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肝硬変の急性重篤患者の管理:集学的治療の視点 Management of the critically ill patient with cirrhosis: A multidisciplinary perspective. J Hepatol. 64, 717–735, 2016
臓器系
肝臓,T.Bil (mg/dL)
腎臓,Cr (mg/dL)
意識,West-Haven のグレード
凝固能,PT INR
循環動態,平均血圧 (mmHg)
呼吸状態
昇圧剤
または
透析
CLIF コンソーシアムの臓器不全スコア
West-Haven の肝性脳症グレード
意識レベル 見当識と行動 神経学的所見 脳波の異常
正常 正常 正常 なし
もし検査で異常があれば
それは最小肝性脳症
覚醒度が僅かに低下 集中力の低下 運動失行,軽い振戦 三相波と徐波化(5-6cysles/秒)
人格の変化 軽い混乱
無気力 見当識の異常 明らかな振戦 三相波と徐波化(5cysles/秒)
不適切な行動 発語障害(発語が遅い)
傾眠傾向 見当識異常が顕著 筋硬直やクローヌス 三相波と徐波化(5cysles/秒)
攻撃性 反射亢進,バビンスキー反射
昏睡(覚醒なし) 昏睡 除脳姿勢,硬直 δ波と著しい徐波化(2-3cysles/秒)
CLIF コンソーシアムとは,肝硬変などの慢性肝不全が,感染症や消化管出血,腎不全,脳症などの合併症によって,急性に症
状が悪化する,acute on chronic 型の肝不全を研究する研究者の集まりである.
2
急性腎傷害 AKI の定義とステージング定義
血清クレアチニン基準 尿量基準
肝硬変患者の
急性腎傷害
48 時間以内に Cr 増加≧0.3 mg/dL
or
7 日以内に Cr 増加≧元値の 50%.
Cr の元値は 3 ヶ月以内のもの.
Cr 値が変動する患者では,入院に近い
日の値を採用する.
Cr の元値が不明な患者では,入院日の
Cr を元値にする.
48 時間以内の Cr 増加
≧0.3 mg/dL
or
≧元値の 1.5-2 倍
Cr 増加が元値
の 2-3 倍
Cr 増加>元値の 3 倍,
かつ急上昇≧0.5 mg/dL.
or
透析導入 肝硬変患者の
急性腎傷害
3
非代償性肝硬変で入院している患者の急性腎傷害の診断アルゴリズム
急性腎傷害の疑い
Cr 上昇尿量減少
Cr 上昇? 元の値
から上昇?
元の値が不明 なし あり あり
Cr≧元値
の 50%?
Cr 検査を
繰り返す
Cr 上昇 Cr 不変 Cr 低下
脱水の有無
補液 脱水があり
補正 尿量と Cr
を監視
急性腎傷害
の基準?
急性腎傷害
モニター
収束しつつあ
る急性腎傷害
の可能性
さらに検討が必要
48 時間以内の
Cr 上昇
≧0.3 mg/dL
慢性腎臓病Cr が頂値の
66%以下に
低下?
なし
なし
あり
あり
なし あり
なし
4
肝腎症候群 1 型が疑われる時のアルゴリズム
肝腎症候群 1 型の疑い
血管収縮性作動薬の開始(+アルブミン)
テリルプレシン(第一選択)
発売されていない国では
ノルエピネフリン
肝腎症候群
の再発 反応なし
テリルプレシンの量は Cr 値で調整(25%以上の Cr 低下が目標)
ノルエピネフリンの量は平均動脈圧で調整(10-15mmHg 上昇が目標)
最長で 7 日間反応を見る
反応あり
肝腎症候群
が収束
(Cr が元値
近く改善)
血管収縮性作動
薬を終了
合併症の出現
・虚血性障害
・高度な高 K 血症
・アシドーシス
・容量負荷
・血管収縮性作動薬を中止
・透析(肝臓移植を考慮)
5
ショックで危篤の肝硬変患者の心臓循環不全の評価と治療
低血圧?
(平均血圧<60 mmHg)
・侵襲的な心係数(CI)や容量のモニター
を検討する
・心エコー
循環血液容量の反応を動的に評価する
(拍出量の変動,下肢挙上)
同時に容量負荷
・CVP 測定
・容量負荷に対する反応を評価
(腹腔内圧の影響も考慮する)
昇圧剤の使用
浮腫や腹水がない?
・血清 Cl 高値:バランス輸液製剤,た
とえば PlasmaLyte を検討
・血清 Cl 低値:0.9%生食
肝腎症候群か特発性細菌性腹膜炎
・20-25%アルブミン製剤
容量を補正しても低血圧が
持続するか?
重篤な患者すべてに
・中心静脈ルート
・動脈圧の測定
6
肝硬変患者の体液量の評価法とその限界
検査方法 限界
臨床的方法
体重変化 腹水と浮腫で変動
動脈血圧 肝硬変では平均的に低い
脈拍 β 遮断薬を服用中は低下する
理学所見 元から浮腫がある
尿量 肝腎症候群では腎血管が収縮して,少ない
胸部 X 線 腹水や胸水の影響を受ける
病歴(最近の利尿剤の使用
や下痢など)
検査所見
乳酸値 乳酸のクリアランスが低下
中心静脈/混合静脈血の 肝硬変では検証されていない
酸素分圧
尿生化学検査 レニン-アンギオテンシン-アルドステロン
系の亢進した患者は Na 排泄が低下
静的な血行動態の指標
中心静脈圧 侵襲的,容量への反応性との関連が低い
肺動脈圧の測定 侵襲的
心エコーの指標 1 回測定,連続モニタ-に使えない
動的な血行動態の指標
受動的な下肢挙上 腹腔内圧が高い状況では不正確
心拍出量/脈圧 肝硬変では検証されていない
肺動脈圧楔入圧の測定 侵襲的
下大静脈径 腹水があると不正確
肝硬変では検証されていない
7
重症の敗血症の対処アルゴリズム
重症敗血症
エンピリック治療
治療選択で大事な点
1) 院内における細菌の耐性率
2) 感染の発生部署;市中,ヘルスケア関連,院内
3) 多剤耐性のリスク
4) 症状出現時から抗生剤が投与されたか
患者発生からすぐに行うべき大事な検査
1) 白血球,CRP か PCT
2) 血液培養
3) 検尿と尿培養
4) 胸部 X 線(必要時,喀痰培養)
5) 腹水や胸水穿刺
6) 補液(必要時,昇圧剤)
7) 直ちに抗生剤を開始
8) 不応性ショックにストレス量ステロイド
感染症の診断 状態改善
検査陰性 48 時間後も改善なし
検査陰性 48 時間後に悪化
検査陰性
適した抗生剤
MALDI-TOF テストが早
期のデエスカレーション
の判断に役立つ
臨床症状の改善
検査データの改善(白血球
や CRP の低下)
以上が 48-72 時間に見ら
れればデエスカレーション
エンピリックな真菌治療
CT 感染症 Dr に相談
抗菌スペクトラムの拡大
新たな抗菌剤
抗真菌剤
CT
MALDI-TOF, matrix-assisted laser desorption ionization time-of-flight
肝疾患の患者の出血凝固系の均衡
一時止血
二時止血
線維素溶解
出血のリスク 血栓症のリスク
・フォン・ウィルブランド因子の上昇
・ADMTS-13 の低下
・血小板減少
・血小板機能の低下
・NO やプロスタサイクリンの生
成亢進
・凝固Ⅱ,Ⅴ,Ⅶ,Ⅸ,Ⅹ,Ⅺ因子の
低下
・ビタミン K の欠乏
・異常フィブリノーゲン症
・第Ⅷ因子の上昇
・プロテイン C/S,アンチトロンビ
ン,α2-マクログロブリン,ヘパリン
補助因子Ⅱの低下
・プラスミノーゲンの低値
・α2-アンチプラスミン,
第Ⅷ因子,トロンビン活性
化線溶阻止因子の低下
・tPA の上昇
8
肝性脳症の鑑別疾患
糖尿病(低血糖,ケトアシドーシス,高浸透圧症,乳酸アシドーシス)
アルコール関連(急性アルコール中毒,離脱症状,Wernicke 脳症)
薬物(ベンゾジアゼピン,向精神薬,麻薬)
腎機能不全
電解質異常(低 Na 血症,高 Ca 血症)
神経系の感染症
非けいれん性のてんかん
神経症
脳出血,脳梗塞
重度の代謝ストレス(臓器不全や炎症)
肝性脳症の対処アルゴリズム
肝性脳症の可能性 検査や画像診断で
他の原因による
意識障害を否定 肝性脳症が確定した場合,以下は ICU
・肝性脳症≧3 度
・ACLF
肝性脳症の誘発因子
あり なし
誘発因子を取り除く
・体液,電解質のアンバランス
・腎不全;補液か透析
・感染症;抗生物質
・消化管出血
・アルコール症;ビタミン B1
・投与薬剤を再考
・栄養失調;栄養支持療法
肝性脳症の専門治療
・ラクツロース
・全身の炎症反応を抑える:抗生物質
精神症状の改善
あり なし
薬物療法を継続
して再発を予防
・本当に肝性脳症か
・アルブミン透析
・門脈大循環シャントの閉塞