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河川水辺の国勢調査[河川版] 見直し方針検討資料 資料-6-1 本資料の内容は、委員会での検討のたたき台としてまとめたものである。別途実 施したアンケート調査結果の反映が途上段階での資料であり、今後内容が変わ り得るものである。

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河川水辺の国勢調査[河川版]

見直し方針検討資料

資料-6-1

本資料の内容は、委員会での検討のたたき台としてまとめたものである。別途実

施したアンケート調査結果の反映が途上段階での資料であり、今後内容が変わ

り得るものである。

1

1. 調査見直し方針の視点

表 コスト縮減や有効活用を踏まえた調査内容の見直しの視点(案)

陸域調査(植生図

作成調査、群落組

成調査、植生断面

調査)

水域調査構造物調査

調査実施の頻度

調査対象

調査地区の設定

調査時期および回数の設定

事前調査(文献調査)

事前調査(聞き取り調査)

現地踏査

調査方法

同定

計数・計測

標本の作成と保管

調査結果とりまとめ

様式の作成

鳥類項目

現地調査

事前調査

調査頻度等

両生類・爬虫類・哺乳類

陸上昆虫類等

河川環境基図

魚類 底生動物 植物

■コスト縮減や有効活用を踏まえた調査内容の見直しの視点

【視点①】他の手段で代替し効率化が図られると考えられる調査      の必要性

【視点②】河川環境の変化があまり見られない調査地区について      の必要性

【視点③】調査内容の簡略化など効率化が図られると考えられる      調査の必要性

【視点④】河川管理における調査の活用状況からみた調査      の必要性

■調査内容の見直しにあたり留意すべき視点

河川環境に関する基礎情報としてこれまでに蓄積されてきたデータを活用するには、データの精度について、従来と同程度の精度を確保する

2

2. 視点別見直し方針の検討

2.1 他の手段で代替し効率化が図られると考えられる調査の必要性の検討【視点①】

2.1.1 構造物調査 (1) 現状

河川環境基図作成調査は、陸域調査、水域調査、構造物調査により構成されている。こ

のうち、構造物調査は、水制、河川横断工作物の位置・種別を記録する調査である。

河川環境基図作成調査は、平成18年度より開始された調査であり、平成22年度末まで

位置情報を含めた整理が概ねすべての河川で完了する予定である。

【構造物調査の流れと内容】

①既存資料の整理

・平面図、空中写真、河川横断工作物台帳等の既存資料をもとに、河川横断工作物

(橋梁を除く)、護岸、水制等の位置を整理する。魚道がある場合には、魚道の位置

及び通水状況についても整理する。

②現地調査の実施

・現地調査により既存資料の整理で不明であった構造物等の位置図の修正、追加を

行う。魚道を有する河川横断工作物については、魚道の通水状況についても現地調

査により確認する。

③調査結果の記録

・河川横断工作物等の位置、諸元等を整理する。魚道の位置と通水状況を記録する。

・上記の整理したものを護岸等調査票、河川横断工作物調査票として作成する。

④写真撮影

3

(2) アンケート結果等 アンケートの自由記入欄で構造物調査の効率化に関して回答された例を示す。

・ 構造物調査は、構造物台帳の対応と重複し、また、活用もされにくい情報と思われるので、絞

り込めるのではないだろうか。

・ 「構造物調査」を一部やめる。構造物台帳をデータベース化して活用する方法もあるのではな

いでしょうか。

・ 構造物調査は、河川(縦断)の連続性調査でも定期的に調査し、収集資料や写真撮影の方

向等も酷似していることから、現地調査対象からの省略も可能ではないかと思われる。その

代わりに、既往調査とりまとめ後に、河川管理・河川利用者の観点からの考察内容等を更に

充実させるべきと考える。

・ 構造物調査を行うよりも、施工した構造物を管理した方が寸法も確実だし、構造的特徴もよく

わかる。構造物の完成年などは、資料が残っていない、あるいは残っていても紙媒体のため、

調べる労力が多大になる。完成したときにGIS上に、位置や完成年、基本諸元などを整理して

おくと、維持管理の優先順位の参考にもなり、水辺の国勢調査のコスト縮減にもなる。

(3) 仮に構造物調査を他の調査で代替した場合のメリット、デメリット 内 容

見直すメリット コスト縮減

見直すデメリット ・構造物の状況が確認されない可能性があるが、他の調査で代替

によりデメリットが緩和される可能性がある。

(4) 見直しの方向性(たたき台) 構造物調査は、河川横断工作物台帳等の既存資料の活用や、多自然川づくり追跡調査、

洪水発生後の施設状況等の既存調査により代替できるのではないか。

4

2.1.2 文献調査 (1) 現状

「河川水辺の国勢調査[河川版]」においては、現地調査の他に、事前調査として「文献調

査」と「聞き取り調査」を実施している。両調査ともに該当する調査項目に関する生物相、重

要種・外来種の生息・生育状況、その他のトピックなどを整理することなっている。

このように両調査で得られる情報は重複する可能性がある。そこで、近年の文献調査に

おいて収集した文献について、発行時期や情報の入手先について把握し、聞き取り調査で

どの程度カバーできる可能性があるか以下に整理した。

平成 18 年度以降実施されている 4 巡目調査のうち平成 18~20 年度を対象とした文献

調査における収集文献数を以下に示す。

1調査あたりに収集した「国交省以外の調査報告書、文献、論文」の数は、調査の6年前

以前では、3.8~7.7 と比較的多いが、調査の5年前以降では1.0~4.9 と比較的低い値を示

し、特に魚類、底生動物、植物では 2.0 以下を示した。

表 2-1 文献調査による収集文献数

河川水辺の国勢調査は 3~4 巡が経過しており文献情報、現地調査データは相当蓄積されてい

る。

過去 3~4 巡分の調査結果については、河川水辺の国勢調査を委託した民間調査会社へ貸与

できることになっており、過年度のデータ、文献情報については特段の資料入手の努力をしなくとも、

相当程度入手できる状態になっている。

調査の6年前以前 3.1 5.6 8.6調査の5年前以降 1.6 1.7 3.3

合計 4.7 7.2 12.0調査の6年前以前 3.0 3.8 6.8調査の5年前以降 1.4 1.0 2.4

合計 4.4 4.8 9.2調査の6年前以前 1.7 4.5 6.2調査の5年前以降 1.3 1.4 2.7

合計 3.0 5.9 8.9調査の6年前以前 1.9 5.4 7.3調査の5年前以降 0.6 2.7 3.3

合計 2.5 8.1 10.6調査の6年前以前 1.3 5.9 7.2調査の5年前以降 0.7 2.2 2.9

合計 2.0 8.1 10.1調査の6年前以前 1.0 7.7 8.7調査の5年前以降 0.8 4.9 5.7

合計 1.8 12.6 14.4調査の6年前以前 2.2 5.4 7.6調査の5年前以降 1.2 2.2 3.4

合計 3.4 7.6 11.0※:表中の数値は河川水辺の国勢調査の1調査あたりの平均値を示す。

両生類・爬虫類・哺乳類

陸上昆虫類等

全体

魚類

底生動物

植物

鳥類

発行時期国土交通省以外の

調査報告書・文献・論文等

合計

国土交通省による調査報告書

(既往の河川水辺の国勢調査を含む)

5

(2) アンケート結果等 アンケートの自由記入欄で文献調査の効率化に関して回答された例を示す。

・ 事前調査を簡略化し、文献調査は重要種の更新確認のみ、聞き取り調査は前回現地調査

時のアドバイザーの助言によるものとする。

(3) 仮に文献調査を廃止した場合のメリット、デメリット 内 容

見直すメリット コスト縮減

見直すデメリット 生物相、重要種、外来種、その他のトピックなどの文献情報を踏ま

えずに調査することになる可能性がある。

(4) 見直しの方向性(たたき台) 生物相、重要種、外来種等に関する文献調査は、聞き取り調査により代替できるのでは

ないか。

聞き取り調査時に河川水辺の国勢調査アドバイザー等の専門家から最新の情報を提供

して頂き、生物相等に関する情報は補完できるのではないか。

6

2.2 河川環境の変化があまり見られない調査地区についての必要性の検討【視点②】

(1) 現状 河川環境は 1 年 365 日を通じて変動している。また、その変動が仮に他の河川に比べ小さい

としても、数年、数十年の長さで見ると大きな出水により河川環境は変化するものである。

(2) 見直しの方向性(たたき台) 「河川環境の変化があまり見られない調査地区」という視点からは、特に見直しをする点は

ないのではないか。

7

2.3 調査内容の簡略化など効率化が図られると考えられる調査の必要性の検討 【視点③】

2.3.1 調査サイクル (1) 現状

現在のサイクルは、魚類、底生動物、河川環境基図で5年に1回、植物、鳥類、両生類・

爬虫類・哺乳類、陸上昆虫類等で 10 年に 1 回となっている。

(2) アンケート結果等 河川水辺の国勢調査のコストを減らすために考えられる方策として、調査サイクル(5 年

に 1 回、10 年に 1 回等)を長くすることの適否に関するアンケート結果では、直轄河川管理

者で「どちらかというとすべきでない」、「すべきでない」の合計が約 60~90%となっており、

研究者で約 70%、民間調査会社で約 90%となっている。

河川

0%

20%

40%

60%

80%

100%

魚類 底生動物 鳥類 両生類・爬虫類・哺乳類

陸上昆虫類等

植物 環境基図

回答割合

すべきである どちらかというとすべきである どちらかというとすべきでない すべきでない わからない

(N = 24) (N = 18)

(N = 15)

(N = 20) (N = 20)(N = 21)

(N = 16)

直轄河川管理者

都道府県

事業種別

回答 魚類 底生動物 鳥類両生類・爬虫類・哺乳類

陸上昆虫類等

植物動植物

プランクトン(ダム湖のみ)

環境基図

すべきである 2 0 0 0 0 1 0

どちらかというとすべきである 10 2 0 0 0 0 0

どちらかというとすべきでない 12 1 1 1 1 1 1

すべきでない 9 1 0 0 0 0 0

わからない 5 0 0 0 0 0 0

質問(1) 河川水辺の国勢調査のコストを減らすために考えられる以下のそれぞれの方策について、その実施が適切か否かお考えをお答えください。

①調査サイクル(5年に1回、10年に1回等)を長くする

河川事業

8

アンケートの自由記入欄で調査サイクルの効率化に関して回答された例を示す。

・ 本調査は、平成2年度試行から始め、平成17年度終了時点(3巡目終了)にて、調査サイクルの変更

と調査地点の見直し減少を実施した。今まで以上の調査サイクル延長や調査地点の減少、調査手法

の簡素化によるコスト縮減では、正確な調査結果や重要種等の生息経年変化等に対応できないと考

える。

・ 調査サイクルを長くすると経年的な変化もしくは急激な河川環境の変化を把握できなくなる恐

れがあるため、年間当たりの調査回数や時期、調査地区を少なくする方法が良いのではない

かと考えます。

・ 「①調査サイクル」については、これ以上長くするとデータの利用価値は格段に下がるように思われま

す(【魚】)。現在のところ、日本中の様々な河川で5年毎での経年データが蓄積されています。現在で

はまだ十分には経年変化を解析できるほどの経過年数は経っていませんが(15年程度?)、この類の

データは気象観測データのようなもので、長年蓄積されるほど、その利用価値、可能性は拡がると思

います。よって、この段階で、調査サイクルを長くすることは、これまでのデータの価値を大きく損なうこ

とになるのではないかと思われます。どうしても減らすとなれば、調査対象河川を1都道府県あたり3本

くらいに絞り込む。調査頻度を10年に1回とする。ただし、できれば1河川あたりの調査地点数は増や

す。

・ 陸域調査の調査サイクル10年に1回はあまりにも長すぎる。1回の調査で地点あたりせいぜい1日程度

の調査しか実施せず、これを10年に1回程度の頻度で繰り返したところで、経年変化を把握しうるデー

タが収集できるとは到底思えない。地点数を半分に減らしてでも調査サイクルを短くするほうが望まし

い調査項目もあると考えられる。例えば、鳥類スポットセンサスでは全国一律1kmピッチでの調査が定

められているが、河川延長が100kmにも達する河川において1kmピッチでデータを集積することはあま

り意味が無く、2kmピッチにして5年に1回実施するほうがはるかに有意義ではないか。

研究者

民間調査会社

①調査サイクル(5年に1回、10年に1回の頻度で調査)を長くする

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

1

すべきである どちらかというとすべきである どちらかというとすべきでない すべきでない わからない

N=167

①調査サイクル(5年に1回、10年に1回の頻度で調査)を長くする

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

1

すべきである どちらかというとすべきである どちらかというとすべきでない すべきでない わからない

N=116

9

(3) 仮に調査サイクルの見直し(5 年に 1 回を 10 年に 1 回)を行った場合のメリット、デメリット 内 容

見直すメリット コスト縮減

見直すデメリット ・H18 年度の河川水辺の国勢調査マニュアル改定において、生物

分類群の中で河川環境の変化を最も直接的・先行的に受けやす

い「魚類」「底生動物」以外は、調査サイクルを長く(5年に1回を10

年に 1 回)したところである。

・そもそも、自然環境には変動がつきものであり 5 年に 1 回の調査

でも得られる情報は限定的なものにとどまっている。これを 10 年に

1 回にすれば、情報の解像度が低下し、時間的なトレンドの分析な

ど各種分析への活用がしにくくなる。

(4) 見直しの方向性(たたき台) 直轄河川管理者、研究者、民間会社ともに、これ以上の調査サイクルの長期化については

否定的な意見がほとんどであり、調査サイクルの見直しは困難ではないか

10

2.3.2 調査時期・回数 (1) 現状

現在の年間の調査時期・回数は、以下のとおりである。

【魚類】 :春から秋にかけて 2 回以上

【底生動物】:初夏~夏と冬~早春の 2 回以上

【植物】 :春~初夏と秋を含む 2 回以上

【鳥類】 :繁殖期と越冬期の年 2 回(ただし、既知の調査等で干潟にシギ・チドリ類が多

数渡来すると予想される河川では、干潟の調査箇所のみを春渡りと秋渡りの

時期にも調査し年 4 回)

【両生類・爬虫類・哺乳類】:早春から初夏に 2 回、秋に 1 回を含む計 3 回以上

【陸上昆虫類】:春、夏、秋の 3 季を含む 3 回以上、河川環境基図は秋に 1 回以上

(2) アンケート結果等 河川水辺の国勢調査のコストを減らすために考えられる方策として、年間の調査時期・

回数を減らすことの適否に関するアンケート結果では、直轄河川管理者で「どちらかという

とすべきでない」、「すべきでない」の合計が約 70~80%となっており、研究者で約 90%、民

間調査会社で約 95%となっている。

河川

0%

20%

40%

60%

80%

100%

魚類 底生動物 鳥類 両生類・爬虫類・哺乳類

陸上昆虫類等

植物 環境基図

回答割合

すべきである どちらかというとすべきである どちらかというとすべきでない すべきでない わからない

(N = 24) (N = 18)

(N = 15)

(N = 20) (N = 20)(N = 21)

(N = 16)

直轄河川管理者

都道府県

事業種別

回答 魚類 底生動物 鳥類両生類・爬虫類・哺乳類

陸上昆虫類等

植物動植物

プランクトン(ダム湖のみ)

環境基図

すべきである 1 0 0 0 0 1 0

どちらかというとすべきである 4 1 0 0 0 0 0

どちらかというとすべきでない 14 1 0 0 0 0 0

すべきでない 14 2 1 1 1 1 1

わからない 5 0 0 0 0 0 0

質問(1) 河川水辺の国勢調査のコストを減らすために考えられる以下のそれぞれの方策について、その実施が適切か否かお考えをお答えください。

②年間の調査回数、時期を減らす

河川事業

11

アンケートの自由記入欄で調査時期・回数の効率化に関して回答された例を示す。

・ 指標種、重要種、貴重種、外来生物にしぼり、年間の調査回数や時期を減らしても良いので

全地区(管理区間全区間)について調査してほしい。活用する場合、代表地点で詳しい情報

があっても、事業箇所が離れていると活用に難がある。

・ 年間の調査回数、時期:渡りの時期や繁殖期、越冬期など季節的な変化を把握できなくなり、

その季節特有の種を見落とす可能性があるため、減らすべきではない。

・ 「②年間調査回数」については、「どちらかというとすべきでない」と回答しましたが、場所、分

類群によっては、専門家を交えて検討することにより縮小できるものもあるかと思います。

・ コスト削減のために,回数を減らすのはやむを得ないとしても,精度や信頼性が落ちないよう

にすべき

・ 1回の調査を充実させ、その河川の特徴を捉えられるような調査を実施する方が良いと考え

ます。調査スパンを狭めるより、1回の調査において、地点数や時期を増やす方が良いと考え

ます。

(3) 仮に年間の調査回数を減らした場合のメリット、デメリット 内 容

見直すメリット コスト縮減

見直すデメリット ・H18 年度の河川水辺の国勢調査マニュアル改定において、各生

物項目の生活史等を考慮して、減少させた見直し調査回数は、

生物相を把握できるほぼ最小限の回数であると考えられる。

・生物の出現は 1年の中で変動するものであり、調査回数をさらに

減らすと、確認種の捕捉率・精度の低下・不確実さが生じ、種の

確認が十分でなく生物相が捉えきれない可能性がある。

(4) 見直しの方向性(たたき台) 直轄河川管理者、研究者、民間会社ともに、年間での調査回数のこれ以上の削減につい

ては否定的な意見がほとんどであり、年間の調査回数のこれ以上の見直しは困難ではない

か。

研究者

民間調査会社

②年間の調査回数、時期を減らす

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

1

すべきである どちらかというとすべきである どちらかというとすべきでない すべきでない わからない

N=163

②年間の調査回数、時期を減らす

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

1

すべきである どちらかというとすべきである どちらかというとすべきでない すべきでない わからない

N=116

12

2.3.3 調査地区 (1) 現状

縦断的に変化する河川環境に生息・生育している生物を適切かつ効率的に把握するた

めに、セグメント等の河川環境縦断区分を設定する。この河川環境縦断区分ごとに、調査

項目ごとに調査地区をそれぞれ 1 地区以上設定している。なお、生物相を把握するために

必要であると判断される場合には、該当の河川環境縦断区分内に複数の調査地区を設定

している。

(2) アンケート結果等 河川水辺の国勢調査のコストを減らすために考えられる方策として、調査地区を減らす

ことの適否に関するアンケート結果では、直轄河川管理者で「どちらかというとすべきでな

い」、「すべきでない」の合計が約 60~90%となっており、研究者で約 80%、民間調査会社

で約 80%となっている。

河川

0%

20%

40%

60%

80%

100%

魚類 底生動物 鳥類 両生類・爬虫類・哺乳類

陸上昆虫類等

植物 環境基図

回答割合

すべきである どちらかというとすべきである どちらかというとすべきでない すべきでない わからない

(N = 24) (N = 18)

(N = 15)

(N = 19) (N = 20)(N = 21)

(N = 16)

直轄河川管理者

都道府県

事業種別

回答 魚類 底生動物 鳥類両生類・爬虫類・哺乳類

陸上昆虫類等

植物動植物

プランクトン(ダム湖のみ)

環境基図

すべきである 2 0 0 0 0 0 0

どちらかというとすべきである 6 0 0 0 0 1 0

どちらかというとすべきでない 15 2 1 1 1 1 1

すべきでない 10 1 0 0 0 0 0

わからない 5 1 0 0 0 0 0

質問(1) 河川水辺の国勢調査のコストを減らすために考えられる以下のそれぞれの方策について、その実施が適切か否かお考えをお答えください。

③調査地区を減らす

河川事業

13

アンケートの自由記入欄で調査地区の効率化に関して回答された例を示す。

・ 全地区(管理区間全区間)実施する場合、コストが膨大になることが予想される。よって、現

実的には数km毎に調査する等になるかと思うが、その場合、調査地点間の漏れをフォロー

するために学識経験者、野鳥の会、漁協、地元研究者等の情報を元に補足調査を実施すれ

ば、限られた予算で広範囲をカバーできる調査が可能かと思う。

・ 【植】平成18年度前後の全体調査計画の見直しによって、調査地点数及び調査面積は大幅

に減少しています。河川やダムにおける植物相を把握するためには、これ以上調査項目、調

査地点、調査回数等を減らすのは難しいと考えます。調査の効率化については、河川水辺の

国勢調査以外の生物調査(例えば、改修に伴う生物調査、河川整備計画関連の生物調査

等)における貴重種の確認情報を事前に把握することが有効と考えます。

・ 平成18年のマニュアル改訂に先立ち、平成17年度に河川水辺の国勢調査の「全体調査計

画」策定に業務で係り、弊社が当時係った、河川に関しては、地点や回数の見直しを行い、

かなりコスト削減に寄与していると思っております。ただ、他の河川で、「全体調査計画」策定

の際、地点等の見直しを行ったのか疑問に思う河川があるのも事実です。このような河川に

ついて見直しを行うことで、さらにコスト削減につながる可能性はあると考えます。

・ 調査地区や回数については、全体調査計画策定時にできるだけの絞り込みが行われている

ので、これ以上減らすことは難しいと思います。 【魚】【底】【鳥】【昆】【プ】【基】について調査

を実施していますが、マニュアルに準拠した調査が精度確保のためのギリギリの線と感じて

います。

(3) 調査地区を減らした場合のメリット、デメリット 内 容

見直すメリット コスト縮減

見直すデメリット ・H18 年度の河川水辺の国勢調査マニュアル改定において、類似

した環境を有する範囲において、水系一貫の視点のもと、調査地

区の無駄な重複がないように見直したところである。

・さらに調査区間を減らした場合、全体の確認種数が減少するいう

ことだけでなく、水系の視点から生物生息・生育分布域の全体像

が把握できなくなる問題が想定される。

研究者

民間調査会社

③調査地区を減らす

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

1

すべきである どちらかというとすべきである どちらかというとすべきでない すべきでない わからない

N=163

③調査地区を減らす

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

1

すべきである どちらかというとすべきである どちらかというとすべきでない すべきでない わからない

N=116

14

(4) 見直しの方向性(たたき台) 直轄河川管理者、研究者、民間会社ともに、これ以上の調査地区の削減については否定

的な意見が多い。しかし、民間調査会社の中で 2 割弱の回答者が調査地区を減らすことにつ

いて肯定的な回答をしている。全体としては、これ以上の調査地区の一律的な削減は難しいと

しても、個別の河川毎に精査すれば、若干の削減余地はあるのではないか

15

2.3.4 調査対象 (1) 現状

現在以下の調査項目・調査対象で実施されている。

「生物種目録」に挙げられている分類群を対象とする

陸上昆虫類と真正クモ類陸上昆虫

「生物種目録」に挙げられている分類群を対象とする

植物プランクトン、動物プランクトン動植物プランクトン*1

-環境基図

家畜を含む野生化したイヌ、ネコ等の家畜については調査対象とするが、明らかに飼育されているものについては調査対象としない

両生類・爬虫類・哺乳類

両・爬・哺

家禽種を含む鳥類鳥 類

逸出が確認された栽培種については調査対象とするが、明らかに植栽されたものについては調査対象としない

維管束植物(シダ植物および種子植物)植 物

水生昆虫類を主体とし、貝類、甲殻類、ゴカイ類、ヒル類、ミミズ類等を含む底生動物

底生動物

魚類魚 類

備考調査対象調査項目

「生物種目録」に挙げられている分類群を対象とする

陸上昆虫類と真正クモ類陸上昆虫

「生物種目録」に挙げられている分類群を対象とする

植物プランクトン、動物プランクトン動植物プランクトン*1

-環境基図

家畜を含む野生化したイヌ、ネコ等の家畜については調査対象とするが、明らかに飼育されているものについては調査対象としない

両生類・爬虫類・哺乳類

両・爬・哺

家禽種を含む鳥類鳥 類

逸出が確認された栽培種については調査対象とするが、明らかに植栽されたものについては調査対象としない

維管束植物(シダ植物および種子植物)植 物

水生昆虫類を主体とし、貝類、甲殻類、ゴカイ類、ヒル類、ミミズ類等を含む底生動物

底生動物

魚類魚 類

備考調査対象調査項目

(2) アンケート結果等 河川水辺の国勢調査のコストを減らすために考えられる方策として、調査対象を絞るこ

との適否に関するアンケート結果では、直轄河川管理者で「どちらかというとすべきでない」、

「すべきでない」の合計が約 50~70%となっており、うち両生類・爬虫類・哺乳類、陸上昆虫

類等については、他の生物群に比べその割合は低くなっている。研究者で約 80%、民間調

査会社で約 50%となっている。

河川

0%

20%

40%

60%

80%

100%

魚類 底生動物 鳥類 両生類・爬虫類・哺乳類

陸上昆虫類等

植物 環境基図

回答割合

すべきである どちらかというとすべきである どちらかというとすべきでない すべきでない わからない

(N = 24) (N = 18)

(N = 15)

(N = 19) (N = 20)(N = 21)

(N = 16)

直轄河川管理者

16

研究者

民間調査会社

都道府県

事業種別

回答 魚類 底生動物 鳥類両生類・爬虫類・哺乳類

陸上昆虫類等

植物動植物

プランクトン(ダム湖のみ)

環境基図

すべきである 5 0 0 0 0 0 0

どちらかというとすべきである 9 1 0 0 0 1 0

どちらかというとすべきでない 6 2 1 1 1 1 1

すべきでない 6 0 0 0 0 0 0

わからない 12 1 0 0 0 0 0

質問(1) 河川水辺の国勢調査のコストを減らすために考えられる以下のそれぞれの方策について、その実施が適切か否かお考えをお答えください。

④調査対象を絞る(例:指標種や重要種だけを調査する。調査項目(例えば「構造物調査」)を一部やめる。)

河川事業

④調査対象を絞る(例:指標種や重要種だけを調査する。調査項目を一部やめる。)

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

1

すべきである どちらかというとすべきである どちらかというとすべきでない すべきでない わからない

N=162

④調査対象を絞る(例:指標種や重要種だけを調査する。(例:調査項目(構造物調査など)の一部取りやめ)

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

1

すべきである どちらかというとすべきである どちらかというとすべきでない すべきでない わからない

N=116

17

アンケートの自由記入欄で調査対象の効率化に関して回答された内容については、以下のと

おりであった。

・ 植物、昆虫類は調査対象とする分類群をもっと限定するような工夫を考えてはどうか。

・ 指標種、重要種、貴重種、外来生物にしぼり、年間の調査回数や時期を減らしても良いので

全地区(管理区間全区間)について調査してほしい。活用する場合、代表地点で詳しい情報

があっても、事業箇所が離れていると活用に難がある。

・ 指標種や重要種は現在のものであり、絶滅危惧種の指定など今後改定される可能性がある。

生物相や生態系を把握するためにはすべての種を調査する必要がある。構造物調査や物理

環境については要検討。

・ 国調資料を見る際、河道計画設定区間、工事実施区間及び維持管理を行う区間内に①重

要種(貴重種)はいるか、②外来種(特定外来種を含む)はいないか、③代表種(優占種)は

何かに着目している。そのため、調査対象はこの3項目を主体として調査を行えば良いので

はないかと考える。

・ 河川環境に変化がなく、鳥類の生息状況に大きな変化がない箇所については、調査対象(重

要種や特定外来生物など)や対象地区を絞ることも可能と考える。

・ 両生類爬虫類哺乳類では、両生類の他はカメ類やカヤネズミ、ヌートリア等水域に特化した

種に絞る。

(3) 仮に指標種や重要種に調査対象を絞った場合のメリット、デメリット 内 容

見直すメリット コスト縮減

見直すデメリット ・ 現在は指標性が薄いと考えている種が、実は環境変化を表す指標性が高いこと

が後年にわかることもある。このような場合、調査対象の絞り込みが、過去のデ

ータを後から調べられないという問題につながる。

・ 多くの生物が食物連鎖等の輪でつながっており、指標種だけに絞った調査では、

生態系の全体的分析を困難にするおそれがある。

・ 環境の変化や知見の集積とともに指標種の選定基準の改訂が適宜必要となり、

そのたびに多くの検討の労力を要する。

・ 重要種が河川等の環境を代表しているわけでは必ずしもなく、河川環境の保全を

適切に行う上で必要な生態情報が得られなくおそれがある。

(4) 見直しの方向性(たたき台) 直轄河川管理者及び研究者では、調査対象の絞り込みについては否定的な意見が多い。

具体的には、鳥類において指標種や重要種は現在のものであり、今後改定される可能性が

あることから調査対象は市掘り込まないほうがよいという意見もあった。

一方、民間調査会社では約半分の回答者が調査対象の絞り込みについて賛成する回答

をしている。その自由記述の回答をみると、陸上昆虫についての調査対象の絞り込みを提

案する意見や、爬虫類及び哺乳類の調査の際にカメ類、カヤネズミ、ヌートリア等の水域に

特化した種に絞ることを提案する意見等があった。

全体としては、調査対象の一律的な絞り込みは難しいとしても、両生類・爬虫類・哺乳類、

陸上昆虫類等については、調査対象の絞り込みの可能性があるのではないか。絞り込みを

行った場合の影響等についてさらに検討する必要がある。

18

2.3.5 調査方法・同定作業 (1) 現状

現在の調査方法は、以下のとおりである。また、現在の同定作業は、「河川水辺の国勢

調査のための生物リスト」に挙げられている参考文献や留意事項を活用し、できるだけ詳し

く同定することとしている。

(2) アンケート結果等 河川水辺の国勢調査のコストを減らすために考えられる方策として、調査方法・同定作

業の効率化に関するアンケート結果では、直轄河川管理者で「どちらかというとすべきでな

い」、「すべきでない」の合計が約 50~70%となっており、研究者で約 50%、民間調査会社

で約 60%となっている。直轄河川管理者、研究者で「わからない」が約 20~30%となってお

り、他のコスト縮減方策における回答の傾向より割合が大きい。

河川

0%

20%

40%

60%

80%

100%

魚類 底生動物 鳥類 両生類・爬虫類・哺乳類

陸上昆虫類等

植物 環境基図

回答割合

すべきである どちらかというとすべきである どちらかというとすべきでない すべきでない わからない

(N = 24) (N = 18)

(N = 14)

(N = 20) (N = 20)(N = 21)

(N = 16)

・任意採集法(見つけ採り、スウィーピング法、ビーティング法、石おこし採集、)、ライトトラップ法(ボックス法)、ピットトラップ法、目撃法、その他の採集法(適宜)

陸上昆虫

・植物プランクトン:採水法・動物プランクトン:採水法、ネット法

動植物プランクトン*1

・目視確認環境基図

・両生類:原則捕獲とし、捕獲できなかった場合は目視確認、鳴き声で確認。・爬虫類:原則捕獲とし、捕獲できなかった場合は目視確認、脱皮殻などで確認。・哺乳類:目撃法(無人撮影装置を含む)、フィールドサイン法、トラップ法(ネズミ用トラップ、墜落かん、モグラトラップ)。

両・爬・哺

・スポットセンサス法・集団分布地調査

鳥 類

・目視確認植 物

・定性採集・定量採集

底生動物

・捕獲による調査(投網、タモ網、定置網、刺網、サデ網、はえなわ・どう、地曳網、玉網、カゴ網、セルびん、潜水による捕獲、電撃捕漁器、掘り返し 等)・潜水観察、目視確認(容易に同定できる種のみを対象)

魚 類

調査方法

・任意採集法(見つけ採り、スウィーピング法、ビーティング法、石おこし採集、)、ライトトラップ法(ボックス法)、ピットトラップ法、目撃法、その他の採集法(適宜)

陸上昆虫

・植物プランクトン:採水法・動物プランクトン:採水法、ネット法

動植物プランクトン*1

・目視確認環境基図

・両生類:原則捕獲とし、捕獲できなかった場合は目視確認、鳴き声で確認。・爬虫類:原則捕獲とし、捕獲できなかった場合は目視確認、脱皮殻などで確認。・哺乳類:目撃法(無人撮影装置を含む)、フィールドサイン法、トラップ法(ネズミ用トラップ、墜落かん、モグラトラップ)。

両・爬・哺

・スポットセンサス法・集団分布地調査

鳥 類

・目視確認植 物

・定性採集・定量採集

底生動物

・捕獲による調査(投網、タモ網、定置網、刺網、サデ網、はえなわ・どう、地曳網、玉網、カゴ網、セルびん、潜水による捕獲、電撃捕漁器、掘り返し 等)・潜水観察、目視確認(容易に同定できる種のみを対象)

魚 類

調査方法

直轄河川管理者

19

民間調査会社

研究者

都道府県

事業種別

回答 魚類 底生動物 鳥類両生類・爬虫類・哺乳類

陸上昆虫類等

植物動植物

プランクトン(ダム湖のみ)

環境基図

すべきである 4 1 0 0 0 0 0

どちらかというとすべきである 9 0 0 0 0 0 0

どちらかというとすべきでない 8 2 1 1 1 1 1

すべきでない 5 0 0 0 0 1 0

わからない 11 1 0 0 0 0 0

質問(1) 河川水辺の国勢調査のコストを減らすために考えられる以下のそれぞれの方策について、その実施が適切か否かお考えをお答えください。

⑤調査方法・同定作業の効率化(例:調査努力量の低減、同定レベルの見直しなど)

河川事業

⑤調査方法・同定作業の効率化(例:調査努力量の低減、同定レベルの見直しなど)

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

1

すべきである どちらかというとすべきである どちらかというとすべきでない すべきでない わからない

N=157

⑤調査方法・同定作業の効率化(例:調査努力量の低減、同定レベルの見直しなど)

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

1

すべきである どちらかというとすべきである どちらかというとすべきでない すべきでない わからない

N=115

20

アンケートの自由記入欄で調査方法・同定作業の効率化に関して例を示す。

・ 底生動物は種数が多いので、種までは同定を行わないで、○○科の一種というような分類を行えば、

コスト縮減できる。

・ スポットセンサス法(基本的に河川縦断方向1km毎に観察定点)による調査の場合は、調査対象区

間が長いほど調査日数を要することとなり、気候の変化等により同時性が確保できなくなる恐れが

ある。よって、調査対象区間が長い場合は、調査箇所の間隔を影響のない範囲で長く設定すること

により、コスト縮減が図られると思われる。例えば、基本2kmピッチでのスポットセンサス調査を実施

し、調査結果により確認種が極端に少ない等の場合には、別途補足調査を実施する。

・ 1箇所あたりの調査時間は10分程度であり、努力量の低減は期待できない。また、鳥類調査は採

取ではなく目視による調査が中心のため、同定レベルを見直し仮に下げた場合、作業の非効率化、

調査の信頼性低下につながる恐れがある。

・ 室内分析が必要な調査項目は全て実施するとしながら、調査対象を絞ることが必要と考えます。例

えば、目視確認が出来る種群だけで充分だと思います。その替わり、調査回数を増やし、データの

普遍性を高めるべきだと思います。

・ 調査項目は、統計的観点より、変更しない方がよい。

・ 過去の調査結果を踏まえ、あまり採取されていない調査手法(例えば墜落法など)は止めてもいい

のでは

・ 特に、陸上昆虫類は種数が多く、同定作業等に非常に手間がかかるものと考えられる。河川管理者

として必要なレベルと生物分野の学識者として必要なレベルは異なると思われるので、そのような観

点から同定作業については河川管理者として必要なレベルまでとするべき。

・ 成果の評価の目安として前回の確認種数を用いるのは問題が多い。(同定の詳細さを争う競争のよ

うになってしまい、モニタリングとして意味をなさず、コストを増大させている)多くの分類群について、

もっと低い精度の同定レベルを許容する(例えば、ミミズ・ユスリカなどは科までなど。高精度でバラ

ツキがあるよりも、低精度でも均質なデータの収集に努めたほうがデータの利用価値は高くなると思

われる)。

(3) 仮に調査方法・同定作業を効率化した場合のメリット、デメリット

内 容

見直すメリット コスト縮減

見直すデメリット ・調査方法を限定しすぎた場合には、種の確認が十分でなく生物

相が捉えきれない可能性が想定される。

・ 生息地が限られる種が確認できなくなるおそれがある。

・調査手法を変更することにより経年的な傾向を把握できなくなる

おそれがある。

(4) 見直しの方向性(たたき台)

民間調査会社を対象としたアンケートでは、調査方法に関して、生物の捕獲方法など具体

的な見直しについての回答があった。また、同定作業の効率化に関しては、経年的な比較の

便のために見直さない方が良いという意見もあった。一方で、陸上昆虫やミミズ、ユスリカ類な

どについての同定の簡略化を求める意見もあった。

全体としては、専門家の意見を踏まえつつ今後見直しの検討が必要でないか。

21

2.3.6 市民・NPO 等との連携 (1) 現状

現在、河川水辺の国勢調査では、市民・NPO 等との連携した調査は、基本的には行わ

れていない。

(2) アンケート結果等 河川水辺の国勢調査のコストを減らすために考えられる方策として、市民・NPO 等と連

携することの適否に関するアンケート結果では、直轄河川管理者で「どちらかというとすべ

きでない」、「すべきでない」の合計が約 30~50%となっており、研究者で約 40%、民間調

査会社で約 70%となっている。

河川

0%

20%

40%

60%

80%

100%

魚類 底生動物 鳥類 両生類・爬虫類・哺乳類

陸上昆虫類等

植物 環境基図

回答割合

すべきである どちらかというとすべきである どちらかというとすべきでない すべきでない わからない

(N = 24) (N = 18)

(N = 14)

(N = 20) (N = 19)(N = 20)

(N = 15)

直轄河川管理者

都道府県

事業種別

回答 魚類 底生動物 鳥類両生類・爬虫類・哺乳類

陸上昆虫類等

植物動植物

プランクトン(ダム湖のみ)

環境基図

すべきである 7 0 0 0 0 1 0

どちらかというとすべきである 13 2 0 0 0 0 0

どちらかというとすべきでない 4 1 1 1 1 1 1

すべきでない 3 0 0 0 0 0 0

わからない 11 1 0 0 0 0 0

質問(1) 河川水辺の国勢調査のコストを減らすために考えられる以下のそれぞれの方策について、その実施が適切か否かお考えをお答えください。

⑥市民、NPO等と連携した調査の活用によるコスト縮減(例:野鳥の会、漁協)

河川事業

22

アンケートの自由記入欄で市民・NPO 等との連携に関して回答された例を示す。

・ 現地調査は、投網、タモ網等での捕獲による確認を基本としているが、特に投網は個人の技

量により結果に差が生じやすい。よって、地元漁業共同組合の熟練した技術を持った(かつ

当該河川の魚類生息環境を熟知した)者が捕獲調査全般を実施し、コンサルタントが調査結

果の記録に専念することで、作業効率の向上(コスト縮減)に繋がると思われる。

・ 鳥類調査は、野鳥観察団体が多くあるので検討の余地はあると考えます。しかし、委託の方

法などの枠組み作りは必要

・ 市民団体や漁協等の調査結果を、委員会等に耐えうる資料として誰がお墨付きを与えるの

でしょうか?データの品質確保に懸念があります。

・ NPOや学校との連携について、講習会や説明会の実施、相談窓口の設置、道具の提供など

バックアップ体制を整えれば、危険性のない部分で連携できると思われる。

・ 調査対象となる種に係わるNPOが存在し、協力を得られるならば、調査員の人件費を削減で

きる可能性がある。ただし、調査対象が3種類混合であり、それぞれの中でも種が多岐にわ

たるため、NPOの協力による経費削減が、どの程度寄与できるかは難しい要素がある。

・ 市民、NPO等の非営利団体による調査を行う事で調査コストの縮減は図れるが、同定や資

料整理面でのノウハウが乏しく、必ずしも必要とする成果とならない可能性がある

研究者

民間調査会社

⑥市民、NPO等と連携した調査の活用によるコスト縮減(例:野鳥の会、漁協)

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

1

すべきである どちらかというとすべきである どちらかというとすべきでない すべきでない わからない

N=162

⑥市民、NPO等と連携した調査の活用によるコスト縮減(例:野鳥の会、漁協)

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

1

すべきである どちらかというとすべきである どちらかというとすべきでない すべきでない わからない

N=116

23

(3) 仮に市民、NPO 等と連携した調査を実施した場合のメリット、デメリット 内 容

見直すメリット ・コスト縮減

・河川水辺の国勢調査の連携を通じて、河川管理者との意思疎通が図

られ、市民協働型の河川管理に資するものとなる。

見直すデメリット ・生物調査が趣味の熱心な調査者が標準を上回る努力量での調査を

行う一方で、経験の浅い調査者による調査・同定精度が課題となる

等、調査の手法・努力量をできるだけ均一にするという国勢調査の考

え方からのブレ幅が大きくなることが想定される(例:魚類において同

定の難易度が高い種-シマドジョウ類・タナゴ類・ハゼ科等を種や亜

種レベルまで適切に同定することを求められるか等)。調査者の技術

水準を担保する方策をどのように講じることができるかが課題となる。

・発注手続きの公正、競争性の確保に課題がある。河川水辺の国勢調

査を請け負う調査会社等に対しては各種資格要件等を求め、競争的

な入札を経て契約を結んでいる。

(4) 見直しの方向性(たたき台) 専門家や関係団体等の意見を踏まえ、従来の精度を確保した上で市民、NPO 等とのどのよ

うに連携ができるかについて、検討が必要でないか。

24

2.4 河川管理における調査の活用状況からみた調査の必要性の検討【視点④】 (1) アンケート結果等

アンケート結果では、魚類、鳥類、植物、環境基図で約 40~50 件と活用事例が相対的

に多く、底生動物、両生類・爬虫類・哺乳類、陸上昆虫類等で約 30件と活用事例が相対的

にやや少なかった。

また、活用事例を以下に示す。

■計画段階

・正常流量検討時における魚類の維持流量検討に際して、水辺の国勢調査の結果を踏ま

えて、対象魚種等の選定に活用した。

・河川整備計画における河道計画検討についても、水辺の国勢調査の結果を踏まえて魚

類の生息場所・産卵場所等を考慮した計画とした。

・既設魚道の改築の検討時において、水辺の国勢調査の結果を踏まえて、対象魚種等の

選定に活用した。

■工事段階

・工事の事前調査をする際に調査結果を活用した。

・貴重種等の営巣木としての有無を確認し、伐採箇所の縮小を行った。

・工事の配慮事項について、必要に応じて学識経験者など専門家より意見を頂き判断資料

として活用した。

・支障木の伐採工事で外来種を優先的に実施するため、分布状況を確認し範囲を設定し

た。

■維持管理段階

・河川占用・許可工作物の許認可の判断の際や、除草・樹木伐採の際に、重要な生息場

の有無を確認するための資料として活用した。

・水辺の国勢調査結果により、河川区域内の外来種等の進入状況や範囲を確認し、除草

河川

0

20

40

60

80

魚類 底生動物 鳥類 両生類・爬虫類・哺乳類

陸上昆虫類等

植物 環境基図

回答数

計画策定 工事実施 維持管理

(N = 41) (N = 43)

(N = 31)

(N = 30)(N = 53) (N = 51)(N = 29)

直轄河川管理者

25

時の特定外来種に対する処理などの注意喚起として活用した。

(2) 見直しの方向性(たたき台) 生物分類群等ごとに活用事例に多少の差はあるものの、計画・工事・維持管理の事業フェ

ースのそれぞれで調査結果は一定程度活用されていることがわかる。また、資料 4-1 の p.5

からの「河川水辺の国勢調査の結果が無かった場合の影響」や同資料 p.26 からの「河川水

辺の国勢調査の価値」に示されるように、調査の実施の必要性自体はは費用面を考慮して

も十分説明できるものと考えられる。

しかし、現在の活用状況が本来の活用ポテンシャルに対してどの程度の水準にあるかは

明確にはわからず、さらなる効果的な活用の検討の余地があるのではないか。