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1 鋼構造物に使用される塗料について Ⅰ.塗料について 役割、種類、成分 乾燥・硬化のしくみ 塗膜品質と耐久性 Ⅱ.塗料の環境負荷及びその対応 Ⅲ.VOC削減と実施例 ()日本塗料工業会

鋼構造物に使用される塗料について...1 鋼構造物に使用される塗料について Ⅰ.塗料について 役割、種類、成分 乾燥・硬化のしくみ

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1

鋼構造物に使用される塗料について

Ⅰ.塗料について役割、種類、成分乾燥・硬化のしくみ塗膜品質と耐久性

Ⅱ.塗料の環境負荷及びその対応

Ⅲ.VOC削減と実施例

(社)日本塗料工業会

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(広辞苑から)

塗料とは

物体表面に塗るという容易な手段で物体を

保護し美粧を与えることができる材料

保護 美粧 機能の付与

・金属の防錆・コンクリートの

劣化防止

・色彩・意匠・光沢(つや)

・汚れ防止・防カビ、防藻、抗菌・張り紙防止・結露防止 など

塗料の役割

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塗料の種類と分類

成分(樹脂)による 塗装工程による 乾燥方法による 塗料状態による

フタル酸樹脂塗料 一次プライマー 自然乾燥型塗料 溶剤形塗料

塩化ゴム系塗料 下塗り塗料 焼付乾燥型塗料 エマルション塗料

エポキシ樹脂塗料 中塗り塗料 紫外線硬化塗料 水溶性塗料

ポリウレタン樹脂塗料 上塗り塗料 電子線硬化塗料 粉体塗料

ふっ素樹脂塗料

アミノアルキド樹脂塗料    青字は鋼構造物に使用される塗料

アクリルメラミン樹脂塗料    緑字は今後、鋼構造物に使用される塗料

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塗料の構成成分と役割

樹脂 20~40%

顔料 10~30%

溶剤 30~50%

添加剤 1~5%

塗料製造時や塗装時の取扱い性

塗膜の基本品質、

耐久性

塗装によって大気中に飛散、蒸発

塗膜形成成分

(塗膜となるもの)

塗料・塗膜品質は主として樹脂に依存する。

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塗料の構成成分(原料)と役割

塗料の成分 主な役割 状態 タイプ・系統 具体的な化合物の例

下塗、中塗、上塗 フタル酸樹脂

下塗、中塗、上塗 塩化ゴム樹脂

下塗、中塗 エポキシ樹脂

上塗 ポリウレタン樹脂

上塗 ふっ素樹脂

鉛・クロム系さび止め顔料 シアナミド鉛

非鉛・クロム系さび止め顔料 リン酸亜鉛

着色顔料 白・黒・緑・青・赤等

体質顔料 タルク、シリカ等のケイ酸塩化合物

ダレ止め剤

乾燥促進剤

分散剤

脂肪族炭化水素系 ミネラルスピリット

芳香族炭化水素系 トルエン、キシレン

ケトン系 メチルイソブチルケトン

エステル系 セロソルブアセテート

アルコール系 イソプロルアルコール

合成樹脂(高分子化合物)

水飴状液体~塊状固体

微粉末固体

液状、ペースト状、粉状固体

造膜性耐久性

(他の全ての性能)

顔料

防錆着色隠蔽強度

厚塗性硬化促進仕上り性

樹脂溶解製造性塗装性乾燥性

仕上り性

特殊な高分子化合物

液体(低粘度で揮発性)

溶剤有機溶剤

添加剤

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塗料の製造工程

前練工程

各原料を混合する

缶詰分散工程顔料を微細化し

顔料を樹脂で覆い

均一なペーストとする

調合工程ペーストに樹脂を

混合し安定化し

塗料とする

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塗料の乾燥・硬化過程

溶剤の飛散・揮発と樹脂の硬化

塗料の乾燥・硬化は、先ず溶剤の大気への飛散・揮発から始まり、樹脂の硬化反応が進行し塗膜となる。

塗料(液体) 塗膜(固体)樹 脂:顔料:溶剤:

飛散・揮発

塗装

VOC=溶剤

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塗料の乾燥・硬化過程

溶剤の飛散・揮発量と乾燥性

塗料中の溶剤の殆どは塗装後1日で飛散・揮発する。

塗料

JIS乾燥性 指触 半硬化 硬化 完全硬化

JIS判定基準指に塗料が付

かない指で擦って跡が付かない

強く擦っても傷跡が付かない

塗膜の状態 液状 液状⇒固形 固形 固形 固形

塗膜中の溶剤量(%)

約40% 約20% 約8% 約4% trace

乾燥時間(20℃)

1hr 4hr 12hr 7日

備考 塗膜品質

塗膜中の溶剤量 ;現状のエポキシ樹脂塗料の場合の一例

塗膜

塗装時の取扱い

塗装

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塗料の乾燥・硬化過程

乾燥性・硬化性に影響する成分と因子

フタル酸樹脂塗料 エポキシ樹脂塗料 ポリウレタン樹脂塗料

下塗 下塗 上塗

状態 固形 液状~固形 固形

分子量 大 小~中 大

硬化機構 酸化重合 付加重合 付加重合

硬化速度 小(遅い) 中 大(早い)

量 20~30% 30~40% 40~50%

種類 ミネラルスピリットキシレン、ケトン

セロソルブトルエン、ケトン

エステル

蒸発速度 小(遅い) 中 大(早い)

中 中 大(早い)

小(遅い) 中 大(早い)

樹脂

乾燥性(見かけ上) 

硬化性(塗膜品質状)

溶剤

溶剤種によって乾燥性が異なり、樹脂種によって硬化性が異なる。

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塗料の乾燥・硬化過程

硬化機構 エポキシ樹脂の場合

エポキシ樹脂とアミン系硬化剤の化学反応によって、三次元の網目構造を形成し、優れた化学的・物理的・機械的な性能を発

揮する。

硬化反応は温度に影響される。

接着性

反応性

反応性

柔軟性

耐薬品性

耐熱性

強靭性

エポキシ樹脂 アミン系硬化剤

H2N-R-NH2+

エポキシ樹脂 アミン系硬化剤

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合成樹脂・塗膜

溶解・拡散・透過酸化

劣化

時間温度

環境因子水・酸素・塩分・

UV等

化学的劣化反応・分解

物理的劣化膨潤・軟化

機械的劣化応力・強度

塗膜の耐久性

樹脂・塗料の劣化について

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塗膜・塗装系の構成と役割

鋼板

下塗

中塗

上塗

光・UV 水・酸素・塩分

○下塗塗料

・防さび力が高い

・鋼材に対する付着性が良い

○上塗塗料

・耐候性がよい

・耐水性がよい

・仕上り性がよい

○中塗塗料

下塗と上塗塗料との付着性が良い

防錆性

耐候性

付着性

塗装系は下塗、中塗、上塗塗料からなり各塗料にはそれぞれ役割分担がある。

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樹脂の種類によって機能や耐久性が異なる。

ふっ素樹脂系上塗塗料

ウレタン樹脂系上塗塗料

塩化ゴム樹脂系上塗塗料

フタル酸樹脂系上塗塗料

上塗塗料 劣

優耐候性

エポキシ樹脂系下塗塗料

油性・フタル酸樹脂系下塗塗料

(JISさび止め塗料)

下塗塗料 劣

優防錆性

塗料の性能レベル

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上塗塗料による耐候性比較

0

20

40

60

80

100

120

0 1000 2000 3000 4000 5000

フタル酸系

塩化ゴム系

ポリウレタン系

シリコン変性エポキシ系

ふっ素系

促進耐候性試験XWOM時間(Hr)

ツヤ

の低

下率

(6

0°

光沢

保持

率(%

))

耐候性の尺度 光沢保持率(%)=Y時間後の光沢/初期の光沢×100

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素地調整;1種ケレン

0 2 4 6 8 10

175μ

90μ

160μ

80μJIS

さび止め

エポキシ

樹脂塗料

錆発生程度劣 優

下塗塗料による防錆性比較

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耐候性

ふっ素

ウレタン

塩化ゴム

フタル酸

エポキシ

厚膜形ジンクリッチペイント

ジンクリッチプライマー

長曝形エッチングプライマー

2種ケレン(St-3)

防錆性 劣優

(10<) (10) (5) (2)

期待年数(年)

上塗り

下塗

厚膜形ジンクエポキシ下塗エポキシ中塗エポキシ上塗

厚膜形ジンクエポキシ下塗エポキシ中塗ふっ素上塗

厚膜形ジンクエポキシ下塗エポキシ中塗ウレタン上塗

ジンクリッチプライマーエポキシ下塗エポキシ中塗ウレタン上塗

ジンクリッチプライマーエポキシ下塗塩化ゴム中塗塩化ゴム上塗

エッチングプライマー鉛系さび止めフェノールMIO塩化ゴム中塗/上塗

エッチングプライマー鉛系さび止めフタル酸中塗フタル酸上塗

2種ケレン鉛系さび止めフタル酸中塗フタル酸上塗

赤字:重防食仕様 緑字:準重防食仕様 黒字:軽防食仕様

塗装系の耐久性比較

一般部:発錆カット部:著しい

発錆

一般部、カット部とも塗膜欠陥の発生なく良好

海浜暴露8年

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橋梁における防食法の適用範囲

(耐久性)

鋼道路橋塗装・防食便覧(2005.12 日本道路協会)

環   境

飛来塩分量が少ない環境             飛来塩分量が多い環境(長い  ←   耐用年数   →   短い)

紫外線、水、酸素/    塩分、亜硫酸ガス等

紫外線、水、酸素/   塩分、亜硫酸ガス等

耐候性鋼材

一般塗装

重防食塗装

重防食塗装

金属溶射

水、酸素/塩分、亜硫酸ガス等

紫外線、水、酸素/ 塩分、亜硫酸ガス等

封孔処理

溶融亜鉛めっき

水、酸素/塩分、亜硫酸ガス等

水、酸素/塩分、亜硫酸ガス等

塗装

防食法 劣化因子/劣化促進因子

    適用可能範囲

                        適用可能範囲

              適用可能範囲

    適用可能範囲

                        適用可能範囲

              適用可能範囲

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鋼橋の塗膜劣化と維持管理

ワレ、ハガレさび

維持管理

点検

塗替塗装

LCC低減環境負荷低減

耐久性の向上

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削減

法規制等がある主なPRTR対象物質政令指定物質354物質

PRTR;特定化学物質の環境への排出量把握と管理改善促進に関する法律

アクリロニトリル

ホルムアルデヒド

DOP

樹脂原料

赤字 ;鋼構造物用塗料に多く使用される原料

マンガン化合物

クロム化合物

鉛化合物

顔料類

さび止め塗料黄色・橙色の上塗

ジクロロメタン

トルエン

キシレン

溶剤類

油性・フタル酸樹脂塗料を除く殆ど全ての塗料

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製品開発におけるメーカーの取組み(某社の化学物質管理システム)

3.危険・有害性原材料

4.一般原材料

2.使用制限原材料

1.使用禁止原材料

製品の開発・改良の計画

原材料の使用候補品

既登録品か?

使用制限原材料か?

使用申請・決済

3.危険・有害性物質か?

2.使用制限物質か?

1.使用禁止物質か?

設計活動

製品・販売 ;MSDS・レッテル

新規原材料調査

開発段階から販売に至るまで化学物質の管理を行っている。

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PRTR物質の削減状況某社の場合(全分野)

0

100

200

300

400

500

2003 2004 2005 2006 2007

クロム

t/年

年度

目標

目標

販売した製品中の

鉛・クロム化合物量の推移

0

2

4

6

8

10

12

14

16

2003 2004 2005 2006 2007

0

5

10

15

20

25

30

35

40

T,X,EB

VOC

目標

目標

年度

t/年

販売した製品100トン中の

T,X,EB量の推移T;トルエン、X;キシレン、EB;エチルベンゼン

減少傾向にあるが更なる削減策が必要客先への理解と意識が不可欠

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鋼構造物用塗料の環境対応策

PRTR VOC

エッチングプライマー リン酸塩系顔料等

さび止め塗料 リン酸塩系顔料等

フタル酸樹脂塗料 Co、Zr等ドライヤー

黄色系塗料上塗 ビスマス系、イミダゾリン系顔料

橙色系塗料上塗 ビスマス系、イミダゾリン系顔料

エポキシ樹脂塗料

ポリウレタン樹脂塗料

ふっ素樹脂塗料

エポキシ樹脂塗料

ポリウレタン樹脂塗料

ふっ素樹脂塗料

エポキシ樹脂塗料

ポリウレタン樹脂塗料

ふっ素樹脂塗料

水性化溶剤⇒水へ置換

(樹脂の水性化等)

鉛・クロム化合物(顔料・

ドライヤー)

トルエン・キシレン

トルエン・キシレンを含む全ての

有機溶剤

低溶剤化溶剤量削減

(低MW樹脂等)

鉛・クロムフリー化

弱溶剤化ミネラルスピリット等の

脂肪族炭化水素系溶剤(樹脂の変性)

大~小

環境保全効果

なし

大 小

対象物質 対応策 対象塗料 主な代替手段

新規原材料の探索や樹脂合成及びその品質確認が必須

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東京都環境局の鉛系塗料削減施策

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さび止め塗料の品質(JIS) 2003年

K5674 K5625 2種

鉛クロムフリーさび止めペイント

シアナミド鉛さび止めペイント

容器の中での状態

塗装作業性

乾燥時間

塗膜外観

上塗り適合性

耐屈曲性

付着安定性

耐複合サイクル防食性

防せい(錆)性

加熱残分       %

塗膜中の鉛      % 0.06以下 -

塗膜中のクロム   % 0.03以下 -

塗膜中のシアナミド鉛 % - 17以上

この部分の品質は全て同じ

品質項目

取扱性能

塗膜性能

耐久性能

塗料組成

鉛・クロム量は異なるが品質・性能は同じ。

旧JISがあるから鉛・クロムフリーさび止めが広く普及しない?

依然としてシナナミド鉛さび止めの販売量が減少しない。

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VOCの削減策

① 耐久性の高い塗装系を適用し、塗替周期を長くする。 LCC低減

② 溶剤の少ない塗料(低溶剤形、水系塗料)を適用する。

③ オキシダントになり難い弱溶剤形塗料を適用する。

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塗付量

加熱残分

製品説明書

樹脂

顔料

溶剤添加剤

希釈シンナーVOC

塗料の場合

鋼板

下塗

中塗上塗

塗装系の場合

各塗料のVOC量 g/㎡=〔塗付量×(100-加熱残分)/100〕+〔塗付量×希釈率/100〕

塗装系のVOC量 g/㎡=下塗のVOC量+中塗のVOC量+上塗のVOC量

VOC削減率 %=(1-塗料or塗装系VOC量/現行塗料or現行塗装系)×100

VOCの表示・算出方法

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溶剤種によるVOCへの影響指標

溶剤系統 有機溶剤名 MIR FAC

トルエン 43.7 5.4

m-キシレン 116.9 4.7

エチルベンゼン 30.7 5.4

n-ノナン 10.5 1.5

n-デカン 9.1 2.0

n-ウデカン 8.1 2.5

酢酸エチル 7.0 0

ブチルアルコール 38.8 0

IPA 7.8 0

MIBK 47.5 0

MIR(Maximum Incremental Reactivity) オゾン生成能に関する指標

FAC(Fractional Aerosol Coefficient) SPM生成能に関する指標

芳香族炭化水素

脂肪族炭化水素

エステルアルコール

ケトン

強溶剤

弱溶剤

強溶剤

更なる削減

VOC削減策

・低溶剤形

・水系

弱溶剤形はオキシダント発生量は抑制されるが、VOC量は削減されない。

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低溶剤形塗料の品質の例鋼道路橋塗装・防食便覧(2005.12)付属資料

環境にやさしい塗装仕様の例(溶剤削減率約1/3 vsC-4仕様)

工程 塗料名 塗装膜厚μm

使用量g/㎡

素地調整

プライマー 無機ジンクリッチプライマー スプレー 15 160

素地調整

防食下地 無機ジンクリッチペイント 75 500

ミストコート エポキシ樹脂塗料下塗 - 160

下塗 低溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗 120 *

中塗 ふっ素樹脂塗料用中塗 30 170

上塗 ふっ素樹脂塗料上塗 25 140

ブラスト処理 ISO Sa2.5

ブラスト処理 ISO Sa2.5

スプレー

加熱残分%

エポキシ樹脂塗料下塗 60以上

低溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗 約78以上

この仕様でVOC削減率1/3を満足するにはNV約78%以上が必要

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東京都環境局 VOC対策ガイド

プライマー 無機ジンクリッチプライマー防食下地 無機ジンクリッチペイントミストコート エポキシ樹脂塗料下塗下 塗 低溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗中 塗 水系ポリウレタン樹脂塗料用中塗

上 塗 水系ポリウレタン樹脂塗料上塗

【低VOC塗装(外面)】

2005.2.28

日経(朝刊)、他の3紙、及びTVニュースでリリースし、主要構造物での適用の協力要請

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塗料に関わる環境対応例-1

水系塗料の試験施工

2003~2005年に

3ケの橋梁での

試験施工を受け、

今年度、JR東日本で

試験工事として

12ケ橋梁塗替工事で

発注されている。

鋼構造物塗装設計施工指針(2005.5鉄道総合技術研究所)の環境対応塗装系

ECO1-7塗装系工程 塗料名 塗装 使用量

素地調整

補修 厚膜型変性エポキシ樹脂系塗料 200

補修 厚膜型変性エポキシ樹脂系塗料 200

全面 水系エポキシ樹脂塗料 220

全面 水系上塗塗料 120

ECO2-7塗装系工程 塗料名 塗装 使用量

素地調整

補修 厚膜型エポキシ樹脂ジンクリッチペイント 500

補修 厚膜型変性エポキシ樹脂系塗料 200

全面 水系エポキシ樹脂塗料 220

全面 水系上塗塗料 120

替ケレン-2,3,4

替ケレン-2,3,4

刷毛or

ローラー

刷毛or

ローラー

VOCMIR削減率vsG-7系=83%

VOCMIR削減率vsG-7系=86%

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水系塗料の品質 鋼構造物塗装設計施工指針(2005.5鉄道総合技術研究所)

ポリウレタン系 変性アクリル系

ポットライフ(h) 3以上 (23℃) -23℃5℃

白・淡彩は90以上、赤及び黄色は50以上、他の色は80以上

層間付着性 Ⅱ

40以上

SPS 66099-31  表17.1 水系上塗塗料の品質

容器の中での状態

隠ぺい率(%)

促進耐候性照射時間500時間で塗膜に、膨れ・はがれ・割れがなく、光沢

 項  目      品  質

かき混ぜたとき堅いかたまりがなくて一様になる

塗膜中の鉛(%)塗膜中のクロム(%)

乾燥時間(h)

耐衝撃性耐屈曲性

混合塗料中の加熱残分(%)

8以内16以内

おもりの衝撃によって割れ・はがれができないものとする。

0.03以下

鏡面光沢度(60°) 70以上

直径10mmの折り曲げに耐えるものとする。異常がないものとする。

0.06以下

品  質容器の中での状態 主剤・硬化剤ともにかき混ぜたとき堅いかたまりがないポットライフ(h) 3以上 (23℃)

23℃ 8以内5℃ 16以内

隠ぺい率(%) 白・淡彩は90以上、赤及び黄色は50以上、他の色は80以上おもりの衝撃によって割れ・はがれができない直径10mmの折り曲げに耐えるものとする。

Ⅰ 異常がないものとする。Ⅱ 異常がないものとする。

120サイクルの試験に耐えるものとする。50以上0.06以下0.03以下

塗膜中の鉛(%)塗膜中のクロム(%)

乾燥時間(h)

層間付着性

耐衝撃性耐屈曲性

SPS 66099-30  表16.1 水系エポキシ樹脂塗料の品質

耐複合サイクル防食性混合塗料中の加熱残分(%)

項  目

溶剤は水性化に必要な量に抑えられ、

鉛・クロムフリーの組成であるが、

品質上はエポキシ樹脂塗料ポリウレタン樹脂塗料

と同じ

揮発分の内訳水 ;85%以上溶剤;15%以下

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都環境局VOC削減 実施物件例ー1

東京都環境局 人道橋

1℃、28%RH

低溶剤形弱溶剤Ep~低溶剤形Si変性Ep系

低溶剤形弱溶剤変性エポキシ下塗の塗装

工程 塗料一般名 膜厚 使用量 VOC 塗料一般名 膜厚 使用量 VOC

μm g/㎡ g/㎡ μm g/㎡ g/㎡

素地調整 3種ケレン 3種ケレン

補修塗り 変性エポキシ樹脂塗料下塗 (60) 24 9.4 低溶剤形弱溶剤変性エポキシ樹脂塗料下塗 (60) 21 4.5

第2層目 変性エポキシ樹脂塗料下塗 60 240 93.7 低溶剤形弱溶剤変性エポキシ樹脂塗料下塗 60 180 44.6

第3層目 変性エポキシ樹脂塗料下塗 60 240 93.7 低溶剤形弱溶剤変性エポキシ樹脂塗料下塗 60 180 44.6

第4層目 ポリウレタン樹脂塗料用中塗 30 140 54.7 低溶剤形弱溶剤シリコン変性エポキシ下塗上塗兼用 55 160 49.6

第5層目 ポリウレタン樹脂塗料上塗 25 120 54.9 - - - -

合計 235 306.4 合計 235 143.3

基準 VOC削減率(%) 53

現行仕様  便覧 c-1系 VOC削減仕様 (環境対応+省工程)

(変性エポキシ塗料~ポリウレタン塗料の5回塗り) (低溶剤形弱溶剤変性エポキシ塗料~低溶剤下塗上塗兼用塗料の4回塗り)

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都環境局VOC削減 実施物件例ー2

東京タワー

15℃、40%RH水性エポキシ下塗の塗装

水性Ep~水性Ur系

工程 塗料一般名 膜厚 使用量 VOC

μm g/㎡ g/㎡

素地調整 3種ケレン

補修塗り 水系変性エポキシ樹脂下塗 (60) 24 16.8

第2層目 水系変性エポキシ樹脂中塗 60 120 3.0

第3層目 水系ポリウレタン樹脂塗料上塗 60 120 9.0

合計 235 28.8

VOC削減率(%)vs.現行フタル酸樹脂塗料 75

VOC削減仕様 (環境対応)

水性系変性エポキシ塗料~水系ポリウレタン塗料の3回塗り)

一部分塗装

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鉄道総研VOC削減 実施物件例

鉄道橋梁

15℃、62%RH水性エポキシ中塗の塗装

水性Ep~水性Ur系

工程 塗料一般名 使用量

g/㎡

素地調整 3種ケレン

補修塗り 変性エポキシ樹脂塗料 200

補修塗り 変性エポキシ樹脂塗料 200

第3層目 水系エポキシ樹脂塗料 200

第4層目 水系ポリウレタン樹脂塗料 120

VOC削減仕様ECO1-7塗装系

鋼構造物塗装設計施工指針 2005年

(財)鉄道総合技術研究所

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都環境局VOC削減 実施物件例ー3

道路橋梁

低溶剤形弱溶剤Ep~低溶剤形Si変性Ep系 低溶剤形Ep~低溶剤形Si変性Ep系

工程 塗料一般名 膜厚 使用量

μm g/㎡

素地調整 3種ケレン

補修塗り 低溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗 60 200

第2層目 低溶剤形弱溶剤変性エポキシ樹脂塗料下塗 150 500

第3層目 低溶剤形弱溶剤変性エポキシ樹脂塗料下塗 150 500

第4層目 低溶剤形シリコン変性エポキシ下塗上塗兼用 55 160

合計 415

VOC削減仕様 (環境対応+省工程)(低溶剤形変性エポキシ塗料~低溶剤下塗上塗兼用塗料の4回塗り) 工程 塗料一般名 膜厚 使用量 VOC

μm g/㎡ g/㎡

ミストコート 変性エポキシ樹脂塗料下塗 - 130 74.9

第1層目 低溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗 80 240 59.4

第2層目 低溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗 80 240 59.4

第3層目 低溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗 80 240 59.4

第4層目 低溶剤形シリコン変性エポキシ下塗上塗兼用 55 160 27.1

合計 275 280.2

50VOC削減率(%)vs.現行仕様7回塗り

VOC削減仕様 (環境対応+省工程)

(低溶剤形変性エポキシ塗料~低溶剤下塗上塗兼用塗料の5回塗り)

物件-A 物件-B

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都環境局VOC削減 実施物件例ー4,5

送電鉄塔 球形ガスホルダー

低溶剤形弱溶剤Ep~Ac変性Ep系 溶剤Ep~水性Ep~水性Ac系

工程 塗料一般名 膜厚 使用量 VOC

μm g/㎡ g/㎡

素地調整

第1層目 低溶剤形弱溶剤変性エポキシ樹脂塗料下塗 80 240 55.2

第2層目 弱溶剤アクリル変性エポキシ下塗上塗兼用 40 130 48.3

合計 275 103.5

43VOC削減率(%)vs.現行仕様2回塗り

VOC削減仕様 (環境対応)

(低溶剤形変性エポキシ塗料~低溶剤下塗上塗兼用塗料の2回塗り)

3種ケレン

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環境対応塗料のまとめ

塗料価格アップの対応策としては厚膜形塗料や下塗上塗兼用塗料等を用いた省工程塗装系が有効

量 質(種類)

強溶剤形 基準 基準 基準 基準

弱溶剤形 0

強溶剤形 40~50

弱溶剤形 40~50

80<塗装時の気象に

影響され易い

基準と

同等

基準にほぼ同等

水性          

溶剤形 

低溶剤形

塗料価格溶剤タイプ

塗料VOC

削減率(%)

塗料塗膜品質

施工性

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製造費

原材料費

製造費

原材料費

塗料価格

環境対応塗料 既存塗料

価格差

普及の障害

①原材料費アップの理由(環境対応の為に)

・新規or特殊な原材料を使用する

・安価な既存汎用原材料を変性(合成)する

②製造費アップの理由

・当初は需要が少ないため少量製造となる

環境対応塗料の価格と普及

今までの要求機能 付加機能

環境対応

価格差現状価格

どう按分するか?

作業性 コスト

品質

環境対応

販売経過年数

生産量

塗料価格

現在

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少しでもVOCを削減するように努めましょう。

ありがとうございました。