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大阪市立大学『大学教育』 第16巻 第 2 号 2019年 4 月 3 技能が中心に作題を各大学が行っていましたが、今回 は、思考力・判断力・表現力を問う問題も組み入れる ということになります。正規分布が生じるように問題 作りをしないと選抜ができません。そうした中で難問 も幾つか作って問題に組み込んでいる場合が多いかと 思います。生徒からすると「あれ、これは教科書に載っ てないぞ」みたいな問題も入っているわけですね。今 回はそのような問題をどんどん排除していって、思考 力・判断力・表現力を問うことにより正規分布がきれ いに生まれるような、そんな作題をしていこうという ことです。問題は実際にすでに作り上げて、附属校の 生徒さんたち、あるいは大学生を対象に、試行的にテ ストの問題を解いていただいているということです。 来年の春にはその成果が見えてくるのではないかと思 います。 そして、私どもが代表大学として担当したのは「主 体性等分野」ということになります。ご存じのとおり、 学力の 3 要素のうちの 3 つ目の「主体性をもって多様 な人々と協働して学ぶ態度」、これを含めて学力三要 素を多面的・総合的に評価し選抜をしなさいというの が、文部科学省から課せられたミッションでござい ます。主体性等を評価するための選抜としてどういっ た方法があるのかということを検討しなさいというの が、この委託事業のテーマです。大阪大学、神戸大学、 大阪教育大学、それから早稲田大学、関関同立、今年 から佐賀大学にも加わっていただき、この事業を進め ていっております。 成果については 2 つあります。 1 つ目が、「主体性」 こんにちは。先ほどご紹介を頂きました尾木でご ざいます。このたびはシンポジウムにお招き頂きま して、誠にありがとうございます。それでは、お時間 を頂戴し、 1 時間ということで前方の画面にあるテー マに沿ってお話をしていきたいと思いますが、今日用 意したパワーポイントの内容は大体90分の内容ですの で、かなり圧縮して駆け足で行きたいと思います。そ れから、説明にはお手元にお配りしているハンドアウ トにないものも含んでおります。場合によっては携帯 等を使ってカメラで画面を撮っていただくということ があっても差し支えございません。必要に応じてやっ ていただければと思います。 まずは、文部科学省の委託事業である大学入学者選 抜改革委託事業のお話です。平成28年度からスタート した 3 年間にわたる事業でございまして、今年度末で 終了です。内容は 5 分野ございまして、次の新たな学 習指導要領、この下で行う各大学の個別選抜入試のた めの調査研究です。大学入学共通テストだけではなく 次の指導要領に対応した個別選抜の入試問題を作るこ とを委託事業で実施しました。私どもの大学は「人文 社会分野(地理歴史科・公民科)」にも入っておりま して、早稲田大学、同志社大学、関西学院大学、東京 大学、一橋大学と一緒になってやらせていただいてい ます。次の指導要領で「公共」という科目が生まれま す。シチズンシップ教育をやるということです。それ から「歴史総合」という科目、それから「地理」も必 須になります。そのような改訂に対応して、これら科 目の作題を行っています。今までの入試問題は知識・ ■ 第26回教育改革シンポジウム(講演) 高校生の主体的学びとその見える化を促進する JAPAN e-Portfolio 尾 木 義 久 関西学院大学アドミッション・オフィサー 文部科学省大学入学者選抜改革推進委託事業 (主体性等分野)担当学長特命 OGI Yoshihisa

高校生の主体的学びとその見える化を促進する …...第26回教育改革シンポジウム(講演) 高校生の主体的学びとその見える化を促進するJapan

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大阪市立大学『大学教育』 第16巻 第 2 号 2019年 4 月

3

技能が中心に作題を各大学が行っていましたが、今回

は、思考力・判断力・表現力を問う問題も組み入れる

ということになります。正規分布が生じるように問題

作りをしないと選抜ができません。そうした中で難問

も幾つか作って問題に組み込んでいる場合が多いかと

思います。生徒からすると「あれ、これは教科書に載っ

てないぞ」みたいな問題も入っているわけですね。今

回はそのような問題をどんどん排除していって、思考

力・判断力・表現力を問うことにより正規分布がきれ

いに生まれるような、そんな作題をしていこうという

ことです。問題は実際にすでに作り上げて、附属校の

生徒さんたち、あるいは大学生を対象に、試行的にテ

ストの問題を解いていただいているということです。

来年の春にはその成果が見えてくるのではないかと思

います。

そして、私どもが代表大学として担当したのは「主

体性等分野」ということになります。ご存じのとおり、

学力の 3 要素のうちの 3 つ目の「主体性をもって多様

な人々と協働して学ぶ態度」、これを含めて学力三要

素を多面的・総合的に評価し選抜をしなさいというの

が、文部科学省から課せられたミッションでござい

ます。主体性等を評価するための選抜としてどういっ

た方法があるのかということを検討しなさいというの

が、この委託事業のテーマです。大阪大学、神戸大学、

大阪教育大学、それから早稲田大学、関関同立、今年

から佐賀大学にも加わっていただき、この事業を進め

ていっております。

成果については 2 つあります。 1 つ目が、「主体性」

こんにちは。先ほどご紹介を頂きました尾木でご

ざいます。このたびはシンポジウムにお招き頂きま

して、誠にありがとうございます。それでは、お時間

を頂戴し、 1 時間ということで前方の画面にあるテー

マに沿ってお話をしていきたいと思いますが、今日用

意したパワーポイントの内容は大体90分の内容ですの

で、かなり圧縮して駆け足で行きたいと思います。そ

れから、説明にはお手元にお配りしているハンドアウ

トにないものも含んでおります。場合によっては携帯

等を使ってカメラで画面を撮っていただくということ

があっても差し支えございません。必要に応じてやっ

ていただければと思います。

まずは、文部科学省の委託事業である大学入学者選

抜改革委託事業のお話です。平成28年度からスタート

した 3 年間にわたる事業でございまして、今年度末で

終了です。内容は 5 分野ございまして、次の新たな学

習指導要領、この下で行う各大学の個別選抜入試のた

めの調査研究です。大学入学共通テストだけではなく

次の指導要領に対応した個別選抜の入試問題を作るこ

とを委託事業で実施しました。私どもの大学は「人文

社会分野(地理歴史科・公民科)」にも入っておりま

して、早稲田大学、同志社大学、関西学院大学、東京

大学、一橋大学と一緒になってやらせていただいてい

ます。次の指導要領で「公共」という科目が生まれま

す。シチズンシップ教育をやるということです。それ

から「歴史総合」という科目、それから「地理」も必

須になります。そのような改訂に対応して、これら科

目の作題を行っています。今までの入試問題は知識・

■ 第26回教育改革シンポジウム(講演)

高校生の主体的学びとその見える化を促進するJAPAN e-Portfolio

尾 木 義 久関西学院大学アドミッション・オフィサー文部科学省大学入学者選抜改革推進委託事業

(主体性等分野)担当学長特命

OGI Yoshihisa

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第26回教育改革シンポジウム(講演) 高校生の主体的学びとその見える化を促進するJapan e-Portfolio

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として、何をどう評価すればいいのかということです。

これはどの大学にとっても大きな課題です。当然なが

ら、今回の高大接続改革の文脈に沿えば、高等学校で

新しく始まる学び、アクティブ・ラーニング、それか

ら「探究」を、高大接続改革では、これらを大学入試

で評価しなければ高校教育は変わらないという視点に

立っていますので、これらを評価する方法を研究して

います。ただ、現段階で新たな学習指導要領はまだ実

施されていない。そこで、SSHやSGH、あるいはバ

カロレア校では先導的に「探究」がもう始まっている

し、アクティブ・ラーニングも始まっているし、社会

に開かれた教育課程としていろんなカリキュラムが組

まれているということですから、これらの高等学校の

生徒さんたち、あるいは先生方のいろんなご意見を伺

いながら、評価尺度・基準の開発について、調査・研

究を進めていっているということになります。この評

価尺度・基準の開発については、これらの大学だけで

はなくて、東京大学ですとか京都大学の先生方にも

入っていただいて進めさせていただいているところで

す。

もう一つは、ICT活用による入試モデルの構築です。

何とかICTを活用して主体性を評価する仕組みができ

ないかと取り組んでいます。特に「一般入試のほうを

ICT活用により主体性評価できないのか」ということ

が課題です。そうした中でJAPAN e-Portfolioという

システムをつくりました。ここに生徒たちの情報を蓄

積して、蓄積された電子データを使って選抜をしよう

という試みがこの委託事業の中の一つです。去年の10

月 2 日にJAPAN e-Portfolioをオープンしまして、私

のほうは、先ほどご紹介いただいた通り、日本各地の

教育委員会さんですとか高等学校に行きまして、いろ

んなご意見を頂戴していっているといったところで

す。

そ ん な 中 で 出 て き て い ま す の は、「JAPAN

e-Portfolioは入試の改革ということで作ったというの

は判るんだけれども、そもそも入試というのはすぐに

2021年で全て変わるわけじゃないよね」という声で

す。「それからもう一つ、我々の高校にとって差し迫っ

た問題があるのだ」と。それは何かというと、平成34

年の学習指導要領改訂が重要な点だということです。

高校の先生方からは、「だから高校教育改革でeポー

トフォリオを使わなきゃいけないということなんじゃ

ないの?」というご指摘や声がかなり強く聞かれる

ようになってきました。特に高校の注目するJAPAN

e-Portfolioの活用はeポートフォリオとしての利用の

観点です。実はこのJAPAN e-Portfolioが動き出しま

してからほぼ 1 年たとうとしていますけれども、やは

り一番使用率が高いのは東京なんです。その次が大阪

府です。大阪で今使っていただいている生徒さんは

7,000人ぐらいになっています。徐々に利用数が増え

ている。どこが高校教育改革につながるのか、という

点、これをお話ししていきたいと思います。

その前に、まずは高大接続改革の意義について、も

う一度先生方と一緒に確認してまいりたいと思いま

す。私は何度かこういったことを講演でお話ししてい

ますので、同じ画像を何度も見ているという先生方も

おられるかもしれません。御容赦ください。(画像提示)

これから先行きの見通しができない非常に困難な時代

になってくるということは、もう先生方もご理解のと

おりだと思います。きょうは生徒も保護者の方もおい

でだということですが、現在すでにまさに先行きが見

えない時代に突入しています。そんな中で、「子供た

ちにどんな力をつけてもらわなきゃいけないのか」と

いうことが、中教審の中で真摯に議論されてきたわけ

です。その議論が、高大接続改革ということで結果を

見ているものだと思います。高大接続改革の内容が発

表された当時、私自身も入試の仕事をしておりました

ので、高校の先生方のいろんなご意見を伺いに回りま

したが、「高大接続改革は失敗するで。あかん、あか

ん」というお声が多かったです、「正直言って「ゆと

り」のときと一緒や、またどうせ政権がかわったら変

わるで」というふうにおっしゃっている先生が多かっ

たのですけれども、私が文科省の中でいろんな形でお

仕事をさせていただくと、どうもその雰囲気はちょっ

とないなという感じがします。それは何かというと、

文科省の官僚方、それから政治方、それから中教審等

に加わられている先生方、これは大学の先生方であっ

たり、高校の先生方、また小学校、中学校の先生方で

すが、こうした方々のお話を聞いていると「やっぱり

この高大接続改革をしないとまずい。」何がまずいか

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大阪市立大学『大学教育』 第16巻 第 2 号 2019年 4 月

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というと、日本がこのままでは、まずいことになる。」

そういうお声です。ですから高大接続改革をする熱意、

熱量というのは非常に高い事を感じているのです。特

に人工知能の話がよく出てまいります。今ある仕事の

うちの60%は人工知能にかわるんだというお言葉をい

ろんなところで聞きます。そういったことも踏まえな

がらいろいろと検討が進んだということですね。

生徒たちの内面のことについてもこういったデータ

が出てきているわけです(画面)。自分は価値ある人

間だと思っている生徒の割合、だめな人間だと思って

いる生徒の割合を見ると、日本はほかの国に比べて自

己肯定感が結構低いというのが結果として出ているわ

けですね。高等学校の教育のレベルは非常に高いとい

う評価があるにもかかわらず、生徒たち自身は内面の

評価が非常に低い。それから、先ほども申し上げたと

おり、変えてほしい社会現象が自分の参加で変えられ

るかもしれないと思っている生徒の率が非常に低いと

いう結果です。これは非常に愕然とするところであり

ます。この部分などが探究の部分、特に現代社会の諸

問題に関しての課題研究をしていくというところにも

つながっていっておるというふうに思います。

平成24年の段階で文科大臣から諮問された内容はこ

ういうことでございます(画面)。問題意識としては

こういうことでございました。「先を見通すことが難

しい時代にあっては、生涯を通じ不断に主体的に学び

考える力、予想外の事態を自らの力で乗り越えること

のできる力、グローバル化に対応し活力ある社会づく

りに貢献することの出来る力などの育成が特に重要」

だというこの観点の中で中教審での議論が進んでいっ

たということであります。そしてでき上がったものが

高大接続改革ということになると思いますが、特にこ

の最後の部分に書かれている「生涯学び続けられる力」

がその中で重要だと私は思います。

これまでの社会とこれからの社会の比較であります

けれども(画面)、知識・技能の「習得」と「再生」、

まさに教科書の中身をしっかりと押さえて一つの答え

を出していくと、これはこれからも重要なことであり

ますけれども、高等学校での学びというのは、こうし

たことを中心に行ってきたわけですね。大学での学び

というのは、答えのない学びに挑戦するということで

あろうかと思います。高等学校では、教科書を中心に

一つの解を導きます。ところが、これからは、高等学

校でもやっぱり教科書の知識を中心に思考、判断、表

現していくということが重要であり、大学と同様に答

えのない学びに挑んでいくという、こういうものが

やっぱり必要だろうということで、学習指導要領に盛

り込まれています。

その中でも「探究」が入ってきました。「探究」に

ついては、高校の現場を拝見すると、私はいろんなこ

とを感じる点があります。大阪にはグローバルリー

ダーズ校が10校あって、文理学科に変わり、すべての

高校が「探究」に取り組まれているわけです。実は他

県で見てもなかなかない取り組みだと思います。私立

の進学校でも「探究」が入ってきているわけですね。

生き残りをかけて「特進」をつくるみたいな動きが今

までの形だったのが、どうも「探究」に今は向かって

いる感じがします。高槻高校さんは「ぜひ探究をする

よ、うちは全員でする」と仰られたときは驚きました。

この辺だと清風南海さんも「探究」に取り組まれてい

ます。SGHということで。「探究」に取り組み始めら

れた岡山県の操山高校ですが、校長先生から伺った

のは「もう「探究」なんだ」と。なぜかと言えば、探

究した生徒たちに対する大学の先生方の評価が上がっ

てきたとおっしゃるのです。国立大学は特に研究力を

求められるのですが、「探究することによって、やっ

ぱり研究力が上がってきた」と、そのようなことを

おっしゃっていました。先日地震のあった北海道の高

校にも行かせていただきました。ここは以前は、進路

多様校で、進学者がほとんどないような高校さんだっ

たんですけれども、「特進」ではなく、「探究」を設け

られたのですね。クラスのほうも参観させていただい

たんですけれども、かなり活発に子供たちが意見を出

す。探究することによって、実は子供たちが自然とイ

ンプットをするようになるんです。それによって成長

している姿が見られるようになり、「やっぱり進学を

しよう」という意気込みが上がってきたということも

おっしゃっていました。これには、やはり「探究」と

いうことが一つのキーワードになってきているという

ふうに思います。

ただ、そういった「探究」を最初にしようとしても、

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第26回教育改革シンポジウム(講演) 高校生の主体的学びとその見える化を促進するJapan e-Portfolio

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やっぱり大きな課題があるようです。それは何かとい

うと、「「探究」をこれから高校でするよ」と言うと、

保護者の方々から「先生、それは大学入試でどんな役

に立つんですか」と、こういうことになります。高校

生たちも「それは何の役に立つんですか」ということ

になります。国としても、探究・アクティブ・ラーニ

ングを進めていこうと。そして実際に成果が上がって

いっている、そういったことの実感はありつつも、ど

うも大学入試が知識・技能中心の選抜になっていると

いうことから高校の教育改革が進まない。ここが高大

接続改革における、一番のキーワードでございます。

そういったことで、三位一体で改革していこう。そ

れがわが国の高大接続改革ということになります。こ

れはもう先生方ご理解のとおりだと思いますが、学

力 3 要素を多面的、総合的に評価する入試に転換する

というのが2021年度入試のテーマでございます。学

力 3 要素の知識・技能、思考力・判断力・表現力、そ

して主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度、

この 3 つを評価するということなんです。ただ、本来

的に、この 3 つ目は実は学校教育法の中で書かれてい

る言葉ではないのです。学校教育法の中では「主体的

に学ぶ態度」として記載されていたものが、多様性と

協働性というワードが入ってまいりました。これは高

大接続改革で出てきたキーワードです。また、これは

産業界からの要請があって入ってきたキーワードじゃ

ないかというようなことをおっしゃる先生もおられま

す。いずれにしましても、この学力 3 要素を評価する

ということがテーマになっているのが2021年度入試で

す。

ただ、それがまた何年か後に変わらざるを得ません。

2025年、つまり今の小 6 生たちの入試のときには、こ

の 3 つ目が「学びに向かう力・人間性」となります。

学力の3要素という言葉も、 3 つの資質・能力というこ

とに変わるのですね。人間性というのは学力じゃない

からということで、資質・能力に変わった理由は知っ

ておいていただいたほうがいいと思います。

文科省の方々にお話をいろいろ聞いていますけれど

も、私もそうだと思うのは、やっぱり高等学校でも学

びを評価する入試にいかに転換するのかということが

一つの課題なんだということであります。その主体性

ということについて、じゃあ、それは何なのかという

ことですけれども、これは文科省の教育課程企画特別

部会論点整理、この整理の結果を参考にさせていただ

きました。私どもが委託事業をするに当たって、主体

性について、何を評価したらいいのか、主体性とは何

だろう、こういうことからスタートしたのですが、そ

もそも、これは非常に哲学的な話にまで至ってしまい

ます。そこで、高大接続改革という文脈でありますか

ら、やっぱり中教審の議論を踏まえて「主体性」を考

えようということになりました。学びに向かう力・人

間性。主体的に学習に取り組む態度も含めた「学びに

向かう力」、自己の感情や行動を統制する能力、自ら

の思考のプロセスを客観的に捉える力など、いわゆる

「メタ認知」に関するもの(画面)。「人間性」は読み

上げませんけれども(画面)、こういったことを評価

するということが重要だと。

ただ、これだけ聞いても、「何を評価するんや」と

いうことはなかなかわかりにくいところはあろうかと

思いますので、次に、学習指導要領の内容を少し深読

みしたいと思います。高等学校は、当然ながら学習指

導要領に沿って教育が行われています。ですから選抜

におきましては、やっぱり学習指導要領を踏まえた形

で選抜しなければならないということは当然ご理解の

とおりだと思いますので、やはりこのご理解は必要だ

と思います。

今回、非常に大きな学習指導要領の改訂に私はなっ

たと思います。何が変わったのか。「主語」が変わり

ました。今までの学習指導要領は、先生方が何を教え

るかという観点で編まれてきているわけです。ごらん

になってください(画面)。この主語は何でしょう。「生

徒は」ですね。「子供たちは」と読み替えてもいいです。

子供たちは何ができるようになるか、子供たちは何を

学ぶのか、子供たちはどのように学ぶか、こういった

観点で学習指導要領がつくり上げられたということに

なります。全て学習者の目線に今回立ったということ

が非常に大きな改訂でございます。

その中で、「何ができるようになるか」という部分

だけ抽出しました。新しい時代に必要となる、先ほど

申し上げた学力の 3 要素にかわって資質・能力の育成、

コンピテンシーの育成と、学習評価の充実ということ

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大阪市立大学『大学教育』 第16巻 第 2 号 2019年 4 月

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が必要になってきます。この学習評価は高等学校の先

生がされるという部分になりますので、きょうはくど

くどしく申し上げませんけれども、高等学校の先生方

になった気持ちで先生方はお聞きください。子供たち

の知識・技能をどうやってはかるのか。これはペーパー

テストで期末試験、中間試験で成績が出るので、これ

は数値的にもすぐにはかれる。思考力・判断力・表現

力についても、場合によってはペーパーテスト、ある

いはレポートやインタビューしながら評価できるとこ

ろだと。ところが、学びに向かう人間性をどう評価す

るのか。これは実は文科省でも今はまだまだ検討され

ている途中でございます。

文科省の中に中教審の初中局の教育課程ワーキン

グ・グループというのがあります。私もそこに呼ばれ

まして、「話をしてくれ」ということで行ってまいり

ました。「私ごときが何の話をすればよろしいんです

か」と。そんな中で言われたのが、「ポートフォリオ

の話をしてほしい」ということでございました。「知識・

技能」「思考力・判断力・表現力」の 2 つについては、ルー

ブリック等を使いながら、絶対評価の世界の中で評価

できる内容だと思いますが、「学びに向かう力・人間性」

については絶対評価ではない。相対評価でもない。個

人内評価なのだということを先生方はおっしゃってい

ます。

きょうは教育学の先生方がたくさんいらっしゃると

思いますけれども、個人内評価について端的に私が理

解している中で言えば、きょうの私とあしたの私で何

が違ったのか。この私が 1 年後にどう変わるか、どう

成長したのか、こういうことを見ていくのが個人内評

価だということを教えていただきました。ポートフォ

リオに記載される生徒自身の記述の中からその成長を

見てとろうという、そういう取り組みがあるとのこと

でございました。私が伺ったときにそういう声が上

がって、「ポートフォリオをくれぐれも文科省のほう

で公共性をもって進めてください」というお声が上が

りました。そのときにおっしゃったのは〇大の〇〇先

生で、やはりポートフォリオを使ってこれを評価でき

るんじゃないかという、そういう期待感があるという

ことだったのですね。かつての議論の中でも、ポート

フォリオを通じてということは既に出ているのですけ

れども、学習評価でもポートフォリオを使っていこう

ということです。

それからもう一つ、今回の改訂で大きなのは、アク

ティブ・ラーニングが入るということです。アクティ

ブ・ラーニングについてですけれども、アクティブ・

ラーニングはどうもグループ学習とかゼミナールとい

う姿、どうしても形を追ってしまうということがある

ようですが、文科省のほうは形のほうを示しているわ

けではありません。こういった要素を満たすようなも

のをやってほしいということを示しています(画面)。

主体的な学び。学ぶことに興味や関心を持って子供

たちが自己のキャリア形成の方向性と関連づけながら

見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を

振り返って次につなげる学び。ちょっと長くなります

けれども、こういったことだという定義がされていま

す。こういったことが満たせているか。次に、対話的

な学び。子供同士の協働、教職員や地域の人たちとの

対話、先哲の考え方を手がかりに考えることを通じ、

自己の考えを広げ、深める対話的な学びが実現できて

いるかどうか。形じゃなく、これが満たせているかど

うかということですね。それから、深い学び。「習得・

活用・探究という学びの過程」──これは以前からあ

りました──の中で、各教科等の特質に応じた「見方・

考え方」──これも重要な言葉なんですけれども──

を働かせながら、知識を相互に関連づけてより深く理

解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を

見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造

したりすることに向かう「深い学び」が実現できてい

るか。こういったことをアクティブ・ラーニングの中

でということで子供たちにやらせてくださいというこ

とです。

文部科学省としては、形は示さずにこれを満たして

くれということですから、高等学校ごとに要はメソッ

ドをつくることが必要になります。学習指導要領はそ

もそもにカリキュラムではありませんので、学習指導

要領をもとに、高等学校ごとのミッションに基づいて

カリキュラムをつくるわけです。その中にアクティブ・

ラーニングを含めていくわけです。ですから、アクティ

ブラーニングの形について、何か寄せ集めて、あのや

り方が悪いね、あの高校のやり方がいいねと取ってき

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第26回教育改革シンポジウム(講演) 高校生の主体的学びとその見える化を促進するJapan e-Portfolio

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てやるだけでは、「ハウルの動く城」というアニメが

ありますが、あのデカイ怪物みたいなカリキュラムに

なってしまいます。その高校の目標を達成するために

どんなアクティブ・ラーニングをやるかということを

やっぱり考えていかなければいけない。これを平成34

年に急に高校にやれと言っても、できるわけが実はな

くて、その前からじっくりじっくりと取り組んでいき

ながら、ようやくそれができ上がっていくんだという

ふうに私は思います。非常に時間のかかることだと思

います。そういったことを高等学校ごとがしっかりと、

校内の仕組みづくりをしながら行っていく必要がある

ということだと思うのです。そうなると、高等学校ご

とにそれをしっかりまじめに考えてやられた高校さん

と、言われているから、まあまあちょっとやっとこう

かということでやられた高校さんとで、格差が開いて

いっちゃうんじゃないのかなという気がしなくもあり

ません。そういった何となく不安なところはあります。

これは文科省のホームページに出てきておりますの

で、またごらんになってください(画面)。先ほど申

し上げたものも、ここから刷り出したということでご

ざいます。学習過程の改善ということもあります。ア

クティブ・ラーニング、それから生徒目線になった学

習指導要領。重要なことは、生徒自身が「主体的・対

話的で深い学び」を通して資質・能力が育成できてい

るかの評価をしなきゃいけないわけですね。生徒自身

がその資質・能力が育成されているかの自覚が重要と

なる。キャリアを意識しながら、子供たちがそれをし

なきゃいけないということですね。将来、例えばお医

者さんになりたいんだという子供がいるのであれは、

じゃあ、今高1の私にどんな力が必要なのかというこ

とをちゃんと意識しながら学んでいっていただきたい

ということ。キャリアの方向性と関連づけながらとい

うこともありましたが、要はそういうことなのかなと

思います。その時々に自分自身で何が足りないのか、

何ができていないのかをちゃんと自覚するということ

です。

「深い学び」ということについてもそうです。生徒

自身が評価された内容を自覚することが重要なのだと

書いていますが、ここでやはり高校の先生方に言われ

たのが、「これから生徒目線の学びになっていくとい

うことになれば、やっぱりポートフォリオを使って子

供たち自身が気づいていくということをしないとだめ

ですよね。」ということでした。特に東京の高校から

呼ばれる機会が多くて、何の機会に呼ばれるかという

と、ポートフォリオ研究会みたいなところからのお声

がかりが最近増えてきました。そこで議論されている

のは、生徒自身のための学びのツールとしてポート

フォリオを使うことについてです。

特に深い学習、これは溝上先生の論文から引用して

いますが(画面)、一番最初に「振り返る」という言

葉が出てきます。浅い学習に対して深い学習って何な

のかと。これは大学のゼミナールで多分やっていただ

いていることだと思いますけれども、こういったこと

を高等学校の生徒にも、探究を通じながら──高校に

は日本史探究、世界史探究、また理数探究、古典探究

という科目が入りますけれども、そんな中でいろいろ

と深い学びをしていこうということが趣旨なのだと思

います。

もう一つ、「カリキュラム・マネジメント」という

概念も入ってきます。「社会に開かれた教育課程」と

ありますが、地域や大学、企業、こういったところと

連携しながら高等学校の目的を達成するためにカリ

キュラムをつくるということです。既にSGHなんか

ではいろんなことをやられていますけれども、地域

の方々も評価のほうに入って地域に開かれた教育課程

を作る。それについて目的どおりに達成されている

かどうかのマネジメントをしなければいけない。しか

し、高等学校のところでマネジメントということを言

われたときに、私なんかによく言われるのは、「その

データは何のデータに基づいているの」と、「何の根

拠に基づいてそれを言っているんですか、説明しなさ

い」ということで、必ず根拠を問われます。当然なが

ら、高校でもこのカリキュラム・マネジメントをする

ときに、いわゆる根拠となるデータが必要になって

くる。これは中教審の部会でも議論になったようです

が、やっぱり「データ等に基づいてカリキュラム・マ

ネジメントをやっていかなければいけない」というこ

とです。しかし、高等学校では往々にして、紙はたく

さんあるんだけど、データベースというのは実はお持

ちでない高校さんがたくさんあるわけです。そうなる

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大阪市立大学『大学教育』 第16巻 第 2 号 2019年 4 月

9

とデータというのはどうするのかが課題です。

アクティブ・ラーニングとカリキュラム・マネジ

メントというのは両輪の関係で進めなさいというふう

になっています。両輪の関係なのですね。つまり、カ

リキュラム・マネジメントは組織の運営の改善をする

わけですけれども、アクティブ・ラーニングも、平素

の授業改善があってこそこのカリキュラムが達成でき

るのだという観点です。例えばある先生が、きょうは

アクティブ・ラーニングの一環として大阪市立大学の

先生方のところにお話を聞きに行こうということで実

際にフィールドワークとして生徒とともに来られた。

フィールドワークの後どういうことをしているかとい

うと、場合によってはやりっ放しという高校もありま

す。何の感想も求めず、やりっ放し。場合によっては

感想文を出させる。ところが、その紙で書いた感想文

というのは、主催した先生のところでとどまっている。

実は高校内で共有されていないというケースもある。

これがJAPAN e-Portfolioを使うとどうなるかという

と、全教職員にそれが共有されるようになってきます。

つまり、アクティブ・ラーニングでこういう取り組み

をしたけれども、きょうは子供たちには難しくて、「私

にはわからなかった」みたいなコメントが多いね。こ

れはある意味ちょっとつらかったかな、みたいなこと

も全体で判断できるようになってくるわけですね。そ

ういったことで、ポートフォリオがあることによって

マネジメントができるのではないか。そういうお声を

高校の先生からいただくようになってきました。

これは平素の授業改善にも使えるし、アクティブ・

ラーニングを入れていくといっても、今の高校の現場

を見ていると、一生懸命それをしようという先生もい

らっしゃいますが、「いや、もうそんなのはいいよ」

と言っている先生方も実はいらっしゃいます。でも、

高校全体で取り組まなきゃいけないわけです。そうな

ると、やっぱり全体でマネジメントしていかなきゃい

けない。全体で問題意識をしっかり捉えながら、どう

改善していくのか、それが重要になってくる。そこで、

ポートフォリオを活用したいという高校さんも結構出

てきたということです。

それと、2021年度入試の話に戻ります。大学入学

者選抜実施要項の改訂が行われるということです。ご

存じのとおり、大学入学者選抜実施要項というのは、

入学試験のルールブックでございます。しかしなが

ら、このルールブック、守られていない部分もありま

す。後ほどそれはお話ししたいと思います。特に今回

大きな改訂の部分になるのは調査書の話でして、今ま

で 3 つにカテゴライズされた項目が 6 つの項目にカテ

ゴライズされて、学年ごとに記載しなければならなく

なったということであります。より多様で具体的な内

容を記載するということが求められる。これは、大学

の入試の中で主体性が評価する、そのためにこの調査

書の充実が重要だろうという、有識者会議からのご意

見の中で多分でき上がってきたかと思います。裏表両

面1枚の規制がなくなり、各大学が調査書に盛り込む

内容を要望できるようになりました。ある大学が、定

型の項目以外でこういったことを書いてくれというこ

とを言えば、高校さんはそれを記載しなきゃいけない。

子供が 5 つの大学を受けるうち 3 つの大学がそういっ

たものを要望してきたと。では、例ば 3 種類の調査書

がいるのか?みたいな話にもなるのですけれども、文

科省は「 3 種類じゃないです。その 3 つがちゃんと 1  

枚に入っているということが大事なんですよ」という

ことでした。つまり、生徒の活動を十分に把握して調

査書を書く必要があるということです。推薦書も、学

力 3 要素をふまえて記述することになりました。です

から、生徒たちを十分把握することが必要だという事

です。そうなると、高等学校の先生方として、子供た

ち一人一人をどう見つめているのか、どこまで理解で

きているのか。とっても難しいことであります。平素、

表に現れている姿が、その生徒自身のどれくらいなの

か・・・。そこで、先生方から、ポートフォリオの記

述の中で、実は、見れるというお話は結構いただいて

いまして、「面と向かってものは言わないけれど、ポー

トフォリオに書かせると意外と子供たちは本音を吐く

んだよね」と。既にJAPAN e-Portfolioを実践してい

る高校からご報告がありました。

今日は大学の先生方が中心で高校内の事務について

はご存知ない先生もおられるかもしれませんが、高校

では生徒一人ひとりの指導要録の作成を毎年行ってい

ます。学期ごとに、あるいは学年末に生徒たちに紙を

配って、「今年 1 年、君たちが行った活動やその成果

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第26回教育改革シンポジウム(講演) 高校生の主体的学びとその見える化を促進するJapan e-Portfolio

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を書きなさい、それからエビデンスもつけて僕に出し

てね」と依頼し、生徒は紙に記入して担任の先生に提

出するわけです。担任の先生は提出された紙に記載さ

れた40名の生徒のデータを打ち込むわけです。それで

打ち込んで何をつくるかというと、指導要録というこ

とになります。場合によっては、「これは書かなくて

いいかな」とか、「これは書こう」ということで判断

を加えてデータが打ち込まれていく。そういう作業を

40人分しています。 3 年生にはそれ(指導要録)をも

とに調査書がつくられるわけです。

これからは大学ごとに要請があれば、調査書に盛り

込んでいく必要もあります。「先生、こんなことを記

述する必要があります」と生徒は先生に言って、(そ

もそも、それを言ってもらうということが必要なんで

すが)、先生に調査書を作ってもらわねばなりません。

調査書はご存じのとおり、子供たちがその中身を見れ

ません。見れないんですね。ですから、何が書いてあ

るか、子供たちにはわからない。

今年、私どもが教育学部で主体性を評価する入試を

やったんです。リーダーシップ評価型ということです。

エビデンスは調査書です。リーダーシップに関する取

り組みをした部分について調査書を見ながら、生徒か

らは自分で自己アピールをするのですが、何と 4 割の

志願者のアピールした項目についての記載が調査書に

ありませんでした。なかったわけですね。生徒会長の

記載がないんです。部活のキャプテンもなかったです。

一年次「特になし」、二年次「特になし」三年次「特

になし」と記載している調査書もあるわけです。なぜ

これが起こるかというと、高校の先生に聞いたところ、

「これは大学の責任なんだ。調査書なんか使わないで

しょう、特になしでいいじゃないか」という高校さん

もあるわけです。あるいはもう一つは、「やっぱり正

確に把握できていなかった」、そういう高校もあるよ

うです。しかし、これでは入試ができません。全ての

生徒の高等学校の先生方に電話して、事実を確認し、

ファクスを取り寄せて判こをついていただいて、それ

で選抜は終わったんですけれども、このような調査書

に関する事実が存在しているのです。

そういうことで、JAPAN e-Portfolioを使い子供た

ちが情報を入力して、事実に関する項目については、

このポートフォリオの中でお互いに先生と確認ができ

ませんかねという話を高校の先生方としています。事

実に関することだけとして、生徒の主観に関する記述

は承認を必要なしとしましょう。担任の先生は業務が

集中しているので、生徒の活動の現場にいた先生、た

とえば、部活ならば部活の先生が見て確認しよう、探

究のフィールドワークならば探究の先生が確認しよ

う、クラスのことは担任の先生が確認しよう、そういっ

たことで役割分担できれば、大変便利だというお声を

頂いています。このような形でJAPAN e-Portfolioを

活用した場合には、今まで先生が打ち込んでおられた

40人分のデータが、これはもう打ち込む必要がなくな

ります。このJAPAN e-Portfolioの情報をそのまま何

ダウンロードすればいいのです。これは来年度の課題

となっていますが、出力する形はCSVなのかXMLな

のか様々ありますが、校務システムに組み込んで頂け

ないかなと思っています。こうなれば、生徒のデータ

を活用するわけですから、 3 年生の先生が調査書をつ

くる段階でも、基本的に変に削除されない限りは、生

徒と先生が付き合わせたデータを使って安心して出願

できるということです。

主体性を評価する場合、基本的には生徒がアピール

してというケースが多いと思います。大学側の出願要

件として、「こういった主体性に関するものがある方

は出してください」というケースもあるかもしれませ

んし、「自分でアピールしたい項目を 3 つ書いて出し

なさい」というケースもあるかもしれません。いろん

な形で生徒がアピールして出すわけですけれども、そ

れぞれがJAPAN e-Portfolioに網羅されているという、

そういう形になればいいと思っています。

そしてJAPAN e-Portfolioを使うことが高校の先生

方の働き方改革につながればいいと思います。そのよ

うな考え方で、高校の先生方と、いろいろとディスカッ

ションした上で作り上げました。このようなJAPAN

e-Portfolioに、生徒たちにはスマートフォンやタブ

レットを使って節目、節目で情報を入れていきます。

エビデンスに関する写メを撮って、写真とか、そういっ

たものも入れていくことができます。生徒たちはそれ

を振り返り、自己学習につなげていく、主体的な学び

につなげていく。

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大阪市立大学『大学教育』 第16巻 第 2 号 2019年 4 月

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ポートフォリオについていろんな考え方があります

が、JAPAN e-Portfolio って、ちょっとポートフォリ

オ機能は弱いです。海外でいうショーケースとかデー

タベースに呼ばれるものに近い形です。ただ1年生の

ときから情報を蓄積していただこうという点がちょっ

と海外のものとは違う点なので、それであえてポート

フォリオという名前にしました。生徒たちはJAPAN

e-Portfolioを使って振り返りながら自己学習をする。

先生方はその入力した内容を見られるようにしていま

す。全ての先生が全ての生徒のデータを見られる形を

とっています。それをもとにした生徒の活動の把握で

あったり、学びへの関心・意欲・態度の把握をしてい

ただく、あるいは授業改善につなげていただく、こう

いう期待を持っています。

そして、やっぱり対話をしていただく必要があるだ

ろうと思っています。 1 年生のときに記載されている

内容というのは、きっとつたないものも入っていると

思うんですが、そういったものについて、いわゆる言

語活動の充実というのも求められていますから、先生

方との対話をしていただくということも必要かもしれ

ませんし、最初の段階では振り返りの仕方そのものを

教える必要もあるのかもしれません。

恐らく大学入試において、先生方も面接をしてい

る中で、「ああ、これは付け焼き刃で面接対策したな」

というのがはっきりとわかる生徒がいると思うんで

す。志望理由書もそうです。「これは明らかに大人が

書いているじゃないか」と。結局はそれを面接の中で

見てとろうということにはなっていくわけですけれど

も、やはり 1 年生からしっかりと先生方と対話をして

いただきながら言語活動を充実していくということは

重要なんだというふうに思っています。

そんな中で33年度に入学者選抜実施要項の見直し、

それから34年度の学習指導指導要領の改訂。これに対

応するためにJAPAN e-Portfolioを使っていくという

声になっています。つまり特に高等学校で今言われて

いるのは、入試のツールというよりも、まずは教育の

ツールとして利用する、そういうことを言われる高校

さんが多くなってきています。

ディジタル調査書の話もございます。実は先週で

すけれども、文部科学省が概算要求を出されました。

JAPAN e-Portfolioは恐らくプラットフォームという

想定をされているかもしれまえん。ディジタル調査書

とJAPAN e-Portfolioがどう違うのかということにつ

いてちょっとお考えいただけないかと思います。調査

書についてはどんなことが書いてあるかというと、「科

学オリンピック予選出場」みたいな事実が述べられて

いるにすぎません。そこに至るまでに子供たちが何を

してきたのかということは、実はそこには書き切れな

いですね。そこで、それが書かれているのがJAPAN

e-Portfolioということになります。科学オリンピック

に至るまでに、「実験ですっごい失敗しちゃった」み

たいなことや、「失敗したんだけれども、その原因を

見つけて、こういうふうにやった」、「気づきをもって

実験したらうまくいった」とか、そんなことがこち

らのポートフォリオには詳しく書かれることになりま

す。ポートフォリオはそのプロセスを見ることができ

るというわけです。これを大学入試でうまく活用いた

だく。ただ、あくまでも生徒達にとっては、教育の中

での自分の記録のために使っていただくというのが前

提です。大学入試のためにということになると、自分

のことをそのまま正直に書かなくなってくる。何とな

くうまく書かなきゃみたいな話になってくる。そうな

ると、ポートフォリオの趣旨からはちょっと歪んでき

ますね。そういうことではないので、使われる大学の

側もその点を意識していただきたいと思うんです。

何となく大学入試できれいに書かれているなとい

うことではなくて、子供って、どんなラーニングパス

を経て来たんだろうと、事実に基づいて見ていただか

ないと、どうもポートフォリオが歪んじゃいます。う

そを書くということでもないけれども、取り繕っちゃ

うことになると思うので、大阪市立大学さんが、もし

JAPAN e-Portfolioを使うということになったときに

は、この点については意識を持っていただくというこ

とは非常にお願いしたいところでございます。

要は成果に至るまでの過程が見えるというのがポイ

ントですね。これは九州大学のある先生に、事前にこ

れをつくるときにお声がけをさせていただいて、ご意

見をいただいたんです。「ぜひ見たいな」と言われま

した。何が見たいかというと、「リフレクションを見

たいな」と。「このリフレクションこそが実は評価し

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第26回教育改革シンポジウム(講演) 高校生の主体的学びとその見える化を促進するJapan e-Portfolio

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たいところなんだよ」ということを先生はおっしゃっ

たんですけれども、まさにポートフォリオの中でそれ

が見える。成果だけでは、なかなかそれが見れないと

か、想像で終わっちゃうということですね。

次に、今日のテーマということになるかもしれませ

んが、大学側は、やはり建学の精神に基づいて各大学

のDPをつくって、そしてCPによりカリキュラムを組

み上げて、そしてどんな生徒がほしいのかというAP

を作っていくことだと思います。これらを評価するに

あたって、恐らく大阪市立大学さんもIRも実施され

ていると思います。データに基づいていろんなこと

を分析されていると思いますが、特にIRの中で、今、

志望度と入学後成績の相関に関する調査というのを今

年から私どもは行っています。入学することだけが目

的だったA君と、大学入学後にどういうことをしたい

のかという目的を持って入ったB君を比べてみたとき

に、明確に学ぶ目的を持っていた学生のほうがやっぱ

り成果が出ている、そういう結果が実は出てきます、

学業成績や就職などにおいてです。志望の動機につい

ては、データが不足していた部分もありますので、こ

としはもっとデータ化しようと言っています。

それから、私どもの大学ではこんな結果が出てい

ます(画面)。貴大学ではどんな形になっているのか。

入試席次が縦軸、横軸が入学後成績(GPA)ですけ

れども、これは実は相関がありません。入試席次 1 位

の生徒のGPAは2.8。(関学はGPAがかなり辛めです。)

50番の子のほうがちょっと上で、200番の子のほうが

実はさらに上だったということで、実は相関がないと

いうのが関学の場合です。これは貴学の場合はいかが

でしょうか。大体の大学さんに聞いてみると、実はう

ちも同じようなものだよということはおっしゃってい

ただいています。

ただ、相関するところも実はあります。入試席次で

一定のラインで合否判定を行いますが、今年はとり過

ぎちゃったなというそんな年がもしあったとしたら、

やっぱり席次の低い子は学業成績もだめだわという実

例がやはりあります。ですから、一定以上の学力、知

識・技能が無いと大学で学ぶことに障害となる。ただ、

一定の知識・技能さえあれば、やっぱり学びに向かう

力というか、「こういったことになりたい、やりたい」

と思っている子たちというのは成績がいいというデー

タがとれてくるわけです。そこで、やはり一定以上の

学力を有する者から、学ぶ意欲を有する生徒を選抜す

るということは意味があるんじゃないかという話に

なってきます。

今まで100人を確保するために、100席合格を出して

いる。普通はそういうことかもしれません。対象も上

から100だという考えで来ていたと思うんですけれど

も、ちょっと待てよと。上から150までを対象にしな

がら、その中で、「大学でこれをしたいんだ、この研

究室でこれをやりたいんだ」という子を採るというこ

とに意義があるんじゃないかということです。

関学もそうですし、多分貴大学もそうだと思うん

ですけれども、戦前とか戦後すぐというのは厳選した

選抜をやっています。ところが、子供の数が増え、大

学進学人口が伸びてくる中で、大学での面接をやめ

ちゃったという歴史があるわけです。なぜかというと、

時間がない。人の手間がかかる、コストがかかる。こ

こでやめちゃったんですけれども、実は、かつてに回

帰する方向なんじゃないのという話をしています。手

間はかかるけれども、これって、いい生徒を採るチャ

ンスなんじゃないか、そういうお話をいただく大学群

がやっぱり出てきました。例えば首都大学東京さん─

アドミッションオフィスの先生がそうおっしゃいまし

た。「俺たちはチャンスだと思ってるいるよ」と。ほ

かが手をつける前にやるんだということではないで

しょうか。

旧帝にもいろんな推薦入試が入っていて、いろん

な大学の副学長先生にお話を聞きました。東大の副学

長先生のお話を聞きました、「先生、どうですか、推

薦入試は」と。「これはいいよ」と言われるわけです。

何がいいんですかというと、「今までの東大に入って

くるキャラクターと全然違う子が入ってくるんだ」と。

「それから女の子も採れる」と。「東大の入学生はすご

く男子の割合が多いんですよ。そんな中で女子も入っ

てくるんだ」、みたいな話もされていました。京大の

先生は、「京大に入るということが目的の子が欲しい

わけじゃない、京大のこの研究室でこんな研究がした

いんだという明確な目的を持つ子が欲しいんだ」とい

うことを言われています。

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大阪市立大学『大学教育』 第16巻 第 2 号 2019年 4 月

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かつて「AOは失敗なんだ」という声があったのが、

「特別選抜は成功している」とおっしゃるわけです。

なら、なぜ前に進まないのかというと、やっぱり手間

と人と時間がかかる、コストがかかる、だからでき

ない。ただ、国大協としては、これを 3 割にしましょ

うということでお決めになられています。地方の大学

さんで、このJAPAN e-Portfolioに参画されている大

学のなかには、もう 5 割にすると言われている大学も

結構ございます。 3 割が上限ということではないの

で、 5 割まで持っていきますと。私ども私学は、国立

との併願がどうしても多いものですから、そんなこと

でやはり一般選抜の志願者が減少せざるを得ない。だ

から総合型選抜で国立さんと併願する生徒を確保する

ということで考えざるを得ない状況になるかもしれま

せん。

神戸大学さんは、「志入試」という特別入試を今年

からされるんですけれども、センター試験は課さない

んです。秋で神戸大学の合格が決まっちゃうんですね。

そうなると、関学の一般入試に影響がでます。神戸と

併願してくれていた神戸の優秀な生徒達がいなくなっ

ちゃうみたいな話になります。

また、入試形態は一般入試というのが軸になってい

ますが、「一般入試はあとどれぐらい続くと思ってい

るんだ」という声も上がっています。駿大予備校の方

と話をしていると、「一般入試が未来永劫続くわけが

ないでしょう」と。「子供がまず減っていく。今年も

120万人を切っておりますけれども、2040年には80万

人になって、どんどん減っていくんだ」と。「そんな

中で入試の改革が行われているわけだから、超難関で

一般入試は続くかもしれないけれども、それ以外のと

ころは10年から15年の寿命ですよ、一般入試は」とそ

うおっしゃいます。

たしかに、もう既に中堅以下では入試は成立して

いないですね。一般入試が成立しない、そういうこ

とが起こってくる。そうなってくると、今までやって

いた「ふるい落とし」、つまり 1 ヵ所に生徒を集めて、

一つの入試問題で短い期間でふるい落とす、そういう

入試を今までやらざるを得なかったけれども、大学も

ちょっと考えていく必要があって、「マッチング」の

入試にどう少しずつ、少しずつ転換していく。これは

一気にという話じゃないと僕は思います。少しずつだ

と思います。少しずつどう転換するかです。

でも、一般入試は残さないとだめだろうと思います。

一般入試は、おそらく社会の再チャレンジのシステム

になっていることは間違いなくて、主体性評価みたい

な話が出てくると、高校のときに例えばたばこを吸っ

て悪いことをしてしまった生徒、調査書を見たら停学

している、「こんなものはあかんわ」みたいなことに

なったら、一回悪いことをした生徒は立ち直られへん

わけです。例えば通信制の高校に行っている子もいま

す。通信制の高校に行っている子は、はっきり言って、

学校での課外活動はできないことになり、課外活動を

評価する大学については評価されません。一般入試は

社会の再チャレンジの制度になっていたと思うので、

そういったものをどう考えるかというのも課題だと思

います。

また、私どもの私立大学の場合は、経常費補助金

として総合改革支援事業というのがあります。ここ

で、高大接続改革がポイント化されていますから、改

革していないところは補助金が出ないというのが私立

大学の状況です。大学入学者選抜実施要項について

は、 2 月 1 日から例えば学力検査開始となっているん

ですけれども、大阪を含めまして関西の私学でこれを

守っている大学は限られます。 1 月に入試をやってい

る大学もあります。選抜実施要項は守られていない。

ペナルティはない。そんな中で、文部科学省としては、

私学に対して取組をしっかりやる大学については、補

助金で差をつけましょうということになっています。

そんなことから、当面の間、僕は、大学入試は 3 極化

するんじゃないかと思っています。先ほどの熱量で一

生懸命改革をする大学、もう一つは、補助金のことも

あるので、仕方なくやらんとあかんよねと言ってやら

れる大学さんで、手間のかかることは嫌やけど、やっ

ておかないとという大学。あともう一つは、ええわ、

うちはやらへんよという大学さん。多分この 3 つに分

かれると思います。

ただ、取り組みをした大学が成果を出していくとな

ると、多分様相が変わってきます。そこに至るには、

恐らく入試改革は、10年はかかるだろうなと思ってい

ます。10年ぐらいかけて、いろんな形が見えてくると

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第26回教育改革シンポジウム(講演) 高校生の主体的学びとその見える化を促進するJapan e-Portfolio

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いうことだと思います。

では、「大学が主体性を評価するのにどうするの?」

という話ですけれども、JAPAN e-Portfolioの情報を

使っていただいて、ディジタルデータを使って選抜す

るということが一般選抜で主体性を評価するための一

つの手法になると考えています。ディジタルデータで

すから、コンテスト等、例えば「科学オリンピック」

であれば、これをコーディングします。いろんなもの

をアカデミックな大会も含めてコーディングします。

そのコーディングされたディジタルデータが大学に

入ってきて、あらかじめそれに得点を定めておけば、

そこで受験者に得点が付与される仕組みです。そう

することができれば、志願者が多数の一般入試でも主

体性に関わる成果に対して評価が可能になると思いま

す。ただ、これは外形的な評価だという批判もありま

す。やっぱり高等学校の教育改革を踏まえて選抜する

ということをしなきゃいけないわけですね。アクティ

ブ・ラーニングや探究を評価しないといけない。

ただ高等学校からの意見としては、海外の高校と

違って多様な取組を日本の高校はしている。だから、

外形的であろうと評価の対象となることは一歩前進だ

というご意見もあるわけです。いずれにせよデータは

ディジタル化されますので、それを使って各大学は選

抜が可能になると考えています。

それからもう一つ、文科省からぜひ各大学に伝えて

ほしいといわれている点があります。それは何かとい

うと、APに関する評価です。APを各大学でつくられ

るんだけれども、どんなバックグラウンドを持った子

がこの大学の中で活躍しているのかということを、こ

うした高校時代のデータが入ってくることで、大学は

把握できるようになってくるということです。今まで

入学者の成績の追跡データはありますけれども、入学

前のデータはなかったと思います。それがここに入っ

てきますので、そうすると、APを見直していく、あ

るいは電子データを見直ししていくことが適宜できる

ようになってくる。場合によっては、10年ぐらいたっ

ていくと、「こんな子が入ってきたらめっちゃ活躍す

るなあ」、みたいなことがデータで出てくる。各大学

は、それに基づいて入試制度をしっかりとつくり直す

ということがこれでできるようになってくるという、

そういう期待を言われている大学さんもいらっしゃい

ます。

ちなみに、大学のほうはどういうふうなデータを

受け取るかです。JAPAN e-Portfolioで高校の生徒は、

公開先の大学をまず選びます。そこで、大阪市立大学

の箱を選ぶとします。要項に大阪市立大学はどういっ

たものを評価するかということが書かれているので、

JAPAN e-Portfolioに蓄積したデータを切り出してい

くわけです。要項で示された評価対象が、探究なら探

究、あるいはアカデミック活動、それぞれチェックボッ

クスでチェックして選んでいきます。フェイスブック

のように大学が生徒の情報を勝手に見に来るという、

そういうシステムではありません。大学側は、データ

は、一切平常は見られません。生徒がこうやってデー

タを切り出してくれることで初めてデータを見られま

す。ですから、生徒はポートフォリオとして入れたデー

タを最後につくり変えることができます。大学出願の

ときに、ちょっとつたないなあ、文章を入れ換えよう

といったこともできます。

そういうことをしながら、最後はここに志望理由書

もJAPAN e-Portfolio上でテキスト入力できます。「大

阪市立大学を志望する理由をここでテキストに入れな

さい」とか、あるいはウェブサイトでぶら下げている

志望理由書や周りの計画書を用いて、そこにワードで

つくったものを添付しなさいということもできるよう

になっています。そのような方法で、子供たちは出願

をしてくるわけです。

大学に出願してくるときは、コードのみがやってき

ます。JEP出願コードというのがあります。大学のセ

ンター試験と同じやり方です。出願コードが来て、そ

の出願コードを集めて今度はJAPAN e-Portfolioの大

学のメニューでそのデータをダウンロードしに行くと

いうことをするわけですね。もし間違って関学のコー

ドを大阪市立大学に子供が送っちゃったとしますね。

大阪市立大学はそれを見られません。なぜなら各大学

にはIPアドレスを登録いただくことになります。IPと

そのJEPコードがひもづいていますから、JEPコード

の付された大学と違った大学のIPからの請求はブロッ

クされます。かなりセキュリティーを厳重にしていま

す。

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大阪市立大学『大学教育』 第16巻 第 2 号 2019年 4 月

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また、ポートフォリオなんですけれども、一部に、

「ある民間事業者のシステムじゃないんですか?」と

いう誤解があるんですが、そうではないです。これは

文部科学省の委託事業のシステムです。ただID発番

のシステムはベネッセさんのシステムをお借りしてい

ます。委託事業の予算がないため、お力を借りながら

進めています。ただし、情報の内容はベネッセさんは

一切見る事はできないようになっています。

今、実は民間のポートフォリオというのがありま

して、Classi株式会社(ベネッセコーポレーションと

ソフトバンクの合弁の会社)が「クラッシー」という

ポートフォリオをつくられています。それから、リク

ルートさんの「スタディサプリ」というポートフォリ

オがあります。それから、ベネッセさんの「マナビジョ

ン」というポートフォリオ。そういったところとも実

はデータは連動します。子供たちがそっちに入れると、

自動的にJAPAN e-Portfolioにデータが移植されます。

子供は同じ内容を 2 回入れさせると「先生、何で 2 回

入れなあかんの」と嫌がります。最初に手続さえすれ

ば、一度入れると、何もしなくても、それがぽんとじゃ

JAPAN e-Portfolioにも入ってくるわけです。そういっ

たことで、子供の利便を図るために民間とも連携を

行っている訳です。

問題は、やっぱり大学側なのだと思います。高校の

利用は実はすごく増えていまして、高 1 から高 3 まで

で恐らく120万人規模になると思います。結構な伸び

方をすると思います。

では、今度大学側では何をどう評価するのかとい

うのがやっぱり課題でございます。こういった 8 つの

データ(探究活動、生徒会・委員会、学校行事、部活

動、学校以外の活動、留学・海外経験、表彰・顕彰、

資格・検定)を蓄積していただくわけですけれども、

その中のどれを使うのか。今回は特に「探究」につい

て重点を図っています。「振り返り」「気づき」を全て

の項目で入れていて、エビデンスとなる画像データも

入ります。10メガバイトを 5 ファイルまで、一つの学

びに関するデータが入ります。 1 つです。これを何個

も入れられるわけです。結構入ります。ある大学さん

は、動画がちょっと短いかもしれないが、圧縮させて

入れたいというようなことを言っている大学さんもあ

りましたし、urlも打ち込めるので、YouTubeの閉域

の部分を使って動画を入れたという大学さんもありま

した。動画で表情を含めて見たいということも言って

おられました。さまざまな活用法があるということで

す。資格・検定については600種類あって、英語検定

試験も 4 技能に対応しようと思っています。生徒の情

報は、 5 年間保持されます。その後は 5 年ごとにログ

インすれば、それはずうっと延長していくと、そうい

う形をとっています。項目(資料)を今日はハンドア

ウトさせていただいています。

この中で、こういったものは使えるのではないか

ということを見きわめていただく必要があると思いま

す。ご申請いただければ生徒用のIDはお渡しできま

すので、私どものほうのアドミッションセンターにお

申し出ください。秘密保持契約を結んでいただければ

中を見ていただけます。生徒がどんなことを入れるの

かなというのが見れます。その内容を少し後で紹介し

たいと思います。

高校でこれをお使いいただく場合は無料だというこ

とはいいのですけれども、一つ問題なのは、最初は指

示をしないと生徒はなかなかデータを蓄積しません。

高校全体で、「みんな今日の〇〇を入れるんだよ」と

いうことを最初のうちは、節目、節目で言っていただ

かないと生徒はデータを蓄積しません。ですから、高

校教育改革の一環として高校全体で取り組んで頂く必

要があります。校内で利用方針を決めながら進めてい

かないと、高校での利用というのは多分進まないと思

います。校長先生から利用方針を作成して校内研修を

やりながら、メソッドを打ち立てて、制度の研修もし

てやっていくということとか、入力促進を特にやると

いうことです。こういったことをきっちりやっていた

だき、高校でメソッドを打ち立てて頂ければJAPAN

e-Portfolioだけでも、主体性を育むポートフォリオと

しての活用ができるかもしれません。

民間のものは実は双方向で多機能です。例えば、今

日授業で使ったパワーポイントを入れておくから後で

見とけよとか、できるわけです。あるいは夏休みの

宿題を出しておきながら、みんなで総合評価しよう

や、みたいなことができるわけです。意見やコメン

トを書いてねと、そうすると「ああ、あの子はこう

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第26回教育改革シンポジウム(講演) 高校生の主体的学びとその見える化を促進するJapan e-Portfolio

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考えているのだ、そんな考え方があるのか」と子供は

気づきを持つわけですね。まさにアクティブ・ラーニ

ングの一つのツールとして使えるという部分は、実は

民間のものはお持ちであるということです。JAPAN

e-Portfolioだけであれば、そこは高校の中で仕組みを

つくっておかないとなかなか回っていかないという

部分もあるので、そこが少し民間のものとの違いで

す。特に大きな違いは、大学出願のツールはJAPAN

e-Portfolioだということです。民間のものは大学出願

のツールはないということであります。

入学者の選抜方法をいろいろと各大学でもお考えに

なっていただいているんですけれども、主体性として、

何をどう評価するかについては、先ほど取り上げたと

おり、2022年度入試では新たな指導要領下の学びを高

校生は終えていませんので、各大学が考える必要があ

ります。今の段階での高等学校での取り組みについて

高校の先生から言われました。「日本の高校というの

は、海外の高校と比べて違うんですよ、本当に課外活

動も先生方は一生懸命やられているし、課外活動を含

めて、いろんなことでお取り組みになっている、これ

をちょっとでも評価するというのは、一つの前進なん

です。だから、何か評価できるものがあれば、評価し

てあげてほしいんです」ということで言われています

ので、今の高校の取り組みの中で評価できるものを見

出していくというのがポイントなんです。

次の指導要領に移ったあとは高等学校の教育改革を

反映した学びに向かう力の評価が必要になります。そ

こが次のポイントです。指導要領で示された「学びに

向かう力」「人間性」、それから「主体的、対話的かつ

深い学び」というアクティブ・ラーニングで培った力

を評価するというふうに転換するということが重要で

す。くれぐれもここは何とかお願いしたい。

実は私どもの大学でも、その入試を実はパイロッ

トで始めています。一般入試では入れないだろうなと

思った高校の生徒に入学頂いたケースがありまして、

入学後に非常に頑張って成果を残しています。入試出

願時に提出された中身を見ると、論文、それから取り

組みの過程がとっても興味深いものだったのです。今

までになかったパターンですが、プロセスを中心に評

価をしました。このように、今までスポットライトが

当たらなかった子供たちにスポットライトが当たると

いうことが、一つポートフォリオのよさだと思います。

やっぱり評価手法は、面接、集団討議、プレゼテー

ションができれば一番いいんですが、そうはいかない

ということになると、今度は提出書類や調査書。でも

大学はエビデンス主義ですから、エビデンスのないも

のは「ほんとなのか?」ということになり、証明され

なければ、評価の対象になっていきません。ですが、

裏づけを添付されたJAPAN e-Portfolioのデータやプ

ロセスがあれば、これを見てみようというのは、一つ

の考え方だと思います。

出願資格で得点化というやり方も当然あるとは思う

んですが、こういった形で実はJAPAN e-Portfolioの

入力項目があるので、大会の成果みたいなものを出願

資格として、これ自体をデータとして受けとめて評価

する。これはディジタル調査書とあんまり変わらない

ということだと私は思ってます。むしろ、次の2025年

度入試の中では、新学習指導要領における 3 つの資質・

能力、特に「学びに向かう力、人間性」、これを見る

必要があることになりますから、ここがポイントに

なってくるだろうと思います。特にそこでポートフォ

リオらしく、成果とあわせてプロセスをじっくり見て

とることで、その大学が必要とする生徒を発掘してい

ただくということができるんだと思います。ただ、やっ

ぱり手間はかかります。そのためには、やっぱりある

程度の時間をかけてということでしょうし、私どもの

大学では、学長先生からもお話がありましたけれども、

アドミッション・オフィサーをたくさん養成していき

ながら、そこでずっとやっていかないと無理だねとい

う話にもなりました。そういったことできめ細やかな

入試をすることで、今まで日の当たらなかった子も見

れるようにしていこうということができるのです。

リフレクションについては、たとえば「水資源につ

いての考察」をしている生徒がいるとします。研究の

振り返りがとってもあって、先ほどの個人内評価にも

つながるんですけれども、水道事業の民営化の話を大

学の先生から聞いたときの気づきが記載されているわ

けです。「水の資源だけでみていたけれども、法の視点、

ビジネスの視点、経済の視点、環境の視点、いろいろ

な視点で水資源についてアプローチしなきゃいけない

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大阪市立大学『大学教育』 第16巻 第 2 号 2019年 4 月

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んだ」と気づきを持つ。最後は法学部に行きたいみた

いなことが書いてある。「ああ、なるほど、この生徒

は動機をもって志願している可能性があるな」と。「こ

れは本当かな?」というところが、やっぱり探究の学

びのデータの中からいろいろと見てとれる部分がある

んですね。

SGHやSSHの公募推薦入試で論文を提出させたり

しますが、共著で提出されてくるケースがあって、「ど

うするの、これ」みたいな話になってくるわけですね。

「『参考文献』でこんなにインプットをこの子はしてる

よ、間違いない、この論文を書いたのはこの子だね」と。

その論文を読む中でも、気づきも書いてもらえますか

ら、そのコメントがきっかけとなって、面接でさらに

選抜をしていく。

理系の生徒は、実験のところで失敗した経験のこ

とも書いてくれている。ある意味ラボノートみたい

なものですよね。理系の先生からはこれが非常に重要

だということです。でも、高等学校で今探究がやられ

ている高校さんからは、今は紙なんだと、JAPANe-

Portfolioで、 データで蓄積することで、最後コンバイ

ンしていろんなものをまとめていくには役立つんだと

いうことは言っていただいているわけですね。紙から、

データに移るということなんだと思いますが、そこで

このJAPAN e-Portfolioを使っていただこうと。

また、探究だけではなく大学のほうも、いろんなこ

とを見てとっていただきたいと思います。例えば修学

旅行、研修旅行の委員をやっていた生徒の記述、こん

なのは今まで評価しないですよね。でも、なるほど、

こういうところに学びの気づきがあったんだみたいな

ことが見えるようなものというのはポートフォリオで

蓄積されていくんだと思います。ぜひそういった活用

をしていただければと思います。

時間なのでここで最後にしたいと思いますが、まず

は、プラットフォームはできましたということであり

ます。あくまでも多面的、総合的に評価するというこ

とですから、一定の学力がないと大阪市立大学で学ぶ

力はないと、これは当然ですよね。やっぱりそこは学

力検査も重要だということであります。よくマスコミ

が志願者数の話をするので、ちょっと私は困ったもの

だなと思っています。志願者の減った大学は人気がな

いみたいな。いや、そうじゃないと。一人一人を見つ

める入試をやれば、当然ながら志願者数は減少するわ

けですが、そういった部分をどう見て頂けるか。オッ

クスフォードは、 4 万人志願者がいるうちの 1 万6,000

人まで絞った後は、 3 日間かけて泊まり込みで選抜を

します。極論はこうじゃないかという話しをしていま

す。極論ですよ。

今は実証事業をやっているわけですが、100大学が

今手を挙げていただいていて、入試実証は10大学。生

徒の利用は 8 月の段階で 5 万5,000名いたんですけれ

ども、今は、きのう見ましたら、 7 万名が利用してい

ます。民間とのつながりも入れると、120万人ぐらい

になるだろうというふうには思っております。大学も

100大学ということでございます。ぜひご確認いただ

くとよろしいんじゃないかと思います。実際に使うか

どうかは別にして、どんなものが入力できるのかなぐ

らいは見ていただければと思っています。

これからの話なんですが、文科省の概算要求で電子

調査書の話が出てまいりました。JAPAN e-Portfolio

をプラットフォームとして、各高等学校あるいは教育

委員会からJAPAN e-Portfolioを経由して調査書をお

渡しすると、そういうのが多分研究テーマになると思

います。管理機関については、次は大学入試センター

のような公益性のある法人が運営していくということ

になると思います。今年はまだ実証事業、委託事業の

期間でありますので、私どもがやっております。

民間の事業者にもいろいろお取組みを頂いています

が、これはビジネスです。教育者としての我々の立場

としては、やっぱりこれからの子供が生きる時代を考

えて、どういうふうな力をつけてもらうのか。これは

大学のほうも同じテーマでございますので、こういっ

た公共的な仕組みがないといけないんだと思います。

途中で 大学入試は三極化するという話をしましたね。

やっぱり子供たちのためにという視点の中で入試改革

をするということでないと、だめだと思います。文科

省がやれと言っているから、やるということだと、多

分いい形にはならないだろうと思いますので、その点

でも、高校と大学で「生徒のために」という点で意識

を共有しながらいろんなことが進められたらいいかな

と思っています。

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第26回教育改革シンポジウム(講演) 高校生の主体的学びとその見える化を促進するJapan e-Portfolio

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ちょっと時間を超えてしまいました。申しわけござ

いません。以上をもちまして終わりたいと思います。

ご清聴ありがとうございました。(拍手)

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大阪市立大学『大学教育』 第16巻 第 2 号 2019年 4 月

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文部科学省大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)~JAPAN e-Portfolioの活用について~

関西学院大学アドミッション・オフィサー文部科学省大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)担当学長特命 尾木義久

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学大学入学者選抜改革推進委託事業 5分野2

新しい学習指導要領下での個別選抜の改革(問題作成や評価手法の調査・研究)知識・技能に加えて、思考力・判断力・表現力を評価する問題作成。

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○ 大学入学者選抜に活用できる仕組みを目指し、各大学・高校の協力を得て2017年10月2日に開設した高校eポートフォリオ・大学出願ポータルサイト。○ 生徒が主体性等に関わる諸活動を1年次より「JAPAN e-Portfolio」に記録し大学出願時に活用する。〇 大学入学者選抜において、学力の3要素、とりわけ「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を適切に評価し、多面的・総合的評価の実現に貢献

することを目指す。○ 平成30年度に入学試験等での実証事業を実施。

高大接続ポータルサイト「JAPAN e-Portfolio」 (文部科学省大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)の成果②)

文部科学省資料を改訂し作成成果② ICTを活用し「主体性等」を評価する 「高大接続ポータルサイト JAPAN e-Portfolio」

高等学校教育改革

入力

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まr

ディジタル化

されたデータの入試活用

①「成果」に関するデータ

②プロセスに関するデータ

合否判定

○センター試験成績データ

〇提出書類調査書 等

連携

一般入試

個別入学者選抜改革 大学教育改革

○AP評価指標・基準等の検証○三つのポリシーの検証

入学者確定

三つのポリシーに基づく大学マネジメント

APの評価に入学前後のデータ活用(IR)

入学者選抜で使用した各種データ

大学入学後の学業成績、各種活動実績、就職先等のデータ

○全国国公私立大学Web出願サイトへのリンク

○生徒基本情報登録氏名、電話番号、住所、保証人氏名、高校名等

連携

○全国国公私立大学Web出願サイトへのリンク

○生徒基本情報登録氏名、電話番号、住所、保証人氏名、高校名等

))

「高校Eポートフォリオ」

Web出願ポータル

○生徒:「学びのデータ」の記録・振り返り自らの学習活動を振り返り次につなげる主体的な学び

「メタ認知」

対話入力内容の閲覧・承認

データ参照生徒の活動の把握

○教員:生徒の「学びのデータ」の参照・把握

〇平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直し予告への対応

〇平成34年度新学習指導要領への対応

振り返り「メタ認知」

インターネット出願システム

※インターネット出願を実施していなくても主体性等データを受領可能

AO・推薦

制度改革

5

高等学校教育改革 大学入学者選抜改革 大学教育改革

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文部科学省大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)~主体性を評価するために~

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事業名称:「主体性等」をより適切に評価する面接や書類審査等教科・科目によらない評価手法の調査研究取組大学:関西学院大学(代表校)、大阪大学、大阪教育大学、神戸大学、佐賀大学、早稲田大学、同志社大学、

立命館大学、関西大学対象分野:主体性等分野

学力の3要素の「主体性等」をより適切に評価するため、教育委員会、高等学校等と連携し、調査書・提出

書類や面接等を実践的に活用する方法、高校段階でのeポートフォリオとインターネットによる出願のシステムの構築、「主体性等」の評価尺度・基準の開発等を行う。

参加・成果の活用

主催・運営 主催・運営共同開発

参加

緊密連携

文部科学省

活用

成果を活用

共同開発

課題の調査

活用活用

事業概要

共同開発教育委員会・高等学校・予備校 事業者

SGH甲子園「臨床的」研究のための生徒の

成果発表の場

成果②ICT活用による入試モデルの構築

○高校eポートフォリオ、調査書のディジタル化モデル、大学ネット出願システム・判定システム

成果①「主体性等」の

評価尺度・基準の開発

成果の普及活動フォーラム・地域コンソーシアム・大学直接訪問

各大学

活用

アクティブラーニングや探究の先導的事例

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第26回教育改革シンポジウム(講演) 高校生の主体的学びとその見える化を促進するJapan e-Portfolio

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子供達はどのような時代を生きるのか~高大接続改革の背景主体性等を評価する意義~

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高大接続改革の背景にあるもの

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学

「先を見通すことが難しい時代にあっては、生涯を通じ不断に主体的に学び考える力、予想外の事態を自らの力で乗り越えることのできる力、グローバル化に対応し活力ある社会づくりに貢献することの出来る力などの育成が特に重要」

出典: 「大学入学者選抜の改善をはじめとする高等学校教育と大学教育の円滑な接続と連携の強化のための方策について」諮問理由平成24年8月 文部科学大臣 中央教育審議会諮問

より引用・抜粋

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ARTIFICIAL INTELLIGENCE 人工知能

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高大接続改革の背景にあるもの

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高大接続改革の背景にあるもの

2016年7月 リクルート進学総研所長 リクルート「カレッジマネジメント」編集長 小林 浩 氏

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大阪市立大学『大学教育』 第16巻 第 2 号 2019年 4 月

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学次期学習指導要領における「総合的な探究の時間」13

究」に

特進クラス・・・探究クラス

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学

~委託事業における主体性の定義~15

○主体的に学習に取り組む態度も含めた学びに向かう力や、自己の感情や行動を統制する能力、自らの思考のプロセス等を客観的に捉える力など、いわゆる「メタ認知」に関するもの。

○多様性を尊重する態度と互いのよさを生かして協働する力、持続可能な社会づくりに向けた態度、リーダーシップやチームワーク、感性、優しさや思いやりなど、人間性等に関するもの。

中教審 教育課程企画特別部会 論点整理より

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学文部科学省資料17

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学

高大接続改革とは?14

高等学校での学びを評価する入試への転換

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子供達は「どのように学ぶか?」~学習指導要領改訂の内容~「主体的・対話的かつ深い学び」

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学

学習評価の充実・3つの資質・能力をどう評価するのか○知識・技能⇒ ペーパーテスト、レポート

○思考力・判断力・表現力⇒ ペーパーテスト、レポート、インタビュー(面接・口頭試問・集団討議)

○学びに向かう力・人間性⇒ 行動観察?インタビュー?(客観的か?)

個人内評価・生徒自身の記述から「学びに向かう力・人間性」を評価【ポートフォリオ評価への期待】

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第26回教育改革シンポジウム(講演) 高校生の主体的学びとその見える化を促進するJapan e-Portfolio

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学

学習評価とポートフォリオ

三要素のバランスのとれた学習評価を行っていくためには、指導と評価の一体化を図る中で、論述やレポートの作成、発表、グループでの話合い、作品の制作等といった多様な活動に取り組ませるパフォーマンス評価を取り入れ、ペーパーテストの結果に留(とど)まらない、多面的な評価(※2)を行っていくことが必要である。さらには、総括的な評価のみならず、一人一人の学びの多様性に応じて、学習の過程における形成的な評価を行い、子供たちの資質・能力がどのように伸びているかを、例えば、日々の記録やポートフォリオなどを通じて、子供たち自身が把握できるようにしていくことも考えられる。

出典:文部科学省ウェブサイト中央教育審議会 初等中等教育分科会初等中等教育分科会(第100回)配付資料:資料1 教育課程企画特別部会 論点整理3.学習評価の在り方について「評価とアクティブ・ラーニング」

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1364317.htmより引用

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学習過程の改善○メタ認知『アクティブ・ラーニングにおいて、「主体的・対話的で深い学び」を通して資質・能力が 育成できているのかを評価するには、メタ認知によって学習者自身にその資質・能力が育成されているのかの自覚が重要となる。』

○深い学び『学習者が自らの学びを振り返って次の学びに向かうことができるようにするためには、このメタ認知による学習評価の在り方が極めて重要であり、学習者自身が評価された内容を自覚することが、資質・能力の育成には重要となる。』

出典:「アクティブラーニング」を考える 教育課程研究会編著「評価とアクティブ・ラーニング」

横浜国立大学名誉教授 高木展郎 より引用○ポートフォリオを活用した学習者自身の気づき、振り返りの重要性

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カリキュラムマネジメント① 各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校の教育目標を踏まえた教科横断的な視点で、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくこと。② 教育内容の質の向上に向けて、子供たちの姿や地域の現状等に関する調査や各種データ等に基づき、教育課程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連のPDCAサイクルを確立すること。③ 教育内容と、教育活動に必要な人的・物的資源等を、地域等の外部の資源も含めて活用しながら効果的に組み合わせること。

中央教育審議会教育課程特別部会「論点整理」2015年8月26日より

アクティブラーニングとカリキュラムマネジメントと学校経営の展開○カリキュラムマネジメント…組織の運営の改善を目指すもの○アクティブラーニング・・・授業の改善を目指すもの○教育課程を核に、教育活動や組織運営の不断の見直しを図っていくためには、子供たちの姿や地域の現状等を把握できる調査結果や各種データ等が必要となる。

学びの成果の可視化(ポートフォリオの活用)○データにもとづく分析と改善、PDCAサイクルによるマネジメント。

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学20

「人が生涯にわたってものを学んでいくということ」〇自分で興味・関心を持って主体的に学ぶこと〇他の人々との対話などを通して知恵や発想を豊かにすること〇知識や技能を組み合わせ、自分の見方や考え方を広げ、明らかにし、実地に使えるようにしていくこと〇そしてそこからより深い理解へ、新しい課題の発見や次の学びへとつなげていくこと

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学

活動の「動詞」から見る学習への深い学習と浅い学習の関係活動 深い学習 浅い学習・振り返る・離れた問題に適用する・仮説を立てる・原理と関連付ける・身近な問題に適用する・説明する・論じる・関連付ける・中心となる考えを理解する・記述する・言い換える・文章を理解する・認める・名前をあげる・記憶する*Biggs&Tang(2011),Figure2.1(p.29)の一部を翻訳・作成

出典:「アクティブラーニング」を考える 教育課程研究会編著「手段として組み込み、期待する学修成果を上げる」

京都大学高等教育研究開発推進センター 教授 溝上慎一 より引用

22 アクティブラーニングにおける振り返り

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平成33年度入試改革への対応~調査書の改訂~「生徒の活動の把握のために」

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大阪市立大学『大学教育』 第16巻 第 2 号 2019年 4 月

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学25

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学学びのデータベースとしての活用(指導要録・調査書作成)

とJAPAN e-Portfolioの承認機能27

指導要録作成のために、①生徒が学期毎、年度毎に教科・科目以外の学びの成果などを提出。②先生が内容を確認し、③要録作成のためのデータ入力作業をクラス生徒全員分実施。

④3年生の担任が要録に基づき調査書を作成する。大学が求める項目などを要項で確認したり生徒から聞き取る。【この際、生徒から十分聞き取れていないものが存在する可能性がある】

⑤生徒が大学出願書類を作成。②先生は情報の内容を確認し、証明(署名、捺印)等をする他、添削する。

⑥生徒が出願。但し、調査書の内容は見ることができないため、自分でアピールしたい項目が調査書に含まれているかどうかは確認はできない。

これまでの指導要録、調査書作成の流れ

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(参考)受験生のアピール項目と調査書~実証事業で見えてきたこと~

関西学院大学では2018年度入試において教育学部で主体性等としてリーダーシップを評価する入試を実施している。

志願者45件のうち18件(40%)に以下のいずれかの事例があった。〇生徒が志願時にアピールしたいとして申告した項目が調査書に記載されていない。〇生徒が志願時にアピールした役職名が、調査書に記載されている名称と異なる。

(原因)〇全ての高等学校で生徒の活動に関する調査を行っているわけではない。〇生徒の活動について把握が困難である。

⇒JAPAN e-Portfolioの承認機能によって齟齬が解消できる。

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学26

○生徒の活動を十分に把握することが必要となる。○大学で評価する内容を確認する必要がある。⇒ポートフォリオの活用

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学28

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学学びのデータベースとしての活用(指導要録・調査書作成)

とJAPAN e-Portfolioの承認機能30

JePに節目節目に入力した活動の記録のうちの事実部分について、①生徒が承認を依頼(生徒が承認対象の先生を選択)②先生が内容を確認し、承認もしくは差戻

③JePのデータをダウンロードし、指導要録を作成する。※コンテストや大会名称などは正式な名称で、全てコーディングがなされている。

④3年生の担任が要録に基づき調査書を作成する。大学が求める項目などを要項で確認したり生徒から聞き取る。生徒の活動についてほとんどを網羅ができている。大学志願情報はJePの情報を活用する。※出願書類は必要がない。

⑤生徒は大学が求める項目を切り出して大学に出願。※先生が承認した項目を含む。※志望理由などJePを使って提出できる。⑥先生は出願内容を閲覧することができる。

これからの指導要録、調査書作成の流れ(次期改修目標として検討中)

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第26回教育改革シンポジウム(講演) 高校生の主体的学びとその見える化を促進するJapan e-Portfolio

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新たな学びを促進するツールとして大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)高大接続ポータルサイトJAPAN e-Portfolioについて

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学ディジタル調査書とJapan e-Portfolioとの関係

ディジタル調査書 Japan e-Portfolio

〇高校教員の責任による記載

〇客観的事実

〇成果の記録

〇生徒の責任による記載

〇生徒の主観的な記述

〇プロセスの記録

時間をかけて実施する選抜

短期間に実施する選抜

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大学はどのような学生を求めるか?

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文部科学省資料を改訂し作成成果② ICTを活用し「主体性等」を評価する 「高大接続ポータルサイト JAPAN e-Portfolio」成果② ICTを活用し「主体性等」を評価する 「高大接続ポータルサイト

高等学校教育改革

学びのプロセス、成果、気づきの入力(スマートフォン・タブレット・PC)

〇資格・コンテスト・大会情報などをコード化大学・高校でコードを共有し調査書のディジタル化・ディジタル活用のために〇ログイン機能によりディジタル調査書の電子認証〇民間ポートフォリオ・SNSとも連携生徒の二重入力の手間を軽減〇検定・資格実施機関、大会運営機関と連携し、生徒の入力情報とのマッチング(教員の負担軽減)

〇大会・コンテスト情報のデータベース(平成33年度大学入学者選抜実施要項見直しへの対応)

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〇資格・コンテスト・大会情報などをコード化大学・高校でコードを共有し調査書のディジタル化・ディジタル活用のために〇ログイン機能によりディジタル調査書の電子認証〇民間ポートフォリオ・SNSとも連携生徒の二重入力の手間を軽減〇検定・資格実施機関、大会運営機関と連携し、生徒の入力情報とのマッチング(教員の負担軽減)

〇大会・コンテスト情報のデータベース(平成33年度大学入学者選抜実施要項見直しへの対応)

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を活用し「主体性等」を評価する 「高大接続ポータルサイト JAPAN e-Portfolio」を活用し「主体性等」を評価する 「高大接続ポータルサイト

○生徒:「学びのデータ」の記録・振り返り、 自らの学習活動を振り返り自己学習につなげる主体的な学び。

対話生徒の入力内容の閲覧・承認

データ参照⇒生徒の活動・理解の把握⇒授業改善

〇平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直し予告への対応

➡「指導要録」作成の基本情報「調査書」「推薦書」「提出書類」作成に活用➡「主体性等」を評価する入学試験での活用➡「入学前教育」での活用〇平成34年度新学習指導要領への対応➡教育の評価と指導方法の見直しへの活用の期待(カリキュラムマネジメント)「学びの成果の可視化」➡「主体的、対話的かつ深い学び」「探究」の促進への期待➡「キャリアパスポート」のディジタル化への期待〇その他➡教育委員会、文部科学省等への報告のための基礎データ➡調査書ディジタル化のプラットフォームとしての期待

(エビデンスとなる証明書類を添付)

「振り返り」・「メタ認知」 ⇒ 自己学習へ

○教員:「学びのデータ」の参照により、生徒の活動、生徒の理解度を把握し、生徒指導、授業改善・カリキュラム改善に

校務システム

①データDL(ダウンロード)

②ネット切断③データ無害化④データDL

中間サーバー

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学

1.高校教育改革1)平成34年度新学習指導要領対応①「学びに向かう力」を育む ~メタ認知~②「主体的・対話的かつ深い学び」と「探究」「言語活動」③カリキュラム・マネジメント ~学びの成果の可視化~

2)平成33年度大学入学者選抜実施要項見直し予告への対応①調査書・推薦書・提出書類の充実 ~生徒の活動の把握~②主体性等を評価する入試の増加 ~平成30年度入学生へ~③入学前教育のツールとしての活用

3)その他①教育委員会・文部科学省への報告書のデータベースとして②キャリア教育のためのツール

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建学の精神に基づくディプロマポリシー(DP)の目指す人材育成を、各大学の特色あるカリキュラム(CP)により育成し、社会に有為な人材を輩出する。

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学

~IR(Institutional Research)から~〇大学に入学することだけが目的だったA君〇大学入学後に、「国連ユースボランティア」に参加したいと思って入学したB君

➡明確に学ぶ目的・意欲を持って入学した学生が正課・正課外ともに活躍(学業成績、課外活動、就職)している。

➡必ずしも進学校ということではない。必ずしも入試席次上位者ということではない。

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東京大学「推薦入試」の導入など

京都大学「特色入試」の導入・拡大 東北大学「AO入試」の拡大

○教育再生実行会議第四次提言(H25.10)以降、各大学は積極的に入学者選抜改革に取り組んでいる。

平成28年度入試から、全学部において「推薦入試」を導入。(1高校:男女各1人)

平成29年度入試から、学部に応じ、学力型AO入試又は推薦入試等による選抜を行う「特色入試」(平成28年度入試から導入)について、募集人員を拡大(36人増)。

平成28年度入試から、4学部(経済・医・薬・工)でAO入試を拡大(41人増)。目標として、数年かけてAO入試の規模を現行の18%→30%に。

※平成30年度入試からは、全学部全学科で「特色入試」を導入予定

大阪大学「世界適塾入試」の導入・拡大

平成29年度入試から、AO入試、推薦入試、国際科学オリンピック入試による選抜を総称した「世界適塾入試」を導入・拡大予定。

お茶の水女子大学「新フンボルト入試」の導入

平成29年度入試から、現行のAO入試をより丁寧な選抜方法に見直すとともに、募集人員を拡大。

第1次選考:書類審査志望理由書、活動報告書等

【新フンボルト入試】

第2次選考(2日間)日本語・英語の模擬講義→レポート・小論文作成+グループ討論・面接

プレゼミナール(2日間)大学の学問世界を実体験・ミニレポート・提出書類等で総合的に一次選考

第2次選考(2日間)【従来のAO入試】

図書館入試 実験室入試

資料を自由に使ってじっくりレポート作成+グループ討論・面接

①実験・実験演示・データ分析

②自主研究課題ポスター発表

佐賀大学「佐賀大学版CBT」「特色加点」の開発

多面的・総合的に評価する新しい評価・判定方法を全学部で導入

・ペーパーテストでは技術的に測定が難しい「思考力・判断力・表現力」をデジタル技術を活用して評価する「佐賀大学版CBT」の開発・実施

・「主体性・多様性・協働性」の観点から志願者の活動・実績等をアドミッション・ポリシーに応じて評価する「特色加点」(※)制度の構築・実施

※志願者の申請を原則とし、申請がなければ当初配点のみで合否判定。志願者が取り組んできた様々な実績や活動等を申請対象とする。

国立大学における個別入学者選抜改革の進展 文部科学省資料より

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大学が主体性等を評価するために大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)高大接続ポータルサイトJAPAN e-Portfolioについて

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学

入学者追跡による入試席次と入学後の学力の相関(関西学院大学の事例:入学者のみ)入試席次

入学後成績(GPA)

4000.0 4.0

●(1,2.8)

●(50,3.1)●

(100,2.5 )●

(150,2.0)●

(200,3.2)

●(250 ,2.6)

●(300 ,3.0)

一定以上の学力を有する者から、「学びに向かう力」を有する者を選抜する。「入試改革=チャンス」

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学入試制度の比率の変化

総合型選抜への比重の増

一般選抜

一般選抜

総合型選抜推薦型選抜

総合型選抜推薦型選抜

主体性等の選抜における重み付け多い 少ない

40

少子化、入試改革により一般選抜の割合は徐々に低下。現在の入試形態が今後も続くというのは幻想。難関大学で10年から15年という分析も。「ふるいおとし」から「マッチング」へ

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○ 大学入学者選抜に活用できる仕組みを目指し、各大学・高校の協力を得て2017年10月2日に開設した高校eポートフォリオ・大学出願ポータルサイト。○ 生徒が主体性等に関わる諸活動を1年次より「JAPAN e-Portfolio」に記録し大学出願時に活用する。〇 大学入学者選抜において、学力の3要素、とりわけ「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を適切に評価し、多面的・総合的評価の実現に貢献

することを目指す。○ 平成30年度に入学試験等での実証事業を実施。

高大接続ポータルサイト「JAPAN e-Portfolio」 (文部科学省大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)の成果②)

文部科学省資料を改訂し作成成果② ICTを活用し「主体性等」を評価する 「高大接続ポータルサイト JAPAN e-Portfolio」

高等学校教育改革

入力

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まr

〇出願利用情報※ JAPAN e-Portfolioに格納したデータを大学出願用に生徒が編集

①主体性等を含む学びのデータ

・探究活動・課外活動・資格・検定(4技能対応)・表彰・懸賞・特別活動等のデータ・証明書類②大学毎の提出書類「志望理由書」「活動計画書」等※大学所定ドキュメントをデータ添付し提出

合否判定 CP (カリキュラム・ポリシー)に基く、体系的・組織的な教育の実施※高校時代の学びのデータを初年次教育等に活用DP(ディプロマ・ポリシー)にかなう育成

〇出願情報志望学部・学科志願日程・科目等〇生徒基本情報

○センター試験成績データ

〇提出書類調査書 等

連携

一般入試

各学部のAPに基づいた、「一般入試」の評価指標・基準等による判定作業

個別入学者選抜改革 大学教育改革

各学部のAPに基づいた、「△△入試」の評価指標・基準等による判定作業

○AP評価指標・基準等の検証○三つのポリシーの検証

入学者確定

三つのポリシーに基づく大学マネジメントの評価に入学前後のデータ活

用(IR)

入学者選抜で使用した各種データ

大学入学後の学業成績、各種活動実績、就職先等のデータ

インターネット出願Japan e-Portfolioとデータ連携

○全国国公私立大学Web出願サイトへのリンク

○生徒基本情報登録氏名、電話番号、住所、保証人氏名、高校名等

連携

Japan Japan e-Portfolioとデータ連携

○全国国公私立大学Web出願サイトへのリンク

○生徒基本情報登録氏名、電話番号、住所、保証人氏名、高校名等

))

「高校Eポートフォリオ」

Web出願ポータル

○生徒:「学びのデータ」の記録・振り返り自らの学習活動を振り返り次につなげる主体的な学び

「メタ認知」

対話入力内容の閲覧・承認

(承認は調査書記載の項目等に限定)データ参照生徒の活動の把握

○教員:生徒の「学びのデータ」の参照・把握

〇平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直し予告への対応

〇平成34年度新学習指導要領への対応

(エビデンスとなる証明書類を添付)

振り返り「メタ認知」

インターネット出願システム

※インターネット出願を実施していなくても主体性等データを受領可能

AO・推薦

評価の標準モデルの搭載

(今後検討)

42

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第26回教育改革シンポジウム(講演) 高校生の主体的学びとその見える化を促進するJapan e-Portfolio

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生徒)大学提出用データ作成

STEP1)大学提出用データ一覧

STEP2)提出先大学選択

STEP4)大学提出用データ選択

STEP5)大学指定情報登録

STEP6)大学提出用個人情報登録

STEP3)大学提出用データ作成

STEP7)大学提出同意(登録完了+JeP出願コード発番)

STEP8)JeP学びのデータ請求票出力(紙出願の場合)

大学提出用データ の作成STEP

12月19日実証事業参加大学向け説明会発信資料から抜粋

詳細検討後の機能STEP

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学

「JAPAN e-Portfolio」は文部科学省大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)において開発したシステムです。民間事業者のポートフォリオやSNSと連携を行いますが、特定の事業者のサービスを利用しなければ活用できないシステムではありません。ID発番システムは委託事業期間、事業者のシステムを再委託により借用しています、あくまでも文部科学省の委託事業として大学が主体的に運用します。

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学

JAPAN e-Portfolioの特徴〇出願時の3年次ではなく1年次から入力を開始する。〇入力項目は、「探究活動」「生徒会・委員会」「学校行事」「部活動」「学校以外の活動」「留学・海外経験」「表彰・顕彰」「資格・検定」を設けている。特に探究活動については、重点化を図る。〇全ての項目について、「振り返り」「気づき」に関する入力領域を設けている。〇それぞれの項目で、エビデンスとなる画像データ、プレゼンデータ、論文データなどを添付できるように配慮している。〇資格・検定については600種類を搭載している。※進学多様校でも活用可能。〇英語検定試験については、4技能に対応。〇生徒はスマートフォン、タブレット、PCから入力可能。〇閲覧する側(教員)は定められた校内のPCのみから閲覧可能。PDFで出力を予定。〇校務システムとのデータ連携を予定。要録の参考資料等での活用。〇データは最終ログインから5年間保持。〇実証事業を通じて、項目や機能の見直しを実施。

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学データ提供の内容の詳細(配布文書参照)49

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学

データ提供の内容の詳細(配布文書参照)51

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学データ提供の内容の詳細(配布文書参照)53

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学

データ提供の内容の詳細(配布文書参照)50

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学

データ提供の内容の詳細(配布文書参照)52

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学

データ提供の内容の詳細(配布文書参照)54

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学

データ提供の内容の詳細(配布文書参照)55

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データ提供の内容の詳細(配布文書参照)57

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JAPAN e-Portfolioの高校での運用方法大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)高大接続ポータルサイトJAPAN e-Portfolioについて

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学データ提供の内容の詳細(配布文書参照)56

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データ提供の内容の詳細(配布文書参照)58

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学生徒が使うID発番までのステップ

以下の2点を2017年9月末にお届けしております。<ご利用開始キット>・ご利用開始ガイド・ログインファイル(CD-ROM)

①学校ID・ログインコード※②先生個人ID※ともに揃っている

①学校ID・ログインコードが見当たらない、忘れた→ベネッセコーポレーション

WEBサポートデスクまで0120-350124月~金8:00~19:00 土8:00~17:00 祝日、年末・年始を除く)

②先生個人IDがない→発番手続きを進めてください手順はご利用開始ガイドP8

②先生個人IDを忘れた→ベネッセコーポレーションWEBサポートデスクまで0120-350124月~金8:00~19:00 土8:00~17:00 祝日、年末・年始を除く)

②先生個人

②先生個人

①学校

祝日、年末・年始を除く)

生徒ID発番へ→手順はご利用開始ガイド

P12・生徒ID発番のやり方が分からない→JAPAN e-Portfolioサポートデスクまで0120-505347月~金8:00~19:00 土8:00~17:00(祝日、年末・年始を除く)

なお、利用に伴うID発番につきましては、委託事業期間中は予算の都合上、システム委託業者((株)ベネッセコーポレーション)のID発番システムを借用して運用するため、教員用画面のみログイン時に同社サイト(「Benesse High School Online」)を経由することを予めご了承ください。「JAPAN e-Portfolio」は文部科学省大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)において開発したシステムです。民間事業者のポートフォリオやSNSと連携を行いますが、特定の事業者のサービスを利用しなければ活用できないシステムではありません。※学校ID・ログインコード:株式会社ベネッセコーポレーションより、2017年3月下旬にお葉書で進路ご担当先生にお届けされています。※先生個人ID:学校ID・ログインコードを使って発番していただける先生個人用のIDです。システム委託業者((株)ベネッセコーポレーション)が運営する同社サイト(「Benesse High School Online」)で発番いただけます。

ご利用開始キットがある

→JAPAN e-Portfolioサポートデスクまで0120-505347月~金8:00~19:00 土8:00~17:00(祝日、年末・年始を除く)

ご利用開始キットがない

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大阪市立大学『大学教育』 第16巻 第 2 号 2019年 4 月

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文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)代表大学 関西学院大学61 高等学校におけるJAPAN e-Portfolioの活用に向けて

1.高等学校全体での取り組みの必要性〇 高等学校長、教務担当、進路指導担当、ICT推進担当

2.情報リテラシー教育〇 ID・パスワードの管理の重要性を理解する。〇 入力する情報はどのように使われるのかを理解する。

3.入力促進〇 事あるごとに入力を促進する。ex.)(いつ) 授業の終わりに、イベント終了後、資格の結果発表後

(誰が) 担任、授業担当者、部活動担当者、科目ごとに4.活用法

〇 平素の生徒の入力内容へのコメント、フィードバック〇 授業改善、カリキュラム改善(各校のALメソッドの確立)〇 指導要録作成のための基礎情報

5.民間ポートフォリオ・SNSとの違い〇 民間とことなり双方向ではない。入力促進が必要となる。〇 入力は無料(一部民間ポートフォリオ、SNSも無料)

「高校教育改革の一環として、高等学校全体で取り組む必要がある。」

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主体性等を評価するための入学者選抜方法~平成33年度入試に向けて~

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受験生A 受験生B 受験生C

共通評価項目

本人登録内容

本人登録内容

本人登録内容

主体的に取り組んだ活動実績

なし

受賞歴 なし

資格検定試験

なし

高校の学びで得たもの

大学で活かしたいこと

高大接続ポータルサイト内ポートフォリオデータ(調査書データ)※調査書データは大学側で展開

受験生A

受験生C

主体的~活動実績 0 0

受賞歴 3 5

資格検定試験など 3 0

合計 6 5

配点登録

配点

主体的~活動実績 0

受賞歴 5

資格検定試験など 5

合計 10

データ連携

個別大学合否判定システム(ex.佐賀大学での研究の取り組み)

学力検査

調査書の得点(主体性等)

合否判定

②データインポート・配点適用

①配点登録(学部別)

※本人登録内容も全てダウンロード可

【志願者の多い一般選抜入試等での活用例】

英語ディベート大会

全国大会出場

データ連携

英語検定Gその他検定

800

2級

英語検定G

550

国際科学オリンピッ

金賞

野球部

3年間 研究 3年

キャプテンを務める 特集取材を受ける

各大学APに従って設定

調査書の得点重み付けを各大学が行う。例)学力500点

+調査書等50点など何をどのように評価するかは、各大学のアドミッ

ションポリシーによる。

65

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民間ポートフォリオと「高大接続ポータルサイト JAPAN e-Portfolio」との連携

〇資格・コンテスト・大会情報などをコード化大学・高校でコードを共有し調査書のディジタル化・ディジタル活用のために〇ログイン機能によりディジタル調査書の電子認証〇民間ポートフォリオ・SNSとも連携生徒の二重入力の手間を軽減〇検定・資格実施機関、大会運営機関と連携し、生徒の入力情報とのマッチング(教員の負担軽減)

〇大会・コンテスト情報のデータベース(平成33年度大学入学者選抜実施要項見直しへの対応)

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〇資格・コンテスト・大会情報などをコード化大学・高校でコードを共有し調査書のディジタル化・ディジタル活用のために〇ログイン機能によりディジタル調査書の電子認証〇民間ポートフォリオ・SNSとも連携生徒の二重入力の手間を軽減〇検定・資格実施機関、大会運営機関と連携し、

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JAPAN e Portfolio」との連携

生徒の入力情報とのマッチング(教員の負担軽減)

〇大会・コンテスト情報のデータベース(平成33年度大学入学者選抜実施要項見直しへの対応)

民間ポートフォリオとの連携を行う。この場合、ポートフォリオ機能は民間ポートフォリオ。大学出願機能(ショーケース・データベース)がJAPAN e-Portfolioが担うことになる。

生徒からの承認依頼

民間ポートフォリオ(多機能・双方向) 62

学びのプロセス、成果、気づきの入力(スマートフォン・タブレット・PC)Jepと同じ入力項目が存在

データ参照⇒生徒の活動・理解の把握⇒授業改善

承認(場合によっては差し戻し)

①Jepへのデータ移行 ②先生への承認依頼、③出願情報登録

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一般選抜での活用方法1.出願資格として利用する2.得点化する3.合否判定の参考とする4.プレエントリ5.補欠合格、追加合格

64

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共通基準(能力)を有した志願者のみによる合否判定入学後のカリキュラムポリシー、ディプロマポリシーとの適性を重視した合否判定共通テスト、個別選抜と組み合わせ、多面的総合的評価を行う。

アドミッションポリシーの提示と共に出願基準となる要件を要項に記載

募集要項

・資格、検定・留学経験・コンクール出場・論文執筆実績・評定平均・出欠状況 等

JAPANe-Portfolio

CSV

合格判定

出願基準の条件を指定し、自大学への出願者の中から条件を満たす対象者を抽出

出願の確認と、各種合格ラインの設定、合否判定を実施

入試モデル① 主体性等に関する情報を出願基準として設定66

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700 150 100 200

マーク 記述 外部検定②個別試験

①共通テスト

記述ランク

スコア(国語)

スコア(数学)

A 100 100B 50 50C 30 30

CEFERランク スコア

C2 200C1 150B2 100B1 75A2 50A1 20

50

③主体性評価(epf)

JAPAN e-Portfolio主体性活動記録 スコア

大会・コンクール等表彰

国際 50全国 40

ブロック 30都道府県 10

○○の資格取得 1級 202級 10

部活動における職務歴 部長 10副部長 5

+ + = 1,200

各大学でスコア化

(スコア化の例) (スコア化の例) (スコア化の例)

合計スコア

受験者ALLのスコアを一覧化し合格ライン設定、合否判定を実施

総合点による合否判定(国公立大学を想定した選抜)共通テスト、個別試験のスコアと主体性等に関する情報をスコア化し、総合点による多面的総合的評価による合否判定を実施。入学者の知識・技能、思考力・判断力・表現力のレベルを学力検査により担保し、主体性等を評価する。アドミッションポリシーの提示と共に出願基準となる要件を要項に記載する必要がある。

各大学でスコア化 各大学でスコア化

入試モデル②-1 主体性等に関する情報を得点化し判定(スコア判定)67

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200 150 100

英語 国語 日本史

①個別試験(科目は一例)

記述ランク

スコア(国語)

スコア(数学)

A 100 100B 50 50C 30 30

CEFERランク スコア

C2 200C1 150B2 100B1 75A2 50A1 20

50

②主体性評価(epf)

JAPAN e-Portfolio主体性活動記録 スコア

大会・コンクール等表彰

国際 50全国 40

ブロック 30都道府県 10

○○の資格取得 1級 202級 10

部活動における職務歴 部長 10副部長 5

+ = 500

各大学でスコア化

(スコア化の例) (スコア化の例) (スコア化の例)

合計スコア

受験者ALLのスコアを一覧化し合格ライン設定、合否判定を実施

総合点による合否判定(私立大学の一般入試を想定した選抜)個別試験のスコア、主体性等に関する情報をスコア化し、多面的総合的評価を実施。入学者の学力レベルを担保しながら、主体性等を評価する。アドミッションポリシーの提示と共に出願基準となる要件を要項に記載する必要がある。

各大学でスコア化 各大学でスコア化

入試モデル②-3 主体性等に関する情報を得点化し判定(スコア判定)

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実施例)11月上旬に一般選抜入試で出願を予定している受験生に、プレエントリーとしてJAPAN e-Portfolioの情報を提出させる。その後1月に出願、2月に学力検査を実施する。それまでの期間に生徒から提出されたデー多をもとに主体性等に関する情報を評価し、学力検査と合わせて多面的総合的評価を行う。アドミッションポリシーの提示と共に出願基準となる要件を要項に記載する必要がある。

000001

山田太郎○×高校

探究活動の記録

海外・留学の記録

部活動の記録

生徒会・委員会の記録

校外の活動の記録

資格・検定の記録

10

①プレエントリー(11月)JAPAN e-Portfolioの情報を11月に提出。主体性等に関する評価を時間をかけて行う。

入試モデル④ プレエントリー

スコア 主体性に関する記録

71

300

個別試験

100

主体性評価(epf)

= 400

合計スコア

③学力検査(2月)2月に実施する学力検査(共通テスト、個別選抜等)に主体性等に関する評価を加えて判定を行う。

④合格判定(2月)②出願(1月)

正式出願

+

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700 150 100

マーク 記述 外部検定

①共通テスト

記述ランク

スコア(国語)

スコア(数学)

A 100 100B 50 50C 30 30

CEFERランク スコア

C2 200C1 150B2 100B1 75A2 50A1 20

50

②主体性評価(epf)

JAPAN e-Portfolio主体性活動記録 スコア

大会・コンクール等表彰

国際 50全国 40

ブロック 30都道府県 10

○○の資格取得 1級 202級 10

部活動における職務歴 部長 10副部長 5

+ = 1,000

各大学でスコア化

(スコア化の例) (スコア化の例) (スコア化の例)

合計スコア

受験者ALLのスコアを一覧化し合格ライン設定、合否判定を実施

総合点による合否判定(私立大学の共通テスト利用入試を想定)共通テストのスコア、主体性等に関する情報をスコア化し、総合点による多面的総合的評価を実施。現在、私立大学を中心に実施されるセンター利用入学試験に対応する入学試験方式。入学者の学力レベルを共通テストで担保し、主体性等を評価する。アドミッションポリシーの提示と共に出願基準となる要件を要項に記載する必要がある。

各大学でスコア化 各大学でスコア化

入試モデル②-2 主体性等に関する情報を得点化し判定(スコア判定)

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志望理由書

調査書を選抜の参考資料として活用する。特に知識・技能、思考力・判断力・表現力に関し、当該大学で学ぶにふさわしい能力を備えた一定水準以上の生徒を対象に、主体性等に関する情報を評価して、多面的総合的評価を行う。アドミッションポリシーの提示と共に出願基準となる要件を要項に記載する必要がある。

000001

山田太郎○×高校

探究活動の記録

海外・留学の記録

部活動の記録

生徒会・委員会の記録

校外の活動の記録

資格・検定の記録

10

調査書

+

合否ボーダーライン

ボーダーライン上後で指定した範囲の志願者を抽出

成績分布図から合否ボーダーラインと対象者を特定 JAPAN e-Portfolioから抽出した活動記録、調査書、志望理由書から人物評価を行う

入試モデル③ 学力検査において調査書を参考資料として活用する

スコア 主体性に関する記録

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JAPAN e-Portfolioで何をどう評価するか。

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0.主体性を評価する入試(2段階)1.平成33年度(2021年度)入試~

学力の3要素の一つ「主体性をもって多様な人々と協働して学ぶ態度」を評価。※教科・科目以外の生徒の取り組みや成果を中心に評価。

2.平成37年度(2025年度)入試~新学習指導要領における育まれる3つの資質・能力の一つ「学びに向かう力、人間性」を評価。※特に「主体的、対話的かつ深い学び」や「探究」の取り組みや成果を評価する必要がある。

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Ⅱ.評価手法の選抜での活用

1.面接、集団討議、プレゼンテーション時間をかけて実施することのできる入試で活用。➡ 総合型選抜、推薦型選抜で活用志願者の多い一般選抜では活用できない。

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Ⅲ.ディジタル調査書・ JAPAN e-Portfolioの活用ディジタル調査書とJAPAN e-Portfolioの一般選抜での活用「成果」や「事実」について客観的な証明が完了しており(エビデンスチェックが不要であり)、生徒の一定の能力を評価することが可能なデータが活用可能。

➡資格・検定、大会・コンテスト、公的な機関等による留学、行事等で、その内容から個人の能力の評価が可能なもの。※「その他評価できる項目」が今後の成果①の取り組み。

➡生徒会役員、部活動役職、大会・コンテストの団体での成果、ボランティア活動、留学などは、記載内容だけでは十分な個人の能力の評価ができない部分もある。※評価の対象とすべき項目の内容について、「評価の重み付け」を適切に行う必要がある。

ただ、本当にこれでいいのか?外形的なものの評価だけでいいのか?⇒これまで評価されなかった、日本の高校での取り組みの評価が行われることは一歩前進(高校からの声)。

平成37年度入試(新課程入試)では大学は高等学校の新たな学びを評価するべきではないか?⇒そうでなければ、高大接続改革の意義が問われるのではないか?

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Ⅰ.主体性等の評価手法1.面接、集団討議、プレゼンテーション等の活用

2.書類(調査書、推薦書、提出書類)JAPAN e-Portfolioのデータ活用

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2.調査書、JAPAN e-Portfolio①記載内容の評価や検証が必要なものは、面接等との組み合わせによる評価が必要。➡総合型選抜、推薦型選抜で活用。志願者の多い一般選抜では活用できない。

②記載内容の「成果」や「事実」について客観的な証明ができるもので、ディジタル化・コーディングかされたもの。エビデンスチェックが不要なもの(教員の承認、検定機関の承認がなされているもの)。➡一般選抜で活用可能。総合型選抜、推薦型選抜でも当然ながら活用が可能。

〇事実の客観的な証明、エビデンスが大学入学者選抜では必須。〇ディジタル化・コーディングがあらかじめ定めた評価基準による短期間の機械処理に必須。

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JAPAN e-Portfolioならではの選抜方法成果+プロセス評価型の入試~ポートフォリオで、成果の評価とプロセスの評価へ~➡JAPAN e-Portfolioの記載から生徒のプロセスを評価する。①研究目的・内容、テーマを選んだ理由、研究のふりかえり・今後に活かしていきたいこと②参考文献(書籍、論文等)、実験、研究室訪問、フィールドスタディ、調査、論文、発表の記録、コンクール・コンテスト・大会等

※全ての項目で「気づき」に関する記述領域。調査書や推薦書、提出書類では把握できない。※他の評価方法と組み合わせて多元的・多面的に評価することにより、さらに評価の精度が向上することが期待できる。※書類だけの審査で成果のプロセスを確認するには、ポートフォリオの活用が最適。※外形的な成果だけが評価されるわけではない。いままで評価されなかった生徒にスポットライトが当たる。⇒大学はより多様な視点での選抜が可能となる。

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第26回教育改革シンポジウム(講演) 高校生の主体的学びとその見える化を促進するJapan e-Portfolio

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生徒の振り返りに関する記述から学びに向かう力を評価する。

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プロセス評価により成果の事実が見える①論文は非常に良くできているが、指導を受けたものではないだろうか。本人はどこまで理解しているか見えない。そもそも、どのように課題設定したのか。➡文献・論文について、課題に関する研究のためにふさわしいものを選んで読んでいる。課題研究にどのように活かすかについても書かれており、課題設定に向けての努力が見られる。課題について、仮説を立てて実証するための調査やフィールドワークを行っている。現地での振り返りから、苦労が見て取れる。

②課題研究の論文が共著。志願者はどのような役割を果たしたのかが見えない。他者とどのように協働したのか。➡論文作成のプロセスが良くわかる。どのような文献・論文を参考にしたのかが判るとともに、大学の研究室の訪問歴から、その大学の教員から受けたアドバイスについての気づきが記載されている。論文作成の振り返りでも、他のメンバーとの議論の内容が見える。

③実験結果や成果は論文から判ったがプロセスが見えない。➡実験についての仮説が良くわかる。実験は実際、失敗したようだが、その失敗によって気づきがあり、教員や他のメンバーとのディスカッションや、文献、論文の洗い出しを行い、新たな実験に向けた方向付けが行われていることが見える。

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研究室訪問○訪問をふまえた今後の振り返りから、主体的に学習に取り組む態度も含めた学びに向かう力や、自己の感情や行動を統制する能力、自らの思考のプロセス等を客観的に捉える力など、いわゆる「メタ認知」に関するものが見て取れる。○この内容から最終的な成果物が評価できる。

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探究成果とプロセスを評価するために○論文、発表の記録、コンクール、コンテスト、大会の結果が探究の成果としての評価の対象となる。○成果を適切に評価するために、プロセスを評価する。※総合型選抜、推薦型選抜であればインタビューで評価することになる。一例)①参考文献(書籍・論文等)でどのようなインプットをしたか、どのくらいのインプットをしたか。②実験の記録やデータから様々な点が読み取れる。③研究室訪問や専門家の意見聴取によりリフレクションや、マインドセットされた姿が見て取れる*④フィールドスタディや調査の中味から探究のレベルを測ることができる**島嶼部や農村などが不利ではない。都市部ではできない取り組みが可能。それぞれの地域に根差した社会に開かれた教育課程。多様性が評価される。

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~大学の期待~➡ 「失敗」があっても差し支えない。むしろ「失敗」からどのような学びの方向付けをしたのかをみたい。

➡高等学校入学後から3年次までの成長が看てとりたい。

➡高大連携による出逢いから、どのような「気づき」をもったのか?リフレクションから「学びに向かう力」を評価したい。

※ポートフォリオは生徒の責任による記載。大学入試で活用されることもふまえつつ、学習指導要領と各校のカリキュラムの目的に沿った、日々の学びの指導に活用。(大学に合格するための指導ではない)。

成果に加え、プロセスを評価することにより、高等学校の教育改革を踏まえた大学入学者選抜が可能となる。

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課題は・・・。プロセス部分の評価に時間がかかること。プレエントリーでの評価。一般選抜から総合型選抜への移行。

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コンクール・コンテスト・大会○第三者による一定の評価がなされているコンクール・コンテスト・大会については、あらかじめ一定の評価をすることが可能なカテゴリー。

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部活動大会・試合の成果については、そのレベルに応じた評価が可能。○各大学が現行実施しているAO入試や特別入試において書類に代えてポートフォリオの情報を活用することが考えられる。※入試におけるICT活用

○予め評価の得点を定めておけば、機械的に短期間に評価を行うことも可能となる。

○この他の活動の記述などから成果だけの評価ではなく「人間性」に関する部分を見て取ることもできる。

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修学旅行・研修旅行の企画委員○学校行事の役員も評価の対象にできる。○振り返りをじっくりと読み込むことで、主体的に学習に取り組む態度も含めた学びに向かう力や、自己の感情や行動を統制する能力、自らの思考のプロセス等を客観的に捉える力など、いわゆる「メタ認知」に関するものが見て取れる。○多様性を尊重する態度と互いのよさを生かして協働する力、持続可能な社会づくりに向けた態度、リーダーシップやチームワーク、感性、優しさや思いやりなど、人間性等に関するものが見て取れる。

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2.大学入学者選抜改革1)生徒の学びの成果を評価する①出願資格②得点化③参考(ポイント)主にJAPAN e-Portfolioに記載された成果や客観的事実を評価する。

2)生徒の学びのプロセスを評価する成果ではなくプロセスから「学びに向かう力」を評価。

(ポイント) ポートフォリオに記載された生徒の気づき・リフレクションを評価する入試へ。

※「主体性等」だけではなく、「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」を 総合的、多元的 に評価する。「主体性等」だけを伸ばせば良いわけではない。

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部活動(段位の取得)○一級の段位取得は、部活動の成果と言えば成果であるが、成果そのものが平凡なものでもある。○むしろ成果だけではなく、どのような取り組みをしたか、コツコツ取り組んだかどうかなどを見て取るということも可能。○新たな学習指導要領における資質能力の「人間性」と定義された部分を見て取ることも可能。

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学校外でのボランティア活動○活動を選んだ理由や活動内容から、多様性を尊重する態度と互いのよさを生かして協働する力、持続可能な社会づくりに向けた態度、リーダーシップやチームワーク、感性、優しさや思いやりなど、人間性等に関するものが見て取れる。○大学での志望動機も見て取れる。

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3.大学教育改革1)3つのポリシーによる大学マネジメント

~APの評価と入試の見直し~2)高大接続教育 ~初年次教育・導入教育の充実~

大学e-Portfolioとの連携も

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第26回教育改革シンポジウム(講演) 高校生の主体的学びとその見える化を促進するJapan e-Portfolio

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一般選抜入学試験において「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を評価するためのプラットフォーム構築。

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「ひとりひとりの生徒を見つめる入試への転換」

「公平性・客観性」から多元的な評価に対する「妥当性・信頼性」

の入試へ

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Japan e-Portfolioを活用した平成31年度入試実証事業次年度の高3生対象

参考資料

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あくまでも学力3要素を多面的・総合的に評価することが前提

〇JAPAN e-Portfolioだけではない。〇学力検査だけではない。➡様々な評価方法を組み合わせて多元的に評価する。

➡評価の対象となる内容により重み付け。

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【まとめ】高大接続ポータルサイト

JAPAN e-Portfolioに期待される役割

1.高校教育改革2.大学入学者選抜改革3.大学教育改革

【まとめ】

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〇実証事業を平成30年度に実施〇生徒・高校・大学の利用は無料〇大学の利用形態(次年度高3生が対象)①入試活用②入試制度構築のための主体性の情報収集③初年次教育や大学ポートフォリオ接続のための情報収集④システム連携のためのテスト

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大阪市立大学『大学教育』 第16巻 第 2 号 2019年 4 月

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高等学校利用数(2018年5月上旬)

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2,225校54,686名

平成33年度入試に向け、平成30年度入学生から本格利用する高等学校が増加。民間SNS・ポートフォリオとの連携で7月より利用者増加。利用予定者数は高1~高3で

120万人

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Japan e-Portfolioのこれから

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これからの時代を生きる若者のために我々は何ができるのか

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