Upload
others
View
0
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
複数の幹線が会合する人孔における新型の高落差処理方式による機能改善
福岡市 道路下水道局 ○月足 健太郎
株式会社 建設技術研究所 松本良一
1.はじめに
2.事業対象地点
3.ガイドウォール方式の特徴
図-2 中部2号幹線特殊人孔のレイアウト 図-1 福岡市における中部2号幹線の位置
福岡市で建設中である中部2号幹線特殊人孔では、流量と高さの異なる3本の幹線が会合するが、特殊人
孔用地と落差の制約から採用事例の多い階段式や、らせん案内路式ドロップシャフトが採用できない。この
ため、新型の高落差処理方式である「ガイドウォール方式」を採用して、特殊人孔への流入水を底部に円滑
に導水した。採用にあたっては、「ガイドウォール方式」の事例が少なく標準設計法が無いため、水理模型
実験を行い、落下水が特殊人孔底部に安全に着水することを確認した。これにより、機能改善とコスト縮減
を行った。
レインボープラン天神計画区域の面積は約260haで、対象となる施設は、中部2号幹線(上流)(集水面積
約68ha、延長約310m・管径φ3.0m、ピーク流量18.614m3/s)、中部7号幹線(集水面積約89ha、延長約1060m、
管径φ3.5m、ピーク流量21.726m3/s)と、中部4号幹線(延長約160m、管径φ2.2m、ピーク流量7.884m3/s)
と、中部2号幹線(下流)(延長約2300m、管径φ5.0m)である。幹線の平面線形を図-1に、特殊人孔(φ
10m)のレイアウトを図-2示す。特殊人孔の特徴は、流量の多い中部2号幹線と7号幹線が同程度の高さで
会合し、さらに、約10m下に4号幹線も会合する複雑な形状をしていることである。
ガイドウォール方式の特徴は以下の5点である。
・流入下水をいったんステージで受け、ステージ先端部に位置するスリットからの放流水を円形人孔の壁面
に沿わせて落下させる。
・適用流量と落差に制約はなく、管底高の異なる会合人孔にも適用が可能。
中部7号幹線
中部 4号幹線
中部 2号幹線(上流)
中部 2号幹線(下流)
落差24.6m
落差12.5m
P
福岡市役所
中部 2号幹線
中部 2号幹線
中部7号幹線
博多駅
中部 4号幹線
那の津ポンプ場
那珂川
那珂川
警固小学校
・中小降雨でも機能を発揮して、超過流量にも対応が可能。
・人孔内の水位が上昇しても、流下能力や給排気は阻害しない。
・他の高落差処理方式よりも構造が簡単・安価で、維持管理が容易である。
諸元は以下の方法で定めた。
① 流量が多く、流入管底高が近接する中部2号幹線(18.614m3/s)と、7号幹線(21.726m3/s)の雨
水を一つのステージ(上部ステージ)にまとめた後にスリットから放流し、円形人孔の壁面に沿わせて
落下させる。
② 7号幹線との流入管底高が約10m下に位置する4号幹線からの流量(7.884m3/s)は、上部ステージ
とは別の下部ステージにより、円形人孔の壁面に沿わせて落下させる。
③ 上部と下部のステージからの落下水が人孔の壁面で衝突することなく、人孔底部に着水する。
ステージの規模と敷高やスリットの幅と位置などの諸元は、以下の4つの基準で評価した。
① ステージの壁面により流入幹線の流れが阻害されず、全ての幹線の水深は80%以下とする。
② 流入幹線からの流れはステージで整流されて、スリットからの放流水脈は安定している。
③ スリットからの放流水脈は人孔壁面に沿って落下し、底部での最大作用圧が設計範囲内となる。
④ 人孔底部と、人孔から伏せ越し流入部における流況が安定している。
模型は特殊人孔全体と中部2号幹線、7号幹線、4号幹線を部分的に再現した。幹線の再現範囲は幹線内
径の15倍程度に相当する人孔から30m~50m区間とし、模型縮尺は実験精度と作業性から約1/20とした。また、
伏せ越し区間の水深はドライと満管の2種類とした。
実験では図-3に示すステージの規模と敷高や、スリットの幅と位置を変化させて、スリットからの放流
水脈が安定して人孔壁面に沿って落下する諸元を定めた。
上部ステージ
下部ステージ
給排気部分が大きい
4.実験方法
(1) 諸元設定の基本方針
(2) 実験模型
図-3 ガイドウォール方式の特徴(イメージ図)
・スリットからの流れを人孔壁面に沿わせて落下させる。・スリットにして上下の幅を変化させることで、各種の流量(中小降雨)にも対応できる。
給排気部
人孔平面図
給排気部
人孔内の水位が上昇しても給排気を阻害しない。
図-4 ガイドウォールの諸元
上部ステージとスリットの諸元
下部ステージとスリットの諸元
5.実験結果と考察
6.結論
問い合わせ先:福岡市 道路下水道局 建設部 中部下水道課 月足 健太郎
〒 810-8620 福岡市中央区天神1丁目8-1 TEL 092-711-4698 FAX 092-711-1875
写真-1 人孔壁面に沿った水脈の流況
中部7 号幹線
平 面
中部 2 号幹線 (上流)
▽-12.7m
スリットの位置
① ①
中部 4号幹線
平 面
中部 2 号幹線 (下流)
▽-21.5m
スリットの位置
① ①120°
中部 7号幹線
中部 4号幹線
中部2 号幹線(上流)
中部 2号幹線(下流)
中部 7号幹線 スリット ▽-10.016m
▽-12.7m
4.1m
1.0m
スリットの概要
中部 4号幹線 スリット
▽-20.130m
▽-21.5m
1.9m
0.5m
3.6m
スリットの概要
前節に示した①~④の評価基準を確保できるガイドウォールの諸元を定めた(図-4、写真-1,2)。
ガイドウォール方式は人孔の形状が円形であることを利用して、スリットからの流れを人孔壁面に沿わせ
て落下させる新型方式で、スリット形状の工夫により中小降雨でも機能を発揮できる。これにより、既存方
式の機能を改善し、簡便な構造により建設および維持管理コストも縮減できる。
今後の円形会合人孔における高落差処理方式への活用を提唱するが、現段階では個々に模型実験による検
討が必要である。