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各種がん 悪性黒色腫 国立がん研究センター がん対策情報センター 161 「がん情報サービス」 http://ganjoho.jp がん相談支援センターやがん診療連携拠点病院、がんに関するより詳しい情報は ウェブサイトをご覧ください。 国立がん研究センターは、皆さまからのご寄付で 全国の図書館に信頼できるがんの冊子をお届け するキャンペーンを行っています。 ぜひご協力ください。 国立がん研究センターがん情報サービス について Μ૬ஊԉηϯλʔɺશͷࢦࠃͷΜڌܞපӃͳͲʹ ΕΔ ʮΜͷ૬ஊ૭ޱʯͰɻױΜՈͰͳ ɺ どなたでも無料で໘ஊ·ʹΑΓར༻·ɻΘΒͳ ͱͱΕؾʹ૬ஊɻ Μ૬ஊԉηϯλʔͰ૬ஊΕɺ ຊਓͷղͳʹɺױ Μͷ୲ҩΛΊɺ ΄ͷʹΘΔͱΓ·Μɻ Ͳ ૬ஊ ɻ

悪性黒色腫...2 がんの冊子悪性黒色腫 がんと言われたあなたの心に起こること 1 また、インターネットなどで集めた情報が正しいかどうかを、

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  • 各種がん

    悪性黒色腫

    国立がん研究センターがん対策情報センター

    161

    「がん情報サービス」http://ganjoho.jp

    がん相談支援センターやがん診療連携拠点病院、がんに関するより詳しい情報はウェブサイトをご覧ください。

    国立がん研究センターは、皆さまからのご寄付で全国の図書館に信頼できるがんの冊子をお届けするキャンペーンを行っています。ぜひご協力ください。

    国立がん研究センターがん情報サービス

                 について

    がん相談支援センターは、全国の国指定のがん診療連携拠点病院などに設置されている「がんの相談窓口」です。患者さんやご家族だけでなく、どなたでも無料で面談または電話によりご利用いただけます。わからないことや困ったことがあればお気軽にご相談ください。

    がん相談支援センターで相談された内容が、ご本人の了解なしに、患者さんの担当医をはじめ、ほかの方に伝わることはありません。どうぞ安心してご相談ください。

  • 各種がん

    患 者 さんとご 家 族 の 明日のために

    161

    悪あ く せ い

    性黒こ く

    色し ょ く

    腫し ゅ

    受診から診断、治療、経過観察への流れ

  • 「体調がおかしいな」と思ったまま、放っておかないでください。なるべく早く受診しましょう。

    受診のきっかけや、気になっていること、症状など、何でも担当医に伝えてください。メモをしておくと整理できます。いくつかの検査の予定や次の診察日が決まります。

    治療後の体調の変化やがんの再発がないかなどを確認するために、しばらくの間、通院します。検査を行うこともあります。

    治療が始まります。気が付いたことは担当医や看護師、薬剤師に話してください。困ったことやつらいこと、小さなことでも構いません。よい解決方法が見つかるかもしれません。

    がんや体の状態に合わせて、担当医が治療方針を説明します。ひとりで悩まずに、担当医と家族、周りの方と話し合ってください。あなたの希望に合った方法を見つけましょう。

    担当医から検査結果や診断について説明があります。検査や診断についてよく理解しておくことは、治療法を選択する際に大切です。理解できないことは、繰り返し質問しましょう。検査が続くことや結果が出るまで時間がかかることもあります。

    がんの疑い

    受 診

    検査・診断

    治療法の選択

    治 療

    経過観察

     がんの診療の流れこの図は、がんの「受診」から「経過観察」への流れです。大まかでも、流れがみえると心にゆとりが生まれます。ゆとりは、医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう。あなたらしく過ごすためにお役立てください。

  •  目 次

    がんの診療の流れ

    1 . がんと言われたあなたの心に起こること ........................... 1

    2 . 悪性黒色腫とは ..................................................................... 3

    3 . 検査と診断 ............................................................................. 7

    4 . 病期 ......................................................................................... 9

    5 . 治療 ....................................................................................... 10

    1 手術(外科治療) ........................................................... 11

    2 薬物療法 ...................................................................... 12

    3 放射線治療 .................................................................. 14

    6 . 転移・再発 ......................................................................................15

    7 . 経過観察 ............................................................................... 16

    診断や治療の方針に納得できましたか? ................................ 17

    セカンドオピニオンとは? ....................................................... 17

    メモ/受診の前後のチェックリスト ....................................... 19

    がんの冊子 悪性黒色腫

  • 1

    がんという診断は誰にとってもよい知らせではありません。ひどくショックを受けて、「何かの間違いではないか」「何で自分が」などと考えるのは自然な感情です。しばらくは、不安や落ち込みの強い状態が続くかもしれません。眠れなかったり、食欲がなかったり、集中力が低下する人もいます。そんなときには、無理にがんばったり、平静を装ったりする必要はありません。時間がたつにつれて、「つらいけれども何とか治療を受けて

    いこう」「がんになったのは仕方ない、これからするべきことを考えてみよう」など、見通しを立てて前向きな気持ちになっていきます。そのような気持ちになれたらまずは次の2つを心がけてみてはいかがでしょうか。

    あなたに心がけてほしいこと■ 情報を集めましょう  まず、自分の病気についてよく知ることです。病気によってはまだわかっていないこともありますが、担当医は最大の情報源です。担当医と話すときには、あなたが信頼する人にも同席してもらうといいでしょう。わからないことは遠慮なく質問してください。 病気のことだけでなく、お金、食事といった生活や療養に関することは、看護師、ソーシャルワーカー、薬剤師、栄養士などが専門的な経験や視点であなたの支えになってくれます。

    1 .がんと言われた あなたの心に起こること

  • 2がんの冊子 悪性黒色腫

    がんと言われたあなたの心に起こること1また、インターネットなどで集めた情報が正しいかどうかを、担当医に確認することも大切です。他の病院でセカンドオピニオンを受けることも可能です。「知識は力なり」。正しい知識は考えをまとめるときに役に立ちます。※参考 P17「セカンドオピニオンとは?」

    ■�病気に対する心構えを決めましょう がんに対する心構えは、積極的に治療に向き合う人、治るという固い信念をもって臨む人、なるようにしかならないと受け止める人など人によりいろいろです。どれがよいということはなく、その人なりの心構えでよいのです。そのためにも、自分の病気のことを正しく把握することが大切です。病状や治療方針、今後の見通しなどについて担当医から十分に説明を受け、納得した上で、あなたなりの向き合い方を探していきましょう。あなたを支える担当医や家族に自分の気持ちを伝え、率直に話し合うことが、信頼関係を強いものにし、しっかりと支え合うことにつながります。

    情報をどう集めたらいいか、病気に対してどう心構えを決めたらいいのかわからない、そんなときには、巻末にある「がん相談支援センター」を利用するのも1つの方法です。困ったときにはぜひご活用ください。

  • 3

    悪性黒色腫は皮膚がんの一種で、皮膚の色と関係するメラニン色素をつくるメラノサイト(色素細胞)や、ほくろの細胞(母

    ぼはん

    斑細胞)が悪性化してできます。悪性黒色腫と新たに診断される人数は、1年間に100万人あたり約10〜20人です。年齢別にみた罹りかんりつ

    患率は、男女とも60歳代から高齢になるにつれて高くなります。罹患率の男女差は大きくありません。発生部位は足底(足の裏)が最も多く、このほか体幹、顔面、首、爪つめ

    などさまざまな部位に発生することもあります。

    図1.表皮の構造と細胞

    顆粒細胞

    有棘細胞

    ランゲルハンス 細胞

    基底細胞

    角層 顆粒層

    有棘層

    基底層

    真皮

    メラノサイト(色素細胞)

    ゆうきょく

    き て い

    し ん ぴ

    2.悪性黒色腫とは

  • 4がんの冊子 悪性黒色腫

    悪性黒色腫とは2悪性黒色腫が発生する原因については、まだよくわかっていませんが、白色人種に多く発症することから、紫外線がその1つである可能性があります。日本人では紫外線の影響を直接受けない部位に発生することが多いため、紫外線の関与は少ないと考えられます。しかし、過度な日焼けは避けたほうが無難であると思われます。サンスクリーン剤(日焼け止め)で紫外線から皮膚を守ることで、紫外線を直接浴びる部位の悪性黒色腫の発生率が減少する傾向が報告されています。また、足の裏や爪など、いつも刺激を受けている場所にできやすいことから、外からの刺激も関係していると考えられています。

  • 5

     皮膚は身体の表面にありますので、注意すればご自身やご家族で悪性黒色腫を早期に発見することが可能です。しかしながら、普通のほくろと早期の悪性黒色腫を区別することは非常に難しいのが実情です。少しでもおかしいと思われるほくろがあった場合は、自己判断せずに、まず皮膚科専門医を受診しましょう。早期の受診が、早期発見、早期治療につながります。 悪性黒色腫の早期の症状として、表1に示すABCDEの5つの特徴があるといわれています。この5つのポイントに当てはまる場合、悪性黒色腫の可能性が高くなります。

    表1.悪性黒色腫の早期の症状

    Asymmetry 非対称性 形が左右非対称

    Border 輪郭がギザギザしている 皮膚とほくろの輪郭がギザギザして不整/色のにじみ出しがある

    Color 色むら 色調が均一でない/色むらがある

    Diameter 大きさ 長径が6mm以上

    Evolving 変化がある 大きさが拡大する、色・形・症状が変化してくる

     このほか、皮膚にあるほくろが比較的短期間(約1〜2年以内)で、一部に硬

    こう け つ

    結や腫しゅりゅう

    瘤ができる、一部または全体がかたくなる、爪のスジが拡大し割れるといった症状がある場合には、注意が必要です。

    早期の症状1

  • 6がんの冊子 悪性黒色腫

    悪性黒色腫とは2

     悪性黒色腫の臨床症状は、大きく4つのグループ(病型)に分けられます。しかし、明確に分類できない場合もあります。

    表2.悪性黒色腫の病型

    病型 人種・年齢などの特徴 発生部位 症状のあらわれ方

    (1)末端黒

    こくしがた

    子型黒色腫

    日本人に最も多い

    足の裏や手のひら、手足の爪などに発生する

    ◦�はじめは褐色・黒褐色のシミができ、次第に色調が一部濃くなったり潰

    かいよう

    瘍ができたりする。◦�爪に黒褐色の縦のスジができ、次第に爪全体に広がって割れたり、爪周辺の皮膚に黒褐色のしみ出しがあらわれたりする。

    (2)表在拡大型黒色腫

    白人に多い病型だが、近年日本人にも増加している

    ほくろの細胞から発生すると考えられ、体幹や手足に発生する

    ◦�わずかに盛り上がったシミが見られ、輪郭は不整で、色調はまだら状である。

    (3)結節型黒色腫

    全身のどこにでも発生する

    ◦�はじめから立体構造をしていることが多く、色調は全体的に濃黒色となり、濃淡が混ざるようになる。◦�早期に深部に進行したり、転移したりすることが多い。

    (4)悪性黒子型黒色腫

    高齢者に多い

    顔面、首、手しゅはい

    背など日光に照射されやすい露出部位に発生する

    ◦�はじめは褐色から黒褐色の色しきそはん

    素斑が出現し、やがて濃黒色が混ざって拡大し、さらに一部に硬結や腫瘤が出現する。◦�ゆるやかに成長することが多い。

    悪性黒色腫の 4 つの病型2

  • 7

    悪性黒色腫は、皮膚科専門医による臨床症状の総合的な診断が必要です。見ただけで診断が難しい場合には、ダーモスコピーを用います。ダーモスコピーで診断するのが難しい場合には、腫瘍全体を切除する全切除生検を行います。その他にもリンパ節※1や内臓などへの転移を調べるために、超音波(エコー)、CT、MRI、PETなどの画像診断を行うこともあります。

    色素性皮膚疾患を観察するための特殊なルーペを用いた検査です。病変部を10倍から30倍ほどに拡大し、反射光のない状態で明るく照らして観察することができます。痛みもなく、簡便な検査です。

    ●リンパ節(※1)体全体にある免疫器官の1つです。免疫とは、体の外から入ってきた細菌やウイルスなどの敵や、変質した自分の細胞(腫瘍細胞など)を攻撃・排除する働きのことです。リンパ節は、全身の組織から集まったリンパ液が流れるリンパ管の途中にあり、細菌、ウイルス、腫瘍細胞などがないかをチェックし、免疫機能を発動する「関所」のような役割を持ちます。

    ダーモスコピー1

    3.検査と診断

  • 8がんの冊子 悪性黒色腫

    検査と診断3

    体に超音波をあてて、その反響の様子で体内の状態を調べる方法です。原発巣(最初に発生したがん)の進行度の重要な指標である厚さを予測し、リンパ節などへの転移を調べることに役立ちます。

    CTは、X線を使って体の内部を描き出し、がんの転移や周辺の臓器への広がりを調べます。MRIは、磁気を使用します。造影剤を使用する場合、アレルギーを起こすことがあります。アレルギーの経験のある人は医師に申し出てください。

     放射性フッ素を含む薬剤を注射し、その取り込みの分布を撮影することで全身のがん細胞を検出する検査です。

    超音波(エコー)検査2

    CT、MRI 検査3

    PET 検査4

  • 9

    4病期

    治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討されます。がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類されます。病期はがんの厚さ、リンパ節や別の臓器への転移があるかどうかによって決まります。悪性黒色腫では、0期、I期、II期、III期、IV期の5つの病期に分類されます。

    表3.悪性黒色腫の病期厚さ・潰瘍

    部位・転移がんの厚さ 潰瘍なし 潰瘍あり

    がんは�原発巣のみ

    0.8mm未満 IA IB

    0.8mm以上1mm以下 IB IB

    1mmを超えているが2mm以下 IB IIA

    2mmを超えているが4mm以下 IIA IIB

    4mmを超えている IIB IIC

    がんの厚さに関わらず、1個以上のリンパ節転移がある

    III

    がんの厚さやリンパ節転移に関わらず、別の臓器へ転移している

    IV

    0期:上皮内がんUICC:�TNM�Classification�of�Malignant�Tumours,�8th�Edn.�Wiley-Blackwell;�2017.143-144.より作成

    4.病期

  • 10がんの冊子 悪性黒色腫

    治療5

     図2は、悪性黒色腫に対する治療方法を示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。

    図2.悪性黒色腫の治療の選択

    ※2��センチネルリンパ節生検:がんが最初に転移するリンパ節のことをセンチネルリンパ節と呼びます。ここに転移がなければ、その先のリンパ節には転移がないと推測されるため、まずはこのリンパ節の生検(細胞をとって調べること)を行います。

    日本皮膚悪性腫瘍学会編「科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第1版(2007年)」(金原出版),日本皮膚科学会編「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版(2015年)」、日本皮膚科学会雑誌;125(1),5-75より作成

    5.治療

    ●手術、薬物療法、放射線治療などさまざまな手段を組み合わせた治療(集学的治療)

    緩和ケア

    ● 原発巣切除 (がん辺縁から  0.3~1cm)● 部位により植皮手術

    ● 原発巣切除 (がん辺縁から   1~2cm)● 皮膚転移・皮下転移に対する拡大切除、薬物療法、放射線治療

    再発・転移の予防 ● 経過観察 ● インターフェロン治療 ● 薬物療法 

    リンパ節郭清かくせい

    センチネルリンパ節生検※2

    ● 原発巣切除 (がん辺縁から  1~2cm)● 部位により植皮手術

    0期/ I A期 ⅠB期/II期 III期 IV期

    転移あり

    転移なし

  • 11

    手術(外科治療)1

    悪性黒色腫では、手術によってがんを切除する方法が優先されます。悪性黒色腫の場合、目に見える原発巣のみを切除しただけでは周囲にがんが再びあらわれる危険性があります。したがって、最初の手術で原発巣の縁

    ふち

    から約1〜 2cm離して広範囲に切除するのが原則です。一方、腫瘍が悪性のものであるか診断が確定されない場合には、腫瘍のみを切除したあと、病理医が組織について詳しく調べて診断を行うことがあります。診断が確定された場合は、広範囲に追加切除したほうがよいとされています。進行すると、原発巣の周囲に皮膚転移(衛星病巣)が数カ所発生することがありますが、その場合はさらに広く切除します。手術による皮膚の傷が大きくて縫い寄せられない場合は、自分の皮膚の一部を移植する手術が行われることもあります。皮膚をとる場所は、主に太ももの付け根(鼠

    そけい

    径部)、耳の後ろ、太ももの前面や後面などです。手術の際に、センチネルリンパ節(がんが最初に転移するリンパ節)生検を行うことがあります。センチネルリンパ節に転移が見つかった場合は、リンパ節の切除(リンパ節郭

    かくせい

    清)を行うことがあります。リンパ節郭清した場合などに、手や足などがむくんだり、しびれが残ったりすることもあります。その対処法については医師や看護師に相談して上手に乗りきりましょう。

  • 12がんの冊子 悪性黒色腫

    治療5

    薬物療法は薬を注射や点滴または内服することにより、がん細胞を消滅させたり小さくしたりすることを目的として行います。現在では、従来用いられてきた細胞障害性抗がん剤に加えて、免疫チェックポイント阻害薬や、分子標的薬など、新たな選択の幅が広がっています。ただし、使用できる施設が限定されている薬もありますので、担当医にご相談ください。

    免疫チェックポイント阻害薬とは、がん細胞が免疫から逃れようと免疫細胞にかけたブレーキを解除して、体内にもともとある免疫細胞を活用する作用のある薬です。手術ができない場合や再発した場合の悪性黒色腫に対して用いられています。効果(がんの縮小)はおよそ10〜 40%に認められ、一度効果があると長く続くこともあります。肺炎、発熱、だるさ、下痢、皮膚のかゆみ、感覚障害、筋力低下などの副作用が、治療が終了してから数週間から数カ月後に生じることもあるため注意が必要です。

    分子標的薬とは、正常細胞を傷つけないように、がん細胞の増殖に関わる分子を攻撃する薬です。悪性黒色腫に対しては、腫瘍組織でBRAF遺伝子変異があると確認された場合に用います。使い続けると薬が効きにくくなること(薬剤耐性)、ほかの皮膚がんができてしまうこと、だるさ、皮膚のかゆみなどの副作用を生じることがあるため注意が必要です。

    薬物療法2

    1)免疫チェックポイント阻害薬(免疫療法)

    2)分子標的薬

  • 13

    内臓やリンパ節の転移巣の増大を抑えたり、縮小させたりすることを目的として行います。�細胞障害性抗がん剤はがん細胞以外の正常細胞にも影響を与えるため、いろいろな副作用を生じます。その症状は、薬の種類や量によっても、患者さんによっても異なりますが、発熱、感染しやすくなる、だるさ、貧血、吐き気、嘔

    おうと

    吐、食欲不振、下痢などがあげられます。治療の際には、このような副作用を軽減させるための処置が同時に行われます。

    インターフェロンとは、ヒトの細胞でつくられる免疫や炎症に関係するタンパク質の1つで、がんの増殖を抑制する作用が認められています。悪性黒色腫では、手術によってがんを切除したあとに、再発予防のためにインターフェロンを手術部位周辺や皮下に注射することがあります。また、皮膚転移や皮下転移したところに直接注射を打つ方法も行われます。副作用として、発熱、頭痛、貧血、食欲不振などが生じることがあります。

    3)細胞障害性抗がん剤(化学療法)

    4)インターフェロン製剤

  • 14がんの冊子 悪性黒色腫

     放射線治療には、高エネルギーのX線や電子線を照射してがん細胞を傷害し、がんを小さくする効果があります。 これまで、悪性黒色腫は放射線への感受性が低いと考えられてきましたが、悪性黒色腫が脳や全身へ遠隔転移した場合には、緩和医療として放射線治療を行うことで、転移や再発に伴う症状(痛みなど)を和らげる効果が報告されています。 また、脳転移に対しては全脳照射※3がよく行われていますが、転移の数が少なく、全身状態が良好な場合には、サイバーナイフやガンマナイフなどの定位放射線照射※4が勧められることがあります。 放射線治療によって皮膚の炎症、疲労感、食欲不振などの副作用が起こることがあるため、全身状態をみながら治療が行われます。

    ※3�全脳照射:脳全体を照射する方法※4�定位放射線照射:多方向から放射線を集中して照射する方法

    放射線治療3

    治療5

  • 15

    6転移・再発6.転移・再発

     転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。手術でがんを全部切除できたようにみえても、その時点ですでにがん細胞が別の臓器に移動している可能性があり、手術した時点では見つけられなくても、時間がたってから転移として見つかることがあります。転移が生じている場合には治療法を総合的に判断する必要があります。 再発とは、治療により目に見える大きさのがんがなくなったあと、再びがんが出現することをいいます。

     悪性黒色腫では病期が進むにつれて、転移・再発する可能性が高くなります。それぞれの患者さんで状態は異なりますので、患者さんの状況に応じて治療やその後のケアを決めていきます。再発した場合でも初期であれば高い治療効果が望めます。

  • 16

    経過観察7

    参考文献:日本皮膚悪性腫瘍学会編.皮膚悪性腫瘍取扱い規約�第2版.2010年;金原出版日本皮膚科学会.皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン�第2版.日本皮膚科学会雑誌.2015年;125(1):5-75日本皮膚悪性腫瘍学会編.科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン�第1版.2007年;金原出版James�D.�Brierley,�Mary�K.�Gospodarowicz,�Christian�Wittekind,�editors.�UICC:�TNM�Classification�of�Malignant�Tumours,�8th�Edn.�West�Sussex:�Wiley-Blackwell;�2017.143-144.Tamaki� T,� et� al.� The� burden� of� rare� cancer� in� Japan:� application� of� the�RARECARE�definition.�Cancer�Epidemiology.�2014;38(5):490-495.

    がんの冊子 悪性黒色腫

    7.経過観察

     治療を行ったあとも、皮膚の状態や転移・再発の有無を確認するために、定期的に通院します。間隔は病状によって異なりますが、1〜3カ月に1度、追加の治療がなく安定している場合は半年に1度程度が一般的です。 また、ご自身やご家族が定期的に鏡を利用して全身の皮膚の状態を観察することで、転移・再発の早期発見につながります。

  • 17

    診断や治療の方針に納得できましたか?/セカンドオピニオンとは?

    治療方法は、すべて担当医に任せたいという患者さんがいます。一方、自分の希望を伝えた上で一緒に治療方法を選びたいという患者さんも増えています。どちらが正しいというわけではなく、患者さん自身が満足できる方法が一番です。 まずは、病状を詳しく把握しましょう。わからないことは、担当医に何でも質問してみましょう。治療法は、病状によって異なります。医療者とうまくコミュニケーションをとりながら、自分に合った治療法であることを確認してください。 診断や治療法を十分に納得した上で、治療を始めましょう。

    担当医以外の医師の意見を聞くこともできます。これを「セカンドオピニオンを聞く」といいます。ここでは、①診断の確認、②治療方針の確認、③その他の治療方法の確認とその根拠を聞くことができます。聞いてみたいと思ったら、「セカンドオピニオンを聞きたいので、紹介状やデータをお願いします」と担当医に伝えましょう。担当医との関係が悪くならないかと心配になるかもしれませ

    んが、多くの医師はセカンドオピニオンを聞くことは一般的なことと理解しています。納得した治療法を選ぶために、気兼ねなく相談してみましょう。

    診断や治療の方針に納得できましたか?

    セカンドオピニオンとは?

    診断や治療の方針に納得できましたか?/セカンドオピニオンとは?

  • 18

    診断や治療の方針に納得できましたか?/セカンドオピニオンとは?

    がんの冊子 悪性黒色腫

  • メモ/受診の前後のチェックリスト

    19

    メモ(    年   月   日)● がんの種類� [                ]● がんの厚さ� [ ������������������ ]�mm● 別の臓器やリンパ節への転移 [�����あり�����・�����なし�����]● 病期� [                ]

    受診の前後のチェックリスト□ 後で読み返せるように、医師に説明の内容を紙に書いてもらったり、自分でメモをとったりするようにしましょう。

    □ 説明はよくわかりますか。わからないときは正直にわからないと伝えましょう。

    □ 自分に当てはまる治療の選択肢と、それぞれのよい点、悪い点について、聞いてみましょう。

    □ 勧められた治療法が、どのようによいのか理解できましたか。□ 自分はどう思うのか、どうしたいのかを伝えましょう。□ 治療についての具体的な予定を聞いておきましょう。□ 症状によって、相談や受診を急がなければならない場合があるかどうか確認しておきましょう。

    □ いつでも連絡や相談ができる電話番号を聞いて、わかるようにしておきましょう。

    □ 説明を受けるときには家族や友人が一緒の方が、理解できて安心だと思うようであれば、早めに頼んでおきましょう。

    □ 診断や治療などについて、担当医以外の医師に意見を聞いてみたい場合は、セカンドオピニオンを聞きたいと担当医に伝えましょう。

  • メモ/受診の前後のチェックリスト

    協力者(五十音順):堤田 新 (国立がん研究センター中央病院皮膚腫瘍科) 山﨑 直也(国立がん研究センター中央病院皮膚腫瘍科) 国立がん研究センターがん対策情報センター 患者・市民パネル

    国立がん研究センターがん対策情報センター作成の本

    がんの冊子 各種がんシリーズ 悪性黒色腫編集・発行 国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター  〒 104-0045 東京都中央区築地 5-1-1印刷・製本 図書印刷株式会社

    2008 年 9月第 1版第 1刷 発行2017 年 7月第 3版第 1刷 発行

    上記の冊子や書籍は、全国のがん診療連携拠点病院などの「がん相談支援センター」で閲覧・入手することができます。

    ウェブサイト「がん情報サービス」で、冊子ファイル(PDF)を閲覧したり、ダウンロードして印刷したりすることができます。

    0570-02-3410 ( ナビダイヤル 平日10時 ~15時 )*通信料は発信者のご負担です。一部のIP電話からはご利用いただけません。

    ●がんの冊子各種がんシリーズ、小児がんシリーズ、がんを知るシリーズがんと療養シリーズ がんと心/がんの療養と緩和ケア/もしも、がんと言われたら/他社会とがんシリーズ 家族ががんになったとき/身近な人ががんになったとき/他がんと仕事のQ&A

    ●がんの書籍(がんの書籍は書店などで購入できます)がんになったら手にとるガイド普及新版別冊『わたしの療養手帳』もしも、がんが再発したら

    がん情報サービス http://ganjoho.jp

    上記の冊子・書籍の閲覧方法や入手先がわからないときは、「がん情報サービス」または「がん情報サービスサポートセンター」でご確認ください。

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