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海洋構造物に作用する外力(つづき)
Realization of Integrated Ocean Development and Utilization systems
重力、浮力、静水圧
風による外力
流れによる外力
波による外力
地震による外力
その他(津波、積雪、氷荷重、船の衝突 など)
波による外力
• 邪魔者がない状態で規則波が進行するとき、水粒子は進行方向に長軸を持つ楕円軌道を描く周期運動をする
• 水中に構造物などが存在する周辺では、これらの水粒子が本来の経路を変更させられるので、その反動として構造物は周期的な力を受けることになる
波による外力
構造物が波から受ける力
波による外力の推定方法
モリソン式:細長部材に作用する流体力評価
ポテンシャル理論:物体の存在・運動を考慮した流場解析
波圧公式:防波堤など沿岸構造物に作用する波圧評価
波による外力
• 物体の存在による流場の変化が軽微であるとし、進入波の速度ポテンシャル(前回提示)で求められる水粒子の速度や加速度を用いて細長部材に作用する力を評価する方法
モリソン式を用いる波浪外力評価
モリソン式
• もともとは海底に固定された鉛直の杭に作用する波力推定式
• 流速の自乗に比例する抗力と流体加速度に比例する質量力の和で算定する実用式
• 浅海域や大波高に対応させて任意の波理論を適用できる
1 . ΔF = ー ρwCDD U|U|ΔZ + ρw CMU A ΔZ
2
ΔF : 部材直交方向に作用する長さΔZあたりの変動力 [N]ρw : 周囲流体の密度 [kg/m
3]CD : 抗力係数 [ー]D : 部材断面の代表寸法 [m]U : 波による変動を考慮した流速の部材直交方向成分 [m/sec]CM : 質量力係数 [ー]A : 部材の断面積 [m2].U : 水粒子の加速度の部材直交方向成分 [m/sec2]
修正モリソン式
• 運動する任意方向を向いた部材に適用できるように拡大した式
1 . .Δf = ー ρwCDD vr|vr|Δz + ρw {(CM-1)vr+v } AΔz
2
Δf : 部材直交方向に作用する長さΔzあたりの変動力 [N]ρw : 周囲流体の密度 [kg/m
3]CD : 抗力係数 [ー]D : 部材断面の代表寸法 [m]vr : 水粒子と部材の相対速度部材直交方向成分 [m/sec]CM : 質量力係数 [ー]A : 部材の断面積 [m2].vr : 水粒子と部材の相対加速度の部材直交方向成分.v : 水粒子加速度の部材直交方向成分 [m/sec2]
質量力係数CMと付加質量係数Cm(=CM-1)を混同しないように!
• 構造物の存在による流場(速度ポテンシャル)の変化を推定し、構造物表面の圧力分布を積分して力として評価する方法
ポテンシャル理論による波浪外力評価
フルード・クリロフ力
• 物体が無い場合のφ0を用いて、物体初期位置の仮想的な没水部表面位置の圧力分布を求め、法線方向成分を積分して得られる力を求める。このうち、静的成分が浮力、動的成分がフルード・クリロフ力と呼ばれるものである。
f として静水圧 p(x, y, z) = -ρgz を考え、上式にあてはめる。
左辺は圧力の法線方向成分(ただし外向き正)の面積分なので、符号を変えると、表面力としての浮力を示す。
∂p ∂p ∂pgrad p = ex + ey + ez = -ρg ez∂x ∂y ∂z
よって、上式の右辺は -ρgV ez となり、
浮力=ρgV ez (物体力のような浮力の表現;アルキメデスの原理)
ガウスの定理
f ・ n dS = grad f dVS V ∫∫ ∫∫∫
関数fの法線方向成分の面積分
物体内のfの変化ベクトルの体積積分
思い出してみよう! 「浮力について」
∂Φ0f として動水圧 p(x, y, z) = ρ を考え、上式にあてはめる。∂t
左辺は圧力の法線方向成分(ただし外向き正)の面積分なので、符号を変えると、表面力としてのフルード・クリロフ力を示す。
右辺をx方向について示すと、
∂Φ0Fx = ρ dVV ∂t ∂x
つまり、進入波の速度ポテンシャルを時刻tと座標xで微分した関数を体積積分すれば、x方向の力が求まる。
∫∫∫
ガウスの定理
f ・ n dS = grad f dVS V ∫∫ ∫∫∫
関数fの法線方向成分の面積分
物体内のfの変化ベクトルの体積積分
波強制力(Wave exciting force)
• 物体が存在し静止している場合の速度ポテンシャルは、Φ0とΦDの和(以下ΦAと表記)の形で推定される。
• ΦAは、微小振幅波理論で進入波のΦ0を導出した時と同様に、流体の連続の式、海面の条件、海底条件などが満たされるほか、物体の没水部表面の法線方向への速度がゼロであるという境界条件、進入波のもつエネルギーの一部が方向を変えて物体の周囲へ伝播していく際、無限遠方でその波は進入波と同じ周期を有する進行波になるという条件、これらを追加的な与件として求められる。
• ΦAを用いて物体没水部表面位置の圧力分布を求め、積分して得られる力(フルード・クリロフ力を含む)のことを、波強制力と称する。
ラディエーション力
• 進入波が無くて物体が動揺することを想定した場合の流場の速度ポテンシャルφRは、 φAを求める場合の「物体の没水部表面の法線方向への速度がゼロであるという境界条件」が、「周期的に動く物体の没水部表面の法線方向への相対速度がゼロであるという境界条件」に置き換えられて算出される。
• 一般に物体の6自由度の運動モード(上下、左右、回転方向など)ごとに、運動加速度に比例する力・モーメント、運動速度に比例する力・モーメントに分けて評価される。
• 全体をラディエーション力と称するが、運動加速度に比例する力を付加慣性力、運動速度に比例する力を造波減衰力と呼ぶ。
• 物体の形状が特殊な場合を除き、ΦAやΦRの推定は現実的には容易でないが、特異点分布法(境界要素法や有限要素法)や領域分割法(固有関数展開法)などを用いた汎用数値解析プログラムが種々開発され実用されている。
ポテンシャル理論で評価される流体力が作用する浮体の動的平衡の概念
フルード・クリロフ力
ディフラクション力
ラディエーション力
復原力 慣性力
波強制力 造波減衰付加慣性
+ = 0+++
物体の運動に依存しない 物体の運動に依存する
モリソン式とポテンシャル理論の適用範囲
直径/波長
波高/直径
波高/波長0.2
0.15
0.1
モリソン式の適用範囲
ポテンシャル理論の適用範囲
鉛直円柱に作用する波強制力の評価誤差5%以下を適用範囲とした場合
波漂流力• ポテンシャル理論で線形近似で求められる波浪外力(波周期と同じ周期の変動外力)とは別に、係留設計にとって重要な定常外力
• Near fieldでの考え方
物体表面の圧力分布を積算して波浪外力を求める際、積分領域に波面変動を考慮すると、外力=圧力×受圧面積であり、圧力変動∝acosωt、受圧面積の変動∝acosωtより、外力はcos2ωtに比例する成分を有する。
cos2ωt=(1+cos2ωt)/2 のうち、直流成分が波漂流力と解釈される
• Far fieldでの考え方
物体によって波の一部が反射されることにより、物体を囲む仮想空間に出入りする波の運動量の収支として波漂流力が説明される
波漂流力
• 長さLの浮体が横波中に受ける波漂流力;
𝐹𝐷 =1
2𝐶𝜌𝑔𝐿
𝐻
2
2
C:漂流力係数、ρ:海水密度、H:波高
• 漂流力係数は、波周期が短い場合には1(全反射)となり、長い場合には0(全透過)となる。
波漂流力
• 不規則波の場合、異なる周波数成分の圧力変動∝aPcosωPtと受圧面積の変動∝aAcosωAtが生じると、ωP+ωAの変動成分とωP-ωAの変動成分の力も生じることになる。これらを変動波漂流力と称し、大型船舶のような弾性浮体のスプリンギングや係留浮体の長周期動揺の原因と考えられている。
波圧公式を用いる波浪外力評価
波圧公式を用いる方法
サンフルーの式
•有限振幅波理論としてトコロイド波理論にもとづいて圧力分布を求めた式と、同式を直線近似した設計用の簡略式がある。
合田(ごうだ)の式
• 有限振幅波理論にもとづく重複波の波圧と、砕波の波圧(水面付近の衝撃圧;実験式)の両方を考慮し、不規則波にも対応させる波圧算定式。日本で広く用いられている
地震による外力
着底式構造物
• 陸上構造物と類似
• 海底の地震動が直接伝わる
• 付加質量を考慮する必要あり
地震による外力
浮遊式構造物
• 海底の地震動が係留装置を介して伝わる
• 海底の上下動が海水の弾性波(海震)として伝わる
震度法
• 地震動の主要周期>構造物の固有周期
• 地震力=構造物の見かけ質量×地震最大加速度
地震による外力
応答解析法
最大加速度
地震による慣性力を静的分布力として作用させる
応答スペクトル法
• 代表的な地震の波形に対する1質点・ばね系の応答(加速度・速度・変位・相対変位)の最大値を、数値計算して、系の固有周期を横軸にしてグラフ化したもの ⇒ 応答スペクトル
• 構造物の固有周期と減衰係数がわかれば応答値を読み取ることができる。エネルギーの周波数分布を示す一般的なスペクトルとは概念が異なるので要注意
地震による外力
応答解析法
気象庁HPより
時刻歴応答解析法
• 構造物の基礎に地震動を強制加振入力して応答を数値シミュレーションするもの多数のモードの固有周期について同時に考慮できる
非線形を考慮できる
直接部材力をチェックできる
地震による外力
応答解析法
係留された浮体については、一般に固有周期が非常に長いので、応答スペクトル法ではカバーされていない。係留の非線形を考慮するためにも時刻歴応答解析法が適切
その他の外力
• 震源地で発生する津波のシミュレーション
• 津波の伝播シミュレーション
• 沿岸域における水位変動・流速の予測 ⇒ 海洋構造物へ考慮
• 港内などの流れとその時間変化は今後の重要課題
その他の外力(1)
津波
積雪
• 重量として作用する積雪
• 風による外力を増大させる積雪(風圧面積の増大)
• 重心を高くする積雪(浮体の安定性)
• 漂流氷による衝突力
• 海氷の移動や結氷による氷圧力
• 着氷による重量増加や風圧面積の増大
• 温度応力
その他の外力(2)
氷による外力
衝突荷重
• 船舶の接岸力(運動エネルギーが構造物などの変形によって吸収)
• ヘリコプターの着地(緊急着陸時には重量の2.5倍(DNV))
• 並列係船(動揺による衝突)
• 事故(座礁、船同士、クジラなど)
浮体に影響を及ぼしうる自然環境要因
設計のための条件設定
自然環境条件により浮体に作用する荷重の推定
荷重に対する応答の推定
不規則な自然現象に対する確率論的取り扱い
海象の変化に対する統計的取り扱い
自然環境下で浮体の安全性や作業性を評価するには・・
海洋構造物の運動・構造応答
空気
海水
静水力学 一様流 乱れ
浮力復原力
流れ
風
波
突風
構造体 流体
海洋構造物と周囲の流体
船や浮体式構造物は海水に支えられているので、海水の動き(波)に対する応答は非常に重要。
海洋構造物や水中線状構造の周囲の流体の流れに対する応答も重要になる場合がある。
剛体浮体( 6自由度の運動 )
超巨大浮体構造;VLFS( 弾性変形運動 )
大型船舶・浮体構造( 弾性振動を伴う運動)
渦励起運動;VIM 渦励振;VIV
線状構造の大たわみ変形
上端加振による線状構造の変形振動
船体動揺による流体貨物の挙動- スロッシング- 減揺タンク
浮体式構造物
水中線状構造
波に起因する挙動
流れに起因する挙動
一点係留浮体の風見鶏挙動
流体による構造物の様々な応答
基礎講座の対象
剛体とみなせる浮体の運動応答
規則波に対する浮体の運動応答
規則波が作用した時の運動応答;多種多様
• 波と同じ周期の応答(6自由度、変形)
• 波漂流力に対する応答
• スラミングや青波・白波による衝撃力に対する応答
• 非線形共振現象(パラメトリック・ロール*など)
*パラメトリック・ロール:大型コンテナ船のように、喫水変動に対してGMの変動が大きい場合に、横揺れの復原力係数の周期的変動が引き起こす分数調波共振
基礎講座における浮体運動
• 剛体とみなせる浮体の運動を扱う
• 微小振幅の動揺を取り扱う
• 航行中の船舶のような前進速度の影響は取り扱わない
• 振れ回り運動のような有限回転変位は取り扱わない
並進運動
回転運動
Surge SwayHeave
Yaw RollPitch
浮体の6自由度運動(復習)
剛体とみなせる浮体
単胴型(mono-hull)
一般の船
ポンツーン(浮函)
ブイ
日本郵船;飛鳥Ⅱ(総トン数48621トン)
東大ボート部HPより
グレートバリアリーフ ポンツーン
多胴型(multi-hull)(双胴船;カタマラン)
高速船
ヨット・カヌー
洋上風車 など
Wave Piercer型高速フェリー「ナッチャンRena」(2012まで青函航路就航)
トリマランヨット
アウトリガーカヌー
剛体とみなせる浮体
SPAR型
海洋石油開発プラットフォーム
洋上風車 など
FLIP ship
剛体とみなせる浮体
半潜水型(セミサブ)
海洋石油開発プラットフォーム
高速船(SWATH) など
Dry towing boat
剛体とみなせる浮体
Concept of “Logistics Hub System” for Remote Deepwater Development
by JDeEP ; Japan offshore Design & Engin’g Platform
Proto-type Field Experiment for Floating Airportby TRAM ; Technological Research Assoc. of Mega-float
Concept of Floating Container Terminalby TRAM
講義の対象外(少しだけ);超大型浮体構造 VLFS
http://mydesultoryblog.com/2010/03/rogue-waves-kills-2-and-injures-14-on-a-cruise-ship-in-med/
スラミング・青波などによる衝撃荷重と船体弾性振動
http://www.eng.nus.edu.sg/EResnews/062014/rd1.html
スロッシング
6自由度の運動応答方程式(ポテンシャル理論の場合)
• 6×6行列式で表すことができる
(M+MA)X+C X+K X=F.. .
M ; 質量マトリクスMA ; 付加質量マトリクスC ; 減衰係数マトリクスK ; 復原力係数マトリクスX ; 変位ベクトルF ; 波強制力ベクトル(ただし方向によって位相差あり)
• 上記のうち、MA、Cがラディエーション、Fがフルードクリロフ力とディフラクションから得られる
• 2階常微分方程式の特解が、規則波に対する運動応答の解になる• 波強制力ベクトルの位相差影響を、複素数で表現したり、cos項
とsin項に分解したりして表すので、実質は12×12行列式を解くことになる
• 係留の非線形性が強い場合は、時間積分法でシミュレーション
6自由度の運動応答方程式(モリソン式を使う場合)
• 旧世代のセミサブのように構造物が細長部材で構成されている場合に適用(鉛直に長いSPARも該当)
• 細長部材を波長の数分の一程度の長さの要素に分割
• 要素ごとに代表位置で入射波の速度ポテンシャルから流体の速度・加速度を求め、また構造物の全体重心の動きから要素の代表位置の速度・加速度を換算
• 修正モリソン式で部材法線方向の流体力を計算して、構造物全体重心位置への作用力に換算して集約
• 結果的には、ポテンシャル理論と同様の方程式ができる
全体重心から各要素代表点の変位・速度・加速度を換算
• 行列式を使う方法が便利
• 右手系の座標軸を用いる場合、要素代表点が全体重心からLx、Ly、Lz離れているとすると、
x1 1 0 0 0 Lz -Ly X1x2 0 1 0 –Lz 0 Lx X2x3 0 0 1 Ly –Lx 0 X3x4 0 0 0 1 0 0 X4x5 0 0 0 0 1 0 X5x6 0 0 0 0 0 1 X6
=
X2
X3
X4Lz
Ly
要素代表点の変位ベクトル
全体重心の変位ベクトル
要素代表点に作用する力を全体重心へ換算
• Lx、Ly、Lzを使うと、変位の変換行列の対称行列を用いた関係式が得られる
F1 1 0 0 0 0 0 f1F2 0 1 0 0 0 0 f2F3 0 0 1 0 0 0 f3M4 0 –Lz Ly 1 0 0 m4M5 Lz 0 –Lx 0 1 0 m5M6 -Ly Lx 0 0 0 1 m6
=
X2
X3
X4Lz
Ly
要素代表点に作用する力のベクトル
全体重心に作用する力のベクトル
f3
f2
局所座標系において f = A x で力が表せる時、x =LX、F = LT f の換算関係を用いると、
F = LT A L X
となる
復原力を変位に対して線形バネで近似できるとすると、浮体の運動方程式は以下のような6×6の行列式を用いた線形2階微分方程式で表わされる
剛体浮体の運動方程式
MX+CX+KX=F・・ ・
M;浮体の見かけ質量(質量+付加質量)マトリクスC;減衰係数マトリクスK;復原力係数マトリクスX;変位ベクトルF;外力ベクトル
(左辺第一項は慣性項、第二項は減衰項、第三項は復原項と呼ばれる。付加質量・減衰係数・外力などについては後述する。)
解法は、前回説明済み
RAO (復習)
• Response Amplitude Operatorの頭文字
• 規則波に対する浮体の応答振幅を、波振幅や波傾斜で無次元化し、横軸に周波数をとってグラフにしたもの。波との位相差を併記する場合もある。
• 線形周波数応答関数、応答伝達関数、応答倍率などと称される
周波数(波長を浮体長さで無次元化して示す場合もある)
波に対する応答の大
きさ