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医食農連携と地場産農産物 の活用 大澤俊彦 名古屋大学名誉教授 愛知学院大学心身科学部長 (株)ヘルスケアシステムズ取締役 e-mail: [email protected] 名古屋大学生命農学研究科 愛知学院大学心身科学部 (株)ヘルスケアシステムズ 食料自給率向上研究会基調講演(2013.12.21

食料自給率向上研究会基調講演(2013.12.21 医食農連携と ......医食農連携と地場産農産物 の活用 大澤俊彦 名古屋大学名誉教授 愛知学院大学心身科学部長

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医食農連携と地場産農産物の活用

大澤俊彦 名古屋大学名誉教授 愛知学院大学心身科学部長 (株)ヘルスケアシステムズ取締役 e-mail: [email protected]

名古屋大学生命農学研究科

愛知学院大学心身科学部

(株)ヘルスケアシステムズ

食料自給率向上研究会基調講演(2013.12.21)

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摂取量 摂取量

摂取量 摂取量

リスク

リスク

リスク

リスク

食物・栄養素摂取量とリスクとの関係

津金昌一郎、がん予防食品の新展開(大澤俊彦監修)、p.47 (2005)

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主要な抗酸化食品因子

• トコフェロール類 --- ナッツ、野菜、果物

(ビタミン E) 油糧種子など

• アスコルビン酸 --- 野菜、果物など

(ビタミン C)

• カロテノイド類 --- 野菜、果物など

(βーカロテン、リコピンなど)

海洋産物

(アスタキサンチン)

• フラボノイド類

フラボノール類 --- タマネギ、ブロッコリー

(ケルセチン、ケンフェロールなど)

イソフラボノイド類--- ダイズ製品

(ダイゼイン、ゲネステインなど)

カテキン類--- 茶、ココアなど

(エピカテキン、エピカテキンガレートなど)

• カテキンオリゴマー類 --- ココア、チョコレート、

赤ワインなど

• アントシアニン類---穀類、豆類、野菜、

果物など

• コーヒー酸誘導体

クロロゲン酸 ---ダイズ、コーヒー

オリザノール--- 米種子

• リグナン類

セサミン、セサモリン、セサミノール配糖体

--- ゴマ種子

エンテロラクトン類---亜麻種子、カラス麦など

• メラノイジン類 --- 発酵ダイズ食品など

(醤油、味噌など)

• アミノ酸、ペプチド類 --- タンパク加水分解物

(魚肉、ダイズタンパクなど)

• ハーブ、スパイス --- テルペノイド類、

クルクミノイド類

• グルタチオン --- ブロッコリー、豚肉製品

• その他---コエンザイム Q10, αーリポ酸、

フィチン酸など

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ORAC値の高い果物や野菜を摂取することで、

体だけではなく脳の老化も予防する?

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食品の抗酸化力指標=ORACで良いのか?

農産物名 ORAC値

ニンジン 697

カボチャ

トマト

483

387

赤キャベツ

農産物名 ORAC値

2,496

ショウガ 14,840

ニンニク 5,708

表:各野菜の生鮮物重量当たりのORAC値

緑黄色野菜 緑黄色野菜以外の野菜

カロテノイド類を多く含む緑黄色野菜で、ORAC値は低くなる

USDA Database for the Oxygen Radical Absorbance Capacity (ORAC) of Selected Foods,

Release 2より抜粋 → 2012年5月にデータベースの取下げ

ORACのみでは、食品の抗酸化力を正しく評価できない

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AOUの定義

AOU-PとAOU-Cの併記

ポリフェノール類を中心とした

抗酸化物質

AOU-P

分析方法:ORAC

親水性抗酸化物質:H-ORAC

新油性抗酸化物質:L-ORAC

AOU-P = H-ORAC + L-ORAC

AOU

AOU-C

分析方法:SOAC

カロテノイド類を中心とした

抗酸化物質

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野菜と果物のAOU分析

総務省統計局平成21年家計調査より購入重量が明記された野菜と果物

野 菜 果 物

キャベツ

タマネギ

ダイコン

トマト

バレイショ

キュウリ

ニンジン

ハクサイ

モヤシ

レタス

ネギ

ナス

カボチャ

ブロッコリー

ホウレンソウ

カンショ(サツマイモ)

サヤマメ

サトイモ

ピーマン

ゴボウ

生シイタケ

レンコン

タケノコ

バナナ

リンゴ

ミカン

ナシ

スイカ

カキ

イチゴ

グレープフルーツ

メロン

ブトウ

モモ

オレンジ

キウイフルーツ

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野菜と果物の推奨摂取量とAOU

野菜と果物の1日当たりの推奨摂取量

平成21年家計調査での年間野菜・果物購入重量(総務省) 各野菜と果物のAOU(参考値)

野菜 350g、果物 200g

推奨摂取量から AOUを計算すると・・・

AOU-P 4,900 mmol TE(仮) (野菜 2,500,果物 2,400)

あくまで計算値であり、生体への有効性を示す目安量ではない

AOU-C 1,300 mmol α -Toc E(仮) (野菜 1,100,果物 200)

野菜350g 果物200g

健康日本21より (厚生労働省)

食事バランスガイドより (農林水産省,厚生労働省)

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・肥満の脂肪組織ではTNF-a , IL-6 といった炎症性

サイトカインの産生が亢進、抗炎症性アディポサイトカインの

産生が減少することが知られている

・肥満の脂肪細胞ではマクロファージの浸潤が増加する

酸化ストレスと肥満

・糖尿病モデルマウスでは七週齢で糖尿病は発症していないが

脂肪組織においてNADPH oxidase の mRNA レベルでの発現上昇と

SOD や GPx といった抗酸化酵素の活性減少が認められた

J Clin Invest. 2004

J Clin Invest. 2003

レジスチン TNF-a

PAI-1

MCP-1

IL-6

レプチン アディポネクチン

アディポサイトカイン

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三菱レーヨン研究所との共同研究で、酸化ストレス、炎症反応、抗酸化酵素、解毒酵素、

肥満関連の遺伝子、221種類を搭載したオーダーメイドチップを作製した。

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(三菱レーヨン研究所との共同研究)

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・血中脂質上昇

・インスリン抵抗性

・脂肪細胞肥大化

・インスリン分泌不全

脂質代謝

異常

運動不足

高脂肪食

高カロリー摂取

肥満、糖尿病、

動脈硬化の

発症・病態の進展

食事療法 薬物療法

食品因子

メタボリックシンドローム予防における食品因子の役割

ライフスタイル

未病診断と食品因子による抗肥満評価法に、ニュートリゲノミクスと共にプロテーム解析、特に「抗体チップ」による評価法が期待されている。

(例:アディポネクチン、レプチン、mcp-1、PAI-1、IL-6、UCP2、ACOX1、PLN など)

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バイオマーカーと疾病予防

バイオマーカーの探索

採尿・採血

摂 取

がん・動脈硬化などの 予兆をとらえる

病気と個人にあった 機能性食品の開発

オーダーメードの病気予防

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酸化バイオマーカーによる健康診断?

活性酸素により体の成分が傷害を受ける。

それに伴って生じる酸化修飾物(生成物)が組織、血液、尿中に出現する。

酸化修飾物の量を測定することで、体の酸化と 還元のバランスがわかる。

この測定により健康評価できるのではないか。 (指標=マーカーとなりうる?)

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微生物変換によるメリット

嗜好性の改善(味覚の改善、脱色、etc.)

抗酸化性の上昇

吸収率の改善、etc.

目的

香味・苦味成分、素材の微生物変換による

嗜好性の改善と機能性増強作用

醗酵:テンぺ、八丁味噌、醗酵レモン果皮、 発酵ゴマ脱脂粕、テトラヒドロクルクミン、 アスタキサンチン、コプリーノ

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運動による酸化ストレス 過度な運動

紫外線照射

高齢者

酸化ストレス

生体組織酸化的損傷

酸化的傷害をバイオマーカーにて測定(筋肉、肝臓 など)

HEL: Ne-(hexanoyl)lysine

DT: o,o-dityrosine etc.

ELISAによる検出 ・発酵レモンフラボノイド、Minato, K., et al., Life Sciences, 2003

・アスタキサンチン、Aoi et al., BBRC, 2008

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泡盛の醸造用麹菌(Aspergillus aitoi)

OH

OCH3

OOH

OHO

OH

3

2

5

6

7 84’

1’

3’

8-ヒドロキシヘスペレチン (3’,5,7,8-tetrahydroxy-4’- methoxyflavanone)

OH

OCH3

OOH

OHO

OH

3

2

5

6

7 84’

1’

3’

ヘスペレチン

OCH3

O

OO

CH3O

OH OH

O CH2

O

OH

OH

HO

HO HO

OH

ヘスペリジン

醗酵処理による抗酸化性増強ポリフェノール

柑橘類果皮に含まれるポリフェノール類を、麹菌(Aspergillus saitoi)により発酵処理することにより、高い抗酸化性を有する新規のポリフェノールに変換。

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0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

80.0

90.0リノー

ル酸メチル酸化抑制率

(%

エリオシトリン

エリオディクティオール

ヘスペリジン

ヘスペレチン

8-ヒドロキシ-ヘスペレチン

ナリンジン

ナリンゲニン

8-ヒドロキシ-ナリンゲニン

6-ヒドロキシ-ナリンゲニン

醗酵ポリフェノールの抗酸化活性

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20

FMD検査について

FMD検査(血流依存性血管拡張反応)

カフで腕を締めその後の血管拡張を超音波で診る検査。 正常な内皮細胞は、カフを緩めた後に血管拡張物質である一酸化窒素(NO)を放出する。 NOの放出量は、どれだけ血管が拡張したかを見ることにより測定する。

1.安静時測定

3.カフ解放後の測定 (駆血解放後40~60秒後に最大拡張 が観察される)

2.5分間の駆血

FMD (%) =

拡張幅 (最大拡張径ー安静時径)

安静時血管径

×100

駆血解除による血流 増大。ずり応力増加

NOの増加

ずり応力の増大により 血管内皮細胞は NO産生を増加

血流増大 血管拡張

NOにより血管平滑筋へ 作用し血管が拡張

参照:株式会社 ユネクス資料より抜粋

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6月10日8時16分配信 フジサンケイ ビジネスアイ

ポッカコーポレーション(名古屋市中区)は、レモンの皮を発酵させて新規のポリフェノールを安定的に製造する技術を確立した。血圧降下や血管内皮機能の改善作用などがみられており、同社では新規の機能性食品素材として1~2年後の商品化を目指す。 果汁を搾ったあとのレモン果皮には多くのポリフェノールが含まれることが知られている。愛知学院大学心身科学部の大澤俊彦教授らは、レモン果皮を発酵して得られる新規ポリフェノールが、発酵前よりも高い抗酸化作用を持つことを明らかにしている。しかし、安定的な発酵処理を行うことが困難なため、科学技術振興機構(JST)がポッカに開発を委託していた。 新規ポリフェノールは、動物実験によって、主成分エリオディクティオールによる血圧降下作用と一酸化窒素(NO)合成酵素の発現促進作用が示唆された。NOは動脈を拡張し血流を増やす効果が知られている。 ヒトの臨床試験では、新規ポリフェノールの摂取によって血管内皮機能の改善作用がみられた。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)など生活習慣病に起因する血管疾患の予防につながる可能性があるという。

ポッカコーポレーションが製法を確立した

レモンの皮由来の新ポリフェノール

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セサミノール

カテコール セサミノール セサミノール

配糖体

ゴマ種子中の主要な

リグナン類(0.3-1.0%)

β-グルコシダーゼ

(腸内細菌)

麹菌

A.saitoi (黒麹) A.shirousami (白麹)

肝臓中の薬物代謝系

(P-450)

麹菌

A.saitoi (黒麹) A.shirousami (白麹)

ゴマリグナン類の生体内及び微生物変換

LDL酸化の予防

大腸がんの抑制

接着因子の活性化抑制

ドーパミンの酸化修飾の

抑制

OO

O

O

O

O

OH

OO

O

O

OH

OH

OH

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Structure of Antioxidative Food Factors(抗酸化フードファクターの構造)

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神経変性メカニズムに関する研究の進歩により、抗酸化食品因子摂取やライフスタイル改善、医薬品投与による臨床研究の可能性が期待されてきている。しかしながら、評価のためのバイオマーカー研究は十分でないのが現状である。このような背景で、われわれは、SH-SY5Y細胞を用いたin vitro 研究で、ヘキサノイルドパミン(HED)の神経細胞毒性の発現を抑制する抗酸化食品

因子の検索の評価法としての応用を試みた。ドパミンの減少はパーキンソン症の顕著な症状であるので、HEDは新規なバイオマーカーとして有望であり、また、新しい抗酸化食品因子検索のツールとして有望であると期待されている。

(脂質由来のドパミン修飾付加化合物を応用した抗酸化

食品因子の神経変性予防機能の評価法の開発)

Liu X, Yamada N, Osawa T. (2009) Assessing the neuroprotective effect of antioxidative food factors by application of lipid-derived

dopamine modification adducts. Lipidomics Vol.2: Methods and

Protocols (ed. by Armstrong, D.) in Methods Mol Biol. ,580, 1

43-52, Humana Press.

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ゴマ脱脂カスを黒麹菌(A.saitoi)で発酵させることで得られたセサミノール、セサミノールカテコールによるパーキンソン

症予防機能開発へのアプローチ

• ドパミン由来の脂質酸化修飾物(HED)が神経細胞毒性を発現(Liu, JBC2008)

• HED生成を抑制する物質には神経保護作用?

• スクリーニングの結果、 ゴマ由来の2つの物質に強い阻害活性

ゴマリグナンの 神経細胞防御作用

Liu et al., Lipidomics. 2009

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ダイゼイン ゲニステイン

大豆に含まれる主なイソフラボンと主な生体内代謝産物

エクオール; 強い抗酸化性 エストロゲン様活性

O-DMA; 弱い抗酸化性 エストロゲン様活性

腸内細菌による変換

個体差あり

O

OH

HO

O

O

OH

HO

OOH

O

OH

HO HO

CH3

CH3

OH

OH

HO

O R

R=HR=COOH

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Copyright ©2004 American Society for Nutrition

エクオールの機能性(骨粗鬆症予防)

我々の研究グループは、エコールを認識するモノクローナル抗体を作製した(Niwa et al., Phytochem. Lett., 2, 220-222, 2009)

エコールの高い生産能を有する腸内細菌を見つけた(Yokoyama

et al., Arch. Microbiol., 192, 15-22, 2010)

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エクオールを作る「腸内細菌」

日本人のエクオール産生能 ⇒ 50~60%がエクオール産生者 ⇒ しかし若年層では、非産生者が多い。 ⇒ 産生能に性差はない。 <懸念> 非産生者の増加が、将来的な更年期障害や骨粗しょう症の患者を増やすことにつながらないか?

ビフィズス菌

乳酸菌

乳酸菌

▸ エクオール産生菌リスト ▸ エクオール産生者の比率

・エクオールを作れる腸内細菌は、30種類以上。 ・善玉菌のビフィズス菌や乳酸菌の一部。

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(株)ヘルスケアシステムズ社の研究開発定量イムノクロマト

▸ 測定装置(イムノメジャー)

ソイチェック® 既存法

測定法 イムノクロマト HPLC

検出限界 0.03μM 1.4μM

前処理 不要 脱抱合処理

処理能力 100~150検体 数十検体

測定コスト 4,000円 30,000円

デバイス

リーダー

HPLCとの比較

妊娠検査薬やインフルエンザの簡易診断でも使われているイムノクロマト法。迅速・簡便であるが、定量性に乏しいという課題をアイシン精機㈱との共同開発により解決し、定量測定できる尿中エクオール測定システム『ソイチェック®』として2011年実用化に成功。

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(株)ヘルスケアシステムズ

(現在、加藤陽二兵庫県立大学教授がアドバイザーとして参加)

(愛知学院大学心身科学部長、名古屋大学名誉教授)

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事業ドメイン

パーソナルヘルスケアの実現

装置:抗体チップ 測定項目:酸化ストレスなど未病検査 共同開発:豊田中央研究所、日研ザイル DNAチップ研究所、名古屋大学

自社開発商品

▸ 脳内老化早期マーカーの研究開発 愛知学院大学、国立長寿医療センター 兵庫県立大学

▸ 涙液検体を用いた疾病評価システム 慶應大学、東京歯科大学

▸ 放射線障害に対する機能性食品の予防効果 千葉大学、兵庫県立大学

▸ 家畜ストレスの客観的指標の開発 名古屋大学、県畜産研究所(愛知・岐阜・三重・静岡)

装置:蛍光・化学発光同時測定装置 測定項目:免疫賦活、抗酸化、抗炎症

共同開発:浜松ホトニクス

装置:イムノクロマトチップ 測定項目:エクオール 共同開発:アイシン精機、名古屋大学

大豆 茶 ゴマ

これまでの研究素材

ワサビ ウコン カカオ

コプリーノ カシス ボイセンベリー (パラグアイ) (ニュージーランド)

この他、レモンやアスタキサンチンなど多数

<バイオ事業>

ヘルスケアチェック <食品事業>

アンサーフード

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150

100

50

0

Cell v

iability

(%)

0.012 3 4 5 6 7 8 9

0.12 3 4 5 6 7 8 9

1

Ascorbic Acid (ug/mL)

1.5

1.0

0.5

0.0

Sam

ple

/ C

ontr

ol R

atio

Cell viability'

[Ca2+

]i

O2-•

150

100

50

0

Cell v

iability

(%)

2 3 4 5 6 7 8 9

102 3 4 5 6 7 8 9

100

Lactoferrin (ug/mL)

1.5

1.0

0.5

0.0

Sam

ple

/ C

ontr

ol R

atio

Cell viability'

[Ca2+

]i

O2-•

n = 3

** : P< 0.01

* : P< 0.05

*

**

* * *

自然免疫賦活物質

ラクトフェリン n = 3

** : P< 0.01

* : P< 0.05

**

** **

抗酸化物質

ビタミンC

抗炎症物質

シアニジン

好中球の免疫反応を利用した新規食品機能性評価法の開発

(浜松ホトニクスとの共同研究)

好中球

刺激

細胞内Ca2+濃度上昇

蛍光で検出

細胞外にO2-• 産生

化学発光で検出

同時測定

抗炎症・抗酸化・自然免疫賦活作用同時評価試験(in vitro試験)

平成24年6月より、受託試験を再委託方式で実施中

n = 3

** : P< 0.01

* : P< 0.05

200

150

100

50

0

Cell v

iability

(%)

0.12 3 4 5 6 7 8 9

12 3 4 5 6 7 8 9

102 3

Cyanidin (uM)

1.5

1.0

0.5

0.0

Sam

ple

/ C

ontr

ol R

atio

Cell viability'

[Ca2+

]i

O2-•

** *

*

* *

Kazumura et al, JPBA

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コプリーノ(Coprinus comatus)

コプリーノ(Coprino)

数種のキノコ由来エルゴチオネイン画分の炎症性酸化障害抑制作用

(伊藤友美ら、2011) ・エルゴチオネイン含量は、現時点で世界最高である。

・コプリーヌ熱水抽出物は最も強力な抗酸化,抗炎症活性を示した。

・脂肪細胞のTNF-αによる炎症性サイトカイン抑制効果はエルゴチオネイン単独より

強力であった。

和名:ササクレヒトヨタケ

俗名:つくし茸 こけし茸

台湾名:Lawer’s wig mushroom

世界中に自生し、ヨーロッパでは高級キノコとして販売されている。

・台湾では、機能性食品として利用

・抗酸化、抗ガン、血糖値降下作用など

様々な機能性に期待 Tsai et al. J. Food Biochem. 33, 368-389 (2009)

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生産から流通まで一貫した生産体制での徹底したトレーサビリティ管理

安心・安全な生産体制

(株)岩出菌学研究所のパラグアイの専用農場にて一貫生産 < POINT > ・堆肥原料から加工まで専用施設で一貫生産し、高品質の製品を生産 ・年産100t(乾重量約10t)以上を安定的に供給可能 ・農薬や化学肥料を一切使用しない安全・安心栽培 ・日本にてロット毎に品質・安全性を確認

イグアス市感謝状

現地の生活水準の向上や経済発展に貢献.

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コプリーノと MPO阻害

▲ L-His

● エルゴチオネイン

コプリーノ:高エルゴチオネイン含量

(Ito, Kazumura, Osawa et al., 2011)

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2013年6月4日発表の閣議決定事項として 掲げられた規制改革案 (エネルギー、保育、健康・医療、雇用、創業の5分野)

健康・医療分野の4項目 1. 再生医療の推進 2. 医療機器に係る規制改革の推進 3. 一般健康食品の機能性表示を可能とする 仕組みの整備 4. 医療のICT化の推進

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