16
危険物屋外貯蔵タンクの津波による 滑動対策工法に関する水理的検討 五洋建設(株) 髙橋研也・池野勝哉・ 宇野州彦・西畑 東電設計(株) 藤井直樹・保延宏行 (株)エスイー 竹家宏治

危険物屋外貯蔵こょうタ津波ゼベボ 滑動対策工法ゼ関ガボ水 …committees.jsce.or.jp/ocean/system/files/2019_S2_3_No4.pdf危険物屋外貯蔵こょうタ津波ゼベボ

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  • 危険物屋外貯蔵タンクの津波による滑動対策工法に関する水理的検討

    五洋建設(株) 髙橋研也・池野勝哉・

    宇野州彦・西畑 剛

    東電設計(株) 藤井直樹・保延宏行

    (株)エスイー 竹家宏治

  • 目次

    1. はじめに(1)研究の背景

    (2)研究の目的

    2. 水理模型実験(1)実験方法

    (2)通過波検定

    (3)無対策および対策工1の実験結果(4)対策工2の実験結果

    3. CFD解析(1)計算条件

    (2)計算結果

    4. 結論2

  • 1.(1)研究の背景 1/2 屋外貯蔵タンクの被害

    3

    津波以外(たとえば,1959年伊勢湾台風)においてもタンクの移動被害が発生

    2011年東北地方太平洋沖地震の際の津波による石油タンクの被害(畑山健,2014)

    石油タンク津波移動被害予測手法による事後予測結果と実際の移動被害を照合した結果、約76%で実際と予測が一致。

    不一致の要因は、タンクに作用する津波波力の過大評価にある。

    タンクの滑動防止対策 危険物施設の津波・浸水対策に関する調査検討報告書(消防庁,2009) 防油堤のかさ上げ及びそれに伴う防油堤の構造強化

    防油堤周囲への津波防護壁の設置

    タンク本体のアンカー留め又はその増強・増設(注)アンカーからタンクに作用する力に対するタンクの安全性、タンク底部鋼板に作用する揚圧力に対する隅角部付近の安全性等が確認される必要がある。

    500kL未満 約70%500~1,000kL 約20%⇒「小規模タンク」を対象

  • タンク本体

    タンク周囲の水平波圧

    水平波圧

    鉛直波圧(揚圧力)

    津波

    αρgηmax

    αρgη

    max

    αηm

    ax

    出典:危険物施設の津波・浸水対策に関する調査研究報告書(加筆)

    1.(1)研究の背景 2/2

    4

    タンクに作用する津波波圧

  • 1.(2)研究の目的

    タンク本体への津波対策として、アンカー留めによって容量1,000 ㎘級以下のタンクの「滑動」「漂流」を防止する工法について検討することを目的とする。

    ただし、タンクをアンカーで強く固定すると、隅角部の応力集中等の問題もあることから、この問題点に対する安全性についてFEMと模型実験(振動台)により検討する。このときの外力としては、地震動(慣性力)と津波を想定する。

    次に、石油タンク津波移動被害予測手法がタンクに作用する津波波力を過大に評価しているおそれがある問題点について、模型実験(水理)とCFDにより検討する。

    さらに、タンク底面と基礎上面間の止水効果の有無による違いについても把握し、今後の止水対策に対する基礎資料を得る。

    5

    池野ほか(2019)

    本研究

  • 1.(3)津波対策工立案

    6

    対策工1

    タンクとタンク基礎コンクリートをCFRP等、繊維シートと樹脂にて一体化

    対策工2

    タンク側板の中~下部にCFRP等、繊維シートと樹脂にてアイプレートを施工し、ワイヤー等により地盤に設けたアンカー(グラウンドアンカー等)に結ぶ

    CFRP

  • 2.(1)実験方法 1/3

    50m長水路タンク波圧実験

    ・50m長水路にタンク縮尺模型を設置し、津波を作用させて対策工の有効性を検証・タンク本体への影響を評価するための設計外力(津波波圧および津波荷重)を確認

    7

    津波発生装置

    模型設置

    津波造波

    水理模型実験概要(縦横比=2:1、単位:mm) ※長さ50m×幅0.6m×高さ1.2m

    u1

    H6

    152000

    2@1000

    410

    H2

    1500

    135

    2000

    H7

    4000

    4@1000

    1200

    1/10

    H3

    4000

    H8

    3000津波発生装置

    :電磁流速計 (計1本)

    310

    タンク模型設置位置

    H4

    排水・循環

    H5

    4000

    ポンプ

    135

    2000

    10000

    1500:容量式波高計(計8本)

    H1

    10000

  • 8

    2.(1)実験方法 2/3

    20kL級タンク実規模振動台実験(池野ほか、2019)

    ・ ボルト

    水理模型実験

    アクリル製剛体タンク模型

    (H400mm、φ250mm)

    波圧計φ10mm

    ・フルード数1.3以上を目標

    ・浮き上がりは生じないが、滑動する条件での実験

    ※波力は「屋外貯蔵タンクの津波被害シミュレーションツール」により試算

    ※ワイヤ1本当たりに作用させる緊張力は「0」および

    「津波水平力の10%」

    1/10

    ケース

    最大浸水深

    h max[cm]

    最大流速

    V max(F r =1.3)

    [m/s]

    浮き上がり安全率

    滑動安全率

    タンク設置時の津波の作用高さ

    1 11.1 1.4 2.75 1.14 タンク高さの半分2 17.0 1.7 1.80 0.34 タンク高さの3/43 22.2 1.9 1.38 0.12 タンク天端

    タンク模型設置位置

    における進行波条件

    貯液率60%を想定

    ノズルやアンカー,スラブ基礎などの付属物を除いた簡略構造

  • 揚圧力

    31 31津波津波

    :張力計(周囲4箇所)

    :波圧計

    (底面12箇所)

    31

    分力計

    60

    90

    底面フリー

    100

    陸側

    津波

    陸側

    60

    31

    :張力計(設置角60°)

    固定

    60 ‹

    10

    断面図

    海側

    31

    :張力計(設置角80°)

    31

    津波

    底面図

    250

    60

    90

    40:波圧計

    (底面12箇所)

    60 ‹

    250

    断面図

    100

    200

    31

    海側

    :3分力計(1個)

    31

    ワイヤー模型

    200

    31

    :波圧計(側面12箇所)

    5010

    0

    31

    400

    400

    250

    陸側

    3131

    60

    60

    水平波力

    津波

    10

    31

    海側

    60 ‹

    5010

    :波圧計(側面12箇所)

    31

    50

    底面図

    400

    断面図

    60

    3131

    底面離隔=0.1, 0.2, 0.3 cm

    津波

    100

    :波圧計(側面24箇所)

    底面図

    底面離隔=0.0 cm(底面固定)

    ・津波規模を変えてタンクに作用 ⇒ 壁面波圧・波力、ワイヤ張力を把握(1,000Hzで計測)

    ・発泡ポリエチレンシートにより静止摩擦係数μ = 0.4を再現

    ・タンク底面に離隔を有する場合と離隔が無い場合を設定し、タンク基礎へ止水対策を施した場合(対策工1)の効果も検証 9

    対策工1 対策工2 (単位:mm)

    2.(1)実験方法 3/3無対策

  • 0

    1

    2

    3

    4

    5

    6

    0

    50

    100

    150

    200

    250

    300

    0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

    フル

    ード数

    F r

    水平流

    速V

    (cm

    /s)

    時間 (s)

    u1 u1目標 フルード数 フルード数目標

    10

    2.(2)通過波検定

    タンク模型を設置しない場合(進行波津波高22.2cm)

    0102030405060

    0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

    津波水

    位(c

    m)

    時間 (s)

    H2 H3 H4 H5H6 H7 H8 H6目標

    H510

    15

    10海側

    5001500

    u1

    H8250

    1/10

    1500

    310

    :容量式波高計(計8本)

    :電磁流速計 (計1本)

    陸側

    410

    タンク模型40

    0 H6

    1000

    H4H7 津波

    海底勾配模型

    ηmax=22.2cm

    Vmax=190cm/sFr=1.3

  • 11

    2.(3)無対策および対策工1の実験結果 1/2

    対策工1(進行波津波高22.2cm)

    ・津波入射波向に対する角度が大きくなるにつれて波圧が小さくなるという既往の知見と整合

    :波圧計(片面24箇所)

    4010

    400 津波

    海側陸側

    250

    100

    5010

    050

    50 底面に離隔を設定(0mm, 1mm, 2mm, 3mm)

    θ = 0°θ = 180° 底面離隔0mm

  • 12

    2.(3)無対策および対策工1の実験結果 2/2

    0.0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1.0

    1.2

    1.4

    0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0無次

    元最

    大同時

    揚圧力

    p max

    /rgh

    max

    タンク前壁からの無次元距離x/D

    hmax = 12.9cmd=0.1cmd=0.2cmd=0.3cm消防庁(2009)

    0.0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1.0

    1.2

    1.4

    0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0無次

    元最

    大同時

    揚圧力

    p max

    /rgh

    max

    タンク前壁からの無次元距離x/D

    hmax = 19.9cmd=0.1cmd=0.2cmd=0.3cm消防庁(2009)

    y = 1.1546x + 0.2484R² = 0.9994

    0.0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1.0

    1.2

    1.4

    0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4

    対策

    工1の

    滑動

    安全

    率無対策の場合の滑動安全率

    0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    2.5

    0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

    無次

    元高

    さz/h m

    ax

    無次元最大同時波圧pmax/rghmax

    hmax = 19.9cm, θ = 0°d=0.0cmd=0.1cmd=0.2cmd=0.3cm消防庁(2009)

    0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    2.5

    0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

    無次

    元高

    さz/h m

    ax

    無次元最大同時波圧pmax/rghmax

    hmax = 26.5cm, θ = 0°d=0.0cmd=0.1cmd=0.2cmd=0.3cm消防庁(2009)

    0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    2.5

    0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

    無次

    元高

    さz/h

    max

    無次元最大同時波圧pmax/rghmax

    hmax = 19.9cm, θ = 60°d=0.0cmd=0.1cmd=0.2cmd=0.3cm消防庁(2009)

    0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    2.5

    0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

    無次

    元高

    さz/h

    max

    無次元最大同時波圧pmax/rghmax

    hmax = 26.5cm, θ = 60°d=0.0cmd=0.1cmd=0.2cmd=0.3cm消防庁(2009)

    ・側面波圧および底面波圧ともに底面離隔dが狭いほど大きくなる傾向であったが,その違いは明瞭でない

    ・タンク側面~背面波圧および揚圧力を過大に評価しているおそれ

    ・対策工1の止水効果により滑動安全率が0.24以上向上

    無次元最大同時波圧分布(側面波圧)

    無次元最大同時波圧分布(底面波圧)

    対策工1による滑動安全率の評価結果

  • 13

    2.(4)対策工2の実験結果

    対策工2(進行波津波高22.2cm)

    θ = 0°θ = 180°・ワイヤー設置角が緩いほど,初期張力が大きいほどタンクの水平変位は小さくなり,衝撃的な張力も緩和

    ・海側ワイヤー1本当たりに水平波力Fxと揚圧力Fzとの合成波力の半分程度の張力がほぼ均等に作用

    ・陸側ワイヤーへは張力がほとんど作用しない

    ・水平波力と揚圧力からワイヤーおよびグラウンドアンカー等の設計が可能に

    :波圧計(片面12箇所)

    10

    発泡ポリエチレンシート

    津波

    :張力計(周囲4箇所)

    海側陸側90

    ワイヤ模型

    固定

    200

    5040

    050

    250

    -2

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    0 10 20 30 40 50 60

    水路

    長方

    向の水

    平変

    位(m

    m)

    時間 (s)

    設置角60 °,初期張力0.00 N 設置角60 °,初期張力7.36 N

    設置角80 °,初期張力0.00 N 設置角80 °,初期張力7.36 N

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    0 10 20 30 40 50 60

    波力

    ,張

    力(N

    )

    時間 (s)

    海側張力(初期張力0.00 N) 海側張力(初期張力7.36 N)

    陸側張力(初期張力0.00 N) 陸側張力(初期張力7.36 N)

    合成波力/2

    タンク模型の水平変位時系列 ワイヤー張力と合成波力/2

  • 0

    20

    40

    60

    80

    100

    120

    140

    160

    0 10 20 30 40 50 60

    水平

    波力

    (N)

    時間 (s)

    実験結果(ケース1) 実験結果(ケース2) 実験結果(ケース3)計算結果(ケース1) 計算結果(ケース2) 計算結果(ケース3)・円筒タンクであるため、非構造格子を扱える3次

    元数値流体力学ツールOpenFOAMを用い、不混和流体の非圧縮性・等温二相流用ソルバであるinterFoamを使用

    ・造波境界に計測水位および水平流速を入力

    ・陸側端を開境界、格子間隔1~2cm、111万セル

    ・波力および波圧が概ね再現され、対策工の設計に資するための基礎資料として活用

    タンク周囲の水面形

    14

    タンク前面 タンク背面

    3.CFD解析(無対策、進行波津波高22.2cm)1/2

  • 15

    3.CFD解析(無対策、進行波津波高22.2cm)2/2

    タンク底面 view1 タンク底面 view2 タンク周囲の水面形

    タンク底面波圧(揚圧力)分布タンク底面波圧(揚圧力)分布

  • 4.結論

    16

    小規模タンク本体への津波対策として,CFRPによる滑動・漂流防止対策工を提案した.

    提案した対策工について津波外力に関する水理模型実験とCFD解析をおこないその有用性を示した.

    本実験条件の範囲内では,対策工1の止水効果により滑動安全率が0.24以上向上することが分かった.

    対策工2の海側ワイヤー1本当たりに水平波力と揚圧力の合成波力の半分の張力が均等に作用し,陸側ワイヤーへはほとんど作用しないことを確認した.

    【「消防防災科学技術研究推進制度」により実施されました。】