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自動車用ディスプレイの特徴と課題 (独)自動車技術総合機構 交通安全環境研究所 森田 和元 JEITA人間工学専門委員会公開シンポジウム 201733法政大学小金井キャンパス 1

自動車用ディスプレイの特徴と課題 - JEITA...自動車用ディスプレイの特徴と課題 (独)自動車技術総合機構交通安全環境研究所 森田和元

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Page 1: 自動車用ディスプレイの特徴と課題 - JEITA...自動車用ディスプレイの特徴と課題 (独)自動車技術総合機構交通安全環境研究所 森田和元

自動車用ディスプレイの特徴と課題

(独)自動車技術総合機構 交通安全環境研究所

森田 和元

JEITA人間工学専門委員会公開シンポジウム2017年3月3日於 法政大学小金井キャンパス

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その他動作

ハンズフリー使用

通話目的使用

画像目的使用

注視中

操作中

携帯電話

カーナビ等

情報機器の使用による事故実態

脇見による追突事故が多い

ITARDAデータによる

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混乱するドライバ

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Distractionの問題・・・ドライバに混乱を与えるものであってはいけない

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車載ディスプレイ

カーナビゲーション装置

ヘッドアップディスプレイ(HUD)

カメラモニタシステム(CMS)

本日の内容

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カーナビの発展

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1980 1990 2000 2010

バーズアイビュー(日産)(1995年)

カーナビ元年(1981年)

GP

S

の採用(パイオニア)(

1990年)

音声誘導(ボイスナビゲーション)(1992年)

ホンダ「エレクトロ・ジャイロケータ」

CD

-RO

M

に電子地図搭載(1987年)

DV

D

の使用(1997年)

HD

D

の使用(2001年)

VIC

S

による情報提供(1996年)

ヘッドアップディスプレイの採用

自工会ガイドライン(1990年)

自工会ガイドライン3.

0版(2004年)

スマホとの連携

IEEEマイルストーン認定(2017年)

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カーナビ表示を見ることによる脇見運転のおそれ

人間が見ることが可能な視野範囲

• 中心視野:網膜中心の感度の高い視細胞が集中する範囲、約1度

• 有効視野:人間の認知可能な視野領域、大きさは約4度から20度であるが、これは心理的な要因によって変化する

• 周辺視野:光点の存在を認知できるかどうかという観点から医学的な測定器具によって測定される範囲、片目では、鼻側および上側に約60度、下側に約70度、耳側に約100度の範囲 6

重要なのは有効視野

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有効視野は交通状況によって変わる

出典:三浦利章:「行動と視覚的注意」,東京,風間書房,p.160-165 (1996年)

注意を集中する場合には視野は狭くなる

トレードオフの関係

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運転時にカーナビを見ているとき前方をどの程度認識できるか

表示位置7表示位置3

ディスプレイの位置を7種類に変更して前方の車両のストップランプ点灯に気がつくかどうか走行実験

8

出典:森田ほか「自動車の車室内表示装置を注視することによる反応時間の遅れについて」,照明学会誌,Vol.82, No.2, pp.121-130 (1998)

気がつかなかった比率(%)

Page 9: 自動車用ディスプレイの特徴と課題 - JEITA...自動車用ディスプレイの特徴と課題 (独)自動車技術総合機構交通安全環境研究所 森田和元

カーナビに関する自工会ガイドライン

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• ディスプレイ位置・・・ドライバのアイポイント位置から俯角30度以内

• 地図表示・・・走行時に細街路の表示はしない

• 文字表示・・・動的表示の文字スクロールは禁止、30文字を超えるものは禁止(VICS(道路交通情報通信システム, 1996年)に対応)

• 評価方法・・・総視認時間は8秒以内

オクルージョン法で評価する場合は5回以下(7.5秒以内)

など

Ver.1 1990年Ver.2 1999年Ver.3 2004年

時間(秒)0 4 8 1062 12

1.5秒 1.0秒

シャッター開

シャッター閉

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車載ディスプレイ

カーナビゲーション装置

ヘッドアップディスプレイ(HUD)

カメラモニタシステム(CMS)

本日の内容

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自動車用HUDの基本的な構造

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凹面鏡を使用することにより図形を拡大して遠方に表示可能

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ウィンドシールド上に表示するので視線を移動させる必要がない

表示に対して目の調節(焦点距離の調整)を行う必要がない

ヘッドアップディスプレイ(Head-Up Display, HUD)

安全性向上につながる

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HUDの重要な考慮点

(1)ドライバの目の位置からHUD虚像までの距離

現在はボンネット先端あたりの2m位のものが多い

(2m以上離れれば焦点調整にかかる時間は大きく変化しない)

(2)HUD虚像まで俯角

HUDが見えやすく、同時に、前方の交通状況も容易に認識できるための最適な俯角については議論あり

(3)複数の表示(3D表示も開発されている)

AR(拡張現実)に対応して、多くの表示が許されるか

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複数のHUD表示時の安全性

(数多くのHUD表示が出る場合にどのように探索を行うのか?)

出典:榎本ほか「ヘッドアップディスプレイを想定した重畳表示における情報の表示数と位置が安全運転に与える影響(第1報)および(第2報)」,自動車技術会論文集, Vol.47, No.2, pp.515-529 (2016)

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15高速道路 市街地

ターゲット

同時に数多く表示されるHUDランドルト環の組の中で、真円が含まれているものを探す

ドライビングシミュレータによる室内実験

複数のHUD表示にかかる実験内容

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実験条件

• HUDの表示位置 15箇所• 垂直方向 5 箇所 (0°,±6°,±3°)

• 水平方向 3 箇所 (0°,±10°)

• 15箇所の中でランダムに呈示

•呈示するHUDの個数• 3 個,6 個,9 個

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-10 10deg.0

6

3

0

-3

-6

deg.

ターゲット ターゲットなし

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実験状況の映像(3個表示の場合)

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HUDが3個表示される場合の例

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実験状況の映像(6個表示の場合)

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HUDが6個表示される場合の例

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複数HUD表示の安全性のまとめ

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(1) 表示量の問題 (ドライバが必要な情報をすぐに探索できるか?)---> 逐次探索が必要な情報提示については、表示量が増加すると探索時間は線形に増加する

(2) 表示する位置の問題 (認知しやすい位置はどこか?)--->ドライバのアイポイント正面付近が認知しやすい

(3) 運転の集中度合い (運転がおろそかになるか?)--->アクセルコントロールがおろそかになる

(4) 緊急時の対応 (ブレーキをすぐに踏めるか?)--->正面を見ているときと比較して平均約0.4秒遅れる(インパネの表示を注視しているときには平均で約0.6秒遅れるので、それよりも安全性が高い)

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車載ディスプレイ

カーナビゲーション装置

ヘッドアップディスプレイ(HUD)

カメラモニタシステム(CMS)

本日の内容

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カメラモニターシステム(ミラーレス)

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自動車の間接視界に関するECE Regulation No.46の改正(2016年1月発効)

2016年6月に保安基準改正が行われ、日本でもカメラモニタシステム(CMS)が使用可能になる

車室内(モニター部) 車外(カメラ部)

イメージ図

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CMSの主な要件

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対象となるミラーに応じてクラス分けで規定サイドミラーの代替はクラスⅡかクラスⅢで規定

(1)画像上のオーバーレイ(追加図など)は後方視界と関係するものであること

(2)オーバーレイは一時的(temporary)なものであること

(3)オーバーレイの面積は画面の2.5%を超えないこと

(4)表示の倍率は平面鏡のときとの比較により、最小倍率(例えばクラスⅢの運転席側で0.29以上)、平均倍率(例えばクラスⅢの運転席側で0.31以上)を確保すること

(5)右側の視界の画像はアイポイントからみて右方向に、左側の視界の画像はアイポイントからみて左方向に表示すること 等々

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レーザー光を直接利用したヘッドランプ

Road Surface Drawing・・・車両のランプ光を利用して道路上に直接、矢印等のマークを描画する

高齢ドライバ対策・・・緑内障などの視野欠損による事故を防ぐための支援システム

ディスプレイではないが視覚情報に関係するトピック

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ご清聴ありがとうございました

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