90
農業の経営環境と 法人化・6次産業化 名古屋大学名誉教授 竹谷裕之 2012.5.27

農業の経営環境と 法人化・6次産業化 · 日本・米国・euの国内支持の水準 0 20000 40000 60000 80000 100000 日本 米国 eu 国 内 支 持 0 20 40 60 80

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農業の経営環境と法人化・6次産業化

名古屋大学名誉教授

竹谷裕之

2012.5.27

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農業の経営環境

• 外部条件:自然的・経済的・社会的条件(立地、交通、市場:土地・労働・資材・商品消費、政策、地域イメージ、食育、・・・)

• 内部条件:個人的・集団的・地域的条件(資源保有・保全、労働力・経験・能力、資金調達力、・・・)

• 経営発展計画:個別・集団・地域的計画

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農産物価格指数と農業資材価格指数の推移

95.6

96.9

97

96.7

96.195.5

97.7

99.799.4

97.697.497.8

96.9

97.698.9

100102.2

105.6

113.6

111.6

118.4

123.5

116

124.1

118.3

114.7114.1

107.2

114.8

106.6

100.3100.1

97.3

104.5 106

100

102.9

97.6

97.7

95.7

80

90

100

110

120

1301990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

価格

指数

農産物 農業資材

2005年=100

WTO発足小泉構造改革

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日本の農業粗生産額と生産農業所得(億円)

90514

92946

101140

103476105390

102625

107154106725

110027

117171116295

114232

105814 105165

110526

114927 114869112418

104472

113103

104498103166

99113 992649363891925

88813 89297

8856587136

8511983322 82585

8466281902

81214

52054

5129451677

54206

5120845839

44532 42579

436834522343800

42018

3835240009

4614548172

50274 49309

47694

51084

4625544421

3965140440

3686535562

3484835232

3652833887

32030

3080330207

27604 25946

28395

10000

20000

30000

40000

50000

60000

70000

80000

90000

100000

110000

120000

13000019

75

1976

1977

1978

1979

1980

1981

1982

1983

1984

1985

1986

1987

1988

1989

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

農業粗生産額 生産農業所得

農業粗生産額(2010/1990)全国29.3%減、愛知19.6%減:生産農業所得(2010/1994)全国44.4%減、

生産農業所得:農業総産出額から物的経費(減価償却費及び間接税を含む)を控除し、経常補助金等を加算した農業純生産(付加価値)

中曽根日米構造協議 WTO発足

小泉構造改革

GATT・UR交渉

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家計に占める1人1年当たり米の消費量

29才以下 30~39 40~49 50~59 60才以上

1985 24.5 31.1 45.8 50.3 51.4

1995 17.1 18.5 28.4 37.5 41.2

2005 13.6 15.8 22.1 29.1 41.4

05/85 55.5 50.8 48.3 57.9 80.5

(単位;kg)

資料:総務省「家計調査」、2人以上の世帯の数値

注:米の供給量1985:971.4万トン(100)、2005:835.4万トン(86.0)

家計消費:1985:564.4万トン(100)、2004:397.0万トン(70.3)

市場のニーズを見るには?

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P(たんぱく質)12.9%

C(炭水化物)58.0%

F(脂質)29.1%

米の消費量減少 畜産物・油脂類消費の増加

供給熱量と摂取熱量の差

我が国では、世界の食料援助量(約730万トン)の約3倍に相当する、約1,900万トンの食品廃棄物が発生。このうち、家庭での廃棄物は1,070万トンで、国民一人当たりでは84kg。(平成16年度)

供給と摂取の差 722kcal

(平成18年度、供給ベース)

我が国の栄養バランス

資料:農林水産省「食料需給表

ヘルシー・食育

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1.00 1.00 1.01

1.13 1.14

1.09

1.06 1.04 1.05 1.05 1.05

1.02

1.06 1.06

1.13

1.18 1.18 1.16

1.00

0.90

0.85

0.96

0.86

1.00 0.99

0.93 0.91

0.89

0.86

0.81 0.79

0.77 0.75

0.72

0.66 0.63

0.60

0.70

0.80

0.90

1.00

1.10

1.20

1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

一般会計 農業関係

日本政府の一般会計予算と農林水産業関連予算

注)2000年度までは森林水産を含まない農業予算。2012年度は復旧・復興予算1557億円を含まない。

小泉構造改革

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EU共通農業予算の推移

http://ec.europa.eu/budget/library/publications/fin_reports/fin_report_08_en.pdf

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直接支払制度の分類(EU)

• デカップリング政策

• 条件不利地域支援

• 環境保全支援 • 輸出補助金削減

• 国境措置削減

• 市場介入予算削減

負担者の転換

国際規律適合的

資料:飯國芳明「直接支払いを如何に設計すべきか?」 2010年度日本農業経済学会ミニシンポ

日本における直接支払

•中山間地等直接支払制度2000~

•水田畑作経営所得安定制度2007~(米戸別所得補償制度2010~)

•農地水環境保全向上対策2007~

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EUの主要農産物支持価格の変化1991~2008:実質価格ベース、%

品目 軟質小麦 デュラム小麦

米 砂糖

価格変化 -80 -85 -84 -77

品目 牛肉 バター 脱脂粉乳

価格変化 -73 -68 -68

Source: Directorate-General for agriculture and rural development (2009)Why do we need a common agricultural policy?

多国間調整の経験から知恵を蓄えた欧州・EU

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農業者への直接支払

日本 EU

直接支払額P 6,943億円 84,598億円

農業所得I 30,803億円 107,900億円

I/P比率 23% 78%

直接支払額:2006年の各国WTO通報により試算農業所得:日本:生産農業所得、農林水産省農業経営統計調査報告

EU: Entrepreneurial income,Eurostat Database耕地面積 日本、耕地及び作付面積統計、農林水産省統計部

EU: FAOSTAT

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TPPで設置された24の作業部会

1 首席交渉官協議 2 市場アクセス(工業)3 市場アクセス(繊維・衣料品) 4 市場アクセス(農業)5 原産地規則 6 貿易円滑化7 SPS(検疫・付随する措置) 8 TBT(貿易上の技術的障害)9 貿易保護 10 政府調達11 知的財産権 12 競争政策13 越境サービス 14 サービス(電気通信)15 商用移動(business mobility) 16 サービス(金融)17 電子商取引(e-commerce) 18 投資19 環境 20 労働21 制度的事項 (規制の統一) 22 紛争解決23 協力 24 横断的事項特別部会(中小企業,競争,開発,規

制関連協力)

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124.3

62.2

42.9

19.511.7

5.5

0

20

40

60

80

100

120

140

インド 韓国 メキシコ EU 日本 アメリカ

農産物の平均関税率(OECD) 2009

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水稲作付規模別・団地数別60kg当たり生産費(2002年、円) 9,000円/60kg=150円

3~5ha 10~15ha 15~20ha 20~25ha 25~30ha 30ha以上

~3団地 12,516 10,572 9,364 13,031 9,075 9,905

4~5団地 10,575 10,293 9,962 8,754 13,030 9,941

6~7団地 11,454 9,017 10,581 10,517 11,568 13,087

8~10団地 9,937 9,379 10,424 10,936 9,846 11,580

11~15団地 11,061 9,456 9,117 9,673 12,691 7,982

16~20団地 11,000 7,549 9,623 10,954

21団地以上 10,823 10,596 8,739 9,009 10,203

平均(円) 11,160 10,098 10,055 9,792 10,383

資料:全国農協連合会・農協協会「米の生産コスト削減に係る調査報告書」2006.3

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日本農業が抱えるハンディー

農家1戸当り農用地面積(ha)

日本との比較(倍)

日本 1.8 1

EU 16.9 9

米国 180.2 99

豪州 3,423.8 1902

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1.25

1.36

1.10 1.04

0.74

0.54

0.35

0.26

-0.07 -0.03 -0.050.09

-0.2

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

世界全体 FTAAP ASEAN+6 ASEAN+3 日中韓 TPP

日本 米国

地域的貿易自由化による実質的GDPの経済効果(%)、川崎研一氏試算推計)

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アメリカの対日要求:食の安全性・検疫

• 牛肉月齢規制の撤廃要求

• GMO飼料、成長ホルモン剤を使用した牛輸入要求

• コーデックス規格(国際食品規格)・輸出国で認められた添加物の承認要求

• 抗生物質の食品添加物使用、魚介類への着色料使用の認可要求

• 農薬:ポストハーベスト農薬使用の許可要求:

• 農薬残留基準の国際基準への緩和要求

• 遺伝子組み換え食品表示の撤廃要求。

• 有機農作物の基準緩和要求。

• 栄養強調表示規制緩和 ・・・・

消費者運動で築き上げてきた食の安全性の仕組みの大幅後退

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アメリカが狙う「世界」

• TPP(Trans-Pacific Partnership)交渉を主導する米国のねらい①輸出拡大による雇用の拡大②中国を牽制する政経軍事一体の新アジア戦略

• TPPとは、国境をなくし、人・企業が自由に活動できる環境作り (商品交易:原則として関税撤廃)

•市場原理主義のより広範囲の適用。非市場分野にも大きく影響

• 交渉項目のうち食品安全性:貿易しやすい環境作り:規制緩和=輸出国の条件に合わせる:いわゆる「競争条件の‘公平化’」

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日本・米国・EUの国内支持の水準

0

20000

40000

60000

80000

100000

日本  米国 EU

国内

支持

0

20

40

60

80

約束

水準

比率

2000約束水準 AMS実績 約束水準比

資料:農林水産省「食料・農業・農村白書」平成19年度版

注:日本・EUは2003年、米国は2001年の実績。農業総産出額に占めるAMS実施の割合は日本7%、米国7%、EU12%

日本は丸裸に

「約束通り」

EUはしたたかに

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農業者の置かれた環境は?

• 欧米に比べ、日本は北風が吹きまくる。

• 2008年の穀物価格高騰時、アメリカの農業者は笑いが

止まらない状況。たとえば、トウモロコシは食用・飼料用・燃料用で市場拡大。

• 日本の農家は大苦境。重油価格は上がる、肥料価格は上がる。でも国内の農産物価格は下がる。

• 欧州の農業者支援策の転換と日本の支援の大幅圧縮

自公政権と民主党政権の政策の重点は変わるが、縮減する方向は変わらない。

日本の消費者は国産品を応援したいのだが。政府は国民の懐が寂しくなる政策推進

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新たな地域おこしが求められる時代

• 地域の農業、工業、商業が衰退

• グローバリゼーション下の経済成長期に地域の空洞化

• 世界同時経済不況:「米国の過剰消費に支えられた過剰生産が一気に縮小」

• 欧州諸国も大変だが VS 日本の三重苦(景気低迷、巨大な財政赤字、不安定雇用増)

• 人口減少、少子高齢化の更なる進行

• 構造転換の希求:「地域が活きる」

地域を活かす産業、就業・雇用拡大、環境ビジネス、・・・

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経済 技術

環境<制約>

私経済 市場

収益性 生産性

経済合理性

農業経営営利

所有

企業 事業

支配

可能性

技術的合理性

食料<規制> 地域<連携>

農業を経営するとは何をどうする

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市場競争の中でNumber One or Only One ?

所得=(価格-費用)×生産量

価格:おいしさ+プレミアム

費用:コスト削減は絶対的目標?

生産量:規模拡大か限定販売か

誰が何をどう作りどう販売

立地条件・主体的条件?

農業=一次産業は古い

価格

費用

規模

O

P1

P2

C2

C1

A1 A2

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<ペティ・クラークの法則について>かつて著名な経済学者であるコーリン・クラーク(Colin G. Clark)はペティの法則を説いた。その主著である『経済進歩の諸条件』(大川一司他訳、“The Conditions of Economic Progress” 1940)において、コーリン・クラークは世界

各国の国民所得水準の比較研究を通じて、国民所得の増大とその諸条件を明らかにしようとした。彼はその中で、産業を第1次・第2次・第3次の三部門に分け、

① 一国の所得が第1次産業から第2次産業へ、さらに第2次産業から第3次産業へと増大していく。② 一国の就業人口も同様に第1次産業から第2次産業へ、さらに第3次産業へと増大していく。③ その結果、第1次産業と第2次産業、第3次産業との間に所得格差が拡大していく。ということを明らかにし、それが経済進歩である。

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0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,00019

89

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

飲食店

関連流通業

関連投資

資材供給産業

食品工業

漁業

特用林産物

農業

13,682 9,532

115,365

11,860

98,203

95,289

2012.4.25ファンド説明会:6次産業のポテンシャル+20~30兆円?

2009/2008GDP:全産業 12%減食料産業4%減

99,100

食料産業に占める農水産業の帰属(10億円)農林水産省「農業・食料関連産業の経済計算」

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農山漁村の6次産業化

○農林漁業者が生産・加工・流通(販売)を一体化し所得を増大産地ぐるみでの取り組み経営の多角化・複合化農林水産物の輸出 等

○農林漁業者が2次・3次産業と連携し、地域ビジネスの展開や新たな産業を創出

農商工連携の推進バイオマス・エネルギーの利用 等

「6次産業化法」がいう

6次産業化とは?

農山漁村に存在する様々な「地域資源」

○農林水産物 ○バイオマス○自然エネルギー ○風景・伝統文化

「地域資源」と「産業」を結びつけ活用

儲かる農林水産業を実現

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農業=一次産業?「資本主義の発展とともに「農」的産業比率は低下する?」

• 規模の経済(scale economy) =単一の財・サービスの生産規模の拡大に伴う費用低減による利益

• 範囲の経済(scope economy) =複数の財・サービスの組み合わせ方による費用低減に基づく利益

• シナジー効果(synergy effects) =企業が規模拡大、多角化するため隣接する事業分野や、川上川下の事業分野に進出する際、現在持っている経営資源を生かして、低コスト、高効率の事業展開できること

• 生産から、加工、販売、サービス提供までのトータルプロセスを意識した経営

=六次産業、 「農」的産業

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農林漁業者の6次産業化が目指すもの

• 方法:専門化(specialization)でなく、多元化(diversification)による収入源の多様化とリスク分散

季節性の強い農林漁業: 収入も季節性

収入の周年確保、資金回転の円滑化

• 目的:規模の経済よりも、範囲の経済、並びにシナジー効果の発現を指向

原材料や商品の調達費や取引費用の節約

事業体の商品群の拡大・品揃え効果

事業体イメージの向上

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6次産業化の取り組み

• 外部条件:自然的・経済的・社会的条件(立地、交通、市場:土地・労働・資材・商品、政策、地域イメージ、人づくり、・・・)

• 内部条件:個人的・集団的・地域的条件(資源保有・保全、労働力・経験・能力、資金調達力、組織力、地域力、・・・)

• チャレンジ事業計画:個別・集団・地域的計画

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○ 生き物マーク米の高付加価値化のためには、減農薬・減化学肥料や無農薬・有機栽培などの栽培上の差別化が必要

○ 生物多様性保全の取り組みについて消費者に広く知ってもらうことが米を高く買ってもらうことにつながる

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食の不安、農の不安はどこから

• みえない:生産・加工が見えない

自給率の低下、遠距離輸送、家庭調理の減少、・・・

• 複雑:加工食材・食品消費8割、多段階流通

業者間取引の増加、トレース・総合管理の困難

• 信頼できない:企業者倫理の低下(儲け本位)、行政の不作為(問題化を避ける)

• メディアのセンセーショナルな取り上げ方視聴者・読者拡大路線、「普通」はニュースにしない

• 社会不安定化(格差社会)、企業本位社会

だから「見える化」「信頼社会」「協働社会」トレサビリティ、透明性、GAP/HACCP,コラボ、食育、循環

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(農)F農産: 都市化地域で農業者と加工業者・販売業者の連携

• 周辺農家の高齢化:農地が管理できない

• 丁寧な土づくり・農地管理で農地集積

250カ所に分かれた借入農地、延作付け面積51.5ha、水稲・麦、野菜(大根、にんじん、スィートコーン、小松菜、キャベツ等)の大規模経営

• 消費者が近くにいる、近くに販売先(無理が利く)

• 鮮度で勝負、量販店やカット業者に契約販売

• 農業に関心持つ若者を従業員4人(研修生)として雇用。80人以上を就農者に育てた

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二子玉川ライズ・ショッピングセンター

国立ファーム有限会社オイシックス株式会社 トマトに特化したブースを出展

商品単価は名古屋市内と比較し20%程高いが、商品アイテム数、接客、陳列手法など、サービスのレベルが高い。店員は全て女性。知識が豊富で接客が優れている。

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○ 150a の圃場で37品目に及ぶ伝統の京野菜を栽培。○ 料理店を中心に全国に300件の顧客を持ち、全て要望に応じて生産する予約販売を行う。○ 「人に飽きられないものをつくる」○ 「古き良き伝統は残しつつ、新しい農業スタイルの創造も必要」

「そのキャベツ、石さんのところですよ」と笹島シェフは鴨料理にキャベツを添えちょっと火を通しただけだったが、シャキっと歯ごたえのある芯がほんのりと甘く鴨の肉汁がそれとよく合った。

栽培や収穫に手間がかかる京伝統野菜。次第に農家が敬遠、一部品種は絶滅。 1987年に京都府が34種を「京の伝統野菜」として選定。基準は明治以前から京都府内で生産されていた品種で、選定数は増加。

京伝統野菜を作り続ける10代目の農園主 石割照久

桂川の河川敷にある肥沃な畑で、環境型農業生産に取り組む。適地適作を心がけ、野菜の持っている本来の味及び特色を最大限に引き出す。「野菜の顔を見て翌年の分の種をとることだけは誰にもゆずれない」

市内農家の有志で2001年「新京野菜の会」組織。京都市や京都大と連携し

て新しい京野菜作りに挑む。ビタミンCが普通トマトの2倍もある「京てまり」や唐辛子の葉を摘む葉物野菜の「京唐菜」など独自の野菜として人気を呼ぶ。

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農工商等連携促進法に基づく新商品開発

(株)亀屋【一宮市】木曽川町玉葱採種組合【一宮市】

農林漁業者 中小企業者

木曽川町産「超極早生玉葱」を活用したベジタブル&フルーツスイーツの開発、製造、販売

(株)亀屋は木曽川町玉葱採種組合が栽培した玉葱を菓子に使うため、ペースト化や粉末化を行った

が、玉葱の辛みが抜けずおいしい菓子にできなかった。試作を重ねる中、一旦玉葱を乾燥させた上で焙煎する新たな加工方法を見つけ、風味を残しつつ甘みを出すことができた。また、和菓子製造で一般的に使用する粒餡を使用しないという取組も行った。木曽川町玉葱採種組合は、有機物が植物体に吸収されやすい水田を玉葱栽培用に転換し栽培を行う。

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農工商等連携促進法に基づく新商品開発

㈲木村農園【稲沢市】

㈱信州自然食品センター【安曇野市】

鈴鹿金時生姜生産組合【鈴鹿市】

中小企業者 農林漁業者

国産金時生姜を使った無添加ジャムシリーズの製造・販売事業

土地選定や栽培管理の徹底、肥料設計ノウハウの導入などによって、栽培が難しい金時生姜を安定的に栽培。煮込時間や温度の最適化等を工夫することによって本物志向の国産金時生姜ジャムを製造し、インターネットや卸売等で販売する。女性を中心に新たな国産金時生姜の市場開拓を目指す。

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1991年:51億円

2009年目標25億円

+量販店の巨大な取引力他産地の追い上げ

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業者A:新商材開発にチャレンジ

• 「農協はロットで勝負する世界」。Aは「農協が出来ないところをター

ゲットに」、「個に集中して」栽培、荷造り、商品、販売戦略を立て、それらを着実に実践、確かな地歩を築く。

• 栽培:栽培日数を長めにして肉厚のこだわり細青ネギを作り、そのこだわりをグローバルGAP認証による栄養分析で数値として取引先に示し、荷造りも、カスタムメイドのジャストインタイムで行って顧客を掴む。

• 農協は高齢者による荷造り作業。Aは機械を導入して簡素化、若手

による作業方式を作り出す。栽培と荷造り出荷を一貫させ、若手も含め10名近い雇用も実現。

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業者A:新商材の販路開拓

• 販売:地域ごとにこだわり生産と荷造りを理解する一つの業者(量販店もしくは専門店)に絞り、100%でなく、5~10%の消費者を相手にする、市場細分化戦略を採用。その結果、市場価格より20~30%高い価格での取引を実現。

• Aは2008年から肉厚ネギを使ったドレッシング加工に挑戦、サラダ、肉料理、魚料理向けネギドレッシング開発。2009年4月売出し、8月までに2千万円余売上

• Aは生産~小売のサプライチェーン関係者がいずれも利益を得る関係づくりに精力注ぐ。ネギ生産は食品加工会社の直営ネギ農場と位置づけ、売り先のロット・売り方を定めた生産加工=注文生産のシステム構築、経営の安定的発展実現

• 博多万能ねぎのみを原料とする加工食品は売り上げに限界。売上拡大には、自社での新製品開発に加え、他の加工品と共同したブランド化・販売戦略が必要

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農工商等連携促進法に基づく新商品開発

㈱プラネット【愛知県豊橋市】

㈲ラスタ【愛知県田原市】

中小企業者 農林漁業者

ハイドロカルチャーによる栽培が容易な予約式鉢植え野菜苗等の生産・販売事業

植込み材に土を使用しない発泡煉石での栽培に適合した水耕栽培品種の開発と多品種化を図るとともに、既存に有する植物レンタル事業の営業・配達網を有効活用することで、顧客は年間を通じて容易に野菜栽培を楽しむことが可能。食育・園芸療法の観点から私立幼稚園・老人福祉施設を主なターゲット先として事業拡大を目指す。

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(有)M園芸のリレー農業・卸売小売連携

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(有)M園芸

1.アイデアを最大の資源に

• 額田町で経営:平均耕地0.4ha、衰退傾向の著しい中山間地

• 脱サラして農業参入。M氏の資源は、「農業部外者の発想」ができる

• 農業を起業当初、農協借入でビニールハウスを建て、シンビジウムから始め、観葉植物生産に転換、市場出荷主体の園芸農家として

• 経営11年目、欧州視察、ハイドロカルチャーに出会う

①土からの脱却:観葉植物の水耕栽培確立。+多品目生産。病害虫発生抑制、出荷率低下回避

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(有)M園芸

②灌水作業からの解放:水槽付き植木鉢などの実用新案登録した商品や、エコスティック等を開発し世界18カ国で特許を取得。

③市場出荷からの解放:自ら販売ルートを開拓。直接契約、直接配送方式。

④自己完結型生産からの解放:分場や委託生産農場で種苗を入手、播種・挿し木し、半成品まで育成。後、本場に搬送。本場で植物を選別し馴化した後、客の注文に応じ、植え込み資材、容器に入れ成品化し出荷。315万ポットの観葉植物の効率生産

⑤仲業者300社や小売店7000店への商品搬送や情報提供、売り場の管理アドバイスなど、サプライ・チェーン・マネージマントを実践

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(有)M園芸

2.消費者ニーズを見つめた商品開発や商品の楽しみ方の提案など、お客中心の「農的」産業創り

• 消費者ニーズの重視。農業を生産・加工・流通・サービス提供を含めた六次産業として創出

• 「商品の楽しみ方の提案」として、植え込み容器90種、植え込み資材6種、栽培品目120種を用意、自分好みの植栽を作る。

• 小売店に、商品品質保持のアドバイスや商品ディスプレイの提案等、気遣いの販売環境作り支援。商品にバーコードを付けて分析

3.合理的な生産管理と雇用管理の実現• 生産段階別の温度管理。作業のマニュアル化。効率的な多品目

生産。委託農家と画像データ交換、+現場指導。

• 会社役員4名、親族スタッフ2名、従業員10名、パート43名、アルバイト3名の雇用依存型経営。業務分担体制。意志決定は社長、役員は栽培指示担当、業務内容ごとに従業員グループ化し、業務に対する専門性を高めて業務効率向上。

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Y農園:直売施設・トマトジュース加工

• 12棟のガラス温室(計8,000㎡)で、秋~春ファーストトマト、春~夏マスクメロン

• 経営主夫婦、長男、周年雇用1名、パート4名

• 直売所・連携販売

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トマトメロン全量直販のY経営

1.都市化地域の立地条件を活かした合理的安定経営

都市化がもたらすプラス面を活かす

代替地取得と借地により90アールを確保

直売への転換により近在で数千人近い顧客確保

2.「消費者ニーズに応える全量直売」という経営目標・全量を産直で売り切る課題

生産技術や経営管理、販売対応の課題が明確に

・消費者ニーズ「味がよく、安全で安心でき、いつも売っている」、生産目標を量指向から「味」「安全・安心」「計画生産」に切り替え

・「信用のおける商品づくり」「いつでも買える長期安定生産」「自信を持った価格設定」「苦情への誠意ある対応」「個人客の重視」

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• 隔離ベッド導入、かん水装置設置し少量多回数灌水、土壌診断に基づく肥培管理→糖度が高く肉厚なトマト・メロン。

• 施設は換気効率が高く病害の発生を押さえる構造。病害抵抗性品種の利用や輸作体系確立等耕種的防除実施。防虫テープ利用、減農薬栽培実現。隔離ベッドを利用した栽培で、肥料成分の溶出をなくす。高品質・省力生産で、同時に、減農薬・汚染防止など環境保全型農業の先端。

4.家族の協カ、雇用者の連帯、産直経営間の協力・連携を作り出し、農業を地域に活かす取り組み

目標:消費者を巻き込んだ市民交流型農業経営

3.生産性・収益性に優れ、環境に配慮した先進経営

• 収量:同水準、販売単価:トマトで20~40%高く、メロンで80%高い水準。労働時間:生産労働32%少。販売労働3倍。

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都市近郊のI養豚経営

• 半田市=名古屋市の南30km圏、都市化の進展地域

• 中心理念:「飼育から販売まで自分の手で」行い、顔の見える関係を作り、消費者に喜んでもらえる経営=六次産業型養豚経営として成長

• 肥育豚年間生産頭数は12,000頭の中堅的規模。給与

飼料を工夫、豚本体から美味しくなる飼料最適化。また配合の外部化による低コスト化。520頭の母豚管理に

パソコンを活用し個体管理徹底、人工授精技術を先駆的に導入、豚群全体の改良期間短縮と肉質の斉一化を図り、定時・定量・定質の自社ブランド豚供給

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都市近郊の (有) I 養豚経営

• 販売:自社ブランド豚の70%(重量ベース)を地元スーパーと百貨店の15店舗、それに地元直売所で売る。9年前、自社の加工直売場を設置

• 家族経営を有限会社化。経営者が経営全般に責任を持ち、妻は直売店店長、長男は食肉処理・加工とバーベキュー店長、次男が農場長を担当。雇用は、常雇10人と臨時雇30人、従業員の担当作業の週管理。旺盛な豚肉商品開発

• 規模拡大を最優先するのでなく、都市近郊の利を活かし、消費者と直接向き合う経営

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新城市の酪農経営の今

部門

年度

経産牛 育成牧場への委託

育成牛 ほ育牛

搾乳牛 乾乳牛 育成用 販売用

平成17年 64 18 25 21 1 19

平成18年 73 13 39 10 0 26

平成19年 69 10 37 29 8 18

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酪 農

D牧場・Tさん 後継者夫婦 MILK工房S・Kさん「考える酪農」 「楽な酪農」 「楽しい酪農」

精密なデータ管理 革新技術に おいしい牛乳で生産性向上 チャレンジ 憩いの場を提供

(酪脳) 省力化(楽脳) (楽農)

新城市 D牧場+Sミルク工房

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農家レストラン「H」

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経営の概況

• 「ハム工房(有)S」と「農家レストランH」

• 社長+総務、工房長+製造販売2名+配達1名、店長+副店長+厨房・ホール・清掃10名

H12初めて正社員雇用

• モットー:“みんなでワクワクしよう”

• 経営理念:「愛・夢・そして感動」

• 経営方針:「安全安心」な「本物の美味しい」を「お持てなしの心」を添えてお客様に提供する

• 「うち」のハム・ソーセージ、売上4,100万円(H20)

• 「うち」の畑、手作りの味・季節毎のメニュー、売上4,000万円

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(株)明宝レディーズ

明宝トマトケチャップ

明宝特産の「桃太郎」トマトを使用し、洗浄からビン詰めまで一貫して手作業で作られた純粋なトマトケチャップです。

大鍋で6時間かけてじっくり煮込んで仕上げられたその味は、完熟トマトならではの深みがあり、添加物を一切使用していないためトマトの風味がそのまま伝わってきます。特選素材としての自信が満ちています。

「明宝トマトケチャップ」1ビン300g入り¥525(税込)

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明宝レディーズ:「農」的産業おこし

• 主婦11人の生活改善運動が発端(余り物加工)

• 転作作物のトマトの規格外品による手作りケチャップ生産で三セク起業(1992):現在女性従業員19名、年間23万本、売上げ2億6千万円(元気な女性)

• 飛躍的発展→原料不足→契約農家拡大、村内から郡上市、飛騨市のトマトを集めるまでに(耕作放棄地の解消、農家が元気に)

• 多角経営:豆腐・山フキ・草餅、カブラ等13品目の加工、レストラン「ゆうゆう」(日曜バイキング、日替わり弁当)、(元気な熟年者)

• 女性による「明宝村にしかない、世界で一番おいしいケチャップづくり」。道の駅を中心に販売

• 共同セクターの知恵(とことん手作り:主婦の技)を私的セクターの活動に繋げ地域づくり

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「林檎と葡萄の樹」 福岡県朝倉市

『りんごカレー』(サラダ付) 『りんごタルト』

柿園・りんご園・ぶどう園・イチジク園 いちご狩り

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志波柿産地の農家R

• 現在、柿1ha+リンゴ30a+巨峰25a+イチジク0.5a+果樹加工・販売+レストラン・喫茶を経営

• 米作主体の経営を受け継ぎ、柿園2.5ha主体の経営に転換、食っていけた

• 霜害で打撃。 1987年、労働配分も考えリンゴ植栽、リンゴ狩り観光開始。観光果樹園ブーム、リンゴ狩りでひと儲け。やがてリンゴ狩り下火、お客が減ってきた

• 1991年、台風で落下したリンゴを加工、アップルパイを作って直販事業に乗り出す。国道から相当に入り込んだ直販店だが、当たった。

• 1994年、農家レストランを建設、自然に左右されない新たなビジネス形態を追求

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志波柿産地の農家R

• 農家Rの果樹狩り・レストランでは絶えずメニュー開発。+自家製果樹スィートで差別化、福岡市など60km圏から年間6万人の客が訪れる経営体に成長。

• Rに続けとばかり、周辺にケーキ屋も5,6軒でき、道の駅の売店も営業開始。Rの客数も減ったが、「他所にないいいものを他所より早く提供する」取り組みで、客に魅力ある農園施設となっている。

• 経営主Rは生産を担当、経理は妻、経営主が発案したものを妻と一緒に具体化。長男はパスタ・レストラン、次男は喫茶・ケーキを担当、雇用者はパートを含め13名、ほかに収穫袋かけ作業に地元の高齢

者を雇用。売上げ目標は1億円。「農園が見える雰囲気作り、客を大事にする気遣い、他にないモノを作る開発力」が成長の鍵

• 「田主丸はぶどう狩りを先駆け、一時代を作ったが、同じことの延長で、落ち込む。変化する時代を読み、リスクを背負いながら勇気を持って取り組めば、客は来てくれる」。

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農林漁業者の6次産業化の留意点

• 落とし穴1:経営資源の分散

多部門への労働、土地、資金の投入と管理の難しさ

対策:経営能力の高度化を必須とする

工程管理、労務管理、財務管理、・・・

• 落とし穴2:販路開拓の難しさ

JFEライフの高収益とフェアリーエンジェルの撤退

対策:ターゲットの限定(市場の細分化)

商品開発時から市場調査を

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Oファームの6次化事業計画

• 東海では女性農業者で初めて事業計画認定

• イチジク農家:露地栽培30a• ジャムとグラッセ + コンポート

• コンポート:「大物商品」にしたい

• 高級レストラン:ヴィトラのシェフ斉藤氏と引き合わせ。 「コンポートは良くできているが、誰をターゲットにするかが定まっていない」。 「ラベルや表示に工夫が足りない」

• 農商工連携ビジネスフェアーへの出展。大きな刺激

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JA尾東におけるプチヴェール特産化支援

• プチヴェール部会の出口は直売所?

• 販路開拓:あさくま、Mitte、・・・

• 機能性野菜プチヴェールの押し出し:食品分析センターによる「事業系廃棄物の外葉や茎」の分析

• 加工食品への素材提供

• (株)尾東農産の支援:水田農業経営の+αの強化

• 栄屋上農園の活用:情報発信の拠点

• Milky Way、ファームウエスト、品野「道の駅」

• 多様な組織の連携:農協・市役所・大学・NPO法人

• プロジェクトの継続と拡がり

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農工連携ビジネスフェアー等の活用

• 2012年2月16日あいち農商工連携ビジネスフェアー:生産者、食品製造業者、流通関係者、飲食店・ホテル関係者など、幅広い分野の事業者が「地産地消」を共通のフレームにして情報交換や商談を行う機会。85企業・団体が出展、参加者は687名。昨年は78企業・団体、544名。

• 新商品を開発した業者など各事業者に、出会いの場、取引相手を見つける場、売り込む場、商材を見つける場、共同してビジネス展開するパートナーを見つける場として、活用される。

• 異業種との交流。フェアーに出店している業者の取り組みを身近に見、ヒントをつかめる。

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「ノギャル」プロジェクトを発表する元ギャル社長の藤田さんとギャルモデルの2人

藤田志穂のプロフィル

現在は食の問題について活動をスタート。若者が食や農業に興味を持つキッカケを作るため「ノギャル」プロジェクトを立ち上げ、秋田県での「シブヤ米」作りや、ギャルママ野菜収穫ツアー、イケてる農作業着企画など様々な角度からプロジェクトを展開中。

―では、若い人が農業をやらない理由は何だと思いますか?農業をやらないって言うよりも、農業を知るキッカケが少ないんだと思います。

私も高校の頃、アパレルや美容師の仕事ぐらいしか知りませんでした。でも、雑誌の仕事をやるようになって、それに関わるライターやカメラマン、デザイナー など、いろいろな職業があることを知ったし、そういう事って学校では教えてくれませんよね。だから、農業も職業の一つとしてあるっていうのを伝えられた らっ

て思うんです。みんながみんな農業をって言うわけじゃないんですが、知らないと選択肢にも入らないじゃないですか。農業を知るキッカケやタイミング作 りを私がやれたらって思うんですよね。

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農業活動人口率の推移:構造転換の時代

八木宏典「2005年日本農業経営学会シンポジウム報告要旨集」

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農業センサスに見る販売農家の動向

総農業経営体(自給的農家除く)の経営形態2005(H17) 2010(H22) 増減数

実数 構成比 実数 構成比 実数 増減率個人経営 1,976,016 98.3 1,643,518 97.9 △332,498 △17共同経営 16,333 0.8 17,651 1.1 1,318 8会社経営 10,982 0.6 12,984 0.8 2,002 18協同組合経営 5,053 0.3 4,069 0.2 △984 △19公法人経営 996 0.1 862 0.1 △134 △13合 計 2,009,380 100.0 1,679,084 100.0 △330,296 △16

家族農業経営体(販売農家)の企業形態2005(H17) 2010(H22) 増減数実数 構成比 実数 構成比 実数 増減率

個 人 経 営 1,958,183 99.73 1,626,677 99.72 △331,506 △17家族共同経営 566 0.03 476 0.03 △90 △16家族会社経営 4,675 0.24 4,053 0.25 △622 △13ウチ 有限会社 4,503 0.23 3,958 0.24 △693 △15ウチ 株式会社 148 0.01 ウチ 合資・合名会社 24 0.00 95 0.01 71 296合計(総販売農家数) 1,963,424 100 1,631,206 100 △332,218 △17

法人化販売農家数 5,241 0.27 4,529 0.28 △712 △14非法人化販売農家数 1,958,183 99.73 1,626,677 99.72 △331,506 △17

資料:農林水産省 2005年農林業センサス、2010年農林業センサス

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合同会社(会社法)

合名会社(会社法)

合資会社(会社法)

株式会社(会社法)

組合法人

会社法人

農業法人

農事組合法人

共同利用施設・作業共同化事業を行う法人(1号)

農業経営を行う法人(2号)

農地を利用する法人=農業生産法人

農業法人形態別仕分け図

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従前の会社形態

合名会社無限責任社員のみ

合資会社無限責任社員+有限責任社員

株式会社有限責任社員のみ

有限会社有限責任社員のみ

合同会社(LLC)有限責任社員のみ

株式会社有限責任社員のみ

合資会社無限責任社員+有限責任社員

合名会社無限責任社員のみ

新しい会社形態

持ち分会社と総称

注:新しく有限会社を設立することはできな

いが、既存の有限会社は、有限会社の名称のまま株式会社として存続できる

2006年5月1日新会社法施行

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従来の最低資本金規制

株式会社1000万円有限会社300万円

最低資本金規制特例:

新事業創出促進法に基づき経済産業大臣の確認を受ければ、設立後5年間は最低資本金規制を適用しない(1円でも操業可能)

平成17年1月までにすでに2万

社を超える企業が特例の適用を受けていた。

設立時の最低資本金規制を撤廃し、操業を促す方向

新会社法 平成18年5月1日施行: 最低資本金制度の撤廃

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法人の形態 摘 要

農業法人 事業として農業を営む法人の総称。農業に合わせて農作業の請負や農産加工など農業関連事業を行う法人も含む

農事組合法人 農業協同組合法第72条8に規定される組合型の法人で、農業生産活動の協業化により組合員共同の利益を増進することを目的とした法人

1号法人:機械施設等を共同利用するために設立した法人で、出資型と非出資型の法人がある。

2号法人:農業経営を行う法人で出資型

株式会社 社員が会社に対し各人の持つ株式の引受価額を限度とする有限の出資義務を負うだけで、会社債権者に対して何ら責任を負わない組織(会社法第25条~)

合名会社 社員の全員が会社債務について、会社債権者に対して直接、無限、連帯の責任を負う会社(会社法第575条~)。家族や親族等の人的結合の強い少人数の法人

合資会社 無限責任社員と有限責任社員との2種類の社員からなる会社で、前者は合名会社と同じであり、公社はその出資の価額を限度として、会社の債務を弁済する責任を追っている(会社法第575条~)

合同会社 出資者の全員が有限責任社員であり、内部関係については民法上の組合と同様の規律が適用される会社。

農業生産法人 農地法で規定された名称で、農業法人のうち農地を利用する(所有権、賃借権等の使用収益する権利を取得できる)法人。(農地法第2条第7項)

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農業生産法人の要件1 組織形態要件

• 農事組合法人

• 合名会社

• 合資会社

• 合同会社

• 株式会社(定款に株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めがあるものに限る。)

• 2 事業要件

• 主たる事業が農業(農業関連事業も含む。)であること。

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3 構成員要件

• 農業生産法人の構成員(=出資者)が全て次のいずれかに該当すること。

ア 農地等を提供した個人(農地を売ったり、貸したりした人)

イ 農業(関連事業を含む)の常時従事者(原則として年間150日以上)

ウ 農業協同組合、農業協同組合連合会

エ 農地を現物出資した農地保有合理化法人(北海道農業開発公社)

オ 地方公共団体

カ 農業法人投資育成会社(承認会社)

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キ 農作業(農林水産省令で定めるものに限る)の委託を行っている個人

ク 継続的取引関係にある者(議決権に制限あり)

4 業務執行役員要件

• 法人の業務執行役員全体で次の要件をいずれも満たすこと。

(1) 農業生産法人の業務執行役員の過半の者

が法人の農業(関連事業を含む。)に常時従事する構成員であること。(2) (1)に該当する役員の過半が原則60日以上農作業に従事すること。

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農業法人の形態

営利と公益の中間法人 営利法人

農事組合法人 株式会社(有限会社)

根拠法 農業協同組合法 会社法

構成員 資格:農民で定款で定めるもの

数:3人以上(上限無し)資格:制限無し

数:1人以上(上限無し)

議決権 1人1票 1株1票

役員 理事はその法人の農民たる組合員

取締役、監査役は社員外での専任も可。但し、定款で社員に限定も可

雇用労働力

法人事業に常時従事する者のうち、組合員と同一世帯に属する者以外の者が、常時従事者総数の2/3以下であること

制限無し

資本金 制限無し 制限無し

2006年5月1日会社法施行

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営利と公益の中間法人 営利行為を行うことを目的とする営利法人

農事組合法人 株式会社(有限会社)

法人税 〔確定給与を支給しない法人〕

税率:22%

従事分量配当、利用高配当の損金算入

〔確定給与支給法人〕

普通法人と同じ

税率

資本金1億円超の法人 30%

資本金1億円未満の法人

年所得800万円超 30%

年所得800万円以下 22%

事業税 農業生産法人の場合、畜産業を除く農業は非課税

税率

年所得 400万円以下 5%

400~800万円 7.3%

800万円超 9.6%

登録免許税

農協法に基づく登記

非課税

所有権移転 5%

賃借権の設定 25%

特徴 構成員の公平性を重視

合意形成に時間がかかる

重要事項の特別決議の方法が株式会社より厳格(総社員の過半の賛成が必要など)

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合同会社の特徴

根拠法 会社法

出資者数 1人以上(上限無し)

出資者責任範囲 出資金額内(有限責任)

最高決定機関 全社員の同意

資本金の最低額 1円

役員代表社員または業務執行社員

役員の任期は無期限

定款認証 不要

合同会社:2006年5月の会社法施行により創設された会社類型。社員間の人的信頼関係を基礎とし、出資者の有限責任が確保され、会社の内部関係には組合的規律が適用される。

取締役や監査役の設置は不要。定款の認証も不要。

組合的運営(一人一票制)。会社の決定事項には全社員の同意が必要。家族や仲間による小規模な組織作りに適している

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株式会社の特徴

根拠法 会社法

構成員株主(有限責任を有する者)人数の制限なし

出資現金出資・現物出資出資額は1株均一

議決権 原則1株1票

資本金の最低額 1円

役員

取締役1人以上監査役は任意役員の任期

原則2年(最長10年)

持分譲渡 株主相互間の持分譲渡は自由。ただし、定款で取締役会の承認を要すると定めることが可能。(農業生産法人は必須)

会社法に基づく株式会社は、商行為又は営利行為を目的(商法52条)とする会社法人の一つで、資本を多く集められるように株式を発行する物的会社。2006年5月1日に会社法施行、株式会社の根拠となる法律も商法から会社法に変わった。最低資本金額の規定がなくなり、1円からの設立が可能となった。

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農業経営法人化の経営上の利点

経営管理能力の向上 1.経営責任に対する自覚を持つことで、経営者としての意識改革を促進

2.複式簿記の義務づけにより、家計と経営が分離され、経営管理が徹底

対外信用力の向上 1.計数管理の明確化や各種法定義務(設立登記、経営報告等)を伴うため、取引上の信用力が向上

2.法人となることでイメージが向上し、商品取引や従業員の雇用等が円滑化

農業従事者の福利厚生の充実

1.社会保険制度(厚生年金、雇用保険等)の適用による農業従事者の福利増進

2.労働時間等の就業規則の整備、給与制の導入による就業条件の明確化

3.役員、従業員の役割分担が明確になり、責任体制が確立。家族従事者への給与支払いによる労働意欲の向上

法人後継者の円滑な確保や新規就農者の受け皿の役割

1.法人の役員、社員等の中から有能な者を後継者として確保することが可能

2.就農希望者が法人に就職することで、初期負担なく経営能力、農業技術の習得が可能

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農業経営法人化の制度上の利点

税制面での優遇 1.所得の分配による事業主への課税軽減

2.定率課税の法人税の適用

3.役員報酬の給与所得化による節税

4.使用人兼務役員賞与の損金算入

5.退職給与等の損金算入

6.欠損金の5年間繰越控除、繰戻還付

7.農用地利用集積準備金

資金の借入 1.融資限度額の拡大

2.資金借入に対する保証人の確保

農地取得への支援 1.農地保有合理化法人が農用地等を現物出資するこ

とにより農地取得の負担軽減

(農業生産法人出資育成事業)

経営発展の可能性が広がる

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農業経営法人化の得失

○法人化のデメリット

1.法人化すると会計処理や社会保障制度等の実務が必要

定款、総会、役員、官報公告、複式簿記、社会保障制度に関わる各種申請、等々の実務

2.農地を法人へ現物出資すると法人への譲渡所得税がかかる

○法人化したから必ず経営がうまくいくとは限らない。

○法人経営を適切に管理運営する能力形成が必要

技術革新、経営管理、労務管理、販売管理、投資管理、

○ 法人化は最終目標でなく、経営発展の一手段

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農業生産法人以外の法人が農業参入している状況

1 組織形態・業種別(単位:法人)

注)2009年3月1日現在(カッコ書は2006年3月1日現在)

組織形態別 業種別等

参入法人数

株式会社 特例有限会社

NPO等 建設業 食品関係 その他 農業生産法人化

349

(156)

191

(80)

89

(41)

69

(35)

125

( 57)

72

( 41)

144

( 58)

(-)

参入法人数 米麦等 野菜 果樹 畜産 花き・花木 工芸作物 複合

349

(156)

62

(30)

131

(65)

53

(24)

(6)

10

(3)

13

(5)

73

(23)

2 作物別(単位:法人)

注)2009年3月1日現在(カッコ書は2006年3月1日現在)

黒字11%

赤字63%

収支均衡10%

収支未7% その他

9%

参入法人の経営状況

全国農業会議所「農外から農業に参入した法人に対するアンケート調査」2008.8

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参入企業の農業参入に関する調査結果2008.6

100万円未満, 30%

100~300万円, 22%

300~500万円, 10%

500~1千万円, 13%

1千万円以上, 25%

黒字, 27%

赤字, 57%

収支均衡,13%

24%

2%

6%

27%

27%

0%

43%

8%

52%

21%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

原料確保

食材確保

技術習得

公共事業減少

余剰労力活用

機械施設活用

新分野進出

食糧確保

地域貢献

その他

1.農業参入の動機・目的 2.参入時の初期投資規模

3.農業収支の現状

資料:(社)日本アグリビジネスセンター。206社対象、うち回答63社(31%)

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資料:三菱総合研究所渋谷往男アンケート調査(2010.3)

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農業経営の目的 -法人経営は家族経営より競争力があるか

(1) 法人農業経営の目的:法人農業経営と家族農業経営の異同①法人による農業経営

・目的:利潤追求(営利原則支配)・労働:雇用労働力・形態:家計と経営は分離・生産物:すべて商品化

②家族による農業経営・目標:生活充足原則・労働:家族労働力を根幹・形態:経営と家計の未分離・生産物:一部家計に

③法人経営も家族経営も農業生産を通じて経済目的を実現する商品を手

にする

(2) 法人農業経営の競争力競争力(投資力、技術力、経営力、販売力)に優れる

(3) なぜ家族経営は根強く存在するのか家族経営の目的は農業所得による生活充足

(4) 農業では、法人経営だから市場競争で強いとは限らない(5) 法人農業経営が強みを発揮するには競争力に磨きを

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まとめ

1.「農」的産業の時代にふさわしく、農業経営資源を見直し、農業経営の有り様を考える

2.農業の苦境と日本の「北風」農業政策

3.6次産業化の事業主体(連携主体)として、目的・方法を明確にし、新領域に踏み出す

4.目標設定と計画的な取り組み、工程管理を行う。落とし穴を忘れるな

5.法人化は一つの方向。法人化がすべてを解決しない。

6.消費者・市場ニーズにどう応える:見える化

補.サプライチェーン・マネージメントの競争力

Page 90: 農業の経営環境と 法人化・6次産業化 · 日本・米国・euの国内支持の水準 0 20000 40000 60000 80000 100000 日本 米国 eu 国 内 支 持 0 20 40 60 80

ご静聴有り難うございました