13
売上高 〈特殊鋼〉 金型・工具用材料は、海外向けの需要が回復したことによ り好調に推移し、当連結会計年度後半には国内向け需要も自 動車生産の持ち直し等に伴い回復に転じたことにより、前年 同期比で増加しました。エレクトロニクス関連材料は、中小型 用ディスプレイ関連材料の需要が好調に推移し、半導体等 パッケージ材料も回復基調となり、前年同期比で増加しまし た。産業機器・エネルギー関連材料は、自動車関連材料につ いては環境親和製品への需要が堅調に推移し、エネルギー 関連材料についても航空機関連材料が伸長し増加しました。 〈ロール〉 各種ロールは、海外の需要は増加したものの、国内の需要 が低調に推移し減少しました。射出成形機用部品について は、国内向け、海外向けともに回復基調となり、前年同期比で 増加しました。 〈アモルファス金属材料〉 アモルファス金属材料においては、主要市場である中国に おいて政府の省エネ機器導入推進政策等による需要が堅調 に推移し、当連結会計年度後半に調整が入ったものの、円安 による影響もあり、前年同期比で増加しました。 〈切削工具〉 切削工具については、産業機械等の国内需要は持ち直し 傾向となり、海外向けも輸出改善を背景に堅調に推移し増加 しました。 営業利益 為替の円安基調を背景とした輸出改善による国内自動車 生産の増加や、これに伴う自動車向け環境親和製品の需要増 加、航空機・エネルギー関連の需要拡大等により売上が増加、 操業も堅調に推移しました。また、これらに加え、原価低減効 果も寄与したことから、当セグメント全体の営業利益は前年 同期比7,757百万円増(43.9%増)の25,412百万円、営業利 益率は10.7%(前期比2.8ポイント増加)となりました。 特殊鋼事業は、YSS ® (Yasugi Specialty Steel)の世界 トップブランドの高級特殊鋼を代表とする製品群、また、その 技術をベースとした特長ある製品を生み出しています。自動 車関連分野ではピストンリング材やCVTベルト材、産業イン フラ分野ではダイカスト金型用鋼「DAC-MAGIC ® 」、プラス チック成形用金型材「CENA1 ® 」など「MAGICシリーズ」に よる金型・工具用材料、また、エレクトロニクス関連分野では ディスプレイ関連材料や、半導体等パッケージ材料などの 電子金属材料を提供しています。当セグメント売上高に おける特殊鋼事業全体の売上構成比は約70%です。 ロ ー ル 事 業 は 、トップ ブ ランドの 鉄 鋼 圧 延 用 ロ ー ル 「HINEX ® 」に加え、射出成形機用シリンダや、セラミックス およびその応用品、建築用鋼構造物およびその関連部品の 加工を手がけています。当セグメント売上高におけるロール 事業全体の売上構成比は約10%です。 アモルファス金属材料事業は、省エネルギーに貢献するア モルファス金属材料「Metglas ® 」をグローバルに展開してい ます。アモルファス金属は、結晶構造組織を持たない金属で、 溶解した金属を結晶構造組織となる前に急速に冷やすこと で生産します。優れた磁気特性や高い機械強度を持つこと から、電力用変圧器向け材料としてその採用が拡がって います。米国および日本の二極で製造しており、世界のさま ざまな地域でエネルギー関連需要が高まる中、そのニーズは 年々高まっています。高級金属製品セグメントにおいて、金属 材料におけるシナジーも得ながら、今後もさらなるグローバ ル拡販を図ります。当セグメント売上高におけるロール事業 全体の売上構成比は約10%です。 日立ツールグループは、特殊鋼・超硬合金等によるチッ プ、切削工具、耐磨製品などを有し、高速加工のきっかけを つくった「エンドミル 」の 開 発 技 術は、世 界トップクラスを 誇っています。当セグメント売上高における切削工具事業 全体の売上構成比は約10%です。 アモルファス金属材料[Metglas ® アモルファス金属材料 日立ツール株式会社 切削工具 特殊鋼 ロール 高級特殊鋼[YSSヤスキハガネ](金型・工具用材料、電子金属材料〈ディスプレイ関連材料、 半導体等パッケージ材料〉、産業機器・エネルギー関連材料、剃刃材および刃物材)、精密鋳 造品 各種圧延用ロール、射出成形機用部品、構造用セラミックス部品、鉄骨構造部品 高級金属製品セグメント 高級金属製品セグメントの売上高は、前年同期比6.6%増の 2 3 7 , 6 6 4 百 万 円となりました 。また 、営 業 利 益 は 前 年 同 期 比 7,757百万円増加し、25,412百万円となりました。 15年度 計画 12年度 13年度 2,229 2,620 315 177 254 3,000 3,500 1,000 2,000 1,500 2,500 500 0 100 200 150 300 250 350 50 0 売上高・営業利益推移 売上高 営業利益 (億円) 事業部門 主要製品 2013年度 2012年度 2011年度 118 119 57 103 114 52 116 139 53 設備投資・減価償却費・研究開発費 設備投資 減価償却費 研究開発費 2,377 業績概要 事業概況 (単位:億円) 平木 明敏 事業役員常務 高級金属カンパニープレジデント セグメント別事業概況 Review of Operations by Segment Business Performance 32 33 日立金属株式会社 アニュアルレポート 2014 Review of Operations by Segment

高級金属製品セグメント - Hitachi Metals各種圧延用ロール、射出成形機用部品、構造用セラミックス部品、鉄骨構造部品 高級金属製品セグメント

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Page 1: 高級金属製品セグメント - Hitachi Metals各種圧延用ロール、射出成形機用部品、構造用セラミックス部品、鉄骨構造部品 高級金属製品セグメント

売上高〈特殊鋼〉 金型・工具用材料は、海外向けの需要が回復したことにより好調に推移し、当連結会計年度後半には国内向け需要も自動車生産の持ち直し等に伴い回復に転じたことにより、前年同期比で増加しました。エレクトロニクス関連材料は、中小型用ディスプレイ関連材料の需要が好調に推移し、半導体等パッケージ材料も回復基調となり、前年同期比で増加しました。産業機器・エネルギー関連材料は、自動車関連材料については環境親和製品への需要が堅調に推移し、エネルギー関連材料についても航空機関連材料が伸長し増加しました。

〈ロール〉 各種ロールは、海外の需要は増加したものの、国内の需要が低調に推移し減少しました。射出成形機用部品については、国内向け、海外向けともに回復基調となり、前年同期比で増加しました。

〈アモルファス金属材料〉 アモルファス金属材料においては、主要市場である中国において政府の省エネ機器導入推進政策等による需要が堅調に推移し、当連結会計年度後半に調整が入ったものの、円安による影響もあり、前年同期比で増加しました。

〈切削工具〉 切削工具については、産業機械等の国内需要は持ち直し傾向となり、海外向けも輸出改善を背景に堅調に推移し増加しました。

営業利益 為替の円安基調を背景とした輸出改善による国内自動車生産の増加や、これに伴う自動車向け環境親和製品の需要増加、航空機・エネルギー関連の需要拡大等により売上が増加、操業も堅調に推移しました。また、これらに加え、原価低減効果も寄与したことから、当セグメント全体の営業利益は前年同期比7,757百万円増(43.9%増)の25,412百万円、営業利益率は10.7%(前期比2.8ポイント増加)となりました。

 特殊鋼事業は、YSS®(Yasugi Specialty Steel)の世界トップブランドの高級特殊鋼を代表とする製品群、また、その技術をベースとした特長ある製品を生み出しています。自動車関連分野ではピストンリング材やCVTベルト材、産業インフラ分野ではダイカスト金型用鋼「DAC-MAGIC®」、プラスチック成形用金型材「CENA1®」など「MAGICシリーズ」による金型・工具用材料、また、エレクトロニクス関連分野ではディスプレイ関連材料や、半導体等パッケージ材料などの電子金属材料を提供しています。当セグメント売上高における特殊鋼事業全体の売上構成比は約70%です。 ロール事業は、トップブランドの鉄鋼圧延用ロール

「HINEX®」に加え、射出成形機用シリンダや、セラミックスおよびその応用品、建築用鋼構造物およびその関連部品の加工を手がけています。当セグメント売上高におけるロール事業全体の売上構成比は約10%です。 アモルファス金属材料事業は、省エネルギーに貢献するアモルファス金属材料「Metglas®」をグローバルに展開しています。アモルファス金属は、結晶構造組織を持たない金属で、溶解した金属を結晶構造組織となる前に急速に冷やすことで生産します。優れた磁気特性や高い機械強度を持つことから、電力用変圧器向け材料としてその採用が拡がっています。米国および日本の二極で製造しており、世界のさまざまな地域でエネルギー関連需要が高まる中、そのニーズは年々高まっています。高級金属製品セグメントにおいて、金属

材料におけるシナジーも得ながら、今後もさらなるグローバル拡販を図ります。当セグメント売上高におけるロール事業全体の売上構成比は約10%です。 日立ツールグループは、特殊鋼・超硬合金等によるチップ、切削工具、耐磨製品などを有し、高速加工のきっかけをつくった「エンドミル」の開発技術は、世界トップクラスを誇っています。当セグメント売上高における切削工具事業全体の売上構成比は約10%です。

アモルファス金属材料[Metglas®]アモルファス金属材料

日立ツール株式会社 切削工具

特殊鋼

ロール

高級特殊鋼[YSSヤスキハガネ](金型・工具用材料、電子金属材料〈ディスプレイ関連材料、半導体等パッケージ材料〉、産業機器・エネルギー関連材料、剃刃材および刃物材)、精密鋳造品

各種圧延用ロール、射出成形機用部品、構造用セラミックス部品、鉄骨構造部品

高級金属製品セグメント

高級金属製品セグメントの売上高は、前年同期比6.6%増の237,664百万円となりました。また、営業利益は前年同期比7,757百万円増加し、25,412百万円となりました。

15年度計画

12年度 13年度

2,229

2,620

315

177

2543,000

3,500

1,000

2,000

1,500

2,500

500

0

100

200

150

300

250

350

50

0

売上高・営業利益推移売上高 営業利益

(億円)事業部門 主要製品

2013年度2012年度2011年度11811957

10311452

11613953

設備投資・減価償却費・研究開発費

設備投資減価償却費研究開発費

2,377

業績概要 事業概況

(単位:億円)

平木 明敏事業役員常務

高級金属カンパニープレジデント

セグメント別事業概況 Review of Operations by Segment

Business Performance

32 33日立金属株式会社 アニュアルレポート 2014

Review

of Operations by S

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Page 2: 高級金属製品セグメント - Hitachi Metals各種圧延用ロール、射出成形機用部品、構造用セラミックス部品、鉄骨構造部品 高級金属製品セグメント

 日立金属株式会社(以下 日立金属)は、航空機・エネルギー材料事業の強化を目的とし、三菱マテリア

ル株式会社(以下 三菱マテリアル)の完全子会社であったM MCスーパーアロイ株式会社(以下 MMC

スーパーアロイ)の発行済株式の51%に相当する株式を、2014年7月1日付で取得いたしました。これに伴

い、社名を日立金属MMCスーパーアロイ株式会社(以下 日立金属MMCスーパーアロイ)に変更、日立

金属グループの一員として始動しました。

 MMCスーパーアロイは、2010年7月に三菱マテリアル株式会社桶川製作所から半世紀を超えて培っ

てきた高度な品質・技術・開発力を承継し、設立されました。1944年の事業創業以来70年間にわたり、世

界でもユニークな非鉄金属加工技術を育み、航空機・産業用ガスタービン・自動車産業等の基幹産業向

けに、特殊耐熱合金・耐食合金、特殊銅合金などの高機能製品を提供してきました。

 今後は、特殊鋼など高機能材料を開発、提供する日立金属 高級金属カンパニーとともに事業を展開

し、双方が持つ強みを融合させながら、世界的に発展が見込まれる航空機・エネルギーをはじめとする

基幹産業分野におけるグローバル成長をめざします。また、三菱マテリアルと一体となって事業運営を推

進し、さらなる国際競争力の強化を図るとともに、市場やお客様が期待する新たな製品やサービス・ソ

リューションを提供し、顧客基盤の強化・拡大を図ってまいります。

「日立金属MMCスーパーアロイ株式会社」が始動

 特殊鋼事業の製造拠点、安来工場(日本、島根県)へ日本最大の最新鋭20トン級VIM(真空誘導溶解

炉)と長尺VAR(真空アーク再溶解)を導入することを決めました。これにより、CVTベルト材やエネル

ギー・産業機器向け材料などの環境親和製品の競争力を、さらに強化していきます。

 安来工場には鉄源や合金材料を最初に溶かす電気炉に加えて、VIM、VAR、エレクトロスラグ再溶解

(ESR)などの特殊溶解設備があります。特殊溶解設備では、電気炉で一度溶解した鋼材の材料を再び溶

解し、不純物や不要なガスなどを取り除き、性能、品質を向上させます。CVTベルト材や航空機用超耐熱

鋼など厳しい品質基準が要求される環境親和製品の生産には必要不可欠な設備です。

 今回、新たに最新鋭20トン級VIMと長尺VARを導入することで、一バッチ当たりの特殊溶解能力を高め

るとともに、既存の特殊溶解設備の集約も可能となり、環境親和製品の品質向上、生産性向上、歩留ま

り向上、コスト低減を図り、競争力をさらに強化します。

 最新鋭20トン級VIMと長尺VARは、14年度中に完成させ、15年度からの本格稼働を予定しています。

稼働により現在ナンバーワンのシェアを誇るCVTベルト材の生産量とシェアをさらに高め、エネルギー・

産業機器分野の製品も日本エアロフォージとの連携で大幅な拡大をめざします。

 経済産業省の「円高・エネルギー制約対策のための先端設備等投資促進事業費補助金」事業にも採択

されており、国内でのモノづくり力強化でグローバル市場に展開する製品の競争力を高める取り組みを

進めていきます。

最新鋭20トン級VIM(真空誘導溶解炉)を安来工場に導入、環境親和製品の競争力を強化

高級金属製品セグメントセグメント別事業概況 | トピックス

日立金属MMCスーパーアロイ株式会社 概要

名称

所在地

設立

代表者

資本金

売上高

事業内容

社員数

株主

日立金属MMCスーパーアロイ株式会社

埼玉県桶川市上日出谷1230番地

2010年7月1日

代表取締役 取締役社長 岡 勉

38億840万円

17,790百万円(平成26年3月期実績)

特殊耐熱・耐食合金・耐摩耗合金、特殊銅合金の製造、販売

345名(平成26年3月末現在)

日立金属株式会社51%、三菱マテリアル株式会社49%

Business Performance

34 35日立金属株式会社 アニュアルレポート 2014

Review

of Operations by S

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Page 3: 高級金属製品セグメント - Hitachi Metals各種圧延用ロール、射出成形機用部品、構造用セラミックス部品、鉄骨構造部品 高級金属製品セグメント

CVTベルト材CVT(無段変速機)用に開発された疲労強度に優れた金属ベルト材料です。溶解・冷間圧延技術により、破損の原因となる非金属介在物を防ぎ、変速機の性能と信頼性向上に貢献します。

(特殊鋼)

高級特殊鋼エンジン材料・部品(ピストンリング材)小型・高出力化が進むエンジンにおいて、ステンレス製ピストンリングが多く採用されています。金属組織をナノレベルで制御し、耐摩耗性、摺動性を高めた日立金属のピストンリング材は、塑性加工と熱処理を施した異形線でご提供できます。

(特殊鋼)

アモルファス金属材料 Metglas®

変電所で使用される変圧器や柱上変圧器に用いられるコア材や太陽電池用インバータ、風力発電用コンバータなど電力変換装置用のカットコアとして使用されています。コア部分での電力ロスが少なく高効率で省電力化を図ることができます。環境規制やスマートグリッドなど電力インフラ需要の高まりを背景に用途が拡がっており、国内外で活躍が期待される製品です。

(アモルファス金属材料)

*CVT: Continuously Variable Transmission

YSS、ヤスキハガネは日立金属の登録商標です。

1

2

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4

5

伝承される「誠実生美鋼」の精神出雲を中心とする山陰地方には、良質な砂鉄と木炭の原料となる豊富な山林があり、古くからたたら製鉄が盛んでした。たたら製鉄で生産される玉鋼は、今でも日本刀の最高級素材として使われています。島根県にある日立金属安来工場は、その伝統的な製鉄の技術と精神を今も受け継いでいます。伝統ある材料開発力に裏付けられた高い品質を備えている鋼が「YSSヤスキハガネ」です。各種金型用素材からエレクトロニクス材料、航空機部品など幅広い分野で欠かせない高級特殊鋼として、海外でも高く評価されています。

冷間ダイス鋼 SLD-MAGIC®

自動車の軽量化、安全設計のために多く用いられる高張力鋼板(ハイテン)に対応した金型用鋼です。削りやすく、熱処理後の寸法変形が少ない特性に加え、金型寿命も向上することから、金型のトータルコストダウンに貢献します。

(特殊鋼)

鉄鋼圧延用ロール当社の鉄鋼圧延用ロールは、高熱の鋼塊・鉄塊を大きな圧力で押し延ばすために必要とされる耐熱性や耐衝撃性、また高精度な製品形状を実現するために求められる耐摩耗性に優れています。中でも、新鋳造法によって誕生したハイス系複合ロール

「HINEX®」は、従来のロールに比べ圧延コストの削減を図ることができます。

(ロール)

1. CVTベルト材2. ピストンリング材3. アモルファス金属材料 Metglas®

4. 航空機用部材5. エンジンバルブ材

産業の発展を支える「YSS®」と「日立ロール」

セグメント別事業概況 | 主要製品紹介

高級金属製品セグメント

Business Performance

36 37日立金属株式会社 アニュアルレポート 2014

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Page 4: 高級金属製品セグメント - Hitachi Metals各種圧延用ロール、射出成形機用部品、構造用セラミックス部品、鉄骨構造部品 高級金属製品セグメント

1,421 1,3421,390160

△9

1171,000

1,500

2,000

500

0

–500

50

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200

0

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(億円)

売上高・営業利益推移売上高 営業利益

売上高〈マグネット〉 マグネットにおいては、希土類磁石は、ハイブリッド車や国内の自動車用電装部品は好調に推移し、FA関連の需要も持ち直し傾向となったものの、ハードディスクドライブ関連は市場の低迷が続いており、また原材料価格の低下による影響もあり、前年同期比では減少となりました。フェライト磁石は、国内、海外とも自動車用電装部品および家電用部品の需要が好調に推移し増加しました。

〈ソフトフェライト他軟質磁性材料・応用品〉 軟質磁性材料およびその応用品については、ソフトフェライトは、太陽光発電用部品や自動車用電装部品等への需要が好調に推移したことに加え、ファインメットも、当連結会計年度前半に欧州向け太陽光発電用部品の需要が堅調に推移し、全体で増加しました。

営業利益 原材料価格低下による影響で売上高は減少したものの、生産性の向上やコスト削減による効果に加え、昨年度にあった特殊要因(原材料価格低下に伴う評価減)が限定的となり、前年度対比で大幅改善となりました。軟質磁性材料・応用品においても、前年度に行った製品の精選やコスト削減による体質強化等、構造改革の効果により、収益性が改善しています。 この結果、当セグメント全体の営業利益は、営業損失を計上した前年度に対し12,582百万円増の11,718百万円となりました。営業利益率は8.7%となりました。

業績概要

 マグネット事業は、NEOMAX®ブランドを誇る希土類磁石と、特長あるフェライト磁石という、異なる材料によるマグネットの品揃えを誇り、自動車やエレクトロニクス、家電や産業機械向けなど幅広い分野へ製品を供給、産業の根幹を支えています。磁性材料のパイオニアとして、新しい材料、新しい生産技術を開発、市場投入しています。2011年からは供給量に限りのある原材料(ジスプロシウム(Dy))の使用量を大幅に削減する技術[DDMagic®(Dy蒸着拡散技術)]をいち早く確立、この技術によるネオジム磁石の量産化を実現し、FA用に続き、HEV等自動車にも採用が拡大しています。材料開発力で原材料への対応を進めるとともに、お客様のニーズに応え、モーターの小型化・高性能化に貢献しています。 軟質磁性材料およびその応用品は、長年の実績を誇るソフトフェライトに加え、アモルファス金属材料「Metglas®」や、当社開発のナノ結晶軟磁性材料「ファインメット®」等、特長ある材料で携帯端末や情報通信機器等のエレクトロニクス関連部品から、車載用アンテナやEMC・ノイズ関連部品、太陽光発電関連部品等、幅広い産業分野に製品をお届けしています。

 このように、日立金属は、特長ある磁性材料の組み合わせで、さまざまな社会のニーズに応えるとともに、省エネルギー社会の実現に貢献しています。

事業概況

マグネット(希土類磁石[NEOMAX®]・フェライト磁石、その他各種磁石およびその応用品)

軟質磁性材料(ソフトフェライト・ナノ結晶軟磁性材料[ファインメット®])およびその応用品、アモルファス金属材料[Metglas®]応用品、情報通信機器用部品、IT機器用材料・部品、医療機器用材料・部品

マグネット

ソフトフェライト他軟質磁性材料・応用品

736332

845435

646242

2013年度2012年度2011年度

設備投資・減価償却費・研究開発費

設備投資減価償却費研究開発費

磁性材料セグメント

当セグメントの売上高は、前年同期比5.6%減の134,249百万円となりました。また、営業利益は前年同期比12,582百万円増加し、11,718百万円となりました。

事業部門 主要製品

諏訪部 繁和事業役員

磁性材料カンパニープレジデント

15年度計画

12年度 13年度

(単位:億円)

Business Performance

38 39日立金属株式会社 アニュアルレポート 2014

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of Operations by S

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Page 5: 高級金属製品セグメント - Hitachi Metals各種圧延用ロール、射出成形機用部品、構造用セラミックス部品、鉄骨構造部品 高級金属製品セグメント

 モーターの高効率化や小型化が要求されるNd-Fe-B系焼結磁石において、ジスプロシウム(Dy)の使

用量を減らしたNEOMAX®製法を確立、採用が拡大しています。

 Nd-Fe-B系焼結磁石(以下、NEOMAX®)は、2004年に日立金属の磁石事業と旧住友特殊金属の磁石

事業を統合して以来、世界シェアトップを誇る製品です。1982年に旧住友特殊金属で発明後、用途が急速

に広がり、ハイブリッドカー、エアコンなどの高効率化や小型化が要求されるモーターに欠かせない存在

であり、今後も環境親和製品として需要が拡大する見込みです。

 NEOMAX®は、ネオジム(Nd)・鉄(Fe)・ホウ素(B)を基本組成とし、耐熱性を向上させるためにジス

プロシウム(Dy)を加えます。これをさらに進化させるため、日立金属は低・フリーDy化への開発を進めて

きました。

 この中で、当社はDy使用量の削減方法の一つとして、拡散法(DDMagic®)を確立しました。磁石その

ものに含まれるDyを減らしつつ、NEOMAX®の表面からDy蒸気を供給し、磁石内部に拡散させていくこ

とで、必要な場所に必要な量のDyを配置して総使用量を削減するとともに磁気特性も改善します。

DDMagic®は、2009年から量産に適用しており、順次採用が拡大しています。

 また、日立金属は、DDMagic®に加え、添加元素の最適化による保磁力向上、組織制御、微細化などの

プロセス改善により、さらに低・フリーDy化したNEOMAX®を開発しました。現在、お客様による評価を

行っており、今後、量産を予定しています。

 日刊工業新聞社が主催する「第42回日本産業技術大賞」文部科学大臣賞に「X線自由電子レーザー

施設SACLAの整備と供用開始」が選ばれ、理化学研究所などとともに日立金属・NEOMAXエンジニア

リング(NXE)が受賞しました。

 X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA(さくら)」(日本、兵庫県佐用町)は、原子や分子の瞬間的な

動きを観察することができ、難病の原因解明と薬の創出、地球環境を悪化させる物質の抑制方法の確立、

材料の開発など、私たちの生活の向上に大きく役立つと期待されています。

 原子や分子など非常に小さい対象物を観察するためには、波長が非常に短く、強力なX線レーザーが

必要です。そのX線レーザーを発振させる装置が、NEOMAXエンジニアリングの真空封止型アンジュ

レータです。真空封止型アンジュレータは、ネオジム磁石を真空ダクト内に非常に高精度に配列した装置

で、加速した電子ビームを通すことで、低い加速エネルギーでも最短波長の強力なX線レーザーを発振

します。SACLAは世界最短波長0.06nmのX線レーザーの発振に成功しました。

 SACLAの建設には、500社以上が参加しました。高性能の実現には「熱電子銃」「Cバンド加速器」「真空

封止型アンジュレータ」などが大きく貢献し、日立金属・(NXE)は独立行政法人 理化学研究所、公益財団

法人 高輝度光科学研究センター、住友重機械工業株式会社、株式会社鴻池組、株式会社竹中工務店、

東芝電子管デバイス株式会社、ニチコン株式会社、三菱重工業株式会社、三菱電機特機システム株式会社

とともに受賞しました。

 XFELの建設は、スイス、スウェーデン、韓国などでも検討が進んでおり、日立金属グループの技術・製品

が、ますます社会に貢献することが期待されます。

新技術によるNd-Fe-B系焼結磁石 NEOMAX®の採用拡大 X線自由電子レーザー施設SACLA第42回日本産業技術大賞 文部科学大臣賞を共同受賞

磁性材料セグメント

真空封止型アンジュレータ希土類磁石「NEOMAX®」

セグメント別事業概況 | トピックス

Business Performance

40 41日立金属株式会社 アニュアルレポート 2014

Review

of Operations by S

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Page 6: 高級金属製品セグメント - Hitachi Metals各種圧延用ロール、射出成形機用部品、構造用セラミックス部品、鉄骨構造部品 高級金属製品セグメント

Nd-Fe-B系焼結磁石 NEOMAX®

世界最高クラスの磁気特性を持つ希土類磁石です。自動車分野、IT・家電分野、産業分野、医療・環境・エネルギー分野のモーターに使用されており、小型・軽量化、高効率化・省エネに欠かせない材料として重要な役割を担っています。

ソフトフェライト他軟質磁性材料・応用品ソフトフェライトは酸化鉄を主原料とする軟質磁性材料です。飽和磁束密度はやや小さいものの、電気抵抗が大きく、高周波領域における磁気特性が優れているのが特長です。通信機器やテレビ、冷蔵庫、パソコンなどのコイルのコアとして使用されています。

ナノ結晶軟磁性材料 ファインメット®

「ファインメット®」は、日立金属が開発した世界初のナノ結晶軟磁性材料です。ナノスケールの微細な結晶からなる新しいFe基軟磁性材料であり、高い飽和磁束密度・透磁率を持つことで温度特性と経時安定性に優れています。変形が容易で加工しやすいため、磁気ヘッドコア用材料、電源部品、ノイズ対策部品など幅広く用いられ、電子機器の小型・軽量化、省エネルギー化、低騒音化に貢献します。

アモルファスカットコアパワーコンディショナーのインバータ用材料として注目されている製品です。太陽光発電や風力発電では、発電した電気を高効率で変換することが求められています。アモルファスカットコアは、優れた磁気特性により電力変換効率の向上に貢献しています。

「NEOMAX®」「ファインメット®」「Metglas®」。この省エネルギーに貢献する磁性材料で、日立金属に新たな歴史が生まれつつあります。

1. Nd-Fe-B系焼結磁石NEOMAX®シリーズ2. ソフトフェライト3. ナノ結晶軟磁性材料「ファインメット®」4. アモルファスカットコア

磁性材料には、硬質磁性材料(ハードマグネット、磁石)と軟質磁性材料(ソフトマグネット、軟質磁性材料)があり、家電製品、自動車・電車、通信機器など身の回りにあるいろいろな製品に使われています。

ハードとソフト。磁性材料で明日への可能性をかたちに

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3

小型化・省エネルギーに貢献する「磁石」 硬質磁性材料いわゆる「磁石」では、「NEOMAX®」があります。これは、鉄とネオジムとホウ素の化合物で、マグネットの中でも最高の磁気特性を有する磁石です。非常に強い磁力を持っており、機器にとって小型化・高性能化の鍵となる存在です。最近では、ハイブリッド車や電気自動車など、モーターの力を左右する重要な基幹部品となっています。

ナノテクも活用する軟質磁性材料軟質磁性材料では、さまざまな電子機器に用いられるソフトフェライトに加え、「Metglas®」や、日立金属が独自に開発した「ファインメット®」があります。「ファインメット®」は、結晶粒を10ナノメートル程度まで微細化することで磁気特性を大きく向上させた新素材です。また、「Metglas®」は、特に世界の各地域で省エネルギーへの取り組みが進む中、非結晶質という特徴から、配電用の変圧器や、太陽光発電のインバータへの採用が進んでいます。

磁性材料セグメントセグメント別事業概況 | 主要製品紹介

Business Performance

42 43日立金属株式会社 アニュアルレポート 2014

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Page 7: 高級金属製品セグメント - Hitachi Metals各種圧延用ロール、射出成形機用部品、構造用セラミックス部品、鉄骨構造部品 高級金属製品セグメント

設備配管機器(  ®印各種管継手、ステンレスおよびプラスチック配管機器、冷水供給機器、精密流体制御機器、密閉式膨張タンク)

 自動車鋳物事業は、当社のルーツである戸畑鋳物株式会社の流れを汲む事業です。可鍛鋳鉄製造技術を自動車用鋳物へと発展させ、環境親和製品の耐熱鋳造部品[HERCUNITE®シリーズ]などを開発、環境にやさしい製品に注力しています。また、高級ダクタイル鋳鉄製品は、韓国・北米・日本という三極によるグローバル生産体制を誇り、アルミホイールも日本・北米での生産を行っており、このグローバルネットワークを活かした製品開発と生産・販売体制で各国の市場ニーズにフレキシブルに対応しています。当セグメント売上高における自動車用鋳物事業全体の売上構成比は約60%です。 配管機器事業も「ひょうたん印」をトレードマークに可鍛鋳鉄マレブル継手を発売した戸畑鋳物株式会社を前身とする事業です。ひょうたん印の管継手は産業分野から一般家庭まで幅広く使用されるトップブランド製品となっています。耐久性が高く取り扱いやすい新材質をいち早く投入し、業界をリードする製品開発を続けています。当セグメント売上高における配管機器事業全体の売上構成比は約30%です。

 日立機材グループは、二重構造床システムや建築物の柱脚に使われる鉄骨構造部品や、油圧式制震装置、産業機械用チェンなど、建築部材の製造販売を行っています。当セグメント売上高における建築部材事業全体の売上構成比は約10%です。

売上高〈自動車用鋳物〉 耐熱鋳造部品は、主要市場である欧州の景気低迷による影響等により、前年同期の水準に届かなかったものの、高級ダクタイル鋳鉄製品は、米国等の海外乗用車の旺盛な需要が続き、国内も商用車を中心とした需要が好調に推移したことから、全体として増加しました。アルミホイールは、米国、国内ともに計画を下回り、前年同期比で減少しました。

〈配管機器〉 各種管継手は、国内住宅着工戸数の持ち直しに加え、米国の住宅市場が順調に回復している等の影響から、増加しました。ステンレス及びプラスチック配管機器については、ガス用製品に対する施工性・耐震性の高評価により需要が好調に推移し、増加しました。

〈建築部材〉 国内民間設備投資や堅調な国内公共投資に支えられ、鉄骨造建設需要が好調に推移し、増加しました。

営業利益 自動車用鋳物における主要顧客の減産や、欧州の景気低迷による減産影響が残ったものの、主力の高級ダクタイル鋳鉄製品が売上・操業ともに堅調に推移し、配管機器においても、国内および北米の建設持ち直しを背景とした需要増で操業が堅調に推移、コスト削減の効果もあり、当セグメント全体の営業利益は、前年同期比2,643百万円増(25.9%増)の12,831百万円となり、営業利益率は前期比0.9ポイント増加し、6.8%となりました。

自動車用高級鋳物(排気系耐熱鋳造部品[ハーキュナイト®]、高級ダクタイル鋳鉄製品[HNM®])、アルミホイール[SCUBA®]、その他アルミニウム部品、自動車用鍛造部品

建築部材(内装システム、構造システム、屋上システム)、チェン(マテハンシステム)

自動車機器

配管機器

日立機材株式会社

高級機能部品セグメント

当セグメントの売上高は、前年同期比9.1%増の187,691百万円となりました。また、営業利益は前年同期比2,643百万円増加し、12,831百万円となりました。

1,7201,877

2,025185

102128

1,000

2,000

1,500

2,500

500

0

100

200

150

250

50

0

(億円)

売上高・営業利益推移売上高 営業利益

64

72

27

70

63

24

57

66

27

2013年度2012年度2011年度

設備投資・減価償却費・研究開発費

設備投資減価償却費研究開発費

中野 英治事業役員

高級機能部品カンパニープレジデント兼 自動車機器統括部長

業績概要 事業概況

事業部門 主要製品

15年度計画

12年度 13年度

(単位:億円)

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44 45日立金属株式会社 アニュアルレポート 2014

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高級機能部品セグメント

 Namyang Metals Co., Ltd. と Hitachi Metals Singapore Pte. Ltd. は、技術・販売提携関係にある

インドの自動車鋳物製造会社 RPS VIKAS Castings Pvt. Ltd. と Garima Vikas Metals Pvt. Ltd. に

資本参加し、自動車用鋳物の高靭性ダクタイル鋳鉄HNM®の生産・供給体制を強化します。

 インドでの自動車生産台数は、2013年の390万台から2020年には700万台を超えると見込んでおり、

インド市場は自動車用鋳物事業において重要度が高まってきています。

 こうした背景から2013年2月、高級機能部品カンパニーおよび南陽金属は、インドのRPSビカス社

およびガリマビカス社と自動車鋳物について技術・販売提携を結びました。

 提携後は、技術支援を行うなど生産・供給体制の基盤づくりを進めてきましたが、インドでの事業基盤

構築をさらに強化するため、2014年3月に Namyang Metals と Hitachi Metals Singapore が RPS

ビカス社およびガリマビカス社と合弁事業契約を締結しました。高級機能部品カンパニーは、RPSビカス

社とガリマビカス社の株式を51%取得し、連結子会社化することで、インド市場での高靭性ダクタイル

鋳鉄HNM®の事業展開を加速します。

 高靭性ダクタイル鋳鉄HNM®の生産・供給体制は、従来の生産拠点である日本(真岡工場)、韓国(南

陽)、米国(Hitachi Metals Automotive Components USA, LLC)に、今回のインドを加えることで、世

界4極での展開となります。これにより、世界の自動車需要に、より機動的に対応が可能となることで、高級

機能部品カンパニーはさらなるグローバルでの成長をめざします。

 高級機能部品カンパニーは、配管機器事業において、ステンレス製のガス用配管システムであるCSST

(Corrugated Stainless Steel Tubing)を新興国トルコの一般住宅向けに展開、グローバル拡販を進め

ています。

 トルコは新興国の中でもリーマンショック後の経済回復が早く、EU周辺国の中では人口が多いため消

費拡大が見込まれます。近年は経済成長を背景に新規住宅着工件数が増加しており、1980年代後半から

の天然ガスの使用開始と合わせてガス配管の需要が急速に伸長しています。また、トルコは地震が多いこ

とから現地のガス協会・ガス会社は安全性に優れた日本の配管システムに強い関心を寄せています。

 こうした背景から、高級機能部品カンパニーでは、トルコ市場をターゲットとして、フレキ管と接続用の継

手を組み合わせたガス配管システムCSSTを投入しています。CSSTは、フレキ管を使用するため継手接

続が少なく、設置の自由度が高いことから、従来の鋼管接続と比較して施工性に優れます。また、接続部が

少ないことにより地震発生時のガス漏れの可能性を低減でき、現地で高い評価を受けました。

 一方、配管システムの安全性を高めていくためには施工技術も重要となるため、現地ガス協会やガス会

社に配管システム全体の啓蒙活動を行い普及への土壌づくりも推進しています。ガス協会関係者の来日

時には、配管機器事業の主力製造拠点である桑名工場(日本、三重県)の見学を実施し、施工例や製造現場

を通して製品理解を深めてもらいました。2012年10月にはトルコ規格協会認定を取得し、トルコガス協

会の全面協力でガス配管工事業者向けに施工教育を実施しました。

 CSSTの採用は徐々に実現しておりその認知度は着実に上がっています。現在、大都市圏での拡販活動

も進めており、今後はさらなる売り上げの増加が期待されます。

インドでの自動車鋳物の生産・供給体制強化、RPSビカス社とガリマビカス社に資本参加

日本発の独自技術と販売戦略で、新興国市場へ積極参入

高靭性ダクタイル鋳鉄品 HNM® CSST設置例

セグメント別事業概況 | トピックス

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46 47日立金属株式会社 アニュアルレポート 2014

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1

2マニターボ®

難題の解決こそが日立金属のDNAこの難題をクリアしたのが、「ハーキュナイト®(HERCUNITE)」です。「ハーキュナイト®」は、耐熱性はもちろん、耐酸化性や耐熱変形性、耐熱亀裂性の高い鋳鋼・鋳鉄材と、そうした材料で生産される排気系部品のシリーズ。世界の自動車の高性能・低燃費エンジンに採用されています。この他にも、日立金属は自動車の安定走行に貢献する足回り部品や、軽量化とデザイン性を追求したアルミホイールなど、自動車の進化に貢献する製品を提供しています。

高級機能部品セグメント

ハーキュナイト®の名称の由来開発者によって名づけられた「ハーキュナイト®」とは、「HEat Resisting Cast materials for UNIT of Exhaust parts(排気部品向けの耐熱鋳造材)」の略ですが、由来がもうひとつあります。金属化合物を表す接尾語の「ナイト」に、ギリシャ神話の英雄ヘラクレス(英語で「ハーキュリー」)の名を冠したのです。「ハーキュナイト®」は名前にも、金属で多彩なソリューションを提供する日立金属のDNAが埋め込まれています。

(自動車機器)

耐熱鋳造部品 「ハーキュナイト®」シリーズ

セグメント別事業概況 | 主要製品紹介

低燃費・高効率エンジンの実現に向けて低燃費の自動車エンジンに求められるポイントは2つ。新たな燃焼技術の導入、そして小型化

(排気量の縮小)ですが、実現には課題がありました。新燃焼技術を導入したエンジンでは排出ガスの温度が非常に高くなります(ガソリンエンジンでは約1000度)。排気の集まる部品、エキゾーストマニホールドは、この超高温に耐えなければなりません。一方、エンジンを小型化しても十分な出力を確保するにはターボチャージャーなどの過給器が必要になります。この過給器をコンパクトに収めるのが、ハウジング(収納器)と呼ばれる鋳造品です。鋳造品が高熱に耐えることが課題となっていました。

アルミホイールアルミホイール「SCUBA®」※は、高精度のCAEを駆使し、高強度、高剛性で、しかも軽量化(当社従来比15%減)を実現し、省燃費・CO2排出削減に貢献しています。高度なアルミ鋳造技術を駆使したシャープで繊細なデザインが可能です。

(自動車機器)

※SCUBA®(スキューバ)の名前の由来 Sharp styled Casting & Uncompromised Bright Appearanceの略。 シャープにデザインされた鋳物で妥協のない明るい外観の意味です。

高靭性ダクタイル鋳鉄品 HNM®

「HNM®」シリーズは、高い低温靭性と寸法精度に優れた鋳鉄部品です。ニアネットシェイプでお届けすることができ、薄肉・軽量化に貢献します。

(自動車機器)

1. 高意匠アルミホイール「SCUBA®」2. 高靭性ダクタイル鋳鉄「HNM®」シリーズ

時代が求める低燃費・高性能・軽量化を実現した自動車用鋳物

Business Performance

48 49日立金属株式会社 アニュアルレポート 2014

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暮らしを支える「ひょうたん印」

優めっき®白継手純度の高い亜鉛めっきで、鉛やカドミウムの含有量を大幅に削減しました。主に消火配管や空調配管などで使用されています。

(配管機器)

印ソフレックス®ガス用ステンレス製フレキシブル管・継手(プッシュインパクト®)

「ソフレックス®」は、当社のガス用ステンレス製フレキシブル管および継手の総称です。配管途中の接続が少ないため、施工性がよく、メンテナンス性にも優れています。

(配管機器)

ガス用ポリエチレン配管システムエレクトロフュージョン継手(EF継手)、ポリエチレン管、ポリエチレンバルブ、各種トランジション継手および融着コントローラを含めたガス用配管のトータルシステムです。ポリエチレン配管は柔軟性が高いため、地盤沈下や万一の地震・凍土などによる地盤変位に対しても従来の鋼管、鋳鉄管を用いた配管に比べ破損が少ないという特性があります。当社のシステムは、口径25~300Aまでの幅広い継手・パイプ類を取り揃えています。良好な耐腐食性、優れた施工性が特長で、施工のトータルコスト削減に貢献します。

(配管機器)

優めっき®白継手

  ® 印とは 1910年(明治43年)、当社の前身である戸畑鋳物株式会社がその第一号製品を世に送り出すにあたって、“より強靭に、より滑らかに、より美しい曲線に”との願いを込めて鋳出しされたのがこの「ひょうたん印」です。海外でも「Gourd brand」の名で親しまれています。

1. 優めっき®白継手2. 印ソフレックス®ガス用ステンレス製 フレキシブル管・継手(プッシュインパクト®)3. ガス用ポリエチレン配管システム

ひょうたん印―日立金属のDNAのルーツ液体や気体を運ぶ際に多く使われる配管、日立金属は暮らしの安全と安心を支える配管材料・機器をお届けしています。その代表が、ガスや水を家庭や事業所にお届けするための配管や継手です。対象はガス・給水・給湯・排水と幅広く、製品ライン・アップも多種多様です。その中でも鋳物継手は日立金属の創業以来の製品であり、信頼性が高く需要の多い製品です。また、地震に強く耐腐食性のあるプラスチック継手も急速に伸びています。

1

2

3

高級機能部品セグメントセグメント別事業概況 | 主要製品紹介

ponents and Equipment

Business Performance

50 51日立金属株式会社 アニュアルレポート 2014

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売上高〈電線〉 電力・産業システムは建設投資関連に加え、海外鉄道案件の需要が堅調に推移し、太陽光発電施設等の建設向けの需要も堅調に推移しました。電子・通信材料は半導体製造装置用を中心に好調に推移し、電機材料についても、巻線は自動車用を中心とした需要が回復に転じ堅調に推移、太陽電池関連の需要も内需を中心に好調となりました。

〈自動車部品〉 自動車部品においては、注力分野である電装部品を中心とした堅調な需要に加え、北米市場が好調なこともあり、売上高が着実に伸長しました。

〈情報デバイス〉 情報デバイスについては、スマートフォン普及による通信事業者のネットワーク増強投資に伴うネットワーク機器の売上増加により、好調に推移しました。

営業利益 これまでの構造改革の効果による体質強化や継続的なコスト削減の効果に加え、自動車や建設、通信関連、公共投資関連等、全体的に需要が堅調に推移したことによる売上の増加もあり、収益性が大幅に改善しました。この結果、営業利益は17,047百万円となり、営業利益率は6.8%となりました。

業績概要 事業概況

 電線材料の分野では、「エネルギー」と「情報」において、時代が求める技術を追求してきました。電線・ケーブルは、長年にわたる実績と豊富な経験を活かし、電力施設用から一般建設用・産業用に至るまで、社会インフラの整備に寄与する製品や、各種機器の小型化・高性能化に寄与する製品で、お客様に最適な提案を行っています。 自動車部品では、市場のニーズに適応し材料の特性を活かすことを基本に、エネルギーや信号を効率よく確実に伝える各種センサーや電源ハーネス、ブレーキ用ハーネス・ホースなどをグローバルに開発、生産、販売し、自動車の安全性、省エネルギー、利便性の向上に貢献しています。 また、情報デバイスでは、情報ネットワーク機器や携帯電話基地局のアンテナシステムなど、特徴ある情報通信インフラ向け製品・ソリューションを提供しています。

 これからも優れた技術で、世界各地のお客様をサポートし、社会に貢献していきます。

情報ネットワーク、ワイヤレスシステム、化合物半導体情報デバイス

金属材料 黄銅製品他

電線

自動車部品

電力・産業用電線・ケーブル、機器用電線・ケーブルおよび配線部品、光・通信ケーブル、巻線、工業用ゴム製品

電装部品、ブレーキホース

電線材料セグメント

当セグメントは、本合併に伴って新設された事業セグメントです。第2四半期連結会計期間から当セグメントにおける業績を当社グループ業績に反映しております。当連結会計における当セグメントの売上高は251,154百万円となりました。また、営業利益は17,047百万円となりました。

2,512

3,050

155170

1,000

3,000

2,000

4,000

0

150

300

0

売上高 営業利益(億円)

事業部門 主要製品売上高・営業利益推移

567252

長谷川 正人事業役員

電線材料カンパニープレジデント

当社は、平成25年7月1日付で日立電線株式会社と合併いたしました。これに伴い、電線材料カンパニーを新設し、その業績は「電線材料」セグメントとして第2四半期連結会計期間から当社グループ業績に反映しております。

2013年度2012年度2011年度

設備投資・減価償却費・研究開発費

設備投資減価償却費研究開発費

(単位:億円)

15年度計画

13年度

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52 53日立金属株式会社 アニュアルレポート 2014

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Page 12: 高級金属製品セグメント - Hitachi Metals各種圧延用ロール、射出成形機用部品、構造用セラミックス部品、鉄骨構造部品 高級金属製品セグメント

 電線材料カンパニーは、自動車部品事業の成長ドライバの一つとして、電動パワーステアリング(EPS)用

トルクセンサーの生産規模・グローバル供給体制強化を図っています。

 近年、EPSシステムは、省エネルギー化および車内の省スペース化を目的として、油圧式から電動式への

移行が進んでいます。EPS用トルクセンサーは、ハンドル操作とタイヤの間に生じるねじれを検知するセ

ンサーで、操舵の伝達・制御および操舵力のアシストに欠かせない基幹部品です。

 トルクセンサービジネスは、電線材料カンパニーの巻線技術を活かしたコイルアセンブリーから始まり、

そのコイルアセンブリーを組み込んだ非接触式ボビン型トルクセンサーの生産を開始したことで徐々に

ビジネスを拡大してきました。最近では、自動車の低燃費化を背景として動力・制御系の電動化が急加速

する中、より高感度で高機能なセンサーが求められるようになり、お客様との共同開発という形でトルク

の検出精度や温度特性の良好なホールIC型トルクセンサーを開発し、ラインアップの幅を広げています。

 現在、トルクセンサーは国内とタイの製造子会社 AHCL (Thailand) Co., Ltd. (AHCL)の2拠点で

量産しています。(AHCL)では、2012年10月から製造設備を増強し、2014年度までに製造能力を2011

年度比のおよそ3倍強にまで高めていく予定です。また、グローバル供給体制構築のため、他地域での

製造も検討しています。

 トルクセンサー市場は今後も急拡大していくと予想され、さらなる成長が期待されます。

 電線材料カンパニーでは、鉄道車両電線を「国内で強い」から「世界で勝てる」事業にするべく、さらなる

製品開発・海外拠点強化を行い、グローバルな事業展開を加速させていきます。

 電線材料カンパニーでは、各種電線・ケーブル製造の開発・製造技術を活かし、車体配線や車載機器に

用いられる鉄道車両用電線を手掛けています。これまで国内では、新幹線・在来線・地下鉄などの車両向

けに電線材料カンパニーの各種電線が採用され、国内市場のトップシェアを獲得してきました。また、

1980年代より、輸出車両向けの鉄道車両用電線の製造を開始し、台湾高速鉄道700T車両、英国高速鉄

道Class395車両などへの納入実績を徐々に積み上げてきました。

 今後の国内市場は、車両の老朽化に伴う代替需要が中心の成熟市場と予想されています。一方、海外

市場は大型鉄道プロジェクトや新興国市場へのインフラ整備などによる安定的な成長率が見込まれて

います。これを受け、電線材料カンパニーではグローバルな事業拡大を図るため、欧州・アジア地域を

ターゲットとした技術開発・生産体制の構築に着手しています。欧州・アジアではEN*1規格と呼ばれる、

火災安全性を重視した欧州統一規格が標準仕様として求められるため、EN規格に対応した各種電線を

ラインアップしました。また、中国・蘇州の Hitachi Cable (Suzhou) Co., Ltd. では2013年度より

再開された中国高速鉄道案件を中心に量産開始、2014年度にはEN規格品の生産立ち上げ・量産化を

進め、海外生産拠点としての基盤固めをしていきます。さらに現在、新規事業である鉄道車両向けハー

ネスの設計・加工事業の立ち上げを計画しており、事業領域の幅を広げる検討も行っています。

 2013年度の主要実績としては、英国大型鉄道プロジェクトIEP*2における試験車両向けの受注、中国

高速鉄道案件などの大口受注などがあげられます。

電動パワーステアリング用トルクセンサー、生産・売り上げ規模を拡大 鉄道車両用電線グローバルな事業展開を加速

電線材料セグメント

*1 EN: European Normの略。欧州統一規格。*2 IEP: Intercity Express Programmeの略。英国の都市間高速鉄道計画。

セグメント別事業概況 | トピックス

非接触式ボビン型トルクセンサーEPSとトルクセンサー

トルクセンサー(軸の赤い部分)

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55アニュアルレポート 201454 日立金属株式会社

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Page 13: 高級金属製品セグメント - Hitachi Metals各種圧延用ロール、射出成形機用部品、構造用セラミックス部品、鉄骨構造部品 高級金属製品セグメント

1. 難燃性ポリフレックス電線「MLFC®」2. 超音波診断装置用プローブケーブル3. 大型変圧器用巻線4. 電動パーキングブレーキ用ハーネス5. 電動パワーステアリング用トルクセンサー

新幹線用摩擦検知線入りトロリ線

平成26年度全国発明表彰「21世紀発明賞」受賞「高純度銅に匹敵するチタン系粒子を利用した銅合金(高機能純銅HiFC® )」

不純物を除去するアプローチとは全く逆の発想で、固溶硫黄を低減することで銅生地の高純度化を実現した銅合金です。高純度銅(純度99.9999%)並の軟化特性だけでなく、耐屈曲疲労特性など優れた特性を兼ね備えるとともに、経済的に優れた製造プロセスでの生産が可能です。自動車、産業インフラ、エレクトロニクス等の広範囲な分野への利用が期待されます。

セグメント別事業概況 | 主要製品紹介

難燃性ポリフレックス電線「MLFC®」耐熱性・難燃性・可とう性に優れた難燃性ポリフレックス電線「MLFC®」は、建物の配電盤内の絶縁電線やモーターの口出線をはじめ電気系統の配線に幅広く活用されています。

超音波診断装置用プローブケーブルエコー検査で用いる超音波診断装置の本体とプローブ(探触子)をつなぐケーブル。軽量で耐屈曲性や可とう性に優れ、かつ高い電気特性を兼ね備えており、取り扱いやすさと同時に画像の高精細化を実現し、医療機器の発展に貢献しています。

重電用巻線発電所の大型発電機や変電所の変圧器、鉄道車両用モーターなどで使用されます。求められる耐熱性や絶縁耐力に応じてガラスや耐熱紙などの絶縁材料を取り揃え、電力インフラ・交通インフラを支えています。

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鉄道車両用電線・ケーブル鉄道車両用電線・ケーブルは、新幹線をはじめ国内外の数多くの鉄道車両の運転室内配線、床下配線、車体間配線などに用いられます。このほか鉄道網向けでは、トロリ線や信号用ケーブルなどを提供し、鉄道の電力供給・情報伝送を支えています。

電線材料セグメント

「エネルギー」「情報」を伝えるための技術でグローバル市場へ

鉄道車両用電線・ケーブル

電線・ケーブルで培った技術を幅広く展開電線材料カンパニーは、「エネルギー」や「情報」の分野で時代が求める「伝える」技術を追求し続けてきました。その事業領域は、電線から自動車部品、情報デバイス、金属材料へと拡大。情報伝送や電力供給を担う電線・ケーブルをはじめ、各種機器の内部で電気信号や熱などを伝達するさまざまな材料および部品、各種情報通信ネットワーク機器などを提供しています。

Business Performance

56 57日立金属株式会社 アニュアルレポート 2014

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