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建設業における CAD 利用状況と CAD 利用の動向に関する研究 A study of the CAD use situation in the construction and the trend of the CAD use 設計•情報 宮腰研究室 G044073 真木裕太

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建設業における CAD 利用状況と CAD 利用の動向に関する研究

A study of the CAD use situation in the construction and the trend of the CAD use

設計•情報 宮腰研究室

G044073 真木裕太

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目次

1章 序論 1-1. 研究の背景と目的 ••••••••••••••••••••••1

1-2.CAD 教育の重要性 ••••••••••••••••••••••2

2章 建築における CAD 2-1.CAD の歴史 ••••••••••••••••••••••3

2-2.組織における CAD 教育 ••••••••••••••••••••••4

2-3.CAD 設備の普及 ••••••••••••••••••••••5

2-4.建築以外の CAD ••••••••••••••••••••••6

2-5.既往研究 ••••••••••••••••••••••7

2-5-1.CAD 教育に関する研究 ••••••••••••••••••••••7

2-5-2.CAD 技術に関する研 ••••••••••••••••••••••8

2-6.まとめ ••••••••••••••••••••••8

3章 アンケート調査 3-1.調査目的 ••••••••••••••••••••••10

3-2.調査方法 ••••••••••••••••••••••10

3-3.調査結果 ••••••••••••••••••••••11

3-3-1.CAD 導入率 ••••••••••••••••••••••11

3-3-2.3 次元 CAD 使用割合 ••••••••••••••••••••••12

3-3-3.会社規模による 3次元 CAD ••••••••••••••••••••••14

3-3-4.設計部内構成員における CAD 使用年数 •••••••••••••••14

3-3-5.CAD 導入年数 ••••••••••••••••••••••15

3-3-6.CAD を指導できる人数 ••••••••••••••••••••••16

3-3-7.CAD オペレータについて ••••••••••••••••••••••17

3-3-8.CAD を運用する上での問題点 ••••••••••••••••••••••19

3-3-9.CAD に関しての会社の取り組み ••••••••••••••••••••••20

3-3-10.外部委託について ••••••••••••••••••••••23

3-3-11.使用ソフトについて ••••••••••••••••••••••24

3-3-12.CAD に関して望むこと ••••••••••••••••••••••25

3-4.まとめ ••••••••••••••••••••••26

4 章 情報構築を基盤とした CAD システムと国内の状勢

4-1.海外の 3次元 CAD 活用 ••••••••••••••••••••••28

4-2.日本建設市場の状況 ••••••••••••••••••••••29

4-3.国内の 3次元 CAD 活用 ••••••••••••••••••••••30

4-4.BIM の活用 ••••••••••••••••••••••31

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4-5.日本での BIM 導入 ••••••••••••••••••••••32

4-6.BIM を利用した設計プロセス ••••••••••••••••••••••33

4-7.まとめ ••••••••••••••••••••••34

5 章 結論

5-1.本研究のまとめ ••••••••••••••••••••••35

5-2.今後の展望 ••••••••••••••••••••••37

脚注 ••••••••••••••••••••••38

参考文献 ••••••••••••••••••••••39

謝辞 ••••••••••••••••••••••40

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1 章 序論

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1-1.研究の背景と目的

1985 年代以降、情報通信関係の法律の改革、民営化された NTT などと共に社会の高度情報

化が進んだ。また、通商産業省(当時)を中心に各省庁協力のもと産業の情報化政策や施策

が行われた。文1)

20 年後の現在では、情報通信技術の発展や図面の効率化、修正の容易さ、またデータの互

換性が高まり建築業界において図面の電子化が一般的になっている。図面を作成するための

道具は、従来のペンやドラフターから CAD(Computer Aided Design)が主流になっている。

会社で CAD を利用する設計技術者、施工技術者の多くは、大学などで CAD について何らか

の学習の経験があると思われる。しかし、学習した CAD ソフトと会社で使用している CAD ソ

フトは必ずしも同じではない。多くの CAD は、レイヤや色の違いによって線の太さを表現す

るなど基本的な操作方法や共通点が多い。一方、ソフトによって特有の機能が存在する。特

定の CAD ソフトを修得しても、会社で使用している CAD ソフトが異なれば、修得した CAD の

知識が業務の中で活用できないことが考えられる。

求人をする際、会社は技術職に対して、技術的な専門知識を有していることを求めている。

しかし、設計業務を行ううえで必要な CAD の知識については明らかではない。

一方、新たな設計手法として BIM(Building Information Modeling)が注目されている。BIM

とは、3 次元 CAD を中心に設計を行い全ての設計情報を共有して作業を進めるという手法で

ある。

そこで本研究は、建築系会社の CAD 技術者に対して、現在の CAD 利用状況や要求を調査し、

建設業における CAD 利用の状況を明らかにするとともに、BIM など新たな手法に対応するた

めには、今後技術者にはどのような技術が、要求されるかを考察することを目的とする。

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1-2.CAD 教育の重要性

建設業において、CAD を最も使用するのは CAD オペレータである。本報では、CAD オペレー

タを、大まかな設計内容から詳細図を作成するもの、図面を CAD データにトレースするもの

と定義する。

現在 CAD のソフトは約 1600 種類あり、日本の建築関係の会社は 60 万社前後といわれてい

る。日本の建設就業者数は 568 万人であり、建設業に就いている者が全て CAD に接するわけ

では無い。しかし今後建設業に就業する者は、図面作成において以前は手描きが主流だった

が、現在は CAD が主流になっていることから、教育機関で CAD につての何らかの学習はして

いる。現在の設計技術者にとって、設計の意図を的確に効率よく表現するために CAD 操作能

力は今後必要な能力である。

そのため今後、CAD の学習方法が重要になってくると考えられる。CAD は、毎年新たなバー

ジョンが更新され常に進化している。教育機関で学習した CAD ソフトが既に最新ではない可

能性がある。また、BIM のような CAD を利用した新たなシステムに対応するためには、従来

のように、組織で運用している 2次元 CAD システムを学ぶだけでは不充分である。

今までの国内建設産業は、競争相手が国内の会社同士であることが大半であった。しかし、

現在は国際化が進み、日本の建築家や大手建設会社以外にも各分野の会社が、海外に進出し

ている。一方、海外から日本に進出してくる会社も当然存在する。海外では、既に BIM など

の新たなシステムにより建設が行われているため、海外の会社は日本の建設会社にも同様の

システムの運用を要求してくることも考えられる。その時に、日本の建設会社が海外の会社

の要求に応えるためにも、従来の CAD システム以上の CAD システムを学習、教育していく必

要がある。そのため設計技術者に限らず、施工技術者なども常に、CAD 教育を受けられる環

境でなければならない。

社内の CAD 運用状況から、新たな CAD を指導する技量がなければ、CAD ソフト会社に教育

を委託するなどの方法がある。実際に、文部科学省では平成 19 年度社会人の学び直しニーズ

対応教育推進プログラムとして、建築分野では CAD 技能習得プログラムが教育機関に委託さ

れた。このプログラムは、建築•土木系の学科を卒業し、就職後に家庭の事情により離職した

女性を対象に行っている。コースは、1)社会に復帰するために CAD 技能の再習得を目指した

経験者コース、2)これまでに CAD を操作した経験は無いが CAD 技能を習得して社会復帰を目

指す女性に対する初心者コースの 2 つがあり、社会に復帰する試みが行われている。このよ

うな試みは、教育機関で過去に自分が学んだ CAD より新しい CAD を学ぶことができ、新しい

技術に触れることができることに意義がある。現在は、まだそれほど大きなプロジェクトで

はないが、社会人に社内や業務以外で最新の CAD を体験できる機会は、増やすべきである。

そのことにより、新たな CAD の存在に気付き、体験することにより 2 次元 CAD 以上の利便

性や可能性に気付くことができる。

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第 2章 建築における CAD

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2-1.CAD の歴史

CAD は、1960 年米空軍のプロジェクトがきっかけとなり開発が開始されたものである。1962

年アイバン•サザランドが CAD の原型の Sketchpad を開発した。1967 年米 Lockheed 社が航空

機設計用として CADAM を開発した。1970 年頃から 3次元 CAD の開発がはじまり、1980 年中頃

には、日本 IBM 社で CADAM が発売された。1982 年米 AutoDesk 社が AutoCAD を販売する。1991

年フリーソフト JW_CAD が発表された。1994 年 AutoCADLT 販売され JW_CAD や AutoCAD は毎年

新しバージョンが発表•販売されている。さらに AutoDesk 社から 3 次元設計ソフトをベース

にした建築設備設計用ソフトが発売された。また、日本において、建築設計全てに対応する

ソフトを提供しているのは、AutoDesk 社が唯一のプロバイダである。日本における AutoDesk

社のシェアは不明だが、CAD 使用者への認知度は高い。

海外での BIM 導入の流れを受け、日本でも BIM の導入が始まれば建築用 3 次元 CAD が必要

になる。AutoDesk 社は、BIM 専用の Revit を販売している。Revit とは、相互に関係のある

デジタルデータをもとに、モデルの作成や情報の管理を、設計から建設、メンテナンスまで

の総合的な運営を可能にし、図面間の整合性確保に優れている。また、日本のソフトメーカ

ーとも協力し、Revit をベースにした建築設備設計用のソフト RevitMEP も開発している。ま

た、日本のソフトメーカーでも、単体では優秀なソフトは存在する。しかし、BIM のように

データ間の関連性が重視されるシステムの場合は、図面上の表現の使用などを考慮すると、

同じソフトメーカーで統一する方が便利である。その点からすると、AutoDesk 社は他のソフ

トメーカーよりソフト開発でリードしているため、BIM が導入された場合、有力なソフトと

なる。

最近では、3次元のソフトの SketchUp のように 3次元を素早く簡単に作成、表示、編集で

きるソフトも無料でダウンロードできる。ドイツのコクリエイト•ソフトウェア社の無償 3次

元 CAD ソフトが世界累計でダウンロード登録件数が 5万件を突破したと発表した。

ここに示した以外にも多くの CAD が毎年発売されている。また、CAD にはあらゆる図面を

描くことができる汎用型とあらかじめ建築条件を与えておくことにより積算•見積書の自動

作成ができるなど、建築の作業に特化した専用型がある。専用型と BIM は、自動的に図面を

作成する点と効率化を目指したという共通点がある。しかし、専用型は設計に自由度は低く、

設計者が楽をするために考えられている。対し BIM は、設計に制限は無くあらゆる形が設計

可能である。また、効率化という面では図面を作成する過程は短縮されたが、それは設計者

に楽をさせるためではなく、設計者が設計の本質的なことに専念できるようにするためであ

る。そのため BIM は、最新の CAD システムといえる。

CAD が普及した理由として、簡単に正確な図面を作成できることや編集、複製や他の図面

との標準化が容易なことなどがある。しかし、市販の CAD の多くは毎年バージョンアップす

るため、その度に高額なライセンス料が発生する。また、元請けの企業の使用している CAD

に合わせるため下請け企業は他の CAD に変更できないという問題がある。

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2-2.組織における CAD 教育

実務に CAD が導入された当初は、建築の教育機関でも CAD 学習について十分とは言えなか

った。そのため、CAD を導入した設計組織では CAD オペレーターの教育に重点がおかれてい

た。CAD オペレーターは、設計者を補助し設計の意図を受け取り、CAD システムを用いて建築

データを入力するオペレーターに対してである。また、当時 CAD オペレーターは建築の専門

家ではない。

設計者に対しての CAD 教育は社内で行われる場合が多い。理由として、組織ごとに設計の

方法や CAD の運用状況が違うためである。また、情報の漏洩を防ぐためにも外部には任せに

くいと考えられる。社内での教育により、学習の成果を期待するのであれば、独自に教材を

作成したり、カリキュラムを編成したりしなくてはならないため困難な作業になる。

現在、CAD を使用する業務内容は、意匠設計•施工図作成や積算など多く存在する。その中

には、専門的な知識や経験が要求されるがある一方、専門的な知識や経験が要求されない職

業もある。つまり、現代の社会では CAD を修得し転職や就職に活かすことが容易な状態にあ

る。

しかし、大学などの教育機関で CAD の使い方を修得しなかった者にとっては、CAD の技術

を自力で修得せざるをえない。全くの初心者がテキストをもとに学習しそれを就職に役立て

るのは困難に思われる。CAD ソフトのライセンス料も高額で個人の負担としては大きい。そ

のため、現在は CAD スクールや CAD 講座などが数多く開講されている。

CAD スクールは、転職や就職にすぐに活用できる技術を学習している。しかし、大学では

施工図や配管図などの学習は少なく、建築を設計するためのプロセスや考え方を学習してい

る。また、ある CAD スクールでは、2006 年度の CAD 利用技術者試験では全体の 30%近くの合

格者を輩出した例もある。このことから、CAD スクールでは CAD を扱う技術を一定の水準ま

で教育しているところもあると考えられる。

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2-3.CAD 設備の普及

建築分野での OA 化の始まりはワープロの導入である。その後、ビジネスソフトや表計算を

使い始め CAD に至っている。パソコンの性能向上により比較的安価に、また容易に 3 次元シ

ステムを利用できるようになった。

CAD を利用するメリットとして作図作業の効率化や図面データの 2次利用が挙げられる。2

次元利用として最も簡単なのは、類似した図面や建築物を造るときに作成済みの図面データ

を複写し、追加、変更を加えて利用できることである。この方法は、仕上げ表や仕様書など

で利用価値が高い。また、建築分野で CAD の導入は情報量の多い意匠系よりも構造系の方が

早く利用され始めていた。

CAD を運用する上で問題となるのが出力の環境整備である。CAD が普及し始めた頃は、多く

の場合 4~5台程度のパソコンに 1台のプリンタというケースがほとんどであり、それらをケ

ーブルで結び切り替え機で出力していた。しかし、作業が集中する際には印刷待ちが発生し

てしまい作業効率が落ちてしまう。そのようなケーブルからレーザーや LAN などに主流が移

行し始めた。

1990 年代には、以前プリンタの主流であったドットインパクト式からレーザー式に主流が

移行した。同じことが、プロッタでも始まった。1992 年当時では、A1 版の普通紙に出力でき

るプロッタは、200 万円程度のペンプロッタか、700 万円のレーザープロッタであった。その

後、インクジェット式、LED 式のプロッタが登場し価格は低価格になった。現在のプロッタ

は、A1 を 1 枚印刷するのに要する時間は 44 秒である。このように、ハード面での高性能化、

低価格化により CAD の設備を個人でも整備しやすくなった。価格の変化を表 1に示す。

また、ソフト面のフリーソフトの存在も CAD 化の裾野を広げた。ソフトの価格の変化を表

2-1 に示す。

表 2-1.周辺機器の性能、価格変化

1992 年 1997 年 2007 年

パソコン本体 50 万円 40 万円 34 万円

CPU 33MHz 233MHz 2GHz

メモリー 4MB 32MB 1GB(最大 4GB)

HDD 120MB 3GB 500GB

カラーディスプレイ 25 万円 10 万円

プロッタ 180 万円 35 万円 34 万円

(A1、ペン) (A1、カラーインクジェット) (A1、カラーインクジェット)

合計 255 万円 85 万円 68 万円

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表 2-2.CAD の価格変化

1992 年 1997 年 2007 年

JW_CAD 無料 無料 無料

DRA-CAD シリーズ 35 万円 25 万円 16 万円

AutoCAD LT ー 12.8 万円 20 万円

AutoCAD 115 万円 86.8 万円 71 万円

MiniCad

(Vector Works) 19.8 万円 19.8 万円 18 万円

2-4.建築以外の CAD

自動車、電子、金型メーカーなど 2次元 CAD、3 次元 CAD を利用している分野は幅広い。図

2-2 にあるように建設業で使用する 3次元 CAD 機能を有するソフトは高くても 70 万円程度で

ある。建築の場合は中小企業や個人でも買うことができるが、精密金型などの製造に使用す

る 3次元 CAD は約 500 万円であり、中小企業などでは導入しにくい。

最近では、価格を抑え、使いやすくした 3 次元 CAD ソフトが販売されている。設計図面の

必要な要素だけ 3次元表示でき、他社製ソフトとの交換性を高めているのが特徴である。

自動車、電子メーカーの設計現場では、3 次元 CAD は標準化し、金型メーカーにも 3 次元

設計図を通した発注が多い。経済産業省によると、中小・中堅会社の 2次元 CAD 普及率は 82%

であるが、3 次元 CAD の普及率は 58%である。3 次元 CAD の普及率が低い原因は、高価で使

いこなせる人材がいないことである。図 2-3 は、(財)産業研究所「中小企業におけるものづ

くり技術の導入・利用に関する調査研究」の調査結果である。

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図 2-1.CAD・CAM 導入率 (2007 年、複数回答)

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2-5.既往研究

2-5-1.CAD 教育に関する研究

既往研究において CAD 教育に関しての研究は数多く行われている。

赤木らは文2)文 3)文 4)、、

CAD 演習授業において受講者の授業の取り組み方について、相談行為

に基づく受講者間の関係性及び、相談グループの形成規模とその特性を明らかにした。その

結果、CAD 演習授業における教育環境整備の基本的指針を得ることを目的に調査を行った。

調査対象は、大学 2年生 72 名、授業担当者 5名である。受講者は全員大学で初めて CAD を

受講した者である。また受講者の座席は最初の授業で選択させ以降固定させた。調査方法は、

受講者に対してアンケートを行った。期間は、2 年生後期の半期である。調査結果は、ほぼ

全ての受講者間において相談関係が存在した。特に相談を持ちかけられた KP(キーパーソン)

ビ Mの存在が重要であることを明らかにした。KP は、PC 経験者であり、授業の把握が比較的

容易で、CAD 操作よりも課題に対する質問を行う受講者であることを明らかにした。

次に赤木らは、KP が中心となって形成されたグループの特性を明らかにした。アンケート

を点数化することで基準を作成した。グループの総数は、44 グループであり、KP を有してい

ないグループもあった。基準より、KP を有しているグループの方が授業の把握が容易である

ことを明らかにした。また、グループの規模は 3 名が望ましいことも明らかになった。これ

らから、関係グループの構成内容は KP を有する 3人規模で横系列の座席配置をとるのが望ま

しく、KP が関わりうる最大人数は 5人であることが明らかになった。

今後の物理的教育環境としての環境整備条件の基本的指針を得た。質問内容を指標として

分析を行い、受講者を類型化することで受講者の特性を分析した。分析より、①KP は他の受

講者の相談役として比較的多くの学生に情報を教えることのできる受講者であると考えられ

る、②仮に KP がいなくても 5~6人のグループを形成することが望ましいと考えられる。

手越らは文5)、建築設計の初期段階の思考プロセスを分析、構造化し、CAD や Web ツールを

利用して、建築 CAD 技術を習得した設計の初心者が建築 CAD デザインの技術を習得するため

の学習モデル、学習カリキュラム及び学習システムを提案した。さらに提案したものを多人

数を対象とした建築 CAD デザイン教育に適用して、有効性を示した。

建築設計のプロセスを、企画段階、構想段階、基本段階、実施段階に分類した。ここでは、

提案する学習モデルの適用範囲を企画から基本設計までとした。建築 CAD デザインの学習モ

デルに必要な機能を 7 つに分類した。課題の難易度、進捗評価、評価基準、外部評価、知識

の外在化、学習解説、自己点検である。

学習モデルの提案では、課題•学習•自己点検のサイクルを繰り返し評価により習得状況を

確認することによって技術を習得させた。

次に、建築 CAD デザイン実習科目への適応を行った。被験者は、2 次元の空間を記述する

技術や、模型、パース、CG により 3次元の空間を構成する技術を習得した学生である。課題

には、4段階の難易度を設けた。適用の結果、全ての難易度において評価基準を達成した。

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その結果、提案した学習モデルは、指導者が評価する従来の方法に比べて、多様化した学

習者の自発的な学習意欲を実現した。これらの結論は、提案した学習モデル、学習カリキュ

ラム及び学習システムが多人数を対象とした建築 CAD デザイン教育に対して有効であること

を示した。

2-5-2.CAD 技術に関する研究

須藤らは文6)文 7)、建築設備系においての CAD の実態について、設備系企業における CAD シ

ステムの導入状況及び、設備系企業における CAD システムの運用状況に関する調査から建築

設備系学科のカリキュラムの構築に必要な指針を得るための調査を行った。

調査対象は、平成 6 年度における売上高上位 360 社程度、大学への求人 120 社程度を加え

て抽出した。回収率は 32.7%であり、CAD 導入の事前調査では、PC 導入率は 9 割であった。

次に、CAD システムの導状況に関する分析を行った。CAD 導入の割合は、PC を導入してい

る企業の 7 割を占めた。特に設計部門と工事部門において導入の割合が大きいことが分かっ

た。設備専用 CAD の導入の割合は、6 割近くを占めており普及率は高いことが明らかとなっ

た。CAD 運用者の状況は、導入割合が大きい設計及び工事部門において 20 代が最も多く、女

性の割合も高い。男子においては 20~30 代が圧倒的に多いことが明らかになった。

最後に、運用者の詳しい実態と教育カリキュラム上の実施状況及び CAD を運用するうえで

の問題点についての資料を得る目的で調査を行った。CAD 運用状況は、企画設計及び工事部

門で割合が多く、積算部門での割合が少なかった。CAD 運用者の状況は、運用者が初めて操

作する割合が 9 割近くに達した。このことから、設備系 CAD 教育がほとんどされていないこ

とが推測された。今回の結果から設備系企業における CAD システムは重要性がまし、運用者

には高い習熟度が要求される。また、今後は設備系教育機関の CAD 教育実態調査を進めた。

情報分野では、CAD に限らずシステムの構築方法やセキュリティの動向調査などは多く行

われている。中でも社団法人日本情報システムユーザー協会という機関が過去 12 年間、企業

IT 動向調査というものを行っており建設業も含まれている。

2-6.既往研究まとめ

手越らの研究は、設計初期段階や WEB を利用するなど着眼点が BIM に共通している。そし

て初心者でも CAD を習得するための学習モデル、カリキュラムを提案し、有効性を示した。

今後 BIM が日本で普及し始めた場合、会社が初めて 3 次元 CAD や BIM を利用する場合、明確

なん教育方法が存在しなければ対応が遅れてしまう。手越らの研究が直接会社での教育方法

になるとは限らないが、教育方法を作成する際の参考になる研究だと考えられる。

須藤ら研究は、建築設備系企業においての CAD 導入状況や運営状況を調査したが、本研究

では調査されなかった入社前後の研修体制なども調査•分析する。

情報分野での調査は、情報システムの信頼性や情報セキュリティの状況など組織の上層部

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を中心に行っていた。本研究のように組織の現場での CAD 運用状況や今後必要とされる技術

を調査したものではない。

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3 章 アンケート調査

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3-1.調査目的

パソコンが登場して 25 年、CAD が導入され始め 15 年が経過した。10 年前の CAD の建築業

界での導入率は既に 100%近くになっていた。しかし、それは導入率であって実際に実務で

使用されているかは定かではない。

本調査では、企業における CAD の運用状況や CAD 使用者の要求を明らかにする。これらの

調査結果をもとに今後技術者に対して要求されるであろう CAD 利用方法について明らかにす

る。

3-2.調査方法

調査は、建設会社全体の傾向を調査するため地域や規模を限定せずに本校に求人依頼があ

った会社をインターネットより抽出を行った。アンケート回答者として CAD を使用している

部署の社員を指名した。

アンケート数は、52 社に送付し、37 社から回答があり、回収率は 71%であった。企業の

分類は、設計•施工の両方を行なっている会社が 13 社、設計のみが 13 社、施工のみが 10 社

である。調査期間は、10 月から 12 月の2ヶ月間行なった。アンケート内容を添付資料に示

す。

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3-3.結果と分析

3-3-1.CAD 導入率

回答を得た会社は、全て CAD を導入していた。また、10 年前では図面の 8割以上を CAD で

作成している会社の割合が 3 割程度であった。しかし、現在はほとんどの会社が図面の 8 割

以上を CAD で作成している。また、残りの 2割は外部委託などにより図面を作成している。

現在では、建設業で扱う図面は、ほぼ全て CAD により作成されている。図 3-1 に 2 次元 CAD

による図面作成の割合、図 3-2 に外部委託の割合を示す。

図 3-1.CAD による図面作成割合

図 3-2.外部委託割合

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3-3-2.3 次元 CAD 使用割合

2 次元 CAD について、建築で必要とされている図面は 2 次元図面が多く、またフリーソフ

トの存在も相まって会社の導入当時から多くの設計者に利用されてきた。

しかし、3 次元 CAD も同時に登場しており、大手建設会社では 2 次元 CAD が本格導入され

た時期から 3 次元 CAD に関しての利用も行われていた。コンペティションを行なう際、敷地

を 3 次元データで共有することや、3 次元で建築物を作成し、断面図から 2 次元の図面を作

成するなど 3 次元 CAD の活用は期待されていた。また、3 次元 CAD からウォークスルー注)な

どを用いて CG アニメーションを作成でき、プレゼンテーションツールとしても期待された。

調査では、現在 3 次元 CAD の利用率は 6 割程度に留まっており今後、利用を考えている会

社を含めても 7 割程度であった。また、使用の割合も半数近くが少ししか使用しないと回答

している。使用しない理由として最も多かったのが「必要ない」であった。また「面倒くさ

い」という回答がなかったことから 3次元 CAD に関して無関心ではないと考えられる。

調査では、使用率は低かったが 3 次元 CAD のソフトの性能や技術は確実に向上しており、

コンペティションや卒業設計などでは、多くの作品に 3次元 CAD が使用されている。

3 次元 CAD を使用する設計者は積極的に使用するが、使用しない設計者は全く使用しない

というのが現状である。また、現在 3 次元 CAD を導入していない会社では今後の導入予定で

も 15 社中 11 社が導入予定はないと回答している。高い費用や時間不足、人材不足などの物

理的に無理な状況にあるため導入していないとも考えられる。

CAD 使用者の意見として「今後 10 年後には必要になる」、「外部に発注、必要に応じて本店

•設計部で対応」などという意見があった。現場としては導入に積極的ではないといえる。図

3-11 に 3 次元 CAD 使用率、図 3-12 に 3 次元 CAD を使用する物件の割合、図 3-13 に今後 3次

元 CAD を使用する予定の会社の割合、図 3-14 に 3 次元 CAD を使用しない理由を示す。

図 3-3.3 次元 CAD 使用率

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図 3-4.3 次元 CAD 使用物件

図 3-5.今後の 3次元 CAD 使用予定

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図 3-6.3 次元 CAD を使用しない理由

3-3-3.会社規模による 3次元 CAD

本報では、1~50 人までを小規模、51~100 人を中規模、101 人以上を大規模と分類した。

小規模 12 社、中規模 13 社、大規模 11 社という打ち分けとなっている。

小規模会社における3次元CAD導入率は58%、中規模会社における3次元CAD導入率は54%、

大規模会社における 3次元 CAD 導入率は 64%であった。小、中、大規模に関わらず導入率に

大きな変化はない。また、受注件数に対する使用率も小、中、大規模に関わらず平均半分程

度の件数に使用されていた。

このことにより、規模に関わらず 3 次元 CAD は使用する会社と使用しない会社に大きく使

用頻度の差がある。しかし、BIM など 3次元 CAD を利用した設計手法が一般化しはじめれば 3

次元 CAD の使用も多くなると考えられる。

3-3-4.設計部内構成員における CAD 使用年数

今回調査した会社では、5 年以上 CAD を使用している人数が 222 人であり、全体の 7 割以

上であった。反対に CAD 使用年数が 1年未満の人数は 15 人であった。このことから、設計部

内の CAD 操作技術は熟練度が高いといえる。

図 3-3 に設計部内における CAD 使用年数別の人数の割合を示す。

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図 3-7.CAD 使用年人数

3-3-5.CAD 導入年数

CAD が飛躍的に普及した要因にフリーソフト JW_CAD の登場が挙げられる。JW_CAD が発表さ

れる以前の CAD ソフトはライセンス料が高価であり個人で購入するには負担がある。また、2

章で述べたようにパソコン設備の価格も高額であった。

今回の調査では、1994~1996 年に CAD を導入した割合が最も多かった。1994~1996 年に導

入した会社は 11 社あり、7社が JW_CAD を利用している。94 年は DRA-CAD、95、96 年は JW_CAD

が最も多く使用されていた。また、JW_CAD はフリーソフトでありながら 2次元 CAD ソフトと

しては高性能であった。このことから、CAD の裾野が広がり飛躍的に普及したと考えられる。

この頃になると、比較的パソコンの値段も安くなり高性能化も進んだ。

1996 年以前に CAD を導入した会社は、37 中 22 社であった。設計のみを行なっている会社

が 8社、施工のみを行っている会社が 6社、設計•施工両方を行なっている会社が 8社であっ

た。1997 年以降に CAD を導入した会社は、10 社であった。設計のみを行っている会社が 4社、

施工のみを行っている会社が 4社、設計•施工両方を行なっている会社が 2社であった。無回

答は、5 社あり導入年代は不明という回答であった。無回答であった会社は設計のみを行な

っている会社が 2社、施工のみを行なっている会社が 1社、設計•施工両方を行なっている会

社は 2社であった。

このことから、設計を行っている会社の方が CAD を早くから導入している傾向がある。図

3-4 に CAD の導入年代の割合を示す。

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図 3-8.CAD 導入年代

図 3-9.業務内容割合

3-3-6.CAD を指導できる人数

調査では、組織的に定期的な何らかの会を設けて CAD の教育は行っていない。また、長期

間教育することは時間的にも労力的にも難しい。CAD を操作出来ることが仕事の本質ではな

い、しかし、設計技術者が CAD を操作できることは、現在の設計業務では必須条件である。

CAD が苦手な者にとって CAD 操作技術を上達させるためには周囲に CAD について指導できる

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者がいることが重要である。

調査では、CAD を指導できる人数に関するアンケートで、5人未満と回答した会社が最も多

かった。5年以上 CAD の経験がある社員が多くいる会社は、CAD を指導できる人数が若干多い

傾向にあった。

現在は、挿入型 CAD やオリジナル CAD も多く、操作も以前に比べ容易だと考えられる。そ

のため技術者は、CAD の概念などの予備知識がある程度あれば操作できると考えられ、その

ため指導できる人数は少なくても CAD が運用できると言える。

3-3-7.CAD オペレータついて

CAD が導入され始めたころには、CAD によって設計者の役割が変わるのではないかと考えら

れていた。製図作業は全て CAD オペレータに任せ、設計者は企画やデザインに専念すること

になると予想された。つまり、設計と製図の完全分化が進むと思われた。また、本報では、

CAD オペレータを、大まかな設計内容から詳細図を作成するもの、図面を CAD データにトレ

ースするものと定義する。

調査では、CAD オペレータがいる会社は 36 社のうち 16 社であった。また、16 社のうち CAD

オペレータ在籍人数が 5人未満の会社は 10 社であった。

CAD オペレータがいない会社の特徴として、設計部内の工業高校、建築系専門学校、建築

系工学部の出身者の割合が 95%であった。反対に CAD オペレータが在籍する会社では、工業

高校、建築系専門学校、建築系工学部の出身者の割合が 58%であった。

CAD 導入当時の設計者はほとんど手描きであったため、設計者と CAD オペレータが完全に

分業されていた。10 年前になると、設計者の中にも CAD を扱える者が増えてきたため設計者

とオペレーターの境目は曖昧になってきていた。現在は、設計者のほとんどが CAD を操作す

ることができるためオペレータとの技術の差はない。しかし、調査ではオペレータの存在が

確認されたので設計者と CAD オペレータが完全に一緒になったとはいえない。

また、3次元図面をもとに 2 次元図面が作成可能になったとしても、どの程度まで 3 次元

で仕上げることが可能かも不明であり、現在の行政では、3 次元図面での申請は不可能であ

る。そのため、2 次元図面で詳細を決定し作成しするための機能として CAD オペレータは、

存在していくと考えられる。今後の設計者と CAD オペレータの役割の変化について図 3-5 に

示す。

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図 3-10.設計者と CAD オペレータの役割の変化

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3-3-8.CAD を運用する上での問題点

使用する道具が変われば、作業の段取りも変化する。手描きの場合は図面を描き終えた時

点で図面は完成している。しかし、CAD の場合はパソコンの画面上で図面が完成しても終わ

りではない。図面として完成させるためには、プロッタなどで出力しなければならない。

CAD 運用を本格的に始めた段階でプロッタによる出力時間、ネットワーク化への対応、デ

ータファイルの管理などの問題が出てきた。

このような問題の対策として当時は、レーザープリンターによる出力など個人レベルでは

行なわれていたが画期的な解決方法ではなかった。

1、2 年後には低価格で高性能なプロッタが登場している。また、出力機への接続もケーブ

ルから LAN などに進化した。機器面での問題は、機能向上によりほとんど解決したといえる。

調査では、7 割近い会社が CAD を運用する上での問題点は特にないと回答している。しか

し、人材面やソフト面の問題として挙げられたのが、人材育成システムの不足、パソコンに

詳しい人がいない、CAD に詳しい人がいない、他社で用いている CAD ソフトが当社で扱って

いない場合の対応が難しいという回答が得られた。

このことから、CAD を運用する上でハード面の問題点はほぼ解決している。今後の問題点

として挙げられるのは使用者のハード、ソフトを使いこなす技術や知識についてである。図

3-6 に CAD を運用するうえでの問題点を示す。

また、組織全体の問題点ではないが設計技術者の個人的な回答がいくつかあった。回答に

あった内容は、データを転用するため自分で考えて線が引けない、手描き時代に比べて知識、

技術共に衰えてくるなど手描き時代に培った能力を CAD で活かしきれていない設計技術者が

いる。

図 3-11.問題点

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3-3-9.CAD に関しての会社の取り組み

CAD に関する入社試験の有無についてのアンケートに対して 9 割の会社が行なっていない

と解答した。また、入社前の CAD 学習についても 9割の会社が行なっていないと解答した。

入社後の CAD 学習に関しては、行なっていないが 16 社あった、組織的に研修会や勉強会を

行なっている会社は 5 社のみであり、セミナーなどの案内を行なっている会社が 6 社であっ

た。その他の回答として、自力で学ぶ、実践により身に付ける、OJT(On-the-Job Training)

注 1)などの回答があった。

入社試験や入社前に CAD に関して試験や学習を行なっていないのは、CAD の技術などは入

社後に OJT などで身につけさせ、試験などではコミュニケーション能力などを重視している

と考えられる。

研修会、勉強会や OJT の成果は、25%の会社が十分、30%の会社が 7 割程度、20%の会社

が半分くらいの成果をあげているとして大きな効果を示している。しかし、成果は示してい

るが、組織的に教育を行っている会社が少ないことが問題である。特に OJT は、指導者の熱

意や技量などにより指導結果が、大きく左右される。また、指導者が社内の人間に限られて

しまい、社内で必要とされている技術以上のものが身につかない可能性が高い。さらに、指

導者が技術の進化に対応できず、指導できないこともある。特に BIM のような最新分野では、

未経験者が多いと、経験や実績に基づいた今までの OJT が機能しなくなる。

また、入社試験や入社前に CAD についての学習をしないとはいえ入社後 CAD について全く

知識が無ければ指導する側は、基礎的な知識や操作から指導し始めると、業務全体の効率が

落ちてしまう。また、CAD に関しての入社試験を行なっていない会社は、入社前の CAD 学習

も行なっていないことから、技術者の CAD 技術に対して重要視していないといえる。しかし、

業務の効率を考えれば設計技術者はある程度の CAD に関する知識、技術は身に付けておく必

要がある。図 3-7 は CAD に関しての入社試験の有無、図 3-8 に入社前の CAD 学習の有無、図

3-9 に入社後の CAD 学習の内容、図 3-10 に入社後の CAD に対する学習、指導の成果を示す。

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図 3-12.CAD に関しての入社試験

図 3-13.入社前の CAD 学習

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図 3-14.入社後の CAD 学習

図 3-15.学習成果

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3-3-10.外部委託について

調査では、7割以上の会社で外部委託が行なわれていた。「外部委託を行なわない」と回答

した会社は、36 社中 6社であった。外部委託を行なう理由として時間不足、人材不足が多か

った。反対に設備不足が 1 社のみであったのでハード面での影響はほとんどないことが考え

られる。

外部委託は、発注者側が図面を受け取るまで品質を制御できないことや、問題が発生した

場合責任の所在など問題が発生すると思われる。

回答で「人件費削減のため外部委託する」という会社が 8社あった。外部委託をする場合、

委託先の企業及びスタッフの専門性を評価する能力や意思を意識しなかった場合、費用削減

のはずがかえって費用が増加する可能性もある。

外部委託が多い要因として、外部委託しても最終的な確認•修正は自社で行なえるというこ

とが大きいと考えられる。例えば、製造業などの場合は商品を外部委託した場合、外部委託

先で手抜きをされてしまえばそれは商品の品質の低下に直結してしまう。しかし、図面の場

合は誤りがあれば簡単に修正ができるため結果、外部委託は容易な環境にある。

構造、電気、機械、柱出し図や筋交い位置は設計事務所に外部委託しているなどの回答も

得られた。

このことから回答で多かった人材不足というのは、ただ人数が不足しているのではなく専

門知識を持った人材が不足していると考えられる。図 3-15 に外部委託の割合、図 3-16 に外

部委託の理由を次にページに示す。

図 3-16.外部委託割合

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図 3-17.外部委託理由

3-3-11.使用ソフトについて

図 3-17 に以前と現在の使用 CAD 上位 5 位、図 3-18 に本研究調査で明らかになった使用 CAD

ソフトを示す。

調査で明らかになったことは、登場以来 JW_CAD が多く使用されていることである。次いで

AutoCAD シリーズ、DRA-CAD シリーズが使用されている。

AutoCAD はオートデスク社、DRA-CAD は株式会社建築ピボットが発売元である。両ソフトと

も 2 次元から 3 次元まで対応できる高い性能をもつ汎用 CAD ソフトである。また、サポート

体制も十分整備されている。反対に JW_CAD は、3 次元モデリングなど AutoCAD、DRA-CAD に

比べ機能がないに等しいが、2次元 CAD として高い性能がある。

しかし、JW_CAD のような明確なサポート体制がないフリーソフトを使用するということは

トラブルに対しての対応が難しい可能性がある。しかし、それ以上に JW_CAD の性能が設計者

に支持されているともいえる。反対に AutoCAD などは、設計者が CAD を自分にあった状態に

カスタマイズすることができる。これは、CAD を効率よく操作するため大きな効果がある。

このような CAD は 3次元にも対応しており 3次元の使用頻度が多い設計者が使用すると言え

る。反対に、JW_CAD は 2 次元機能が中心なので 3 次元の使用頻度が少ない設計者は JW_CAD

の様な 2次元だけの CAD で十分だと考えられる。

このことから、現場の設計者にとって CAD ソフトに求める性能は 3 次元に対応できる性能

よりも、2次元に対応できる性能を重視しているといえる。

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表 3-1.使用 CAD 上位 5位の推移

1993 年 1994 年 1995 年 1996 年 1997 年 2007 年 1位 DRA-CAD DRA-CAD JW_CAD JW_CAD JW_CAD JW_CAD 2位 DynaCAD JW_CAD DRA-CAD DRA-CAD DRA-CAD AutoCAD 3位 AutoCAD AutoCAD AutoCAD AutoCAD AutoCAD LT DRA-CAD 4位 MiniCAD DYNAPERS MiniCAD MiniCAD AutoCAD 自社開発 5位 Archi-TREND DynaCAD 自社開発 AutoCAD LT MiniCAD Vector Works

図 3-18.本研究調査の使用 CAD

3-3-12.CAD に関して望むこと

調査で明らかになったことは、多くの会社が 2D-CAD についての技術を重視していること

である。反対に 3次元に対応できる技術の要求が少ない。

建築の 3 次元利用に関していえば、カラーシミュレーション、景観シミュレーション、パ

ースなどが考えられる。十数年前は、CG(=3D-CAD)が普及しつつあると言われていた。当時、

CGによる本格的なプレゼンテーションを行なっているのはグラフィックデザイナーやレンダ

ラーを要する大規模な組織であった。その他の設計事務所や会社は、専門の会社に発注して

いた。

本格的に CAD が導入され始めた当時の目的として、2次元は手描き製図、3次元ならば手描

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きのパースの代用にと考えられていた。しかし、初めて CAD を導入した会社・個人にとって

は何が必要な機能で何が不必要か判断しにくい。結果、3D-CAD を導入したものの効果を十分

に発揮できずに未使用のシステムが残ってしまった。また、3D-CAD が必要な場合は専門の会

社に入りすればよいという考えが定着した。

このことから、CAD技術の要求として 2次元を扱える程度の技術があれば十分だといえる。

CAD を使えることと設計、施工の知識をもつことを両立しないと CAD が操作出来るとはいえ

ない。また、住宅を設計するソフトとして一般に挿入型といわれるタイプの CAD がある。こ

れは、自動制作等便利な機能が多い反面、図目相互の関連性、構造、法令、施工性等の様々

な専門知識が必要になる。挿入型に限らず専門知識は必要だが、今後、挿入型が進化してい

くと施主の要求・条件を入力するだけであらゆるタイプの設計を行なってくれる CAD が主流

となる可能性がある。複雑な操作技術が必要なソフトはなくなり、設計者に求められるのは

CAD 技術ではなくコミュニケーション力になると考えられる。図 3-19 に、技術者に望む CAD

技術の水準を示す。

図 3-19.CAD に関して望むこと

3-4.まとめ

本章は、設計の現場においての CAD 使用状況を把握することを目的に調査を行った。CAD

導入率は、ほぼ 100%であった。2次元 CAD の使用率が高く、3次元 CAD の利用率は低い結果

となり、3 次元 CAD を導入していない会社では、今後の導入予定も 3 割程度と低い。また、

入社試験など入社前に CAD に対しての技術を問うことは少なく、入社後も CAD に関しては個

人に任せる傾向にある。

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技術者に対しての要求に関しても 2 次元 CAD 技術が中心で、3 次元 CAD 技術はそれほど要

求されていない。その要因として、現在日本では、建物を造る工程は 2 次元図面を中心に行

われている。3 次元 CAD は、完成予想図など一部の補助的な用途にしか用いられていない。

住宅など小規模な建築物は、一人の設計技術者が全ての設計し、複数の物件を担当する場合

が多いため、3次元 CAD を用いて設計する時間がないと考えられる。

2 次元 CAD が導入され十数年が経ち、2次元 CAD を扱える技術者は増えた。しかし、一部に

自営業者などの工務店は、図面を手描きで作成している。日本の設計技術者を取り巻く環境

として全体的に、設計以外の業務も多様にあり、最新のものを積極的に取り入れる状況が整

っているとはいえない。まして、現在は 2 次元図面だけで国内の建設業界は十分に成り立っ

ている。そのため、3 次元 CAD を設計に導入するメリットが見えていない。また、多くの建

設業に就いている技術者たちは、海外の動向に目を向けられる状況になく、2 次元 CAD の限

界が見えていないと考えられる。

このことから現在、日本の設計現場では 3 次元 CAD の有効性を十分に理解し、利用しよう

としているとは言えない。しかし、海外での 3 次元 CAD の普及は進んでいる。日本国内での

建設需要は、ここ数年でピークを迎え今後は、減少していくと予想される。国際社会で、3

次元 CAD を導入している会社と勝負していくためには、日本でも積極的な 3 次元 CAD の導入

が必要である。そこで 4章では、3次元 CAD の新たな活用方法を分析していく。

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4 章 情報構築を基盤とした CAD システムと国内の状勢

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4-1.海外の 3次元 CAD 活用

近年アメリカで導入され始めたのが BIM(Building Information Modeling)である。BIM と

は、3 次元 CAD を使用し、ドアや壁、床などの部材ごとに属性情報を付け建築物全体のバー

チャルなモデルをコンピュータ上に作り、それを関係者の間で共有しながら業務を進めてい

くものである。BIM のメリットは、通信ネットワークなどで建築物の情報を交換や共有する

ことができ、いつでもアクセスできることである。図 4-1 に示したのは、現状の建築生産モ

デルである。現状は、必要に応じて必要な関係者のみが連絡をとり、必要に応じた変更を行

なうが、変更内容などがすぐに関係者全員に通達されていない。しかし図 4-2 に示した BIM

による建築生産モデルでは、関係者全員が共有している建築モデルを介して情報交換が行な

われるので一部の変更であっても関係者全員に情報がフィードバックされる。

図 4-1.現状の建築生産モデル

図 4-2.BIM による建築生産モデル

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アメリカで BIM が普及するきっかけは、施主の施工業者に対する不満が原因であった。ア

メリカでは建設業に対してコスト•工期がオーバーするとういう不満が常にあった。日本では

コスト•工期がオーバーすることはほとんどない。日本の施主は、予算内で指定する条件が満

たされていれば施工業者がどのような方法を行おうが無関心である。また、施工業者も工程

ごとに連携をとり施工を行うことによりアメリカほどの問題は発生しない。

また、アメリカでは完成までの段階ごとに担当する会社に役割が明確に区別されており、

各施工業者は自社の担当工程以外は干渉しない傾向がある。そのため施工工事全体として連

携が取りにくく問題が発生する。

このような問題を解決するためには、施主がリーダーシップをとることである。日本はト

ップダウン式に下請けに仕事が流れていくため必然的に連携が生まれる。しかし、アメリカ

の場合は、各業者が同列なためまとめ役がいない。そのため問題が発生した場合でも解決が

遅れ工期が遅れてしまう。そこで施主がまとめ役を務めることが連携や連絡を容易にする。

また、施工工事全体の設計、施工、運営を総合的に検討することである。例えば商品の生産

工場などの場合は、完成までの期間が利益に大きく影響する。そのため施主自身が 3次元 CAD

や BIM の有効性を十分理解し採用していくことである。

海外では、設計者や施工者だけではなく施主側の BIM へ対して意識が高い。米国の米国政

府調達庁注3)では、3次元モデルでの設計を義務化し、納品も 3次元モデルで行うよう求めた。

施工事例として、米国で 4 万平米の工場を建設する際に BIM が導入された。発注者は、工

期を 52 週間と要求したが、BIM 導入により設計から竣工まで 35 週間で完了した。2次元 CAD

を使用した場合だと、最低でも 60 週間は必要である。また、この工事でも発注者が BIM の使

用を要求している。

シンガポール政府の建築確認申請を 3 次元 CAD データで行う、電子納品システム「コアネ

ット(CORENET)」が導入されている。コアネットとは、建築確認申請時の書類の電子提出、

設計の法的確認、建築業務に関わる法規や企画などの情報提供の 3 つに分けられる。このう

ち設計の法的確認に 3 次元 CAD が用いられている。この方法は、ノルウェーや米国にも広が

りつつある。

4-2.日本建設市場の状況

日本の国内総生産のうち建設業が占める割合は 10%に相当する。しかし、近年では 1990

年頃をピークに建設業における労働生産性が低下している。ピーク時、建設業の労働生産性

は 1 人•1 時間当たり 3787 円であったが 2005 年では 2790 円まで低下している。この要因と

して 90 年代前半は、景気浮揚のため公共投資が活用されたため、その需要に応えることが優

先されたことや、建設業が雇用のセーフティネットの機能を、果たさなければならなかった

ことがあげられる。建設業の就業者数は、平成 9年の 685 万人をピークに平成 18 年は 568 万

人まで減少している。また、人口減少に伴い住宅などの需要が減少すると考えられる。その

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ため日本の建設市場は縮小し国内での建築生産が難しくなる。日本の建設会社は、海外市場

に対して需要を拡大しなければならない。

建設業は、全産業のなかで最も IT 化が遅れている。電子商品取引では市場規模は拡大して

いるが建設業における割合はまだまだ少ない。しかし、最近では建設業における IT 化の取り

組みは進展している。今後は生産性を向上させるためにも今以上の IT 化は必須条件である。

日本には独自の生産体制が存在する。建築家が作成した設計図は建設会社ではそのまま利

用されない。設計図をもとに躯体図や設備図などその他の図面を作成し、最終的に総合図に

まとめたり、そこから施工図を作成したりする。そのため、3 次元が得意とする部材の干渉

状況の確認が総合図でできるので、設計技術者や施工技術者が 3 次元の必要性をあまり感じ

ていない。しかし、建築物が巨大化や複雑化していくと、2 次元での各図面の干渉状況など

の確認は時間もかかり難しくなる。

日本の建設会社が海外に需要を求めた場合、2次元 CAD 中心の設計や現在の IT 利用状況で

は、海外市場での需要の獲得は難しい。海外での需要を獲得するためには、3 次元 CAD の利

用は不可欠である。

4-3.国内の 3次元 CAD 活用

日本における 3 次元 CAD の利用は、海外に比べれば遅れているが、まったく行われていな

いという訳ではない。日本での 3 次元 CAD の利用方法は、パースやプレゼンテーションなど

が多く図面として使われることは少ないのが現状である。しかし、最近では 3 次元 CAD の利

用方法を紹介するセミナーや発表会が多く開催され重要性は認知し始めている。

ある設備会社では、ウォークスルー注2)により設計の確認を行っている。これは、キャラク

ターを操作し 3 次元空間を移動し、人間の視点で各種部材の干渉確認を行えるものである。

キャラクターは、干渉機能もっているため設備の点検スペースの検討を工事前に詳細にでき

る。また、キャラクターには重力が作用しているので安全上の不備の検討が容易であり、施

工手順を合理化しやすい。

最近では、3 次元スキャナーを用いた測量も行われている。測量した 3 次元データをその

まま設計データとして用いることも可能であり、数値地図などで精密な地盤の情報を入手す

ることも可能である。

またインターネットの普及率も国土交通省総合政策局のレポートでは内勤は 76%、現場で

は 61.3%である。このように 3 次元を使用した BIM で設計•施工を行える設備は十分に整っ

ている。日本の建設会社が BIM を導入するための下地として周辺機器やデータ入手の環境は

十分である。

また本研究のアンケート調査では、3 次元を導入しない理由として研修時間が無いという

回答があった。しかし、BIM を導入した建設会社での教育時間は、意外に時間がかからない

ことが調査により明らかになっている。また、導入に関しての費用が少ないことから大企業

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だけではなく中小企業でも比較的導入が容易である

3 次元 CAD が、利用されているのは設計だけではない。3次元モデルから建築模型を自動的

に作成する 3 次元プリンタが存在する。3 次元 CAD で複雑な形の建築物が多く設計される現

在では、模型作製に 3次元プリンタが不可欠なものになりつつある。

また、機械の部品などのデータを CAD で作成し、CAM などを利用し部品を作成する方法は、

機械部品生産方法として広く使用されている。この様な方法が建築でも利用されている。最

近では、住宅を施工する場合あらかじめ工場で部材を加工し、現場では組み立てるだけとい

うのが主流である。3 次元 CAD に木造部材の接合部の複雑なデータを加工機の制御システム

に入力するだけで部材を加工するというものである。この方法により、1 棟当たりの生産時

間は、短縮され、生産工程にも、着実に 3次元 CAD が使用され始めている。

しかし、工務店などから送られてくる元のデータが手描きなどの場合もあり、もう一度入

力する必要があるため効率的ではなく、入力ミスも起こりうる。

今後は、設計段階の生産性を向上させるためにも、3 次元 CAD の導入は欠かせない状況に

ある。

4-4.BIM の活用

日本の建設会社が縮小傾向にある日本市場から新たな海外市場で需要を伸ばすためには、

企画から運営まで総合的に管理できるシステムとして BIM の活用が必要である。

BIM がまったく新しい方法かといえば、従来日本の建設会社は、プロジェクト関係者の間

で緊密な連携が経験的な手法で行われており、プロジェクトは進んでいた。これは、日本で

は当たり前の連携である。しかしこの連携は、設計者や施工者間の信頼関係、経験に左右さ

れる。また、図面に不具合が発生した場合でも施工を進めながら解決していくという状態で

ある。2 次元図面は各図面がまったく干渉していないため一カ所修正を行えば一枚一枚の図

面を修正しなくてはならないので効率を大きく下げている。

一方 BIM は、3 次元を基本に設計・施工しているため図面同士が干渉しあっているので、

修正箇所を全ての図面に反映するので、図面の修正が容易である。また、3 次元で設計する

ため施工が進んだ段階での部材の収まりの不具合などが発生しない。3 次元で作成すること

により、完成のイメージが施主に伝わりやすく設計変更も少なくなる。今後は、施工前に 3

次元により完璧は設計図を作成し施工段階での変更をなくす必要がある。時間軸をいれた 4

次元 CAD などで何度もシミュレーションを行い条件にあった最適な設計も可能になりつつあ

る。

日本では、建築物の設計で最も多く労働力が費やされるのは詳細設計からである。基本設

計などの段階ではあまり労働力は費やされず、建築家など一部の人間が行うだけであり、施

工者が参加することはない。しかし、この段階で建築全体の予算は決定されてしまい詳細設

計の段階などでの大きく予算が変更されることはない。初期設計段階で、建設・運用費が決

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まってしまい、施工が進んだ段階での設計変更は難しく周辺環境などに最も適した建築物に

はならないことがある。

一方 BIM では、基本設計などの初期段階から設計者、施工者を含める技術者により検討が

行われるため、あらゆるシミュレーションが可能になり、最適な設計ができ費用の面でも的

確な決定がしやすい。また、この段階で 3 次元により建築物がある程度まで詳細が決定され

ているので 2 次元図面も作成が容易である。さらに、初期設計段階から構造、設備などを具

体的に考慮することによって二酸化炭素の排出や環境に適した設計も可能である。

その他にも、施工手順の確認や建築物のエネルギー解析、音響解析など幅広い分野で BIM

は利用されている。

4-5.日本での BIM 導入

BIM を導入することにより、総合図までの図面の反復作業は軽減され生産性も向上する。

このような単純な反復作業の部分を BIM で自動的に行えば設計者はより設計に専念できる。

現在日本の施工体制は、大手建設会社が仕事を受注し下請けの中堅建設会社に仕事が流れ

ていく形である。そのため BIM を導入した場合は、大手建設会社が中心になり、中堅建設会

社が作成した図面を BIM で共有することで BIM がコミュニケーションの媒体となり効率的に

工程が進んでいくと考えられる。

もともと日本は、業者間での連携が緊密に行われているので、BIM を導入する下地は十分

に整っているといえる。先に述べたように日本には総合図というものがあるため、BIM の有

効性を十分に理解し普及していく必要がある。

今年の 6 月 20 日に改正建築基準法の施行により確認・検査手続きとうが大きく変化した。

確認申請後は、基本的には図書の差し替えや訂正・修正はできなくなる。また、審査中に建

築計画を変更した場合でも、図書の差し替えや訂正はできなくなり、この場合には、当該確

認申請を取り下げて改めて申請することになる。今後の建築確認申請では設計図同士の関連

性を確保することが重要になる。有効な手法として、設計初期段階で図面の詳細部分の相互

関係を十分に確認する BIM は注目されると考えられる。

施工の段階でも BIM の導入は大きなメリットがある。設計図を立体的に可視化できるので

構造を理解しやすくなる。施工者の全ての設計情報を含んでいる 3 次元データを渡すだけで

施工者は、必要な部分を随時切断し断面図を作成できる。

BIM の大きなメリットは、設計情報が全て干渉しあっているので図面管理が容易になり、

少人数でも大量の情報を処理できる。また、3 次元データとして、現場の情報を入力するこ

とにより海外の仕事も効率的に処理が可能である。さらに BIM は、建設工事全体のデータベ

ースとなるので部材数、工程管理もしやすくなる。

BIM 導入に対しての問題を解決するために、建築用 3次元 CADRevit のユーザーによる有志

の RUG(レビット・ユーザー・グループ)がある。この組織の活動目的は、BIM の効果を高めて

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いくためにガイドラインの作成や BIM を用いた設計手法を建設業界全体に浸透させることを

目的としている。

このように、BIM 導入後のメリットは大きくまた、社会に浸透させるための活動やサポー

ト体制も整いつつある。

4-6.BIM を利用した設計プロセス

時代が変化すれることにより、要求される設計も変化する。従来の建築物は、利便性が重

視されてきたが、最近ではそれに加え自然との触れ合いや、居心地、景観、地域性など感覚

的なことも重視されている。今後は、建築物を単体としてみるのではなく、周辺の環境での

「場」としての要素が求められる。建築物を設計するためには、感覚的な要素を反映でき、

人間の感覚を視野に入れなければならない。 では、現在の 2次元 CAD 導入でのメリットは、設計図面をデータとし持ち運びができ、ま

た、データを整理するための場所をとらないことである。設計プロセス自体は、コンピュー

タを使用しているにも関わらず自動的に行われることもないので、手描きと一切変化してい

ない。情報の共有方法も、電子メールなどでデータとしてやり取りができるが、大きく変化

したとはいえない。

一方 BIM では、建築物のデータベースにアクセスすることで、情報をリアルタイムで共有

できる。ことにより、設計は場所を選ばずネットワーク環境が整っていれば、何時いかなる

ときでも可能になる。一部の変更が全体に反映されるので、設計者は余計な手間がかからな

い。そのため、従来のように一枚一枚変更しなくて済むので、設計者の精神的なストレスも

軽減される。

BIM は、初期段階から設備などの検討も可能である。一般に設備などの設計は、構造や躯

体の詳細設計が完成した後に行われる。初期段階から設備などの検討を行うことにより、無

駄なスペースはなくなり、環境負荷に対しての検討も同時に行えるので、設計のやり直しの

リスクが少なくなる。また、全て 3次元 CAD を元に設計するということは、同時に最終段階

の図面も作成可能である。

また、初期段階から建築物に関わる全ての設計の検討を行うので、中心となる会社を軸に

各専門工事業者が同じ時期に検討を始める。そのため、図面が上から流れてくるようなこと

は無くなり、元請けと下請けという関係もなくなり対等なパートナーの関係が構築されてい

く。また、下請けの立場だった会社を元請けと対等な立場にすることで、業務マネージメン

ト能力を向上させることができる。そのことにより、設計や高度な施工を重視していた姿勢

が、安全性や品質確保への意識が高まる。

技術者は、同時に複数の専門業者と始めから検討を行うため、自分の担当する部分につい

のみ専念できる。これまでの、設計技術者は規模に関わらず企画から設計まである程度、全

般的な知識が要求されてきた。しかし、建築に必要な図面や作業は数多くあるが、建築物の

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用途や種類による専門化はあまり行われていない。そのため、今後は自分の担当できる範囲

を細分し、専門性をさらに高める必要がある。

さらに、音や光など自然のものなど目には、見えないが必ず作用しているものも、デザイ

ンしコントロールできることが求められてくる。そのためには、力学などの物理学を中心と

した設計方法とは、異なる設計方法が必要となる。

4-7.まとめ

BIM 導入により、設計の流れが、元請けから下請けに流れていくトップダウンでは無くな

り、下からの意見をくみ上げていくボトムアップになると考えられる。また、建設現場では、

規模が大きくなるにつれ、各担当監督がおりその監督の指示に従うのが、普通であり横の連

絡が不備になりがちである。しかし、BIM を利用することにより全ての設計データが、常に

一元化され、常に最新の情報が得られる状況になる。それにより、現場にコミュニケーショ

ンの媒体が出来、施工状況が把握しやすくなる。さらに、日本の生産体制は、大手建設会社、

下請け専門業者、2次下請け業者など、施工が下請けにまわされていくため、発注者の意図

が正確に施工業者に伝達されない可能性もある。これも BIM により設計の初期段階から実際

の施工業者が参加することにより、会話やスケッチのみでは表現できない形状、ディティー

ルが、正確に伝達され作業が円滑に進み、建築の質が向上すると考えられる。

CAD オペレータは、2次元 CAD が登場した時同様、手描きは出来るが CAD が出来ないという

設計者のサポート役として存在した。BIM でも同じように、2次元 CAD は出来るが BIM で使用

する CAD は、出来なという設計者のために BIM で使用する CAD を専門に扱う BIM オペレータ

という存在が登場する可能性がある。BIM オペレータの役割は、2次元 CAD のように設計図を

2次元データとして扱うのではなく、建築物を構成する全ての部材を 3次元データとして数

値化し、オブジェクトとして扱い、建築物を生成していく。また、BIM オペレータは、床の

数値を入力する者、躯体の数値を入力する者など細分化されるが、数値を入力する者が設計

者とは限らない。そこで、設計者の役割は、建築物の中身の機能や、いかに環境に対応でき

るか考えなければならない。

また、一般的に建築には、造形重視と技術重視が存在すると考えている。以前の建築物は、

造形などが重視され芸術性が、評価されていた。しかし、これからの時代、環境問題等の問

題を解決するためにも、これからの建築に求められてくるのは、ソフト面や中身が重要にな

る。それには、BIM のように中身の機能を考えることに専念できるような環境は、積極的に

導入すべきである。

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5 章 結論

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5-1.本研究のまとめ

本研究では、はじめに 3 章にてアンケート調査により設計現場での CAD の利用状況や要求

を分析・考察した。2次元 CAD はほぼ全ての会社で導入されている。しかし、3次元 CAD に関

しては、2 次元 CAD とほぼ同時に登場し 2 次元 CAD と平行しての使用が期待されていたが導

入率は低く、使用率も高くはない。CAD に関しての入社試験や事前学習を行なう会社は少な

く、採用側から技術者の CAD 技術への関心は低い。しかし、CAD オペレーターがいない会社

の特徴として、設計部内における工業高校、建築系専門学校、建築系工学部の出身者の割合

が 95%であった。反対に CAD オペレーターが在籍する会社では、工業高校、建築系専門学校、

建築系工学部の出身者の割合が 58%であった。このことから、入社試験や学習を行なわなく

ても技術者に対してはある程度の CAD 技術を要求していると考えられる。会社が技術者に要

求する技術として2次元CADを修得していればよいという結果であった。現在の建設業界は、

建築物を造る工程は、2次元図面を中心に行われている。3次元 CAD は、完成予想図など一部

の補助的な用途にしか用いられていない。さらに、設計技術者は、設計に以外にも多様な職

務を行わなければならず、新しい 3 次元 CAD システムに触れる機会が少ないと考えられ、学

ぶ環境が十分とは言えない。

このことから、設計現場での 2 次元 CAD への依存度は高く、また、3 次元 CAD の有効性を

十分に理解していないといえる。

次に 4 章にて新たな設計手法の今後の可能性について示した。BIM のようなシステムを導

入することにより設計者は、より意匠設計や環境に適した設計に専念できるようになる。ま

た、設計情報の流れがトップダウンから、ボトムアップに変化するため、施工に必要な細部

の情報も組み込みやすくなる。また、設計に必要な情報が、同時に複数必要になるため、技

術者の得意とする分野がより明確化し細分化してく。

BIM 導入により、BIM システム専門の CAD オペレータが登場すると考えられる。しかし、こ

のオペレータは、設計者とは限らない。建築物を構成する部材をオブジェクトなどの単位と

して扱うことになり、オグジェクトの情報を扱うことになる。そのオブジェクトの組み合わ

せにより、建築物を設計していくことになる。

また、改正建築基準法などにより、建築確認申請時における図面間の整合性確保が厳しく

なった。以前は、ある程度の修正や変更が現場の状況に合わせてやりやすかった。しかし、

今後は、申請時から完璧な整合性が要求されるため、BIM による整合性の確保は明らかに有

効である。

今後設計者の役割は、ただ情報を組み立てるだけの存在になる訳ではない。情報の組み立

ては、BIM オペレータに任せることになる。また、BIM オペレータが持っている情報には、耐

久性能や品質など部材に関する情報が含まれている。そのため、BIM オペレータは、各部材

ごとの専門家に細分化されていく。

よって設計者は、空間の機能を設計し、情報を全体的にまとめていく役割に移行していく

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と考えられる。そのためには、設計全体を管理できるマネージメント技術が必要になる。

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5-2.今後の展望

現在日本における設計図は 2 次元利用率がまだまだ高いが、海外ではすでに 3 次元が主流

になりつつある。このまま 3 次元の普及が遅れれば日本建築界は、世界の建築情勢から大き

く遅れをとりかねない。遅れをとらないためのも設計者、施工者は 3 次元の有効性を十分に

理解し、新しい手法に積極的に取り組まなければならない。

今後は、2次元から 3次元への移行が多く行われると思われる。これに対応するためには、

技術者の 3 次元に対は敷居が高いという意識をなくす必要がある。そのためには、日本にお

ける 3 次元 CAD を利用している会社の状況や要求、導入後の変化を明らかにすることによっ

て 3次元の有効性を示すことが重要だと考えられる。

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注脚

注1) 具体的な仕事を通じて、仕事に必要な知識、技術、技能、態度などを、意図的、計画 的、継続的に指

導し修得させることによって、全体的な業務処理能力や力量を育成することである。

注2) 自在に 3次元の建築物の内部を移動できる操作のことである。

注3) 米国政府調達庁(GSA)の公共ビル部門(PBS)は、政府機関が使用する 1600 のビルを所有し、7300 のビ

ルをリースしている世界最大の不動産事業を行っている組織である。政府のためのビルを建設し、新しい

スペースを確保し、維持管理する機能を担っている。その年間予算は、約 1 兆 5000 億円にもなる巨大発

注組織。

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参考文献

1)独立行政法人 情報処理推進機構 2004 年 3 月 過去の情報政策と情報産業に関する調査•分

析について調査報告書

2)赤木徹也、岩崎裕二、安原治機:相談関係に基づく受講者間の関係 CAD 演習授業における教育環境整備に関

する基礎的研究 その 1 日本建築学会大会学術講演梗概集 E-2 分冊 p.803 2002.8

3)岩崎裕二、赤木徹也、安原治機:相談グループの形成規模とその特性 CAD 演習授業における教育環境整備に

関する基礎的研究 その 2 日本建築学会大会学術講演梗概集 E-2 分冊 p.805 2002.8

4)岩崎裕二、赤木徹也、安原治機:相談を受けうる受講者の特性について CAD 演習授業における教育環境整備

に関する基礎的研究 その 3 日本建築学会大会学術講演梗概集 E-2A 分冊 p.773 2003.9

5)手越義昭、出来利枝子、畠悠子:建築 CAD デザイン教育に必要な学習モデルの研究 日本建築学会大会学術

講演梗概集 A-2 分冊 p.587 2005.9

6)川村広則、須藤諭:設備系企業における CAD システムの導入状況 建築設備系分野における CAD による製図

教育に関する調査研究 その 2 日本建築学会大会学術講演梗概集 p.569 1995.8

7)川村広則、須藤諭:設備系企業における CAD システムの運用状況に関する調査 建築設備系分野における CAD

による製図教育に関する調査研究 その 3 日本建築学会東北支部 p.153 1996.6

8)日経アーキテクチュア 1995 年 6 月 5 日号

9)日経アーキテクチュア 1993 年 1 月 18 日号、4月 12 日号

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謝辞

本論文は、著者が八戸工業大学建築工学科で宮腰直幸講師のご指導のもと実施した卒業研

修における研究の成果をまとめたものです。

卒業研修の指導教官でも宮腰先生の思慮深いご教示と多大なご協力なくして本論文を仕上

げることは出来なかっただろうと思います。

アンケートにご協力いただいた企業の方々には、お忙しいなかご協力いただき感謝いたし

ます。

アンケート作成の際には、本学科の同級生の方々に貴重なアドバイスをして頂き感謝いた

します。

本研究室の村田淳さん、今川晶太さん、越善滋晴君、上平雄一君、神谷明君、小舘勇太君、

小塙利栄君、副島健一君には、さまざまな援助やご協力を頂き、また研究のヒントをもらい

ました。ご協力頂いた方々に深く感謝いたします。

最後に、22 年間育てていただき、大学まで行かせていただいた両親、家族に感謝します。

2008 年 3 月

真木裕太