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増税 消費税を増税し、財政赤字をなくそう 永廣ゼミ 救命病棟 24 時~税制に早期処置を~ 井上 優、岩城 仁、岩城 侑花、岡田 玲奈、中井 崇博、中筋 勝也、仲村 哲治、 能田 翔太、橋本 善大、邑田 武志、米田 隆将

消費税を増税し、財政赤字をなくそう · 1.増税の必要性 我々は「消費税を増税し、今の財政赤字をなくそう!」ということをテーマに選んだ。

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増税 消費税を増税し、財政赤字をなくそう

永廣ゼミ 救命病棟 24 時~税制に早期処置を~

井上 優、岩城 仁、岩城 侑花、岡田 玲奈、中井 崇博、中筋 勝也、仲村 哲治、 能田 翔太、橋本 善大、邑田 武志、米田 隆将

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目次 1.増税の必要性

2.財政状況

3.税金の無駄遣い

4.各税のメリット・デメリット

5.我々の考え

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1.増税の必要性

我々は「消費税を増税し、今の財政赤字をなくそう!」ということをテーマに選んだ。

その理由としては、(1)現在も、日本では財政赤字が増加し続けている、(2)借金で歳入が

賄われているという状況が国債が初めて発行された 1965 年度から続き、もし増税しなけれ

ば財政赤字はさらに増大すると考えられる、(3)このまま財政赤字が累積すると、政策の自

由度の減少や金利の上昇による経済への悪影響があり世代間不公平が発生する、ことがあ

げられる。我々が考える財政赤字の一番の問題点は、現世代が次世代のお金を平気で使い

込んでいるというモラルの問題、言い換えれば次世代につけを残しているということであ

る。だから問題を先送りにするのではなく、早めの対策を打つべきだと考える。

増税と聞いて誰も喜ぶ人はいないはずである。しかし、このまま問題を先送りばかりし

ていては何も解決しないということも事実である。我々の考えである増税の必要性をみな

さんに知っていただければと思う。

2.財政状況

はじめに、今の財政状況について述べていく。平成 21 年度の一般会計における歳出のグ

ラフを見て頂きたい。

平成 21 年度一般会計における歳出は約 89 兆円である。中身を見ると、まず、一般歳出

が 58.4%で、このうちの約半分が社会保障関係費に充てられている。そして国債の元利払

いに当てられる費用、つまり国債費が 22.9%、地方交付税交付金等が 18.7%である。この

ことから歳出の約 2 割が借金返済に充てられているということが分かる。一般歳出の約半

分を占めている社会保障関係費は、年金や医療や介護・福祉などに充てられているものだ。

これは主に高齢者に使われるものである。高齢化が進むにつれて社会保障関係費が増える

ことが予想される。そうなると、ますます借金返済にお金を回すことが難しくなると我々

は考える。

平成 21 年度一般会計における歳入のグラフを見て頂きたい。一般会計予算における歳入

のうち、税収で賄われているのは 52.1%で金額にすると 46 兆円に過ぎず、公債金収入は、

37.6%で金額にすると約 33 兆円となっている。ということは、歳入のうち約 4 割が借金と

いうことになる。平成 21 年度の歳出・歳入を見ただけでも、借金が約 33 兆円で借金を返

済している額は 20 兆円であり、予算の段階で借金が増加することを前提に考えている。

平成 20 年度の歳入のグラフを見て頂きたい。平成 20 年度一般会計における歳入は約 83

兆円で税収は 64.5%で金額にすると 54 兆円であり、残りの 3 割が公債金収入で約 25 兆円

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である。平成 21 年度と 20 年度を比べると、税収が減り、借金が増えていることがわかる。

2009年 10月 16日に野田佳彦副財務相が会見し、「補正予算での国債増発はやむを得ない」

と述べている。ここでは、税収が 40 兆円を下回ると予想され、国債発行額が 50 兆円にま

でのぼる可能性が高まったと発表されている。この税収の落ち込みの理由としては、不況

による企業の業績悪化や失業者の増加等によるものがある。また 21 年度の予算での公債金

収入は 33 兆円となっているが、10 月 16 日現在で既に国債発行額は 44 兆円にまで達してい

る。12 月中に編成する 2009 年度の第 2 次補正予算で国債の増発が決定する見通しなので、

税収よりも公債金収入が上回るという事態になる可能性が出てきたということになる。税

収よりも公債金収入が上回るという事態になるとすれば、これは戦後初めてのことになる。

最初に述べた通り日本は公債金収入に依存しているという状態が、戦後国債が初めて発

行された 1965 年度から続いている。「国債残高の累積」のグラフは平成 19 年度に作成され

たもので、累積国債残高を表している。①のところが建設国債で、②のところが赤字国債

を表している。建設国債とは、国が公共事業費や出資金・貸付金の財源に充てるために発

行する国債である。例えば、後世に残る道路や空港、鉄道などの整備に使用され、後世に

残らない事務経費や人件費に充てることはできない。赤字国債とは、国の財政赤字を補填

するために発行される国債のことを言う。グラフではわかりづらいが、1965 年度に初めて

発行された国債は赤字国債であった。この原因は、東京オリンピック後の過剰生産による

不況によるものである。そして 1966 年度から 74 年度までは建設国債のみが発行され、1975

年度から赤字国債の発行が再開された。これは、1973 年と 1978 年に起きた石油危機が原因

とされている。この頃から建設国債と赤字国債の両方が増加し続けている。1980 年代後半

ではバブル景気による税収増加により赤字国債新規発行ゼロという時期もあったのだが、

1991 年度以降バブル景気の崩壊から国債残高は増え続ける一方となっている。平成 21 年度

の累積残高は見込みだが、約 581 兆円となっている。だが、平成 21 年 6 月現在では国債残

高は約 685 兆円となっている。このことから、政府が考えた見込み額より約 100 兆円も増

えていることが分かる。また、国債や借入金などを合計した国の借金は 860 兆円にのぼっ

ている。国の借金が 860 兆円と言うことは、国民一人あたりの借金が約 674 万円あるとい

うことになる。

債務残高の国際比較を対 GDP 比で表すと、日本では他国に比べて極めて高い数値となっ

ている。国際的に健全だと言われているのは GDP のおよそ 60%である。他の主要先進国では

横ばい、あるいは減少する傾向にあるが、日本は 1995 年の 86.7%から増え続け、2009 年

では 174.1%になっている。わずか 14~15 年で約 2 倍になっている。このように日本の財

政状況は主要先進国の中でも最悪の水準となっている。

日本の公債残高が増え続けているという状況を打開するためには、我々は増税を推奨す

る。増税することにより税収を増やすことができるので国債の発行を減らすことができる。

そして最終的には借金に頼らず税収で歳出を賄えるようになるまで税率を上げるべきだと

考える。また、増税することにより、高齢化によってますます必要となってくる社会保障

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費に充てることもできる。しかし、増税する前にまずは景気が回復すること、税金の無駄

遣いをなくすことの 2 点が条件だと我々は考える。一つ目の条件である景気が以前のよう

に立て直してからという理由は、現在のように不景気な状態で増税すると所得が減ってい

る家庭の消費に影響が出るし、また消費に影響が出ることによって企業にも悪影響が発生

してしまうと考えられるからである。二つ目の条件である無駄遣いについては、政府が行

っている事業は政府でしか行なえないものもあり、他の物と比べにくく無駄であるかを判

断しにくいということがあるが、無駄を削減せずには増税できないと思われる。

平成21年度一般会計歳出・歳入の内訳(予算)

財務省HP http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/002.htm

歳出 歳入

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平成20年度一般会計歳出・歳入の内訳(予算)

財務省HP http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014/sy014a.htm 

歳出 歳入

国債残高の累積

1965(昭和40)年度

初めて国債発行

2009(平成21)年度末

約581兆円(見込み)

財務省HP http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/004.htm

*平成19年度のグラフ(平成20年度、21年度は政府の見込み)

②0.2兆円

581.1兆円

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3.税金の無駄遣い

何を持って無駄遣いと思うのかは個人によるが、我々が思う無駄遣いの例として、自由

民主党政務調査会無駄遣い撲滅プロジェクトチームが発表していたレクリエーション経費

とタクシー代をあげる。レクリエーション経費とは、職員同士の親睦を深め、勤務能率向

上に役立つと思われることに対する経費であり、その金額は 3.5 億円である。例としてソ

フトボール大会の開催経費に使われている。しかし、国土交通省ではカラオケセットやマ

ッサージチェアの購入に充てられていた。タクシー代とは、国家公務員が終電がなくなっ

たときに使うことができ、その金額は 24 億円である。2008 年には国土交通省の職員が一人

で年 190 回、金額にすると 500 万円使っていたことが分かっている。また、我々は米国に

対する思いやり予算にも無駄があると思う。思いやり予算とは、防衛省予算に計上されて

いる在日米軍駐留経費負担の通称のことである。具体的には、職員の労務費や基地内の光

熱費、水道費などが挙げられる。また、2006 年度には天下り法人に支出した金額が 12 兆

6,000 億円にものぼっている。このような無駄遣いは私たちの血税を使ったものである。こ

れは許されることではない。実際この無駄遣いを削減しようと今の政府では、事業仕分け

という形で努力がなされている。

この事業仕分けでは、2009 年 11 月の段階では約 900 億円の廃止が決定され廃止事業は

30 を超えた。主なものとして農道整備事業費が 168 億円、スーパーコンピューター関連な

どの地域科学技術振興・産官学連携費が 269 億円、中型ロケットの開発費が 58 億円といっ

たものなどがある。

しかしこれを全部削減したとしても国の借金の 860 兆円には遠く及ばない。日本の借金

に比べると、実際には無駄遣いの金額は微々たるものである。それでもこの無駄を削減せ

ずに増税するというのはおかしな話だ。よってまずは無駄を削減し、その上で増税をする

必要があると考える。とにかく増税は避けられないのである。

それではどの税を増税すればよいのであろうか。一般的な税としては、所得税、法人税、

消費税の 3 つがあげられる。それぞれの税を増税したときのメリット・デメリットを比較

してどの税がよいのかを検証していきたいと思う。

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4.各税のメリット・デメリット

(1)所得税

最初に所得税について説明しよう。所得税のメリットとしては、日本の場合、所得に応

じて段階的に税率が上がっていくという累進税率を採用しているため、高所得者に対して

は高い税負担、低所得者に対しては低い税負担ということがあげられる。つまり、個人そ

れぞれの所得状況に配慮しているということである。また所得税は自分が得た所得に対す

る税金なので、消費動向には反映されない。

所得税のデメリットとには 4つある。1つ目は納税額の問題、2つ目は少子高齢化による

生産年齢人口の低下による問題、3つ目は複雑なシステムというシステム上の問題、そして

4つ目にはクロヨン問題があげられる。

まず、一つ目の納税額の問題について説明しよう。高所得者は他国と比較しても同じく

らい納税しており、またその納税額も大きいためこれ以上負担を求めるのは難しいと我々

は考える。グラフを見て頂きたい。これは年収 3000 万円~5000 万円の給与所得者の個人所

得課税負担額を国際比較した場合のグラフである。この個人所得課税のグラフには、所得

税及び個人住民税等が含まれている。納税額は配偶者がいるかいないか、子どもがいるか

いないか、によって異なってくるが、我々は日本の合計特殊出生率から、夫婦と子どもが 1

人いる家庭の納税額に注目した。グラフの①の部分が 3000 万円、②の部分が 4000 万円、

③の部分が 5000 万円の給与収入がある家庭の納税額を表している。このグラフを見ると、

給与収入が3000万円ある人は、947.7万円を納税している。給与収入が4000万円ある人は、

1422.7 万円を納税している。そして給与収入が 5000 万円ある人は、1897.7 万円を納税し

ている。グラフを見てもわかるように日本の高所得者の負担額は主要先進国の高所得者の

負担額と同じぐらいである。もうすでにこれだけ納税しているのに、これ以上の負担を高

所得者に求めるのは問題だと思う。また、高所得者の場合、低所得者の人たちよりも消費

が多く、固定資産税の対象である固定資産を所有している人の割合も多いと思う。そうい

った理由で高所得者は、所得税以外にも税負担額が大きいと思う。このことから、高所得

者の所得税の増税は難しいことが分かる。

高所得者への増税が無理なので、次に増税するならば、低所得者か中所得者となる。し

かし、低所得者に増税して負担を求めるのは厳しいと考えるので、中所得者に目を向けて

みよう。グラフを見て頂きたい。ここでも、夫婦と子供が 1 人いる家庭の納税額に注目し

た。①の部分が 500 万円、②の部分が 700 万円、③の部分が 1000 万円の給与収入がある家

庭の納税額を表している。日本の納税額を他国と比べてみると、納税額が他国よりも少な

いので、所得税を上げる余地があるのではないかと考える。次のグラフを見て頂きたい。

中所得者の割合が比較的大きいということが分かる。ここでいう中所得者は 400 万円から

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1000 万円の給与所得者を指している。割合で見ると 43.9%になる。このことから中所得者

層にさらなる負担を求めて所得税を増税した場合、影響を受ける人が多いので、一般的に

は多くの人の勤労意欲が低下してしまうと考える。なので、結局は中所得者の所得税の増

税は上げる余地はありますが難しいと考える。

2 つ目の問題について説明しよう。現在の日本では少子高齢化が問題になっている。15

歳から 64 歳までの生産年齢人口は、右肩下がりに人口数が減少していき、65 歳以上の高齢

人口が右肩上がりに増加していくと予測されている。この状態が、改善される可能性は極

めて低いと考えられる。この生産年齢人口が減少しているという状態では、勤労者のみに

負担をさせるという所得税の増税を行ったとしても、将来的には税収が増えないと考えら

れる。

3 つ目の問題について説明しよう。所得税は税率が所得によって異なるという複雑なシス

テムのため、制度や税金の計算が難しく、増税や減税を行った場合さらに複雑化する恐れ

がある。さらに所得税は 103 万円以上の収入がある勤労者にのみ負担が課される税金であ

るため、収入がないニートや高齢者は税金を払わなくていいので不公平感がある。高齢者

の中にはたくさんある預金を切り崩して豊かに暮らしている人もいるかもしれないが、こ

ういった高齢者には所得税はほとんどかからない。

最後に 4 つ目の問題について説明しよう。クロヨン問題とはサラリーマンなどの給与所

得者と、自営業者や農林水産業者などの事業所得者の納税方法の違いによって生じるとさ

れる問題のことである。給与所得者は源泉徴収によって納税し、事業所得者は確定申告に

より納税する。源泉徴収は、給与をもらう前に所得税を天引きされるということである。

これに対して確定申告は、自分が必要経費を算出して自己申告をして納税するものである。

このことにより課税所得の捕捉率に差が生じていると言われている。税務署が把握してい

る捕捉率が、給与所得者が 9 割、自営業者が 6 割、農林水産業者が 4 割と言われており、

この割合の 9、6、4、をとってクロヨンと呼ばれている。この問題により給与所得者は、事

業所得者に対して不満を持っているとされている。この問題を是正するための方法として、

税務署の職員数の増員、設備の増強、そして納税者番号制度の導入などが考えられる。し

かし、税務署の職員の確保や設備の増強は膨大な費用がかかるため難しいとされている。

また、納税者番号制度の導入は、収入や資産の状況が知られ、その情報がもれる可能性が

あるので、プライバシー確保の問題から反対する意見が多く、日本で導入するのは難しい

とされている。

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個人所得税の国際比較(高所得者の場合)

947.7 851.11021.9 1024.3

791.4

1422.71239.5

1421.9 1467.41245.8

1897.71633.1

1821.9 1910.51700.2

0

500

1000

1500

2000

2500

日本 アメリカ イギリス ドイツ フランス

給与所得3000万 給与所得4000万 給与所得5000万

給与収入3000万円~5000万円 夫婦子1人

財務省HP参照

日本 アメリカ イギリス ドイツ フランス

(単位:万円) (2009年1月現在)

個人所得税の国際比較(中所得者の場合)

26.1 35.8

77.138.8 44.356.7

78.6117.1

92.5 76.8

130.1149.4

221.9183.0 

131.4

0

50

100

150

200

250

日本 アメリカ イギリス ドイツ フランス

給与所得500万 給与所得700万 給与所得1000万

給与収入500万円~1000万円 夫婦子1人

財務省HP参照

日本 アメリカ イギリス ドイツ フランス

(単位:万円)

(2009年1月現在)

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所得の分布状況

厚生労働省HP http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k‐tyosa/k‐tyosa08/2‐2.html

43.9%

(2)法人税

次に法人税について説明しよう。法人税のメリットは、個人の収入より企業の収入の方

が金額が莫大なため、少し税率を上げただけでも税収が大幅に上がることである。デメリ

ットは、諸外国に比べて税率が高いことがあげられる。どれくらい高いかと言うと、日本

の法定実効税率は 40%である。法定実効税率というのは、国税である法人税だけでなく、法

人住民税や法人事業税などの地方税を含めた、法人企業の利益に課される実質的な負担率

のことを言う。

これを他国と比較してみると、日本(東京)とアメリカは大体 40%になっており、フラン

ス、ドイツ、イギリスは 30%前後、中国と韓国は約 25%となっている。このことから、日本

の法定実効税率は高い数値となっている。また、地方税の部分は各都道府県によって異な

るため、多少法定実効税率が変わってくる。その結果、これ以上税率を上げてしまうと、

今以上に脱税に逃れる企業や、国際競争力をなくしてしまう企業、経営が悪化して倒産し

てしまう企業、法人税の安い国へ移転してしまう企業が出てくる可能性がある。また企業

の収入の変化によって税収も変化するため、景気がよければ税収は増えるが、不景気であ

る場合は税収も減る。そのため景気動向に左右されやすいということになる。実際に、バ

ブル景気の時代は大体 18 兆円前後の税収があったが、バブルが崩壊して数年の間には 12

兆円前後まで税収が落ち込んだこともある。

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(3)消費税

最後に消費税について説明しよう。消費税のメリットは、同じものを買った人は同じ額

を負担するという意味で公平と言える。また所得税や法人税に比べて安定した税収が得ら

れることもできる。

次のグラフはそれを示している。消費税が導入された時は税率が 3%だったが、その時は

税収が下がることはなかった。そして税率が 5%になり、税収は大体 10 兆円前後で安定して

いる。法人税は 1999 年(平成 11 年)から税率が変わっていない。しかし、グラフを見て

頂くと税収が上下している。これは景気の変動によるものだと考えられる。しかし同じ時

期の消費税の税収はほとんど変動していないので、景気に影響を受けないということが分

かる。また消費税は所得税や法人税と比べてわかりやすいシステムなので、税率の上げ下

げが比較的やりやすい。さらに3つの中で脱税の心配も一番少ないこともあげられる。

主要税目の税収

財務省HP http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/011.htm

所得税

消費税

法人税

平成 20 年度を見ると、脱税の件数が合計で 153 件である。そのうち所得税と法人税の件

数の合計は 137 件で、割合にすると 89%である。次に脱税額の合計は、249 億 4,200 万円

である。そのうち所得税と法人税の合計金額は 226 億 1100 万円で、割合にすると 91%であ

る。これは国税庁が把握できている件数であり、実際にはもっと多くの脱税が行われてい

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ると予測される。それに対して消費税の脱税件数は 12 件で割合にすると 8%、脱税額 12 億

7,700 万円で割合にすると 5%である。消費税も多少脱税はあるが、圧倒的に少ないことが

分かる。

消費税のデメリットとしては、高所得者も低所得者も同じ税率なので、高所得者と比べ

ると低所得者は消費税負担率が大きいということがあげられる。また消費税率引き上げに

よる消費意欲の低下もあげられる。

現在、日本の消費税率は 5%だ。これ以上消費税率を上げることに反対する意見が多く聞

かれるが、日本の消費税率を国際比較してみるとどうなっているのだろうか。税率が一番

高い国はノルウェー・スウェーデン・デンマークの 25%となっている。他の EU 諸国におい

ても欧州理事会指令により 15%以上に設定するように定められている。そして日本の場合は

カナダ・台湾と並んで 5%となっている。この 5%という税率は国際的に見ても低い数字とな

っている。各国の経済状態にもよるが、日本はまだ税率を引き上げる余地があるのではな

いかと考える。

また、2009 年 10 月 16 日に発行された日本経済新聞では、日本の経済学者の 7 割が今後

消費税を上げるべきだと考えていることが掲載されている。これは2009年9月の1ヶ月間、

日本経済学会と日本経済新聞が共同で実施した調査である。日本経済学会の約 3,400 人の

うち、560 人から回答を得、「今後、消費税率を引き上げるべきか」と尋ねたところ、「上げ

るべきだ」と答えた人が 71%に達し、「現状の 5%を維持すべきだ」と答えた人の 19%を大

きく上回っている。「上げるべきだ」と答えた人のうち最終的に目指すべき税率は「10%以

上、15%未満」が 53%で最も多く、「15%以上、20%未満」が 22%で続いている。日本の

経済学者も増税の必要性を感じているのである。

これらの各税のメリット・デメリットをまとめ、次の 3 つの観点に着目していきたいと

思う。1つ目は税収の安定性についてである。所得税の場合は今後少子高齢化による生産年

齢人口の低下によって税収は下がると考える。法人税の場合は景気動向に反映されやすい

ため安定はしていない。消費税の場合は景気に反映されにくく、安定している。2つ目に脱

税についてである。先ほども述べたように所得税と法人税は脱税件数と脱税額の両方にお

いて高い数値だった。消費税の場合はこれらに比べて低い数値である。3つ目に税率を上げ

る余地があるかどうかについてである。所得税はデメリットのところで述べたように、高

所得者の納税額が多く負担を求めることができないと考える。そのため中所得者に負担を

求めようとすると、中所得者層の人数が多いため勤労意欲の低下する人数が多くなってし

まう。法人税は各国と比較しても現時点で税率が高く、これ以上税率を上げると企業の倒

産や産業の空洞化という問題が起きてしまうと考えられるため、上げることは難しいと考

える。消費税は各国と比較しても低く、まだ上げる余地があると考える。

よって我々は消費税が一番妥当であると考える。しかし、消費税には高所得者に比べて

低所得者に対する消費税負担率が大きいというデメリットがある。そこでそれを解決する

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ための政策として我々が考えるのは、消費税率を一律に上げるのではなく、食品とその他

のもので税率に差をつけて税率を上げるという方法である。世界でも税率に差をつける方

法は採用されている。

例えばイギリスの場合は、消費税率は 17.5%だが、食料品の消費税率は 0%となってい

る。スウェーデンの場合は、消費税率は 25%だが、食料品の消費税率は 12%となっている。

イタリアの場合は、消費税率が 20%、食料品の消費税率が 10%となっている。このように

食料品とその他のもので税率を分ければ、低所得者にとって負担を軽減することができる。

5.我々の考え

「骨太方針 2009」において政府は、税率を 12%まで上げれば 2018 年度にはプライマリ

ーバランス(基礎的財政収支)は黒字化できると発表している。プライマリー・バランス

とは、税収入から国債費以外の財政支出を引いたものを言う。グラフを見て頂きたい。1の

部分が日経新聞から持ってきたデータ、2の部分が財務省の予算案から我々が計算したデー

タ、3の部分が増税した場合の予測したデータを表している。グラフを見ても分かるように

プライマリー・バランスは毎年変わるので、平成 3年度から 21 年度のプライマリー・バラ

ンスを平均した。その数字はマイナス 16 兆円である。このマイナス 16 兆円を基準に増税

した場合を考えることにした。消費税を 1%上げると税収が 2兆円増えることが分かってい

る。だから 8%増税すれば 16 兆円の赤字を減らすことができる。我々は、食料品とその他

のもので税率を分けることを考えた。現段階では食料品もその他のものも 5%である。そこ

で、食料品を 5%のままにして、その他のものを段階的に 2%ずつ増税して最終的には 21%

にすればいいと考えた。そうすることで平均して 13%になり、政府が公表している 12%と

は異なるが、我々の計算した結果では 13%にすることでやっとプライマリー・バランスが

均衡化する。均衡化するだけでは、借金自体は減らせない。そのため最初に述べた 860 兆

円の累積債務を減らすためにはこれ以上の増税が必要となる。しかし、これ以上の増税は

かなり厳しいと思う。仮に 860 兆円の借金を全部返済しようとすることを考えたとしよう。

我々の考えである平均して13%というのを仮に15%にする。その場合、その他のものは25%

にしなければならない。それでも 4兆円しか税収は増えない。ということは単純計算で 860

兆円÷4兆円で 215 年となる。したがって、累積債務を減らすことは難しく、まずはこれ以

上借金を増やさないということを目指すべきだと我々は結論づける。

以上より、我々はプライマリー・バランスの均衡化を目指し、食料品とその他のもので

税率の差をつけ、消費税率を平均で 13%まで引き上げ、借金増加を止めることを提案する。

Page 15: 消費税を増税し、財政赤字をなくそう · 1.増税の必要性 我々は「消費税を増税し、今の財政赤字をなくそう!」ということをテーマに選んだ。

プライマリーバランスの推移

‐35

‐30

‐25

‐20

‐15

‐10

‐5

0

5

10

15

3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30

平均(-16兆円)

● 8%増税すれば

プライマリーバランス均衡化へ

金額(兆円)

年度(平成)参照:日本経済新聞

③予想推移(消費税1%上げると税収が2兆円増加)

②計算

①参照

参考文献財務省: http://www.mof.go.jp/国税庁:http://www.nta.go.jp/厚生労働省: http://www.mhlw.go.jp/国債とは何か?http://gyosei.mine.utsunomiya‐u.ac.jp/zemi2001/nakazawat/nakazawata010 702.doc世界各国の消費税税率http://www.777money.com/torivia/syouhizei_world.htm毎日新聞http://mainichi.jp/select/today/news/20091017k0000m020101000c.html所得税の税率についてhttp://www.geocities.jp/yasasikukaitou/zeikinkeisan.html日本経済新聞社会経済研究所http://criepi.denken.or.jp/jp/serc/topics/chouki02.html