連通口により接続された並列式温度成層型蓄熱槽の性能評価 (その 1)連通口形状及び蓄熱槽形状が蓄熱槽効率に及ぼす影響 Performance of Temperature-stratified Water TES Tanks with Communicating Ports Part1. Effect of Communicating Ports and Tank Shape on Thermal Storage Performance 1. はじめに 温度成層型蓄熱槽とは、安価な夜間電力により空調用冷 水を生成し、水の密度差を利用して温度の異なる水を混 合させずに蓄える蓄熱槽である。温度成層型蓄熱槽に流 入・流出口として設けられるディフューザーは、その形状、 設置位置、設置個数などが、蓄熱槽性能の重要な要因と なるが、一般によく用いられる水平吹出型の円板型ディ フューザーは比較的高価である。既往の研究 1, 2) では低コ ストで適切な温度成層を形成し得る形状として、パンチン グメタルを付設した鉛直吹出型ディフューザーを提案し、 CFD 解析により性能評価を行った。低コスト化のために は、このようにディフューザーを改良する取り組みに加え て、ディフューザーの設置個数の低減も有効と考えられる。 このような背景の中で、ディフューザーの設置されてい ない蓄熱槽と設置された蓄熱槽を連通口を介して並列に 接続した温度成層型蓄熱槽が提案され、実物件での採用 も見られる。しかしその際の槽内温度分布や蓄熱性能は 十分に明らかにされておらず、適切な連通口のサイズの 設計方法も確立されていない。本報では、連通口で接続 された並列式温度成層型蓄熱槽において、連通口サイズ 及び蓄熱槽形状をさまざまに変更したものを CFD 解析で 再現し、蓄熱性能に及ぼす影響を検討する。 2.CFD 解析概要 2.1 CFD 解析空間 CFD 解析対象とした槽形状とメッシュレイアウトを Figure 1 及び Figure 2 にそれぞれ示す。水面から 100 mm 下にボックス型の鉛直吹出ディフューザー ( 長辺 4000 mm、短辺 400 mm、高さ 90 mm) を設置し、その 吐出面にはパンチングメタルが取り付けられているもの とした。これは、実物件で採用例のあるディフューザーを 再現したものでり、パンチングメタルは孔径が 1.5 mm間隔が 3 mm、厚みが 1 mm60° 千鳥配置、開口率が 22.7% を想定した。本研究ではディフューザー設置槽を Tank1、非設置槽を Tank2 と呼称する。ここでは、計算負 荷軽減のため対称性を利用し全槽の 1/2 のみを解析対象と した。 2.2 パンチングメタルのモデル化手法 CFD 解析でパンチングメタルの形状を詳細に再現する ことは難しいため、ここでは筆者らが既往の研究 3) で提案・ 検証を行ったモデル化を採用する。本手法ではパンチング メタルを通過した流速が吐出面に垂直に吹き出す現象を より正確に再現するために、各成分の運動量保存式に損 失項(圧力損失)を付加する「3 次元圧力損失モデル」を 導入している。吐出面に 1 メッシュ分の厚みのある「板」 を設定し、深さ方向と水平方向の三方向の圧力損失を(1) 式により与えて解析を行う。なお、圧力損失を求めるた めには式中の圧力損失の係数(αC 2 )を設定する必要が あるが、既往研究 4) での一様流下での同定結果に基づい Table 1 に示す値を用いた。なお、パンチングメタル の厚みは 1 mm を想定しているが、解析領域全体の格子 配置のバランスから 2 mm 厚の格子で再現し(Δn=2 mmとして、表中の α C 2 を調整している。 n C p i i i Δ + - = Δ 2 2 2 1 ρν ν α μ z y x i , , = (1) 2.3 CFD 解析条件 本研究が参考とした並列式の温度成層型蓄熱槽を採用 した実物件 ( A ビル ) では 300 φ× 4 本の連通口の設計で あるが、本研究では連通口の断面積 ( 連通口条件 ) を変 更した Case1 6 6 条件(Figure 3)を対象とする。 また蓄熱槽条件 CaseA C 3 条件も検討し、連通口条 件と組み合わせた計 18 条件解析する。CaseA は汎用的な ○山千代 真子 (大阪市立大学) 小林 知広 (大阪市立大学) 相良 和伸(大阪大学) 梅宮 典子 (大阪市立大学) 古賀 (関西電力) 一谷 匡陛(関西電力) 西山 (大気社) Mako YAMACHIYO* 1 Tomohiro KOBAYASHI* 1 Kazunobu SAGARA* 2 Noriko UMEMIYA* 1 Osamu KOGA* 3 Kyohei ICHITANI* 3 Mitsuru NISHIYAMA* 4 * 1 Osaka City University * 2 Osaka University * 3 The Kansai Electric Power Co.,Inc. * 4 Taikisha Ltd. The temperature-stratified water TES tank stores heat energy and its performance depends upon the configuration of dif- fusers and tank shape. This paper presents the performance of the temperature-stratified water TES tanks connected by communicating ports. The TES tanks are simulated by CFD varying the communicating ports size and tank shape to evalu- ate the effect on thermal storage performance. It’s shown that the increase of flow rate does not cause a significant decrease of the TES tank efficiency if communicating port porocity is more than 1.0%.

連通口により接続された並列式温度成層型蓄熱槽の …...連通口により接続された並列式温度成層型蓄熱槽の性能評価 (その1)連通口形状及び蓄熱槽形状が蓄熱槽効率に及ぼす影響

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連通口により接続された並列式温度成層型蓄熱槽の性能評価

(その 1)連通口形状及び蓄熱槽形状が蓄熱槽効率に及ぼす影響

Performance of Temperature-stratified Water TES Tanks with Communicating PortsPart1. Effect of Communicating Ports and Tank Shape on Thermal Storage Performance

1. はじめに

 温度成層型蓄熱槽とは、安価な夜間電力により空調用冷

水を生成し、水の密度差を利用して温度の異なる水を混

合させずに蓄える蓄熱槽である。温度成層型蓄熱槽に流

入・流出口として設けられるディフューザーは、その形状、

設置位置、設置個数などが、蓄熱槽性能の重要な要因と

なるが、一般によく用いられる水平吹出型の円板型ディ

フューザーは比較的高価である。既往の研究1, 2)では低コ

ストで適切な温度成層を形成し得る形状として、パンチン

グメタルを付設した鉛直吹出型ディフューザーを提案し、

CFD 解析により性能評価を行った。低コスト化のために

は、このようにディフューザーを改良する取り組みに加え

て、ディフューザーの設置個数の低減も有効と考えられる。

このような背景の中で、ディフューザーの設置されてい

ない蓄熱槽と設置された蓄熱槽を連通口を介して並列に

接続した温度成層型蓄熱槽が提案され、実物件での採用

も見られる。しかしその際の槽内温度分布や蓄熱性能は

十分に明らかにされておらず、適切な連通口のサイズの

設計方法も確立されていない。本報では、連通口で接続

された並列式温度成層型蓄熱槽において、連通口サイズ

及び蓄熱槽形状をさまざまに変更したものをCFD 解析で

再現し、蓄熱性能に及ぼす影響を検討する。

2.CFD 解析概要

2.1 CFD 解析空間

 CFD 解析対象とした槽形状とメッシュレイアウトを

Figure 1 及び Figure 2 にそれぞれ示す。水面から 100 mm 下にボックス型の鉛直吹出ディフューザー(長辺

4000 mm、短辺 400 mm、高さ 90 mm)を設置し、その

吐出面にはパンチングメタルが取り付けられているもの

とした。これは、実物件で採用例のあるディフューザーを

再現したものでり、パンチングメタルは孔径が 1.5 mm、

間隔が 3 mm、厚みが 1 mm、60° 千鳥配置、開口率が

22.7%を想定した。本研究ではディフューザー設置槽を

Tank1、非設置槽をTank2 と呼称する。ここでは、計算負

荷軽減のため対称性を利用し全槽の 1/2 のみを解析対象と

した。

2.2 パンチングメタルのモデル化手法

 CFD 解析でパンチングメタルの形状を詳細に再現する

ことは難しいため、ここでは筆者らが既往の研究 3)で提案・

検証を行ったモデル化を採用する。本手法ではパンチング

メタルを通過した流速が吐出面に垂直に吹き出す現象を

より正確に再現するために、各成分の運動量保存式に損

失項(圧力損失)を付加する「3次元圧力損失モデル」を

導入している。吐出面に 1 メッシュ分の厚みのある「板」

を設定し、深さ方向と水平方向の三方向の圧力損失を(1)

式により与えて解析を行う。なお、圧力損失を求めるた

めには式中の圧力損失の係数(α、C2)を設定する必要が

あるが、既往研究 4) での一様流下での同定結果に基づい

てTable 1 に示す値を用いた。なお、パンチングメタル

の厚みは 1 mm を想定しているが、解析領域全体の格子

配置のバランスから 2 mm 厚の格子で再現し(Δn=2 mm)

として、表中の α とC2 を調整している。

 

nCp ii

i ∆

+−=∆ 2

2 21 ρνν

αµ

zyxi ,,=  (1)

2.3 CFD 解析条件

 本研究が参考とした並列式の温度成層型蓄熱槽を採用

した実物件(A ビル)では 300 φ× 4 本の連通口の設計で

あるが、本研究では連通口の断面積(連通口条件)を変

更した Case1 ~ 6 の 6 条件(Figure 3)を対象とする。

また蓄熱槽条件CaseA ~C の 3 条件も検討し、連通口条

件と組み合わせた計 18 条件解析する。CaseA は汎用的な

○山千代 真子 (大阪市立大学) 小林 知広 (大阪市立大学) 相良 和伸 (大阪大学)

梅宮 典子  (大阪市立大学) 古賀 修  (関西電力) 一谷 匡陛(関西電力)

西山 満   (大気社)

Mako YAMACHIYO*1 Tomohiro KOBAYASHI*1 Kazunobu SAGARA*2 Noriko UMEMIYA*1

Osamu KOGA*3 Kyohei ICHITANI*3 Mitsuru NISHIYAMA*4

*1 Osaka City University *2 Osaka University *3 The Kansai Electric Power Co.,Inc. *4 Taikisha Ltd.

The temperature-stratified water TES tank stores heat energy and its performance depends upon the configuration of dif-fusers and tank shape. This paper presents the performance of the temperature-stratified water TES tanks connected by communicating ports. The TES tanks are simulated by CFD varying the communicating ports size and tank shape to evalu-ate the effect on thermal storage performance. It’s shown that the increase of flow rate does not cause a significant decrease of the TES tank efficiency if communicating port porocity is more than 1.0%.

300mmHslot

100mmHslot

300mm×300mm×2

300mm×300mm×1

100mm×100mm×2

100mm×100mm×1

Therrmal Storage Tank

Thermal Storage Tank

XZ plan

XZ plan

5800

4600

63001500

6300

X

Z

Y

2300

X

Z

symmetry

tank wall

X

ZZZ

5800 400

200

6300 1500 6300

X

Y

water surface

tank wall

tank bottom

tank wall

inlet

outlet

5800

3000

4600

63001500 3500

X

Z

Y

2300

X

Z

symmetry

tank wall

5800 30

00

400200

6300 1500 3500

X

Y

water surface

tank wall

tank bottom

tank wall

inlet

outletXX

ZZZZ

(1/ X) [1/ ] 1.28E+11

(1/ Y) [1/ ] 1.28E+08

(1/ Z) [1/ ] 1.28E+11

C2X [1/m] 1.30E+07

C2Y [1/m] 1.30E+04

C2Z [1/m] 1.30E+07

Viscous Resistance

Inertial Resistance

XY cross-section (1) Case 1

(2) Case 2

(3) Case 3

(4) Case 4

(5) Case 5

(6) Case 6

XY cross-section

(1) Domain for Case A

(2) Domain for Case B,Case CFigure 1 Calculation Domain

Figure 2 Mesh layout for CaseA

Table 1 Pressure Drop Parameter

Table 2 Analysed Cases Table 3 CFD analysis condition

Flow Rate

[CMM]porocity[%]

TES Average Temperature[ ]

TES TankEfficiency[ ]

CaseA-1 35590 300mm slot 5.17 14.57 95.7CaseA-2 35301 100mm slot 1.72 14.65 96.5CaseA-3 35214 300×300 mm×2 0.67 14.55 95.5CaseA-4 35185 300×300 mm×1 0.34 14.42 94.2CaseA-5 35163 100×100 mm×2 0.07 12.17 71.7CaseA-6 35160 100×100 mm×1 0.04 11.19 61.9CaseB-1 15384 300mm slot 5.17 14.66 96.6CaseB-2 15287 100mm slot 1.72 14.68 96.8CaseB-3 15257 300×300 mm×2 0.67 14.61 96.1CaseB-4 15248 300×300 mm×1 0.34 14.47 94.7CaseB-5 15240 100×100 mm×2 0.07 13.47 84.7CaseB-6 15239 100×100 mm×1 0.04 13.17 81.7CaseC-1 5450 300mm slot 5.17 14.55 95.5CaseC-2 5415 100mm slot 1.72 14.57 95.7CaseC-3 5405 300×300 mm×2 0.67 14.3 93.0CaseC-4 5401 300×300 mm×1 0.34 13.77 87.7CaseC-5 5399 100×100 mm×2 0.07 13.03 80.3CaseC-6 5398 100×100 mm×1 0.04 12.91 79.1

2.41about

1.5 hours

Total Simulated Time[s]

0.567about

10 hours

0.852about

4.2 hours

CFD CodeDescritization scheme

AlgorithmTotal Simulated Time

Time Step Size

Initial TemperatureVelocity : 0.07378 m/s (Flow Rate 34.03 CMH) for CaseA

0.1095679 m/s (Flow Rate 51.12 CMH) for CaseB 0.3093111 m/s (Flow Rate 144.31 CMH) for CaseC

Temperature : 15 [deg.C] : Based on velocity and turbulent intensity ε: Based on k and Λ

Tubulent Intensity : 3% Length scale(Λ) : 14 mm

Outlet Velocity : Based on Flow RateTank Wall : Standard wall function (Generalized log law)

Water Surface,Symmetry Plane : Free SlipPunched Metal : Pressure Loss Coefficient for each Direction

The number of gridsTurbulence model

5 [deg.C]

Boundary condition

Inlet

Walls

420,000-705,000RNG k-εmodel

Second Order Upwind DifferencingUnsteady state (SIMPLE)

Equal to total time for 1.0 water change1.0 s

Density Polynominal function of absolute temperature( -4.79×10-7 T4+6.03×10-4 T3-0.28869T2+61.83323T-3973.829 )

ANSYS FLUENT 14.5

Figure 3 Calculation Domainfor Case 1-6

0.000.100.200.300.400.500.600.700.800.901.00

5.00 7.00 9.00 11.00 13.00 15.00Temperature [deg.C]

Tank 1

5.00 7.00 9.00 11.00 13.00 15.00Temperature [deg.C]

Tank 2

Dim

ensi

onle

ss H

eigh

t [-]

t*=0.6

t*=0.6

t*=0.2

t*=0.2

t*=1.0 t*=1.0

0.000.100.200.300.400.500.600.700.800.901.00

5.00 7.00 9.00 11.00 13.00 15.00Temperature [deg.C]

Tank 1

5.00 7.00 9.00 11.00 13.00 15.00

Tank 2

Temperature [deg.C]

Dim

ensi

onle

ss H

eigh

t [-]

t*=0.6

t*=0.6

t*=0.2t*=0.2

t*=1.0

t*=1.0

Figure 5 Comparison of vertial temperature profile (t*=0.2,0.6,1.0) 

(1) CaseA-2,4,6

0.000.100.200.300.400.500.600.700.800.901.00

5.00 7.00 9.00 11.00 13.00 15.00Temperature [deg.C]

Tank 1

5.00 7.00 9.00 11.00 13.00 15.00Temperature [deg.C]

Tank 2

Dim

ensi

onle

ss H

eigh

t [-]

t*=0.6

t*=0.2

t*=1.0

t*=0.6

t*=0.2

t*=1.0

11.00

(2) CaseB-2,4,6

(3) CaseC-2,4,6

Case2 (100mmHslot) Case4 (300mm×300mm×1) Case6 (100mm×100mm×1)

冷水が入り込み、Tank1 の成層がかき乱されたためであ

る。またCaseCではTank2にほとんど冷水が行き渡らず、

蓄熱槽として適切に機能していない。すなわち、このよ

うに円滑に冷水が行き来しない状態ではTank1の温度

成層が連通口高さに差し掛かった時点でもTank2 から低

温の冷水が流れ込みTank1の内部で混合が促進される。

CaseC ではCaseB よりも流入流量がさらに大きいため、

その差が顕著に出ている。

3.2 連通口形状による違い

 Figure 5 にそれぞれ蓄熱槽条件に対して、連通口条

件Case2、Case4、Case6 で比較した結果を槽内鉛直温

度分布として示す。Case2 を比較すると、いずれの蓄熱

槽条件においても、Tank2 の内部は 15℃で一様となるが、

Case6 ではTank2 の成層がほとんど低下しない。これは、

連通口面積が小さくなるため抵抗が大きくなりTank1 か

らTank2 に移動する水量が小さくなったことで、Tank2の蓄熱性能が低下すると考えられる。なお、Case4 にお

いては、CaseA、CaseB ともに概ね 15℃で一様となるが、

現実ではほぼ運用されない範囲の大流量であるCaseC の

流入流量が大きい条件では、Tank1 からTank2 への連通

口通過流量が相対的に低下することに伴いTank2 の蓄熱

性能が低下したと考えられる。

検討のため Tank1 と Tank2 が同サイズ(Figure 1(1))で 10 時間で 1 回換水する条件であり、CaseB は実務的

なニーズとしてA ビルの蓄熱槽の一部を再現した形状

(Figure 1(2))で 4.2 時間で 1 回換水とした。CaseC は

CaseB と同形状で 1.5 時間で一回換水する条件とした。

連通口は、Tank2 の最上部と最下部で接続し、連通口条

件についてはTable 2 に示す。ここで示す開口率につい

ては、連通口の上下いずれかの開口面積を隔壁の面積で

除して百分率で示したものと定義する。また、Table 3にCFD 解析条件をまとめて示す。

3. CFD 解析結果と考察

3.1 流入流量による違い

 蓄熱槽の 1 回換水終了時を無次元時間 t* = 1 として

連通口条件Case4 における槽内温度分布を各蓄熱槽条件

についてFigure 4 に示す。CaseA では 2 槽の成層は概

ね同じ高さで槽内温度は 15℃一様であり、成層幅に若

干の違いがあるが、蓄熱効率に大きな影響は及ぼさない

と考えられる。CaseB と CaseC では、Tank1 における

温度成層幅が大きくなってしまっている。これはある程

度大きい抵抗がある状態で流量を増やしたためTank2 の

成層下降がTank1 より遅くなり、それに加えて連通口を

Tank1 の中央高さで接続したためTank1 の中央高さから

Figure 4 Comparison of Case4 (t*=1.0)

(1) CaseA-4(Nominal time constant : 10h)

(2) CaseB-4(Nominal time constant : 4.2h)

(3) CaseC-4(Nominal time constant : 1.5h)

15.0014.0013.0012.0011.0010.009.008.007.006.005.00[℃ ]

15.0014.0013.0012.0011.0010.009.008.007.006.005.00[℃ ]

参考文献

1) 兪一非、相良和伸、山中俊夫、甲谷寿史、桃井良尚、小林知広、木

虎久隆、一谷匡陛、西山満:CFD解析による鉛直吹出ディフュー

ザーを有する温度成層型水蓄熱槽の蓄熱性能に関する検討、空気

調和・衛生工学会近畿支部学術研究発表会論文集、pp.277-280、2011.3

2) 森下悟史、相良和伸、山中俊夫、甲谷寿史、桃井良尚、小林知広、

古賀修、一谷匡陛、西山満:鉛直吹出ディフューザーを有す

る温度成層型水蓄熱槽における槽内混合モデルに関する研究

—CFD 解析によるモデルのパラメーター同定—、空気調和・衛

生工学会近畿支部学術研究発表会論文集、pp.127-130、2012.33) 樋口彩子、小林知広、岩田剛、相良和伸、山中俊夫、甲谷寿史、

桃井良尚、古賀修、一谷匡陛、西山満:鉛直吹出ディフュー

ザーを有する温度成層型水蓄熱槽の CFD 解析—ディフューザ

ー吐水面のパンチングメタルのモデル化手法の検討—、空気調

和・衛生工学会近畿支部学術研究発表会論文集、pp.97-100、2013.3

4) 兪一非、岩田剛,相良和伸、山中俊夫、甲谷寿史、桃井良尚、

小林知広、木虎久隆、田口雄一郎:温度成層型蓄熱槽におけ

る槽内鉛直温度分布の実験データを用いた CFD 解析の精度検

証、空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集、pp.907-910、2010.9

3.3 蓄熱槽効率と連通口開口率

本報における蓄熱槽効率は、最大限蓄放熱可能な熱量

に対して実際に蓄放熱を行うことができた熱量の比率と

して考え、放熱完了時の温度分布から (2) 式により算出

する。ただし、ここでは放熱側のみを解析しているため、

放熱時の蓄熱槽効率とする。蓄熱槽効率の定義は、本研

究では厳密に 1 回換水した時点での温度分布に基づいて

定義することとし、算出する蓄熱槽効率は放熱側の「換

水時蓄熱槽効率」と称する。各条件で式 (2) を適用して

得られた換水時蓄熱槽効率を導きFigure 6 及びTable 4 に 18 条件の換水時蓄熱槽効率と連通口開口率の関係

を示す。

  (2)

 

0.0

20.0

40.0

60.0

80.0

100.0

0.01 0.10 1.00 10.00

Case A

Case B

Case CTES

Tank

Eff

icie

ncy

[%]

Porosity [%]

Flow Rate[CMM]

porocity[%] TES Average Temperature[ ]

TES TankEfficiency[ ]

CaseA-1 35590 300mm slot 5.17 14.57 95.7CaseA-2 35301 100mm slot 1.72 14.65 96.5CaseA-3 35214 300×300 mm×2 0.67 14.55 95.5CaseA-4 35185 300×300 mm×1 0.34 14.42 94.2CaseA-5 35163 100×100 mm×2 0.07 12.17 71.7CaseA-6 35160 100×100 mm×1 0.04 11.19 61.9CaseB-1 15384 300mm slot 5.17 14.66 96.6CaseB-2 15287 100mm slot 1.72 14.68 96.8CaseB-3 15257 300×300 mm×2 0.67 14.61 96.1CaseB-4 15248 300×300 mm×1 0.34 14.47 94.7CaseB-5 15240 100×100 mm×2 0.07 13.47 84.7CaseB-6 15239 100×100 mm×1 0.04 13.17 81.7CaseC-1 5450 300mm slot 5.17 14.55 95.5CaseC-2 5415 100mm slot 1.72 14.57 95.7CaseC-3 5405 300×300 mm×2 0.67 14.3 93.0CaseC-4 5401 300×300 mm×1 0.34 13.77 87.7CaseC-5 5399 100×100 mm×2 0.07 13.03 80.3CaseC-6 5398 100×100 mm×1 0.04 12.91 79.1

2.41about

1.5 hours

Total Simulated Time[s]

0.567about

10 hours

0.852about

4.2 hours

Figure 6 Result of TES Tank Efficiency (t*=1.0)

Table 4 Result of TES Tank Efficiency (t*=1.0)

 今回の検討した中で換水時間が 1.5 h 〜 10 h と大き

く流入流量が異なるが,連通口開口率が 1.0%以上ある

条件では、どれも換水時蓄熱槽効率が 90%以上確保され

ていることがわかる。開口率が 1.0%を下回ると流量の

影響が見られはじめ、大きな流量であれば蓄熱槽効率が

低下する。さらに開口率が小さくなると連通口通過流量

が大きく低下することから、Tank 2 から取水することが

できず、流量が小さい場合でも蓄熱槽効率は大きく低下

するという結果となった。

4. おわりに

 並列に接続された温度成層型蓄熱槽において、蓄熱槽

の形状と流入流量を変化させた 3 種の蓄熱槽条件と連通

口の面積を変化させた 6 種の連通口条件を組み合わせて

計 18 条件のCFD 解析を行った。今回検討を行った条

件では開口率 1.0%以上あれば流入流量の大小は、換水

時蓄熱槽効率に大きな低下を及ぼすことはないという結

果が得られた。今後の展望として、実物件に導入された

温度成層型蓄熱槽の実運用データとCFD 解析の整合性

の検討を行う所存である。

NOMENCLATURE

p∆ Pressure loss[Pa]α Permeability[ ]

ν Velocity[m/s]

µ Viscosity[kg/( /s)] 2C Inertial resistance coefficient[l/m]

Water density[kg/ ]

t = 0.1*η TES Tank Efficiency [%]Vi Volume-Weighted Average Temperature [deg.C]T

Initial Temperature [deg.C]InTInput Temperature [deg.C]InitT