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Kuwamura Manual - BLver.1 / Oct. 2017 111 設計例2:3 階建倉庫 1 建物概要 本マニュアル設計編に基づいて,鉄骨造が有利とされている積載荷重やスパンが大きい 倉庫(3 階建)の試設計を行う。耐震設計はルート 3 とする。建物概要を1 に,平面図と 断面図を1 に示す。 1 建物概要 項目 設定値など 1.用途 倉庫 2.規模 階数 地上 3 地階なし 延床面積 4,032 建築面積 1,344 高さ 18.6m 3.構造概要 構造種別 鉄骨造 骨組形式 両方向ラーメン構造 構造階高 13 6.2m 主要スパン 張間 12m×桁行 7m 柱梁接合形式 ノンダイアフラム形式 柱脚 固定(基礎梁に埋込み) 基礎種別 既成コンクリート杭 4.設計ルート X 方向,Y 方向 ともにルート 3 5.使用鋼材 STKN400B STKN490B SN400B

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設計例2:3階建倉庫

1 建物概要

本マニュアル設計編に基づいて,鉄骨造が有利とされている積載荷重やスパンが大きい

倉庫(3 階建)の試設計を行う。耐震設計はルート 3 とする。建物概要を表 1 に,平面図と

断面図を図 1 に示す。

表 1 建物概要

項目 設定値など

1.用途 倉庫

2.規模

階数 地上 3 階

地階なし

延床面積 4,032 ㎡

建築面積 1,344 ㎡

高さ 18.6m

3.構造概要

構造種別 鉄骨造

骨組形式 両方向ラーメン構造

構造階高 1~3 階 6.2m

主要スパン 張間 12m×桁行 7m

柱梁接合形式 ノンダイアフラム形式

柱脚 固定(基礎梁に埋込み)

基礎種別 既成コンクリート杭

4.設計ルート X 方向,Y 方向

ともにルート 3

5.使用鋼材

柱 STKN400B

STKN490B

梁 SN400B

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2階床伏図(見下げ)

X1 X2 X3

Y1

Y2

Y3

Y4

Y5

Y6

Y7

Y8

Y9

C1 C2 C1

C1 C2 C1

C1 C2 C1

C1 C2 C1

C1 C2 C1

C1 C2 C1

C1 C2 C1

C1 C2 C1

C1 C2 C1

G1 G1

G2 G2

G1 G1

G11

G11

G11

G11

G11

G11

G11

G11

G11

G12

G11

G11

G11

G11

G11

G11

G11

G11

G11

Y1通り軸組図

X1 X2 X3

GL

C1 C2 C1

G1 G1

G1 G1

G1 G1

2400012000 12000

56000

7000

7000

7000

7000

7000

7000

7000

7000

24000

12000 12000

18600

6200

6200

6200

1FL

2FL

3FL

RFL

G2 G2

G2 G2

G2 G2

G2 G2

G2 G2

G2 G2

G12

G12

G12

G12

G12

注)特記無き限り下記による。

1. 鉄骨柱芯は通り芯に同じとする。

注)特記無き限り下記による。

1. 鉄骨柱芯は通り芯に同じとする。

Y

X

図 1 建物の平面図と断面図

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2 設計条件

本マニュアル及び関連技術基準に基づいて設定した具体的な設計条件を以下に列挙する。

(1)積載荷重は,近年の事例(流通関係の倉庫)に基づき決定した。

(2)床構造は,フラットデッキを使用した RC とし,屋根は折板とした。

(3)外壁は ALC 版・ロッキング構法を想定し,一次設計の層間変形角は 1/120 以下とす

る。

(4)梁は不完全合成梁を想定し,梁の曲げ剛性はスラブの合成効果による正負曲げの平均

値とし,曲げ耐力はスラブの合成効果を考慮しない。

(5)保有水平耐力は,安全限界変位の規定(平 12 建告 1457 号(最終改正 平 25 国交告

773 号)第 6 の 2)に準拠し,いずれかの層の層間変形角が 1/75 となったときを以っ

て決定する。

(6)構造解析には線材置換モデルを用いる。

(7)構造の弾性解析は立体弾性解析,弾塑性解析は立体弾塑性解析(荷重増分解析)とす

る。

(8)弾塑性解析における仕口の回転剛性は,次のトリリニア型でモデル化する。

(9)柱梁接合部及び継手の保有耐力接合,梁の保有耐力横補剛,柱脚部の脆性的判断防止

は満足するものとして Dsを設定する。

(10)柱脚部の強度信頼性を確保し,1 階の層間変形角を小さくするため,固定柱脚(基礎

梁に埋込み)とする。

(11)保有水平耐力を計算する際の材料強度は F の値をそのまま用いた(法令上は 1.1 倍

してよいことになっている)。

(12)増厚仕口鋼管の余長は 以上を確保し,標準化するために 150mm で統一する。せ

いの異なる梁が取付く場合は,下フランジに段差が生じるため,せいの大きな梁の下

フランジ側余長を 150mm とし,せいの小さな梁の下フランジ側余長はそれより大きく

なる。

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3 部材断面

柱と梁の部材断面をそれぞれ表 2 と表 3 に示す。柱は,柱鋼管(シャフト部分)に対し

て仕口鋼管(パネル部と余長部)を増厚してある。

表 2 柱断面リスト

階 C1 C2

柱断面 仕口鋼管の厚さ 柱断面 仕口鋼管の厚さ

3 φ-500×16 28* φ-500×16 28*

2 φ-500×22 28* φ-500×25 32*

1 φ-500×25* 28* φ-500×25* 32*

・仕口鋼管の厚さは見下げ階で表示し,R 階の仕口鋼管は 3 階と同じとする。

・*印で示す部材の使用鋼材は STKN490B,その他は STKN400B とする。

表 3 梁断面リスト

階 G1 G2 G11 G12

R H-440×300×11×18 H-440×300×11×18 H-340×250×9×14 H-340×250×9×14

3 H-700×300×13×24 H-800×300×14×26 H-440×300×11×18 H-588×300×12×20

2 H-800×300×14×26 H-900×300×16×28 H-588×300×12×20 H-700×300×13×24

・使用鋼材は SN400B とする。

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4 荷重・外力

4.1 床荷重

設計用床荷重を表 4 に示す。

表 4 床荷重 (単位:N/㎡)

階 種別 床用 小梁用 フレーム用 地震用 備考

屋根

D.L. 500 500 500 500

柱と梁の自

重は自動計

算により別

途算入する

L.L. 0 0 0 0

T.L. 500 500 500 500

3 階床

2 階床

荷捌場

D.L. 4,300 4,300 4,300 4,300

L.L. 10,000 8,000 6,000 3,900

T.L. 14,300 12,300 10,300 8,200

1 階床

荷捌場

D.L. 3,900 3,900 3,900 3,900

L.L. 10,000 8,000 6,000 3,900

T.L. 13,900 11,900 9,900 7,800

4.2 地震力

地震力算定用の構造諸元を表 5 に,設計用地震層せん断力を表 6 に示す。

表 5 地震力算定用の構造諸元

項目 数値

地震地域係数 Z =1.0

地盤種別 Tc =0.6(第 2 種地盤)

設計用一次固有周期 T =0.558sec(略算)

振動特性係数 Rt =1.0

標準せん断力係数 Co =0.2(許容応力度等計算用)

Co =1.0(保有水平耐力計算用)

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表 6 地震層せん断力

階 Wi

(kN)

ΣWi

(kN) αi Ai

Co =0.2

Ci Qi

3 1837.0 1837.0 0.066 2.596 0.519 953.8

2 13018.0 14855.0 0.534 1.348 0.270 4005.0

1 12950.3 27805.3 1.000 1.000 0.200 5561.1

・Co =1.0 に対する Ciと Qiはそれぞれ表の値を 5 倍したもの。

5 一次設計(許容応力度等計算)

5.1 曲げモーメント図

張間方向と桁行方向の代表構面の曲げモーメント図を図 2,3,4,5 に示す。数値の単位

は kN・m である。

図 2 Y5 通り曲げモーメント図<固定+積載荷重>

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図 3 Y5 通り曲げモーメント図<地震力>

図 4 X2 通り曲げモーメント図<固定+積載荷重>

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図 5 X2 通り曲げモーメント図<地震力>

5.2 許容耐力の検定

作用断面力の許容耐力に対する比を図 6,7 に示す。柱は軸力と曲げモーメントの組合せ

を考慮した検定値,梁は曲げモーメントの検定値で,部材毎の最大値を示す。

<長期> <短期>

図 6 Y5 通り検定図

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<長期>

<短期>

図 7 X2 通り検定図

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主要な柱と梁の検定値(最大値)を表 7,8 にまとめた。すべて 1.0 以下であり,許容耐

力以内におさまっている。

表 7 柱の検定値一覧

柱検定値

C1 C2

長期 短期 長期 短期

3 0.28 0.26 0.07 0.23

2 0.52 0.70 0.19 0.72

1 0.30 0.69 0.28 0.79

表 2.3.5 梁の検定値一覧

梁検定値

G1 G2 G11 G12

長期 短期 長期 短期 長期 短期 長期 短期

R 0.18 0.26 0.18 0.26 0.09 0.25 0.06 0.28

3 0.52 0.62 0.75 0.71 0.22 0.50 0.21 0.57

2 0.42 0.65 0.59 0.73 0.14 0.59 0.16 0.65

ノンダイアフラム仕口の検定結果を表 9 に示す。すべて 1.0 以下であり,許容耐力以内に

おさまっている。

表 9 ノンダイアフラム仕口の検定値一覧

仕口検定値

X 方向 Y 方向

長期 短期 長期 短期

R 0.17 0.27 0.04 0.24

3 0.76 0.85 0.20 0.49

2 0.65 0.89 0.09 0.60

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5.3 層間変形角,剛性率,偏心率

層間変形角,剛性率,偏心率の計算結果は表 10 のとおりである。剛性率 Rsは 0.6 以上,

偏心率 Reは 0.15 以下,層間変形角γは 1/120 以下であり,設計クライテリアを満足してい

る。

表 10 層間変形角,剛性率,偏心率の計算結果一覧

方向 階 δ(cm) γ Rs Fs Re Fe Fes

X

3 1.67 1/371 1.30 1.00 0.000 1.00 1.00

2 2.50 1/248 0.87 1.00 0.000 1.00 1.00

1 2.64 1/235 0.83 1.00 0.000 1.00 1.00

Y

3 1.71 1/363 1.28 1.00 0.000 1.00 1.00

2 2.50 1/248 0.87 1.00 0.000 1.00 1.00

1 2.60 1/239 0.84 1.00 0.000 1.00 1.00

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6 二次設計(保有水平耐力計算)

6.1 耐力比

各階(床レベル)の柱,梁,仕口,パネルの耐力,及び柱の耐力比を表 11 に示す。Σは

当該階での総和を表す。MpC*は各節点での上下の柱鋼管の全塑性モーメント(軸力考慮)

を柱端フェイスモーメントに換算したものである。 MpB*は各節点での X,Y 両方向の梁の全

塑性モーメントのベクトル合成値である。仕口の MpJ*も MpB*と同様である。MpPは各節点

でのパネルの全塑性モーメント(軸力考慮)である。Σmin(x, y, z)は,各節点での x, y, z

の最小値をその節点の耐力とし,各階の全節点について総和したものである。軸力は,常

時荷重時の軸力に Co =0.2 の地震時の軸力を(Ds /0.2)倍したものを加えた値とする。

柱の耐力比は 1.0 を下回っているので,両方向とも部分崩壊形と判定される。

表 11 柱,梁,仕口,パネルの耐力,及び柱の耐力比

方向 階 ΣMpC*

(kN・m)

Σ1.1MpB*

(kN・m)

Σ1.1MpJ*

(kN・m)

Σ1.1MpP

(kN・m)

Σmin(1.1MpB*,

1.1MpJ*,1.1MpP)

(kN・m)

ΣMpC*/Σmin

(1.1MpB*,1.1MpJ*,

1.1MpP)

X

R 26041 30858 31952 62161 30858 0.84

3 61720 74735 82266 115720 74735 0.83

2 82623 101244 109267 130786 101244 0.82

崩壊形の判定 部分崩壊

Y

R 26041 30858 31952 48020 30858 0.84

3 61720 74735 82266 73043 73043 0.84

2 82623 101244 109267 93384 93384 0.88

崩壊形の判定 部分崩壊

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123

6.2 保有水平耐力

図 8,9 に荷重増分解析(骨組全体の立体解析)の結果を示す。

図 8 X 方向の荷重-変形曲線

図 9 Y 方向の荷重-変形曲線

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

0 1/100 1/50

Q(k

N)

層間変形角(rad)

1F

2F

3F

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

0 1/100 1/50

Q(k

N)

層間変形角(rad)

1F

2F

3F

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124

表 12 に保有水平耐力の検定結果を示す。ラーメン構造(ブレースの分担率ゼロ)である

こと,及び柱と梁が FA ランクであることにより,Ds を 0.25 とした。X, Y 両方向ともに必

要保有水平耐力 Qunを満たしている。

表 12 保有水平耐力の検定結果

方向 層 柱,梁群

の種別 Ds Fes

Qud

(kN)

Qun

(kN)

Qu

(kN) Qu /Qun

X

3 FA 0.25 1.00 4769.5 1192.4 1790.8 1.50

2 FA 0.25 1.00 20025.0 5006.3 7518.8 1.50

1 FA 0.25 1.00 27805.5 6951.4 10440.1 1.50

Y

3 FA 0.25 1.00 4769.5 1192.4 1876.2 1.57

2 FA 0.25 1.00 20025.0 5006.3 7877.3 1.57

1 FA 0.25 1.00 27805.5 6951.4 10938.0 1.57

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125

7 まとめ

ノンダイアフラム構法による 3 階建倉庫の設計例について所見をまとめると次のようで

ある。

(1)柱と梁の断面サイズは,通常の通しダイアフラム形式と同程度である。例えば,3 階

建のほぼ同規模の工場を通しダイアフラム形式角形鋼管柱で設計した例(2008 年版冷

間成形角形鋼管設計・施工マニュアル)によると,柱のサイズは□-450×25(下層部)

~□-400×16(上層部),梁のサイズはH-900×300×16×28(下層部)~H-600

×200×11×17(上層部)となっており,本マニュアルの設計例では柱が 1 サイズアッ

プ,梁は同等となっている。ただし,冷間成形角形鋼管設計・施工マニュアルの設計

例は床荷重が本例より小さいので,それを考慮すれば,柱の断面サイズもノンダイア

フラム形式でさほど大きくはならないとみてよい。

(2)仕口が半剛接となる関係で構造が柔らかくはなるが,一次設計での層間変形角の最大

値は 1/235 であり,通常の制限値 1/200 を満たした。これは,スパンが大きいため,

梁の曲げ変形が支配的となるためである。

(3)長期荷重(固定荷重+積載荷重)による作用応力度は長期許容応力度に対してやや余

裕がある。その検定比の最大値は,柱が 0.52,梁が 0.75,ノンダイアフラム仕口が 0.76

であった。

(4)短期荷重(固定荷重+積載荷重+Co=0.2 の地震力)による作用応力度は短期許容応

力度に対してちょうどよいレベルにある。その検定比の最大値は,柱が 0.79,梁が 0.73,

ノンダイアフラム仕口が 0.89 であった。

(5)保有水平耐力は必要保有水平耐力をかなり上回っており(1.50 倍),終局耐震性能に

はじゅうぶん余裕がある。

(6)柱の耐力比が 1.0 を下回るため,部分崩壊形と判定された。その原因は,スパンが大

きいため,梁せいが大きくなり梁の全塑性モーメントが大きくなること,及びそれに

伴って仕口の塑性耐力も大きくなるためである。