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臨床倫理ベーシック臨床倫理ベーシック
2007 summer2007 summer
担当担当 清水清水 哲郎哲郎東京大学大学院人文社会系研究科次世代人文学開発センター東京大学大学院人文社会系研究科次世代人文学開発センター
プロジェクト研究プロジェクト研究《《医療システムと倫理医療システムと倫理》》
プログラム(午前中)プログラム(午前中)
臨床倫理検討シート臨床倫理検討シート
–– 11 使い方使い方
–– 22 倫理にどう関わるか:倫理原則倫理にどう関わるか:倫理原則
–– 33 意思決定のプロセス意思決定のプロセス
–– 44 倫理的問題とは倫理的問題とは
–– 55 倫理的問題の検討倫理的問題の検討
11 臨床倫理検討シート臨床倫理検討シートの使い方の使い方
22 臨床倫理検討シート臨床倫理検討シートーー倫理にどう関わるか:倫理にどう関わるか:
倫理原則倫理原則
臨床倫理検討シートは、ヘルスケアを支える臨床倫理検討シートは、ヘルスケアを支える倫理原則を表現している。倫理原則を表現している。
検討シートを使いながら、事例を考えていくと、検討シートを使いながら、事例を考えていくと、倫理原則に則って事柄を見、検討するように倫理原則に則って事柄を見、検討するように仕向けられる。仕向けられる。
倫理原則倫理原則と検討シートと検討シート
臨床の臨床の倫理原則倫理原則=社会化されたケアに=社会化されたケアに携わる者の行動原則携わる者の行動原則
P1: P1: 相手を相手を人間として人間として 尊重する尊重する–– 人間:理性的・相互に独立(自律)人間:理性的・相互に独立(自律)
&非理性的(情・気持)・相互に支え合う&非理性的(情・気持)・相互に支え合う→→ コミュニケーション/意思・気持・存在を尊重するコミュニケーション/意思・気持・存在を尊重する
P2: P2: 相手に相手にできる限り大きな益をできる限り大きな益を もたらすことを目もたらすことを目指す。指す。–– 与益&不加害与益&不加害 相対的に評価する相対的に評価する
P3: P3: ((社会的視点社会的視点))正義正義 をを保つ保つ–– 医療(ヘルスケア)活動を、社会全体の中においてみる医療(ヘルスケア)活動を、社会全体の中においてみる–– 社会は不平等・不公平を抑える(消極的・積極的)社会は不平等・不公平を抑える(消極的・積極的)
【【参考参考】】流布している流布している倫理原則倫理原則ののセットセット
–– 相手の自律を尊重相手の自律を尊重するする (respect for autonomy)(respect for autonomy)–– 相手の利益になるように相手の利益になるように (beneficence)(beneficence)–– 相手相手の害にならないようにの害にならないように(non(non--maleficencemaleficence))–– 正義正義 ・・公平を保公平を保つつ(justice / equality)(justice / equality)
P1P1~~P3P3にほぼ対応している。にほぼ対応している。
P1P1:人間として尊重する:人間として尊重する が、自律尊重となっている。背景にあが、自律尊重となっている。背景にあ
る人間観:理性的&相互独立に傾いているる人間観:理性的&相互独立に傾いている
看護系からの批判:看護系からの批判: caringcaringを表現していないを表現していない は、自律だけをは、自律だけを前面に出したことに関わる・・・前面に出したことに関わる・・・caringcaringは親密な間柄の支え合いは親密な間柄の支え合い
を目指すを目指す
倫理原則をどう理解するか倫理原則をどう理解するか
倫理原則は、倫理原則は、《《社会的活動としてケアを行う社会的活動としてケアを行う》》ということということを表現している。医療従事者の自己理解。を表現している。医療従事者の自己理解。
–– 共通の自己理解をもつことが、協働・共同行為のために必要共通の自己理解をもつことが、協働・共同行為のために必要
倫理原則は、医療者を縛るものではなく、医療者のケ倫理原則は、医療者を縛るものではなく、医療者のケアに臨む姿勢・行動原則を表現するものアに臨む姿勢・行動原則を表現するもの →→
倫理原則を事例に適用して、判決を言い渡すような使倫理原則を事例に適用して、判決を言い渡すような使い方はまずいい方はまずい
むしろ、倫理原則のセットが示す精神を備えること/自むしろ、倫理原則のセットが示す精神を備えること/自らの姿勢として、現場に臨むこと。らの姿勢として、現場に臨むこと。
家族と患者家族と患者
家族は決定プロセスの当事者家族は決定プロセスの当事者
欧米から輸入された倫理においては家族の位置づけが不欧米から輸入された倫理においては家族の位置づけが不明確明確
なぜなら、家族は・・・なぜなら、家族は・・・
–– 患者が罹患したことの影響を受けている(疾病によっ患者が罹患したことの影響を受けている(疾病によっては、人生全体に響く):時にケアの対象とする必要ては、人生全体に響く):時にケアの対象とする必要があるがある
–– 患者の療養生活を支えるケアの担い手:意思決定に患者の療養生活を支えるケアの担い手:意思決定に参加する必要がある参加する必要がある
–– 患者の人生観・価値観を知っており、その意思を代患者の人生観・価値観を知っており、その意思を代行する第一候補行する第一候補
33 臨床倫理検討シート臨床倫理検討シートとと
意思決定のプロセス意思決定のプロセス
意思決定のプロセス意思決定のプロセス 説明説明ーー同意モデル同意モデル
医療者 患者説 明
同 意
裁量権
自己決定権
専門的知識 価値観・人生計画・選好
Informed consent
医療チーム(医師・ナース・MSW)
患者|
家族
説 明
説 明
合 意
意思決定のプロセス意思決定のプロセス 情報共有-合意モデル情報共有-合意モデル
最善についての一般的判断
人生計画・価値観・選好の理由
最善についての個別化した判断
Informed consent
biological biographical
informed willの形成
P1P1::患者(家族)とコミュニケーションを通して合意患者(家族)とコミュニケーションを通して合意にいたる道を考える(共同の決定)にいたる道を考える(共同の決定)
–– 患者・家族の患者・家族のiinformed will nformed will 形成を援助する形成を援助する
–– 相互的な対話を通して(相手を納得させるという方向だ相互的な対話を通して(相手を納得させるという方向だけでなく、自分が納得する可能性を認めつつ)けでなく、自分が納得する可能性を認めつつ)
PP22::患者(家族)にとって最大の利益は何かを考患者(家族)にとって最大の利益は何かを考えるえる
–– 患者(家族)の利益:一般論患者(家族)の利益:一般論
–– 患者(家族)の利益:個別化した判断患者(家族)の利益:個別化した判断
P3P3:社会的視点からのチェック:社会的視点からのチェック
意思決定のプロセス:情報共有-合意モデル
医療チーム(医師・ナース・MSW)
患者|
家族
説 明
説 明
合 意
情報共有-合意モデル情報共有-合意モデル とと 検討シート検討シート
最善についての一般的判断: P2+P3
人生計画・価値観・選好の理由:P1+P2
最善についての個別化した判断:P2
Informed consent
1A-1,2 1B-1,2,3
informed willの形成:P1
シート2DM&3
44 倫理的な問題とは倫理的な問題とは
ケア活動の倫理面とはケア活動の倫理面とは
問題が起きた時に活動の倫理的側面が表面化する問題が起きた時に活動の倫理的側面が表面化するしかし、ケア活動には常に倫理的側面が伴っている。しかし、ケア活動には常に倫理的側面が伴っている。
–– 「滅菌ガーゼは素手で扱ってはいけない」「滅菌ガーゼは素手で扱ってはいけない」–– なぜ?なぜ?
感染のメカニズムについての科学的説明感染のメカニズムについての科学的説明患者に害を与えてはならない患者に害を与えてはならない という原則という原則
–– 「包帯交換をする前に患者さんに声をかけましょう」「包帯交換をする前に患者さんに声をかけましょう」–– なぜ?なぜ?
コミュニケーションの意味・効果についての説明コミュニケーションの意味・効果についての説明相手を人間として尊重する相手を人間として尊重する という原則という原則
個別のケア活動と個別のケア活動と倫理倫理原則の関係原則の関係
原則:原則:患者に害を与えてはならない患者に害を与えてはならない
状況認識(知識):状況認識(知識):滅菌ガーゼを素手で扱うと、滅菌ガーゼを素手で扱うと、患部に感染が起きるおそれがある患部に感染が起きるおそれがある
→→行動・細則:行動・細則: 滅菌ガーゼは素手で扱わない滅菌ガーゼは素手で扱わない
–– 行為は一般に行為は一般に
行為者の姿勢+状況認識行為者の姿勢+状況認識 →→ 行為行為
という構造になっているという構造になっている
臨床の臨床の倫理原則倫理原則=社会化されたケアに=社会化されたケアに携わる者の行動原則携わる者の行動原則
P1: P1: 相手を相手を人間として人間として 尊重する尊重する–– 人間:理性的・相互に独立(自律)人間:理性的・相互に独立(自律)
&非理性的(情・気持)・相互に支え合う&非理性的(情・気持)・相互に支え合う→→ コミュニケーション/意思・気持・存在を尊重するコミュニケーション/意思・気持・存在を尊重する
P2: P2: 相手に相手にできる限り大きな益をできる限り大きな益を もたらすことを目もたらすことを目指す。指す。–– 与益&不加害与益&不加害 相対的に評価する相対的に評価する
P3: P3: ((社会的視点社会的視点))正義正義 をを保つ保つ–– 医療(ヘルスケア)活動を、社会全体の中においてみる医療(ヘルスケア)活動を、社会全体の中においてみる–– 社会は不平等・不公平を抑える(消極的・積極的)社会は不平等・不公平を抑える(消極的・積極的)
行為の構造と倫理行為の構造と倫理的問題1的問題1
行為の構造行為の構造原則:原則:患者に害を与えてはならない患者に害を与えてはならない状況認識(知識):状況認識(知識):滅菌ガーゼを素手で扱うと、患部に感染が起きるおそ滅菌ガーゼを素手で扱うと、患部に感染が起きるおそれがあるれがある行動:行動: 滅菌ガーゼは素手で扱わない滅菌ガーゼは素手で扱わない
倫理が問題になるのは、結果としての倫理が問題になるのは、結果としての行動行動がまずいと評価さがまずいと評価された場合に、一般にその原因が、れた場合に、一般にその原因が、状況認識状況認識のまずさではなく、のまずさではなく、原則(行為者の姿勢)原則(行為者の姿勢)のまずさに求められる場合のまずさに求められる場合
倫理的倫理的なな問題問題 11–– 行動原則行動原則((行為者の姿勢)がまずい行為者の姿勢)がまずい:: 倫理的非難倫理的非難
–– では、状況認識が間違っているという場合は、非難されないか?では、状況認識が間違っているという場合は、非難されないか?「知らなかった」のなら仕方ないとなる場合「知らなかった」のなら仕方ないとなる場合「知らなかった」こと自体が、「害を及ぼさない」という行動原則へ「知らなかった」こと自体が、「害を及ぼさない」という行動原則への顧慮のなさによるとして、倫理的な非難を受ける場合の顧慮のなさによるとして、倫理的な非難を受ける場合 (医療の(医療の専門家)専門家)
行動原則に対応する知識が複層的である場合行動原則に対応する知識が複層的である場合
–– 相手にできるだけ大きな益となるようにする相手にできるだけ大きな益となるようにする
–– AAさんの喉頭癌に対してどうするのが一番益になるか?さんの喉頭癌に対してどうするのが一番益になるか?
手術をすれば完治する可能性が高い。手術をすれば完治する可能性が高い。 が、永久気管孔とが、永久気管孔となり、声を失う→なり、声を失う→AAさんは大変高齢なので、今後の日常生活さんは大変高齢なので、今後の日常生活に対するダメージは大きいに対するダメージは大きい
手術をしなければ(放射線だけはする)しばらくは現状のま手術をしなければ(放射線だけはする)しばらくは現状のままの生活が続けられる。が、やがて、癌が進行して、つらいまの生活が続けられる。が、やがて、癌が進行して、つらい症状がおき(緩和的対応でどこまで和らげられるか)、手術症状がおき(緩和的対応でどこまで和らげられるか)、手術をした場合よりも余命は短くなるかもしれない(高齢なので、をした場合よりも余命は短くなるかもしれない(高齢なので、手術をしたほうが長く生きられるとも言い切れないが)手術をしたほうが長く生きられるとも言い切れないが)
–– 医療者としては、どうするのがベストと考えて、患者・家族医療者としては、どうするのがベストと考えて、患者・家族と話し合うか?と話し合うか?
原則は分かっている原則は分かっている ―― それを活かす知識(何がよいか)をそれを活かす知識(何がよいか)をもつ努力をしないと、倫理的に適切とはいえない。もつ努力をしないと、倫理的に適切とはいえない。
行為の構造と倫理行為の構造と倫理的問題2的問題2
複数の原則を同時に満たすことが難しい場合複数の原則を同時に満たすことが難しい場合(ディレンマ)(ディレンマ)–– 相手にできるだけ大きな益となるようにする相手にできるだけ大きな益となるようにする
BBさんは末期がんの状態であり、治癒ないし支持目的であさんは末期がんの状態であり、治癒ないし支持目的であれ、緩和目的であれ、有効と思われる化学療法等の選択れ、緩和目的であれ、有効と思われる化学療法等の選択肢はない肢はないしたがって、緩和ケア中心の方針をたてるのがよいしたがって、緩和ケア中心の方針をたてるのがよい
–– 相手を人間として尊重する→相手の意思、気持ち、存在相手を人間として尊重する→相手の意思、気持ち、存在を尊重するを尊重する
BBさんはまだ試してない抗がん剤を使ってほしいと、強く希さんはまだ試してない抗がん剤を使ってほしいと、強く希望している望しているBBさんの意思を尊重するなら、さんの意思を尊重するなら、BBさんの意向に従うべきではさんの意向に従うべきではないか?ないか?
このような場合にどのように考えたらよいかは、複数の原則このような場合にどのように考えたらよいかは、複数の原則と状況把握とをどう組み合わせるかという問題であって、倫と状況把握とをどう組み合わせるかという問題であって、倫理的問題(いくら医学的知識があっても解決しない)理的問題(いくら医学的知識があっても解決しない)
行為の構造と倫理行為の構造と倫理的問題3的問題3
55 倫理的な問題の検討倫理的な問題の検討
ディレンマディレンマ
ディレンマの構造ディレンマの構造
–– AAを選ぶか、を選ぶか、BBを選ぶかしか道はないを選ぶかしか道はない
–– AAを選ぶとを選ぶとCCになり、になり、BBを選ぶとを選ぶとDDになるになる
–– CCももDDもよくないもよくない
倫理的問題2は倫理的問題2は諸価値諸価値間間の選択(の選択(例:例:延命か延命かQOLQOLか)か)に関わるに関わる
倫理的問題3は倫理的問題3は原則同士の衝突(医学的に最善だ原則同士の衝突(医学的に最善だが患者が拒否)が患者が拒否)
問題の抽出をめぐって問題の抽出をめぐって
22--11 個別化した最善についての判断個別化した最善についての判断
–– 医療者の視点からの一定の判断が医療者の視点からの一定の判断ができているできている →→ 諸価値の間諸価値の間orP3orP3が関係するディレンマは起きてが関係するディレンマは起きて
いないか、すでに解決されている。いないか、すでに解決されている。
できないできないOROR医療者間で意見の相違がある医療者間で意見の相違がある →諸価値の間のディ→諸価値の間のディ
レンマが起きているレンマが起きている
22--22 当事者間の一致・不一致当事者間の一致・不一致
–– 何らか不一致が何らか不一致があるある →→ 22--11に問題あるに問題ある andand//or or 原則間の衝突というタイプの原則間の衝突というタイプの
ディレンマディレンマ
ないない →→ 原則間のディレンマは起きていない原則間のディレンマは起きていない
問題の抽出をめぐって問題の抽出をめぐって
P2P2内部の問題:多元的諸価値間でどう総合評価す内部の問題:多元的諸価値間でどう総合評価す
るかるか
P1P1--P2P2間:間: 医療者の最善についての判断医療者の最善についての判断 vsvs 患者患者の意思の意思and/and/oror家族の意思家族の意思
P1P1内部の問題:人間が複層的存在であること、内部の問題:人間が複層的存在であること、and/or and/or 患者と家族という複数の相手がいることに患者と家族という複数の相手がいることに
由来する:由来する:
–– 理性的な患者の意思を尊重するか、現実の患者の気持理性的な患者の意思を尊重するか、現実の患者の気持ちを尊重するかちを尊重するか
–– 患者を尊重することと家族を尊重することとが両立しない患者を尊重することと家族を尊重することとが両立しない
問題の抽出をめぐって問題の抽出をめぐって
P3P3内部の問題:全ての人にとって善いように/誰一内部の問題:全ての人にとって善いように/誰一
人として切り捨てられないように人として切り捨てられないように
–– 個人の自由を守る個人の自由を守る vsvs 個人の個人のwell beingwell beingを守るを守る
P1P1--P3P3間:間: 患者の意思患者の意思and/and/oror家族の意思家族の意思 vsvs 社会社会
的視点からの適切さ的視点からの適切さ
P2P2--P3P3間:間: 当の患者にとっては最善当の患者にとっては最善 vsvs 社会的視社会的視
点からの適切さ点からの適切さ
問題の検討をめぐって問題の検討をめぐって
22--33、、22‐‐44の検討に際して、シートの検討に際して、シート00~~22の前半の前半
までをよく検討するまでをよく検討する
–– 経過経過の把握の把握(状況の理解(状況の理解のの共有)からはじめる共有)からはじめる
–– 事実の報告と、記録者の評価や意見とを区別す事実の報告と、記録者の評価や意見とを区別するる
–– 治療や看護の活動については、〈活動の意図〉、治療や看護の活動については、〈活動の意図〉、〈選択の過程〉を明確にする〈選択の過程〉を明確にする
–– 患者・家族の発言や振舞いについては、事実と患者・家族の発言や振舞いについては、事実と医療医療者としての理解を区別者としての理解を区別するする
問題の検討をめぐって問題の検討をめぐって
–– カンファレンスで、複数の職種・専門の眼からみカンファレンスで、複数の職種・専門の眼からみた理解を出し合い、記録を充実させるた理解を出し合い、記録を充実させる
–– 倫理的な問題の根は、医療者たちが気がつかな倫理的な問題の根は、医療者たちが気がつかない早い時期に発している可能性がある。い早い時期に発している可能性がある。
–– 状況をよく把握することが、問題解決にとって必状況をよく把握することが、問題解決にとって必要なことの基礎であり、もっとも大事な部分である。要なことの基礎であり、もっとも大事な部分である。
問題の検討:問題の検討:P2P2内部の問題内部の問題
どの選択肢が最善か?→どの選択肢が最善か?→ ProportionalityProportionality論論–– すべての選択肢について、メリット・デメリット(リスク)を枚すべての選択肢について、メリット・デメリット(リスク)を枚挙して、どれが相対的に良いかを比較する挙して、どれが相対的に良いかを比較する
ある選択肢が非常に悪い結果を伴っているとしても、それだけである選択肢が非常に悪い結果を伴っているとしても、それだけで駄目とはならない。あくまでも他との比較によって決まる。駄目とはならない。あくまでも他との比較によって決まる。
–– 是非達成したいターゲットが決まっているときには、それ是非達成したいターゲットが決まっているときには、それを達成できる選択肢のうちで、デメリットが一番少ないもを達成できる選択肢のうちで、デメリットが一番少ないものを選ぶのを選ぶ
–– 一長一短で一般的な優劣が決まらない場合、患者の価一長一短で一般的な優劣が決まらない場合、患者の価値観が決め手となる。値観が決め手となる。
問題の検討:問題の検討:P1P1--P2P2間の問題間の問題
患者の最善(医療者の判断)患者の最善(医療者の判断) vsvs 患者の意思患者の意思–– 患者の意思を理解しようと努める:患者の意思を理解しようと努める:
患者の意思←患者の意思← 価値観・姿勢+状況把握価値観・姿勢+状況把握
状況把握に問題があるか?状況把握に問題があるか?–– 例:よくなると誤解しているので、退院したくないと言っている例:よくなると誤解しているので、退院したくないと言っている
生きる姿勢・価値観が変容することを期待するのか?生きる姿勢・価値観が変容することを期待するのか?–– 例:自力で歩けない人生など生きるに値しないと思っている例:自力で歩けない人生など生きるに値しないと思っているので、手術を拒否しているので、手術を拒否している
[[生きる姿勢+状況把握→意思生きる姿勢+状況把握→意思]]という構造がくずれてという構造がくずれているいる -例:考えようとしない/なげやりになっている-例:考えようとしない/なげやりになっている
–– これらを検討する過程で、医療者のほうが患者これらを検討する過程で、医療者のほうが患者の最善についての判断を変えることになるかもしの最善についての判断を変えることになるかもしれないと考えつつ検討れないと考えつつ検討
問題の検討:問題の検討:P1P1内部の問題内部の問題
理性的な患者の意思を尊重するか、現実の患者の理性的な患者の意思を尊重するか、現実の患者の気持ちを尊重するか気持ちを尊重するか
–– 元気なときに患者は「・・・」と言っていた元気なときに患者は「・・・」と言っていた
–– 現在の患者は対応力がなくなっているが、気持ちはあり、現在の患者は対応力がなくなっているが、気持ちはあり、以前の「・・・」が当て嵌まらないように思われる以前の「・・・」が当て嵌まらないように思われる
患者を尊重することと家族を尊重することとが両立患者を尊重することと家族を尊重することとが両立しないしない
家族-患者間では家族-患者間では《《身内の倫理身内の倫理》》 // 医療者-患医療者-患者間では者間では《《互いに独立した人同士の倫理互いに独立した人同士の倫理》》–– 家族の患者に対するパターナリズム家族の患者に対するパターナリズム どこまで許容できるどこまで許容できるか?→か?→ 医療者としてはあくまでも患者の意思尊重が必要医療者としてはあくまでも患者の意思尊重が必要(立場の違いを分ってもらえるように)(立場の違いを分ってもらえるように)
–– 家族の都合で方針選択をしようとする場合:家族の都合で方針選択をしようとする場合: 患者の意思へ患者の意思への配慮を促すの配慮を促す
–– 患者自身が家族内倫理に則った方針選択をよしとしている患者自身が家族内倫理に則った方針選択をよしとしている場合:場合: それはそれでそれはそれで良し良しとする場合-患者の主体性を促すとする場合-患者の主体性を促す場合場合
–– 患者を保護しようとして、抱え込む/患者の苦悩に対する閾患者を保護しようとして、抱え込む/患者の苦悩に対する閾値が低い/患者の克服する力を過小評価する・・・値が低い/患者の克服する力を過小評価する・・・
問題の検討:問題の検討:P1P1内部の問題(続)内部の問題(続)
問題の検討:問題の検討:P3P3--P1P1・・22無益性無益性(futility)(futility)の問題の問題
–– (例)(例)P1P1--P2P2の検討を通して、医学的には益がないと思わの検討を通して、医学的には益がないと思わ
れる治療(抗がん剤投与)をすることになった。れる治療(抗がん剤投与)をすることになった。
–– 抗がん剤投与は、医療保険から支払いがされるので、皆抗がん剤投与は、医療保険から支払いがされるので、皆の医療費負担増となる。益のないことのために皆の負担の医療費負担増となる。益のないことのために皆の負担を増やすことは、社会的視点からいって不適切なのでを増やすことは、社会的視点からいって不適切なのでは?(米国の保険会社は支払いを拒否するはず)は?(米国の保険会社は支払いを拒否するはず)
–– 《《益益》》ということをどのような範囲で評価するのが適切か?ということをどのような範囲で評価するのが適切か?医学的妥当性に限定して評価すれば無益であるが、患者医学的妥当性に限定して評価すれば無益であるが、患者の人生全体から見た益に注目したら有益と言える。とはの人生全体から見た益に注目したら有益と言える。とはいえ、現在公的に認められているのは、前者の範囲だけいえ、現在公的に認められているのは、前者の範囲だけではないか。ではないか。
P3P3が絡む問題は沢山あるが、ここでは一つだけ例示した。が絡む問題は沢山あるが、ここでは一つだけ例示した。
問題の検討:ぎりぎりまで調整問題の検討:ぎりぎりまで調整
ディレンマは、「あちら立てれば、こちらが立たず」状ディレンマは、「あちら立てれば、こちらが立たず」状態で、「どちらを立てるか」という優先順位をつける態で、「どちらを立てるか」という優先順位をつける方向に走り易いが、ぎりぎりまで「両立させる」努力方向に走り易いが、ぎりぎりまで「両立させる」努力をする。(をする。(P3P3が絡むと、これが優先的になることが多が絡むと、これが優先的になることが多
いが、それでも両立の努力を!)いが、それでも両立の努力を!)
当事者同士でどうしても合意に達し得ない時には、当事者同士でどうしても合意に達し得ない時には、「どちらが優先するか」の問題とならざるを得ない:「どちらが優先するか」の問題とならざるを得ない:
《《互いに支え合う、親密な人間の間の倫理互いに支え合う、親密な人間の間の倫理》》からから
《《互いに独立した、異なる人間の間の倫理互いに独立した、異なる人間の間の倫理》》へへ
問題の検討:ぎりぎりまで調整問題の検討:ぎりぎりまで調整
《《互いに支え合う、親密な人間の間の倫理互いに支え合う、親密な人間の間の倫理》》–– ケアし合う間柄/相手と私は同じ、一緒だという意識/相ケアし合う間柄/相手と私は同じ、一緒だという意識/相手のために無償で自分を犠牲にすることもある手のために無償で自分を犠牲にすることもある
–– 支え合う/相手の善を考える支え合う/相手の善を考える →→ おせっかい?おせっかい?
–– この方向に突き詰めると「あうんの呼吸で治療を中止しこの方向に突き詰めると「あうんの呼吸で治療を中止した」というようなことも是認され得るた」というようなことも是認され得る
《《互いに独立した、異なる人間の間の倫理互いに独立した、異なる人間の間の倫理》》–– 相手と私は異なる/平和的共存をめざす/自由相手と私は異なる/平和的共存をめざす/自由
–– フェアな競争/不干渉/フェアな競争/不干渉/ →→ 冷淡?冷淡?
–– 「本人の承諾なしには治療はできない」「本人の承諾なしには治療はできない」
社会の仕組みになった医療には両面ある/状況に社会の仕組みになった医療には両面ある/状況に応じてどちらかに傾く応じてどちらかに傾く
まとめ
人間人間関係は関係は《《同&異同&異》》としてとして複層的複層的なものなもの
–– 相手の最善を考える&相手の意思を尊重する相手の最善を考える&相手の意思を尊重する
–– コミュニケーションは、共同化のプロセスであるコミュニケーションは、共同化のプロセスである
人間は人間は《《理性的で自律している理性的で自律している》》&&《《非理性的な要素もあり、非理性的な要素もあり、支え合わねば生きられない支え合わねば生きられない》》という複層的な存在という複層的な存在
–– 相手の意思を尊重する&医療者としての自らの判断を保相手の意思を尊重する&医療者としての自らの判断を保つつ →→ 共同で検討、合意をめざす共同で検討、合意をめざす
–– ありのままの相手を受容し、寄り添う者となるありのままの相手を受容し、寄り添う者となる
臨床倫理検討システム開発中臨床倫理検討システム開発中http://www.sal.tohoku.ac.jp/phil/CESDP/indexhttp://www.sal.tohoku.ac.jp/phil/CESDP/index--j.htmlj.html