積量は第一期より小さかった。
●土壌の炭素蓄積量は第一期に比べて大きかった。
142014インベントリ調査結果
4) 第一期調査との比較
152014インベントリ調査結果 2014インベントリ調査結果 16
同一調査地点での比較:枯死木
●分布の形は似ているが,第⼆期は低いストックでのピークが⼤きい
2014インベントリ調査結果 17
同一調査地点での比較:リター
●第⼆期は第⼀期に⽐べてピークが低いストックのほうへシフト.
2014インベントリ調査結果 18
層位・要素ごとの比較:リター
●第⼆期は第⼀期に⽐べて,乾重量,炭素濃度ともに⼩さくなる
45
2014インベントリ調査結果 19
同一調査地点での比較:土壌
●第⼆期は第⼀期に⽐べてピークがCストックの⾼いほうへシフト.
2014インベントリ調査結果 20
層位・要素ごとの比較:土壌
●第⼆期は,第⼀期に⽐べて定積細⼟重と炭素濃度が⼤きくなる
21
土壌炭素蓄積量の変化量の分布
●多くの格⼦点で⼟壌炭素蓄積量が増加している
・ 4年間のデータを用いた比較
第一期 第二期
土壌炭素・ストック
6.83 kg m‐2
SE:0.12n=761
7.93SE:0.12n=761
1.1 kg m‐2/5y=2.2 t/ha/y
ヨーロッパの
モニタリングデータの7倍程度
土壌炭素・変化量
※4年間のデータ
土壌炭素蓄積量の変化量
第一期との比較 まとめ
●枯死木は同一地点間で比較すると,第一期に比べて第二期で炭素蓄積量が低い格子点が増加した。
●堆積有機物も炭素蓄積量が低い格子点が増加し,炭素蓄積が高い格子点が減少していた。
●堆積有機物の蓄積量は特にL層で減少し,これには乾重量の低下および炭素濃度の低下を伴っていた。
●土壌では炭素蓄積量が低い格子点が減少し,炭素蓄積量が高い格子点が増加していた。
●土壌の炭素蓄積量の増加は、おもに炭素濃度が影響していた。
●4年間データの比較でも炭素蓄積量は増加していた。
232014インベントリ調査結果
5) 昨年度試料の再分析
242014インベントリ調査結果
46
昨年度試料の再分析炭素濃度の比較(1)
25
堆積有機物 土壌
対象:堆積有機物(リター)試料75点,土壌試料175点
2014インベントリ調査結果
昨年度試料の再分析炭素濃度の比較(2)
262014インベントリ調査結果
0
100
200
300
400
500
600
0 100 200 300 400 500 600
森林
総研
炭素
濃度(m
gg-1)
森林総研、分析業者 炭素濃度(mgg-1)
森林総研*森林総研
分析業者*森林総研
昨年度試料の再分析 まとめ
●堆積有機物、土壌とも分析業者と森林総研の炭素濃度の測定値は概ねに1:1対応であり、顕著な偏りはみられなかった。
●ただし分析業者と森林総研の炭素濃度の測定値のばらつきは、森林総研内のばらつきに比べて大きかった。
●今年度の炭素濃度が第一期に比べて高かったことから、今年度の試料についても調査を行う必要がある。
●第一期試料の精度に問題がある可能性もあるので、第一期試料についても確認を行う必要がある。
272014インベントリ調査結果
47
2015‐02‐10
H26インベントリ事業検討会
京都議定書報告への反映方法の検討
全体フロー2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
日本国温室効果ガス
インベントリ報告
京都議定書報告
本
事
業
第一期
京都議定書第一約束期間
全国3000ヶ所の森林で枯死木・リター・土壌の炭素蓄積量を調査
第二期
第一期と同じの箇所で枯死木・リター・土壌の炭素蓄積量を調査
森林の地上部バイオマス、地下部バイオマス
枯死木、リター、土壌の炭素吸排出量報告
CENTURY‐jfos 開発 専門家会合
反映
検証
調査方法の改善
算定に利用
2
初の全国調査
京都議定書第二約束期間
2015‐02‐10
3
CENTURY-jfos概要CENTURY-jfos概要
CENTURYmodel
SOC
LT
DW
SOC
林齢
面積
林齢
蓄積量 吸収排出
収穫表
チューニング
①
②
気象
土壌炭素量 単位面積当たりのストック
カナダとフィンランドの中間的な構造
カナダのcroplandとよく似ている
2015‐02‐10 2015‐02‐10 4
• CENTURY‐jfosが構築された際には、十分な土壌3プールのデータがなかった
• インベントリ調査データは、システマティックサンプリングによる全国調査データに基づいた炭素蓄積量
– CENTURY‐jfosをチューニングする基礎データ
→ モデルの再チューニングに活用
– CENTURY‐jfosによる炭素蓄積量の検証データ
→ 将来的には、モデルによる算定結果の検証に活用
インベントリ調査データとCENTURY-jfosによる算定インベントリ調査データとCENTURY-jfosによる算定
反映方法の検討および算定システムの改良
2015‐02‐10 5 2015‐02‐10 6
1. インベントリ調査データから得られた基準土壌炭素量の組み込み(試算)– 値の更新(第1期の土壌炭素)
– 集約単位の変更(気候クラスター)
2. 新収穫表の導入
インベントリ調査データの反映と算定システムの試行インベントリ調査データの反映と算定システムの試行
県単位で枯死木、リター、土壌炭素蓄積データの第1期インベントリ調査データとの比較
(枯死木のみ第2期)
48
7
基準土壌炭素(現行)基準土壌炭素(現行)
炭素蓄積量土壌ユニットごとの代表値(Morisada et al. 2004)
国土数値情報土壌ユニット分布
国家DB植生分布
各県・各樹種の基準土壌炭素量
重み付け
例:Dry PZ: 10.1 kg m‐2
Dry BFS: 7.9 kg m‐2
Moist BFS: 9.2 kg m‐2
….
例:北海道スギ **** kg m‐2
北海道ヒノキ **** kg m‐2
北海道マツ **** kg m‐2
…..
乾性ポドゾル
乾性褐色森林土
湿性褐色森林土
2015‐02‐10 8
基準土壌炭素量(kg/m2) ← 収穫表の地域で第一期データを集約基準土壌炭素量(kg/m2) ← 収穫表の地域で第一期データを集約
H23年度の検討内容の概略
集約地域コード
スギ ヒノキ マツ カラマツ トドマツアカエゾ
マツ広葉樹
その他針葉樹
1 8.2 7.7 6.0 8.5 7.1 8.6 6.7 6.9 2 8.1 6.6 8.4 3 6.8 6.6
4 6.8 7.3
5 6.6 6 6.3 7 7.3
1
2
3
4
5
67
スギ ヒノキ カラマツ1
3
2
4
1
2
2015‐02‐10
9
• 3つの値からウォード法による階層的クラスター分析を行い,樹系図から地域区分を作成(Height=10で分ける)
地域区分の作り方地域区分の作り方
階層的クラスタリングによる基準土壌炭素量
ヒノキ
2015‐02‐10
A BCD E
• 都道府県単位で格子点の「年平均気温」「年降水量」「土壌炭素蓄積量」をそれぞれ平均し,標準化.
2015‐02‐10 10
• 樹系図の地域区分に従い,地図を塗り分ける
地域区分の作り方地域区分の作り方
階層的クラスタリングによる基準土壌炭素量
ヒノキ
A B C D E NA
11
新収穫表(NIR2010より)新収穫表(NIR2010より)
スギ スギ以外
2015‐02‐10 2015‐02‐10 12
1. インベントリ調査データから得られた基準土壌炭素量の組み込み(試算)– 値の更新(第1期の土壌炭素)
– 集約単位の変更(気候クラスター)
2. 新収穫表の導入
インベントリ調査データの反映と算定システムの試行インベントリ調査データの反映と算定システムの試行
県単位で枯死木、リター、土壌炭素蓄積データの第1期インベントリ調査データとの比較
(枯死木のみ第2期)
49
試行の結果
2015‐02‐10 13
• 誤差指標 RMSE=2乗平均平方根誤差小さいほどよい
n
yyRMSE obsel
2
mod )(
• 散布図
2015‐02‐10 14
枯死木枯死木
結果
• 誤差指標 RMSE=2乗平均平方根誤差• 小さいほどよい
RMSE=1.02 RMSE=0.81
現行 改良
2015‐02‐10 15
リターリター
結果
RMSE=0.22 RMSE=0.17
• 誤差指標 RMSE=2乗平均平方根誤差• 小さいほどよい
現行 改良
2015‐02‐10 16
土壌土壌
結果
• 誤差指標 RMSE=2乗平均平方根誤差• 小さいほどよい
RMSE=2.30 RMSE=0.84
現行 改良
2015‐02‐10 17
まとめまとめ
結果
• 3プールすべてにおいて、CENTURY‐jfosとインベントリ調査の差が小さくなった
インベントリ調査による土壌炭素量のデータを活用し、これに合わせるようにCENTURY‐jfosを調整することで、土壌のみならず3プール全ての炭素蓄積量が実態により近づくことが確認できた
• 今後も、観測とモデルの精緻化により不確実性を低減させていく必要(世界的な動向)
– モデル:森林施業、リター供給量、分解、過去の森林の利用状況等が影響
– 観測:測定誤差、空間変動、測定バイアスの影響を大きく受ける
今後の方向性今後の方向性
2015‐02‐10 18
時間T 時間T+1
基本、肥大成長変化率小、空間変動大
時間T 時間T+1
基本、ニュートラルに近い
50
IPCC ガイドラインIPCC ガイドライン
第3期にむけて
2015‐02‐10 19
2006 GuidelineのTier3について(Soil carbon)
Tier 3 approaches will require considerable knowledge and data …, including evaluation of model results and implementation of a domestic monitoring scheme and/or modelling tool. The basic elements of a country‐specific approach are :• Stratification by climatic zones, major forest types andmanagement regimes …;• Determination of dominant soil types in each stratum;• Characterization of corresponding soil C pools, identification ofdeterminant processes in SOC input and output rates…; and• Determination and implementation of suitable methods…;methodological considerations are expected to include the combination of monitoring activities – such as repeated forest soil inventories ‐ and modelling studies, and the establishment of benchmark sites.
モデルの評価と国内モニタリングの実施が必要
気候、森林タイプ、施業などによる階層化
土壌型の決定
土壌炭素のインプットアウトプットの支配的要因の同定
モニタリング・モデリングの実施、ベンチマークサイトの設立
• 第3期にむけて
2015‐02‐10 20
第三期の調査に向けての課題
1.モデルの評価と国内モニタリングの実施が必要
2.気候、森林タイプ、施業などによる階層化
3.土壌型の決定
4.土壌炭素のインプットアウトプットの支配的要因の同定
5.モニタリング・モデリングの実施、ベンチマークサイトの設立
• 第3期にむけて
2015‐02‐10 21
51
平成 26 年度森林吸収源インベントリ情報整備事業 土壌調査等(指導とりまとめ業務)
第1回検討会 議事要旨
1.日時:2015 年 2 月 10 日 13:30-15:30 2.場所:日林協会館 中会議室 (千代田区六番町7)
3.出席者
出席委員:佐藤明(座長)、太田誠一、白戸康人
林野庁: 織田央、山之内留美子、井堀秀雄、齋藤絵里
事務局: 金子真司、田中永晴、石塚成宏、小林政広、橋本昌司、大貫靖浩、今矢明宏、平井敬三、
酒井寿夫、大曽根陽子
(1)平成 26 年度の調査結果 【内容】
事業の全体像
調査および精度管理
結果の概要
第一期調査との比較
昨年度試料の再分析
【質疑】
委員:調査および精度管理の中で説明のあった講習会は年何回くらい開催しているのか。
事務局:ブロックごとに行っているので今年は6回行った。
委員:農地の調査のほうでは年1回行っている。6回はかなり大変なことだと思う。
事務局:農地とは異なり、森林内の調査では、一か所で大人数の講習会を行うのは難しい。また、森林
土壌は地域ごとに大きく異なるので、それにあわせた講習を行いたいと考えている。
委員:6回の講習にはそれぞれ違う業者が来るのか。
事務局:そのブロックの担当業者が来るので、同一の業者が複数回参加するケースもある。今年度の全
体講習会では各業者の代表者向けに、業務の内容の説明だけを行い、実技についてはブロックごと
の野外講習で調査担当者に向けて行った。
委員:実施状況の「未了」というのはできないまま終わったということか。
林野庁:未了の多くは土地の所有者がわからなかったり、林道崩壊などで調査地点に到達できなかった
りして調査ができなかったケースである。
委員:今回未了だった地点は第一期の時もできなかった地点なのか。
林野庁:基本的に第一期の時にできなかった地点は最初からはずしてあるので、今回調査を行おうとし
てできなかった地点ということになる。
事務局:この調査は所有者の了解があるのが前提となっている。所有者が高齢のために前回了解を得ら
れた地点も、今回連絡がつかず調査はできないこともある。
委員:データの品質管理の内容について教えてほしい。炭素濃度やBD(容積重)の異常値で除外され
52
ることがあるのはわかるが「試料調整チェック」で除外されるというのはどういう場合のことか。
事務局:いわばエクスパートジャッジメントである。現場の写真などをみて、本来このような高い値は
でないだろうというようなことを総合的に判断していく。
事務局:通常、表層に比べて下層で土壌は重くなるが、それがまったく逆転しているケースなどがでて
くる。それで、写真を見てみるとごく普通の褐色森林土である。そういう場合は何か取り違いがあ
ったと判断して、断面ごとデータをはずす。このように総合的に判断してはずすのが試料調整チェ
ックである。BD異常値やOC(有機炭素)異常値の場合はそれぞれ基準値をもうけてそれからは
ずれたデータを一律に除外している。
委員:品質管理で除外されたデータがかなり多い印象をうける。原因はどんなことで、それに対してど
んな対策を考えているのか。
事務局:リターと鉱質土壌の境界の判断を誤っているケースがかなり含まれていると推測する。また、
鉱質土壌の炭素濃度の閾値は 25%以下であるので、分析業者の精度が悪くそれを超えてOC異常値
と判定されたケースもあると思う。
委員:炭素濃度の問題なら、標準試料を一緒に測定することで改善できるのではないか。
事務局:標準試料はロットごとに測定させていて、森林総研でその値をチェックしている。問題は、業
者が、測定値が検量線の範囲におさまるように試料重量を調整していないことにもあると感じてい
る。これについては何度もかなり強く指導しているのになかなか徹底されない。
委員:試料としては風乾土を使っているようだが、試料の水分は測定値に影響はしないのか。
事務局:昨年度の試料をわれわれが再分析をした結果では、水分量が違う場合も多かった。業者から測
定後に送られてきた試料にも湿った状態のものが含まれていることがある。含水率の基準は火山灰
土壌の水分含量が高いので高めに設定している。他の土壌には甘い基準となっている可能性はある。 委員:異常値の原因を明らかにし、精度向上につなげていく必要があるだろう。
事務局:野外調査が 12 月までかかることがあるが、そうなると分析業者は非常に短期間で試料の調整・
分析をしなければいけないことになる。これもデータの精度をさげる要因になっている。
委員:先ほど、試料量の調整の話が出たが、分析業者が土色などから測定試料の量を判断するのは難し
いと思う。試料分析業者に対しても講習を行う必要があるのではないか。
事務局:講習会はしている。測定が始まってからも指導はしているが、測定担当者が変わったりすると、
次の担当者に引き継がれないこともある。
事務局:仕様書には、標準試料のチェックと二連の分析の精度チェックをクリアすることが指示されて
いるので、そこをクリアしたらそれ以上は指導しづらいという事情がある。再分析の結果をみると、
土壌では炭素濃度が高いところで業者の値とわれわれの測定値とがずれる傾向にある。土壌も、炭
素濃度が高い標準物質も用意し、炭素濃度が低い標準物質ともに分析してもらうことで、チェック
を改善できるかもしれない。
林野庁:第一期と第二期のデータを比較したときに見える、イレギュラーなデータについては今後森林
総研とも検討し、仕様書でしばるなりして、精度向上につなげていきたい。
委員:このような調査ではなかなか最初から精度のよいデータは取れない。問題が生じた時に個々に対
処していくしかないだろう。第一期に比べてリターの炭素蓄積量が減っているのは、調査の時期の
違いを反映しているのではないか。
53
事務局:それについては以前もご指摘を受け、一度解析しているが、それほど大きく影響しないという
結果だったと記憶している。
委員:リターは乾重量だけでなく、炭素濃度も減少しているのが気になる。この原因についてどう考え
るか。
事務局:リター層と土壌層の境界がずれているのが原因の一つかもしれない。
委員:落葉直後と落葉が進んだ時期ではリターの分解のステージが変わる。このぐらいの炭素濃度の違
いなら、分解のステージの違いで説明できるかもしれない。
委員:第二期はリターの炭素蓄積量は減っているが土壌の炭素蓄積量は増えている。この時、もし二つ
の合計が第一期と変わらないのなら、先ほど話に出た、リター層と土壌との境界のずれでこの違い
を説明できるだろう。しかし、今回のケースでは、リターと土壌の炭素蓄積量の合計が第一期より
も明らかに増加している。そうなると、土壌の炭素蓄積量の増加は境界の問題では説明できないの
ではないだろうか。
委員:第二期に入って炭素プールが増えたことについては、最終的にどうまとめるのか。
林野庁:条約事務局への報告に関していえば、現在はモニタリングの結果ではなく、モデルの結果を報
告しているので、直ちには影響しない。
委員:では、実際にこのデータをモデルの検証などに利用する時にはどうするのか。
事務局:検証のためのモニタリングを行っており、それをどうするかは難しい問題である。現時点では、
検証できるだけの精度をもつモニタリング手法がまだ十分確立できていない、という印象を持って
いる。
委員:第二期は第一期という比較の対象がある分、今まで見えなかった問題が見えてくるのだろう。地
上部の調査でも、年々のデータからその差分を出すのは相当難しい。目に見えて、測定もシンプル
な地上部の調査であっても想定するような変化を得ることは難しいのだから、土壌では非常に難し
いと思う。
委員:農地の調査でも同じような課題を抱えている。長年モニタリングを続けているので、炭素蓄積量
の年変動は見え、統計をかければ有意差を出すこともできる。しかし、本当に蓄積量の増減を反映
したものなのかは判断が難しい。たとえば、農地の所有者が調査を許可してくれるか、くれないか
で大きくデータにバイアスがかかる。森林土壌のように、モニタリングにモデルを併用して炭素蓄
積量の推定を行うことも必要だと考えている。
委員:第一期と第二期の間の土壌炭素蓄積量の変化量は年間 2.2t/ha に相当し、これはヨーロッパのモニ
タリングデータの7倍程度の増加だという話があったが、この増加の理由は何か。
事務局:正確な理由はまだわからないが、第一期と第二期で同じ地点を調査しているつもりで異なった
場所で調査していたケースもあるかもしれない。また、もしかしたら第一期の調査に問題があった
というケースもあるかもしれない。そういう観点から第一期のデータをもう一度チェックしたり、
第一期と第二期の試料を再分析したりすることを考えている。
委員:基本的には、この増加は人為的なミスなどによるもので、プールが増加したものではないと考え
てよいのか。もしこれが本当にプールの増加だったとしたら、増加の要因としてはどのようなもの
が考えられるのか。たとえば、森林全体に占める若い林の割合が増えたとしたら、全体としてプー
ルへの炭素のインプットが大きくなることはないだろうか。
54
事務局:たしかに現在、山林の里山利用が減り、若い林が増える傾向はあるので、全体として炭素蓄積
量は増加傾向にあるのだろうと考えている。しかし、これだけ増加するには植物から3プールへの
炭素供給がかなり必要で、そのようなことが起こりうる要因が思い当たらない。
委員:徐々に炭素蓄積量が増えていくことはあると思う。しかし、変化量のグラフでも出てきたような
200%の増加というようなことは異常なことだと思う。 事務局:最近、森林の間伐も増えているので、これも炭素蓄積量の増加の要因にはなりうるが、その場
合にはまず枯死木のストックが増えるのが順当だと思う。なお土壌下層では炭素濃度が低く、その
ため炭素のわずかな増加でも変化量が大きくなることがある。
(2)京都議定書報告への反映方法の検討
【内容】
概要
反映方法の検討および算定システムの改良
試行の結果
第3期に向けて
【質疑】
委員:モデルの改良により、だいぶ予測値が観測値にあってきたということだが,今後、どこまで予測
値を観測値に近づけていくかについての目標はあるのか。
事務局:データの見方は人によっても異なるが、かなり観測値にあってきたと感じている。今後も改善
は必要だと思うが、現段階では、これまで議論されてきたとおり、観測のほうの不確実性も大きい
ので、さらにモデルを観測値へ近づけていくことには懐疑的な部分もある。
委員:土壌については観測値と予測値がほぼ 1 対 1 になっているように見える。 事務局:土壌については、もともと観測値と予測値が一致するようにチューニングしているから、あっ
ているという事情もある。それならばあうのは当然だという見方もあるが、このモデルの使用目的
を考えれば、観測値に近づけるようにモデルをチューニングするのは必要なことだと考えている。
委員:もしそのようにチューニングしたとしたら、むしろ観測値と予測値は完全に一致するはずなのに、
実際には多少ずれがあるのはどうしてなのだろうか。 散布図の一つ一つのシンボルは何を意味する
のか。
事務局:データは県ごとにまとめてあり、各シンボルは各県の値になっている。基準土壌炭素量はイン
ベントリデータをもとに階層的クラスター法によって分けられた地域区分ごとに求めている。たと
えば、ヒノキなら5つの地域区分に分けられるので、5つの基準炭素量がある。このように基準炭
素量は地域区分ごとに設定したのに対して、計算は県ごとに走らせているので、観測値と予測値は
完全には一致しないという状況が発生する。
林野庁:今回の改良では、集約単位と土壌の基準炭素量の両方を変えている。たとえば、集約単位は新
しいものにし、土壌の基準炭素量はこれまでの森定さんのものを使って計算したら、それぞれの要
素の改良効果がみえるのではないか。
事務局:たしかにそうすれば効果は見えるし、そのように各要素について、その効果を個々に分析して
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いくのはシミュレーションの基本だと考えている。しかし、今回はより良い算定値を出すのが、目
的なので、その目的とは少しずれてきてしまうと思う。
委員:第3期に向けた課題の中にベンチマークサイトの話が出てきた。農地のほうでも県の試験圃場に
「基準点調査」を行うサイトを設けている。このサイトでは何を育てて、何をどれだけ投入したの
かがすべて記録されているので、データはモデルの検証にも使える。森林のほうでも是非そのよう
なサイトを設置したら良いと思う。
林野庁:モデルでの算定についてはいずれにしろ検証をしなければいけないので、来年、第一期・二期
の結果を総括しながら考えていきたい。
委員:森林→農地、あるいは農地→森林というように土地利用が変化したところでベンチマークサイト
を設置するのも良いのではないか。これまで農地と森林は別個に調査を行ってきて、たとえば耕作
地が放棄され森林に遷移しつつあるようなところで土壌炭素がどのように変化するかというような
データはなく、検証すべきだという話もでている。現状だと土地利用が変わると、データが一気に
変わってしまう。
事務局:農地でベンチマークサイトを設定しているのは、農地の管理の影響を見たり、モデルを動かし
たりするためか。それとも、炭素蓄積量の平均値の変化を見るためか。
委員:国全体の農地の平均値を見るためには、べつに定点調査地がある。ベンチマークサイトはモデリ
ングをしたり、管理影響を見たりするために使っている。ここでは炭素の吸排出だけでなく、土壌
窒素やそのほか肥沃度に関わるパラメーターをとっている。現在の事業では炭素の吸排出をみるこ
とを目的としているが、炭素だけでは農家の人たちの役には立たない。
委員:データの精度を高めるのがベンチマークサイトの設置意義なので、森林でもやるとしたら、サイ
トをどのようにピックアップするかが重要になってくる。
事務局:森林総研には、いろいろな用途で作られた長期モニタリングサイトがすでにある。たとえば、
土壌呼吸をモニタリングしているサイトもあれば群落動態を調べるためのLTER(長期生態学研究)
のサイトもある。すでにあるこれらの中から選ぶのが現実的だと考える。
委員:モデルを使う側からはサイトの数やデータのクオリティへの要求はどんなものがあるのか。
事務局:これまで森林のほうでは、長期の変動データがなかった。モデルのチェックに使えるような時
系列のデータ、インプット、アウトプットといった炭素ストックを決める各要素のデータがない。
ただ、今からはじめてもデータが手に入るのはあと 20~30 年後になってしまう。 委員:インベントリ事業もすでに9年目なので、20~30 年はあっという間かもしれない。必要なら、将
来を見越して始めたほうがいい。
委員:今から、ベンチマークサイトを作っても決して遅くはないと思う。
委員:第3期に向けての課題に土壌型の決定があったが、これはどういうことか。
事務局:森林多様性基礎調査のほうに土壌型の項目があるが、これは実際に現地調査を調べたものでは
なく、土壌図などから引用してきたものである。
委員:今回の結果を真摯に受け止めて、担当者とも連絡を密にし、来年度、第三期はどのように調査を
するのか考えていってほしい。
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