42
◆ 文献 「低温における粒子状物質 ディーゼル車に関する調査」 IEA先進自動車用燃料実施協定アネックス 22「低温における粒子状物質」の調査から、ディー ゼル車に関する研究成果を掲載する。 国際エネルギー機関(IEA自動車用先進燃料研究開発実施協定共同研究 アネックス XXII 2 回中間報告書 フィンランド VTT)エナジー P.O.Box 1604, FIN-02044 VTT, FINLAND +358 9 456 5005, ファックス+358 9 456 5000 エスポー、2001 10

自動車用先進燃料研究開発実施協定共同研究 アネックス XXIIlevo.or.jp/lib/report/pdfs/teionpm_01.pdfIEA先進自動車用燃料実施協定アネックス22「低温における粒子状物質」の調査から、ディー

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

  • ◆ 文献 「低温における粒子状物質 ディーゼル車に関する調査」

    IEA先進自動車用燃料実施協定アネックス 22「低温における粒子状物質」の調査から、ディーゼル車に関する研究成果を掲載する。

    国際エネルギー機関(IEA) 自動車用先進燃料研究開発実施協定共同研究

    アネックス XXII ~ 第 2回中間報告書 ~

    フィンランド技術研究所(VTT)エナジー P.O.Box 1604, FIN-02044 VTT, FINLAND

    電話番号 +358 9 456 5005, ファックス+358 9 456 5000 エスポー、2001年 10月

  • 目 次

    1. 序 文 ··················································································································································1

    2. 試験車両と試験燃料 ·························································································································2

    3. 測定方法 ···············································································································································3

    3.1 試験の段取り、規制排出ガス、アルデヒドと試験パラメーター ···········································3

    3.2 粒子数測定における希釈システム ··························································································6

    3.3 低圧電子インパクター(ELPI) ·····································································································9

    3.4 低圧インパクター(LPI) ·················································································································9

    4. 欧州試験モードの結果 ······················································································································9

    4.1 排出ガス ·········································································································································9

    4.2 排出ガスに含まれる粒子状物質の量 ··················································································· 16

    4.3 排出ガスに含まれる粒子数 ···································································································· 22

    4.3.1 概要 ······································································································································ 22

    4.3.2 粒子数分布 ························································································································ 26

    5. 日本 10・15 モードの結果 ··············································································································· 33

  • 略 語

    CO 一酸化炭素 CO2 二酸化炭素 CVS コンスタント・ボリューム・サンプラー DI 直噴 DNPH 2,4ジニトロフェニル・ヒドラジン(アルデヒド分析試薬) ECE1 都市走行モード ECE15の第 1番目及び第 2番目のモード ECE2 都市走行モード ECE15の第 3番目及び第 4番目のモード EGR 排出ガス再循環 ELPI 低圧電子インパクター EN2000 欧州令 98 / 70 / ECによるディーゼル燃料 FID 水素差イオン検出器 10・15 mode 日本の軽量車排出ガス試験モード HC 総炭化水素 HPLC 高性能液体クロマトグラフィー IDI 副室噴射式 LD 軽量 LPI 低圧インパクター NOx 窒素酸化物 PM 粒子状物質 RFD スウェーデン環境クラス 1軽油 RFD / RME RMEを 30%ブレンドした RFD RME 菜種油メチルエステル RME30 RMEを 30%ブレンドした EN2000燃料

  • 9

    1 序文

    道路交通における排出ガス中の粒子状物質(PM)に対する関心が、世界各国で高まっている。これまで、排出ガスに含まれる PM に関する研究の大多数は、標準外気温度において実施されてきた。しかしながら、ごくわずかの温度下降が排出ガスに含まれる PM を増大させる。実際の平均的な日中の気温は、排出ガス試験における“標準的な”温度(約+23℃)と比較するとはるかに低い。この事実は冬季ではなおさらである。長年にわたって、PM 排出量に関する知識が不充分であることは明らかであった。これら PM の性質、特に芳香族炭化水素、あるいは突然変異性(誘発力効果)については、すでに広く研究されてきた。そして現在、微細粒子に関するより多くの情報が必要

    になってきている。なぜならこれら微細粒子は、容易に人間の肺に侵入するからである。エンジン及

    び自動車から発生する粒子の粒径分布に関する研究活動は、まだ始まったばかりである。適正な

    サンプル採集条件、あるいはそのデータなどを適切に表現する方法に関する考察と研究が、現在

    進行中である。しかしながら、粒子数の分布、あるいは量の分布のどちらが評価基準として適切か

    さえも未だ模索中である。現在のところ、温度が粒子の粒径分布に及ぼす影響の可能性について

    の研究はなされていない。

    本プロジェクトは、気体燃料やバイオディーゼルなどを含む種々の燃料とエンジンに関する技術を

    網羅することをねらいとしている。研究活動は、各種の軽量エンジン技術に焦点をあてている。ただ

    し、予備試験には中量エンジンを使用して、低い試験温度における各種測定方法の安定性を評

    価した。中量エンジンによる予備試験は、全試験系統における重要な部分を占めている。なぜなら、

    これらの試験を基に、軽量車試験に用いる試験条件が決定されたからである。

    現在までに、中量エンジンと 2 種類のディーゼル自動車による試験が完了した。中量エンジンによる試験の結果は、第 1 回中間報告(2001 年 5 月)にて報告した。本報告においては、2 種類のディーゼル自動車による試験の結果を紹介する。さらに本試験は、2001 年秋を通して、CNG 自動車と理論空燃比ガソリン自動車について継続していく。これらのデータは、最終報告において詳述

    する。最終報告は、全ての試験が完了した時点で作成する。中間報告は、ある意味“下書き”報告

    書とも言うべきものであるので、いかなるご意見も歓迎するものである。

    IEA/AMF 参加各国、カナダ、フィンランド、イタリア、日本、スウェーデン、アメリカ合衆国のご協力により本中間報告を興味深いものにすることができた。VTT エナジー職員の方々からも、本報告作成に対して惜しみないご協力を得た。Hannu Vesala 氏は、本プロジェクトの計画に大きく貢献し、粒子を希釈、測定するためのシステムの設置をご担当いただいた。以上各位に深謝の意を表明す

    る。

    -1-

  • 10

    2 試験車両と試験燃料

    本試験には、2 台のディーゼル自動車を使用した。各車両の詳細を表 1 に示す。直噴ターボディーゼル車は、IEA/AMF 添付書類 X1及び XⅢ2にも使用した。

    TDI 車を、軽量車用直噴式ディーゼル技術の代表とする。この車両には、排出ガス再循環(EGR)と、酸化触媒が装備されている。さらに、ニードルリフトセンサーが装備されており、これが実際の噴射開始を検知する。これにより、閉(クローズ)ループ制御システムが、システムにプログラ

    ムされている噴射の開始時期を維持する。

    試験に使用したもう 1 台の車両は副室噴射式(IDI)車であり、この車両には EGR システムは装備されているが、酸化触媒は装備されていない。1999 年型のこの車両を、最新副室噴射式エンジン技術の代表とする。

    一連の試験には、欧州令 98/70/EC によるディーゼル(EU2000)、菜種油メチルエステル(RME)を 30%ブレンドした EU2000 燃料(RME30)の 2 種類を使用した。また一部の試験には、スウェーデン環境クラス 1 軽油(RFD)、RME を 30%ブレンドした RFD(RFD/RME)を使用した。EU2000の性状分析結果と、スウェーデン RME の仕様及びスウェーデン環境クラス 1 軽油の性状抜粋を、表 2 に示す。

    表 1. 試験に使用したディーゼル乗用車の仕様

    TDI車 IDI車 年式 1996年 1999年 排気量 1.9リッター 2リッター 燃焼システム 直(接)噴(射)式 副室噴射式 最大出力 66 55 排出ガス制御システム EGR

    酸化触媒 EGR

    製造国 欧州 日本

    1 Aakko, P. & Nylund, N.-O. 1997, Characterization of new fuel qualities. Espoo. 77p. + app. 15p. (ENE24/21/97). 2 Aakko, P.et al. 2000, Emission Performance of Selected Biodiesel Fuels – VTT’s contribution. Espoo. 83p. app. 14p. (ENE5/33/2000).

    -2-

  • 11

    表 2. EU2000の性状分析結果と、スウェーデン RMEの仕様及びスウェーデン環境クラス1軽油の性状抜粋

    EU2000 分析

    RME SS 15 54 36

    MK1 SS 15 54 35

    密度 +15℃、kg/m3 838.5 870~890 800~820 硫黄含有量、ppm 306 <10 max 10 セタン価 51 min 50 粘度 +40℃、mm2/s 2.6 3.5~5 1.4~4.0 曇り点、℃ -10 max -16* 芳香族 IP391、vol-% 21.4 max 5 蒸留、℃

    IBP 187 min 180 95 vol-% max 285

    FBP 361 * 冬季品質

    3 測定方法

    3.1 試験の段取り、規制排出ガス、アルデヒド、試験パラメーター

    車両の試験は、耐候試験室にて実施した。試験パラメターの記録に使用した装置及び動力計を

    表 3 に示す。規制排出ガスの測定(排気の希釈と採集、濃度分析など)に使用した装置は全て、欧州令 70/220/EEC(欧州試験)の仕様に合致している。さらに、速度、一酸化炭素(CO)、全炭化水素(THC)、窒素酸化物(NOx)、試験室の温度、排出ガスの温度、試験室の湿度を 1 秒毎に記録した。特殊粒子測定における希釈排出ガスの NOx を記録し、希釈率を求めた(3.2 参照)。各試験中の気圧は、マニュアルにて記録した。分析器類は、標準試験温度に保たれている制御室内

    に保管した。

    2,4 ジニトロフェニル・ヒドラジン(アルデヒド分析試薬、DNPH)カートリッジを使用して、希釈排出ガス(定量サンプリング装置(CVS))からアルデヒドサンプルを採集した。アセトニトリルと水の混合液により、DNPH 誘導体を抽出した。高性能液体クロマトグラフィー技術(HP 1050、UV 検出器、Nova-Pak C18 コラム)により、13 種類のカルボニル化合物(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、アクロレイン、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド、2-ブタノン、メタクロレイン、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、バレルアルデヒド、m-トルアルデヒド、ヘキサナール)を分析した。

    -3-

  • 12

    表 3. 軽量ディーゼル乗用車の試験に使用した基本的な装置

    装置 製造者/タイプ 備考 シャシダイナモメーター Froude Consine 1.0m DC、100kW コンスタント・ボリューム・ サンプラー

    Pierburg 12.5WT 熱交換器付き PDP-タイプ

    CO、THC、NOx、 二酸化炭素(CO2)

    Pierburg AMA 2000 規制気体排出ガス、 トリプルベンチ

    PMサンプラー* 希釈トンネルと Pierburg PS430

    10インチ希釈トンネルと PMサンプラー

    PMフィルター Pallflex TX40H120-WW φ47mm * 粒子分布測定用システムについては、3.2にて詳述する。

    試験の主要な部分は、欧州試験モード(図 1 参照)に従って実施した。一部の試験は、日本の 10・15 モード(図 2 参照)にも従って実施した。

    欧州試験モードは、3 種類のサンプリングサブモードから成る。試験の第 1 の部分は、都市走行モード ECE15 の第 1 番目及び第 2 番目のモード(ECE 1)である。第 2 の部分は、都市走行モード ECE15 の第 3 番目及び第 4 番目のモード(ECE2)である。第 3 の部分は、特殊な都市モード(EUDC)である。

    日本の 10・15 モード試験は、暖機始動試験である。しかしながら、標準温度における暖機始動試験に加えて、10・15 モードを標準温度における冷間始動試験としても実施した。-7℃において、10・15 モード試験を冷間始動試験として実施した。

    試験モードにおける条件の数値データの一部を、表 4 に示す。

    表 4. 欧州試験モードと日本試験モードの条件の一部

    欧州試験モード ECE15 EUDC

    日本 10・15モード

    持続時間(s) 780 400 660 平均速度(km/h) 18.9 62.6 22.7 アイドリング時間(%) 35.4 0 31.4 走行距離(km) 4.052 6.955 4.16

    試験は、基本的に欧州排出ガス測定手順に従って実施した。1 つの欧州試験モードを実施した後の、次の試験までには、車両を次の試験温度にて 24 時間放置することとした。

    -4-

  • 13

    図 1. 欧州試験モード

    図 2. 日本の 10・15モード

    -5-

  • 14

    3.2 粒子数測定における希釈システム

    粒子の分布を測定するための排出ガス希釈器には、複数のタイプがある。第 1 回中間報告にて述べたように、本プロジェクトにおいては、排出ガスの希釈には小孔管希釈器を採用した。重要なの

    は、この希釈器は希釈率に対する感受性が鈍いことである。なぜなら、希釈率はサンプルプローブ

    における圧力の変動により、ある範囲で変化する傾向にあるからである。しかしながら、この希釈器

    を選択した最大の理由は、冷却された希釈空気を使用できることである。

    軽量ディーゼル車の試験において粒子数の分布の測定に使用した希釈システムの概略図を、図

    3 に示す。

    粒径測定用の排出ガス希釈前サンプルは、排気管(断熱ライン)の後方約 5m の排気配管(内径8.3mm)から、プローブ(内径 3mm)により採集した。サンプルプローブから希釈器と測定装置への配管は最短距離とし、粒子の測定に適合している材料のみを使用した。排気管末端とサンプル

    プローブとの間におけるサンプル滞留時間は約 0.4 から 1.8 秒で、これは車両の速度により変動した。また、プローブと低圧電子インパクター(ELPI)との間のサンプル滞留時間は、約 0.4 秒であった。

    希釈用の空気は、乾燥した清浄なものを使用した。標準温度における試験では、各種測定間の温

    度を一定に維持するために、希釈空気を若干加熱(約 28℃)した。現実世界の希釈空気は外気温度と同様に低温であるので、-7℃の試験においては希釈空気を冷却した。しかし、2℃よりも低い温度は実現不可能であった。低温希釈空気が粒子数分布に及ぼす影響を、予備試験(第 1 回中間報告参照)にて調査した。標準試験温度における 30nm 未満の粒子数の測定値が、冷却しない空気よりも冷却した希釈空気において高いことは特筆に値する。希釈排出ガスの温度は、低温

    試験においては 12℃から 13℃の間で変動し、標準温度においては約 28℃であった。

    希釈器になるべく近い位置における希釈空気と希釈サンプルの温度、希釈率を計算するための排

    出ガスの希釈前後の NOx 濃度など、特に重要なパラメターのいくつかは連続的に記録した。

    -6-

  • 15

    図 3. 小型ディーゼル乗用車の測定に使用した希釈システムの概略図

    目標希釈率約 50(図 4 に例を示す。)について、種々の温度と燃料の組み合わせの試験を実施した。希釈率は、各試験に先立って、補助の排出ガス発生器と NOx 分析計を使用して目標値に調整した。これは、希釈率に悪影響を及ぼす流量制御装置のドリフトを補正するために必要である。

    各試験モードにおける希釈前後の排出ガスの NOx 濃度を 1 秒毎に測定した値を使用して、実際の希釈率を計算した。NOx の測定値に基づいた実際の希釈率を、最終結果の計算に使用した。しかしながら希釈率の計算結果は、燃料供給が停止されている減速中にはあてはまらない。よって、

    希釈前排出ガスの 0 に近い分析計表示値にはフィルターをかけた。希釈率の計算には、移動平均値を使用して分析計のノイズを排除した。

    第 1 回中間報告における希釈方法の検討への追加として、同じ TDI 車の排気管末端に 2 本の排出器希釈器を直接接続して本章(図 5 参照)にて説明した希釈方法を使用した場合の結果を比較した。これらの測定方法から得られた PM の絶対値を比較することは不可能である。なぜなら、燃料が異なるうえに、両測定の実施時期には 6 ヶ月ものずれがあったからである。しかしながら、サンプリングポイントと希釈方法が異なるにもかかわらず、同じ TDI 車による欧州試験モードにおける粒子数の分布が非常に類似していることが確認された。TDI 車の排出ガスには、核形成モード粒子がほとんど含まれていない。よって、核形成モード粒子を生成する車両についてこれらの差異を研

    究することも興味深いと思われる。

    -7-

  • 16

    図 4. 変動平均としての希釈率の例(試験識別番号 第 21154番)

    図 5. 同じ TDI車を使用して 2種類の希釈方法によって標準温度における欧州試験モード

    を実施した際の、粒径分布の比較。燃料が異なり、両測定の実施時期には 6 ヶ月ものずれがあるため、絶対値を比較することは不可能である。両車の分布形状は類似している。

    -8-

  • 17

    3.3 低圧電子インパクター(ELPI)

    Dekati Ltd.製の ELPI を使用して、粒子数の分布を測定した。ELPI の原理は、煙霧粒子の給気慣性分類と電気探知に基づいている。ELPI は、即時粒径分光計であり、30nm から 10μm の範囲における空気伝送 PM の粒径分布を測定する。VTT エナジーの ELPI には、いわゆる“フィルターステージ”が備えられているが、これは Dekati Ltd.が 2000 年の夏に発表したものである。フィルターステージにおける最小通過粒径は約 8nm、最小相乗平均粒径は約 15nm である。本測定に使用した ELPI#2137 の技術資料は、第 1 回中間報告に掲載した。

    予備試験の結果、TEOM1400a は、サンプルの質が急激に変化した場合の粒子濃度をモニターするのに充分な速度ではないことがわかった(第 1 回中間報告参照)。ELPI 粒子数濃度は、量濃度に変換することが可能である。しかしながら、この計算には粒子密度に関する情報が必要であ

    る。粒子密度は粒径クラス、及び排出ガスの質によって異なる。粒子の密度に大きく影響を与える

    要因には、エンジンの後処理技術、負荷、試験条件などがある。

    本研究においては、粒子密度を 1g/cm3 として ELPI 数濃度結果を量濃度に変換した。2.5μm 未満の粒径クラスを考慮に入れた。ELPI によって定義された粒子の量濃度の絶対値が正確でないことは、よく知られている。しかしながら、測定値間の相対的な差異をモニターすることは可能であ

    る。

    3.4 低圧インパクター(LPI)

    Dekati Ltd.製の LPI を使用して、粒子の量分布を測定した。インパクター(#247)の技術資料は、第 1 回中間報告に掲載した。LPI には、30nm 未満の粒子を採集するための“エンドフィルター”を使用した。

    4 欧州試験モードの結果

    4.1 排出ガス

    両ディーゼル車共、-7℃試験における最初の 1 分間は、排出ガス温度が低いレベルに留まった(図 6 参照)。その後排気温度は連続的に上昇するが、標準温度における試験と比較すると、試験モード全体にわたって TDI 車では約 10℃、IDI 車では約 20℃低いレベルに留まった。

    各種温度における試験モード中の排出ガスに含まれる CO、HC、NOx を、図 7 に示す。EU2000についての各種試験段階(ECE 1 と 2、及び EUDC)における結果を図 8 に示す。EU2000 以外の燃料の結果も、気体規制排出ガスについては、各種試験段階において類似したパターンを示し

    た。

    -9-

  • 18

    TDI 車と IDI 車における排出ガスレベルは、かなり近いものであった。IDI 車を TDI 車と比較すると、排出ガスに含まれる CO は若干高く、総炭化水素は若干低かった。

    -7℃と+5℃における排出ガス中の CO のレベルを標準試験温度におけるそれと比較すると、前者はかなり高く、後者は若干高かった。低温においては、排出ガスに含まれる高い CO に対する主な影響は、試験(ECE 1 及び 2)の初めの 13 分間に見られることが、図 7 及び図 10 から見て取れる。試験の初めの 20 秒間における CO 濃度のピークは、-7℃においては約 3000ppm に到達した。一方、標準温度においては最初のピークは 1500ppm 未満に留まった(図 10 参照)。エンジンはEUDC 段階において暖機した。EUDC 段階は、標準試験温度でも低い試験温度でも CO レベルがほとんど変わらないようであった。

    排出ガスに含まれる CO の最低レベルは、RFD において観察された。EU2000 あるいは RFD の 30%RME は、排出ガスに含まれる CO には顕著な影響は示さなかった。

    -7℃における排出ガス中の総炭化水素は、標準試験温度におけるそれよりも多かった。しかし、+5℃と標準温度との間には明確な差異は見られなかった。図 8 及び図 10 から、-7℃においては、排出ガス中の THC が多いことに対する主な影響は、試験(ECE 1 及び 2)の初めの 13 分間に発生することが観察される。TDI 車では、-7℃における試験の初めの 20 秒間に、炭化水素濃度のピークが存在し、それはほぼ 500ppm に到達する。しかし、標準試験温度においてはそのようなピークは見られなかった。(図 10 参照)

    TDI 車では、RFD 及び RFD/RME を用いた場合、排出ガスに含まれる HC が最低であることが観察された。IDI 車では、標準温度で RFD/RME を用いた場合及び-7℃で EU2000 の排出ガスに含まれる全 HC は、他の燃料よりも高いレベルを示した。

    両車において、試験温度が低下すると、排出ガスに含まれる NOx が増大した。理論的には、より低い試験温度においては燃焼温度が低下するため、試験温度が低下すると排出ガスに含まれる

    NOx は減少するはずである。しかしながら、両車には EGR システムが装備されており、この装置はエンジンが冷機状態にあるときは正常に作動しない。各種試験温度における排出ガスに含まれる

    NOx の変動は、図 8 及び図 10 から EUDC 段階では高くないことが、見てとれる。これは、EUDC段階ではエンジンが完全に暖機状態にあり、EGR が正常に作動しているからである。

    EU2000 及び RME30 の場合、標準試験温度における TDI 車の排出ガス中の NOx レベルは、RFD 及び RFD/RME の場合に比べて若干低かった。IDI 車では、EU2000 の排出ガスに含まれる NOx は、他の燃料よりも高かった。低い試験温度では、排出ガスに含まれる NOx には、試験燃料間で顕著な差異はみとめられなかった。

    ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドは、分析されたアルデヒドの総量のうち約 85 から 95%を占めていた。試験温度が-7℃まで下がると、排出ガスに含まれるアルデヒドは著しく増大した。しかし、+5℃と標準温度とにおいて得られた結果には、差異はみとめられなかった。(図 9 参照)試験モード全体にわたる結果に矛盾は見られない。しかし、個々の試験段階の結果には、大きなばらつきが

    見られた。特に、ECE 1 及び 2 試験段階でのばらつきが大きかった。

    -10-

  • 19

    試験燃料間で、排出ガスに含まれるアルデヒドに確かな差異があるかどうか結論付けるのは困難で

    ある。結果のばらつきを考慮に入れた場合、標準温度と+5℃における全ての燃料について、排出ガスに含まれるアルデヒドは大体同じレベルであるように見えた。-7℃においては、RME30 での排出ガスに含まれるホルムアルデヒドレベルは、EU2000 のそれよりも高かった。一方、-7℃においてRFD 及び RFD/RME の場合に発生するホルムアルデヒドには、一貫性が見られなかった。

    図 6. 欧州試験モードにおける TDI車及び IDI車の排出ガス温度(EU2000による試験)

    -11-

  • 20

    図 7. 欧州試験モードにおける TDI車及び IDI車の排出ガスに含まれる CO、HC、

    NOx排出量

    -12-

  • 21

    図 8. 欧州試験モードの 3段階における TDI車及び IDI車の排出ガスに含まれる

    CO、HC、NOx排出量

    -13-

  • 22

    図 9. 欧州試験モードにおける TDI 車及び IDI 車の排出ガスに含まれるホルムアルデヒド

    とアセトアルデヒド排出量

    -14-

  • 23

    図 10. EU2000を使用した欧州試験モードにおける CO、HC、NOxの希釈前排出ガス濃度

    の変遷

    -15-

  • 24

    4.2 排出ガスに含まれる粒子状物質の量

    欧州試験モード全体にわたる PM の総量の結果を図 11 に示す。また、各種試験段階における結果を図 12 に示す。

    TDI 車では、試験温度が低下すると、排出ガスに含まれる PM の量は増大した。驚くべきことに、試験モード全体にわたる排出ガスについて考慮すると、IDI 車からの排出ガスに含まれる PM の量は、減少するかあるいは温度による影響がみとめられなかった。

    各種試験段階における排出ガスを調査したところ、試験の開始段階では、両車において試験温度

    が低下すると PM の量が増大していることがわかった。TDI 車では、各種試験温度における排出ガスに含まれる PM の差異は、エンジンの暖機が進行するにつれて減少した。

    IDI 車では、低い試験温度における排出ガス中の PM の量を、試験モード第 2 段階の標準温度におけるそれと比較すると、同じレベルであった。EU2000 が示したこの驚くべき結果は、EU2000 以外の燃料にもあてはまる。IDI 車の排出ガスに含まれる PM の量は、EU2000 を使用した EUDC試験段階において非常に高く、試験の初期段階よりも高かった。この結果、EU2000 を使用した第3 EUDC 試験段階では、標準温度における IDI 車の排出ガスに含まれる PM は、-7℃の試験温度におけるそれよりも高かった。その他の試験燃料(例えば、図 12 における RME30)では、各種試験温度における EUDC 試験段階の PM の量には、大きな差異は無かった。EU2000 を使用した IDI 車による EUDC 試験段階の結果が非常に驚くべきものだったので、プログラムの最後に再確認のための追加試験を実施したところ、結果に間違いが無いことが確認された。この現象は、

    EGR システムの作動状態と関係があるものと思われる。

    排出ガスに含まれる PM の量は、IDI 車よりも TDI 車の方が高かった。EU2000 を使用した場合は、両車において最も高い PM の量を示した。標準温度では、TDI 車において、RME30 を用いた場合は EU2000 を用いた場合に比べてパティキュレートは排出量は 24%低かった。TDI 車では、RFD は 30%、RFD/RME は 40%の、PM の量に対する貢献を示した。標準温度における IDI 車では、RME30、RFD、RFD/RME が発生する排出ガスに含まれる PM の量は、EU2000 が発生するそれと比較すると、約 40 から 50%低かった。EU2000 では、+5℃と-7℃の試験温度においても、他の燃料と比較すると高い PM 発生量を示した。

    -16-

  • 25

    図 11. 欧州試験モードにおける排出ガスに含まれる PMの量

    図 12. EU2000 及び RME30 を使用した欧州試験モードの各段階における排出ガスに含ま

    れる PMの量

    試験モードの最初と最後の 400 秒間における排出ガスに含まれる PM の量の詳細観察データを、図 13 及び図 14 に示す(ELPI 粒子数は排出ガス量に変換した)。これらの図については、総体的なパターンのみを考慮されたい。なぜなら、排出されたガスの正しい絶対量を ELPI 量変換結果から得るには、粒子密度がわかっていなければならないからである。

    TDI 車では、低い温度における PM の最初のピークは、標準試験温度におけるそれと比較すると、非常に大きかった。最初の加速の後は、低い温度における PM の流量は、標準温度におけるそれと比較すると、ごくわずかに高いレベルであった。

    -17-

  • 26

    IDI 車では、試験の初期段階においては PM の特に大きなピークは観察されなかった。各種温度における PM の組成には、大きな差異は無いようであった。粒子密度がわかっていないため、これらの図から各種温度における粒子の流量を分析することは不可能である。試験においてピークが

    認められるかどうか、そして粒子の組成が車両の速度にどのように追従するか、の 2 点だけを読み取ることができる。

    図 13. TDI 車に EU2000 及び RME30 を使用した欧州試験モードの、各種試験温度の最初

    と最後における排出ガスに含まれる粒子の量(ELPI データは排出ガス量に変換した。)

    -18-

  • 27

    図 14. IDI 車に EU2000 を使用した欧州試験モードの、各種試験温度の最初と最後におけ

    る排出ガスに含まれる粒子の量(ELPIデータは排出ガス量に変換した。)

    粒子量分布の測定は、LPI を使用して欧州試験モード(ECE 1 及び 2)の最初の 13 分間の PMを採集することにより実施した。試験モードの EUDC の部分は除外した。これは、試験段階にエンジン暖機が含まれている場合、低い試験温度の影響が結果に現れない可能性があるからである。

    LPI による排出ガスに含まれる PM の量(ステージ 1 から 12)を、標準の排出ガスに含まれる PMの量データと比較した(図 15 参照)。全体に、LPI により収集された粒子の量は、欧州試験モードの ECE 1 及び 2 段階から得られた標準 PM データと、相関を示した。これらの測定値は、-7℃でTDI 車に RME30 及び RFD/RME を使用した試験において、最も大きいばらつきを示した。

    -19-

  • 28

    図 15. LPI及び標準 PM採集システムを使用して欧州試験モードの ECE 1及び 2段階

    (0から 780秒)から得られた、排出ガスに含まれる粒子の量データ

    欧州試験モードの最初の 13 分間(ECE 1 及び 2)における粒子量の分布データを、図 16 及び図17 に示す。EU2000 及び RME30 を使用した場合、-7℃における排出ガスに含まれる粒子の量は、標準温度におけるデータと比較すると、ピークが高く、また粒子の粒径の大きい方へと幅広く移行

    した。RFD 及び RFD/RME を使用した場合、温度が粒子量の分布に及ぼす影響はごくわずかであった。

    LPI による測定においては、“エンドフィルター”を使用して 30nm 未満の粒子を採集した。多くのケース(TDI/RME30、IDI/EU2000、IDI/RME30)において、-7℃における 30nm 未満の粒子の量が、標準温度におけるそれと比較して明らかに高かったことは、特筆に価する。しかしながら、

    RFD あるいは RFD/RME を使用した場合には、この現象は見られなかった。

    -20-

  • 29

    図 16. EU2000及び RME30を使用した場合の粒子量の分布(欧州試験モードの ECE 1

    及び 2段階)

    -21-

  • 30

    図 17. RFD及び RFD/RMEを使用した場合の粒子量の分布(欧州試験モードの ECE 1

    及び 2段階)

    4.3 排出ガスに含まれる粒子数

    4.3.1 概要

    標準温度と-7℃において、EU2000 及び RME30 を使用した試験モードにおける粒子数の総流量を、図 18 及び図 19 に示す。

    総粒子数濃度は、全体的に車両の速度によって変化した。EU2000 を使用した TDI 車による-7℃における試験の最初に、粒子数のピークが見られた。その後は、EU2000 による標準温度における粒子数の総流量と、-7℃におけるそれとの間には、ごくわずかな差異しか見られなかった。これに対して、RME30 を使用した場合は、TDI 車による試験モード全体にわたって、-7℃における粒子数の総流量は、標準温度におけるそれよりも高かった。

    EU2000 と RME30 との差異に関して言うと、IDI 車における結果と TDI 車にける結果は類似していた。しかしながら、EU2000 を使用した場合、IDI 車の暖機中は、-7℃における粒子数濃度は、標準温度におけるそれよりも低いレベルであった。これは、試験の EUDC 部分において特に顕著であった。これは、前述した粒子の総量の結果と一致している。

    RFD は、粒子の総数に関しては、試験温度に対して鈍感であった。RFD に 30%の RME をブレンドした場合でさえも、特に顕著な温度による影響は見られなかった。(図 20 に例を示す。)

    -22-

  • 31

    図 18. EU2000及び RME30を使用した TDI車の粒子数流量

    -23-

  • 32

    図 19. EU2000及び RME30を使用した IDI車の粒子数流量

    -24-

  • 33

    図 20. RFD/RMEを使用した IDI車の粒子数流量

    欧州試験モードの最初の冷間始動段階(390 秒、ECE 1)における TDI 車と IDI 車による 2 種類の粒径クラスの粒子数概要を、図 21 及び図 22 に示す。

    TDI 車の排出ガスに含まれる総粒子は、主に大きい粒径クラス(60nm を超える)に属していた。IDI 車は、TDI 車よりも小さい粒径クラスの粒子を多く排出していた。

    EU2000 及び RME30 を使用した TDI 車の蓄積モードにおける粒子(60nm から 1.6μm)の総数は、温度が下降すると増大した。しかし、RFD 及び RFD/RME を使用した場合は、特に顕著な温度の影響は見られなかった。EU2000、RFD、RFD/RME を使用した TDI 車では、温度は60nm 未満の粒子数にはさほど影響しなかった。しかし、-7℃における RME30 では、標準温度におけるそれよりも顕著な増大を示した。

    IDI 車の冷間始動においては、60nm を超える粒子数に対して、温度は大きな影響を及ぼさなかった。しかし RME30 では、温度が下降するといくらかの増大が見られた。-7℃における IDI 車の60nm 未満の粒子数は、標準試験温度における場合よりも、全ての燃料において高かった。-7℃における RME30 による結果のばらつきは大きかった。

    TDI 車では、+5℃における 60nm 未満の粒子数は、標準温度と-7℃において得られた結果の間であった。しかしながら、+5℃における RME30 による結果には大きなばらつきがあった。IDI 車では、+5℃における 60nm 未満の粒子数は、標準温度において EU2000 により得られた結果に近似していた。しかし、+5℃における RME30 では、標準温度における結果と比較すると、粒子の明らかな増大が見られた。

    -25-

  • 34

    図 21. TDI 車による欧州試験モード(ECE 1)の最初の 390 秒における、60nm 未満及び

    60nmから 1.6µmの間の粒子

    図 22. IDI 車による欧州試験モード(ECE 1)の最初の 390 秒における、60nm 未満及び

    60nmから 1.6µmの間の粒子状物質

    4.3.2 粒子数分布

    冷間始動(ECE 1)

    欧州試験 ECE 1 冷間始動の粒子分布図は、図 21 及び図 22 で既に述べた内容とほぼ同様の情報だが、さらに詳細に示している。これら個々の TDI 車及び IDI 車における分布が全く異なっていることが、はっきりと見て取れる。しかしながら、IDI 車においてすら、特に大きい“核モード”は一切見られず、蓄積モード粒子よりも高い数値の核モード粒子が見られただけであった。この場合、粒

    子が凝集する傾向にあることの理由として、いくつか考えられる。それには、燃焼技術だけではなく、

    排出ガス装置や潤滑剤の品質の差なども含まれる。

    -26-

  • 35

    EU2000 を使用した場合、試験温度の低下は、TDI 車においては全粒径の粒子を若干増大させた。しかし、IDI 車においては、この効果は 15nm の粒径クラスの粒子で特に顕著に見られた。

    RME30 を同様の条件で使用すると、低い温度における TDI 車では粒径分布が小さい粒径クラスに移行する。しかし IDI 車では、15nm の粒径クラスに最も顕著な増大が再び見られた。

    RFD あるいは RFD/RME を使用した場合、TDI 車では粒径分布には特に影響は見られなかった。IDI 車では、RFD 及び RFD/RME が低い温度における核形成モードと蓄積モードで発生する粒子数は、標準温度における場合よりもいくぶん高かった。

    粒子数分布結果は、前述した粒子の量分布結果と対称を成している。しかしながら、超微細粒子

    が粒子の量に及ぼす影響はごくわずかであることに注意しなければならない。蓄積モードの粒子数

    は、粒子量の結果と一致していなければならない。

    試験の冷間始動段階における粒子数の結果は、ほとんどの場合、量分布結果とほぼ一致していた。

    最も顕著な差異は、RME30 において見られた。量分布測定結果は、低い温度において 0.1μmを超える粒子の量に増大を示したが、粒子数分布結果は同様な傾向を示さなかった。超微細粒子

    の数に顕著な増大があると、蓄積モードの結果が不安定になる可能性がある。さらに、RME による蓄積モードの粒子で凝縮する HC は粒子量が増えるが、粒子数の増大としては観察されないという可能性もある。この現象は、中量エンジンによる試験においては見られなかった。これはおそらく、

    中量エンジンにおいて温度が結果に及ぼす影響は、軽量エンジン車における場合と比較すると、

    一般的に極めて大きいためであると思われる。

    -27-

  • 36

    図 23. EU2000及び RME30を使用した冷間始動 ECE 1試験段階における粒子数分布

    -28-

  • 37

    図 24. RFD及び RFD/RMEを使用した冷間始動 ECE 1試験段階における粒子数分布

    暖機状態にあるエンジン、EUDC

    TDI 車では、暖機状態にあるエンジンで、EU2000、RFD、RFD/RME を使用した場合、温度が粒子数分布に影響を及ぼすことは無かった。

    IDI 車では、暖機状態にあるエンジンで、特に EU2000 を使用した場合、試験温度が低下すると蓄積モードにおける粒子数が減少した。

    両方の車両において、RME30 を使用した場合、試験温度が低下すると、粒子数分布が小さい粒径クラスに移行し、核形成モードレンジにおける粒子数が増大した。

    -29-

  • 38

    図 25. EU2000 及び RME30 を使用した暖機状態にあるエンジンによる EUDC 試験段階に

    おける粒子数分布

    -30-

  • 39

    図 26. RFD及び RFD/RMEを使用した暖機状態にあるエンジンによる EUDC試験段階に

    おける粒子数分布

    連続データから、平均分布図が各種運転条件における変遷を良好に表示していることがわかる。

    TDI 車では、粒子数分布は試験モード全体にわたって一定値を維持していること(図 27 に例を示す。)がわかり、平均値として表示することができる。

    しかしながら、これは IDI 車にはあてはまらない。図 27 から、例えば 15nm 及び 70nm の粒径クラスの粒子数の順序が、運転条件によって変化することがわかる。分布は、加速、一定速度、減速に

    よって異なる。温度あるいは燃料の影響を調査するには、IDI 車の平均値を使用することができる。しかし、IDI 車から排出される粒子の分布は、実際には平均図の表示よりも複雑であることを考慮に入れなければならない。

    -31-

  • 40

    図 27. EU2000を使用した TDI車及び IDI車のステージ 1(15nm)とステージ 3(70nm)

    -32-

  • 41

    5 日本 10・15モードの結果

    日本 10・15 モードによる試験を、暖機始動と冷間始動の両方の手順で実施した。排出ガス温度は、標準温度における暖機始動試験でさえ、TDI 車では 140℃未満、IDI 車では 120℃未満に留まった(図 28 参照)。-7℃における排出ガス温度は、試験の終了時点でさえも、暖機始動試験におけるそれと比較すると 20 から 30℃低かった。

    図 28. 10・15モードにおける TDI車及び IDI車の排出ガス温度

    -33-

  • 42

    図 29 から、10・15 モードと欧州試験モードの結果を比較すると、排出ガスが試験温度の変遷に対して良く反応していることが見て取れる。これは、IDI 車から排出される PM の総量以外の排出ガスにもあてはまる。IDI 車の EUDC 部分の運転は、試験の最初の 13 分間とは異なっている。

    図 29. -7℃における結果を標準試験温度における結果で除した約数

    排出ガスに含まれる CO、HC、NOx、総 PM の絶対値を、図 30 から図 32 に示す。試験温度が下降すると、規制されている排出ガスが明らかに増大することがわかる。

    -34-

  • 43

    図 30. 10・15モードにおける排出ガスに含まれる CO及び HC

    -35-

  • 44

    図 31. 10・15モードにおける排出ガスに含まれる NOx及び PMの量

    排出ガスに含まれるアルデヒドは、10・15 モードにおいて極度に多く、-7℃においては特に多かった。欧州試験モードにおいても、排出ガスに含まれるアルデヒドは、標準温度よりも-7℃においての方が高かった。しかしこの差は、10・15 モードの方がはるかに高かった。触媒を装備している車両(TDI 車)と、触媒を装備していない車両(IDI 車)の両方において同様の現象が見られたので、これは触媒の作用では説明不可能である。この結果を確認するためには、追加試験が必要である。

    -36-

  • 45

    図 32. 10・15モードにおける排出ガスに含まれるホルムアルデヒド

    10・15 モード試験、及び試験の最後の 2.8 分間における粒子数の結果を、図 33 及び図 34 に示す。暖機始動試験としての標準温度と-7℃における粒子数分布は、欧州試験における ECE 1 部分で見られたパターン(4.3 参照)と類似していた。

    冷間始動手順を使用した標準試験温度における粒子数分布は、両車両において欧州試験モード

    から得られた結果とは異なっていた。アルデヒドについて下した結論と同様に、10・15 冷間始動の結果と欧州試験モードの結果との間にそれほど大きな差異があるのか、あるいは再現試験が無い

    ために生じた事態なのかを確認するための追加測定が必要である。

    -37-

  • 46

    図 33. 10・15モード及び試験の最後の 2.8分間における TDI車の粒子数分布

    -38-

  • 47

    図 34. 10・15モード及び試験の最後の 2.8分間における IDI車の粒子数分布

    -39-