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2020年度 事業計画書 2020年3月16日 公益財団法人 NHK交響楽団

事業計画書1 はじめに 2020年2月から3月にかけて行ったヨーロッパ公演は、18日間で7か 国9都市をまわる大規模なものであった。3年ぶりとなったヨーロッパでの演

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2020年度

事業計画書

2020年3月16日

公益財団法人 NHK交響楽団

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はじめに

2020年2月から3月にかけて行ったヨーロッパ公演は、18日間で7か

国9都市をまわる大規模なものであった。3年ぶりとなったヨーロッパでの演

奏は、前回(2017年)にも増して各地で高く評価され、当団の実力と存在

感をクラシック本場の地で示すことができた。創設から94年目となる202

0年度は、こうして得た圧倒的な評価を糧に日本有数の歴史を持つオーケスト

ラとしての良き伝統を継承、発展させていく。

首席指揮者パーヴォ・ヤルヴィとともに世界トップレベルのオーケストラを

目指す演奏活動は、2020年度も意欲的に進め、斬新かつ大胆なプログラム、

一流ソリストとの共演を繰り広げる。ケント・ナガノ、マイケル・ティルソ

ン・トーマス、といった巨匠指揮者の初登場、ショパン・コンクール直後に最

高位者を迎える5年に一度の企画など、演奏会のプログラムを彩り豊かに編成

していく。また、夏に開催される「2020東京オリンピック・パラリンピッ

ク」を音楽で盛り上げるために、5月から7月にかけて福島、広島、東京で4

回の特別演奏会を行うなど、日本の優れた文化芸術の発展、発信に寄与する取

り組みも活動の大きな柱としていく。

次世代の音楽家を育て、またクラシックファンの裾野を広げる教育プログラ

ムも、当団の持つ高水準の音楽芸術を生かした事業として大切なものである。

ファミリーで楽しんでいただく演奏会や小編成で全国各地にうかがう身近な演

奏会、また、若手の優秀な演奏者の育成事業などを行う。

2020年度後半からNHKホールが改修工事のため一時休館となる。この

ため、9月から定期公演の一部は東京芸術劇場に会場を移すことから、お客様

への周知広報活動は、ますます重要となる。SNSや紙媒体を戦略的に活用す

る情報発信やWEBチケットの利便性向上など、積極的なプロモーションとチ

ケット販売に力を入れ、安定した公演収入の確保をめざす。

また、NHKグループ唯一の芸術団体としてそれにふさわしい確実な組織マ

ネジメントを推進し、ガバナンスの強化、多様な働き方への対応などに取り組

む。

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1. 演奏計画

(1)定期公演

・Aプログラム:NHKホールで9プログラム18公演

・Bプログラム:サントリーホールで9プログラム18公演

・Cプログラム:4月から6月までNHKホールで3プログラム6公演

:9月から東京芸術劇場で6プログラム12公演

(9月から池袋Cプログラムと表記)

合計27プログラム54公演

公演の主な内容は以下の通り。

(2020年)

【4月】レナード・スラットキンが4年ぶりに登場、A、B、Cプロすべて

を指揮する。Aプロはサックスのブランフォード・マルサリスをソリ

ストに迎えてジョン・アダムス《サクソフォーン協奏曲》、Bプロは

現代アメリカを代表する作曲家の一人、マクティ《交響曲第1番》な

どを演奏。Cプロは今年生誕120年、没後30年となるコープラン

ドの作品を並べる。

【5月】 首席指揮者パーヴォ・ヤルヴィが、Aプロでショスタコーヴィチ

《交響曲第9番》、BプロでR.シュトラウス《アルプス交響曲》、

Cプロでプーランク《グロリア》を指揮。ソリストはヴァイオリンの

ジャニーヌ・ヤンセン、ピアノのジャン・イヴ・ティボーデなど。

【6月】 2019-20シーズンの締めくくりに3人の指揮者が登場。A

プロではケント・ナガノがマーラー《交響曲第9番》で当団を初めて

指揮する。Bプロは初登場の鈴木雅明がベートーヴェン生誕250年

を記念して《ミサ・ソレムニス》を指揮。合唱はバッハ・コレギウ

ム・ジャパン合唱団が務める。Cプロでは6年ぶりとなるフィンラン

ド出身のユッカ・ペッカ・サラステがシベリウス作品を演奏する。

【9月】 新たなシーズンは、首席指揮者6シーズン目となるパーヴォ・ヤ

ルヴィによるAプロのマーラー《交響曲第3番》で幕を開ける。東京

芸術劇場での池袋Cプロは、パーヴォの指揮でオール・バルトーク・

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プログラム。Bプロは下野竜也の指揮でコダーイとシューマンの作品

を演奏する。シューマン《4本のホルンのための小協奏曲》では、当

団ホルン奏者が共演する。

【10月】 桂冠名誉指揮者ヘルベルト・ブロムシュテットが3つのプログ

ラムを指揮する。Aプロでドヴォルザーク《交響曲第8番》、Bプロ

でブラームス《交響曲第4番》などの名曲を演奏。さらに、自身の出

身地スウェーデンの作曲家の作品として、Aプロではリドホルム《ポ

エシス》の日本初演、また池袋Cプロではラーション《サクソフォー

ン協奏曲》を須川展也と共演する。

【11月】 2019年の東京・春・音楽祭で共演したダーヴィト・アフカ

ムがAプロで当団定期を初めて指揮。ドビュッシー、ラフマニノフの

作品に加えて、今年の第18回ショパン国際コンクール最高位者と共

演する。また、初登場のマイケル・ティルソン・トーマスがBプロで

は武満徹《セレモニアル》など、池袋Cプロではマーラー《交響曲第

6番「悲劇的」》を指揮する。

【12月】Aプロは井上道義指揮でショスタコーヴィチ《交響曲第13番

「バビ・ヤール」》、Bプロは2年ぶりのフェドセーエフがチャイコ

フスキー《バレエ音楽「眠りの森の美女」(抜粋)》など、またCプ

ロはフィンランド出身のハンヌ・リントゥの指揮でストラヴィンスキ

ー《バレエ音楽「ペトルーシカ」》と、3人の指揮者によるロシア音

楽が並ぶ。

(2021年)

【1月】 スペイン出身のファンホ・メナがAプロでラヴェル《「ダフニス

とクロエ」組曲第1番、第2番》などを指揮。B、池袋Cプロは、毎

シーズン登場のトゥガン・ソヒエフが指揮する。Bプロでは、当団奏

者をソリストにバッハ《ブランデンブルク協奏曲第1番》などドイツ

の作曲家を、池袋Cプロではラヴェルなどフランスの作曲家の作品を

とりあげる。

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【2月】 パーヴォ・ヤルヴィが3プログラムを指揮する。Aプロは、生誕

130年となるプロコフィエフの作品ばかりを並べる。Bプロではブ

フビンダーの独奏でベートーヴェン《ピアノ協奏曲第5番「皇

帝」》、池袋Cプロではバティアシヴィリの独奏でシマノフスキ《ヴ

ァイオリン協奏曲第1番》など豪華ソリスト達との共演が続く。

(2)特別公演

定期公演以外で当団が主催して行うもの。

2020年度は、下記の公演を予定している。

① Music Tomorrow 2020(5月4日 東京オペラシティ)

優れた現代音楽作品を取り上げて、新たな音楽文化の創造に寄与する

ことを目的とした演奏会。今回は、ロバート・スパーノの指揮で第68

回尾高賞受賞作品とともに、レシュノフ《ヴァイオリンのための室内協

奏曲》や日本を代表する作曲家のひとり西村朗に当団が委嘱した新作な

どを演奏する。

② オラトリオ《箱舟》(日本初演)(7月4日 サントリーホール)

「東京2020公認プログラム」として行う特別演奏会。ドイツの

作曲家イェルク・ヴィトマンによる《オラトリオ「箱舟」》を、この

作品を世界初演したケント・ナガノの指揮、同じく世界初演を担った

ソリスト、合唱団、さらに日本の合唱団、児童合唱団などで日本初演

する。

3月に作曲者本人による作品レクチャーを行ったり、7月の演奏会

前に指揮者などを交えたワーク・ショップを行ったりして、演奏会へ

の理解誘導を図る。

③ 明電舎 presents N響名曲コンサート(7月17日 NHKホール)

明電舎協賛による名曲コンサート。フィンランドの新鋭クラウス・マ

ケラの指揮でチャイコフスキー《交響曲第6番「悲愴」》、当団欧州ツ

アーにも参加したソル・ガベッタとの共演でエルガー《チェロ協奏曲》

を演奏。クラシック音楽のファン層拡大を図る。

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④ 松山公演(7月19日 愛媛県県民文化会館)

愛媛県内の多くの企業の協賛をいただいて毎年行っている。演奏内容

は上記の「N響名曲コンサート」と同じ。

⑤ N響ほっとコンサート(8月2日 NHKホール)

夏休みにファミリー向けに行う演奏会。今回は指揮沖澤のどか、ピア

ノ牛田智大のフレッシュなコンビを中心に会場も巻き込んだ楽しいコン

サートとする。また、来場者がオーケストラで使う楽器に自由に触れて

音を出してみる体験コーナーを設ける。当団楽員も参加して直接指導を

行う。

⑥ ベートーヴェン「第九」演奏会

(12月22日、23日、26日 NHKホール)

(12月27日 サントリーホール)

年末恒例のベートーヴェン交響曲第9番。今回は、パブロ・エラス・

カサドが指揮をする。

(3)地方公演

① NHK音楽祭(11月30日 NHKホール)

毎年、世界の一流オーケストラを招いて開催されているNHK音楽

祭。今年はそれぞれのオーケストラの国にちなんだ曲を演奏する。当

団は、三善晃、伊福部昭などの作品をアレクサンドル・ヴェデルニコ

フが指揮する。

② NHKとの共催により全国各地で実施する公演

2020年度は、大阪、高知、高松、西宮、甲府、(未定1)の合

計6都市で行う。

(4)契約公演

主催者の要望により出演する公演。「東京・春・音楽祭」やオーチャ

ードホールでの定期的な公演など、全国各地で34公演を予定してい

る。

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(5)放送演奏

〇 定期公演は各回とも、1日目にFMで生放送、またテレビ(「クラ

シック音楽館」)で後日放送される。9月の新シーズンから東京芸

術劇場で開催する池袋Cプログラムについても、NHKホールと同

様の放送が行われる。また、4K・8Kスーパーハイビジョンの生

放送、収録も随時行われる。

〇 大河ドラマのテーマ音楽や「名曲アルバム」などの録音を行う。

〇 「東京2020公認プログラム」として東京オリンピック・パラリ

ンピック関連特別演奏会を行う。

5月26日 福島県文化センター

5月30日 広島県立文化芸術ホール

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ

ヴァイオリン:服部百音(福島)

ピアノ:河村尚子(広島)

6月4日 NHKホール

指揮:山田和樹

ヴァイオリン:樫本大進

ヴィオラ:アミハイ・グロス

2. アウトリーチ活動

(1)全国各地での室内楽演奏

「1.演奏計画」で記したコンサートホールで行う演奏以外でも、出来

るだけ多くの方々に演奏を聴いていただくために、大編成のオーケス

トラでは行くことが難しい小規模の会場などで、N響メンバーによる

演奏を楽しんでいただく。自治体や公共団体など様々な団体・企業か

らの依頼をうけて実施する。また、病院や老人施設での演奏や、練習

所のある港区と連携した演奏会も行う。年間30回程度を予定してい

る。

(2)ロビーコンサート

9月の新シーズンから東京芸術劇場で開催する池袋Cプログラムの

開演前に、ホールロビーで小編成演奏を行う。演奏者の演奏と素顔を

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間近で楽しんでもらうことで、舞台上のオーケストラとは一味違う親

近感を深めていただく。「契約公演」においても主催者からの依頼に

応じてロビーコンサートを行う。

3. 教育プログラム

若い世代に様々な形でクラシック音楽に親しんでもらい、次世代の

演奏家やクラシックファンの育成を目指した活動に取り組む。

(1)「NHKこども音楽クラブ」

次世代を育てる教育プログラムとしてNHKと共催して全国各地で

実施。学校の体育館などを会場に弦楽合奏、管楽アンサンブルなど生

の演奏を届ける多彩なプログラムで10か所程度を予定している。当

日の様子は、後日NHKのホームページで紹介される。

(2)オーケストラ公演と連携した室内楽演奏、楽器クリニック

公演の日程にあわせて学校などでの室内楽演奏や楽器クリニックを

開催。若い世代にクラシック音楽に親しんでもらい、楽員と直接ふれ

あう場とする。室内楽演奏は足利公演、いわき公演、福山公演で予定

しており、他の公演でも実現を目指す

(3)特別公演の理解促進を目指すワークショップ

7月に行う特別公演「オラトリオ《箱舟》」の本番前に、サントリ

ー小ホールでレクチャーと音楽体験を盛り込んだワークショップを開

催。指揮者も参加し、日本初演作品を楽しく学ぶ。

(4)留学生招待

首都圏で学ぶ外国人留学生を公演に招待する活動は、クラシック音

楽に触れる貴重な機会として、また海外の方に当団を知ってもらう一

助として継続する。

(5)「N響アカデミー」

日本のオーケストラの若手演奏家の育成を目的にスタートした「N

響アカデミー」は18年目となる。これまで44人がこのアカデミー

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から巣立ち、当団を含め日本、海外のオーケストラなどで活躍してい

る。

2020年2月現在、11人がアカデミー生として在籍(ヴァイオ

リン4人、ヴィオラ2人、チェロ1人、トランペット1人、ホルン1

人、打楽器2人)。楽員によるレッスンの受講やリハーサル見学、楽

員の指導のもとで演奏会に出演するなどの研鑽を積んでおり、202

0年度も継続する。

4.収入の確保と広報活動

(1)定期会員の維持拡大

財源の大きな柱は公演収入であり、それを安定的に支えているのが

定期会員券の売り上げである。しかし定期会員は、高齢化や趣味の多

様化などの影響で減り続けている。帰宅時間に配慮した公演時間の前

倒しや新たな客層につなげる団体セールスなど販売手法の開発を図

る。

インターネットから24時間手数料なしで予約購入ができる「WE

BチケットN響」は、会員の継続や席替えなど手続きの利便性向上に

つながっており、一層の利用促進を図る。また、毎年会員に先行配付

しているシーズンを通した解説の冊子など、特典の内容をさらにブラ

ッシュアップし、会員の定着につなげる。

(2)1回券の販売強化

「WEBチケットN響」の利用率は全体で80%を超えており、1

回券の販売にさらにいかしていく。これと連動した広報用のSNS

は、Facebook や Twitter に加え、2019年度から Instagram も取り

入れた。公演の舞台裏や出演者の横顔などを、動画を交えながら海外

を含めて広くタイムリーに発信し、当日券を含めた1回券の販売拡大

につなげる。

また、紙媒体では、2019年度から個々の公演をより印象付ける

ため月々の定期公演チラシを刷新した。ファンの収集の対象にもなる

など関心を呼んでおり、同じデザインをポスターやデジタルサイネー

ジなどに積極的に展開し、幅広い年代層への周知宣伝につなげる。

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(3)定期公演の会場変更に伴う積極広報

今年9月の新シーズンからは、NHKホール等の改修工事に伴い定

期公演Cプログラムの会場を池袋の東京芸術劇場に変更する。2シー

ズンもの長期にわたって、ホールの収容能力が下がり、渋谷に通い慣

れた会員への影響も予想される。現行のCプロ会員には、すでに様々

な方法でていねいに周知を続けているが、会員離れを防ぐと同時に、

新たな顧客の獲得につなげるため、池袋を中心に重点的な広報宣伝を

行う。

このうち広告では、変更に先立って池袋の商業地区での街頭ビジョ

ンや乗り入れる鉄道の交通広告、新聞のエリア広告、webなどを通

じて「N響池袋へ」のPRを展開する。また、豊島区や東京芸術劇場

と連携し、劇場横の屋外ステージを使ったイベントをはじめ、区の施

設や学校での教育プログラムなどを企画し、N響池袋公演の認知度を

高めていく。

(4)海外からのお客様サービス

海外のお客様がインターネットで直接、チケットを予約購入出来る

よう「WEBチケットN響」の英語サイトの構築に取り組む。また、

当団のHPや機関誌の「フィルハーモニー」など出版物の英語表示を

さらに進め、広報の国際化に努める。2020年度には、新たに定期

公演の場内放送に「英語アナウンス」も取り入れ、海外からのお客様

や留学生にも安心して公演を楽しんでいただけるよう心がける。

5. 特別支援・賛助会員の維持と新規開拓

特別支援、賛助会員の会費は、当団の財政を支える柱の一つである

が、会員数では依然として一進一退を繰り返している。これら企業の

CSR活動は、景気や業績に影響されやすいうえに、近年盛り上がり

を見せるワールドカップ競技や東京オリンピック・パラリンピックな

どスポーツに支援の比重が移る傾向も見られる。当団の演奏活動や社

会貢献の取り組みをていねいに説明し、新規会員の勧誘に努める。既

会員についても、当団の活動に理解をいただきながら息の長い支援を

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お願いしていく。

6. 多様なツールによる演奏の発信

(1)インターネットの活用

インターネットを通じた音楽配信は世界の潮流であり、これに向け

た試行や態勢の整備をさらに進める。2017年度から株式会社イン

ターネットイニシアティブと協力し、一部の公演に限って、収録した

演奏のハイレゾ配信(高音質)と映像配信を期間限定で試行してき

た。4年目となる2020年度は二つの公演を収録し、臨場感にあふ

れた配信を行う予定。一方、計画段階にあったスカパーによるクラシ

ック専門の動画配信チャンネルは、2020年度に稼働する予定で、

当団の演奏が提供される。すでに諸外国の一部の楽団も提供を予定し

ており、これを契機にインターネットを通じた発信力を高めていく。

(2)国際放送への展開

放送では、海外向けの国際放送「NHKワールド JAPAN」で当団の

演奏を特集した番組「Master Pieces performed by NHK Symphony

Orchestra」がスタートし、2019年度は計6本が放送された。これ

らはインターネットによるライブストリーミングでも世界各地で視聴

されており、2020年度も引き続き番組制作に協力し、当団の国際

化につなげていく。

7. 健全な財団運営とガバナンスの強化

海外からの招聘費用の高騰など支出が増加傾向にある一方で、クラ

シックファンの高齢化による定期会員の減少やオーケストラ間の競争

の激化など当団をとりまく環境は一層厳しさを増している。公益財団

法人として健全な財政を将来にわたって維持していくため、効率的で

透明性の高い組織運営を推進するとともに、メリハリのある予算執行

により、N響の存在感を高める財団運営を図っていく。

改正放送法で求められたNHKグループのガバナンス強化に資する

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ため、内部監査体制の充実に取り組むとともに、リスク管理とコンプ

ライアンス意識の醸成に努める。2020年度は外部の内部統制支援サー

ビスを利用し、年度内1回の実地監査を行う。

2020年4月に施行される働き方改革関連法に適切に対応すると

ともに、「NHKグループ働き方改革宣言」の主旨に沿って改革を進

め、適切な労務管理に一層配慮していく。

8. 練習環境の整備

高輪演奏所(兼事務所)は、5年前に大規模なリニューアルを行い

練習環境の改善を図った。引き続き建物の所有者であるNHKと連携

しながら必要な改修やこまめなメンテナンスを行い、演奏能力の向上

に資するよう努める。

将来は事務所を併設したクラシック音楽の専用コンサートホールの

建設が実現するよう、関係各方面に働きかけていく。